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  • 特開-積層された単層複合膜を形成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025032133
(43)【公開日】2025-03-11
(54)【発明の名称】積層された単層複合膜を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/12 20060101AFI20250304BHJP
【FI】
B01D69/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024200546
(22)【出願日】2024-11-18
(62)【分割の表示】P 2022568576の分割
【原出願日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】63/025,660
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, トンチュー
(72)【発明者】
【氏名】チェン, クォク シュン
(72)【発明者】
【氏名】パテル, ライニカント ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ユイ, トニー
(72)【発明者】
【氏名】プロウン, プス
(72)【発明者】
【氏名】ウー, メイベル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】2つ以上の別個の多孔質ポリマー層の積層によって形成された複合膜を提供する。
【解決手段】第1の多孔質ポリマー層と、第1の多孔質ポリマー層と共に積層された第2の多孔質ポリマー層と、を含み、接着剤を含まない複合膜である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の多孔質ポリマー層と、
第1の多孔質ポリマー層と共に積層された第2の多孔質ポリマー層と、
を含み、
接着剤を含まない複合膜。
【請求項2】
第1の多孔質ポリマー層、第2の多孔質ポリマー層、又はその両方が、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリオレフィンからなる群から選択され、第1の多孔質ポリマー層及び第2の多孔質ポリマー層が異なる、請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
第1の多孔質ポリマー層が、20μm未満の厚さを有する、請求項1又は2に記載の複合膜。
【請求項4】
第1の多孔質ポリマー層が、延伸ポリエチレン層である、請求項3に記載の複合膜。
【請求項5】
第2の多孔質ポリマー層が、約50μm~約200μmの厚さを有するポリオレフィン層である、請求項1から4のいずれかに記載の複合膜。
【請求項6】
ポリオレフィン層が、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)層である、請求項5に記載の複合膜。
【請求項7】
複合膜が、第1の多孔質ポリマー層と第2の多孔質ポリマー層との非積層複合材の流量の90%以上の流量を有する、請求項1から6のいずれかに記載の複合膜。
【請求項8】
複合膜が、第1の多孔質ポリマー層と第2の多孔質ポリマー層との非積層複合材のフロー時間の20%以下のフロー時間の増加を有する、請求項1から7のいずれかに記載の複合膜。
【請求項9】
第1の多孔質ポリマー層が第1の泡立ち点を有し、第2の多孔質ポリマー層が第2の泡立ち点を有し、第1の泡立ち点が第2の泡立ち点よりも高く、複合膜が、第1の多孔質ポリマー層の第1の泡立ち点の90%以上である泡立ち点を有する、請求項1から8のいずれかに記載の複合膜。
【請求項10】
第1の多孔質ポリマーを含み、約20μm未満の厚さを有する第1の領域と、
第2の多孔質ポリマーを含み、約50μm~約200μmの厚さを有する第2の領域と、
を含み、
第2の多孔質ポリマーが第1の多孔質ポリマーとは異なり、
第1の領域と第2の領域との間に層間領域が存在しない、複合膜。
【請求項11】
第1の領域、第2の領域、又は第1の領域と第2の領域の両方が、多孔質圧縮領域を含む、請求項10に記載の複合膜。
【請求項12】
第1の多孔質ポリマーが延伸ポリエチレンである、請求項10又は11に記載の複合膜。
【請求項13】
第2の多孔質ポリマーがポリオレフィンである、請求項10~12のいずれかに記載の複合膜。
【請求項14】
複合膜を形成する方法であって、
i)ラミネーターに第1の多孔質ポリマー層及び第2の多孔質ポリマー層を提供することと、
ii)ラミネーターにおいて、第1の多孔質ポリマー層及び第2の多孔質ポリマー層を積層温度に加熱することと、
iii)加熱された第1の多孔質ポリマー層及び加熱された第2のポリマー層を接着剤を用いることなく積層して、複合膜を形成することと、
を含む、方法。
【請求項15】
積層中又は積層後に複合膜を圧縮することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1の多孔質ポリマー層が、20μm未満の厚さを有する超薄多孔質ポリマー層である、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
超薄多孔質ポリマー層が延伸ポリエチレン層である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
第2の多孔質ポリマー層が、約50μm~約200μmの厚さを有するポリオレフィン層である、請求項14から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
ポリオレフィン層が、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)層である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1の多孔質ポリマー層が第1の溶融温度を有し、第1の多孔質ポリマー層が第1の溶融温度を5℃と20℃との間下回る温度に加熱される、請求項14~19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
第2の多孔質ポリマー層が第2の溶融温度を有し、第2の多孔質ポリマー層が第2の溶融温度を5℃と20℃との間下回る温度に加熱される、請求項14~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
複合膜が、第1の多孔質ポリマー層と第2の多孔質ポリマー層との非積層複合材の流量の90%以上の流量を有する、請求項14~21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
請求項1~13のいずれかに記載の複合膜を含むフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤なしで別々の多孔質ポリマー層を積層し、単層複合体を形成することによって調製された複合膜に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な種類の多孔質ポリマー膜が、精製されるべき流体の流れから望ましくない材料を除去するために使用されており、これらは様々な工業用途において有用性を見出している。望ましくない材料を除去するために処理される流体には、水、液体の工業用溶媒及び処理流体、製造又は処理に使用される工業用ガス、並びに医療又は医薬用途を有する液体が含まれる。流体から除去される望ましくない物質には、粒子、微生物、及びイオン種などの溶解化学種などの不純物及び夾雑物が含まれる。フィルタ用途の例には、半導体及びマイクロ電子デバイスの製造に使用される様々な液体材料の精製が含まれる。
【0003】
多孔質材料のポリマー層を異なる配置で組み合わせて、標的材料の除去を達成するように構成された多孔質ポリマー膜を形成することができる。例えば、いくつかの多孔質層は、部材の細孔よりも大きい液体内に存在する粒子が通過し、それらの相対サイズによって膜上又は膜内に捕捉されるのを防止するふるい分け機構を介して不純物を除去することができる。他の膜は、膜細孔よりも小さい不純物が膜材料との相互作用によって細孔内に捕捉される非ふるい分け機構を介して機能する。非ふるい分け膜をふるい分け膜と組み合わせることにより、大きい粒子と小さい粒子の両方を除去することができる。
【0004】
当該技術分野で知られているように、異なる種類の膜を組み合わせて、良好な流動特性を有する単層複合膜材料を形成することは困難である。典型的には、1つの多孔質層は、接着中間層を使用して、及び/又は強く圧縮して、別の多孔質層と接触して配置される。しかしながら、接着剤の存在は、膜性能に干渉する可能性がある。接着剤に起因して細孔が詰まったり潰れたりするにつれて、フィルタの流れは有意に減少することが多い。さらに、接着剤の存在は、複合体を通過する液体に不純物を追加する可能性がある。共押出も使用され得るが、これは、異なる膜形態を有するポリマー層を組み合わせるためには実用的ではなく、ポリマー材料を押し出すために必要な加熱は、それらの細孔構造を劣化させることが多い。同様に、2つの個々の多孔質層を密接に接触させて単層を形成するために過剰な圧縮を使用すると、多孔質層全体及び接触面の両方で細孔構造を崩壊させ得る。このため、異なる形態の多孔質ポリマー層は、一般に、それらの個々の濾過能力を維持するために、別個の保持層の堆積配置に配置される。しかしながら、個々の層が互いに接着していないようなフィルタを取り扱うことは、特に層の一方又は両方が非常に薄い場合、非常に困難であり得る。
【0005】
したがって、多孔質ポリマー層を組み合わせて、単層として機能するが、それが調製された個々の層の特徴を維持する複合膜を形成する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、一般に、2つ以上の別個の多孔質層の積層によって形成された複合膜、並びに積層のための方法及びシステムに関する。有利には、得られる複合体は、単層であり、複合体がその構成要素層に容易に分離することなく取り扱うことができ、さらに積層前の構成要素層の濾過能力を効果的に維持する。
【0007】
一実施形態では、本開示は、第2の多孔質ポリマー層と積層された第1の多孔質ポリマー層を含む複合膜に関する。複合膜には接着剤が添加されていない。好ましくは、第1の多孔質ポリマー層は、第2の多孔質ポリマー層とは異なる形態を有し、より好ましくは、層は厚さが異なる。複合膜は単層であり、これらの同じ層の非積層複合材と実質的に同じ流量及び/又はフロー時間を有する。
【0008】
別の実施形態では、本開示は、第1の領域及び第2の領域を含む複合膜に関し、複合体は、第1の領域と第2の領域との間に層間領域を有さず、第1の多孔質ポリマー及び第2の多孔質ポリマーの両方を含む。第1の領域は、第1の多孔質ポリマーを含み、約20μm未満の厚さを有する。第2の領域は、第2の多孔質ポリマーを含み、約50μm~約200μmの厚さを有する。好ましくは、第2の多孔質ポリマーは、第1の多孔質ポリマーとは異なる。第1の領域、第2の領域、又はその両方は、圧縮領域をさらに含むことができる。
【0009】
別の実施形態では、本開示は、複合膜を形成する方法に関し、該方法は、第1の多孔質ポリマー層及び第2の多孔質ポリマー層をラミネーター内に供給することと、第1の多孔質ポリマー層及び第2の多孔質ポリマー層をラミネーターの積層温度まで加熱することとを含む。加熱された第1の多孔質ポリマー層及び加熱された第2のポリマー層は、接着剤なしで一緒に積層されて複合膜を形成し、その後冷却され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】2つの多孔質ポリマー層を含む本開示の単層複合膜の一実施形態の概略図である。
図2】2つの異なる多孔質ポリマー層を含む本開示の単層複合膜の一実施形態の顕微鏡写真である。
図3】本開示の複合部材を作製するための積層システムの一実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記の図は必ずしも縮尺通りではなく、場合によっては、本開示の基本原理を説明する様々な好ましい特徴の幾分単純化された表現を提示することができることを理解されたい。例えば、特定の寸法、向き、位置、及び形状を含む本開示の特定の設計特徴は、目的の用途及び使用環境によって部分的に決定される。
【0012】
本開示は、2つ以上の別個の多孔質ポリマー層の積層によって形成された複合膜、並びに2つ以上の別個の多孔質ポリマー層の積層のための方法及びシステムに関する。
【0013】
本明細書に開示の得られる複合膜は、本質的に単層であるが、それが調製された多孔質ポリマー層の堆積組み合わせと実質的に同じ濾過特性を有する。例えば、複合膜は、単一層を形成するように一緒に積層された2つ以上の別個の多孔質ポリマー層を含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「多孔質ポリマー層」とは、層の一方の表面から層の反対側の表面まで延在する多孔質(例えば、微孔性)相互接続通路を含むポリマー材料である。通路は、一般に、濾過される液体が通過しなければならない蛇行状のトンネル又は経路を提供する。多孔質ポリマー層を通過する粒子又は溶解種などの夾雑物は、サイズに基づいて(すなわち、ふるい分け機構)、又は化学に基づいて(すなわち、非ふるい分け機構」)のいずれかで、細孔によって又は細孔内に捕捉されるようになる。
【0015】
様々な異なる種類のポリマー層を使用して、本開示の複合膜を形成することができる。ポリマー層の各々は、複合膜の目標用途、コスト、材料の利用可能性などに応じて、同じであっても異なっていてもよい。例えば、一実施形態では、複合膜は、第2の多孔質ポリマー層と積層された第1の多孔質ポリマー層を含み、各層は、材料の種類及び/又は濾過機構(ふるい分け又は非ふるい分け)が同じ又は異なる。適切なポリマー層には、例えば、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテル-スルホン、及びポリオレフィン層が含まれる。
【0016】
意外にも、単層複合材料は、流動性能を有意に低下させることなく、本明細書に記載の技術を使用して積層された2つの異なる種類の多孔質ポリマー層から形成され得ることが見出された。例えば、ふるい分け機構で不純物を除去可能な多孔質ポリマー層は、非ふるい分け機構で不純物を除去可能な多孔質ポリマー層を用いて、接着剤なしで積層され、濾過及び流動性能の特性に優れた単層複合膜が得られることが分かった。単層複合膜は、任意の順序で多孔質ポリマー層を含んでもよく、例えば、ふるい分け層の最上部に積層された非ふるい分け層又はその逆であってもよい。本明細書に記載の層(すなわち、最上部、第1、第2など)の位置決めは、複合膜を通過する流体の意図された流れ方向に対するものであり、最上層は流体と接触する第1の多孔質ポリマー層である。
【0017】
複合膜の層の厚さは、例えば、それが形成されるポリマー層のコスト、入手可能性、及び取り扱い性(すなわち、物理的特性及び/又は機械的特性)に応じて変化し得る。例えば、第2の多孔質ポリマー層と積層された第1の多孔質ポリマー層を含む複合膜の場合、第1の多孔質ポリマー層は、第2の多孔質ポリマー層と同じ又は異なる厚さを有し得る。いくつかの実施形態では、多孔質ポリマー層は厚さが異なっていてもよい。例えば、標的流体と最初に接触するように意図された第1の多孔質ポリマー層は、第2の多孔質ポリマー層の厚さよりも薄い厚さを有し得る。特に、第1の多孔質ポリマー層は、10μm未満及び5μm未満を含む20μm未満の厚さを有する超薄多孔質層であってもよい。第2の多孔質ポリマー層は比較的厚くてもよく、20μm超、例えば約20μm~約200μm、約50μm~約200μm、約50μm~約150μm、及び約50μm~約100μmなどの厚さを有する。意外にも、本明細書に記載の技術を使用して、得られる単層複合体を通る流れを実質的に維持しながら、超薄多孔質層により厚い層を積層し得ることが分かった。
【0018】
複合膜の多孔質ポリマー層は、これらの範囲の厚さを有する様々な材料を含み得るが、いくつかの実施形態では、単層複合膜は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)層などの多孔質ポリオレフィン層と積層された多孔質ポリエチレン(PE)層を含む。多孔質PE層は、例えば、希釈剤を含有するポリエチレン樹脂の押出によって調製され、続いて延伸され、抽出され、最後にアニーリングされる延伸ポリエチレンを含んでもよい。様々な延伸多孔質PE層が当業者に知られており、本開示の実施形態で使用され得る。UHMWPE層は、当該技術分野で公知の任意のものであってもよく、典型的には、約1×10ダルトン(Da)超、例えば約1×10~9×10Da、又は1.5×10~9×10Daの範囲の分子量を有する樹脂から形成される。これらの多孔質ポリマーは、対称的な細孔径分布又は非対称的な細孔径分布(例えば、多孔質ポリマー層の一方の側から反対側への細孔径の減少)を有するように形成することもできる。
【0019】
本開示の具体的な実施形態を図1及び図2に示す。特に、図1は、互いに積層された2つの異なる多孔質ポリマー層を含む複合膜を示す。図示されるように、複合膜100は、第1の多孔質ポリマー層110及び第2の多孔質ポリマー層120を含み、これらの層の順序は、矢印で示されるように、複合膜を通る標的液体の意図された流れに対するものである。この実施形態では、第1の多孔質ポリマー層は、第2の多孔質ポリマー層の厚さよりも小さい厚さを有する。また、これらの層は異なる材料である。しかしながら、上述したように、2つの層が同じであってもよく、及び/又は第2の層の厚さが第1の層と同じ又はそれ未満であってもよいことは、本開示の範囲内である。
【0020】
重要なことに、図1及び図2に示されるように、複合膜は、第1の多孔質ポリマー層110と第2の多孔質ポリマー層120との間に接着剤又は接着剤層を含まない。また、好ましくは、以下により詳細に考察するように、両方の多孔質ポリマー層を含む中間層は形成されない。むしろ、示されるように、2つの多孔質ポリマー層は互いに直接接触している。
【0021】
さらに、接触層は、積層後、特に取り扱い中に接触したままであり、それによって単層複合体を形成する。本明細書で使用される場合、「単層複合材」という用語は、その構成多孔質ポリマー層に容易に分離せず、それによって複合材を単一のユニット又は層として取り扱うことを可能にする2つ以上の別個の多孔質層から形成された複合材料に関する。むしろ、単層複合材の層を分離するために、加えられる力が必要である。例えば、本開示の一実施形態では、約0.5lbf~約5lbf、例えば約0.8lbf~約3lbf又は約1.0lbf~約2.0lbf、約1.5lbfなどの剥離力を用いて、複合膜の層を元の出発多孔質ポリマー層に分離することができる。これらの力の値は、一般に、プリーツ加工中などの通常の膜処理中に経験されるよりも高く、この単層複合体からのフィルタデバイスの形成を可能にする。
【0022】
より詳細な図が図2に示され、これは本開示の複合膜の特定の実施形態の顕微鏡写真である。この複合膜は、第2の多孔質ポリマー層と積層された第1の多孔質ポリマー層を含み、この位置決めは、矢印によって示される使用時の意図された流れ方向に対するものである。この特定の実施形態では、第1の多孔質ポリマー層は延伸多孔質PE層であり、第2の多孔質ポリマー層は溶液キャスト多孔質UHMWPE層である。これらの層は、本開示の方法によって積層され、それらの間に接着剤層を含まず、これは図2の顕微鏡写真に明確に示される。
【0023】
接着剤層を含まないが、2つの層は意外にも互いによく接着し、互いに容易に分離できず、複合膜は単層複合体であることも見出された。図2に示すように、複合膜200は、第1の多孔質ポリマー層によって形成された第1の領域210と、第2の多孔質ポリマー層から形成された第2の領域220とを含む。第1の領域の厚さは20μm未満であり、第2の領域の厚さは約50μm~約200μmである。しかしながら、複合部材200は、接着剤又は第1の多孔質ポリマー層と第2の多孔質ポリマー層の両方の組み合わせのいずれかを含むいかなる層間領域もさらに含まない。代わりに、図示のように、2つの層は互いに直接接触しており、その間にエアポケットは形成されていない。以下でより詳細に考察するように、圧縮を使用して、層の多孔度に有意な影響を与えることなく、結合された層を接触させることができる。これは図2にも示されており、第2の領域220は圧縮領域230を含み、この領域は依然として非常に多孔性である。第1の領域210を詳細に検査すると、圧縮領域の存在も示される。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、積層温度と穏やかな圧縮との組み合わせは、相対的な細孔構造を有意に減少させることなく、個々の多孔質ポリマー層を密接に接触させることができると考えられる。これにより、組み合わされた層は、最小の全体的な流れ減少で、単層膜として機能することが可能になる。したがって、複合膜200は、層が分離することを心配することなく、プリーツ又は他の方法で折り畳んで所望のフィルタハウジング内に納まるなどによって、単層膜として取り扱い、さらに処理することができる。
【0024】
ポリマー層のそれぞれの多孔質性が実質的に維持されるため、単層複合体は、流れ又は処理量の減少を最小限に抑えながら、対象の液体流から不純物及び夾雑物を除去するための膜として使用することができる。例えば、意外なことに、本開示の単層複合膜は、2つの多孔質ポリマー層の非積層組み合わせ(すなわち、2つの多孔質ポリマー層が接触しているが、互いに接着せず、容易に分離することができる堆積複合材)を通るこの流体の流量の90%以上である、イソプロピルアルコール(IPA)などの試験流体の流量を有することが見出された。したがって、流量の減少は10%以下である。加えて、又は代替的に、単層複合膜は、IPAなどの試験流体のフロー時間が、これらの層の対応する非積層組み合わせのフロー時間の120%以上である(すなわち、フロー時間は20%を超えて増加しない)ことが分かった。したがって、単層複合膜は、それを形成するために使用される多孔質ポリマー層の堆積配置の流れ特性と実質的に同じ流れ特性を有する。フロー時間は、500mLのイソプロピルアルコール(IPA)流体が、14.2psi及び温度21℃で、13.8cmの表面積を有する膜を通過するのにかかる時間として測定される。流量は、14.2psi及び21℃の温度で、13.8cmの表面積を有する膜を通過するイソプロピルアルコール(IPA)流体の総体積を1分間にわたって測定することによって測定される。
【0025】
いくつかの実施形態では、泡立ち点値も実質的に変化しないままである。例えば、第1の多孔質ポリマー層の泡立ち点が第2の多孔質ポリマー層の泡立ち点よりも高い場合、意外なことに、単層複合膜の泡立ち点は、第1の(すなわち、より高い)泡立ち点の90%以上であり得ることが見出された。当該技術分野で知られているように、泡立ち点法は、一定の濡れを伴う特定の流体及び細孔サイズについて、気泡を細孔に押し通すのに必要な圧力が細孔のサイズに反比例するという前提に基づいている。より高い泡立ち点値は、小さい孔径に関連する。多孔質材料の泡立ち点を決定するために、多孔質材料の試料を、20~25℃(例えば、22℃)の温度で、エトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200(3Mから入手可能)に浸漬し、濡らす。圧縮空気を用いて試料の片側にガス圧を加え、ガス圧を徐々に上昇させる。ガスが試料を通って流れる最小圧力は、泡立ち点と呼ばれる。本明細書に開示される単層複合膜の泡立ち点を測定する場合、圧縮空気は、より大きな厚さを有するポリマー多孔質層を通って導かれる。本明細書に記載の方法を使用して積層された本開示の単層複合膜は、細孔径を有意に減少させないが、最も高い泡立ち点を有する多孔性ポリマー層の泡立ち点を実質的に維持することが見出された。そのため、細孔径が有意に減少することはない。
【0026】
したがって、本開示はさらに、単層複合膜積層体を調製する方法に関する。本方法の実施形態では、2つ以上の多孔質ポリマー層(上記の第1の多孔質ポリマー層及び第2の多孔質ポリマー層など)が提供され、ラミネーターに供給されて組み合わされる。好ましくは、ラミネーターは単一のラミネーターユニットであるが、複数の積層ゾーンが使用されてもよい。2つ以上の層は、接着剤を使用せずに層を積層させるのに十分な温度までラミネーター内で加熱され、この温度で積層されて単層複合体を形成する。加熱及び積層は、同時に又は別々のステップで行うことができる。次いで、形成された複合膜を冷却することができる。例えば、複合材を硬化させるために冷却ゾーンを使用することができる。「積層された」とは、冷却後に、層が互いに接着したままであり、容易に分離できず、例えば、層を剥がす力を必要とすることを意味する。例えば、層を分離するための剥離力は、約0.5lbf~約5lbf、例えば約0.8lbf~約3lbf又は約1.0lbf~約2.0lbf、約1.5lbfなどであってもよい。複合膜が調製される積層多孔質ポリマー層を分離するために力が必要であるため、この複合体は単層複合体として機能することができる。
【0027】
本積層方法では、上述した多孔性ポリマー層のいずれも用いることができる。これらの層は、同じであっても異なっていてもよいが、好ましくは、ポリマーの種類、厚さ、及び/又は多孔度が異なる。例えば、第1の多孔質ポリマー層は、20μm未満の厚さを有する、延伸多孔質PE層などの超薄多孔質層であってもよい。第2の多孔質ポリマー層は、約50μm~約200μmの厚さを有する、多孔質UHMWPE層などのポリオレフィン層であってもよい。
【0028】
本開示の方法では、2つ以上の層は積層温度まで加熱され、積層温度とは、いずれかの層の多孔度に有意に影響を与えることなく、層を互いに接着させるのに十分な温度である。したがって、積層温度は、ラミネーター内で組み合わされる多孔質ポリマー層の種類に依存する。特に、積層温度は、積層される2つ以上の層の最低溶融温度を5℃と20℃との間下回ることができる。例えば、第1の多孔質ポリマー層と第2の多孔質ポリマー層とを積層するために、第1の層が第2の層よりも低い溶融温度を有する場合、積層温度は、第1の多孔質ポリマー層の溶融温度を5℃と20℃との間下回る。単層複合膜を形成するために圧縮する必要はない。しかしながら、上述の流量、フロー時間、及び/又は泡立ち点値によって決定されるように、圧縮量が積層されている層のいずれの多孔度も有意に変化(すなわち、低減)しない限り、必要に応じて、最小圧縮圧力が加えられてもよい。上述のように、圧縮の使用により、個々の層内、好ましくは接触面付近又は接触面に圧縮領域を形成することができる。しかしながら、この圧縮領域は依然として非常に多孔性である。
【0029】
図3は、本開示の方法によって単層複合膜を形成するためのラミネーターシステムの実施形態を示す。示されるように、ラミネーターシステム300は、テークオフロール311からの第1の多孔質ポリマー層310、及びテークオフロール321からの第2の多孔質ポリマー層320が供給されるラミネーター330を含む。ラミネーター330を、第1及び第2の多孔質ポリマー層の相対溶融温度で決まる積層温度まで加熱し、複合膜340を形成する。この複合膜は単層複合体であるため、プリーツ加工などの追加の加工のために巻き取りロール341上に受容されるなど、分離することなく膜を容易に取り扱うことができる。
【0030】
本開示のエッチング液組成物の特徴及び利点は、以下の非限定的な例によってより詳細に説明される。
【実施例0031】
2つの多孔質ポリマー層をラミネーターで合わせ、最低溶融温度を有するポリマー層の溶融温度より15℃低い積層温度まで加熱した。第1の多孔質ポリマー層は、約4μmの厚さを有する延伸ポリエチレンであり、第2の多孔質ポリマー層は、約152μmの厚さを有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)であった。これにより、接着剤を使用せずに別々の層を積層し、続いて冷却して単層複合膜を形成した。多孔質ポリマー層及び得られた複合膜の特性を表1に示す。流量、フロー時間及び泡立ち点を上記のように算出した。単層複合膜の流量及びフロー時間値を、同じ多孔質ポリマー層の堆積配置と比較し、これらを用いて流量減少及びフロー時間損失を算出した。
【0032】
データが示すように、本開示の方法を使用して、単層複合膜は、フロー時間、流量、及び泡立ち点の最小変化によって示されるように、接着剤なしで、膜性能に有意な影響を与えることなく、積層によって異なる個々の多孔質ポリマー層から形成することができる。例えば、複合膜は、第1の多孔性ポリマー層と第2の多孔性ポリマー層との積層されていない堆積複合材の流量の90%以上の流量を有し(すなわち、流量減少は10%未満である)、及び/又は複合膜は、第1の多孔性ポリマー層と第2の多孔性ポリマー層との積層されていない堆積複合材のフロー時間の120%未満のフロー時間を有し(すなわち、フロー時間の増加は20%以下である)、及び/又は第1の多孔性ポリマー層は第1の泡立ち点を有し、第2の多孔性ポリマー層は第2の泡立ち点を有し、第1の泡立ち点は、第2の泡立ち点よりも高く、複合膜は、第1の多孔性ポリマー層の第1の泡立ち点の90%以上の泡立ち点を有する。全体の厚さは、個々の層の合計厚さよりわずかに小さく、圧縮の存在を示している。しかし、この穏やかな圧縮は、性能に有意な影響を及ぼさない。したがって、得られる単層複合膜は、半導体産業の厳密な精製要件によく適している。
【0033】
複合膜及び積層方法は、例示的な実施形態及び特徴を参照して本明細書で様々に開示されているが、上記の実施形態及び特徴は本開示の範囲を限定することを意図するものではなく、他の変形、修正及び他の実施形態は、本明細書の開示に基づいて当業者にそれら自体を示唆することが理解されよう。したがって、本開示は、以下に記載される特許請求の範囲の趣旨及び範囲内のすべてのそのような変形、修正及び代替の実施形態を包含する。
【0034】
第1の態様では、複合膜は、第1の多孔質ポリマー層と、第1の多孔質ポリマー層と共に積層された第2多孔質ポリマー層とを含み、複合膜は接着剤を含まない。
【0035】
第1の態様に係る第2の態様では、第1の多孔質ポリマー層、第2の多孔質ポリマー層、又はその両方は、ポリアミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、及びポリオレフィンからなる群から選択され、第1の多孔質ポリマー層及び第2の多孔質ポリマー層は異なる。
【0036】
第1又は第2の態様に係る第3の態様では、第1の多孔性ポリマー層は、20μm未満の厚さを有する。
【0037】
第3の態様に係る第4の態様では、第1の多孔性ポリマー層は、延伸ポリエチレン層である。
【0038】
前述の態様のいずれかに係る第5の態様では、第2の多孔質ポリマー層は、約50μm~約200μmの厚さを有するポリオレフィン層である。
【0039】
第5の態様に係る第6の態様では、ポリオレフィン層は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)層である。
【0040】
前述の態様のいずれかに係る第7の態様では、複合膜は、第1の多孔質ポリマー層と第2の多孔質ポリマー層との非積層複合材の流量の90%以上の流量を有する。
【0041】
前述の態様のいずれかに係る第8の態様では、複合膜は、第1の多孔質ポリマー層と第2の多孔質ポリマー層との非積層複合材のフロー時間の20%以下であるフロー時間が増加する。
【0042】
前述の態様のいずれかに係る第9の態様では、第1の多孔質ポリマー層は第1の泡立ち点を有し、第2の多孔質ポリマー層は第2の泡立ち点を有し、第1の泡立ち点は第2の泡立ち点よりも高く、複合膜は、第1の多孔質ポリマー層の第1の泡立ち点の90%以上である泡立ち点を有する。
【0043】
第10の態様では、複合膜は、第1の多孔質ポリマーを含み、約20μm未満の厚さを有する第1の領域と、第2の多孔質ポリマーを含み、約50μm~約200μmの厚さを有する第2の領域とを含み、第2の多孔質ポリマーは、第1の多孔質ポリマーと異なり、第1の領域と第2の領域との間に層間領域は存在しない。
【0044】
第10の態様に係る第11の態様では、第1の領域、第2の領域、又は第1の領域と第2の領域の両方は、多孔質圧縮領域を含む。
【0045】
第10又は第11の態様に係る第12の態様では、第1の多孔質ポリマーは、延伸ポリエチレンである。
【0046】
第10から第12の態様のいずれかに係る第13の態様では、第2の多孔質高分子は、ポリオレフィンである。
【0047】
第14の態様では、複合膜を形成する方法は、ラミネーターに第1の多孔質ポリマー層及び第2の多孔質ポリマー層を提供することと、ラミネーターにおいて、第1の多孔性ポリマー層と第2の多孔性ポリマー層とを積層温度まで加熱することと、加熱された第1の多孔質ポリマー層と加熱された第2のポリマー層とを接着剤なしで積層して、複合膜を形成することと、を含む。
【0048】
第14の態様に係る第15の態様は、積層中又は積層後に複合膜を圧縮することをさらに含む。
【0049】
第14又は第15の態様に係る第16の態様では、第1の多孔質ポリマー層は、20μm未満の厚さを有する超薄多孔質ポリマー層である。
【0050】
第16の態様に係る第17の態様では、超薄多孔質ポリマー層は、延伸ポリエチレン層である。
【0051】
第14から第17の態様に係る第18の態様では、第2の多孔質ポリマー層は、約50μm~約200μmの厚さを有するポリオレフィン層である。
【0052】
第18の態様に係る第19の態様では、ポリオレフィン層は、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)層である。
【0053】
第14から第19の態様のいずれかに係る第20の態様では、第1の多孔質ポリマー層は第1の溶融温度を有し、第1の多孔質ポリマー層は、第1の溶融温度を5℃と20℃との間下回る温度に加熱される。
【0054】
第14から第19の態様のいずれかに係る第21の態様では、第2の多孔質ポリマー層は第2の溶融温度を有し、第2の多孔質ポリマー層は、第2の溶融温度を5℃と20℃との間下回る温度に加熱される。
【0055】
第14から第19のいずれかの態様に係る第22の態様では、複合膜は、第1の多孔質ポリマー層と第2の多孔質ポリマー層との非積層複合材の流量の90%以上の流量を有する。
【0056】
第23の態様では、フィルタは、第1から第13の態様のいずれかの複合膜を含む。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-12-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の多孔質ポリマー層と、
第1の多孔質ポリマー層と共に積層された第2の多孔質ポリマー層と、
を含み、
接着剤を含まない複合膜。
【外国語明細書】