(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003301
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】洗浄液、半導体基板の洗浄方法、及び半導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241226BHJP
C11D 7/26 20060101ALI20241226BHJP
C11D 7/08 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D7/26
C11D7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047995
(22)【出願日】2024-03-25
(31)【優先権主張番号】63/509,930
(32)【優先日】2023-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 健司
(72)【発明者】
【氏名】飯岡 淳
【テーマコード(参考)】
4H003
5F157
【Fターム(参考)】
4H003DA05
4H003DA09
4H003EA08
4H003EB07
4H003ED02
4H003FA15
4H003FA28
5F157AA09
5F157AA48
5F157BC03
5F157BC07
5F157BD09
5F157BE12
5F157BE43
5F157BE60
5F157BF22
5F157BF32
5F157BF33
5F157BF34
5F157DB57
(57)【要約】
【課題】チタン系残渣を効率よく除去でき、かつ、防食性に優れる洗浄液、並びに、これを用いた半導体基板の洗浄方法、及び半導体の製造方法を提供すること。
【解決手段】酸解離定数pKaが5.0未満であり、2価以上のオキソ酸を含有し、pHの値が、前記酸解離定数よりも小さい、洗浄液、並びに、これを用いた半導体基板の洗浄方法、及び半導体の製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離定数pKaが5.0未満であり、2価以上のオキソ酸を含有し、
pHの値が、前記酸解離定数よりも小さい、洗浄液。
【請求項2】
pHが5.0以下である、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項3】
前記オキソ酸は、シュウ酸、マロン酸、H3PO4、及び硫酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項4】
前記オキソ酸の濃度が、0.005~20質量%である、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項5】
防食剤として、含窒素複素環含有化合物、メルカプト基含有化合物、脂肪族アミン化合物、双性イオン化合物、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を、さらに含有する、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項6】
溶剤として、水をさらに含有する、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項7】
溶剤として、アルコール系溶剤、グリコールエステル系溶剤、スルホキシド系溶剤、スルホン系溶剤、アミド系溶剤、ラクトン系溶剤、イミダゾリジノン系溶剤、ニトリル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ピロリドン系溶剤、及び尿素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含有する、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項8】
過酸化水素、フッ化水素、及びヒドロキシルアミンを含有しない、請求項1に記載の洗浄液。
【請求項9】
前記洗浄液は、半導体基板の洗浄液であり、
前記半導体基板は、基板と、前記基板上に形成された膜と、を含み、
前記膜は、チタン又はチタン系合金を含有する、
請求項1に記載の洗浄液。
【請求項10】
保護膜を有する半導体基板の洗浄方法であり、
前記保護膜に、請求項1に記載の洗浄液を接触させることにより、前記半導体基板上から不純物を除去する工程を含む、半導体基板の洗浄方法。
【請求項11】
保護膜を有する基板を準備する工程と、
前記保護膜をエッチングする工程と、
前記エッチング後に、請求項1に記載の洗浄液を基板に接触させることにより、前記基板上から不純物を除去する工程と、
を含む、半導体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液、半導体基板の洗浄方法、及び半導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
配線形成工程において、例えば、基板と、金属配線層と、シリコン系等の層間絶縁膜とがこの順に積層した層間絶縁膜の上に、ハードマスク層(HM層)を形成した後、このハードマスク層をエッチングして配線パターンの原型を形成する。マスク層の材料としては、例えば、チタンや、窒化チタン(TiN)や酸化チタン(TiOx(xは数を表す))等のチタン系合金が使用される。
【0003】
次に、エッチングされたHM層をマスク層として層間絶縁膜をドライエッチングして、金属配線等の配線パターン等を作製する。
【0004】
そして、ドライエッチング後の素子(例えば、基板/金属配線層/層間絶縁膜/HM層)には、HM層由来のチタン系残渣(チタン又はチタン系合金を含有する残渣)や、金属配線層由来の無機物含有残渣が付着している。
【0005】
ドライエッチング残渣は、従来、洗浄処理により除去されている。ドライエッチング残渣を除去する洗浄液としては、残渣除去剤として過酸化物を含有する洗浄液が用いられている(例えば、特許文献1参照)。その他にも、残渣除去剤としてヒドロキシルアミンを含有する洗浄液や、フッ化水素を含有する洗浄液等が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、過酸化水素水、フッ化水素、ヒドロキシルアミン等のような洗浄液として汎用されている成分について、詳しく検討した。その結果、これらを主な成分として含有する洗浄液は、意外にも、チタン系残渣(チタン又はチタン系合金を含有する残渣)の除去、及び、防食性を両立させることについて、改善の余地があることを見出した。
【0008】
さらに、洗浄液として使用されている上記以外の成分についても種々検討した結果、やはり、チタン系残渣の除去と防食性を両立させることについて、改善の余地があることを見出した。
【0009】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、チタン系残渣を効率よく除去でき、かつ、防食性に優れる洗浄液、並びに、これを用いた半導体基板の洗浄方法、及び半導体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、酸解離定数pKaが5.0未満であり、2価以上のオキソ酸を含有し、pHの値が、酸解離定数よりも小さい、洗浄液とすることに知見を得て、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0011】
〔1〕酸解離定数pKaが5.0未満であり、2価以上のオキソ酸を含有し、pHの値が、前記酸解離定数よりも小さい、洗浄液である。
〔2〕pHが5.0以下である、〔1〕に記載の洗浄液である。
〔3〕前記オキソ酸は、シュウ酸、マロン酸、H3PO4、及び硫酸からなる群より選択される少なくとも1種である、〔1〕に記載の洗浄液である。
〔4〕前記オキソ酸の濃度が、0.005~20質量%である、〔1〕に記載の洗浄液である。
〔5〕防食剤として、含窒素複素環含有化合物、メルカプト基含有化合物、脂肪族アミン化合物、双性イオン化合物、及び、それらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を、さらに含有する、〔1〕に記載の洗浄液である。
〔6〕溶剤として、水をさらに含有する、〔1〕に記載の洗浄液である。
〔7〕溶剤として、アルコール系溶剤、グリコールエステル系溶剤、スルホキシド系溶剤、スルホン系溶剤、アミド系溶剤、ラクトン系溶剤、イミダゾリジノン系溶剤、ニトリル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ピロリドン系溶剤、及び尿素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種をさらに含有する、〔1〕に記載の洗浄液である。
〔8〕過酸化水素、フッ化水素、及びヒドロキシルアミンを含有しない、〔1〕に記載の洗浄液である。
〔9〕前記洗浄液は、半導体基板の洗浄液であり、前記半導体基板は、基板と、前記基板上に形成された膜と、を含み、前記膜は、チタン又はチタン系合金を含有する、〔1〕に記載の洗浄液である。
〔10〕保護膜を有する半導体基板の洗浄方法であり、前記保護膜に、〔1〕に記載の洗浄液を接触させることにより、前記半導体基板上から不純物を除去する工程を含む、半導体基板の洗浄方法である。
〔11〕保護膜を有する基板を準備する工程と、前記保護膜をエッチングする工程と、前記エッチング後に、〔1〕に記載の洗浄液を基板に接触させることにより、前記基板上から不純物を除去する工程と、を含む、半導体の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、チタン系残渣を効率よく除去でき、かつ、防食性に優れる洗浄液、並びに、これを用いた半導体基板の洗浄方法、及び半導体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、洗浄対象とする、ドライエッチング後の素子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0015】
そして、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0016】
<洗浄液>
【0017】
本実施形態に係る洗浄液は、酸解離定数pKaが5.0未満であり、2価以上のオキソ酸を含有し、pHの値が、酸解離定数よりも小さい、洗浄液である。これらの条件を満たす洗浄液を用いることによって、チタン系残渣を効率よく除去でき、かつ、優れた防食性を奏することができる。なお、チタン系残渣とは、チタン又はチタン系合金を含有する残渣をいう。そして、チタン系合金とは、金属であるチタンに、その他の金属元素又は非金属元素が結合した態様をいう。詳細は後述するが、チタン系合金には、例えば、窒化チタン(TiN)、酸化チタン(TiOx(xは数を表す。))、チタンオキシナイトライド(TiON)、チタンオキシフルオライド(TiOF)等が例示される。
【0018】
本実施形態に係る洗浄液は、無機物を含むエッチング残渣を除去するための洗浄液として好適に用いることができる。その場合、半導体洗浄用洗浄液等として好適に用いることができる。
【0019】
ここでいう無機物としては、金属を含む化合物であり、例えば、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属塩化物、金属フッ化物等が挙げられる。なお、金属以外の無機物としては、ケイ素(Si)及びその酸化物等が挙げられる。すなわち、本実施形態に係る洗浄液は、このような無機物を含有するエッチング残渣を効率よく除去することができる。
【0020】
より詳しくは、本実施形態に係る洗浄液は、HM層及びその他の層に含有されているチタン系残渣(チタン又はチタン系合金を含有する残渣)を効率よく除去できる。それに加えて、本実施形態に係る洗浄液は、後述する金属、並びに、これらの金属酸化物、金属窒化物、金属塩化物、及び金属フッ化物からなる群より選択される1種を含む金属配線層由来の無機物含有残渣も、効率よく除去することが期待される。
【0021】
金属としては、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、マグネシウム(Mg)、コバルト(Co)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、ベリリウム(Be)、クロム(Cr)、ゲルマニウム(Ge)、バナジウム(V)、ガリウム(Ga)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、レニウム(Re)、及びタリウム(Tl)等の金属、並びに、これらの金属酸化物、金属窒化物、金属塩化物、及び金属フッ化物等からなる1種等が挙げられる。
【0022】
金属酸化物としては、上述した金属原子の金属酸化物が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、例えば、TiOx、TaOx、CuOx、CoOx、RuOx、AlOx、WOx、MoOx、AuOx、AgOx、FeOx、NiOx(特に断りがない限り、xは、数を表す。)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
金属窒化物としては、上述した金属原子の金属窒化物が挙げられる。金属窒化物の具体例としては、例えば、TiNx、TaNx、CuNx、CoNx、RuNx、AlNx、WNx、MoNx、AuNx、AgNx、FeNx、NiNx等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
金属塩化物としては、上述した金属原子の金属塩化物が挙げられる。金属塩化物の具体例としては、例えば、TiClx、TaClx、CuClx、CoClx、RuClx、AlClx、WClx、MoClx、AuClx、AgClx、FeClx、NiClx等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
金属フッ化物としては、上述した金属原子の金属フッ化物が挙げられる。金属フッ化物の具体例としては、例えば、TiFx、TaFx、CuFx、CoFx、RuFx、AlFx、WFx、MoFx、AuFx、AgFx、FeFx、NiFx等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本実施形態に係る洗浄液は、エッチング残渣の除去に好適であるが、とりわけ、ドライエッチング残渣の除去により好適である。通常、半導体の歩留まりの向上や電気特性の悪化を防止する観点から、ドライエッチング残渣は、次工程の前に除去する。例えば、本実施形態に係る洗浄液は、配線プロセスによりドライエッチングが行われた後の、半導体基板の洗浄用として好適なものである。
【0027】
例えば、本実施形態に係る洗浄液は、配線プロセスで付着するHM層由来のチタン又はチタン系合金を含有する残渣、及び金属配線層由来の無機物を含有するエッチング残渣を、好適に除去することができる。特に、ドライエッチング後の半導体基板に付着しているチタン系残渣は、ウェット耐性が高く、洗浄処理による除去が難しい残渣である。本実施形態に係る洗浄液は、かかる残渣も効率よく洗浄することができる。
【0028】
(オキソ酸)
【0029】
本実施形態に係る洗浄液が含有する「オキソ酸」とは、プロトンを供与できるヒドロキシ基(-OH)を有する化合物をいう。また、オキソ酸の価数とは、当該分子から供与(放出)できるプロトンの数をいう。本実施形態では、2価以上のオキソ酸を用いる。
【0030】
なお、本実施形態に係る洗浄液において、チタン系残渣を効率よく除去できる理由としては、定かではないが、以下のように推測される。洗浄液が含有するオキソ酸は、残渣に含まれるチタン原子と強い相互作用力を有することができるため、オキソ酸は、チタン原子を保持することができる。その結果、洗浄液は、チタン系残渣を効率よく除去できるのだと推測される(ただし、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
【0031】
オキソ酸の価数は、2価以上であればよい。オキソ酸の価数の上限は、特に限定されないが、好ましくは5価以下であり、より好ましくは4価以下であり、更に好ましくは3価以下である。これらの価数であることによって、チタン系残渣を一層効率よく除去できる。その理由としては、定かではないが、以下のように推測される。上述した特定のpKa値を有するオキソ酸が、上述した特定のpH値を有する洗浄液中で存在した場合に、オキソ酸が上述した価数をとることで、上述したチタン原子との相互作用力がより強くなると考えられる。その結果、オキソ酸は、より確実にチタン原子を保持することができ、洗浄液は、チタン系残渣を一層効率よく除去できるのだと推測される(ただし、本実施形態の作用はこれらに限定されない。)。
【0032】
オキソ酸の具体例としては、例えば、カルボン酸類、ホウ酸(H3BO3、B(OH)3)、炭酸(H2CO3)、オルト炭酸(H4CO4、C(OH)4CH4O4)、カルボン酸、ハロゲンオキソ酸類(次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸等)、ケイ酸、亜硝酸(HNO2)、硝酸、リン酸(H3PO4、H4P2O7、HPO3)、亜リン酸(H3PO3)、硫酸、亜硫酸、スルホン酸類、スルフィン酸類等が挙げられる。また、本実施形態に係る洗浄液は、これらオキソ酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、アンモニウム塩、テトラアルキルアンモニウム塩等)として、含有していてもよい。
【0033】
カルボン酸類は、少なくとも1つのカルボキシ基(-COOH)を有する酸である。カルボン酸の具体例としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等のモノカルボン酸類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸類;クエン酸等のトリカルボン酸類等が挙げられる。
【0034】
ハロゲンオキソ酸類としては、例えば、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸等が挙げられる。
【0035】
スルホン酸類は、少なくとも1つのスルホ基(-SO3H)を有する酸である。スルホン酸の具体例としては、例えば、メタンスルホン酸、トリフルオロスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0036】
上記のオキソ酸の中でも、好ましくはカルボン酸類、リン酸(H3PO4、H4P2O7、HPO3)、亜リン酸(H3PO3)、硫酸、亜硫酸、及び硝酸からなる群より選択される少なくとも1種であり;より好ましくはカルボン酸類、リン酸(H3PO4、H4P2O7、HPO3)、硫酸、及び硝酸からなる群より選択される少なくとも1種であり;更に好ましくは、オキソ酸は、シュウ酸、マロン酸、H3PO4、及び硫酸からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0037】
本実施形態に係る洗浄液は、上記したオキソ酸を1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
そして、オキソ酸の酸解離定数は、5.0未満であればよい。酸解離定数の上限は、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは3.0以下である。酸解離定数の下限は、特に限定されないが、好ましくは-5.0以上であり、より好ましくは-3.0以上である。
【0039】
なお、本実施形態における「酸解離定数」とは、物質の酸の強さを表す指標の1つであり、22℃の水中の酸解離定数(pKa)をいう。例えば、酸解離定数は、下記式(i)で表される解離並行反応の場合、その酸解離定数をKa=[H+][A-]/[HA]とし、pKa=-log10Kaの値を表す。また、2段階以上の多段階解離をする物質の場合は、1段目の解離(最初の解離)を考慮する。本実施形態のpKa値は、Archem社がインターネット上で運営している“Sparc Calculator”(archemcalc.com)
(参考URL:http://archemcalc.com/sparc-web/calc#/multiproperty)
によって求めることができる。
【0040】
【0041】
また、本実施形態において、2種以上のオキソ酸を併用する場合、各オキソ酸の酸解離定数にその含有比率(質量比)を乗じた加重平均値を採用する。例えば、オキソ酸A:オキソ酸B=3:1の含有比率で含有する洗浄液において、オキソ酸Aの酸解離定数が2.0でありオキソ酸Bの酸解解離定数が1.0である場合、
酸解離定数の加重平均値=2.0×(3/4)+1.0×(1/4)=1.75
となる。
【0042】
下記の表1に、一例として、Archem社がウェブ上で運営している“Sparc Calculator”(archemcalc.com)に基づき算出したオキソ酸の酸解離定数を示す(本実施形態で使用可能なオキソ酸は、下記に限定されるものではない。)。
【0043】
【0044】
本実施形態に係る洗浄液のpH値は、酸解離定数よりも小さい。pH値の上限は、特に限定されないが、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは5.0未満であり、更に好ましくは4.9未満である。また、pH値の下限は、特に限定されないが、好ましくは-5以上であり、より好ましくは-3以上であり、更に好ましくは-1以上であり、より更に好ましくは0より大きい値である。
【0045】
なお、本実施形態における洗浄液のpH値とは、洗浄液の常圧(1気圧)、22℃における値をいう。pH値は、例えば、後述する実施例に記載の方法によって測定することができる。
【0046】
本実施形態に係る洗浄液におけるオキソ酸の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.005~20質量%である。オキソ酸の濃度の上限は、より好ましくは18質量%以下であり、更に好ましくは15質量%以下である。また、オキソ酸の濃度の下限は、より好ましくは0.01質量%以上であり、更に好ましくは0.1質量%以上である。オキソ酸の含有量が上記の下限値以上であると、洗浄処理において、ドライエッチング残渣の除去性をより一層高められる。一方、オキソ酸の含有量が上記の上限値以下であると、金属配線等へのダメージをより一層抑制できる。
【0047】
なお、本実施形態に係る洗浄液は、過酸化水素を含有しないことが好ましい。そして、本実施形態に係る洗浄液は、フッ化水素を含有しないことが好ましい。その他にも、本実施形態に係る洗浄液は、ヒドロキシルアミンを含有しないことが好ましい。このような観点から、本実施形態に係る洗浄液は、過酸化水素、フッ化水素、及びヒドロキシルアミンを含有しないことが、より好ましい。
【0048】
上述した観点から、本実施形態に係る洗浄液は、フッ化水素酸(フッ化水素の水溶液)、過酸化水素水(過酸化水素の水溶液)等を含有しないことが好ましい。
【0049】
本実施形態に係る洗浄液は、オキソ酸以外の任意の成分を含有しなくても、所定の効果を得ることが十分に期待できる。よって、本実施形態に係る洗浄液は、必要に応じて、オキソ酸以外の任意の成分を含有してもよいし、含有しなくてもよい。例えば、防食剤を更に含有することが好ましい。なお、防食剤以外については、pH調整剤、界面活性剤、溶剤等を、更に含有してもよいが、これらは含有しなくても十分な効果が期待できるので、含有しなくてもよい。また、本実施形態に係る洗浄液は、その作用及び効果が得られる範囲であれば、後述する金属不純物が含有されていてもよい。
【0050】
(防食剤)
【0051】
防食剤の具体例としては、特に限定されないが、含窒素複素環含有化合物、メルカプト基含有化合物、脂肪族アミン化合物、双性イオン化合物、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。本実施形態に係る洗浄液は、かかる群より選択される1種を含むことが好ましい。
【0052】
含窒素複素環含有化合物の具体例としては、例えば、イミダゾール環含有化合物、トリアゾール環含有化合物、ピリジン環含有化合物、ピリミジン環含有化合物、フェナントロリン環含有化合物、テトラゾール環含有化合物、ピラゾール環含有化合物、プリン環含有化合物等が挙げられる。これらの中でも、テトラゾール環含有化合物が好ましい。テトラゾール環含有化合物を用いることで、例えば、コバルトや銅等の金属成分を主成分として含む層(例えば、金属配線層20、エッチング停止層30、層間絶縁膜40、あるいはその他の機能層等)の防食性を一層向上させることができる。すなわち、本実施形態に係る洗浄液を用いた場合、コバルト、銅等を含む層に与えるダメージ(膜減り量)を一層効果的に低減することができる。
【0053】
イミダゾール環含有化合物の具体例としては、1-デシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、2-プロピルイミダゾール、2-ブチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-アミノイミダゾール、2,2´-ビイミダゾール等が挙げられる。
【0054】
トリアゾール環含有化合物の具体例としては、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1,2,3-トリアゾール、3-アミノ-1H-1,2,4-トリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、1-ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール、2,3-ジカルボキシプロピルベンゾトリアゾール、4-ヒドロキシベンゾトリアゾール、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾール、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾールメチルエステル、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾールブチルエステル、4-カルボキシル-1H-ベンゾトリアゾールオクチルエステル、5-ヘキシルベンゾトリアゾール、[1,2,3-ベンゾトリアゾリル-1-メチル][1,2,4-トリアゾリル-1-メチル][2-エチルヘキシル]アミン、トリルトリアゾール、ナフトトリアゾール、ビス[(1-ベンゾトリアゾリル)メチル]ホスホン酸、3-アミノトリアゾール等が挙げられる。
【0055】
ピリジン環含有化合物の具体例としては、1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、1,2,4-トリアゾロ[4,3-a]ピリジン-3(2H)-オン、3H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン-3-オール、1-アセチル-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジン、3-アミノピリジン、4-アミノピリジン、3-ヒドロキシピリジン、4-ヒドロキシピリジン、2-アセトアミドピリジン、4-ピロリジノピリジン、2-シアノピリジン、2,2´-ビピリジル、4,4´-ジメチル-2,2´-ビピリジル、4,4´-ジ-tert-ブチル-2,2´-ビピリジル、4,4-ジノニル-2,2-ビピリジル等が挙げられる。
【0056】
ピリミジン環含有化合物の具体例としては、ピリミジン、1,2,4-トリアゾロ[1,5-a]ピリミジン、1,3,4,6,7,8-ヘキサハイドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン、1,3-ジフェニル-ピリミジン-2,4,6-トリオン、1,4,5,6-テトラハイドロピリミジン、2,4,5,6-テトラアミノピリミジンサルフェイト、2,4,5-トリハイドロキシピリミジン、2,4,6-トリアミノピリミジン、2,4,6-トリクロロピリミジン、2,4,6-トリメトキシピリミジン、2,4,6-トリフェニルピリミジン、2,4-ジアミノ-6-ヒドロキシルピリミジン、2,4-ジアミノピリミジン、2-アセトアミドピリミジン、2-アミノピリミジン、2-メチル-5,7-ジフェニル-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、2-メチルサルファニル-5,7-ジフェニル-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、2-メチルサルファニル-5,7-ジフェニル-4,7-ジヒドロ-(1,2,4)トリアゾロ(1,5-a)ピリミジン、4-アミノピラゾロ[3,4-d]ピリミジン等が挙げられる。
【0057】
フェナントロリン環含有化合物の具体例としては、1,10-フェナントロリン等が挙げられる。
【0058】
テトラゾール環含有化合物の具体例としては、1H-テトラゾール、5-アミノ-1H-テトラゾール、5-メチル-1H-テトラゾール、5-フェニル-1H-テトラゾール、1-(2-ジアミノエチル)-5-メルカプトテトラゾール等が挙げられる。
【0059】
ピラゾール環含有化合物の具体例としては、3,5-ジメチルピラゾール、3-アミノ-5-メチルピラゾール、4-メチルピラゾール、3-アミノ-5-ヒドロキシピラゾール等が挙げられる。
【0060】
プリン環含有化合物の具体例としては、プリン等が挙げられる。
【0061】
メルカプト基含有化合物の具体例としては、例えば、1-チオグリセロール、3-(2-アミノフェニルチオ)-2-ヒドロキシプロピルメルカプタン、3-(2-ヒドロキシエチルチオ)-2-ヒドロキシプロピルメルカプタン、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸等が挙げられる。
【0062】
脂肪族アミン化合物の具体例としては、例えば、アルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン等が挙げられる。
【0063】
双性イオン化合物の具体例としては、例えば、3級アミンや4級アミン等のカチオン部位と、スルホン酸基やカルボキシル基等のアニオン部位とを含む化合物が挙げられる。例えば、R3N+-CHR´-SO3
-等(Rは1価の炭化水素基を表し、R´は2価の炭化水素基を表す。)で表される双性イオン化合物や、R3N+-CHR´-COO-(Rは1価の炭化水素基を表し、R´は2価の炭化水素基を表す。等で表される双性イオン化合物等が挙げられる。また、例えば、双性イオン化合物として、カルボベタインやスルホベタイン等を使用することができる。
【0064】
また、防食剤は、上述した化合物の塩であってもよい、塩の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩等)等が挙げられる。また、上記の化合物の水和物であってもよい。
【0065】
また、別の観点からの好適例として(a)5員環含有化合物、(b)6員環含有化合物、(c)縮合環含有化合物、(d)アルキルアンモニウム塩、(e)複素環含有アルキルアンモニウム塩、及び(f)双性イオン化合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。本実施形態に係る洗浄液は、かかる群より選択される1種を含むことが好ましい。
【0066】
(a)5員環含有化合物としては、含窒素5員環含有化合物が好ましい。5員環含有化合物の具体例としては、以下の構造を有する化合物(化合物(a1)~化合物(a8))が好ましい。
【0067】
【0068】
(b)6員環含有化合物としては、含窒素6員環含有化合物が好ましい。6員環含有化合物の具体例としては、以下の構造を有する化合物(化合物(b1)~化合物(b6))が好ましい。
【0069】
【0070】
(c)縮合環含有化合物としては、含窒素縮合環含有化合物が好ましい。縮合環含有化合物の具体例としては、以下の構造を有する化合物(化合物(c1)~化合物(c5))が好ましい。
【0071】
【0072】
(d)アルキルアンモニウム塩としては、以下の構造を有する化合物(化合物(d1)~化合物(d6))が好ましい。なお、下記のアルキルアンモニウム塩は、複素環非含有のアルキルアンモニウム塩である。
【0073】
【0074】
(e)複素環含有アルキルアンモニウム塩としては、以下の構造を有する化合物(化合物(e1)~化合物(e3))が好ましい。
【0075】
【0076】
(f)双性イオン化合物としては、以下の構造を有する化合物(化合物(f1)~化合物(f3))が好ましい。
【0077】
【0078】
また、防食剤は、上述した化合物の塩であってもよい、塩の具体例としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩等)等が挙げられる。また、上記の化合物の水和物であってもよい。
【0079】
本実施形態に係る洗浄液における防食剤の濃度は、好ましくは0.0001~10質量%である。防食剤の濃度の上限は、より好ましくは5質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下である。また、防食剤の濃度の下限は、より好ましくは0.001質量%以上であり、更に好ましくは0.01質量%以上である。
【0080】
(緩衝剤)
【0081】
本実施形態に係る洗浄液は、緩衝剤を含有してもよい。緩衝剤は、洗浄液のpHの変化を抑制する作用を有する化合物である。緩衝剤を含有することによって、洗浄液のpHの値が酸解離定数よりも小さくなるよう、効率よく制御することができる。また、緩衝剤を含有することによって、洗浄液のpHが所定の数値となるよう、効率よく制御することができる。緩衝剤は、pH緩衝能を有する化合物であれば、特に限定されない。
【0082】
緩衝剤としては、例えば、グッド緩衝剤が挙げられる。グッド緩衝剤としては、2-シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)、3-シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸(CAPS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸(CABS)、トリシン、ビシン、2-モルホリノエタンスルホン酸一水和物(MES)、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)、N-(2-アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、2-ヒドロキシ-3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPSO)、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、3-モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、4-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-1-(2-ヒドロキシプロパン-3-スルホン酸)(HEPSO)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンプロパンスルホン酸(EPPS)等が挙げられる。
【0083】
緩衝剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。あるいは、本実施形態に係る洗浄液は、緩衝剤を含有しなくてもよい。
【0084】
(界面活性剤)
【0085】
本実施形態に係る洗浄液は、基板に対する洗浄液の濡れ性を調整する目的等のために、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0086】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤等が挙げられる。
【0087】
アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸、脂肪酸アミドスルホン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸、ポリオキシエチレンアルキルエーテルプロピオン酸、アルキルホスホン酸、脂肪酸の塩等が挙げられる。なお、これらの塩としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩(例えば、テトラメチルアンモニウム塩等)等が挙げられる。
【0088】
カチオン界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジウム系界面活性剤、第4級アンモニウム塩系界面活性剤等が挙げられる。
【0089】
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型界面活性剤、アミノ酸型界面活性剤、イミダゾリン型界面活性剤、アミンオキサイド型界面活性剤等が挙げられる。
【0090】
これらの界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0091】
本実施形態に係る洗浄液が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、洗浄液の全質量に対し、好ましくは0.0001質量%~5質量%である。含有量の下限は、より好ましくは0.0002質量%以上であり、更に好ましくは0.002質量%以上である。また、含有量の上限は、より好ましくは3質量%以下であり、更に好ましくは1質量%以下であり、より更に好ましくは0.2質量%以下である。
【0092】
本実施形態に係る洗浄液は、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択される1種以上を含有しなくてもよく、これらの界面活性剤として例示した上記化合物の1種以上を含有しなくてもよい。本実施形態に係る洗浄液は、界面活性剤を含有しなくてもよい。
【0093】
(pH調整剤)
【0094】
本実施形態に係る洗浄液は、所望のpHに調整するため、pH調整剤を含有してもよい。pH調整剤としては、無機酸、有機酸、有機塩基性化合物、無機塩基性化合物を適宜用いることができる。
【0095】
(不純物等)
【0096】
本実施形態に係る洗浄液には、例えば、Fe原子、Cr原子、Ni原子、Zn原子、Ca原子、及びPb原子等からなる群より選択される少なくとも1種の金属原子を含む金属不純物が含まれていてもよい。
【0097】
本実施形態に係る洗浄液における金属原子の合計含有量は、洗浄液の全質量に対し、好ましくは100質量ppt以下である。金属原子の合計含有量の下限値は、低いほど好ましいが、例えば、0.001質量ppt以上が挙げられる。金属原子の合計含有量は、例えば、0.001質量ppt~100質量pptが挙げられる。金属原子の合計含有量を上記した好ましい上限値以下とすることで、洗浄液の欠陥抑制性や残渣抑制性が向上すると考えられる。金属原子の合計含有量を上記した好ましい下限値以上とすることで、金属原子が系中に遊離して存在しにくくなり、洗浄対象物全体の製造歩留まりに悪影響を与えにくくなると考えられる。
【0098】
金属不純物の含有量は、例えば、フィルタリング等の精製処理により調整することができる。フィルタリング等の精製処理は、洗浄液を調製する前に、原料の一部又は全部に対して行ってもよく、洗浄液の調製後に行ってもよい。
【0099】
本実施形態に係る洗浄液には、例えば、有機物由来の不純物(有機不純物)が含まれていてもよい。本実施形態に係る洗浄液における上記した有機不純物の合計含有量は、好ましくは、5000質量ppm以下である。有機不純物の含有量の下限は、低いほど好ましいが、例えば、0.1質量ppm以上が挙げられる。有機不純物の合計含有量としては、例えば、0.1質量ppm~5000質量ppmが挙げられる。
【0100】
本実施形態に係る洗浄液には、例えば、光散乱式液中粒子計数器によって計数されるようなサイズの被計数体が含まれていてもよい。被計数体のサイズは、例えば、0.04μm以上である。本実施形態に係る洗浄液における被計数体の数は、例えば、洗浄液1mLあたり1,000個以下であり、下限値は例えば1個以上である。洗浄液中の被計数体の数が上述した範囲内であることにより、洗浄液による金属腐食抑制効果が向上すると考えられる。
【0101】
上記した有機不純物及び/又は被計数体は、洗浄液に添加されてもよく、洗浄液の製造工程において不可避的に洗浄液に混入されるものであってもよい。洗浄液の製造工程において不可避的に混入される場合としては、例えば、有機不純物が、洗浄液の製造に用いる原料(例えば、有機溶剤)に含まれる場合、及び、洗浄液の製造工程で外部環境から混入する場合(例えば、コンタミネーション)等が挙げられるが、上記に制限されない。
【0102】
被計数体を洗浄液に添加する場合、洗浄対象物の表面粗さ等を考慮して特定のサイズごとに存在比を調整してもよい。
【0103】
(溶剤)
【0104】
本実施形態に係る洗浄液は、溶剤を含有してもよい。例えば、溶剤として、水を含有することが好ましい。本実施形態に係る洗浄液は、水系洗浄液として好適に使用できる。
【0105】
本実施形態に係る洗浄液における水の含有量は、特に限定されないが、1~99質量%であることが好ましい。含有量の下限は、水系洗浄液として水溶性を付与しつつ残渣除去性及び防食性を高いレベルで維持できるという観点から、より好ましくは25質量%以上であり、更に好ましくは35質量%以上であり、より更に好ましくは45質量%以上であり、より更に好ましくは50質量%以上であり、より更に好ましくは55質量%以上であり、より更に好ましくは60質量%以上であり、より更に好ましくは80質量%以上であり、より更に好ましくは90質量%以上である。また、含有量の上限は、水系洗浄液として水溶性を付与しつつ残渣除去性及び防食性を高いレベルで維持できるという観点から、より好ましくは98質量%以下であり、更に好ましくは97質量%以下である。水の含有量が上述した範囲内であることによって、他の成分を均一かつ安定に溶解させることができる。
【0106】
また、本実施形態に係る洗浄液は、有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤の具体例としては、特に限定されないが、アルコール系溶剤、グリコールエステル系溶剤、スルホキシド系溶剤、スルホン系溶剤、アミド系溶剤、ラクトン系溶剤、イミダゾリジノン系溶剤、ニトリル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ピロリドン系溶剤、及び尿素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。さらには、本実施形態に係る洗浄液は、有機溶剤として、アルコール系溶剤、グリコールエステル系溶剤、スルホキシド系溶剤、スルホン系溶剤、アミド系溶剤、ラクトン系溶剤、イミダゾリジノン系溶剤、ニトリル系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ピロリドン系溶剤、及び尿素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種のみを含み、これら以外の溶剤を含有しないことがより好ましい。また、本実施形態に係る洗浄液が有機溶剤を含有する場合、洗浄液の水溶性という観点からは、水溶性有機溶剤を使用することが好ましい。
【0107】
アルコール系溶剤の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、変性エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール等の脂肪族アルコール類;エチレングリコール(別名:1,2-エタンジオール、モノエチレングリコール)、ジエチレングリコール(別名:2,2´-オキシジエタノール、ジエチルグリコール)、プロピレングリコール(別名:プロパン-1,2-ジオール)、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、フルフリルアルコール、ヘキシレングリコール(別名:2-メチル-2,4-ペンタンジオール)等のグリコール類等が挙げられる。
【0108】
グリコールエステル系溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジヘキシルエーテル、エチレングリコール-フェニルエーテル等のエチレン系グリコールエーテル;エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレン系グリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル等のプロピレン系グリコールエーテル;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のプロピレン系グリコールエーテルアセテート類等が挙げられる。
【0109】
スルホキシド系溶剤の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジフェニルスルホキシド、チオフェン等が挙げられる。
【0110】
スルホン系溶剤の具体例としては、例えば、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、テトラメチレンスルホン、ジプロピルスルホン、スルホラン(別名:テトラメチレンスルホン)、3-メチルスルホラン、2,4-ジメチルスルホラン、3,4-ジメチルスルホラン、ジフェニルスルホラン、3,4-ジフェニルメチルスルホラン、スルホレン、3-メチルスルホレン、3-エチルスルホレン等が挙げられる。
【0111】
アミド系溶剤の具体例としては、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N-メチルピロリジン(MPD)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)等が挙げられる。
【0112】
ラクトン系溶剤の具体例としては、例えば、γ-ブチルラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、β-プロピオラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-ラウロラクトン、ヘキサノラクトン等が挙げられる。
【0113】
イミダゾリジノン系溶剤の具体例としては、例えば、2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジプロピル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジイソプロピル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。
【0114】
ニトリル系溶剤の具体例としては、例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル等が挙げられる。
【0115】
ケトン系溶剤の具体例としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、4-ヘプタノン、2-ヘプタノン(メチルアミルケトン)、1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、フェニルアセトン、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、メチルシクロヘキサノン、イオノン、イソホロン、プロピレンカーボネート(炭酸プロピレン)、ジアセトニルアルコール、アセチルカルビノール等が挙げられる。
【0116】
エーテル系溶剤の具体例としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、メチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0117】
エステル系溶剤の具体例としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、乳酸メチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、酢酸2-メトキシブチル(2-メトキシブチルアセテート)、酢酸3-メトキシブチル(3-メトキシブチルアセテート)、酢酸4-メトキシブチル(4-メトキシブチルアセテート)、酢酸3-メトキシ-3-メチルブチル(3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート)、酢酸3-エチル-3-メトキシブチル(3-エチル-3-メトキシブチルアセテート)、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、乳酸エチル(EL)、乳酸プロピル、乳酸ブチル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート等が挙げられる。
【0118】
ピロリドン系溶剤の具体例としては、例えば、N-メチルピロリドン(NMP)、2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0119】
尿素系溶剤の具体例としては、例えば、1,3-ジメチル尿素、1,3-ジエチル尿素、1,3-ジプロピル尿素、1,3-ジイソプロピル尿素、テトラメチル尿素、テトラエチル尿素、テトラプロピル尿素、テトライソプロピル尿素、N,N-ジメチルプロピレン尿素等が挙げられる。
【0120】
上記の中でも、有機溶剤としては、水溶性有機溶剤であることが好ましい。上記の具体例の中で、水溶性有機溶剤の好適例としては、例えば、イソプロパノール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、フルフリルアルコール、ヘキシレングリコール(別名:2-メチル-2,4-ペンタンジオール)等のアルコール類;ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエステル系溶剤;ジメチルスルホキシド;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;N-メチルモルホリンN-オキシド等のモルフォリン類;等が挙げられる。これらの中でも、より好ましくは、ヘキシレングリコール(別名:2-メチル-2,4-ペンタンジオール)等が挙げられる。
【0121】
このような好適な溶剤を用いることで、例えば、コバルト、銅、タングステン、ルテニウム、アルミニウム、モリブデン等の金属成分を主成分として含む層(例えば、金属配線層20、エッチング停止層30、層間絶縁膜40、あるいはその他の機能層等)の防食性を一層向上させることができる。すなわち、このような溶剤を用いた場合、チタン系残渣の除去性を損なうことなく、コバルト等を含む層に与えるダメージ(膜減り量)を一層効果的に低減することができる。
【0122】
有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0123】
また、本実施形態に係る洗浄液は、ハロゲン系溶剤を使用しなくても所望の効果が得られることが期待される。すなわち、本実施形態に係る洗浄液は、環境に優しいハロゲンフリーな洗浄液として使用することが可能である。そのような観点から、本実施形態に係る洗浄液の好適例としては、ハロゲン原子を実質的に含有しないもの、さらには、含有しないものが挙げられる。特に、フッ化物等のフッ素原子を実質的に含有しない場合は、SiNやSiO2、ILD、層間絶縁膜等のケイ素化合物を用いた材料へのダメージを、より効果的に抑制できることも期待できる。なお、「実質的に含有しない」とは、当該性成分を不可避的に不純物として配合してしまう場合を排除しないことを意味する。例えば、洗浄液における当該成分の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下、一層更に好ましくは0質量%である。
【0124】
本実施形態に係る洗浄液は、有機溶剤を含有しなくても十分な効果が得られることが期待できるが、有機溶剤を含有しても十分な効果を得ることが期待できる。すなわち、本実施形態に係る洗浄液は、有機溶剤を含有していてもよい。そのような観点から、本実施形態における有機溶剤の含有量は、0~95質量%とすることができる。そして、洗浄液の含有量の下限は、0質量%であってもよいし、洗浄液の成分等に応じて、例えば、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上にしてもよい。また、洗浄液の含有量の上限は、例えば、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下にしてもよい。
【0125】
本実施形態に係る洗浄液が水と有機溶剤とを含有する場合であれば、有機溶剤の含有比率は、水の量と有機溶剤の量との合計に対して0.05~50質量%であることが好ましい。この含有比率の下限は、例えば、0.1質量%以上としてもよい。また、この含有比率の上限は、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることがより更に好ましい。水と有機溶剤とを含有する場合、上記の含有比率とすることで、溶剤として水溶性の混合溶剤とすることができるため、洗浄液により高い水溶性を付与することができる点で好ましい。
【0126】
本実施形態に係る洗浄液は、有機溶剤を含有しなくてもよいが、有機溶剤は、水と併用しても、十分な効果を得ることができる。有機溶剤と水を併用する場合の組み合わせとしては、水系洗浄液としての水溶性を付与できるという観点から、好ましくはアルコールと水の組み合わせであり、より好ましくはグリコール類と水の組み合わせであり、更に好ましくはヘキシレングリコールと水の組み合わせである。
【0127】
本実施形態に係る洗浄液は、種々の用途に使用することができるが、その中でも、本実施形態による効果及び利点を有効に利用できるという観点から、チタン又はチタン系合金を含有する膜が形成された半導体基板の洗浄に好適である。より具体的には、本実施形態の好適な一例は、半導体基板の洗浄液であり、かかる半導体基板は、基板と、基板上に形成された膜と、を含み、膜は、チタン又はチタン系合金を含有するものである。
【0128】
ここで、本実施形態に係る洗浄液を使用可能な、半導体基板の一例を説明する。
【0129】
図1は、洗浄対象とする、ドライエッチング後の素子(半導体基板)の一例を示す断面図である。
【0130】
図1に示す半導体素子100は、基板10と、金属配線層20と、エッチング停止層30と、層間絶縁膜40とがこの順に積層され、層間絶縁膜40上にハードマスク層(HM層)50が形成されている(基板10/金属配線層20/エッチング停止層30/層間絶縁膜40/HM層50)。
【0131】
この半導体素子100は、配線プロセスによりドライエッチングが行われた後のもの、すなわち、ドライエッチングにより配線パターンの原型が形成されたHM層50をマスクとして、層間絶縁膜40のドライエッチングが行われた後の状態のものである。HM層50及び層間絶縁膜40の側面には、ドライエッチング残渣60が付着している。なお、ここでは、ドライエッチングによってエッチングする場合を一例として説明しているが、例えば、ウェットエッチングによってエッチングする場合は、生じる残渣は、ウェットエッチング残渣になる。
【0132】
配線パターン形状の層間絶縁膜40間のスペース部には、金属配線層20が露出し、ドライエッチング残渣60も付着している。
【0133】
基板10としては、例えば、シリコン、非晶質シリコン、ガラス等の材料の基板を使用することができる。
【0134】
金属配線層20としては、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、銅(Cu)、鉄(Fe)、金(Au)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、マグネシウム(Mg)、コバルト(Co)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、アンチモン(Sb)、マンガン(Mn)、ベリリウム(Be)、クロム(Cr)、ゲルマニウム(Ge)、バナジウム(V)、ガリウム(Ga)、ハフニウム(Hf)、インジウム(In)、ニオブ(Nb)、レニウム(Re)、及びタリウム(Tl)等の金属、並びに、これらの金属酸化物、金属窒化物、金属塩化物、及び金属フッ化物等からなる1種を含有する配線層である。
【0135】
なお、金属配線層20は、配線に限らず、電極、絶縁層、低誘電体層、各種導体層といった機能層として機能するものを広く包含する。上述した各種金属、並びに、その金属酸化物、金属窒化物、金属塩化物、及び金属フッ化物等を用いることによって形成される層を包含する。例えば、シリコン系であれば、SiN、SiO2、Low-k膜(SiOC膜やSiCOH膜等)、ILD等といったものが例示される。
【0136】
層間絶縁膜40の材料は、絶縁性を有する材料であればよく、その材料は特に限定されず、製造条件等を考慮して適宜好適な材料を選択することができる。層間絶縁膜40としては、例えば、SiO2、SiN、SiOC、SiOCN等のシリコン系材料を含有する層を使用することができる。
【0137】
HM層50の材料は、エッチングに対する保護膜として機能する材料であればよく、その材料は特に限定されず、製造条件等を考慮して適宜好適な材料を選択することができる。HM層50としては、例えば、チタン及びチタン系合金を含有する層を好適に使用することができる。本実施形態に係る洗浄液は、少なくともチタン系残渣の除去性に優れるため、このような材料を使用するHM層から発生する残渣(ドライエッチング残渣60参照)を、効率よく除去できる。なお、チタン系合金としては、上述したように、窒化チタン(TiN)、酸化チタン(TiOx(xは数を表す。))、チタンオキシナイトライド(TiON)、チタンオキシフルオライド(TiOF)等のチタン系材料を使用することができる。
【0138】
ドライエッチング残渣60は、主に、HM層50由来のチタン系材料を含むTi含有残渣であるが、このような残渣に限定されない。ドライエッチング残渣60には、例えば、上述した無機物を含むエッチング残渣等が包含される。
【0139】
<洗浄方法>
【0140】
本実施形態に係る洗浄液は、半導体基板の洗浄方法として好適に使用できる。本実施形態に係る洗浄方法は、保護膜を有する半導体基板の洗浄方法であり、保護膜に、上記の洗浄液を接触させることにより、半導体基板上から不純物を除去する工程を含む、半導体基板の洗浄方法である。保護膜は、例えば、
図1に示す半導体素子100(半導体基板)の場合であれば、HM層50が該当する。以下、
図1に示す半導体素子100を洗浄する場合を一例として、説明する。
【0141】
本実施形態に係る洗浄方法は、上述した洗浄液を用いて、配線プロセスによりドライエッチングが行われた後の半導体素子100を洗浄する工程である。洗浄の方法は、特に限定されず、公知の洗浄方法を用いることができる。
【0142】
洗浄対象である半導体素子100に洗浄液を接触させる際、洗浄液を2~2000倍に希釈して希釈液を得た後、この希釈液を用いて洗浄する操作を実施してもよい。
【0143】
洗浄する操作としては、例えば、一定速度で回転している半導体素子100上に洗浄液を塗出し続ける方法(回転塗布法)、洗浄液中に半導体素子100を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、半導体素子100表面に洗浄液を噴霧する方法(スプレー法)等が挙げられる。
【0144】
洗浄処理を行う温度は、特に限定されないが、10~80℃の条件下で行うことが好ましい。洗浄処理温度(洗浄液の温度)の下限は、20℃以上であることがより好ましく、40℃以上であることが更に好ましい。また、洗浄処理温度(洗浄液の温度)の上限は、75℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることが更に好ましい。洗浄処理温度の下限を上述した範囲内にすることで、エッチング残渣の除去性を一層向上させることができる。また、洗浄処理温度の上限を上述した範囲内にすることで、洗浄液の意図しない組成変化を一層効果的に抑えることができ、作業性、安全性、及びコスト等の観点からも一層効率よく洗浄することができる。
【0145】
洗浄時間は、半導体素子100の表面に付着したエッチング残渣、不純物等の除去に十分な時間を適宜選択することができる。洗浄時間としては、例えば、10秒~30分間であることが好ましい。洗浄時間の下限は、20秒以上であることがより好ましく、30秒以上であることが更に好ましい。また、洗浄時間の上限は、15分間以下であることがより好ましく、10分間以下であることが更に好ましく、5分間以下であることがより更に好ましい。
【0146】
本実施形態に係る洗浄液を用いて洗浄するため、ドライエッチング残渣60が付いた半導体素子100において、金属配線層20に対するダメージを抑えつつ、保護膜であるHM層50由来のドライエッチング残渣60を良好に洗浄除去することができる。特に、チタン及び/又はチタン合金を含有するHM層である場合、本実施形態に係る洗浄液はチタン系残渣の除去性が優れるため、特に好適である。
【0147】
加えて、本実施形態に係る洗浄液を用いることによって、保護膜以外の各種機能層(金属配線層20、エッチング停止層30、層間絶縁膜40等)に対するダメージも抑えられる。
【0148】
さらに、本実施形態に係る洗浄液は、従来汎用のヒドロキシルアミン等を使用せずとも、実用可能な程度の洗浄効果を得ることができるため、より安全に半導体素子等の製造を実施することができるといった利点も期待し得る。
【0149】
<半導体の製造方法>
【0150】
本実施形態に係る洗浄液及びこれを用いた洗浄方法は、半導体の製造方法として好適に使用できる。本実施形態に係る半導体の製造方法は、例えば、(1)保護膜を有する基板を準備する工程と、(2)保護膜をエッチングする工程と、(3)エッチング後に、上記の洗浄液を基板に接触させることにより、基板上から不純物を除去する工程と、を含む、半導体の製造方法である。洗浄方法の説明と同様に、保護膜は、例えば、
図1に示す半導体素子100(半導体基板)の場合であれば、HM層50が該当する。以下、
図1に示す半導体素子100を洗浄する場合を一例として、説明する。
【0151】
(1)保護膜を有する基板を準備する工程
【0152】
工程(1)では、少なくとも保護膜を有する基板を準備する。図示はしないが、
図1の場合であれば、エッチング前の、基板10、金属配線層20、エッチング停止層30、層間絶縁膜40、及び保護膜に相当するハードマスク層(HM層)50をこの順に有する積層体(基板10/金属配線層20/エッチング停止層30/層間絶縁膜40/HM層50)を準備する。
【0153】
基板10の上に、基板10、金属配線層20、エッチング停止層30、層間絶縁膜40、及び保護膜に相当するハードマスク層(HM層)50を、順次積層する方法は、特に限定されず、公知の方法を採用することができる。
【0154】
(2)保護膜をエッチングする工程
【0155】
続いて、保護膜をエッチングする。エッチングする方法は、特に限定されず、ウェットエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよいが、ドライエッチングであることが好ましい。ドライエッチングの場合、ナノレベルでの金属配線が可能であり、使用するガスの制御も可能であるといった観点から、有利である。また、ドライエッチングの場合、基板等へのダメージが比較的大きいといった点が懸念されるが、本実施形態に係る洗浄液を用いることによってこのようなダメージを効果的に抑制できるといった観点から、本実施形態の利点をより効果的に反映させることができるという点でも望ましい。
【0156】
ドライエッチングの場合、プラズマを使用することができる。通常、プラズマエッチングを行う場合、基板がダメージを受けやすいといった問題や、プラズマエッチング残渣が発生するためこれを洗浄液で洗浄する必要があるといった問題が考えられるが、本実施形態に係る洗浄液を用いれば、このような問題を効果的に抑制できるといった点でも好ましい。
【0157】
(3)エッチング後に、上記の洗浄液を基板に接触させることにより、基板上から不純物を除去する工程
(3)工程としては、上述した洗浄方法を用いることができる。これによって、半導体素子100を得ることができる。また、必要に応じて、洗浄後に公知の後処理を行うこともできる。
【0158】
以上説明したとおり、本実施形態に係る洗浄液は、例えば、半導体のエッチング工程等で発生した残渣を除去するための洗浄液として使用することができ、特に、ドライエッチングによって発生した残渣の除去に好適である。本実施形態に係る洗浄液は、チタン系残渣を効率よく除去でき、かつ、防食性に優れているという利点を有する。そのため、チタンやチタン系合金を主成分とするハードマスク層(HM層)を有する基板をドライエッチングする際に生じる残渣を、従来に比して効率よく除去することができる。
【0159】
そして、従来から使用されていたヒドロキシルアミンを含有する洗浄液、フッ化水素を含有する洗浄液、及び過酸化水素を含有する洗浄液等を使用した際に起こりうる膜へのダメージが大きい(すなわち、膜減り量が大きい)といった不具合が発生することがある。しかし、本実施形態に係る洗浄液は、防食性に優れるため、このような不具合の発生を効果的に抑制できる。例えば、Si及びSiN等のケイ素化合物や、タングステン、モリブデン及びコバルト等の金属成分を含有する、基板、金属配線、エッチング停止層、層間絶縁膜、及びその他各種の機能層等へのダメージを軽減することが期待できるため、好適である。よって、チタン系残渣の除去性と、ケイ素化合物や、タングステン、モリブデン及びコバルト等の金属材料といった汎用性の高い材料の防食性に特に優れる洗浄液とすることも十分に可能である。
【0160】
さらに、本実施形態に係る洗浄液は、ハロゲンフリーな洗浄液とすることも可能であるので、環境に優しいだけでなく、廃液処理といった点でも簡便に使用することができる。特に、フッ化物を使用しない場合は、SiやSiN等のケイ素化合物を用いた材料へのダメージを、より効果的に抑制できることも期待できる。
【実施例0161】
以下の実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0162】
1.試験1
【0163】
1-1.洗浄液の調製
【0164】
<実施例1>
表2に示す割合で、シュウ酸((COOH)2)と水とを配合することによって、洗浄液を得た。実施例1は、洗浄剤としてシュウ酸3質量%と水97質量%とのみを含有する洗浄液である。
【0165】
<実施例2、3、比較例1~3>
表2に示す割合で、洗浄剤と水とを配合した点以外は、実施例1と同様にして、洗浄液を得た。例えば、実施例2は、リン酸10質量%と水90質量%とを含有する洗浄液である。
【0166】
<オキソ酸のpKa>
洗浄液に含有するオキソ酸(例えば、実施例1の場合はシュウ酸)のpKaは、Archem社がインターネット上で運営している“Sparc Calculator”(archemcalc.com)
(参考URL:http://archemcalc.com/sparc-web/calc#/multiproperty)
に基づき求めた。
【0167】
<洗浄液のpHの測定方法>
洗浄液についてのpHは、22℃の温度条件で、pH・ORP計(ポータブル型pHメータ「ORION STAR A324」、Thermo Scientific社製)を用いて測定した。
【0168】
1-2.チタン系残渣の除去性(残渣除去性)の評価
【0169】
各実施例及び各比較例の残渣除去性の評価は、以下の方法によって行った。
【0170】
まず、CVD法によって、断面視において、基板(12インチのシリコン基板)上に、第3層(金属配線層、コバルト)、エッチング停止層(酸化アルミニウム)、第2層(層間絶縁膜)、及び第1層(メタルハードマスク層、酸化チタン:膜厚50nm)をこの順に積層した、積層体(膜を有する基板)を準備した。(基板/第3層/エッチング停止層/第2層/第1層)。この積層体を、上面視で、2cm×2cmにカットすることによって、試験用のサンプルを作製した。
【0171】
続いて、得られたサンプル(積層体)について、第1層をマスクとしてプラズマエッチングを実施して、第3層の表面が露出するまで、第2層のエッチングを行い、ホール(直径・形状:40nm・ホール状)を形成させることによって、
図1に示す構成を備える測定用基板(エッチング後のサンプル)を作製した(
図1参照)。
【0172】
そして、エッチング後のサンプル(測定用基板)を洗浄した。洗浄は、以下の方法によって行った。まず、各実施例及び各比較例の処理液を58℃に加熱した。続いて、エッチング後のサンプルを、各実施例及び各比較例の処理液中に、58℃で5分間、浸漬させた。その後、処理液からサンプルを引き上げて、イソプロピルアルコールにより洗浄した後、窒素ブローにより乾燥させた。そして、このサンプルの残渣の残り具合を、走査型電子顕微鏡(SEM、撮像倍率:100k倍、機器名「SU-8220」、日立ハイテクノロジー社製)にて確認した。具体的には、ホール壁面にエッチング残渣物(チタン系残渣物)が存在しているか否かを確認することによって、残渣除去性を評価した。残渣除去性の評価は、以下の基準に基づき行った。なお、各実施例の測定用基板の金属層は、いずれも、実用上問題となる程度の腐食は、確認されなかった。
【0173】
残渣除去性の判断基準は、以下のとおりである。
【0174】
A:浸漬前にSEMにて確認された残渣が、浸漬後に同一条件でSEMにより確認した結果、95%以上が除去されていた。
B:浸漬前にSEMにて確認された残渣が、浸漬後に同一条件でSEMにより確認した結果、85%以上95%未満が除去されていた。
C:浸漬前にSEMにて確認された残渣が、浸漬後に同一条件でSEMにより確認した結果、80%以上85%未満が除去されていた。
D:浸漬前にSEMにて確認された残渣が、浸漬後に同一条件でSEMにより確認した結果、80%未満しか除去されていなかった。
【0175】
1-3.防食性(膜減り量)の評価
【0176】
各実施例及び各比較例の防食性の評価は、以下の方法によって行った。
【0177】
まず、下記のように、各金属層を備えた積層体(膜を有する基板)を、それぞれ作製した。
・CVD法によって、基板(12インチのシリコン基板)上に、SiNの金属層(膜厚20nm)を成膜した積層体を準備した。
・CVD法によって、基板(12インチのシリコン基板)上に、Wの金属層(膜厚100nm)を成膜した積層体を準備した。
・PVD法によって、基板(12インチのシリコン基板)上に、Moの金属層(膜厚40nm)を成膜した積層体を準備した。
【0178】
続いて、得られた各積層体(膜を有する基板)を、上面視で、2cm×2cmにカットすることによって、試験用のサンプル(ウェハクーポン)を得た。そして、容量100mLカップに、各実施例及び各比較例の洗浄液80mLを入れた。そこにサンプルを投入して、表中に記載した温度及び処理時間で、サンプルを洗浄液中に浸漬した。例えば、表2のSiNの場合は、58℃で30分間浸漬させた。なお、浸漬中は、300rpmで洗浄液を撹拌した。浸漬後、サンプルを洗浄液から取り出して、室温で30秒間水洗して、窒素ブローで乾燥した。
【0179】
そして、洗浄液浸漬前及び洗浄液浸漬後のサンプルの膜厚を測定した。膜厚の変化量として両者の差を求めることによって、膜減り量(表中の「film loss」参照)を求めた。例えば、実施例1のSiN膜の膜減り量(film loss)は、3.4Å(「Å」=単位:オングストローム、表2参照)であった。
【0180】
膜厚の測定は、以下の方法によって測定した。
・SiN膜の膜厚は、エリプソメーター(「L115S300 STOKES WAFERSKAN」、Gaertner Scientific Corporation社製)を用いて測定した。なお、膜厚の単位は、特に断りがない限り、オングストロームである。
・それ以外の膜厚は、走査型蛍光X線分析装置(「ZSX PrimusIV」、Rigaku社製)を用いて測定した。
【0181】
SiNの膜減り量(「SiN film loss」)の評価は、以下の基準に基づき行った。
A:10Å未満であった。
B:10Å以上50Å未満であった。
C:50Å以上であった。
【0182】
Wの膜減り量(「W film loss」)の評価は、以下の基準に基づき行った。
A:15Å未満であった。
B:15Å以上50Å未満であった。
C:50Å以上100Å未満であった。
D:100Å以上であった。
【0183】
Moの膜減り量(「Mo film loss」)の評価は、以下の基準に基づき行った。
A:20Å未満であった。
B:20Å以上30Å未満であった。
C:30Å以上100Å未満であった。
D:100Å以上であった。
【0184】
表2に、各実施例及び各比較例の洗浄液の組成及び評価結果を示す。
【0185】
【0186】
(COOH)2:シュウ酸、H3PO4:リン酸、H2SO4:硫酸、
HF:フッ化水素、H2O2:過酸化水素水、HA:ヒドロキシルアミン
【0187】
2.試験2
【0188】
2-1.洗浄液の調製
【0189】
<実施例4>
表3に示す割合で、シュウ酸((COOH)2)と水とを配合することによって、洗浄液を得た。実施例4は、洗浄剤としてシュウ酸3質量%と水97質量%とのみを含有する洗浄液である。
【0190】
<実施例5、6、比較例4~9>
表3及び表4に示す割合で、洗浄剤と水とを配合した点以外は、実施例4と同様にして、洗浄液を得た。例えば、実施例5は、リン酸3質量%と水97質量%とを含有する洗浄液である。
【0191】
<オキソ酸のpKa>
上記「1.試験1」と同様の方法によってオキソ酸(例えば、実施例5の場合はリン酸)のpKaを求めた。
【0192】
<洗浄液のpHの測定方法>
上記「1.試験1」と同様の方法によって洗浄液のpHを測定した。
【0193】
<洗浄液の酸化還元電位(ORP)>
洗浄液についてのORPは、22℃の温度条件で、pH・ORP計(ポータブル型pHメータ「ORION STAR A324」、Thermo Scientific社製)を用いて測定した。
【0194】
2-2.チタン系残渣の除去性(残渣除去性)の評価
【0195】
上記「1.試験1」の「1-2.チタン系残渣の除去性(残渣除去性)の評価」と同様の方法で、試験用のサンプルを作製し、チタン系残渣の除去性を評価した。
【0196】
2-3.防食性(膜減り量)の評価
【0197】
上記「1.試験1」の「1-3.防食性(膜減り量)の評価」と同様の方法で、試験用のサンプルを作製し、防食性を評価した。
【0198】
表3及び表4に、各実施例及び各比較例の洗浄液の組成及び評価結果を示す。
【0199】
【0200】
【0201】
HA:ヒドロキシルアミン、B(OH)3:ホウ酸、HCOOH:ギ酸、CH3COOH:酢酸、HNO3:硝酸、MSA:メタンスルホン酸、HCl:塩酸。なお、ヒドロキシルアミン(HA)は酸ではないので、表中の「価数」は「0」と記載した。また、比較例5~9は、残渣除去性が「×」であったため、膜厚を正確に測定することができなかった。そのため、比較例5~9は、膜減り量(film loss)を求めることができなかった。よって、比較例5~9のfilm lossは、「ND」と表中に記載した。
【0202】
3.試験3
【0203】
3-1.洗浄液の調製
【0204】
<実施例7、8>
表5に示す割合で、シュウ酸((COOH)2)と5-アミノテトラゾールと水とを配合することによって、洗浄液を得た。例えば、実施例8は、洗浄剤としてシュウ酸3質量%、5-アミノテトラゾール1質量%、及び水96質量%を含有する洗浄液である。
【0205】
<オキソ酸のpKa>
上記「1.試験1」と同様の方法によってオキソ酸(例えば、実施例7及び実施例8の場合はシュウ酸)のpKaを求めた。
【0206】
<洗浄液のpHの測定方法>
上記「1.試験1」と同様の方法によって洗浄液のpHを測定した。
【0207】
3-2.チタン系残渣の除去性(エッチング残渣の除去性)の評価
【0208】
上記「1.試験1」の「1-2.チタン系残渣の除去性の評価」と同様の方法で、試験用のサンプルを作製し、チタン系残渣の除去性を評価した。
【0209】
3-3.防食性(膜減り量)の評価
【0210】
各実施例及び各比較例の防食性の評価は、以下の方法によって行った。
【0211】
まず、下記のように、各金属層を備えた積層体(膜を有する基板)を、それぞれ作製した。
・CVD法によって、基板(12インチのシリコン基板)上に、SiNの金属層(膜厚20nm)を成膜した積層体を準備した。
・CVD法によって、基板(12インチのシリコン基板)上に、Wの金属層(膜厚100nm)を成膜した積層体を準備した。
・PVD法によって、基板(12インチのシリコン基板)上に、Moの金属層(膜厚40nm)を成膜した積層体を準備した。
・CVD法によって、基板(12インチのシリコン基板)上に、Coの金属層(膜厚20nm)を成膜した積層体を準備した。
【0212】
続いて、得られた各積層体(膜を有する基板)を、上面視で、2cm×2cmにカットすることによって、試験用のサンプル(ウェハクーポン)を得た。そして、容量100mLカップに、各実施例及び各比較例の洗浄液80mLを入れた。そこにサンプルを投入して、表中に記載した温度及び処理時間で、サンプルを洗浄液中に浸漬した。浸漬中は、300rpmで洗浄液を撹拌した。例えば、表5のSiNの場合は、58℃で30分間浸漬させた。浸漬後、サンプルを洗浄液から取り出して、室温で30秒間水洗して、窒素ブローで乾燥した。
【0213】
そして、上記「1.試験1」の「1-3.防食性(膜減り量)の評価」と同様の方法で、試験用のサンプルを作製し、防食性を評価した。
ただし、Coの防食性(膜減り量)については、基準を「100」とする相対比で評価した。実施例8のCoの膜減り量は、防食剤を含有しない実施例7の膜減り量の値を100とし、それを基準とする相対比とした。例えば、表中の実施例8の膜減り量は、実施例7の膜減り量の30/100であることを示す。
【0214】
表5に、各実施例の洗浄液の組成及び評価結果を示す。
【0215】
【0216】
4.試験4
【0217】
4-1.洗浄液の調製
【0218】
<実施例9~11>
表6に記載の組成の洗浄液を準備した。例えば、実施例9は、オキソ酸としてシュウ酸3質量%、有機溶剤0質量%、及び水97質量%の洗浄液である。実施例10は、オキソ酸としてシュウ酸3質量%、有機溶剤としてヘキシレングリコール(HG)40質量%、及び水57質量%を含有する洗浄液である。
【0219】
<オキソ酸のpKa>
上記「1.試験1」と同様の方法によってオキソ酸(例えば、実施例9~11の場合はシュウ酸)のpKaを求めた。
【0220】
<洗浄液のpHの測定方法>
上記「1.試験1」と同様の方法によって洗浄液のpHを測定した。
【0221】
4-2.チタン系残渣の除去性(残渣除去性)の評価
【0222】
上記「3.試験3」の「3-2.チタン系残渣の除去性の評価」と同様の方法で、試験用のサンプルを作製し、チタン系残渣の除去性を評価した。
【0223】
4-3.防食性(膜減り量)の評価
【0224】
上記「3.試験3」の「3-3.防食性(膜減り量)の評価」と同様の方法で、試験用のサンプルを作製し、防食性を評価した。
ただし、Coの防食性(膜減り量)については、基準を「100」とする相対比で評価した。実施例10、11の膜減り量は、防食剤を含有しない実施例9の膜減り量の値を100とし、それを基準とする相対比とした。例えば、表中の実施例10の膜減り量は、実施例7の膜減り量の69/100であることを示す。
【0225】
表6に、各実施例の洗浄液の組成及び評価結果を示す。
【0226】
【0227】
以上より、本実施例に係る洗浄液は、チタン系残渣を効率よく除去でき、かつ、防食性に優れることが、少なくとも確認された。かかる洗浄液は、半導体基板の洗浄方法、及び、半導体の製造方法に好適に使用できる。
【0228】
本出願は、2023年6月23日に米国特許商標庁へ出願された、米国仮出願第63/509930号に基づき優先権主張し、その内容はここに参照として取り込まれる。