IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星エスディアイ株式会社の特許一覧

特開2025-3323バッテリーモジュール、その製造方法、及びそれを含むバッテリーパック
<>
  • 特開-バッテリーモジュール、その製造方法、及びそれを含むバッテリーパック 図1
  • 特開-バッテリーモジュール、その製造方法、及びそれを含むバッテリーパック 図2
  • 特開-バッテリーモジュール、その製造方法、及びそれを含むバッテリーパック 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003323
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】バッテリーモジュール、その製造方法、及びそれを含むバッテリーパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/204 20210101AFI20241226BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20241226BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241226BHJP
   H01M 10/623 20140101ALI20241226BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
H01M10/658
H01M10/625
H01M10/623
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024080559
(22)【出願日】2024-05-17
(31)【優先権主張番号】10-2023-0079352
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梁 承 龍
(72)【発明者】
【氏名】禹 明 希
(72)【発明者】
【氏名】▲羅▼ 荷 娜
(72)【発明者】
【氏名】柳 寶 ▲キョン▼
(72)【発明者】
【氏名】李 載 鉉
(72)【発明者】
【氏名】朴 ▲ヘ▼ 眞
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031CC02
5H031EE01
5H031EE02
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH03
5H031HH06
5H031HH08
5H040AA37
5H040AS04
5H040AS12
5H040AY06
5H040LL01
5H040LL04
5H040LL06
5H040LL10
5H040NN00
5H040NN01
(57)【要約】
【課題】バッテリーの熱暴走による隣接セルの熱伝播を抑制するために、優れた断熱性の他にも、耐火性、及び難燃性又は不燃性を有するバッテリーモジュール、その製造方法、及びそれを含むバッテリーパックの提供。
【解決手段】本発明は、複数のセルと、前記複数のセルの間にそれぞれ備えられ、上面及び下面がそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置された断熱シートと、前記断熱シートの上面と下面との間の縁側面のうち、上部面を含む2個以上の面に形成された発泡層と、を含む、バッテリーモジュール、その製造方法、及びそれを含むバッテリーパックに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルと、
前記複数のセルの間にそれぞれ備えられ、上面及び下面がそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置された断熱シートと、
前記断熱シートの上面と下面との間の縁側面のうち、上部面を含む2個以上の面に形成された発泡層と、を含むバッテリーモジュール。
【請求項2】
前記セルは、二次電池セルである、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項3】
前記断熱シートは、
第1基材と、
第2基材と、
前記第1基材と前記第2基材との間に備えられたエアロゲル層と、を含む、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項4】
前記第1基材及び前記第2基材のそれぞれは、樹脂、金属、及び金属以外の無機材料からなる群から選ばれる1種以上で形成される、請求項3に記載のバッテリーモジュール。
【請求項5】
前記エアロゲル層は、エアロゲルと、繊維状支持体と、バインダー、分散剤、又はそれらの組合せを含む機能性物質と、を含む、請求項3に記載のバッテリーモジュール。
【請求項6】
前記エアロゲルは、BET比表面積が500m/g~1,000m/gである、請求項5に記載のバッテリーモジュール。
【請求項7】
前記繊維状支持体は、天然繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ミネラル繊維、及び高分子繊維からなる群から選ばれる1種以上である、請求項5に記載のバッテリーモジュール。
【請求項8】
前記バインダーは、水系高分子バインダーを含む、請求項5に記載のバッテリーモジュール。
【請求項9】
前記分散剤は、界面活性剤、シランカップリング剤、及びホスフェート系塩からなる群から選ばれる1種以上である、請求項5に記載のバッテリーモジュール。
【請求項10】
前記エアロゲル層は、前記エアロゲル層の総量に対して、前記エアロゲル10重量%~90重量%、前記繊維状支持体5重量%~70重量%、及び前記機能性物質0.5重量%~20重量%を含む、請求項5に記載のバッテリーモジュール。
【請求項11】
前記発泡層は、周辺温度が100℃~200℃に上昇する時に発泡する発泡物質を含む、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項12】
前記発泡層は、膨脹黒鉛、有機系発泡剤、及び無機系発泡剤からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項13】
前記有機系発泡剤は、アゾジカーボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン、及びオキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)からなる群から選ばれる1種以上であり、
前記無機系発泡剤は、炭酸水素塩、炭酸塩、及び有機酸塩からなる群から選ばれる1種以上である、請求項12に記載のバッテリーモジュール。
【請求項14】
前記発泡層の厚さは、前記断熱シートの厚さに対して3%~20%である、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項15】
前記発泡層は、発泡前の厚さに対して発泡後の厚さが1000%~3000%である、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項16】
前記発泡層は、前記断熱シートの側面のうち、上下に対向する両面、又は側面全体に形成される、請求項1に記載のバッテリーモジュール。
【請求項17】
前記発泡層は、前記断熱シートの側面のうち、上部面に形成された発泡層の厚さが下部面に形成された発泡層の厚さの100%以上である、請求項16に記載のバッテリーモジュール。
【請求項18】
複数のセルを配置する段階と、
前記複数のセルの間に、断熱シートの上面及び下面がそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置する段階と、
前記断熱シートの上面と下面との間の縁側面のうち、上部面を含む2個以上の面に発泡層を形成する段階と、を含むバッテリーモジュールの製造方法。
【請求項19】
前記発泡層を形成する段階は、前記断熱シートを前記複数のセルの間に配置する前に又は後に行われる、請求項18に記載のバッテリーモジュールの製造方法。
【請求項20】
請求項1~17のいずれか一項に記載のバッテリーモジュールを含む、バッテリーパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリーモジュール、その製造方法、及びそれを含むバッテリーパックに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、電気エネルギーを化学エネルギーの形態に変えて貯蔵できる優れたエネルギー密度を提供する電力貯蔵システムである。再充電が不可能な一次電池に比べて二次電池は再充電が可能であり、スマートフォン、セルラーフォン、ノートパソコン、タブレットPCなどのIT機器に多く用いられている。近年、環境汚染の防止のために電気自動車への関心が高まっており、電気自動車には高容量の二次電池が採択されている。このような二次電池は、高密度、高出力、安定性などの特性が要求されている。
【0003】
一方、リチウムイオン二次電池のような高容量のセルを多数含む場合に、いずれかの理由で一つのセルが過熱によって熱暴走し、隣接する他のセルに悪影響を及ぼすことがあるため、隣接し合うセル同士が熱的に断熱されることが要求される。
【0004】
そこで、従来は、セル同士の間に板材や絶縁性樹脂板などを配置し、隣接するセル間における絶縁と断熱を図った。
【0005】
このような発明の背景になる技術に開示された上述した情報は、本発明の背景に対する理解度を向上させるためのものに過ぎず、したがって、従来技術を構成しない情報を含んでもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施形態は、バッテリーの熱暴走による隣接セルの熱伝播を抑制するために、優れた断熱性の他にも、耐火性、及び難燃性又は不燃性を有するバッテリーモジュール、その製造方法、及びそれを含むバッテリーパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態は、複数のセルと、前記複数のセルの間にそれぞれ備えられ、上面及び下面がそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置された断熱シートと、前記断熱シートの上面と下面との間の縁側面のうち、上部面を含む2個以上の面に形成された発泡層と、を含むバッテリーモジュールを提供する。
【0008】
前記セルは、二次電池セルであってよい。
【0009】
前記断熱シートは、第1基材、第2基材、及び前記第1基材と第2基材との間に備えられたエアロゲル層を含んでよい。
【0010】
前記第1基材及び第2基材のそれぞれは、樹脂、金属、及び金属以外の無機材料からなる群から選ばれる1種以上で形成されてよい。
【0011】
前記エアロゲル層は、エアロゲルと、繊維状支持体と、バインダー、分散剤、又はそれらの組合せを含む機能性物質と、を含んでよい。
【0012】
前記エアロゲルは、BET比表面積が500m/g~1,000m/gであってよい。
【0013】
前記繊維状支持体は、天然繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ミネラル繊維、及び高分子繊維からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0014】
前記バインダーは、水系高分子バインダーを含んでよい。
【0015】
前記分散剤は、界面活性剤、シランカップリング剤、及びホスフェート系塩からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0016】
前記エアロゲル層は、前記エアロゲル層の総量に対して、前記エアロゲル10重量%~90重量%、前記繊維状支持体5重量%~70重量%、及び前記機能性物質0.5重量%~20重量%を含んでよい。
【0017】
前記発泡層は、周辺温度が100℃~200℃に上昇する時に発泡する発泡物質を含んでよい。
【0018】
前記発泡層は、膨脹黒鉛、有機系発泡剤、及び無機系発泡剤からなる群から選ばれる1種以上の発泡剤を含んでよい。
【0019】
前記有機系発泡剤は、アゾジカーボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン、及びオキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)からなる群から選ばれる1種以上であってよく、前記無機系発泡剤は、炭酸水素塩、炭酸塩、及び有機酸塩からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0020】
前記発泡層の厚さは、前記断熱シートの厚さに対して3%~20%であってよい。
【0021】
前記発泡層は、発泡前の厚さに対して発泡後の厚さが1000%~3000%であってよい。
【0022】
前記発泡層は、前記断熱シートの側面のうち、上下に対向する両面、又は側面全体に形成されてよい。
【0023】
前記発泡層は、前記断熱シートの側面のうち上部に形成された発泡層の厚さが下部に形成された発泡層の厚さの100%以上であってよい。
【0024】
他の一実施形態は、複数のセルを配置する段階と、前記複数のセルの間に、断熱シートの上面及び下面がそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置する段階と、前記断熱シートの上面と下面との間の縁側面のうち、上部面を含む2個以上の面に発泡層を形成する段階と、を含むバッテリーモジュールの製造方法を提供する。
【0025】
前記発泡層を形成する段階は、前記断熱シートを前記複数のセルの間に配置する前に又は後に行われてよい。
【0026】
さらに他の一実施形態は、前記バッテリーモジュールを含むバッテリーパックを提供する。
【発明の効果】
【0027】
一実施形態に係るバッテリーモジュールは、セルの熱暴走による隣接セルへの熱及び火炎の伝播を抑制することができる。
【0028】
また、一実施形態に係るバッテリーモジュールに備えられた断熱シートは、断熱性の他にも圧縮性能に優れ、機械的強度及び寸法安定性を有するので、外部衝撃から発生し得るエアロゲル層の脱落を防止し、作業便宜性及び機構の汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】一実施形態に係るバッテリーモジュールの構造を示す模式図である。
図2】一実施形態に係るバッテリーモジュール内で発泡層が発泡した後の様子を示す模式図である。
図3】一実施形態に係る断熱シートの断面構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施形態について、技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。ただし、実施形態は様々な異なる形態で具現されてよく、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0031】
一実施形態に係るバッテリーモジュールは、複数のセルと、前記複数のセルの間にそれぞれ備えられ、上面及び下面がそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置された断熱シートと、前記断熱シートの上面と下面との間の縁側面のうち、上部面を含む2個以上の面に形成された発泡層と、を含むバッテリーモジュールを提供する。
【0032】
前記構造を有するバッテリーモジュールは、優れた断熱性の他にも、耐火性と難燃性又は不燃性を有し、セルの熱暴走による隣接セルへの熱及び火炎の伝播を抑制することができる。また、前記断熱シートは、圧縮性能に優れ、機械的強度及び寸法安定性を確保することができ、外部衝撃から発生し得るエアロゲル層の脱落を防止し、作業便宜性及び機構の汚染を防止することができる。
【0033】
一実施形態において、前記セルは二次電池セルであってよい。前記二次電池は、例えば、リチウム二次電池であってよい。前記リチウム二次電池は、リチウムイオン電池、全固体電池、リチウム金属電池などの様々な形態で製造されてよい。例えば、前記リチウム二次電池は、正極活物質と負極活物質がそれぞれ塗布された正極板と負極板が分離膜を挟んで配置される構造を有してよく、電解液と共に電池ケースに封止されて二次電池セルを構成する。構成する電池ケースの形状によって、円筒型、角形又はパウチ型に区別されてよく、複数の二次電池セルが直列又は並列に連結されてバッテリーモジュールを構成する。
【0034】
このような二次電池は、高い安定性を要求するが、例えば、過充電されると、正極活物質又は電解質の分解反応及びその他副反応が進み、このような反応によって熱が放出されながらついに二次電池セルの爆発現象につながることもある。
【0035】
これに関し、本発明では、前記各セルの間に断熱シートを配置し、前記断熱シートの側面に発泡層を備えることにより、優れた断熱性の他にも、耐火性と難燃性又は不燃性を有し、セルの熱暴走による隣接セルへの熱及び火炎の伝播を抑制することができる。
【0036】
図1は、複数のセルの間にそれぞれ配置された断熱シートと前記断熱シートの側面に形成された発泡層とを有するバッテリーモジュールを示す模式図である。
【0037】
図1を参照すると、一実施形態に係るバッテリーモジュール100は、複数のセル10を含み、前記複数のセル10の間にそれぞれ備えられた断熱シート20を含んでよい。ここで、前記断熱シート20は、上面及び下面がそれぞれ、隣接するセル10と対面するように配置されてよい。また、前記断熱シート20の側面のうち、上部面を含む2個以上の面に形成された発泡層30を含んでよい。これにより、一つのセルの熱暴走時に先に火炎を遮断して他のセルへの火炎の伝播を極力抑制し、安全性をより高めたバッテリーモジュールを提供でき、さらに、前記二次電池モジュールを含む二次電池パックを提供することができる。
【0038】
図2は、発泡層が一定温度以上で発泡して広がっている場合を示す模式図である。
【0039】
図2を参照すると、一実施形態に係るバッテリーモジュール100は、複数のセル10を含み、前記複数のセル10の間にそれぞれ備えられる断熱シート20を含み、前記断熱シート20の側面には発泡層30が形成されているが、熱暴走によって周辺温度が一定温度以上に上昇する場合に、発泡層30が広がってバッテリーモジュール100内の空いた空間を埋め、火炎伝播を防止することができる。
【0040】
一実施形態において、前記断熱シートは、第1基材、第2基材、及び前記第1基材と第2基材との間に備えられたエアロゲル層を含んでよい。ここで、前記第1基材及び第2基材のそれぞれは断熱シートの上面及び下面をなし、それぞれ隣接するセルと対面するように配置されてよい。
【0041】
図3は、一実施形態に係る断熱シートの構造を示す模式図である。
【0042】
図3を参照すると、前記断熱シート20は、第1基材21、第2基材22、及び前記第1基材21と第2基材22との間に備えられたエアロゲル層23を含む構造で形成されてよい。ここで、前記第1基材21及び第2基材22のそれぞれは断熱シート20の上面及び下面をなし、それぞれ隣接するセル10と対面するように配置されてよい。
【0043】
前記第1基材及び第2基材のそれぞれは、例えば、樹脂、金属、及び金属以外の無機材料からなる群から選ばれる1種以上で形成されてよく、又は、それらの複合体などの様々な基材を使用することができ、その種類を限定しない。また、基材の形態としては、フィルム、薄膜、シートなど、特に限定しない。
【0044】
前記樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、及びポリアミドからなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0045】
前記金属は、例えば、銅、ニッケル、コバルト、鉄、クロミウム、バナジウム、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、モリブデニウム、タングステン、イリジウム、銀、金、及び白金からなる群から選ばれる1種以上であってよい。前記金属材質の基材を使用する場合に、前記基材は、必要によって腐食防止処理、絶縁処理などが行われてよい。
【0046】
前記無機材料は、炭酸カルシウム(CaCO)、タルク(talc)、及びマイカ(mica)からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0047】
具体的な例として、前記第1基材及び第2基材のそれぞれは無機材料を含んでよく、より具体的な例として、マイカを含んでよい。これにより、断熱シートの断熱性及び耐久性などを改善することができる。
【0048】
前記エアロゲル層は、エアロゲルと、繊維状支持体と、バインダー、分散剤、又はそれらの組合せを含む機能性物質と、を含んでよい。
【0049】
前記エアロゲルは、BET比表面積が500m/g~1,000m/gであってよい。例えば、前記エアロゲルは、BET比表面積が500m/g~950m/g、550m/g~950m/g、又は600m/g~900m/gであってよい。前記範囲内のBET比表面積値を有するエアロゲルを含むことにより、エアロゲル粒子の飛散を防止し、断熱性を改善することができる。
【0050】
前記エアロゲルの粒径は、5μm~200μm、10μm~100μm、又は20μm~60μmであってよい。前記範囲内の粒径を有するエアロゲルを含むことにより、断熱特性を改善し、複数のセルの間において熱伝達を遅延させることができる。
【0051】
前記エアロゲルの含有量は、前記エアロゲル層の総量に対して、10重量%~90重量%、30重量%~70重量%、又は40重量%~60重量%であってよい。前記範囲内でエアロゲルを含むことにより、優れた断熱シートの断熱性を得ることができる。
【0052】
一方、エアロゲルは、ナノ多孔構造の透明又は半透明の先端素材であり、密度が非常に低く、低い熱伝導度の特性を有することから、断熱材として高い潜在力があるだけでなく、様々な産業分野で使用可能な非常に効率的な超断熱材として評価されている。
【0053】
また、エアロゲルの最大の長所は、従来のスチロフォームなどの有機断熱材に比べて低い熱伝導率を示す点と、有機断熱材の致命的な弱点である火災脆弱性と火災時の有害ガス発生の問題を解決できるという点である。ただし、エアロゲルは、高い脆性によって、小さい衝撃にも壊れやすいなど、強度が非常に弱く、非常に薄い厚さ及び形態に加工し難いため、優れた断熱特性にもかかわらず、エアロゲルを単独で使用して断熱材を製造することは非常に困難であるとの問題があった。そこで、一実施形態では、繊維状支持体と、バインダー、分散剤又はこれらの組合せとを含む機能性物質と、を含むことにより、エアロゲル層の耐久性を向上させ、外部衝撃や作業時に粉塵が発生することを防止することができる。
【0054】
前記繊維状支持体は前記エアロゲル層に含まれることにより、これを用いて形成される断熱シートの耐久性を改善することができる。
【0055】
前記繊維状支持体は、通常の断熱素材の支持体として用いられる繊維を含んでよい。例えば、前記繊維状支持体は、天然繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、黒鉛繊維、ミネラル繊維、及び高分子繊維からなる群から選ばれる1種以上であってよい。具体的な例として、前記繊維状支持体はガラス繊維を含んでよいが、これに限定されない。
【0056】
前記天然繊維は、例えば、大麻,黄麻、亜麻、コイア、洋麻、及びセルロースからなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0057】
前記ミネラル繊維は、例えば、玄武岩、珪灰石、アルミナ、シリカ、スラグ、及び岩石からなる群から選ばれる1種以上である鉱物繊維であってよい。
【0058】
前記高分子繊維は、例えば、ナイロン、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidazole)、ポリベンズオキサゾール(polybenzoxazole)、ポリアミドイミド(polyamideimide)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybuthyleneterephtalate)、ポリエステル(polyester)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、及びポリプロピレン(polypropylene,PP)からなる群から選ばれる1種以上であってよい。具体的な例として、前記高分子繊維は、ポリイミド、ポリアミド、及びポリベンズイミダゾールからなる群から選ばれる1種以上であってよいが、これに限定されない。
【0059】
前記繊維状支持体は、例えば、ウール(wool)形態、チョップドストランド(chopped strands)形態であってよいが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記繊維状支持体の直径は、例えば、0.1μm~20μm、0.1μm~15μm、0.1μm~5μm、1μm~15μm、又は3μm~10μmであってよい。前記範囲内の直径を有する繊維状支持体を含むことにより、エアロゲル層の構造を堅固にすることができ、製造コストが低減し得る。
【0061】
前記繊維状支持体の含有量は、前記エアロゲル層の総量に対して、5重量%~70重量%、25重量%~60重量%、又は30重量%~50重量%であってよい。前記範囲内で繊維状支持体を含むエアロゲル層を形成して断熱シートを製造すると、耐久性が改善され得る。
【0062】
前記バインダーは、水系高分子バインダーを含んでよい。例えば、前記水系高分子バインダーは、水性高分子、陰イオン水溶性高分子、陽イオン水溶性高分子、及び水分散性高分子からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0063】
前記水性高分子は、例えば、ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアクリルアミド(polyacrylamide)、及びポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)からなる群から選ばれる1種以上であってよいが、これに限定されない。
【0064】
前記陰イオン水溶性高分子は、カルボン酸、スルホン酸、硫酸エステル、リン酸エステル、及びそれらの塩類の官能基を有する高分子からなる群から選ばれる1種以上であってよい。例えば、前記陰イオン水溶性高分子は、カルボン酸基を有する高分子であってよく、具体的な例としてポリマレイン酸(polymaleic acid)を含んでよいが、これに限定されない。
【0065】
前記陽イオン水溶性高分子は、アミン、アンモニウム、ホスホニウム、スルホニウム、及びそれらの塩類の官能基を有する高分子からなる群から選ばれる1種以上であってよい。例えば、前記陽イオン水溶性高分子は、アミン基を有する高分子であってよく、具体的な例として、ポリエチレンアミン(polyethylene amine)及びポリアミン(polyamine)からなる群から選ばれる1種以上であってよいが、これに限定されない。
【0066】
前記水分散性高分子は、水分散性ポリウレタン(polyurethane)及び水分散性ポリエステル(polyester)からなる群から選ばれる1種以上であってよいが、これに限定されない。
【0067】
前記バインダーは、水性高分子及び水分散性高分子を含んでよい。例えば、バインダーの特性とともに分散特性を有する水性高分子、及び耐火特性を有する水分散性ポリウレタンを含んでよく、具体的な例として、ポリビニルアルコール及び水分散性ポリウレタンを含んでよい。
【0068】
前記水性高分子及び水分散性高分子の重量比は、1:1~1:5、1:1~1:4、又は1:2~1:3であってよい。前記水性高分子及び水分散性高分子の重量比を前記範囲内で併せて使用すると、断熱シートの断熱性、粉塵性、圧縮特性とともに、耐火性及び機械的物性がより改善され得る。
【0069】
前記バインダーの含有量は、前記エアロゲル層の総量に対して、0.5重量%~20重量%、2重量%~15重量%、又は8重量%~15重量%であってよい。前記範囲内でバインダーを含むエアロゲル層を含む断熱シートは、粉塵特性が改善され得る。
【0070】
前記分散剤は、界面活性剤、シランカップリング剤、及びホスフェート系塩からなる群から選ばれる1種以上であってよい。具体的な例として、前記分散剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、レシチンなどのような天然界面活性剤、及びリン酸塩のうちいずれか1つ以上を含んでよいが、これに限定されない。
【0071】
前記分散剤をさらに含むと、エアロゲル層の製造時にエアロゲルの分散がより改善され、繊維状支持体とエアロゲルが均一に分散され得る。
【0072】
前記分散剤の含有量は、前記エアロゲル層の総量に対して、0.1重量%~6重量%、0.1重量%~5重量%、又は0.1重量%~3重量%であってよい。前記範囲内で分散剤を含むことにより、低コストでエアロゲル層を製造でき、これを用いて断熱性、均一性及び粉塵特性に優れたバッテリー断熱シートを製造することができる。
【0073】
一実施形態において、前記バインダー及び前記分散剤は、1:0.001~1:0.67、1:0.001~1:0.5、又は1:0.001~1:0.3の重量比で含まれてよい。前記範囲内の重量比でバインダーと分散剤を併用すると、エアロゲル層でエアロゲルがより均一に分散された形態で存在し得る。
【0074】
一実施形態において、前記エアロゲル層の総量に対して、前記繊維状支持体は25重量%~60重量%、前記エアロゲルは30重量%~70重量%、前記バインダーは2重量%~15重量%を含んでよい。
【0075】
具体的な例として、前記エアロゲル層の総量に対して、前記繊維状支持体は30重量%~50重量%、前記エアロゲルは40重量%~60重量%、前記バインダーは8重量%~15重量%を含んでよい。前記範囲内でエアロゲル層を構成すると、優れた断熱性を実現すると同時に耐久性を改善させることができ、繊維状支持体とエアロゲルとの結束力を向上させ、粉塵の発生を防止することができる。
【0076】
一実施形態において、前記エアロゲル層の総量に対して、前記繊維状支持体は25重量%~60重量%、前記エアロゲルは30重量%~70重量%、前記バインダーは2重量%~15重量%、前記分散剤は0.1重量%~3重量%を含んでよい。
【0077】
具体的な例として、前記エアロゲル層の総量に対して、前記繊維状支持体は30重量%~50重量%、前記エアロゲルは40重量%~60重量%、前記バインダーは5重量%~10重量%、前記分散剤は0.1重量%~2重量%を含んでよい。前記範囲内でエアロゲル層を構成すると、優れた断熱性を実現すると同時に耐久性を改善させることができ、繊維状支持体とエアロゲルとの結束力を向上させ、粉塵の発生を防止することができる。
【0078】
一実施形態において、前記発泡層は、前記断熱シートの上面と下面との間の縁側面のうち、上部面を含む2個以上の面に形成され、周辺温度が100℃以上に上昇する時に発泡する発泡物質を含んでよい。例えば、前記発泡物質は、周辺温度が100℃~200℃、120℃~180℃、又は120℃~170℃に上昇する場合に発泡し、体積の増加によって発泡層の厚さが増加することでバッテリーモジュール内の空いた空間を埋め、火炎の伝播を防止することができる。
【0079】
前記発泡層は、前記断熱シートの側面のうち、上下に対向する両面、又は側面全体に形成されてよい。ここで、前記上下は、前記断熱シートが配置された形態を基準にした上下部を意味できる。
【0080】
前記断熱シートは、上面、下面、及び上面と下面との間に縁側面を含み、前記断熱シートの上面及び下面がそれぞれ、隣接するセルと対面するとき、前記断熱シートの縁側面は位置的に、上部面、下部面、前面及び後面を含んでよい。ここで、前記発泡層は、断熱シートの側面のうち、上下に対向する両面、すなわち、上下部面又は側面全体に形成されてよい。具体的な例として、前記発泡層は、断熱シートの縁側面のうち上部面には必須に形成されてよい。
【0081】
前記バッテリーモジュールにおいて、前記発泡層は、前記断熱シートの面のうち、セルと対面しない面のうち、外部に露出される部分の一部又は全部を塗布する形態で形成されてよい。
【0082】
前記バッテリーモジュールにおいて、前記発泡層は、前記断熱シートと隣接しているセルの一部又は全部をさらに塗布する形態で形成されてもよい。
【0083】
一例として、前記発泡層は、前記断熱シートの側面全体に形成されてよい。この場合、一つのセルの熱暴時に発泡成分が発泡し膨脹しながら、バッテリーモジュール内のセル、断熱シート及び発泡層が形成された空間以外の空いた空間を埋め、火炎が伝播することを防止することができる。
【0084】
他の一例として、前記発泡層は、前記断熱シートの側面のうち、上下に対向する両面に形成されてよい。この場合、発泡層の設置を最小化しながら火炎伝播を効果的に防止することができる。
【0085】
前記発泡層は、前記断熱シートの厚さに対して、3%~20%、5%~15%、又は5%~10%の厚さで形成されてよい。前記範囲内の厚さで発泡層を形成することにより、一つのセルの熱暴時に火炎の伝播を防止することができる。
【0086】
前記発泡層は、発泡前の厚さに対して発泡後の厚さが1000%~3000%、1300%~2500%、又は1700%~2300%であってよい。具体的には、前記発泡層は、周辺温度が一定レベル以上に上昇する場合に発泡し、これによって発泡後の厚さが発泡前の厚さに対して10倍~30倍、13倍~25倍、又は17倍~23倍に増加し得る。
【0087】
前記バッテリーモジュールは、内部に、セル、断熱シート、及び発泡層が形成された空間以外の空いた空間を含み、前記発泡層の発泡後の厚さは、前記バッテリーモジュール内部の上部に形成された空いた空間の高さの200%以上、200%~500%、又は200%~400%であってよい。具体的には、前記発泡層の発泡後の厚さは、バッテリーモジュール内部の上部に形成された空いた空間の高さの2倍以上、2倍~5倍、又は2倍~4倍であってよい。
【0088】
前記発泡層は、前記断熱シートの側面のうち上部に形成された発泡層の厚さが下部に形成された発泡層の厚さの100%以上、100%~400%、150%~350%、又は200%~350%であってよい。具体的には、前記発泡層は、前記断熱シートの側面のうち上部に形成された発泡層の厚さが下部に形成された発泡層の厚さの1倍以上、1倍~4倍、1.5倍~3.5倍、又は2倍~3.5倍で形成されてよい。このように断熱シートの側面の上部面と下部面に形成される発泡層の厚さ比を制御することにより、一つのセルにおける熱暴時に火炎が広がることを効果的に防止することができる。
【0089】
前記発泡層は、周辺温度が100℃~200℃、120℃~180℃、又は120℃~170℃に上昇する場合に発泡して体積が膨脹する発泡物質で形成されてよく、前記発泡物質は、例えば、膨脹黒鉛、有機系発泡剤、及び無機系発泡剤からなる群から選ばれる1種以上の発泡剤を含んでよい。
【0090】
前記有機系発泡剤は、アゾジカーボンアミド(azodicarbonamide,ADCA)、ジニトロペンタメチレンテトラミン(N,N’-dinitro pentamethylene tetramine,DPT)、及びオキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(4,4’-oxy bis(benzene sulfonyl hydrazide),OBSH)からなる群から選ばれる1種以上であってよい。前記無機系発泡剤は、炭酸水素塩、炭酸塩、及び有機酸塩からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0091】
前記発泡物質は、高分子物質と混合されてコーティング液を形成できる。前記高分子物質は、目的とする発泡層の発泡後の厚さ及び発泡物質の発泡開始(trigger)温度を制御できるものであれば特に限定されず、例えば、ポリイミド(polyimide)、ポリアミド(polyamide)、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidazole)、ポリベンズオキサゾール(polybenzoxazole)、ポリアミドイミド(polyamideimide)、ポリウレタン(polyurethane)、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate)、ポリブチレンテレフタレート(polybuthyleneterephtalate)、ポリエステル(polyester)、ポリエチレン(polyethylene,PE)、及びポリプロピレン(polypropylene,PP)からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0092】
ここで、前記発泡物質と高分子物質が含まれるコーティング液は、例えば、周辺温度が100℃~200℃、120℃~180℃、又は120℃~170℃に上昇する場合に発泡して体積が膨脹し得る。
【0093】
前記発泡物質と高分子物質は、1:9~5:5、1:9~4:6、又は1:9~3:7の重量比でコーティング液を形成できる。
【0094】
一実施形態に係るバッテリーモジュールの製造方法は、複数のセルを配置する段階と、前記複数のセルの間に、断熱シートの上面及び下面がそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置する段階と、前記断熱シートの上面と下面との間の縁側面のうち、上部面を含む2個以上の面に発泡層を形成する段階と、を含んでよい。
【0095】
一実施形態において、複数のセルを配置する段階において複数のセルを配置する形態は特に限定されず、バッテリーの種類によって適切に配置することができる。
【0096】
一実施形態において、前記複数のセルの間にはそれぞれ断熱シートを配置することができる。前記断熱シートは、上面及び下面がそれぞれ、隣接するセルと対面するように配置されてよい。
【0097】
前記断熱シートは、第1基材を形成する段階と、前記第1基材上にエアロゲル組成物を塗布する段階と、塗布されたエアロゲル組成物上に第2基材を形成する段階と、含んでよい。
【0098】
前記第1基材及び第2基材に関する具体的な説明は、上述した通りでよく、サイズ及び形態は、セル構造によって適切に調節して形成できる。
【0099】
前記エアロゲル組成物は、溶媒に、バインダー、分散剤、又はそれらの組合せを含む機能性物質を混合して溶媒混合液を製造する段階と、前記溶媒混合液及びエアロゲルを混合してエアロゲル混合液を製造する段階と、前記エアロゲル混合液及び繊維状支持体を混合してエアロゲル組成物を製造する段階と、を含んでよい。
【0100】
前記溶媒に機能性物質を混合して溶媒混合液を製造する段階では、溶媒にバインダーを混合するか、溶媒にバインダー及び分散剤を混合することができる。
【0101】
前記溶媒は、極性溶媒及び無極性溶媒からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0102】
前記極性溶媒は、水及びアルコール系溶媒からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0103】
前記水は、例えば、精製水及び超純水(deionized water)からなる群から選ばれる1種以上であってよい。
【0104】
前記アルコール系溶媒は、例えば、メタノール(methanol)、エタノール(ethanol)、プロパノール(propanol)、ペンタノール(pentanol)、ブタノール(butanol)、ヘキサノール(hexanol)、エチレングリコール(ethylene glycol)、プロピレングリコール(propylene glycol)、ジエチレングリコール(diethylene glycol)、及びグリセロール(glycerol)からなる群から選ばれる1種以上であってよいが、これに限定されるものではない。
【0105】
前記無極性溶媒は炭化水素系溶媒を含んでよい。例えば、前記炭化水素系溶媒は、ヘキサン(hexane)、ペンタン(pentane)、ヘプタン(heptane)、トルエン(toluene)、及びベンゼン(benzene)からなる群から選ばれる1種以上であってよく、ヘキサンのようなアルカン(alkane)溶媒、又はアルカン溶媒を含む混合物であることがより好ましいが、これに限定されるものではない。
【0106】
前記溶媒は水を含んでよい。前記水を溶媒として使用すると、原料コスト及び後処理コストを効果的に節減することができる。ただし、水を溶媒として使用する場合に、疎水性であるエアロゲルとの混合が容易でない問題があるが、一実施形態では、混合段階設計、混合条件、バインダー及び分散剤の添加及び添加量などを制御し、エアロゲルを均一に分散させている。このように組成物中にエアロゲルを均一に分散させると、バインダーを多量使用しなくとも、薄い厚さで断熱性、耐久性、低粉塵特性に優れた断熱シートを形成することができる。
【0107】
前記溶媒は、前記エアロゲル組成物の固形分総量との重量比が1:1~1:90となるように含まれてよい。例えば、前記溶媒と前記エアロゲル組成物の固形分総量との重量比は、1:50~1:70、1:20~1:30、又は1:2~1:10で含まれてよい。前記溶媒と固形分総量との重量比を前記範囲内に制御することにより、分散性、コーティング性及び相安定性を両立させることができる。
【0108】
前記バインダー、分散剤に関する具体的な説明は、上述した通りでよい。
【0109】
前記溶媒混合液及びエアロゲルを混合してエアロゲル混合液を製造する段階においてエアロゲルに関する具体的な説明は、上述した通りでよい。
【0110】
前記エアロゲル混合液及び繊維状支持体を混合してエアロゲル組成物を製造する段階において繊維状支持体に関する具体的な説明は、上述した通りでよい。
【0111】
前記溶媒にバインダー、分散剤、又はそれらの組合せを含む機能性物質を混合して溶媒混合液を製造する段階と、前記溶媒混合液及びエアロゲルを混合してエアロゲル混合液を製造する段階と、前記エアロゲル混合液及び繊維状支持体を混合してエアロゲル組成物を製造する段階のそれぞれでは、混合時にミキサー(mixer)を用いて混合することができる。例えば、前記ミキサーは、プラネタリーミキサー(planetary mixer)、プラネタリーデスパミキサー(PD mixer)、シンキーミキサー(thinky mixer)、C-ミキサー(C-mixer)などを含んでよく、これに限定しない。
【0112】
具体的な例として、前記溶媒混合液及びエアロゲルを混合する時にプラネタリーミキサーを使用することができる。前記プラネタリーミキサーを用いて溶媒混合液及びエアロゲルを混合すると、エアロゲルを溶媒中に均一に分散させることができる。
【0113】
前記プラネタリーミキサーは、均質な混合物を製造するために互いに異なる物質を混合又は撹拌することに使用できる装備であってよい。これは、遊星運動(planetary motion)ができるブレード(blade)を含んでよい。
【0114】
一実施形態において、プラネタリーミキサーは、1つ以上のプラネタリーブレード及び1つ以上の高速分散ブレードのいずれか1つ以上を含んでよい。具体的な例として、前記プラネタリーミキサーは、1つ以上のプラネタリーブレード及び1つ以上の高速分散ブレードを含んでよい。
【0115】
前記プラネタリーブレード及び高速分散ブレードは、それらの軸を中心にして連続回転する。回転速度は、毎分回転数(rotations per minute,rpm)の単位で表現されてよい。
【0116】
一実施形態において、前記プラネタリーミキサーは、回転軸が互いに異なる第1ブレード及び第2ブレードを含んでよい。例えば、前記第1ブレードは低速ブレードであり、前記第2ブレードは高速ブレードであってよい。ここで、低速と高速は、第1ブレードと第2ブレードとの相対的な回転速度を意味する。具体的な例として、前記第1ブレードはオープンブレード(Open blade)であってよく、前記第2ブレードはデスパブレード(Despa blade)であってよい。
【0117】
前記第1ブレードの回転速度は、例えば、10rpm~100rpm、10rpm~60、又は30rpm~70rpmであってよい。また、前記第2ブレードの回転速度は、例えば、100rpm~2000rpm、100rpm~1000rpm、300rpm~1700rpm、又は500rpm~1700rpmであってよい。
【0118】
前記溶媒に機能性物質を投入して混合する時に、第1ブレードの回転速度は10rpm~60rpm、20rpm~50rpm、又は30rpm~40rpmであってよく、第2ブレードの回転速度は300rpm~1700rpm、600rpm~1000rpm、又は700rpm~800rpmであってよい。前記のように溶媒と機能性物質を混合すると、バインダー、分散剤、又はこれらの組合せが均一に分散した溶媒混合液を製造し、後続段階でエアロゲル混合がより容易に行われ得る。
【0119】
前記溶媒混合液及びエアロゲル粉末を混合する時に、ミキサーの第1ブレードの回転速度は30rpm~70rpm、40rpm~70rpm、又は60rpm~70rpmであってよく、第2ブレードの回転速度は500rpm~1700rpm、600rpm~1600rpm、又は800rpm~1500rpmであってよい。前記のように溶媒混合液にエアロゲル粉末を投入して混合すると、エアロゲル粉末が互いに凝集することを防止し、均一な分散を誘導することができる。
【0120】
前記エアロゲル混合液及び繊維状支持体を混合するとき、ミキサーの第1ブレードの回転速度は、10rpm~60rpm、20rpm~50rpm、又は30rpm~40rpmであってよく、第2ブレードの回転速度は、300rpm~1700rpm、400rpm~1500rpm、又は800rpm~1200rpmであってよい。このようにエアロゲル混合液及び繊維状支持体を混合すると、組成物中の気泡が除去され、粘度が調節され、均一に分散されたエアロゲルの間に繊維状支持体が分散されやすいので、組成物中で繊維状支持体の周辺をエアロゲルが覆う形態で存在し得る。ここで、エアロゲルと繊維状支持体との間にはバインダーが存在し、エアロゲルと繊維状支持体との結束力を向上させることができる。
【0121】
一実施形態に係る方法によって断熱シートを形成することにより、断熱性の他に耐久性も改善され、前記断熱シートを製造したり装置の内部に設置する時に又は外部振動の発生時に、エアロゲルが脱落して粉塵が発生することを防止できる。
【0122】
一実施形態において、前記断熱シートの上面と下面との間の縁側面のうち、上部面を含む2個以上の面に発泡層を形成する段階は、前記断熱シートを前記複数のセルの間に配置する前に又は後に行われてよい。
【0123】
一例として、前記発泡層を形成する段階は、前記断熱シートを前記複数のセルの間に配置する前に行われてよい。この場合、前記断熱シートを製造した後、前記断熱シートの側面のうち上部面を含む2個以上の面に発泡層を形成し、発泡層が形成された断熱シートを複数のセルの間にそれぞれ配置することができる。
【0124】
前記発泡層は、コーティング(coating)、ディッピング(dipping)、キャスティング(casting)などの方法で形成されてよい。具体的には、断熱シートの側面のうち上部面を含む2個以上の面に、発泡剤が含まれた溶液を塗布し、コーティング、ディッピング、又はキャスティングすることによって発泡層を形成することができる。
【0125】
他の一例として、前記発泡層を形成する段階は、前記断熱シートを前記複数のセルの間に配置する後に行われてよい。この場合、前記複数のセルの間にそれぞれ断熱シートを配置し、前記断熱シートの側面のうち上部面を含む2個以上の面に発泡層を形成することができる。
【0126】
前記発泡層は注入方法で形成されてよい。具体的には、前記複数のセル及び断熱シートが配置されたバッテリーモジュールの内部に、ディスペンサー、注入器などを用いて、断熱シートの側面のうち上部面を含む2個以上の面に、発泡剤が含まれた溶液又は発泡剤そのものを注入して発泡層を形成することができる。
【0127】
一実施形態は、前記バッテリーモジュールを含むバッテリーパックを含む。前記バッテリーパックの内部には複数のバッテリーモジュールが配置されてよい。
【0128】
以下では本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、以下に記載する実施例は、本発明を具体的に例示又は説明するためのものに過ぎず、これらに本発明が限定されてはならない。また、ここに記載されていない内容は、この技術の分野における熟練した者であれば技術的に十分に類推できるので、その説明を省略する。
【0129】
(バッテリーモジュール製造)
実施例1
1.断熱シート製造
溶媒である超純水に、バインダーとしてポリビニルアルコール(Sigma Aldrich,Poly(vinyl alcohol))を投入した後、オープンブレード30rpm、デスパブレード700rpmの条件で混合し、溶媒混合液を製造した。その後、溶媒混合液にBET値が800m/gであるエアロゲルを投入した後、オープンブレード70rpm、デスパブレード1500rpmの条件で混合し、エアロゲル混合液を製造した。エアロゲル混合液にグラスウールを投入した後、オープンブレード30rpm、デスパブレード1200rpmの条件で混合し、エアロゲル組成物を製造した。ここで、混合時にはプラネタリーミキサー(DIENTEK,PT-005)を使用した。
【0130】
前記製造されたエアロゲル組成物の固形分含有量は、エアロゲル50重量%、グラスウール40重量%、及びポリビニルアルコール10重量%と確認された。
【0131】
0.3mm厚のマイカシート(Famica,Muscovite)上に、前記製造されたエアロゲル組成物をスラリー塗布した後、サンドウィッチタイプで0.3mm厚のマイカシートを積層し、ロール圧延方法でコートした。
【0132】
製造された断熱シートの全厚は3mm、前記エアロゲル層の厚さは2.4mm、前記それぞれのマイカシートの厚さは0.3mmで形成されていることを確認した。
【0133】
2.発泡層製造
前記断熱シートの側面全体に水系熱分解性膨脹コーティング液(Lord,Sipiol FR220)を用いてブラシで塗布する方法によって発泡層を形成した。このとき、前記発泡層の厚さは0.15mmと確認された。
【0134】
3.バッテリーモジュール製造
バッテリーモジュール内に複数のセルを配置し、前記複数のセルの間にそれぞれ、発泡層が形成された断熱シートを配置した。
【0135】
実施例2
前記実施例1において発泡層の厚さを0.25mmとした以外は、前記実施例1と同じ方法で製造した。
【0136】
実施例3
前記実施例1において発泡層の厚さを0.1mmとした以外は、前記実施例1と同じ方法で製造した。
【0137】
実施例4
前記実施例1において発泡層の厚さを0.35mmとした以外は、前記実施例1と同じ方法で製造した。
【0138】
実施例5
前記実施例1において発泡層を形成するとき、断熱シートの側面のうち、上部に形成される発泡層の厚さを0.2mmとし、断熱シートの残りの側面に形成される発泡層の厚さを0.1mmとした以外は、前記実施例1と同じ方法で製造した。
【0139】
実施例6
前記実施例1において前記発泡層を、断熱シートの側面のうち、上下に対向する両面、すなわち断熱シート側面の上下部面にのみ形成した以外は、前記実施例1と同じ方法で製造した。
【0140】
比較例1
前記実施例1においてエアロゲルのみを用いてエアロゲル層を形成し、発泡層を形成していない断熱シートを複数のセルの間にそれぞれ配置した以外は、前記実施例1と同じ方法で製造した。この場合、バインダーの不在によって断熱シートの形成が困難であり、熱伝播防止効果を得ることができなかった。
【0141】
比較例2
前記実施例1において前記発泡層を断熱シートの側面に塗布せず、断熱シートの上面と下面に形成した以外は、前記実施例1と同じ方法で製造した。ここで、製造された断熱シートの全厚は実施例1と同一にしたし、前記発泡層が0.15mmの厚さで断熱シートの上面と下面にも形成されることにより、前記エアロゲル層の厚さは2.1mmで形成されていることを確認した。
【0142】
(実験例)
実験例1:発泡層の発泡前及び後の厚さ増加率評価
前記実施例1~4及び比較例2で製造された発泡層の厚さ増加率を評価した。
【0143】
具体的には、前記それぞれの発泡層が形成された断熱シートに対して発泡前の厚さを測定したし、断熱シートの上面と下面を固定させた後、マイクロトーチを用いて3分間熱を加えて発泡層を発泡させ、発泡後の厚さを測定し、発泡後に上部に拡張された厚さを計算した。その結果は下記の表1に示した。
【0144】
実験例2:断熱シートの物性評価
1.断熱性評価
前記実施例1~4及び比較例2で製造された断熱シートを用いて断熱性を評価した。ここで、実施例1~4及び比較例2において、断熱シートは、発泡層が形成された断熱シートを意味できる。
【0145】
具体的には、対向する一対の1T厚のアルミニウムプレートの間にそれぞれの断熱シートを入れ、ヒートプレス上に載せ、ヒートプレス上板は350℃に加熱し、ヒートプレス下板は加熱せずに開始温度である40℃に保たせた。その後、ヒートプレス下板に20kNの圧力を加え、11分後のヒートプレス下板の最高温度を測定し、それを下記の表1に示した。
【0146】
2.圧縮性評価
前記実施例1~4及び比較例2で製造された断熱シートを用いて圧縮性能を評価した。ここで、実施例1~4及び比較例2において、断熱シートは、発泡層が形成された断熱シートを意味できる。
【0147】
具体的には、UTM装備において40kNの荷重を加えた時の厚さを基準にして、5kNの荷重を加えた時の厚さ比率を測定し、下記の表1に示した。
【0148】
実験例3:熱伝播評価
前記実施例1~4及び比較例2で製造されたバッテリーモジュールを用いて火炎伝播の有無に対する評価を行った。
【0149】
具体的には、前記熱伝播の評価は、上部カバーが付着し、セルの上部とカバーとのギャップが1.5mmである50Ah角形(NCM 811/Graphite) 2-cell簡易モジュール装置を用いて、ネール浸透(nail penetration)条件で熱伝播する方法で行った。その結果は下記の表1に示した。
【0150】
【表1】
【0151】
上記の表1を参照すると、実施例1~4と対比して、比較例2では、発泡層を断熱シートの側面のうち前面と後面に形成しているため、上部に拡張される発泡層の厚さがわずかであり、同一厚さの条件においてエアロゲル層の比率が低くなり、断熱性と圧縮性の両方とも低下したことが確認できた。特に、実施例1及び2において、発泡層を断熱シートの側面全体に形成し、発泡層の厚さを断熱シートの全厚の5%~10%に制御した場合に、発泡層の厚さに対する厚さ増加効率に優れ、断熱性、圧縮性、耐火性及び難燃性がより優れていることが確認できた。
【0152】
一方、実施例5のように、断熱シートの側面のうち下部面の発泡層の厚さを上部面に比べて多少薄く形成するか、実施例6のように、断熱シートの側面のうち上部面と下部面にのみ発泡層を形成する場合にも、十分の熱伝播防止効果が得られるということも別に確認した。
【0153】
したがって、一実施形態に係るバッテリーモジュールは、複数のセルの間に断熱シートが配置され、前記断熱シートの側面に発泡層が形成された構造を有することにより、断熱性、圧縮性及び火炎防止効果に優れていることが確認できた。
【0154】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、及び添付する図面の範囲内で様々に変形して実施することが可能であり、それらも本発明の範囲に属することは当然である。
【符号の説明】
【0155】
10 セル
20 断熱シート
21 第1基材
22 第2基材
23 エアロゲル層
30 発泡層
100 バッテリーモジュール
図1
図2
図3