(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003402
(43)【公開日】2025-01-09
(54)【発明の名称】粘着フィルムおよびそれを含む光学表示装置
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20241226BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20241226BHJP
C09J 133/00 20060101ALI20241226BHJP
C09J 139/06 20060101ALI20241226BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/06
C09J133/00
C09J139/06
C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099872
(22)【出願日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】10-2023-0080006
(32)【優先日】2023-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ド ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム,スン ハン
(72)【発明者】
【氏名】キム,イル ジン
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AA10
4J004AA17
4J004AB01
4J004BA02
4J004DA03
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA01
4J004FA08
4J040DF002
4J040DF041
4J040DF051
4J040DF061
4J040DH031
4J040FA132
4J040HC22
4J040HC25
4J040HD32
4J040HD35
4J040HD36
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA18
4J040KA29
4J040KA30
4J040KA42
4J040LA10
(57)【要約】
【課題】部分的に硬化された状態の粘着フィルムであり、適正な範囲の弾性率および剥離力を提供し、後硬化でも適正な範囲の弾性率および剥離力を提供し、UVによる損傷から有機発光素子を保護する、粘着フィルムを提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル系共重合体、連鎖移動剤、光開始剤、およびUV吸収剤の混合物を含み、UV吸収剤の混合物は、第一UV吸収剤としてインドール系UV吸収剤と、第二UV吸収剤としてトリアジン系UV吸収剤である2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン系、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤である2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノールの1種以上と、を含む、粘着フィルムおよびそれを含む光学表示装置を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体、連鎖移動剤、光開始剤、およびUV吸収剤の混合物を含み、
前記UV吸収剤の混合物は、第一UV吸収剤としてインドール系UV吸収剤と、第二UV吸収剤としてトリアジン系UV吸収剤である2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン系、およびベンゾトリアゾール系UV吸収剤である2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノールの1種以上と、を含む、粘着フィルム。
【請求項2】
前記粘着フィルムは、下記数式1の比率が80%以上100%未満である、請求項1に記載の粘着フィルム:
[数式1]
貯蔵弾性率の比率=A/B×100
(前記数式1で、
Aは、粘着フィルムの25℃における貯蔵弾性率(単位:kPa)であり、
Bは、後硬化された粘着フィルムの25℃における貯蔵弾性率(単位:kPa)である)。
【請求項3】
前記粘着フィルムは、波長380nmにおける光透過率が1%以下である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着フィルムは、波長405nmにおける光透過率が3%以下である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記粘着フィルムは、25℃における貯蔵弾性率が150kPa以下で、60℃における貯蔵弾性率が100kPa以下である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記インドール系UV吸収剤は、下記一般式1の化合物を含む、請求項1に記載の粘着フィルム:
[一般式1]
【化1】
(前記一般式1で、R
1は、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、
R
2は、水素、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、
R
3は、水素、またはは置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、
R
4は、水素、シアノ基(CN)、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、
R
5は、シアノ基または-(C=O)O-R
6(このとき、R
6は置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基))。
【請求項7】
前記インドール系UV吸収剤は、前記粘着フィルム中に0.01重量%~10重量%で含まれる、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
前記第二UV吸収剤は、粘着フィルム中に0.01重量%~5重量%で含まれる、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項9】
前記粘着フィルム中、下記数式3の重量比は0.06~6である、請求項1に記載の粘着フィルム:
[数式3]
重量比=光開始剤/第二UV吸収剤。
【請求項10】
前記第一UV吸収剤および前記第二UV吸収剤の合計は、前記UV吸収剤の混合物中95重量%以上である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項11】
前記(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体およびホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体を含む単量体混合物の共重合体である、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項12】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、前記アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体、前記水酸基含有(メタ)アクリル系単量体それぞれのホモポリマーのガラス転移温度に比べてより高いガラス転移温度を有する、請求項11に記載の粘着フィルム。
【請求項13】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、窒素を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体、脂環族基を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体の1種以上を含む、請求項11に記載の粘着フィルム。
【請求項14】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、イソボニル(メタ)アクリレートの1種以上を含む、請求項11に記載の粘着フィルム。
【請求項15】
前記単量体混合物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体をさらに含む、請求項11に記載の粘着フィルム。
【請求項16】
前記粘着フィルムは、
前記(メタ)アクリル系共重合体100重量部、
前記連鎖移動剤0.01重量部~2重量部、
前記光開始剤0.1重量部~2重量部、
前記第一UV吸収剤0.01重量部~0.5重量部、および
前記第二UV吸収剤0.01重量部~5重量部を含む粘着フィルム用組成物で形成される、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項17】
前記粘着フィルムは、有機ナノ粒子をさらに含む、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項18】
前記有機ナノ粒子は、コア-シェル型であり、下記数式4を満たす、請求項17に記載の粘着フィルム:
[数式4]
Tg(c)<Tg(s)
(前記数式4で、Tg(c)はコアのガラス転移温度(単位:℃)であり、Tg(s)はシェルのガラス転移温度(単位:℃)である)。
【請求項19】
前記粘着フィルムは、架橋剤、シランカップリング剤の1種以上をさらに含む、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか一項に記載の粘着フィルムの後硬化物を含む、光学表示装置。
【請求項21】
前記光学表示装置は、偏光板を含まない、請求項20に記載の光学表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
粘着フィルムおよびそれを含む光学表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学表示装置内で使用されていた偏光板を取り除く試みが続けられている。これにより、光学表示装置の薄型化、製造コストの低減および加工性の改善効果を提供することができる。よって、粘着フィルムは、従来の偏光板が実現していた機能を提供しなければならない。
【0003】
偏光板がない光学表示装置において、有機発光素子パネルの上部面(外部光が有機発光素子パネルに入射される面)に積層される粘着フィルムは、UVによる損傷から有機発光素子を保護する必要がある。
【0004】
粘着フィルムを形成する組成物によっては、有機発光素子パネルに貼り合わされる前に所定の範囲の硬化率で部分的に硬化させて粘着フィルムを製造された後に、粘着フィルムが有機発光素子パネルに貼り合わされ、有機発光素子パネルに貼り合わされた状態で後硬化されてもよい。粘着フィルムが完全に硬化した状態で有機発光素子パネルに貼り合わされるものに比べ、部分的に硬化させて製造された粘着フィルムは貯蔵弾性率が相対的に低い。よって、部分的に硬化させて製造された粘着フィルムは、有機発光素子パネルにさらにうまく貼り合わせることができる。一方、後硬化は有機発光素子パネル上で行われるため、光硬化が好ましいかもしれない。
【0005】
UVによる損傷から有機発光素子を保護しながら、同時に部分的に硬化した状態で適正な範囲の弾性率および剥離力を提供し、後硬化でも適正な範囲の弾性率および剥離力を提供する粘着フィルムが望まれている。
【0006】
本発明の背景技術は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2007-0055363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一実施形態によると、部分的に硬化された状態の粘着フィルムであり、適正な範囲の弾性率および剥離力を提供し、後硬化でも適正な範囲の弾性率および剥離力を提供し、UVによる損傷から有機発光素子を保護する、粘着フィルムが提供される。
【0009】
一実施形態によると、粘着フィルムが提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体、連鎖移動剤、光開始剤、およびUV吸収剤の混合物を含み、UV吸収剤の混合物は、第一UV吸収剤としてインドール系UV吸収剤と、第二UV吸収剤としてトリアジン系UV吸収剤である2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン系、およびベンゾトリアゾール系UV吸収剤である2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノールの1種以上と、を含む。
【0011】
別の実施形態によると、光学表示装置が提供される。
【0012】
光学表示装置は、粘着フィルムの硬化物を含む。
【発明の効果】
【0013】
部分的に硬化された状態の粘着フィルムであり、適正な範囲の弾性率および剥離力を提供し、後硬化でも適正な範囲の弾性率および剥離力を提供し、UVによる損傷から有機発光素子を保護する、粘着フィルムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を、実施形態によって、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。本発明は、様々な相違する形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
ここで使用する用語は、単に例示的な実施形態を説明するために使用するものであり、本発明を限定しようとする意図はない。単数の表現は文脈上はっきり他の意味を示していない限り、複数の表現を含む。
【0016】
本明細書において、「後硬化」は光硬化であり、光硬化は、粘着フィルム(例えば、厚さ100μm~200μm)に対して、メタルハライドランプを使用して波長315nm~400nmのUVを1000mJ/cm2~3000mJ/cm2、好ましくは、2000mJ/cm2~3000mJ/cm2の光量で照射する硬化工程を含んでもよい。
【0017】
本明細書において、「部分的な硬化」は光硬化であり、光硬化は粘着フィルム用組成物を離型フィルムの一面に所定の厚さで塗布し、BLランプ(ブラックライトランプ)を使用して波長315nm~400nmのUVを300mJ/cm2~2000mJ/cm2の光量で照射する硬化工程を含んでもよい。
【0018】
本明細書において、「ホモポリマーのガラス転移温度」は、測定対象の単量体のホモポリマーに対して、TA Instrument社のDSC Discoveryを用いて測定したガラス転移温度(Tg)を意味する。具体的には、測定対象の単量体のホモポリマーに対して20℃/分の速度で180℃まで温度を上げた後、徐々に冷まして-100℃まで冷却させ、10℃/分の速度で100℃まで昇温した時の吸熱転移曲線のデータを得た後、吸熱転移曲線の変曲点をガラス転移温度として決定する。
【0019】
本明細書において、有機ナノ粒子の「平均粒径」は、Malvern社のZetasizer nano-ZS装備で水系または有機系溶媒で測定してZ-average値で表現される有機ナノ粒子の粒径、およびSEM/TEM観察時に確認される粒径である。
【0020】
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタアクリルを意味する。
【0021】
本明細書において、「屈折率」は、可視光線領域、例えば波長550nmで測定された値である。
【0022】
本明細書において、「光透過率」は、単体光透過率を意味する。
【0023】
本明細書において、数値範囲の記載時に「X~Y」は、X以上Y以下(X≦且つ≦Y)を意味する。
【0024】
一実施形態は、OCA(optical clear adhesive)フィルムに対するものである。
【0025】
一実施形態によると、粘着フィルムが提供され、粘着フィルムは、下記で説明する粘着フィルム用組成物が部分的に硬化されたものである。下記で説明するが、粘着フィルムは、偏光板がない光学表示装置で、被着体(例えば、光学表示装置用パネル)に貼り合わされ、後硬化されることにより、最終的にパネルに貼り合わせ且つ固定され得る。
【0026】
一実施形態において、「後硬化された粘着フィルム」は、下記数式1の比率が100%の粘着フィルムを意味する。
【0027】
粘着フィルムは後硬化前の状態であり、粘着フィルムは、後硬化された粘着フィルムに比べて同一の測定温度で異なる貯蔵弾性率を有する。これは、粘着フィルムが、後硬化された粘着フィルムに比べて異なる硬化率を有することを判別できるようにさせる。
【0028】
一実施形態において、粘着フィルムは、下記数式1により算出された貯蔵弾性率の比率が80%以上100%未満、例えば80%~95%であってもよい。
【0029】
[数式1]
貯蔵弾性率の比率=A/B×100
(数式1で、Aは、粘着フィルムの25℃における貯蔵弾性率(単位:kPa)であり、
Bは、後硬化された粘着フィルムの25℃における貯蔵弾性率(単位:kPa)である)。
【0030】
これと関連して、粘着フィルムは、光硬化率が80%以上100%未満、例えば90%~99%であってもよい。「光硬化率」は、下記の方法で測定することができる。
【0031】
粘着フィルム用組成物に対して、FT-IR(NICOLET 4700,Thermo社)を使用して1635cm-1付近(C=C)、1720cm-1付近(C=O)における吸収ピークの強度を測定する。ガラス基板上に組成物を塗布し、BLランプ(ブラックライトランプ)で波長315nm~400nmのUVを1000mJ/cm2の光量で照射することによって光硬化させ、20cm×20cm×3μm(横×縦×厚さ)の粘着フィルム試片を得る。粘着フィルムを取り分け、FT-IR(NICOLET 4700,Thermo社)を用いて1635cm-1付近(C=C)、1720cm-1付近(C=O)における吸収ピークの強度を測定する。光硬化率は、下記数式2によって計算する。
【0032】
[数式2]
光硬化率(%)=|1-(C/D)|×100
(数式2で、Cは、粘着フィルムに対して、1720cm-1付近における吸収ピークの強度に対する1635cm-1付近における吸収ピークの強度の比であり、
Dは、粘着フィルム用組成物に対して、1720cm-1付近における吸収ピークの強度に対する1635cm-1付近における吸収ピークの強度の比である)。
【0033】
粘着フィルムは、部分的に硬化された状態であるにもかかわらず、適正な範囲の貯蔵弾性率および剥離力を有することにより、高い信頼性で被着体に貼り合わせることができる。
【0034】
一実施形態において、粘着フィルムは、25℃における貯蔵弾性率が150kPa以下、例えば10kPa~150kPaであってもよい。この範囲で、粘着フィルムは後硬化後の粘弾性が良くなり屈曲信頼性に優れる。
【0035】
一実施形態において、粘着フィルムは、60℃における貯蔵弾性率が100kPa以下、例えば10kPa~50kPaであってもよい。この範囲で、粘着フィルムは後硬化後の粘弾性が良くなり屈曲信頼性に優れる。
【0036】
一実施形態において、粘着フィルムはガラス板に対する剥離力が4000gf/inch以上、例えば4000gf/inch~6000gf/inchであってもよい。範囲で、粘着フィルムは、後硬化後にパネルから容易に剥離しなくなるため信頼性に優れる。
【0037】
粘着フィルムは、後硬化後の適正な範囲の貯蔵弾性率および剥離力を有することにより、被着体に高信頼性で貼り合わせ且つ固定され、反復的な屈曲で優れた屈曲信頼性を提供することができる。
【0038】
一実施形態において、粘着フィルムは、後硬化後に25℃における貯蔵弾性率が150kPa以下、例えば10kPa~150kPaであってもよい。この範囲で、粘着フィルムは後硬化後の粘弾性が良くなり屈曲信頼性に優れる。
【0039】
一実施形態において、粘着フィルムは、後硬化後の60℃における貯蔵弾性率が50kPa以下、例えば10kPa~50kPaであってもよい。この範囲で、粘着フィルムは後硬化後の粘弾性が良くなり屈曲信頼性に優れる。
【0040】
一実施形態において、粘着フィルムは、後硬化後のガラス板に対する剥離力が4000gf/inch以上、例えば4000gf/inch~6000gf/inchであってもよい。この範囲で、粘着フィルムは後硬化後にパネルからの剥離が容易でなくなるため信頼性に優れる。
【0041】
粘着フィルムは、UVによる損傷から有機発光素子を保護する効果を奏する。一実施形態によると、粘着フィルムは、後硬化後に所定の範囲の波長領域で光透過率を有して、UVによる損傷から有機発光素子を保護することができる。勿論、粘着フィルムは、後硬化前にも所定の範囲の波長領域で光透過率を有し、UVによる損傷から有機発光素子を保護することができる。
【0042】
一実施形態において、粘着フィルムは、波長380nmにおける光透過率が1%以下、例えば0%以上1%未満、0.01%~0.5%であってもよい。この範囲で、UVによる損傷から有機発光素子を保護する効果を奏することができる。
【0043】
一実施形態において、粘着フィルムは、波長405nmにおける光透過率が3%以下、例えば0%以上3%未満、0.01%~2.5%であってもよい。この範囲で、UVによる損傷から有機発光素子を保護する効果を奏することができる。
【0044】
ここで、「波長380nmにおける光透過率」および「波長405nmにおける光透過率」は、粘着フィルムおよびの後硬化された粘着フィルムに対して測定した値である。
【0045】
一実施形態において、粘着フィルムは、波長430nmにおける光透過率が70%以上、例えば70%~85%、75%~80%であってもよい。この範囲で、透明粘着フィルムとして光学表示装置に使用することができる。
【0046】
ここで、「波長430nmにおける光透過率」は、粘着フィルム、および後硬化された粘着フィルムに対して測定された値である。
【0047】
粘着フィルムは、下記で説明する粘着フィルム用組成物を光硬化によって部分的に硬化させて粘着フィルムを製造すると共に、波長380nmおよび405nmのそれぞれで上述の光透過率を提供するために、下記で説明する特定UV吸収剤として、第一UV吸収剤としてインドール系UV吸収剤と、第二UV吸収剤としてトリアジン系UV吸収剤である2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン、およびベンゾトリアゾール系UV吸収剤である2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノールの1種以上と、を含む。一般に、UV吸収剤は光硬化時に照射されるUVを吸収することにより、硬化率を下げることができる。
【0048】
粘着フィルムは、の第一UV吸収剤および第二UV吸収剤を含む。
【0049】
の第一UV吸収剤および第二UV吸収剤は、下記で説明する(メタ)アクリル系共重合体を含む粘着フィルム用組成物を部分的に硬化させて、上述の貯蔵弾性率および剥離力を提供する粘着フィルムを提供することができる。
【0050】
また、第二UV吸収剤は、第一UV吸収剤と一緒に含まれることにより、第二UV吸収剤を含まず同一の含量の第一UV吸収剤を含む粘着フィルムに比べて、波長380nmおよび405nmにおける光透過率を著しく下げることができる。
【0051】
また、同一の含量の第一UV吸収剤とともに第二UV吸収剤とは異なる種類のUV吸収剤を含む粘着フィルムに比べて、第一UV吸収剤とともに第二UV吸収剤を含む粘着フィルムは、波長380nmおよび405nmにおける光透過率を著しく下げることができる。
【0052】
また、第一UV吸収剤を含有しても、第二UV吸収剤以外の別の種類のUV吸収剤を含有する粘着フィルムは、UV吸収率の性能の低下によって、有機発光素子を損傷から保護する効果を下げることになり、粘着フィルムの色の均一性の低下によって反射の色品質の低下を生じる。
【0053】
特に、本発明は、下記で説明する(メタ)アクリル系共重合体および連鎖移動剤、光開始剤を含む粘着フィルム用組成物で形成された粘着フィルムに対して、上述の本発明の効果を達成することができる。以下、一実施形態に係る粘着フィルムを説明する。
【0054】
粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体、連鎖移動剤、光開始剤およびUV吸収剤の混合物を含み、UV吸収剤の混合物は、第一UV吸収剤としてインドール系UV吸収剤と、第二UV吸収剤としてトリアジン系UV吸収剤である2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン、およびベンゾトリアゾール系UV吸収剤として2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノールの1種以上と、を含むことができる。
【0055】
(メタ)アクリル系共重合体は、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体、および水酸基含有(メタ)アクリル系単量体を含む単量体混合物の共重合体であってもよい。
【0056】
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体は、粘着フィルムのマトリックスを形成することができる。アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体は、非置換の直鎖型または分岐鎖型の、炭素数1~炭素数20のアルキル基含有(メタ)アクリレートであってもよい。例えば、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体は、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、iso-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレートの一つ以上、好ましくは、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレートの一つ以上、より好ましくは、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ブチルアクリレートを含むことができる。
【0057】
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が-20℃以下、例えば、-80℃~-20℃、-80℃~-40℃であってもよい。この範囲で、粘着フィルムの低温および高温高湿でのフォールディング性の改善が容易になる。
【0058】
アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中に10重量%~90重量%、20重量%~60重量%、例えば、25重量%~55重量%、30重量%~50重量%で含まれてもよい。この範囲で、粘着フィルムの低温および高温高湿でのフォールディング性の改善が容易になる。
【0059】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、粘着フィルムの剥離力を提供することができる。
【0060】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、1個以上の水酸基を含有する、直鎖型または分岐鎖型の、炭素数1~10の(メタ)アクリレートであってもよい。例えば、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートの1種以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下、例えば、-70℃~0℃、-60℃~-10℃、-50℃~-10℃であってもよい。この範囲で、粘着フィルムの剥離力およびフォールディング性を容易に高くすることができる。
【0062】
水酸基含有(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中に0.1重量%~30重量%、例えば、1重量%~30重量%、5重量%~25重量%、10重量%~25重量%で含まれてもよい。この範囲で、粘着フィルムの剥離力および耐久信頼性がより向上する。
【0063】
単量体混合物は、ホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体をさらに含んでもよい。
【0064】
ホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、粘着フィルムの剥離力を高くしたり、凝集力強化効果を提供したりすることができる。
【0065】
一実施形態において、ホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体のそれぞれのホモポリマーガラス転移温度に比べて、より高いガラス転移温度を有することができる。これは、ホモポリマーのガラス転移温度が低いアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体、ホモポリマーのガラス転移温度が低い水酸基含有(メタ)アクリル系単量体のみを適用した場合に比べて、粘着フィルムの剥離力を高くすると共に、貯蔵弾性率範囲に容易に到達することができる。
【0066】
例えば、ホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、ホモポリマーのガラス転移温度が5℃以上、例えば、5℃~200℃、10℃~200℃であってもよい。この範囲で、粘着フィルムの剥離力の上昇効果を奏する。
【0067】
ホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、上述のホモポリマーのガラス転移温度範囲を有する場合は、その種類に特別な限定を設けない。
【0068】
一実施形態によると、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、下記で説明するUV吸収剤の希釈を容易にさせるために、窒素を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体を使用することができる。粘着フィルムは、無溶剤型の粘着フィルム用組成物で製造することができため、粘着フィルムのヘーズが高くならないように、粘着フィルム用組成物中でUV吸収剤をよく希釈する必要がある。無溶剤型の粘着フィルム用組成物は、光硬化適用時に均一な表面を有する粘着フィルムを提供することができる。
【0069】
一実施形態において、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、UV吸収剤の分散効果の極大化および剥離力向上効果を提供するために、ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体、脂環族基を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体の1種以上を含むことができる。
【0070】
一実施形態において、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体、および脂環族基を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体の混合物であってもよい。
【0071】
ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体としては、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等であってもよい。
【0072】
ヘテロ脂環族基を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、単量体混合物中に0.1重量%~30重量%、例えば、1重量%~20重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%で含まれてもよい。この範囲で、粘着フィルムの剥離力および耐久信頼性をより向上させることができる。
【0073】
脂環族基を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体としては、ジヒドロジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート(例えば、DCPA(ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート))、イソボニル(メタ)アクリレート等であってもよい。
【0074】
脂環族基を有する(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、単量体混合物中に0.1重量%~30重量%、例えば、1重量%~20重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%で含まれてもよい。この範囲で、粘着フィルムの剥離力および耐久信頼性をより向上させることができる。
【0075】
ホモポリマーのガラス転移温度が高い(メタ)アクリル系またはビニル系単量体は、単量体混合物中に0重量%~70重量%、例えば10重量%~50重量%で含有されてもよい。この範囲で、粘着力の上昇効果を奏することができる。
【0076】
一実施形態において、単量体混合物中、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体、およびホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体の合計は、80重量%以上、例えば80重量%~100重量%であってもよい。この範囲で、本発明の粘着フィルムの効果の実現が容易になる。
【0077】
単量体混合物は、芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体をさらに含むことができる。
【0078】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、粘着フィルムの後硬化前および後硬化後の誘電率を下げたり、または屈折率調節の効果を提供したりすることができる。
【0079】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基、或いは置換または非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基含有(メタ)アクリル系単量体として、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジルフェニル(メタ)アクリレート等であってもよい。
【0080】
芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体は、単量体混合物中に0重量%~70重量%、例えば10重量%~40重量%で含有されてもよい。この範囲で、誘電率を下げたり、または屈折率調節の効果を提供したりすることができる。
【0081】
一実施形態において、単量体混合物中、アルキル基含有(メタ)アクリル系単量体、水酸基含有(メタ)アクリル系単量体、ホモポリマーのガラス転移温度が高い、(メタ)アクリル系またはビニル系単量体、および芳香族基含有(メタ)アクリル系単量体の合計は、95重量%以上、例えば95重量%~100重量%であってもよい。この範囲で、本発明の粘着フィルムの効果の実現が容易になる。
【0082】
(メタ)アクリル系共重合体は、当業者に知られている重合方法を用いて上述の単量体混合物から製造することができる。
【0083】
連鎖移動剤は、粘着フィルムに含まれて(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量の調節により、(メタ)アクリル系共重合体の流動性を増加させる効果を奏する。連鎖移動剤は、1級または2級単官能チオール系化合物または多官能チオール系化合物、チオグリコール酸系化合物、チオカルボニル系化合物、メルカプトプロピオン酸系化合物の1種以上を含むことができる。
【0084】
連鎖移動剤は、具体的には、β-メルカプトプロピオン酸、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、3,3’-チオジプロピオン酸、ジチオプロピオン酸、ラウリルチオプロピオン酸、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸モノエタノールアミン、チオグリコール酸ジアンモニウム等を挙げることができる。
【0085】
連鎖移動剤は、固形分基準、粘着フィルム用組成物中の(メタ)アクリル系共重合体、または粘着フィルム中の(メタ)アクリル系共重合体の硬化物100重量部に対して、0.01重量部~2重量部、例えば、0.1重量部~1重量部、0.1重量部~0.5重量部、0.1重量部~0.3重量部で含有されてもよい。この範囲で、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量の調節による流動性増加効果、および過剰量含まれることにより粘着フィルムの透明性が低下することを防ぐ効果を奏する。
【0086】
本明細書において、「(メタ)アクリル系共重合体の硬化物」は、(メタ)アクリル系共重合体が光開始剤によって部分的に硬化した生成物を意味する。
【0087】
連鎖移動剤は、粘着フィルム中に0.01重量%~2重量%、例えば、0.01重量%~0.5重量%で含有されてもよい。この範囲で、(メタ)アクリル系共重合体の重量平均分子量の調節による流動性増加効果、および過剰量含まれることにより粘着フィルムの透明性が低下することを防ぐ効果を奏する。
【0088】
光開始剤は、粘着フィルム用組成物を硬化させて粘着フィルムを形成し、粘着フィルムを後硬化させることができる。好ましくは、光開始剤は光ラジカル開始剤を含んでもよい。
【0089】
光開始剤は、光照射等による硬化を行うことができれば、特に限定されない。例えば、光開始剤は、ベンゾイン系、ヒドロキシケトン系、アミノケトン系またはホスフィンオキシド系光開始剤等を使用することができる。
【0090】
光開始剤は、固形分基準、粘着フィルム用組成物中に、(メタ)アクリル系共重合体100重量部に対して、0.1重量部~2重量部、例えば、0.1重量部~1重量部、0.3重量部~0.6重量部で含有することができる。この範囲で、粘着フィルム用組成物を硬化させて粘着フィルムを形成し、後硬化も容易にする効果を奏する。
【0091】
光開始剤は、粘着フィルム中に0.01重量%~5重量%、例えば、0.01重量%~1重量%、0.2重量%~0.6重量%で含有してもよい。この範囲で、粘着フィルム用組成物を硬化させて粘着フィルムを形成し、後硬化も容易にする効果を奏する。
【0092】
粘着フィルムは、第一UV吸収剤として、インドール系UV吸収剤を含む。
【0093】
インドール系UV吸収剤は、上述の波長380nmまたは405nmにおける光透過率を下げることができる。よって、粘着フィルムが光学表示装置に適用される際、粘着フィルムは、UVによる有機発光素子の損傷を防ぐ効果を奏することができる。
【0094】
インドール系UV吸収剤は、最大吸収波長が390nm以上、具体的には390nm以上400nm以下、より具体的には390nm超過400nm未満であってもよい。この範囲で、外光中の波長420nm以下、波長400nm~420nm、波長405nm以下における光を十分に吸収してUV透過率を下げることにより、有機発光素子の損傷を低減することができる。「最大吸収波長」は、最大吸収ピークを表す波長、つまり、波長による吸光度曲線における最大吸光度を出す波長を意味する。「吸光度」は、当業者に知られている通常の方法で測定することができる。
【0095】
インドール系UV吸収剤は、下記一般式1の化合物を含むことができる。
[一般式1]
【化1】
(式1で、R
1は、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、
R
2は、水素、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、
R
3は、水素、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、
R
4は、水素、シアノ基(CN)、または置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、
R
5は、シアノ基または-(C=O)O-R
6(このとき、R
6は置換もしくは非置換の炭素数1~10のアルキル基、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基))。
【0096】
具体的には、R1は炭素数1~5のアルキル基、具体的にはメチル基、R2は炭素数6~10のアリール基、具体的にはフェニル基、R3は水素または炭素数1~5のアルキル基、具体的には水素、R4はシアノ基、R5はシアノ基または-(C=O)-O-R6(このとき、R6は置換または非置換の炭素数1~5のアルキル基)。
【0097】
より具体的には、インドール系UV吸収剤は、下記一般式1-1または下記一般式1-2の化合物を含むことができる。
[一般式1-1]
【化2】
[一般式1-2]
【化3】
【0098】
一実施形態において、インドール系UV吸収剤は、融点が100℃以上、具体的には140℃~220℃で、常温で固相の吸収剤であってもよい。
【0099】
インドール系UV吸収剤は、固形分基準、粘着フィルム用組成物中の(メタ)アクリル系共重合体または粘着フィルム中に、(メタ)アクリル系共重合体の硬化物100重量部に対して、0.01重量部~0.5重量部、例えば、0.05重量部~0.5重量部、0.05重量部~0.3重量部で含有することができる。範囲で、UVによる損傷から有機発光素子を保護および光硬化時の硬化率の低下を防ぐ効果を奏することができる。
【0100】
インドール系UV吸収剤は、粘着フィルム中に0.01重量%~10重量%、例えば、0.01重量%~5重量%、0.01重量%~3重量%で含有されてもよい。この範囲で、UVによる損傷から有機発光素子を保護、および光硬化時の硬化率の低下を防ぐ効果を奏することができる。
【0101】
粘着フィルムは、第二UV吸収剤としてトリアジン系UV吸収剤である2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン系吸収剤、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤として2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノールの1種以上を含む。この特定の第二UV吸収剤は、UV光を吸収して有機発光素子を損傷から保護する効果を与え、粘着フィルム用組成物の部分的な硬化時に、上述の弾性率および剥離力に容易に到達することができ、第一UV吸収剤との組み合わせにおいて、波長380nmおよび405nmで光透過率を著しく低減させることができる。
【0102】
一実施形態において、トリアジン系UV吸収剤は、下記一般式2の化合物であってもよい。
[一般式2]
【化4】
【0103】
トリアジン系UV吸収剤は、当業者に知られている方法で製造されたり、または商品名Tinuvin477を使用したりすることができる。
【0104】
ベンゾトリアゾール系UV吸収剤は、下記一般式3の化合物であってもよい。
[一般式3]
【化5】
【0105】
ベンゾトリアゾール系UV吸収剤は、当業者に知られている方法で製造されたり、または商品名Tinuvin326を使用したりすることができる。
【0106】
第二UV吸収剤は、固形分を基準として、粘着フィルム用組成物中に、(メタ)アクリル系共重合体または(メタ)アクリル系共重合体の硬化物100重量部に対して、0.01重量部~5重量部、例えば0.1重量部~5重量部で含有することができる。範囲で、UV光吸収をして有機発光素子を損傷から保護する効果を奏することができる。
【0107】
第二UV吸収剤は、粘着フィルム中に、0.01重量%~5重量%、例えば、0.05重量%~5重量%、0.1重量%~5重量%で含有することができる。範囲で、UV光吸収をして有機発光素子を損傷から保護する効果を奏することができる。
【0108】
UV吸収剤効果とUV開始反応による部分的な硬化のための光硬化をするために、粘着フィルムまたは粘着フィルム用組成物中に、数式3による、光開始剤と第二UV吸収剤間の含量重量比を0.06~6、好ましくは0.1~3に調節する。この範囲で、UV開始光硬化反応が起こりながら、UV吸収効果を奏することができる。
【0109】
[数式3]
重量比=光開始剤/第二UV吸収剤
【0110】
第一UV吸収剤および第二UV吸収剤の合計は、粘着フィルム中に含有された全UV吸収剤中に、95重量%以上、例えば95重量%~100重量%で含有することができる。この範囲で、本発明の効果の実現が容易になり、過剰量のUV吸収剤の添加による粘着フィルムのヘーズ増加の問題がなくなる。ここで、「全UV吸収剤」は、UV吸収領域で光を吸収することで当業者に知られている通常の吸収剤を意味する。
【0111】
第一UV吸収剤:第二UV吸収剤は、粘着フィルム中に、1:0.5~1:90、好ましくは1:0.5~1:85の重量比で含まれてもよい。この範囲で、本願のUV吸収剤による効果の実現が容易になる。
【0112】
粘着フィルムは、架橋剤をさらに含むことができる。
【0113】
架橋剤は、粘着フィルム用組成物の架橋度を高めて粘着フィルムの機械的強度を高めることができる。
【0114】
架橋剤は、活性エネルギー線で硬化可能な多官能性(メタ)アクリレートを含むことができる。例えば、架橋剤は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレート、または9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等のような二官能性アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレート、またはトリス(メタ)アクリロキシエチルイソシアヌレート等の3官能型アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、またはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型アクリレート;およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、またはウレタン(メタ)アクリレート(ex.イソシアネート単量体およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物等の6官能型アクリレート等を挙げることができるが、これらに限定されるのではない。
【0115】
架橋剤は、固形分を基準として、粘着フィルム用組成物中に(メタ)アクリル系共重合体、または(メタ)アクリル系共重合体の硬化物100重量部に対して、0重量部~5重量部、例えば0.01重量部~1重量部で含有することができる。範囲で、粘着フィルムの他の物性に影響を与えないと共に、粘着フィルムの機械的強度を高めることができる。
【0116】
粘着フィルムは、シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0117】
シランカップリング剤は、被着体に対する粘着フィルムの剥離力をより高めることができる。シランカップリング剤は、当業者に知られている通常の種類を含むことができる。例えば、シランカップリング剤は、3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドオキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;および3-クロロプロピルトリメトキシシラン等からなる群から選ばれる1種以上を含むことができるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
シランカップリング剤は、固形分を基準として、粘着フィルム用組成物中に(メタ)アクリル系共重合体、または(メタ)アクリル系共重合体の硬化物100重量部に対して0重量部~5重量部、例えば0.1重量部~3重量部で含有されてもよい。範囲で、粘着フィルムの他の物性に影響を及ぼさないと共に、粘着フィルムの被着体に対する粘着力を高めることができる。
【0119】
シランカップリング剤は、粘着フィルム中に、0重量%~5重量%、具体的には0.1重量%~3重量%で含まれてもよい。範囲で、粘着フィルムの他の物性に影響を及ぼさないと共に、粘着フィルムの被着体に対する粘着力を高めることができる。
【0120】
粘着フィルムは、帯電防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、イオン性液体、リチウム塩、無機充填剤、軟化剤、分子量調節剤、酸化防止剤、老化防止剤、安定剤、粘着付与樹脂、改質樹脂(ポリオール樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン樹脂等)、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、染料、顔料(着色顔料、体質顔料等)、処理剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、凝集剤、潤滑剤等の通常の添加剤をさらに含むことができる。
【0121】
添加剤は、粘着フィルム中に10重量%以下、具体的には0.01重量%~10重量%、具体的には0.01重量%~1重量%で含まれてもよい。この範囲で、粘着フィルムの粘着力、信頼性に影響を与えないと共に、添加剤の効果を奏することができる。
【0122】
粘着フィルムは、厚さが200μm以下、例えば、0μm超過200μm以下、150μm~200μmであってもよい。この範囲で、光学表示装置に使用することができる。
【0123】
粘着フィルムは、粘着フィルム用組成物を基材フィルムの一表面にコーティングしてコーティング層を形成し、コーティング層を乾燥および光硬化させることにより製造することができる。コーティング層を熟成させた後に粘着フィルムに異物が埋まることを防止するために、粘着フィルムの一面に離型フィルムをさらに貼り合わせることができる。乾燥は、コーティング層を100℃~150℃で0.5分~5分処理する過程を含むことができるが、これに限定されるのではない。乾燥が必ずしも必要でない場合は、省略することもできる。光硬化は、部分な硬化であってもよい。このとき、光量は粘着フィルムの数式2による光硬化率が100%、つまり完全に硬化しないように調節する必要がある。
【0124】
以下、他の実施形態に係る粘着フィルムを説明する。
【0125】
粘着フィルムは、(メタ)アクリル系共重合体、連鎖移動剤、光開始剤、UV吸収剤の混合物および有機ナノ粒子を含み、UV吸収剤の混合物は、第一UV吸収剤としてインドール系UV吸収剤と、第二UV吸収剤としてトリアジン系UV吸収剤として2-ヒドロキシフェニル-s-トリアジン、およびベンゾトリアゾール系UV吸収剤として2-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1,1-ジメチルエチル)-4-メチルフェノールの1種以上と、を含む。
【0126】
上述で説明した粘着フィルムに比べて有機ナノ粒子をさらに含む点を除いては、実質的に同一である。有機ナノ粒子をさらに含んだとしても、上述で説明した粘着フィルムの物性等には影響を与えない。代わりに、有機ナノ粒子は粘着フィルムの耐衝撃性を改善することができる。
【0127】
有機ナノ粒子は、上部面に偏光板がない有機発光素子パネルの耐衝撃性を高めることができる。
【0128】
有機ナノ粒子は、平均粒径が10nm~400nm、具体的には10nm~300nm、より具体的には30nm~280nm、さらにより具体的には50nm~280nmであってもよい。この範囲で、粘着フィルムのフォールディングに影響を与えず、可視光領域で全光線透過率が90%以上で粘着フィルムの透明度が良くなる。
【0129】
有機ナノ粒子は、屈折率が1.35~1.70、具体的には1.40~1.60であってもよい。この範囲で、粘着フィルムの透明度に優れる。
【0130】
有機ナノ粒子は、コア-シェル型を始めとしてビード(bead)型等の単純なナノ粒子等も含むことができるが、これに限定されるものではない。コア-シェル型の場合、のコアとシェルは、下記数式4を満たすことができる。つまり、有機ナノ粒子のコアとシェルは共に有機物質を形成してもよい。このような粒子形態を有する場合、粘着フィルムのフォールディング性が良く、弾性と柔軟性のバランスの物性に効果を奏する。
【0131】
[数式4]
Tg(c)<Tg(s)
(数式4で、Tg(c)はコアのガラス転移温度(単位:℃)であり、Tg(s)はシェルのガラス転移温度(単位:℃)である)。
【0132】
本明細書において、「シェル」は有機ナノ粒子中の最外郭層を意味する。コアは一つの球形粒子であってもよい。しかし、コアは、このガラス転移温度を有するのであれば、球形粒子を覆う追加的な層をさらに含んでもよい。
【0133】
具体的には、コアのガラス転移温度は-150℃~10℃、具体的には-150℃~-5℃、より具体的には-150℃~-20℃であってもよい。この範囲で、粘着フィルムの低温および/または常温の粘弾性効果を奏する。コアは、このガラス転移温度を有するポリアルキルアクリレート、ポリシロキサンまたはポリブタジエンの1種以上含むことができる。
【0134】
ポリアルキルアクリレートは、ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリブチルアクリレート、ポリイソプロピルアクリレート、ポリヘキシルアクリレート、ポリヘキシルメタクリレート、ポリエチルヘキシルアクリレートおよびポリエチルヘキシルメタクリレート、ポリシロキサンの一つ以上を含むことができ、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0135】
ポリシロキサンは、例えば、オルガノシロキサン(共)重合体であってもよい。オルガノシロキサン(共)重合体は、架橋されていないものを使用することもでき、架橋された(共)重合体を使用することもできる。耐衝撃性、着色性のために、架橋状態のオルガノシロキサン(共)重合体を使用することができる。これは架橋された形態のオルガノシロキサンとして、具体的には架橋されたジメチルシロキサン、メチルフェニルシロキサン、ジフェニルシロキサンまたはその2以上の混合物等を使用することができる。2以上のオルガノシロキサンが共重合した形態を使用することにより、屈折率1.41~1.50を調節することができる。
【0136】
オルガノシロキサン(共)重合体の架橋状態は、各種有機溶媒によって溶解される程度を以て判断することができる。架橋状態が深化されるほど、溶媒によって溶解される程度が小さくなる。架橋状態を判断するための溶媒としては、アセトンやトルエン等を使用することができ、具体的には、オルガノシロキサン(共)重合体は、アセトンやトルエンによって溶解されない部分を有してもよい。オルガノシロキサン共重合体のトルエンに対する不溶成分は30%以上であってもよい。
【0137】
さらに、オルガノシロキサン(共)重合体には、アルキルアクリレート架橋重合体をさらに含むことができる。アルキルアクリレート架橋重合体は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等を使用することができる。例えば、ガラス転移温度が低いn-ブチルアクリレートまたは2-エチルヘキシルアクリレートを使用することができる。
【0138】
具体的には、シェルのガラス転移温度は15℃~150℃、具体的には35℃~150℃、より具体的には50℃~140℃であってもよい。この範囲で、アクリル系共重合体中の有機ナノ粒子の分散性に優れる。シェルは、ガラス転移温度を有するポリアルキルメタアクリレートを含むことができる。例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチルメタクリレート、ポリプロピルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリイソプロピルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレートおよびポリシクロヘキシルメタクリレートの一つ以上を含むことができ、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0139】
コアは、有機ナノ粒中に、30重量%~99重量%、具体的には40重量%~95重量%、より具体的には50重量%~90重量%で含まれてもよい。この範囲で、広い温度範囲で粘着フィルムのフォールディング性が良くなる。シェルは、有機ナノ粒子中に1重量%~70重量%、具体的には5重量%~60重量%、より具体的には10重量%~50重量%で含まれてもよい。この範囲で、広い温度範囲で粘着フィルムのフォールディング性が良くなる。
【0140】
有機ナノ粒子は、固形分基準、粘着フィルム用組成物中に、(メタ)アクリル系共重合体または(メタ)アクリル系共重合体の硬化物100重量部に対して、0重量部~10重量部、例えば0.1重量部~9重量部で含有されてもよい。この範囲で、粘着フィルムの耐衝撃性を高め、過剰量添加による粘着フィルムのヘーズ上昇を防ぐことができる。
【0141】
有機ナノ粒子は、粘着フィルム中に、0.1重量%~20重量%、具体的には、0.5重量%~10重量%、0.5重量%~8重量%で含まれてもよい。この範囲で、粘着フィルムの耐衝撃性を高め、過剰量添加による粘着フィルムのヘーズ上昇を防ぐことができる。
【0142】
有機ナノ粒子は、通常の乳化重合、懸濁重合、溶液重合方法により製造することができる。
【0143】
以下、本発明の一実施形態に係る光学表示装置を説明する。
【0144】
光学表示装置は、本発明に係る粘着フィルムを含む。好ましくは、光学表示装置は発光素子パネル、発光素子パネルの光出射面に積層された粘着フィルムを含み、粘着フィルムは、本発明の粘着フィルムを後硬化させて製造された粘着フィルムの後硬化物であってもよい。粘着フィルムの後硬化物は、上述の波長380nmまたは405nmにおける光透過率、25℃~60℃における貯蔵弾性率、およびガラス板における剥離力を提供することができる。よって、粘着フィルムの硬化物は、偏光板を代替することにより、光学表示装置は偏光板がない光学表示装置になる。
【実施例0145】
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示したものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が限定されると解釈してはならない。
【0146】
実施例1
反応器内に2-エチルヘキシルアクリレート40重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート20重量部、アクリロイルモルホリン10重量部、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート(DCPA)10重量部、およびベンジルアクリレート20重量部を含む単量体混合物100重量部を入れ、溶剤トルエンを入れた。光開始剤を入れ、窒素パージングしながら30分間攪拌し重合して、2-エチルヘキシルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、ジヒドロジシクロペンタジエニルアクリレート、およびベンジルアクリレート由来の(メタ)アクリル系共重合体を製造した。
【0147】
固形分を基準として、製造された(メタ)アクリル系共重合体100重量部、架橋剤0.06重量部、光開始剤0.3重量部、インドール系UV吸収剤として0.13重量部、Tinuvin477(BASF社)0.10重量部、連鎖移動剤0.15重量部、シランカップリング剤0.10重量部を混合して粘着フィルム用組成物を製造した。
【0148】
製造した粘着フィルム用組成物を離型フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルム(TU73A,SKC社,厚さ:75μm,離型処理されていない)の一面に200μmで塗布し、BLランプ(ブラックライトランプ)で波長315nm~400nmのUVを1000mJ/cm2の光量で照射することにより、離型フィルムの一面に積層された粘着フィルム(部分的に硬化された状態,数式2に係る光硬化率:95%,厚さ:200μm)を製造した。
【0149】
実施例2~実施例6
実施例1で、各成分の種類および/または含量を下記表1のように変更した点を除いては、実施例1と同じ方法で粘着フィルムを製造した。
【0150】
比較例1~比較例4
実施例1で、各成分の種類および/または含量を下記表1のように変更した点を除いては、実施例1と同じ方法で粘着フィルムを製造した。
【0151】
【0152】
*表1で、架橋剤:ヘキサンジオールジアクリレート、
光開始剤:TPO(BASF社)
連鎖移動剤:2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート(EHMP,TCI社)
シランカップリング剤:KBM-403(Shinetsu社)
有機粒子:乳化重合方法で製造されたコアシェル有機ナノ粒子。コアはポリブチルアクリレート、シェルはポリメチルメタクリレートである。シェルは有機ナノ粒子中に35重量%、コアは有機ナノ粒子中に65重量%である。コアシェル有機ナノ粒子は、平均粒径(D50)が100nmであり、屈折率が1.48である。
UA-3912(Orient社):インドール系UV吸収剤
Tinuvin477(BASF社):トリアジン系UV吸収剤
Tinuvin326(BASF社):ベンゾトリアゾール系UV吸収剤
Tinuvin479(BASF社):トリアジン系UV吸収剤(Tinuvin477とは異なる化学構造を有する)
Tinuvin460(BASF社):トリアジン系UV吸収剤(Tinuvin477
Tinuvin384-2(BASF社):ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(Tinuvin326とは異なる化学構造を有する)
【0153】
数式3:粘着フィルム中(開始剤の含量)/(トリアジン系UV吸収剤,ベンゾトリアゾール系UV吸収剤の総含量)の重量比
【0154】
実施例と比較例で製造した粘着フィルムに対して、下記表2の物性を評価し、その結果を下記表2に示す。
【0155】
(1)貯蔵弾性率(単位:kPa):動的粘弾性測定装置であるDHR-3(TA社)を使用してaxial force:1.0N,sensitivity:0.1N,frequency:1.0Hz,strain:1.0%でauto strain条件で貯蔵弾性率を測定した。粘着フィルムを800μmの厚さで積層し、直径が8mmの穿孔器で積層物を穿孔して円形の試片を製造し、製造した試片で測定した。-60℃~90℃、5℃/minの温度上昇速度で貯蔵弾性率を測定し、25℃および60℃で貯蔵弾性率を求めた。
【0156】
(2)ガラス板に対する剥離力(単位:gf/inch):無アルカリガラス板に対する剥離力を測定した。実施例と比較例で製造した粘着フィルムの一面にプラズマ処理されたPETフィルム(NK-P50DP)を貼り合わせ、横×縦(2.5cm×10cm)の大きさに切断した。離型PETフィルムを剥離した後、無アルカリガラス板(ソーダ石灰ガラス板)に粘着させて、無アルカリガラス板-粘着フィルム-プラズマ処理されたPETフィルムの順に積層された試片を製造した。剥離強度測定装置TA(Texture Analyaer)Instrumentに試片を固定させ、無アルカリガラス板から粘着フィルムとPETフィルムの積層体を25℃で剥離速度300mm/min、剥離角度180°で剥離した時の剥離力を測定した。
【0157】
(3)光透過率(単位:%)および透過b*:無アルカリガラス板に対して、光透過率測定器V650(JASCO社)を使用して光透過率を測定してベースラインを決定した。粘着フィルムから離型フィルムを剥離した後、無アルカリガラス板に貼り合わせて光透過率測定のための試片を製造した。試片にて光透過率測定器V650(JASCO社)を使用して光透過率を測定した。透過b*値も光透過率と同じ方法で測定した。
【0158】
(4)耐衝撃性(単位:cm):有機発光素子パネル(両側基板間に有機発光素子発光層が含まれる)一面に離型フィルムが取り除かれた粘着フィルムを貼り合わせ、粘着フィルムの他の一面にPETフィルム(SH86,SKC,厚さ:50μm)を貼り合わせた後、BICペンを落下させ、落下高さを増やして落下させた際、PETフィルムにへこみおよび/または損傷が生じる最初の高さを測定した。
【0159】
【0160】
実施例と比較例で製造した粘着フィルムをメタルハライドランプで波長315nm~400nmのUVを1000mJ/cm2の光量で照射することにより、後硬化した粘着フィルム(完全硬化した状態,数式2に係る光硬化率:100%,厚さ:200μm)を製造した。後硬化された粘着フィルムに対して、表2で説明した方法と同じ方法で物性を評価し、その結果を下記表3に示す。
【0161】
【0162】
表2および表3に示したように、本発明の粘着フィルムは、波長380nmおよび405nmにおけるそれぞれの光透過率が1%以下および3%以下で、後硬化後にも波長380nmおよび405nmにおけるそれぞれの光透過率が1%以下3%以下のため、UVによる損傷から有機発光素子を保護したものであると予想できる。また、粘着フィルムは、部分的に硬化した状態だが、上述の弾性率および剥離力を全て満たすことにより、被着体に高信頼性で被着され得、後硬化後の粘弾性が良くなって屈曲信頼性に優れる。
【0163】
その反面、比較例の粘着フィルムは上述の効果を全て満たすことができなかった。
【0164】
本発明の単純な変形または変更は、本分野の通常の知識を有する者によって容易に実施することができ、このような変形や変更は全て本発明の領域に含まれると見なすことができる。