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特開2025-35369解析装置、解析方法、およびプログラム
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  • 特開-解析装置、解析方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025035369
(43)【公開日】2025-03-13
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/02 20240101AFI20250306BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
G06Q50/02
A01G7/00 603
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023142364
(22)【出願日】2023-09-01
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 仁康
(72)【発明者】
【氏名】官 森林
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC01
5L050CC01
(57)【要約】
【課題】地上を上空から撮像した画像に基づいて検量線を圃場毎または対象範囲毎に作成することができる解析装置、解析方法、およびプログラムを提供すること。
【解決手段】圃場における複数の地点を、撮像時点を異ならせて上空から撮像した時系列の画像を取得する取得部と、前記時系列の画像に基づいて、少なくとも時点と地点を成分とするベクトルのそれぞれに対応付けられた作物の生育指数を算出する基準生育指数算出部と、前記ベクトルのうち着目成分を固定した場合の、前記地点ごとの前記生育指数と作物の生育に関する結果指標との相関関係を算出することを、複数の着目成分のそれぞれについて行う相関関係算出部と、算出された前記相関関係が他の着目成分に比して高くなる前記着目成分を選択する着目成分選択部と、選択された前記着目成分に対応する前記生育指数と、前記結果指標とに基づいて、検量線を作成する検量線作成部と、を備える解析装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場における複数の地点を、撮像時点を異ならせて上空から撮像した時系列の画像を取得する取得部と、
前記時系列の画像に基づいて、少なくとも時点と地点を成分とするベクトルのそれぞれに対応付けられた作物の生育指数を算出する基準生育指数算出部と、
前記ベクトルのうち着目成分を固定した場合の、前記地点ごとの前記生育指数と作物の生育に関する結果指標との相関関係を算出することを、複数の着目成分のそれぞれについて行う相関関係算出部と、
算出された前記相関関係が他の着目成分に比して高くなる前記着目成分を選択する着目成分選択部と、
選択された前記着目成分に対応する前記生育指数と、前記結果指標とに基づいて、検量線を作成する検量線作成部と、
を備える解析装置。
【請求項2】
前記ベクトルの着目成分は、前記時点を含む、
請求項1記載の解析装置。
【請求項3】
前記基準生育指数算出部は、複数種類の前記生育指数を算出し、
前記ベクトルは、更に前記生育指数の種類に対応付けられており、
前記ベクトルの着目成分は、前記生育指数の種類を含む、
請求項1または2記載の解析装置。
【請求項4】
前記画像の画素には、地面の高さ情報が対応付けられており、
前記ベクトルは、更に前記地面の高さ情報に対応付けられており、
前記ベクトルの着目成分は、前記地面の高さ情報を含む、
請求項1または2記載の解析装置。
【請求項5】
前記画像の画素には、作物の高さ情報が対応付けられており、
前記ベクトルは、更に前記作物の高さ情報に対応付けられており、
前記ベクトルの着目成分は、前記作物の高さ情報を含む、
請求項1または2記載の解析装置。
【請求項6】
前記結果指標は、農作業に関する操作量を異ならせて測定された情報であり、
前記検量線作成部は、前記選択された前記着目成分に対応する前記生育指数と前記結果指標との対応関係を前記操作量ごとに導出し、前記生育指数を入力条件として前記結果指標が閾値を超える操作量を導出することで、前記検量線を作成する、
請求項1または2記載の解析装置。
【請求項7】
解析装置が、
圃場における複数の地点を、撮像時点を異ならせて上空から撮像した時系列の画像を取得する処理と、
前記時系列の画像に基づいて、少なくとも時点と地点を成分とするベクトルのそれぞれに対応付けられた作物の生育指数を算出する処理と、
前記ベクトルのうち着目成分を固定した場合の、前記地点ごとの前記生育指数と作物の生育に関する結果指標との相関関係を算出することを、複数の着目成分のそれぞれについて行う処理と、
算出された前記相関関係が他の着目成分に比して高くなる前記着目成分を選択する処理と、
選択された前記着目成分に対応する前記生育指数と、前記結果指標とに基づいて、検量線を作成する処理と、
を実行する解析方法。
【請求項8】
解析装置のプロセッサに、
圃場における複数の地点を、撮像時点を異ならせて上空から撮像した時系列の画像を取得する処理と、
前記時系列の画像に基づいて、少なくとも時点と地点を成分とするベクトルのそれぞれに対応付けられた作物の生育指数を算出する処理と、
前記ベクトルのうち着目成分を固定した場合の、前記地点ごとの前記生育指数と作物の生育に関する結果指標との相関関係を算出することを、複数の着目成分のそれぞれについて行う処理と、
算出された前記相関関係が他の着目成分に比して高くなる前記着目成分を選択する処理と、
選択された前記着目成分に対応する前記生育指数と、前記結果指標とに基づいて、検量線を作成する処理と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地上を上空から撮像した画像を処理することで種々の情報を得ることについて研究が進められている。これに関連し、特許文献1には、作物情報とNDVI(Normalized Difference Vegetation Index)などの植生指標とに基づいて得られる幼穂形成期の吸収窒素量を、品種ごとにあらかじめ決められた値で増加させることで穂揃期の吸収窒素量(必要な肥料の量)を求める方法について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6787074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、農作業の操作量を決定する等の目的で用いられる検量線として、「予め決められた値」という一律の値を用いている。このように、従来の技術では、地上を上空から撮像した画像に基づいて検量線を圃場毎または対象範囲毎に作成することができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、地上を上空から撮像した画像に基づいて検量線を圃場毎または対象範囲毎に作成することができる解析装置、解析方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様である解析装置は、圃場における複数の地点を、撮像時点を異ならせて上空から撮像した時系列の画像を取得する取得部と、前記時系列の画像に基づいて、少なくとも時点と地点を成分とするベクトルのそれぞれに対応付けられた作物の生育指数を算出する生育指数算出部と、前記ベクトルのうち着目成分を固定した場合の、前記地点ごとの前記生育指数と作物の生育に関する結果指標との相関関係を算出することを、複数の着目成分のそれぞれについて行う相関関係算出部と、算出された前記相関関係が他の着目成分に比して高くなる前記着目成分を選択する着目成分選択部と、選択された前記着目成分に対応する前記生育指数と、前記結果指標とに基づいて、検量線を作成する検量線作成部と、を備えるものである。
【0007】
本発明の他の態様に係る解析方法は、解析装置が、圃場における複数の地点を、撮像時点を異ならせて上空から撮像した時系列の画像を取得する処理と、前記時系列の画像に基づいて、少なくとも時点と地点を成分とするベクトルのそれぞれに対応付けられた作物の生育指数を算出する処理と、前記ベクトルのうち着目成分を固定した場合の、前記地点ごとの前記生育指数と作物の生育に関する結果指標との相関関係を算出することを、複数の着目成分のそれぞれについて行う処理と、算出された前記相関関係が他の着目成分に比して高くなる前記着目成分を選択する処理と、選択された前記着目成分に対応する前記生育指数と、前記結果指標とに基づいて、検量線を作成する処理と、を実行するものである。
【0008】
本発明の他の態様に係るプログラムは、解析装置のプロセッサに、圃場における複数の地点を、撮像時点を異ならせて上空から撮像した時系列の画像を取得する処理と、前記時系列の画像に基づいて、少なくとも時点と地点を成分とするベクトルのそれぞれに対応付けられた作物の生育指数を算出する処理と、前記ベクトルのうち着目成分を固定した場合の、前記地点ごとの前記生育指数と作物の生育に関する結果指標との相関関係を算出することを、複数の着目成分のそれぞれについて行う処理と、算出された前記相関関係が他の着目成分に比して高くなる前記着目成分を選択する処理と、選択された前記着目成分に対応する前記生育指数と、前記結果指標とに基づいて、検量線を作成する処理と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
上記各態様によれば、地上を上空から撮像した画像に基づいて検量線を圃場毎または対象範囲毎に作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】解析装置100の使用環境および構成の一例を示す図である。
図2】地点設定部130の処理について説明するための図である。
図3】相関関係算出部140による処理の内容について説明するための図である。
図4】検量線の一例を示す図である。
図5】農作業に対する操作量を異ならせるための基準マップの一例を示す図である。
図6】操作量に応じて検量線を作成する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照し、本発明の解析装置、情報処理方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、解析装置100の使用環境および構成の一例を示す図である。解析装置100は、例えば、ドローン10から中継装置20およびネットワークNWを介してドローン10が撮像した画像を取得する。ドローン10が撮像した画像は、対象区画(圃場)TGをドローン10が飛行しながら複数回、撮像を行った画像を繋げたものである。解析装置100は、ネットワークNWを介して端末装置50に出力画像を提供する。ネットワークNWは、例えば、LAN、WAN、インターネット回線などの任意のネットワークであり、有線でも無線でもよい。なお、画像の取得方法はこれに限らず、記憶媒体に格納された画像が解析装置100のドライブ装置に装着されることで画像が取得されてもよい。また、画像は解析装置100に渡される前に前処理が行われたものであってもよい。
【0013】
ドローン10は、各種の撮像装置が取り付けられた無人航空機である。ドローン10は、中継装置20からの指示に応じて飛行しつつ、繰り返し地上(地面)を撮像する。ドローン10は、複数のドローン画像を、当該ドローン画像のカメラパラメータおよびRTK-GNSS(Real Time Kinematic - Global Navigation Satellite System)などにより計測される位置情報および時刻情報と合わせて、ドローン10に搭載されるメモリカードに保存するかまたは中継装置20に送信する。ドローン10は、例えば週に1~2回といった頻度で飛行および撮影を行い、画像等のデータを解析装置100に提供する。この結果、解析装置100には時系列の画像が届けられる。
【0014】
中継装置20は、例えば、タブレット端末などの端末装置である。中継装置20には、ドローン10を操作するとともに、ドローン10が撮像した画像を受信および表示するためのアプリケーションが搭載されている。中継装置20は、ドローン10が撮像した画像を、RGB画像として表示したり、ネットワークNWを介して解析装置100に送信したりする。
【0015】
端末装置50は、例えば、パーソナルコンピュータやスマートフォン、タブレット端末などのコンピュータ装置である。端末装置50は、解析装置100とネットワークNWを介して通信し、後述する解析装置100から受信した出力画像を表示する。端末装置50は、例えば、中継装置20を操作する利用者(つまり、ドローン画像の提供者)と同じ利用者Uによって使用されるものである。なお対象区画TGは農地であり、利用者Uはその農地を保有する農家である。中継装置20と端末装置50は一つに統合されてもよい。
【0016】
解析装置100は、例えば、ウェブサーバの機能を有する。解析装置100は、以下に説明する処理を圃場毎または対象範囲毎に行う。解析装置100は、例えば、取得部110と、生育指数算出部120と、地点設定部130と、相関関係算出部140と、着目成分選択部150と、結果指標取得部160と、検量線作成部170とを備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。
【0017】
取得部110は、図示しない通信インターフェースを用いてドローン10が撮像した画像を取得する。つまり、取得部110は、圃場における複数の地点を、撮像時点を異ならせて上空から撮像した時系列の画像を取得する。取得部110は、取得した画像に基づいてセンシングマップを作成する。センシングマップは、例えば、ドローン10が撮像した画像を繋げて歪み補正等を行い、位置情報が対応付けられた時系列データである。
【0018】
生育指数算出部120は、センシングマップの各画素について、作物の生育指数を算出する。生育指数は、例えば、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指標)、GNDVI(Green Normalized Difference Vegetation Index)、NDRE(Normalized Difference Red Edge)、LCI(Leaf Chlorophyll Index)などである。それぞれの生育指数は式(1)~(4)で表される。式中、RefNIRは近赤外線の波長帯(以下、バンド)の反射率、RefRedは赤色光のバンドの反射率、RefGreenは緑色光のバンドの反射率、RefREはレッドエッジのバンドの反射率、Refはレッドエッジのバンドの反射率である。第1実施形態において生育指数算出部120は、これらのうち一つ、或いは他の同様の特性を有する指標値を生育指数として算出する。以下の説明では、生育指数はNDVIであるものとする。
【0019】
NDVI =(RefNIR-RefRed)/(RefNIR+RefRed) …(1)
GNDVI=(RefNIR-RefGreen)/(RefNIR+RefGreen) …(2)
NDRE =(RefNIR-RefRE)/(RefNIR+RefRE) …(3)
LCI =(RefNIR-RefRE)/(RefNIR+RefRed) …(4)
【0020】
地点設定部130は、生育指数が算出された地点のうち、以降の処理の対象とする地点(以下、対象地点)を、1時刻について複数設定する。図2は、地点設定部130の処理について説明するための図である。センシングマップを構成する時点ごとの画像をM(1)、M(2)、…、M(n)で表している。括弧内の数字は時点を表す。地点設定部130は、時点間で共通する対象地点TP(t,x,y)を設定する。引数tは時点(時刻)、xは経度、yは緯度である。以下において引数を省略して表記する場合がある。地点設定部130は、各時点に着目した場合に生育指数が好適な散らばりを持つように(例えば、生育指数が良い地点、悪い地点、平均的な地点などを幅広くかつ一様な分布で含むように)、並べ替え処理、統計処理などを含む数値処理を行って対象地点を設定する。
【0021】
前述したように、対象地点TPは時点と地点に対応付けられたものであるため、生育指数算出部120および地点設定部130は、時系列の画像に基づいて、時点と地点を成分とするベクトルのそれぞれに対応付けられた作物の生育指数を算出するものである(特許請求の範囲における「基準生育指数算出部」の一例)。第1実施形態における生育指数は、Ix(t,x,y)と表される。生育指数算出部120および地点設定部130は、圃場の生育指数の平均値など、仮想的な対象地点TP#の情報も併せて算出し、それを対象地点TPごとの生育指数の情報に加えてもよい。
【0022】
相関関係算出部140は、上記ベクトルのうち着目成分を固定した場合の、地点ごとの生育指数と作物の生育に関する結果指標との相関関係を算出することを、複数の着目成分のそれぞれについて行う。第1実施形態において着目成分は時点である。つまり、相関関係算出部140は、上記ベクトルのうち時点を固定した場合の、地点ごとの生育指数と作物の生育に関する結果指標との相関関係を算出することを、複数の時点のそれぞれについて行う。結果指標は、後述する結果指標取得部160によって取得される。
【0023】
作物の生育に関する結果指標とは、例えば、収量、特定の栄養成分の割合または量(品質)といったポジティブなものと、病虫害の発生率(発生数)、倒伏率といったネガティブなものとのうち一方又は双方を含む。この結果指標は、画像が取得された時点で取得されるものでは無く、作物が収穫時期を迎え、収穫された作物の量や成分を測定することで取得されるものである。従って、生育指数算出部120と相関関係算出部140の処理タイミングには数日~数か月の差が生じる場合がある。なお、結果指標が得られたタイミングで生育指数を算出するようにしてもよい。結果指標を得るには、少なくとも地上における測定調査が必要である。これについて、測定調査の際にドローン10を飛行させ、調査地点の上空でホバリングしながら位置を測定するという作業が行われてよい。このとき、ドローン10からレーザー照射によって位置を指定するようにしてもよい。結果指標は、Rx(x,y)で表される。
【0024】
図3は、相関関係算出部140による処理の内容について説明するための図である。本図では結果指標は収量と病虫害発生率の二つを含むものとする。ここで、相関関係が高いとは、例えば、生育指数と収量を確率変数とした場合の相関係数と、生育指数と病虫害発生率を確率変数とした場合の相関係数とに基づく値(例えば荷重和)が1に近いことを意味する。相関係数は、C{Ix(t,x,y),Rx(x,y)}で表される。相関係数は、分布のちらばりが直線に近いほど、1に近い値となる。
【0025】
着目成分選択部150は、算出された相関関係が他の着目成分(時点)に比して高くなる着目成分(時点)を選択する。図3の例では、時点1の画像M(1)についての相関関係が最も高いため、時点1が着目成分として選択される。着目成分選択部150の処理は、argmax[C{Ix(t,x,y),Rx(x,y)}]で表される。すなわちC{Ix(t,x,y),Rx(x,y)}が最大となるtを求めるものである。
【0026】
結果指標取得部160は、前述したように、対象地点ごとの結果指標を取得する。結果指標取得部160は、例えば、端末装置50に対して入力された情報を、結果指標として取得する。
【0027】
検量線作成部170は、選択された着目成分(時点)に対応する生育指数と、結果指標とに基づいて、検量線を作成する。検量線とは、解析装置100が処理を行った農期の次回以降の農期において使用される情報であり、選択された時点における当該地点の生育指数に対して、農作業の操作量(操作の有無を含む)を規定した情報である。農作業に関する操作量とは、肥料の投与量、薬液の投与量、農機での作業の実施回数などである。ここでは、肥料(追肥)の投与量が検量線の対象であるものとする。図4は、検量線の一例を示す図である。図4に示す検量線では、生育指数がA1未満であれば肥料の投与量を大、A1以上、A2未満であれば肥料の投与量を中、A2以上であれば肥料の投与量を小とし、A1以上、A2未満である場合の投与量を大から小の間で滑らかに推移させることを規定している。検量線作成部170は、例えば、作成した検量線の情報を端末装置50に表示させる。
【0028】
ここで、前述した結果指標は、農作業に関する操作量を異ならせて測定された情報であってよい。図5は、農作業に対する操作量を異ならせるための基準マップの一例を示す図である。図示するように、例えば生育指数をランク分けしたグループごとに、操作量(追肥量)が所定のばらつきを持つように、追肥が与えられた結果として、結果指標が取得されてよい。この場合、生育指数も操作量に対応するものとして算出される。検量線作成部170は、選択された着目成分に対応する生育指数と結果指標との対応関係を操作量ごとに導出し、生育指数を入力条件として結果指標が閾値を超える操作量を導出することで、検量線を作成する。図6は、操作量に応じて検量線を作成する様子を示す図である。ここでも操作量は肥料の投与量であるものとする。Thは結果指標に対する閾値(例えば目標収量)である。図示する例では、生育指数がA1未満の場合、肥料の投与量が大でなければ結果指標が閾値Thを超えなかった。生育指数がA1以上、A2未満の場合、肥料の投与量が中または大の場合に結果指標が閾値Thを超えた。生育指数がA2以上の場合、肥料の投与量が小でも結果指標が閾値Thを超えた。検量線作成部170は、このような結果に基づいて図4に示す検量線を作成する。
【0029】
ここで、結果指標が農作業に関する操作量を異ならせて測定された情報である場合、相関関係を求めるための比較対象データも複数セット存在する筈である。この場合、相関関係算出部140は、全操作量に関する情報の平均を求めて平均に対する相関関係を求めてもよいし、中程度の情報(前述の例では肥料の投与量が中である情報)に着目して相関関係を求めてもよいし、各操作量について求められた相関関係を統合して(例えば荷重和を求めて)相関関係を求めてもよい。
【0030】
以上説明した第1実施形態によれば、生育指数と結果指標の相関関係が高い時点を選択し、選択された時点の生育指数に対する検量線を作成することで、地上を上空から撮像した画像に基づいて検量線を圃場毎または対象範囲毎に作成することができる。この結果、農作業に対する指針を効果的に決定することができる。
【0031】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、生育指数算出部120は、時系列の画像に基づいて、時点と地点を成分とするベクトルのそれぞれに対応付けられた作物の生育指数を算出し、生育指数は、Ix(t,x,y)と表されるものとした。第2実施形態では、生育指数算出部120は、更に、時点と地点以外の要素に対応付けられた作物の生育指数を算出する。時点と地点以外の要素として、例えば、生育指数の種類、地面の高さ情報、作物の高さ情報が挙げられる。この場合、生育指数は、Ix(t,q,x,y)で表される(qは時点以外の一以上の要素)。つまり、生育指数が対応付けられるベクトルは、更に他の要素qに対応付けられたものとなる。
【0032】
第2実施形態の相関関係算出部140が算出する相関関係は、C{Ix(t,q,x,y),Rx(x,y)}で表される。着目成分選択部150は、算出された相関関係が他の着目成分(時点)に比して高くなる着目成分(時点と、その他の要素との組み合わせ)を選択する。着目成分選択部150の処理は、argmax[C{Ix(t,q,x,y),Rx(x,y)}]で表される。すなわちC{Ix(t,q,x,y),Rx(x,y)}が最大となるtとqの組み合わせを求めるものである。
【0033】
このようにすることで、結果指標との相関関係が高い時点に加えて、生育指数の種類などの他の要素も考慮した上で、結果指標を予測する上で最適なデータを選択することができる。この結果、更に適切に適切な検量線を作成することができる。
【0034】
<その他>
以下、対象地点TPを事後的に設定する場合について説明する。これまでの説明では、センシングマップが得られると、まず対象地点TPを設定するものとした。これに代えて、センシングマップに基づいて、まず画像全体について生育指数を算出し、生育指数が所望のちらばりを持つように対象地点TPを設定するようにしてもよい。また、相関関係の算出まで行った後に、相関関係が高くなるように対象地点TPを設定するようにしてもよい。
【0035】
以上説明した各実施形態によれば、地上を上空から撮像した画像に基づいて検量線を圃場毎または対象範囲毎に作成することができる。
【0036】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0037】
10 ドローン
50 端末装置
100 解析装置
110 取得部
120 生育指数算出部
130 地点設定部
140 相関関係算出部
150 着目成分選択部
160 結果指標取得部
170 検量線作成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6