(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025036015
(43)【公開日】2025-03-14
(54)【発明の名称】鍛造プレス装置及び鍛造品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B21J 13/02 20060101AFI20250306BHJP
B21J 5/06 20060101ALI20250306BHJP
B21J 9/06 20060101ALI20250306BHJP
【FI】
B21J13/02 Z
B21J5/06 Z
B21J9/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018486
(22)【出願日】2024-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2023139043
(32)【優先日】2023-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【氏名又は名称】平岩 康幸
(72)【発明者】
【氏名】駒田 伸弥
(72)【発明者】
【氏名】奥 順也
(72)【発明者】
【氏名】河口 充裕
(72)【発明者】
【氏名】清田 安彦
(72)【発明者】
【氏名】中越 和人
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087CA13
4E087CB01
4E087EA12
4E087EC02
4E087HA35
(57)【要約】
【課題】密閉鍛造のように金型とワークの間に隙間が殆どない場合であっても、プレス成形時にスケールを効果的に回収することができる鍛造プレス装置及びこれを用いる鍛造品の製造方法を提供する。
【解決手段】本鍛造プレス装置1Aは、仮プレス動作Q1と、一方の金型(上型2)とワークWとの間に隙間S1を形成する戻し動作Q2と、本プレス動作Q3と、を行うとともに、一対の金型の間に隙間と連通する密閉空間S2を形成するように構成されており、一方の金型には、その成形面11に開口するようにエアー噴射口15が設けられている。そして、戻し動作の際に、隙間を介してエアー噴射口から噴射されるエアーによりワークの表面上のスケールOを密閉空間内に飛散させ、その飛散されたスケールを密閉空間から外部へ吸引回収する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動軸線に沿って互いに近接離間可能な一対の金型の間でワークをプレスする鍛造プレス装置であって、
前記一対の金型を互いに近接させて前記ワークを仮押しする仮プレス動作と、
前記ワークの仮押しを解除するように前記一対の金型を互いに離間させて前記一対の金型のうちの一方の金型と前記ワークとの間に隙間を形成する戻し動作と、
前記一対の金型を互いに近接させて前記ワークを本押しする本プレス動作と、を行うとともに、
前記一対の金型の間に前記隙間と連通する密閉空間を形成することが可能に構成されており、
前記一方の金型には、その成形面に開口するようにエアー噴射口が設けられており、
前記戻し動作の際に、前記隙間を介して前記エアー噴射口から噴射されるエアーにより前記ワークの表面上のスケールを前記密閉空間内に飛散させ、その飛散された前記スケールを前記密閉空間から外部へ吸引回収することを特徴とする鍛造プレス装置。
【請求項2】
前記一方の金型の前記成形面は、前記エアー噴射口が開口し且つ前記ワークの外周面又は内周面と当接する拘束面を有し、
前記拘束面は、前記他方の金型に向かうに連れて拡径又は縮径するテーパ部及び/又は湾曲部を有する請求項1に記載の鍛造プレス装置。
【請求項3】
前記拘束面は、前記テーパ部又は前記湾曲部の端部と連なる湾曲端部を有する請求項2に記載の鍛造プレス装置。
【請求項4】
前記一方の金型には、前記成形面において前記移動軸線方向にずれた位置で開口するように複数の前記エアー噴射口が設けられている請求項1に記載の鍛造プレス装置。
【請求項5】
前記一方の金型は上型であり、前記他方の金型は下型であり、
前記上型の前記成形面は、棒状の前記ワークの上端部の軸端面と当接する押圧面と、前記エアー噴射口が開口し且つ前記ワークの上端部の外周面と当接する拘束面と、を有し、
前記下型は、前記ワークの下端部を保持する保持部を有する請求項1に記載の鍛造プレス装置。
【請求項6】
前記他方の金型には、前記密閉空間に開口するようにエアー吹出口が設けられている請求項1に記載の鍛造プレス装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の鍛造プレス装置を用いることを特徴とする鍛造品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造プレス装置及び鍛造品の製造方法に関し、更に詳しくは、互いに近接離間可能な一対の金型の間でワークをプレスする鍛造プレス装置及びこれを用いる鍛造品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鍛造プレス装置として、互いに近接離間可能な一対の金型の間でワークをプレスするものが一般に知られている(例えば、特許文献1等を参照)。特許文献1には、側面視で矩形状のワークを上型と下型によって圧し潰すようにプレスする際に、ワークの表面から剥離したスケールを回収する鍛造プレス装置が記載されている。より具体的に、鍛造プレス装置は、上型と下型を夫々覆う上型カバーと下型カバーと、上型カバーを介してプレス内部にエアーを供給するエアー噴射手段と、下型カバーを介してプレス内部に負圧を発生させる負圧発生手段と、を備え、上型が下死点近傍に下降した際に、上型カバーと下型カバーの先端部分が重なり合って内部が密閉状態になった時に、エアー噴射手段により内部にエアーを噴射して螺旋状気流を生じさせると同時に、負圧手段により内部を負圧することで、プレス内部からスケールを吸引回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1には、矩形状のワークを上型と下型によって圧し潰すようにプレスする場合について記載されているが、それ以外の形状のワークをプレスする場合については記載されていない。例えば、棒状のワークを上型と下型によって圧し潰すようにプレスする場合、棒状のワークの座屈を防止するために、上型として、ワークの軸端面と当接する押圧面と、ワークの軸端側の外周面と当接する拘束面と、を有するものを採用することが多い。このような上型を採用する際に、特許文献1の技術を適用してスケールを回収しようとしても、密閉鍛造のように上型とワークとの間に隙間が殆ど存在しないため、上型とワークの間にエアーによる螺旋状気流を発生させ難く、スケールを回収することができない。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、密閉鍛造のように金型とワークの間に隙間が殆どない場合であっても、プレス成形時にスケールを効果的に回収することができる鍛造プレス装置及びこれを用いる鍛造品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の通りである。
1.移動軸線に沿って互いに近接離間可能な一対の金型の間でワークをプレスする鍛造プレス装置であって、
前記一対の金型を互いに近接させて前記ワークを仮押しする仮プレス動作と、
前記ワークの仮押しを解除するように前記一対の金型を互いに離間させて前記一対の金型のうちの一方の金型と前記ワークとの間に隙間を形成する戻し動作と、
前記一対の金型を互いに近接させて前記ワークを本押しする本プレス動作と、を行うとともに、
前記一対の金型の間に前記隙間と連通する密閉空間を形成することが可能に構成されており、
前記一方の金型には、その成形面に開口するようにエアー噴射口が設けられており、
前記戻し動作の際に、前記隙間を介して前記エアー噴射口から噴射されるエアーにより前記ワークの表面上のスケールを前記密閉空間内に飛散させ、その飛散された前記スケールを前記密閉空間から外部へ吸引回収することを特徴とする鍛造プレス装置。
2.前記一方の金型の前記成形面は、前記エアー噴射口が開口し且つ前記ワークの外周面又は内周面と当接する拘束面を有し、
前記拘束面は、前記他方の金型に向かうに連れて拡径又は縮径するテーパ部及び/又は湾曲部を有する上記1.に記載の鍛造プレス装置。
3.前記拘束面は、前記テーパ部又は前記湾曲部の端部と連なる湾曲端部を有する上記2.に記載の鍛造プレス装置。
4.前記一方の金型には、前記成形面において前記移動軸線方向にずれた位置で開口するように複数の前記エアー噴射口が設けられている上記1.に記載の鍛造プレス装置。
5.前記一方の金型は上型であり、前記他方の金型は下型であり、
前記上型の前記成形面は、棒状の前記ワークの上端部の軸端面と当接する押圧面と、前記エアー噴射口が開口し且つ前記ワークの上端部の外周面と当接する拘束面と、を有し、
前記下型は、前記ワークの下端部を保持する保持部を有する上記1.に記載の鍛造プレス装置。
6.前記他方の金型には、前記密閉空間に開口するようにエアー吹出口が設けられている上記1.に記載の鍛造プレス装置。
7.上記1.乃至6.のいずれか一項に記載の鍛造プレス装置を用いることを特徴とする鍛造品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、戻し動作の際に、金型とワークの間に隙間が形成されるため、隙間を介してエアー噴射口から噴射されるエアーによりワークの表面上のスケールが密閉空間内に飛散され、その飛散されたスケールが密閉空間から外部へ吸引回収される。よって、密閉鍛造のように金型とワークの間に隙間が殆どない場合であっても、プレス成形時にスケールを効果的に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部材を示す。
【
図1】実施形態1に係る鍛造プレス装置の縦断面図である。
【
図5】鍛造プレス装置の作用説明図であり、仮プレス動作、戻し動作及び本プレス動作のタイムチャートを示す。
【
図6】鍛造プレス装置の作用説明図であり、(a)は仮プレス動作における成形開始時の状態を示し、(b)は本プレス動作において上型が下死点に位置した状態を示す。
【
図7】鍛造プレス装置の作用説明図であり、戻し動作中の隙間に対するエアー噴射状態を示す。
【
図8】鍛造プレス装置の作用説明図であり、(a)はプレス成形前のワークを示し、(b)はプレス成形後の中間鍛造品を示し、(c)は中間鍛造品から得られた鍛造品(最終製品)を示す。
【
図9】鍛造プレス装置の変形例1、2を説明するための説明図であり、(a)は上型の拘束面が湾曲部を有する形態(変形例1)を示し、(b)は上型の拘束面が湾曲部及びテーパ部を有する形態(変形例2)を示す。
【
図10】実施形態2に係る鍛造プレス装置を説明するための説明図であり、(a)はプレス成形前の状態を示し、(b)は戻し動作中の隙間に対するエアー噴射状態を示す。
【
図11】実施形態3に係る鍛造プレス装置の縦断面図である。
【
図13】実施形態3に係るスケール回収部を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0010】
以下、図面を用いて実施形態により本発明を具体的に説明する。
【0011】
<実施形態1>
本実施形態に係る鍛造プレス装置1Aは、
図1に示すように、移動軸線Cに沿って互いに近接離間可能な上型2及び下型3の間でワーク(素材)Wをプレスする。本鍛造プレス装置1Aによるプレス成形前のワークWは丸棒である(
図8(a)参照)。また、本鍛造プレス装置1Aによるプレス成形後の中間鍛造品F1は、軸部51と、軸部51の一端側に連なる円錐台状部52と、を有している(
図8(b)参照)。中間鍛造品F1は、1又は2以上の他の鍛造プレス装置により1回又は2回以上のプレス成形を施すことで鍛造品F2(具体的にリヤシャフト)とされる。鍛造品F2は、軸部53と、軸部53の一端側に設けられるフランジ部54と、を有している(
図8(c)参照)。なお、本実施形態では、本発明に係る「鍛造品」としてリヤシャフトを例示するが、これに限定されず、例えばドライブピニオン、アウトプットシャフト、カウンターギヤシャフトなどであってもよい。
【0012】
上型2は、可動型であり、ラム5に固定されている。ラム5は、駆動部6により昇降される。駆動部6は、主油圧シリンダ7aと、主油圧シリンダ7aの両側に配置される左右の副油圧シリンダ7b、7bと、を有している。主油圧シリンダ7aは各副油圧シリンダ7bよりも推力が大きい。本鍛造プレス装置1Aは、制御部9が各油圧シリンダ7a、7bを駆動制御することで、仮プレス動作Q1、戻し動作Q2及び本プレス動作Q3を行う(即ち、2段モーションのプレス成形を行う)ように構成されている(
図5参照)。
【0013】
仮プレス動作Q1は、上型2を下降させることで上型2及び下型3を近接させてワークWを仮押しする動作である。また、戻し動作Q2は、ワークWの仮押しを解除するように上型2を上昇(例えば10~20mm程度の上昇)させることで上型2及び下型3を離間させて上型2とワークWとの間に隙間S1(例えば、0.4~1mm程度の隙間S1)を形成する動作である(
図7参照)。また、本プレス動作Q3は、上型2を下降させることで上型2及び下型3を近接させてワークWを本押しする動作である。本プレス動作Q3では、仮プレス動作Q1よりもワークWにかかる推力が大きい。具体的に、仮プレス動作Q1は左右の副シリンダ7b、7bの作動により行われ、本プレス動作Q3は主シリンダ7a及び左右の副シリンダ7b、7bの作動により行われる。
【0014】
上型2は、筒型2aと、筒型2aの上部中央に設けられる中央型2bと、を有している。また、上型2の成形面11は、ワークWの上端部の軸端面と当接する押圧面12と、後述のエアー噴射口15が開口し且つワークWの上端部の外周面と当接する拘束面(拘束内周面)13と、を有している。押圧面12は中央型2bの下面により構成されている。また、拘束面13は筒型2aの内周面により構成されている。また、拘束面13は、下型3に向かうに連れて拡径するテーパ部13aを有している。さらに、拘束面13は、テーパ部13aの下端部と連なる湾曲端部13bを有している。湾曲端部13bは、下型3に向かうに連れて拡径しており、拘束面13の移動軸線C方向の端部(具体的に下端部)を構成している。
【0015】
上型2には、
図2及び
図3に示すように、その拘束面13に開口するように複数(図中2つ)のエアー噴射口15が設けられている。各エアー噴射口15は配管17を介してエアー供給源18(例えば、エアーコンプレッサー、送風機など)と接続されている。配管17には、上記の制御部9により開閉制御されるバルブ19が設けられている。制御部9は、戻し動作Q2中にバルブ19を開放してエアー供給源18から各エアー噴射口15にエアーを供給する。なお、エアー噴射口15に対するエアー供給及び停止のタイミングは特に限定されない。例えば、エアー供給は、戻し動作Q2の開始と同時に行われたり、戻し動作Q2の開始から所定時間t1の経過後(戻し動作の終了前)に行われたりしてもよい。また、エアー供給の停止は、戻し動作Q2の開始から所定時間t2(t1<t2)の経過後(戻し動作の終了前)に行われたり、戻し動作Q2の終了と同時に行われたり、本プレス動作Q3の開始から所定時間経過後に行われたりしてもよい。さらに、エアー供給は、各動作Q1~Q3を含むプレス成形中に常時行われてもよい。
【0016】
各エアー噴射口15は、上型2の拘束面13において移動軸線C方向にずれた位置で開口している。具体的に、上側のエアー噴射口15は拘束面13の上端部で開口しており、下側のエアー噴射口15は拘束面13の上下方向の中間部で開口している。また、上側のエアー噴射口15は、上型2の側面視で移動軸線Cに対して角度(鈍角)θ1で傾斜する方向に延びている。また、下側のエアー噴射口15は、上型2の側面視で移動軸線Cに対して角度(鈍角)θ2(θ1<θ2)で傾斜する方向に延びている。また、各エアー噴射口15は、上型2の平面視で移動軸線Cを中心とする円周(具体的に、拘束面13の内周より僅かに小さな円周)の接線方向に延びている。さらに、各エアー噴射口15は、移動軸線Cを中心とする回転対称(具体的に180度の回転対称)となる位置に配置されている。これにより、戻し動作Q2の際に、隙間S1に対してエアー噴射口15からエアーを噴射することで隙間S1内に下方に向かう螺旋状気流(旋回気流)H1、H2が発生する(
図7参照)。なお、
図7中において、螺旋状気流H1は上側のエアー噴射口15からのエアー噴射による気流を示し、螺旋状気流H2は下側のエアー噴射口15からのエアー噴射による気流を示す。
【0017】
ここで、エアー噴射口15は、エアー噴射によりワークWの表面上に付着したスケールOを密閉空間S2内に飛散させ得る限り、その延設方向、配置場所、個数特に特に限定されない。例えば、移動軸線Cに対して同じ角度で傾斜して延びる2以上のエアー噴射口15を採用してもよい。また、移動軸線Cに対して直交する方向に延びるエアー噴射口15を採用してもよい。また、移動軸線Cを中心とする円周の接線方向と傾斜する方向に延びるエアー噴射口15を採用してもよい。さらに、1つのエアー噴射口15のみを採用してもよい。
【0018】
下型3は、固定型であり、ボルスタ21に固定されている(
図1参照)。また、下型3は、ワークWの下端部を保持する保持部22を有している。保持部22は、ワークWの下端部が圧入される筒状の下型3の内周面により構成されている。また、下型3の外周側には、上型2の外周面を覆う筒状の下型ホルダー24が設けられている。仮プレス動作Q1中に、下型ホルダー24の内周面と上型2の外周面とが重なることで、上型2と下型3の間(具体的に、下型ホルダー24の内周面、上型2の下面及び下型3の上面との間)に、隙間S1に連通する密閉空間S2が形成される。また、下型ホルダー24には、スケールOを排出するための排出口25が設けられている。排出口25は、密閉空間S2に開口するとともに、移動軸線Cを中心とする円周の接線方向に延びている(
図4参照)。また、排出口25は、ダクト26を介してスケール回収部27と接続されている。スケール回収部27は、ダクト29を介してエアー吸引源28(例えば、エアーエジェクタ、真空ポンプなど)と接続されている。エアー吸引源28の作動により排出口25及びダクト26を介して密閉空間S2内に吸引気流(負圧)を作用させることで、密閉空間S2内に飛散されたスケールOがスケール回収部27で吸引回収される。
【0019】
なお、本実施形態では、エアー吸引源28の作動は各動作Q1~Q3を含むプレス成形中に常時行われるものとする。ただし、エアー吸引源28の作動は、エアー噴射口15に対するエアー供給及び停止のタイミングと合わせて制御されるようにしてもよい。また、本実施形態では、下型3に上型2と重なる下型ホルダー24を設けて密閉空間S2を形成するようにしたが、これに限定されず、例えば上型2に下型3と重なる筒状の上型ホルダーを設けて密閉空間S2を形成したり、上型2及び下型3のそれぞれに互いに重なる筒状のホルダーを設けて密閉空間S2を形成したりしてもよい。さらに、本実施形態では、下型ホルダー24に排出口25を設ける形態を例示したが、これに限定されず、例えば下型3に排出口25を設けるようにしてもよい。
【0020】
次に、上記構成の鍛造プレス装置1Aの作用効果について説明する。プレス成形の準備状態では、上型2が上死点に位置し、下型3の保持部22には、例えば1200~1250℃の高温に加熱されたワークWが保持される。この状態より、駆動部6により上型2を下降させてワークWのプレス成形を開始し、仮プレス動作Q1、戻し動作Q2及び本プレス動作Q3をこの順で行う(
図5参照)。なお、プレス成形の準備状態では、上型2と下型3の間には密閉空間S2が形成されておらず、ワークWを下型3へセットするための空間が形成されている。
【0021】
仮プレス動作Q1では、上型2を下死点に至らない位置まで下降させることでワークWが仮押しされる。仮プレス動作Q1における成形開始時(すなわち、上型2の押圧面12によるワークWの軸端面の押圧開始時)には、
図6(a)に示すように、下型ホルダー24が上型2と重なっており、下型ホルダー24、上型2及び下型3の間に密閉空間S2が形成されている。この密閉空間S2内にはエアー吸引源28の作動により吸引気流が作用している。この状態より、仮プレス動作Q1が更にすすむと、上型2の押圧面12によりワークWの軸端面が押圧されるとともに、上型2の拘束面13によりワークWの軸端部の外周面が拘束される。
【0022】
次に、戻し動作Q2では、
図7に示すように、ワークWの仮押しを解除するように上型2を上昇させることで上型2の拘束面13とワークWの外周面との間に隙間S1が形成される。戻し動作Q2の際に、エアー供給源18の作動によりエアー噴射口15にエアーが供給され、エアー噴射口15から隙間S1内にエアーが噴射される。これにより、隙間S1内に下方に向かう螺旋状気流H1、H2が発生し、ワークWの表面上のスケールOが密閉空間S2内に飛散される。その飛散されたスケールO(具体的に、離型剤と混ざる前の乾いたスケールO)は、吸引気流の作用する密閉空間S2から排出口25及びダクト26を介してスケール回収部27で吸引回収される。
【0023】
次いで、本プレス動作Q3では、
図6(b)に示すように、上型2を下死点まで下降させることでワークWが本押しされる。これにより、上型2の押圧面12によりワークWの軸端面が押圧されるとともに、上型2の拘束面13によりワークWの軸端部の外周面が拘束されて中間鍛造品F1(
図8(b)参照)が成形される。その後、上型2を上死点まで上昇させて準備状態に戻り一連のプレス成形が終了する。
【0024】
ここで、本鍛造プレス装置1Aにより得られた中間鍛造品F1は、他の1又は2以上の鍛造プレス装置により1回又は2回以上のプレス成形が施されることで鍛造品F2(
図8(c)参照)とされる。本鍛造プレス装置1Aを用いる鍛造品の製造方法は、鍛造プレス装置1Aにより、ワークWの表面上のスケールOを回収しつつワークWにプレス成形を施して中間鍛造品F1を得る工程と、中間鍛造品F1に1回又は2回以上のプレス成形を施して鍛造品F2を得る工程と、を備えている。
【0025】
以上より、本実施形態の鍛造プレス装置1Aによると、上型2を下降させてワークWを仮押しする仮プレス動作Q1と、ワークWの仮押しを解除するように上型2を上昇させて上型2とワークWとの間に隙間S1を形成する戻し動作Q2と、上型2を下降させてワークWを本押しする本プレス動作Q3と、を行うとともに、上型2及び下型3の間に隙間S1と連通する密閉空間S2を形成することが可能に構成されており、上型2には、その成形面11に開口するようにエアー噴射口15が設けられている。そして、戻し動作Q2の際に、隙間S1を介してエアー噴射口15から噴射されるエアーによりワークWの表面上のスケールOを密閉空間S2内に飛散させ、その飛散されたスケールOを密閉空間S2から外部へ吸引回収する。これにより、密閉鍛造のように金型とワークの間に隙間が殆どない場合であっても、プレス成形時にスケールOを効果的に回収することができる。その結果、下型3やその周囲にスケールOが飛散せず、人手による清掃作業をなくす又は低減できるとともに、鍛造プレス装置1Aの保全性や作業環境の悪化を防止することができる。しかも、スケールOは離型剤と混ざる前の乾いた状態で回収するので、スケール回収後の離型剤とスケールOを分離するための分離、回収装置が不要となる。これに対して、特許文献1の鍛造プレス装置を用いてワークWをプレスする場合、上型に直接的にエアー噴射口を設けることとなるが、そうすると、一度のプレスでは、上型とワークWの間に適切な隙間が形成されず、ワークWの表面にスケールが付着した状態が維持されてしまい、スケールを回収することができない。
【0026】
また、本実施形態では、上型2の成形面11は、エアー噴射口15が開口し且つワークWの外周面と当接する拘束面13を有し、拘束面13は、下型3に向かうに連れて拡径するテーパ部13aを有する。これにより、上型2の拘束面13(具体的にテーパ部13a)とワークWの外周面との間に螺旋状気流H1、H2が流れるのに適した空間S1が形成される。
【0027】
また、本実施形態では、上型2の拘束面13は、テーパ部13aの下端部と連なる湾曲端部13bを有する。これにより、仮プレス動作Q1から戻し動作Q2に移行する際に上型2とワークWとを円滑に離間させることができる。
【0028】
また、本実施形態では、上型2には、成形面11において移動軸線C方向にずれた位置で開口するように複数のエアー噴射口15が設けられている。これにより、1つのエアー噴射口15を備える形態に比べて、上型2とワークWの間により強い螺旋状気流H1、H2を発生させてスケールOの回収能力を高めることができる。
【0029】
さらに、本実施形態の鍛造品F2の製造方法によると、鍛造プレス装置1AによりワークWの表面上のスケールOを回収しつつワークWにプレス成形を施すことで中間鍛造品F1が得られ、中間鍛造品F1に1回又は2回以上のプレス成形を施すことで鍛造品F2が得られる。
【0030】
<変形例1>
次に、鍛造プレス装置1Aの変形例1について説明する。本変形例1では、
図9(a)に示すように、上型2の成形面11は、ワークWの上端部の軸端面と当接する押圧面12と、エアー噴射口15が開口し且つワークWの外周面と当接する拘束面13と、を有している。拘束面13は、下型3に向かうに連れて拡径する湾曲部31aを有している。これにより、本変形例1では、上型2の拘束面13(具体的に湾曲部31a)とワークWの外周面との間に螺旋状気流H1、H2が流れるのに適した隙間S1が形成される。なお、湾曲部31aの形状、配置場所等は、特に限定されず、プレス成形される中間鍛造品F1の形状等に応じて決められる。さらに、湾曲部31aは、1つであってもよいし、曲率の異なる複数であってもよい。
【0031】
<変形例2>
次に、鍛造プレス装置1Aの変形例2について説明する。本変形例2では、
図9(b)に示すように、上型2の成形面11は、ワークWの上端部の軸端面と当接する押圧面12と、エアー噴射口15が開口し且つワークWの外周面と当接する拘束面13と、を有している。拘束面13は、下型3に向かうに連れて拡径する湾曲部32a及びテーパ部32b、32cを有している。これにより、本変形例2では、上型2の拘束面13(具体的に、湾曲部32a及びテーパ部32b、32c)とワークWの外周面との間に螺旋状気流H1、H2が流れるのに適した隙間S1が形成される。なお、湾曲部32a及びテーパ部32b、32cの形状、大きさ等は、特に限定されず、プレス成形される中間鍛造品F1の形状等に応じて決められる。さらに、湾曲部32aは、1つであってもよいし、曲率の異なる複数であってもよい。さらに、テーパ部32b、32cは、1つであってもよいし、テーパ角度の異なる複数であってもよい。
【0032】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係る鍛造プレス装置1Bについて説明するが、実施形態1の鍛造プレス装置1Aと略同じ構成部分には同符号を付け詳説を省略し、両者の相違点について詳説する。
【0033】
本実施形態に係る鍛造プレス装置1Bは、
図10に示すように、移動軸線Cに沿って互いに近接離間可能な上型2及び下型3の間でワーク(素材)Wをプレスする。本鍛造プレス装置1Bは、仮プレス動作Q1、戻し動作Q2及び本プレス動作Q3をこの順で行うように構成されている(
図5参照)。
【0034】
上型2は、下方に向かって突出する凸部35を有している。また、上型2の成形面11は、ワークWの上端部の軸端面と当接する押圧面12と、エアー噴射口15が開口し且つワークWの内周面と当接する拘束面(拘束外周面)13と、を有している。押圧面12は凸部35の下面により構成されている。また、拘束面13は凸部35の外周面により構成されている。また、拘束面13は、下型に向かうに連れて縮径するテーパ部13aを有している。さらに、拘束面13は、テーパ部13aの上端部と連なる湾曲端部13bを有している。湾曲端部13bは、下型3に向かうに連れて縮径しており、拘束面13の移動軸線C方向の端部(具体的に上端部)を構成している。
【0035】
以上より、本実施形態の鍛造プレス装置1Bによると、鍛造プレス装置1Aと略同様の作用効果を奏するとともに、上型2の成形面11は、エアー噴射口15が開口し且つワークWの内周面と当接する拘束面13を有し、拘束面13は、下型3に向かうに連れて縮径するテーパ部13aを有するので、上型2の拘束面13とワークWの内周面との間に螺旋状気流Hが流れるのに適した隙間S1が形成される。
【0036】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係る鍛造プレス装置1Cについて説明するが、実施形態1の鍛造プレス装置1Aと略同じ構成部分には同符号を付け詳説を省略し、両者の相違点について詳説する。
【0037】
本実施形態に係る鍛造プレス装置1Cは、
図11に示すように、移動軸線Cに沿って互いに近接離間可能な上型2及び下型3の間でワーク(素材)Wをプレスする。本鍛造プレス装置1Cは、仮プレス動作Q1、戻し動作Q2及び本プレス動作Q3をこの順で行うように構成されている(
図5参照)。
【0038】
上型2は、筒型2aと、筒型2aの上部中央に設けられる中央型2bと、を有している。筒型2aの外周側には、筒型2aを保持する筒状の上型ホルダー14が設けられている。筒型2aには、その拘束面13に開口するように複数(図中2つ)のエアー噴射口15が設けられている。また、上型ホルダー14には、配管17を介してエアー供給源18と接続されるエアー供給路37が設けられている。また、上型ホルダー14の内周面と筒型2aの外周面の間には、エアー供給路37とエアー噴射口15を連通させる連通路38が設けられている。連通路38は円筒状の空間で形成されている。ただし、連絡路38は、溝状の空間で形成されていてもよい。
【0039】
なお、複数種のワークWの形状に対応した各内周形状を有する複数種の筒型2aを用意しておき、段取り替え時に対応する筒型2aに交換し、その筒型2aを兼用の上型ホルダー14で保持することができる。さらに、エアー供給路37は、複数のエアー噴射口15と対応して複数設けられていてもよいし、連通路38が円筒状の空間である場合には、複数のエアー噴射口15に対して1つ設けられていてもよい。
【0040】
下型3は、筒型3aを有している。筒型3aは、ワークWを保持する保持部22を有している。また、筒型3aの外周側には、筒型3aを保持する筒状の下型ホルダー24が設けられている。各動作Q1~Q3中に、下型ホルダー24の内周面と上型ホルダー14の外周面とが重なることで、上型2と下型3の間に密閉空間S2が形成される。
【0041】
下型ホルダー24には、密閉空間S2に開口するように排出口25が設けられている(
図12参照)。排出口25は、ダクト26を介して後述のスケール回収部45と接続されている。スケール回収部45の作動により排出口25を通じて密閉空間S2内に吸引気流(旋回気流)H3が作用する。なお、本実施形態では、スケール回収部45の作動は、各動作Q1~Q3を含むプレス成形中に常時行われるものとするが、プレス成形中において密閉空間S2の形成時の全期間中又は一部の所定期間中に行われてもよい。
【0042】
排出口25は、移動軸線Cを中心とする円周の接線方向に延びている。また、排出口25は、下型3の側面視で移動軸線Cに対して直交する方向に延びている。ただし、排出口25は、下型3の側面視で移動軸線Cに対して傾斜する方向(例えば、下方に向かう傾斜方向)に延びていてもよい。なお、排出口25は、密閉空間S2内に吸引気流H3を作用させ得る限り、その延設方向、配置場所、個数特に特に限定されない。
【0043】
下型ホルダー24には、密閉空間S2に開口するようにエアー吹出口41が設けられている(
図12参照)。エアー吹出口41は、配管42を介してエアー供給源43(例えば、エアーコンプレッサー、送風機など)と接続されている。エアー供給源43からのエアー供給によりエアー吹出口41から密閉空間S2内に吹出気流(旋回気流)H4が作用する。また、エアー吹出口41の縦断面積は、排出口25よりも小さく且つエアー噴射口15よりも大きな値に設定されている。なお、本実施形態では、エアー吹出口41に対するエアー供給源43からのエアー供給は、各動作Q1~Q3を含むプレス成形中において密閉空間S2の形成時の全期間中又は一部の所定期間中に行われるものとするが、プレス成形中に常時行われてもよい。さらに、エアー供給源は43、エアー噴射口15にエアーを供給するエアー供給源18(
図11参照)と兼用であってもよい。
【0044】
エアー吹出口41は、移動軸線Cを中心とする円周の接線方向に延びている。また、エアー吹出口41は、下型3の側面視で移動軸線Cに対して直交する方向に延びている。ただし、エアー吹出口41は、下型3の側面視で移動軸線Cに対して傾斜する方向(例えば、下方に向かう傾斜方向)に延びていてもよい。なお、エアー吹出口41は、密閉空間内に吹出気流を作用させ得る限り、その延設方向、配置場所、個数特に特に限定されない。
【0045】
エアー吹出口41及び排出口25は、各軸心が略平行となるように配置されている。ただし、エアー吹出口41及び排出口25は、各軸心が交差するように配置されてもよい。
【0046】
スケール回収部45は、
図13に示すように、ダクト26を介して吸引回収されるスケール(具体的にスケールを含むエアー)が衝突する当て板46aを有するスケール分離部46と、スケール分離部46内に吸引気流を発生させるエジェクタガン47と、スケール分離部46の底部に溜まるスケールを流量制御して排出するロータリーバルブ48と、を備えている。なお、
図13中において、エアーの流れを実線矢印で示し、スケールの流れを破線矢印で示す。
【0047】
当て板46aは、ダクト26の端部と対向するようにケース46b内に配置されている。また、エジェクタガン47は、一端部47aがスケール分離部46と接続されており、他端部47bがフィルタ50に接続されている。また、エジェクタガン47は、両端部47a、47bの中間部47cに圧縮空気Pが供給されることで、一端部47aで吸引気流を発生させ、他端部47bで吹出気流を発生させる。また、ロータリーバルブ48は、モータ48aと、モータ48aで回転されるロータ48bと、を有している。さらに、ロータリーバルブ48の下側には、スケールを回収する回収ボックス49が設置されている。なお、エジェクタガン47としては、例えばワンダーガン(商品名、オオサワ&カンパニー社製)を使用できる。
【0048】
次に、上記構成の鍛造プレス装置1Cの作用効果について説明する。本鍛造プレス装置1Cでは、仮プレス動作Q1、戻し動作Q2及び本プレス動作Q3が行われる(
図5参照)。仮プレス動作Q1中に上型2と下型3の間に密閉空間S2が形成されると、密閉空間S2内には、スケール回収部45により吸引気流H3が作用するとともに、エアー吹出口41からのエアー吹出により吹出気流H4が作用する(
図12参照)。この吹出気流H4により各動作Q1~Q3中に下型3(具体的に筒型3a)上に落下したスケールが吹き飛ばされる。その吹き飛ばされたスケールは、エアー噴射口15からのエアー噴射により密閉空間S2内で飛散されたスケールとともにダクト26を介してスケール回収部45へ吸引回収される。
【0049】
スケール回収部45では、スケール分離部46において、スケールが当て板46aに衝突して落下し底部に溜まる。そのスケールは、ロータリーバルブ48により流量制御されつつスケール分離部46の底部から排出され、回収ボックス49内に回収される。一方、スケール分離部46内でスケールが分離されたエアーは、フィルタ50により微細スケールが除去された後に外気に放出される。
【0050】
以上より、本実施形態の鍛造プレス装置1Cによると、上記の鍛造プレス装置1Aと略同様の作用効果を奏することに加えて、下型3には、密閉空間S2に開口するようにエアー吹出口41が設けられているので、下型3上に落下したスケールがエアー吹出口41からの吹出気流H4により吹き飛ばされ、エアー噴射口15からのエアー噴射により密閉空間S2内で飛散されたスケールとともにダクト26を介してスケール回収部45に吸引回収される。その結果、スケールを更に効果的に回収することができる。
【0051】
さらに、本実施形態のスケール回収部45によると、ダクト26を介して吸引回収されるスケールが衝突する当て板46aを有するスケール分離部46と、スケール分離部46内に吸引気流を発生させるエジェクタガン47と、スケール分離部46の底部に溜まるスケールを流量制御して排出するロータリーバルブ48と、を備えている。これにより、スケールを更に効果的に回収することができる。
【0052】
具体的に、本スケール回収部45によれば、スケールの衝突により摩耗した当て板46aを容易に交換できる。さらに、ロータリーバルブ48によりスケールをプレス稼働中に排出できる。これに対して、スケールを外装部に衝突させる構造では、摩耗した外装部を容易に交換することができない。また、ロータリーバルブ48を備えない構造では、プレス稼働中にスケールを排出できない。
【0053】
尚、本発明においては、上記実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、上記実施形態では、移動軸線Cが垂直方向となる縦型の鍛造プレス装置1A~1Cを例示したが、これに限定されず、例えば移動軸線Cが水平方向又は水平に対して傾斜した方向となる横型の鍛造プレス装置1A~1Cとしてもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、一方の金型が可動型であり、他方の金型が固定型(下型3)である鍛造プレス装置1A~1Cを例示したが、これに限定されず、例えば一対の金型のそれぞれが可動型である鍛造プレス装置1A~1Cを採用してもよい。
【0055】
また、上記実施形態では、一方の金型が上型2(可動型)であり、他方の金型が下型3である鍛造プレス装置1A~1Cを例示したが、これに限定されず、例えば一方の金型が下型3(可動型)であり、他方の金型が上型2である鍛造プレス装置1A~1Cを採用してもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、仮プレス動作Q1及び戻し動作Q2のセットを1回行う鍛造プレス装置1A~1Cを例示したが、これに限定されず、例えば仮プレス動作Q1及び戻し動作Q2のセットを複数回行う鍛造プレス装置1A~1Cを採用してもよい。
【0057】
さらに、上記実施形態では、仮プレス動作Q1、戻し動作Q2及び本プレス動作Q3を行う油圧プレス式の鍛造プレス装置1A~1Cを例示したが、これに限定されず、例えばサーボモータを利用して各動作Q1~Q3を行う機械プレス式の鍛造プレス装置1A~1Cを採用してもよい。
【0058】
さらに、上記実施形態の鍛造プレス装置1A~1Cの各構成を組み合わせて用いることができる。例えば、鍛造プレス装置1A、1Bとしてスケール回収部45を備える形態を採用してもよい。さらに、鍛造プレス装置1A、1Bの上型3として鍛造プレス装置1Cの上型3を採用してもよい。
【0059】
本発明は上記で詳述した実施形態に限定されず、本発明の請求項に示した範囲で様々な変形または変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は鍛造品を製造する技術として広く利用される。
【符号の説明】
【0061】
1A~1C;鍛造プレス装置、2;上型(一方の金型)、3;下型(他方の金型)、11;上型の成形面、12;押圧面、13;拘束面、13a;テーパ部、13b;湾曲端部、15;エアー噴射口、22;下型の保持部、31a;湾曲部、32a;湾曲部、32b,32c;テーパ部、41;エアー吹出口、C;移動軸線、F2;鍛造品、O;スケール、Q1;仮プレス動作、Q2;戻し動作、Q3;本プレス動作、S1;隙間、S2;密閉空間、W;ワーク。