(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025036258
(43)【公開日】2025-03-14
(54)【発明の名称】炭素数1~4の原料アルコールから芳香族化合物の製造に用いられる10員環ゼオライト触媒
(51)【国際特許分類】
B01J 29/70 20060101AFI20250306BHJP
C01B 39/40 20060101ALI20250306BHJP
C07C 15/04 20060101ALI20250306BHJP
C07C 15/06 20060101ALI20250306BHJP
C07C 15/08 20060101ALI20250306BHJP
C07C 1/20 20060101ALI20250306BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20250306BHJP
【FI】
B01J29/70 Z
C01B39/40
C07C15/04
C07C15/06
C07C15/08
C07C1/20
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024144486
(22)【出願日】2024-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2023139237
(32)【優先日】2023-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京科学大学
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 俊之
(72)【発明者】
【氏名】津坂 夏実
(72)【発明者】
【氏名】深澤 峻
【テーマコード(参考)】
4G073
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G073BA04
4G073BA63
4G073BB24
4G073CZ12
4G073FA01
4G073FB12
4G073FB25
4G073FB30
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4G073UA03
4G073UB39
4G169AA11
4G169BA07A
4G169BA07B
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4G169BC16A
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4G169BD05B
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4G169BE06B
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4G169FA01
4G169FC03
4G169ZA01A
4G169ZA01B
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4G169ZC01
4G169ZC04
4H006AA02
4H006AC28
4H006BA71
4H006BA81
4H006BC10
4H006BC11
4H006DA25
4H039CA41
4H039CH10
(57)【要約】
【課題】炭素数1~4の原料アルコールから、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物を高い選択性で製造し得る10員環ゼオライト触媒を提供する。
【解決手段】水と、ケイ素源と、アルニウム源と、水酸化物と、分岐アルコールとを含む原料混合物を水熱反応させて得られる10員環ゼオライト触媒であって、前記水酸化物が、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される1種以上であり、前記分岐アルコールが、炭素数5以上かつ4級炭素を有するものであり、かつ、炭素数1~4の原料アルコールから芳香族化合物の製造に用いられる10員環ゼオライト触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、ケイ素源と、アルミニウム源と、水酸化物と、分岐アルコールとを含む原料混合物を水熱反応させて得られる10員環ゼオライト触媒であって、前記水酸化物が、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される1種以上であり、前記分岐アルコールが、炭素数5以上かつ4級炭素を有するものであり、かつ、炭素数1~4の原料アルコールから芳香族化合物の製造に用いられる10員環ゼオライト触媒。
【請求項2】
前記分岐アルコールが、炭素数5~10のポリオールである、請求項1に記載の10員環ゼオライト触媒。
【請求項3】
前記ケイ素源とアルミニウム源との比率が、SiO2:Al2O3換算のモル比で、20.0~400.0:1である、請求項1に記載の10員環ゼオライト触媒。
【請求項4】
ペンタシル構造を有する請求項1に記載の10員環ゼオライト触媒。
【請求項5】
MFI型である請求項1に記載の10員環ゼオライト触媒。
【請求項6】
前記原料アルコールが、エタノールである請求項1に記載の10員環ゼオライト触媒。
【請求項7】
前記水と、前記ケイ素源と、前記アルミニウム源と、前記水酸化物と、前記分岐アルコールとを含む原料混合物を水熱反応させる工程を有する、請求項1に記載の10員環ゼオライト触媒の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の10員環ゼオライト触媒を、炭素数1~4の原料アルコールと接触させて生成物を得る反応工程を有する、芳香族化合物の製造方法。
【請求項9】
前記反応工程を、200℃以上600℃以下の温度条件、かつ、大気圧以上1.0MPa以下の圧力条件下で行う請求項8に記載の芳香族化合物の製造方法。
【請求項10】
前記生成物中における、ベンゼン、トルエン及びキシレンの選択率が、炭素原子換算で30質量%以上である請求項8に記載の芳香族化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素数1~4の原料アルコールから芳香族化合物の製造に用いられる10員環ゼオライト触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物は、化学産業において必要不可欠な基礎化学品である。昨今、気候変動問題が深刻化される中、化学品原料となる資源として、石油に替わって再生可能資源を用いた製造プロセスの構築が急務である。特に、近年再生可能資源としてバイオマス由来のエタノール等のアルコールが注目されており、アルコールを原料として芳香族化合物を製造する新たな技術の確立が求められている。
エタノールを原料に芳香族化合物を製造する方法として、結晶性アルミノシリケートおよび結晶性ガロシリケートをシリカで修飾した触媒を用いた製造法(特許文献1)、MFI型ゼオライトとシリカバインダーから成るシリカ成形体で、リンと亜鉛を含んだ流動床触媒を用いた製造法(特許文献2)、アルコールから芳香族化合物を製造する方法として、外表面ブレンステッド酸量が0.1~10.0μmol/gかつ銀含有量が0.05~3wt%である平均粒子径100nm以下の10員環細孔ゼオライトを用いた製造法(特許文献3)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5294928号
【特許文献2】特許第6574059号
【特許文献3】特開2021-159884
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に提案される方法においては、ゼオライトをシリケートで被覆するため、複数回の水熱合成が必要であり、触媒合成コストに課題がある。また、特許文献2に提案される方法においては、流動床反応器を用いることから循環時の物質損失により生産性が低い。さらに、特許文献3に提案されるメタノールから芳香族化合物を製造する方法においては、ゼオライトの粒子径や外表面のブレンステッド酸量及び修飾金属Agの含有量が制御され、触媒の耐水性ならびに触媒寿命の向上効果は検証されたものの、芳香族化合物の選択性の向上の余地があり、加えて、エタノールを原料とした場合の触媒機能制御効果は確認されていない。いずれの提案においても、エタノール転換による芳香族化合物の製造に用いる触媒として、ゼオライトのAl原子の分布を制御した芳香族化合物の選択性向上効果は検証されておらず、改良の余地が残されている。
【0005】
本発明は、炭素数1~4の原料アルコールから、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物を高い選択性で製造し得る10員環ゼオライト触媒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記[1]~[10]を提供する。
[1]水と、ケイ素源と、アルミニウム源と、水酸化物と、分岐アルコールとを含む原料混合物を水熱反応させて得られる10員環ゼオライト触媒であって、前記水酸化物が、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される1種以上であり、前記分岐アルコールが、炭素数5以上かつ4級炭素を有するものであり、かつ、炭素数1~4の原料アルコールから芳香族化合物の製造に用いられる10員環ゼオライト触媒。
[2]前記分岐アルコールが、炭素数5~10のポリオールである、[1]に記載の10員環ゼオライト触媒。
[3]前記ケイ素源とアルミニウム源との比率が、SiO2:Al2O3換算のモル比で、20.0~400.0:1である、[1]又は[2]に記載の10員環ゼオライト触媒。
[4]ペンタシル構造を有する[1]~[3]のいずれか1に記載の10員環ゼオライト触媒。
[5]MFI型である[1]~[4]のいずれか1に記載の10員環ゼオライト触媒。
[6]前記原料アルコールが、エタノールである[1]~[5]のいずれか1に記載の10員環ゼオライト触媒。
[7]前記水と、前記ケイ素源と、前記アルミニウム源と、前記水酸化物と、前記分岐アルコールとを含む原料混合物を水熱反応させる工程を有する、[1]~[6]のいずれか1に記載の10員環ゼオライト触媒の製造方法。
[8][1]~[6]のいずれか1に記載の10員環ゼオライト触媒を、炭素数1~4の原料アルコールと接触させて生成物を得る反応工程を有する、芳香族化合物の製造方法。
[9]前記反応工程を、200℃以上600℃以下の温度条件、かつ、大気圧以上1.0MPa以下の圧力条件下で行う[8]に記載の芳香族化合物の製造方法。
[10]前記生成物中における、ベンゼン、トルエン及びキシレンの選択率が、炭素原子換算で30質量%以上である[8]又は[9]に記載の芳香族化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、炭素数1~4の原料アルコールから、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族化合物を高い選択性で製造し得る10員環ゼオライト触媒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1で得られたゼオライト触媒のX線回折スペクトルである。
【
図2】比較例1で得られたゼオライト触媒のX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。なお、本明細書において、「以上」、「以下」、「~」の数値範囲に係る上限及び下限の数値は任意に組み合わせできる数値であり、また実施例の数値を上限及び下限の数値として用いることもできる。また、好ましいとされている規定は任意に採用することができる。即ち、好ましいとされている一の規定を、好ましいとされている他の一又は複数の規定と組み合わせて採用することができる。好ましいもの同士の組み合わせはより好ましいといえる。
【0010】
本発明者らは、原料アルコールから芳香族化合物を製造する際のゼオライト触媒について検討したところ、10員環ゼオライト触媒を製造する際の原料として、炭素数5以上かつ4級炭素を有する分岐アルコールなどを用いることで、得られる芳香族化合物が含有するベンゼン、トルエン及びキシレン(BTX)の選択率が向上することを見出した。以下、そのメカニズムについて詳述する。
従来、10員環ゼオライト、より具体的にはMFI型アルミノシリケートであるZSM-5の合成は、典型的にはテトラプロピルアンモニウムカチオン(N(CH2CH2CH3)4
+、“TPA+”)を有機構造規定剤(充填剤)として用い、Na+共存下にて行われる。これに対し、本実施形態の10員環ゼオライト触媒の合成は、多価アルコールの一種であり、構造がTPA+と類似し、電荷をもたないペンタエリトリトール(C(CH2OH)4、“PET”)等の分岐アルコールを用いて、水酸化物の共存下にて行われる。
ここで、MFI型等の10員環ゼオライトは,10員環の直線状細孔(ストレートチャンネル)とジグザグな細孔(ジグザグチャンネル)が互いに交差した3次元細孔構造を有する。10員環細孔の直径は5.5Å程度であるが、細孔の交差した場所(インターセクション)は約10Åと広い空間となっている。
そして、ペンタエリトリトール分子などの分岐アルコールは嵩高いため、インターセクションにしか存在できない。この場合、Al3+の対カチオンは細孔内に均一に存在できるはずであるが、インターセクションがペンタエリトリトール分子で占有されているため、結果としてAl原子はインターセクション以外の、ストレートチャンネル内やジグザグチャンネル内に選択的に存在させることができる。
次に、インターセクションで反応が進行すると、広い反応場での逐次反応が進行し、BTXよりも嵩高い芳香族化合物が生成することが考えられ、他方、10員環細孔内は形状選択的にBTXがちょうど生成する大きさである。
本実施形態の10員環ゼオライト触媒においては、酸点位置が10員環のストレートチャンネルとジグザグチャンネルに選択的に配置されているため、BTXの収率が向上する。
【0011】
(10員環ゼオライト触媒)
本実施形態の10員環ゼオライト触媒は、上述のように、水と、ケイ素源と、アルミニウム源と、水酸化物と、分岐アルコールとを含む原料混合物を水熱反応させて得られるものであって、前記水酸化物が、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される1種以上であり、前記分岐アルコールが、炭素数5以上かつ4級炭素を有するものであり、かつ、炭素数1~4の原料アルコールから芳香族化合物の製造に用いられるものである。
以下、原料混合物に用いられる各成分について説明する。
【0012】
前記ケイ素源としては、例えば、珪酸ナトリウム、コロイダルシリカ、シリカゲル、フュームドシリカ、テトラアルキルオルトシリケート、水ガラス等のシリケート、テトラエトキシオルソシリケートやテトラメトキシシランなどのケイ素のアルコキシド、有機ケイ素化合物及びシリカライトから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
前記アルミニウム源としては、例えば、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、アルミナゾル、ベーマイト及び有機アルミニウム化合物から選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0013】
前記ケイ素源とアルミニウム源との比率は、SiO2:Al2O3換算のモル比で、20.0~400.0:1であることが好ましく、30.0~200.0:1であることがより好ましく、35.0~150.0:1であることがさらに好ましい。ここで、上記SiO2:Al2O3換算の比率とは、ケイ素源中のケイ素原子が全てSiO2となり、アルミニウム源中のアルミニウム原子が全てAl2O3になっているとしたときの比率である。
【0014】
前記水酸化物は、上述のようにアルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物からなる群より選択される1種以上である。
前記アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。
また、前記アルカリ土類金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0015】
前記アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物の使用量は、原料混合物におけるケイ素原子1モルに対する前記アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物の合計量が、0.01~5.0モルであることが好ましく、0.05~2.0モルであることがより好ましく、0.07~0.80モルであることがさらに好ましい。
【0016】
前記分岐アルコールは、10員環チャネルを充填する細孔充填剤として機能するために、炭素数5以上かつ4級炭素を有するものであることを要し、炭素数5~10のポリオールであることが好ましく、具体的にはペンタエリトリトールが挙げられる。
【0017】
前記分岐アルコールの使用量は、原料混合物におけるSi原子1モルに対して、0.05~10.0モルであることが好ましく、0.1~5.0モルであることがより好ましく、0.2~2.0モルであることがさらに好ましい。
【0018】
前記水の使用量は、原料混合物におけるケイ素原子1モルに対して、5.0~300モルであることが好ましく、10~200モルであることがより好ましく、15~100モルであることがさらに好ましい。
【0019】
本実施形態のゼオライト触媒は10員環ゼオライト触媒であることを要するが、その理由は10員環によって0.5nm強の細孔入口経を有し、これがベンゼン、トルエン、パラキシレン分子が丁度通過できるサイズであるためである。
本実施形態の10員環ゼオライト触媒は、10員環骨格構造を有するゼオライトを含むものであれば特に制限されるものではなく、該10員環骨格構造を有するゼオライトとしては、AEL、EUO、FER、HEU、MEU、MEL、MFI、NES型等が、反応選択性、生産性等の観点から好ましく、また、原料アルコールと接触した際に効率よく芳香族化合物を製造することができるため、MELまたはMFI型を含んでなるものであることが好ましく、特にMFI型を含んでなるものであることが好ましい。そして、例えばMFI型としては、国際ゼオライト学会で定義される構造コードMFIに属するアルミノシリケート化合物を示すものである。
【0020】
本実施形態の10員環ゼオライト触媒は、金属担持ゼオライトであってもよく、その際の金属としては、例えば亜鉛、ガリウム、ニッケル、イリジウム、パラジウム、ロジウム、コバルト、プラチナ、ユーロピウム、ランタン、レニウム、ルテニウム、銀、金等を挙げることができる。
また、本実施形態の10員環ゼオライト触媒の形状についての制限はなく、例えば粉状のそのまま、球状、粒状、円筒形状、円柱形状、多角筒形状、多角柱形状、楕円形状等の各種形状を有するものであってもよい。
【0021】
本実施形態の10員環ゼオライト触媒は、希釈材とともに用いてもよい。
上記希釈材としては、希釈材として知られている範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えばシリカ、シリカ-アルミナ、アルミナ、チタニア、カーボン、セラミック-カーボン等を挙げることができる。
本実施形態の10員環ゼオライト触媒は、上記希釈材とともに成形した形態であってもよく、その際の形状について制限はなく、例えば球状、粒状、円筒形状、円柱形状、多角筒形状、多角柱形状、楕円形状等の各種形状を有するものであってもよい。
【0022】
(10員環ゼオライト触媒の製造方法)
本実施形態の10員環ゼオライト触媒の製造方法は、上述のように、前記水と、前記ケイ素源と、前記アルミニウム源と、前記水酸化物と、前記分岐アルコールとを含む原料混合物を水熱反応させる工程を有するものである。
本発明の10員環ゼオライト触媒の製造方法としては、具体的には、ケイ素源と、アルミニウム源と、水酸化物と、分岐アルコールとを混合して原料混合物を得る原料混合工程と、当該原料混合物を水熱反応させる水熱反応工程とを含むことが好ましい。
【0023】
(水熱反応工程)
前記水熱反応工程の温度条件は、100℃以上であることが好ましく、120~250℃であることがより好ましく、150~200℃であることがさらに好ましい。
前記水熱反応工程の反応時間は、3~500時間であることが好ましく、6~200時間がより好ましく、12~150時間がさらに好ましい。
また、水熱反応工程は、原料混合物を耐圧容器内に密封して加圧条件下で行うことが好ましく、さらに原料混合物を撹拌しつつ行うことが好ましい。
【0024】
本実施形態の10員環ゼオライト触媒の製造方法においては、上記水熱反応工程の後に、さらに反応生成物を固液分離し、必要に応じて洗浄した上で、焼成する工程を設けることが好ましい。
【0025】
前記焼成工程の温度条件は、300℃以上であることが好ましく、400~800℃であることがより好ましく、450~700℃であることがさらに好ましい。
前記焼成工程の焼成時間は、1~100時間であることが好ましく、2~50時間がより好ましく、5~24時間がさらに好ましい。
【0026】
(芳香族化合物の製造方法)
本実施形態の芳香族化合物の製造方法は、前記10員環ゼオライト触媒を、炭素数1~4の原料アルコールと接触させて生成物を得る反応工程を有する。
上記炭素数1~4の原料アルコールとしては、エタノールが好ましい。
【0027】
前記反応工程における反応形式は特に限定されず、通常は、固定床、移動床、沸騰床、懸濁床等の種々のプロセスから選択できるが、反応器の設計、製造がより容易であり、かつ運転をより安定に実施しやすいという点から、固定床が好ましい。
また、原料アルコールの流通法としては、気相で供給する気相流通式が好ましい。
【0028】
前記反応工程における温度条件としては、200~600℃が好ましく、300~580℃がより好ましく、400~550℃がさらに好ましい。
また、前記反応工程における圧力条件としては、大気圧以上2.0MPa以下が好ましく、大気圧以上1.0MPa以下がより好ましい。
【実施例0029】
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
【0030】
実施例1
(ゼオライト触媒の製造)
テフロン(登録商標)製ビーカー内において、SiO
2:Al
2O
3:PET:Na
2O:H
2Oが、モル比で1:0.02:0.5:0.125:25となるように、水 35.34g、水酸化ナトリウム 1.03g、PET 6.81g、硝酸アルミニウム 九水和物 1.50g、コロイダルシリカ 15.0g、5質量%シリカライト-1(構造式:Si
96O
192) 0.30gを順に加え、2時間室温で撹拌した。得られた溶液をテフロン(登録商標)製の内筒、ステンレス製の耐圧容器に加え、水熱合成装置で170℃にて24時間加熱撹拌した。
得られた混濁液を濾過し、水で洗浄した後、80℃で乾燥し、電気炉で550℃、10時間焼成した。得られた粉体を1Mの炭酸アンモニウム水溶液中で80℃、3時間加熱撹拌を2回行い、水で洗浄した後、80℃で乾燥し、電気炉で550℃、10時間焼成してゼオライト触媒を得た。
得られたゼオライト触媒についてXRD回折の測定を行った。その結果を
図1に示す。
【0031】
(芳香族化合物の製造)
ステンレス製反応管(内径Φ4mm、長さ270mm)を有する固定床気相流通式反応装置を用いた。ステンレス製反応管の中段に、上述のようにして合成したゼオライト触媒100mgを充填し、Ar流通下で加熱前処理を520℃で1時間行った。
その後、セラミック製管状炉を用いて触媒層を加熱し、温度を500℃に制御しつつ、原料エタノールをポンプで2.1マイクロリットル/分の流速で送液し、芳香族化合物の合成を開始した。
反応出口をガスクロマトグラフに接続し、オンラインで生成物を分析した。FID検出器を備え、分離カラムとしてキャピラリーカラム(Agilent製、(商品名)HP-PLOT Q)を有するガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC-2014)を用いて分析した。
その結果、生成物中の全炭素原子基準に対するベンゼン、トルエン及びキシレンの合計炭素原子含有量は、32.0質量%であった。また、原料エタノールの転化率は100質量%であった。
【0032】
比較例1
(ゼオライト触媒の製造)
テフロン(登録商標)製ビーカー内において、SiO
2:Al
2O
3:TPA
2O:Na
2O:H
2Oが、モル比で1:0.02:0.25:0.125:60となるように、水30.2g、硝酸アルミニウム 九水和物0.50g、塩化ナトリウム0.49g、テトラプロピルアンモニウム水酸化物(上記の「TPA」)4.24g、コロイダルシリカ5.02gを順に加え、24時間80℃で撹拌した。得られた溶液をテフロン(登録商標)製の内筒、ステンレス製の耐圧容器に加え、水熱合成装置で170℃72時間加熱撹拌した。得られた混濁液を濾過し、水で洗浄した後、80℃で乾燥し、最後に電気炉で550℃、10時間焼成した。
得られたゼオライト触媒についてXRD回折の測定を行った。その結果を
図2に示す。
【0033】
(芳香族化合物の製造)
上述のようにして合成したゼオライト触媒を用いて、実施例1と同様にして芳香族化合物の製造を行った。
その結果、生成物中の全炭素原子基準に対するベンゼン、トルエン及びキシレンの合計炭素原子含有量は、25.2質量%であった。また、原料エタノールの転化率は100質量%であった。
本実施形態の10員環ゼオライト触媒は、原料アルコールから芳香族化合物を製造することができ、特に基礎化学品として有用なベンゼン、トルエン及びキシレンの選択性に優れるため、芳香族化合物の製造に好適に用いられるものである。