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特開2025-36314脱離基を含む有機化合物を検出するためのセンサ及びそれを用いた検出方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025036314
(43)【公開日】2025-03-14
(54)【発明の名称】脱離基を含む有機化合物を検出するためのセンサ及びそれを用いた検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/414 20060101AFI20250307BHJP
【FI】
G01N27/414 301V
G01N27/414 301X
G01N27/414 301P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146659
(22)【出願日】2024-08-28
(31)【優先権主張番号】P 2023142955
(32)【優先日】2023-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 豪
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 由比
(72)【発明者】
【氏名】川島 嵩之
(72)【発明者】
【氏名】大代 晃平
(72)【発明者】
【氏名】田中 光
(72)【発明者】
【氏名】平田 紅里
(72)【発明者】
【氏名】上野 芳敬
(57)【要約】
【課題】
本発明は、有機ハロゲン化物等の脱離基を含む有機化合物を簡便且つ高感度に検出することができるセンサ、及びそれを用いた脱離基を含む有機化合物の検出方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、脱離基を含む有機化合物を検出するために用いられるセンサであって、該センサは、検出部位及びトランジスタを備えており、該検出部位が該トランジスタと接続されており、該検出部位の表面に、チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基の硫黄原子を介して固定されてなる、センサ、並びにこれを用いた脱離基を含む有機化合物の検出方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱離基を含む有機化合物を検出するために用いられるセンサであって、該センサは、検出部位及びトランジスタを備えており、該検出部位が該トランジスタと接続されており、該検出部位の表面に、チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基の硫黄原子を介して固定されてなる、センサ。
【請求項2】
前記チオール基を有する含窒素複素環化合物が、下記式(1)で表される化合物である、請求項1に記載のセンサ。
【化1】
(式中、環Aは、単環の含窒素複素環であり、Rは、単結合又はアルキレン基であり、Rは、水酸基を有していてもよいアルキル基であり、nは0、1、2又は3の整数であり、nが2又は3の場合、Rは同一又は異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記式(1)において、環Aが、窒素原子を2、3又は4個含む単環の含窒素複素環である、請求項2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記式(1)において、環Aが、窒素原子を3又は4個含む単環の含窒素芳香族複素環である、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記式(1)において、環Aが、テトラゾール環である、請求項4に記載のセンサ。
【請求項6】
前記式(1)において、Rが単結合であり、Rが水酸基を有する炭素数1~6のアルキル基であり、nが1である、請求項2~5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項7】
前記脱離基を含む有機化合物が、sp混成炭素原子上に脱離基が結合した部位を分子内に有する有機化合物である、請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記脱離基が、ハロゲン原子、又は式:-OSO-R(式中、Rは、アルキル基、ハロアルキル基、又はアリール基を示す。)で表される基である、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記トランジスタが、有機薄膜トランジスタである、請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項10】
前記検出部位において前記チオール基を有する含窒素複素環化合物と脱離基を含む有機化合物とが反応することにより生じる前記トランジスタの閾値電圧の変化を計測することにより脱離基を含む有機化合物を検出する、請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
脱離基を含む有機化合物を検出する方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載のセンサの検出部位を、脱離基を含む有機化合物を含む試料に接触させる工程を有する、検出方法。
【請求項12】
さらに、前記検出部位において前記チオール基を有する含窒素複素環化合物と脱離基を含む有機化合物とが反応することにより生じるトランジスタの閾値電圧の変化を計測することにより脱離基を含む有機化合物を検出する工程を有する、請求項11に記載の検出方法。
【請求項13】
請求項12に記載の脱離基を含む有機化合物の検出方法を用いて得られたセンサの伝達特性変化のデータに基づき、主成分分析によるパターン学習を行ったモデルを作成し、パターン認識により脱離基を含む有機化合物の識別を行う工程を備える、脱離基を含む有機化合物の識別方法。
【請求項14】
請求項12に記載の脱離基を含む有機化合物の検出方法を用いて得られたセンサの伝達特性変化のデータに基づき、主成分分析によるパターン学習を行ったモデルを作成し、パターン認識により測定対象の脱離基を含む有機化合物の識別を行う工程、及び、
前記測定対象の脱離基を含む有機化合物の濃度測定を行う工程を備える、脱離基を含む有機化合物の濃度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱離基を含む有機化合物を検出するためのセンサ及びそれを用いた脱離基を含む有機化合物の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハロゲン化アルキル等の有機ハロゲン化物は、有機合成化学等の分野で広く用いられる試薬である。しかし、その反応性の高さから人体への毒性、発がん性等の悪影響を及ぼす場合があるため、この有機ハロゲン化物を検出することには意義がある。
【0003】
従来、水系溶媒中に含まれる有機ハロゲン化物の検出方法としては、ガスクロマトグラフィー等の比較的大型の機器分析装置を用いる手法が主流であるが、試料中の有機ハロゲン化物をより簡便、高感度、かつオンサイトで使用できる検出装置及び方法が望まれている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、ピリジン環とベンゼン環を有する化合物と、ハロゲン化アルキルとの反応により得られるピリジニウム塩の蛍光を測定することで、該ハロゲン化アルキルを検出する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J. S, Fossey et al, Chem. Commun., 2011, 47, 253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献1に記載のハロゲン化アルキルの検出方法では、蛍光センサを利用しているため検出感度が著しく低く、標的種のわずかな構造の違いを峻別することも困難であった。
【0007】
そこで、本発明は、有機ハロゲン化物等の脱離基を含む有機化合物を簡便且つ高感度に検出することができるセンサ、及びそれを用いた脱離基を含む有機化合物の検出方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、検出部位及びトランジスタを備えるセンサであって、該検出部位の表面に、チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基の硫黄原子を介して固定されてなるセンサが、脱離基を含む有機化合物を簡便かつ高感度に検出できることを見出した。本発明者は、かかる知見に基づいてさらに研究を重ね、本発明を完成させたものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記の発明を提供する。
項1.
脱離基を含む有機化合物を検出するために用いられるセンサであって、該センサは、検出部位及びトランジスタを備えており、該検出部位が該トランジスタと接続されており、該検出部位の表面に、チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基の硫黄原子を介して固定されてなる、センサ。
項2.
前記チオール基を有する含窒素複素環化合物が、下記式(1)で表される化合物である、項1に記載のセンサ。
【化1】
(式中、環Aは、単環の含窒素複素環であり、Rは、単結合又はアルキレン基であり、Rは、水酸基を有していてもよいアルキル基であり、nは0、1、2又は3の整数であり、nが2又は3の場合、Rは同一又は異なっていてもよい。)
項3.
前記式(1)において、環Aが、窒素原子を2、3又は4個含む単環の含窒素複素環である、項2に記載のセンサ。
項4.
前記式(1)において、環Aが、窒素原子を3又は4個含む単環の含窒素芳香族複素環である、項2又は3に記載のセンサ。
項5.
前記式(1)において、環Aが、テトラゾール環である、項2~4のいずれか一項に記載のセンサ。
項6.
前記式(1)において、Rが単結合であり、Rが水酸基を有する炭素数1~6のアルキル基であり、nが1である、項2~5のいずれか一項に記載のセンサ。
項7.
前記脱離基を含む有機化合物が、sp混成炭素原子上に脱離基が結合した部位を分子内に有する有機化合物である、項1~6のいずれか一項に記載のセンサ。
項8.
前記脱離基が、ハロゲン原子、又は式:-OSO-R(式中、Rは、アルキル基、ハロアルキル基、又はアリール基を示す。)で表される基である、項1~7のいずれか一項に記載のセンサ。
項9.
前記トランジスタが、有機薄膜トランジスタである、項1~8のいずれか一項に記載のセンサ。
項10.
前記検出部位において前記チオール基を有する含窒素複素環化合物と脱離基を含む有機化合物とが反応することにより生じる前記トランジスタの閾値電圧の変化を計測することにより脱離基を含む有機化合物を検出する、項1~9のいずれか一項に記載のセンサ。
項11.
脱離基を含む有機化合物を検出する方法であって、項1~10のいずれか一項に記載のセンサの検出部位を、脱離基を含む有機化合物を含む試料に接触させる工程を有する、検出方法。
項12.
さらに、前記検出部位において前記チオール基を有する含窒素複素環化合物と脱離基を含む有機化合物とが反応することにより生じるトランジスタの閾値電圧の変化を計測することにより脱離基を含む有機化合物を検出する工程を含む、項11に記載の検出方法。
項13.
項12に記載の脱離基を含む有機化合物の検出方法を用いて得られたセンサの伝達特性変化のデータに基づき、主成分分析によるパターン学習を行ったモデルを作成し、パターン認識により脱離基を含む有機化合物の識別を行う工程を備える、脱離基を含む有機化合物の識別方法。
項14.
項12に記載の脱離基を含む有機化合物の検出方法を用いて得られたセンサの伝達特性変化のデータに基づき、主成分分析によるパターン学習を行ったモデルを作成し、パターン認識により測定対象の脱離基を含む有機化合物の識別を行う工程、及び
前記測定対象の脱離基を含む有機化合物の濃度測定を行う工程を備える、脱離基を含む有機化合物の濃度測定方法 。
【発明の効果】
【0010】
本発明のセンサによれば、試料中の脱離基を含む有機化合物(特に、有機ハロゲン化合物)を簡便且つ高感度に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1~6で使用した有機ハロゲン化物検出用センサの概略断面図である。
図2図2は、1-ヒドロキシエチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール(EMT)浸漬後のX線光電子分光(XPS)測定の結果を示すグラフである[横軸:結合エネルギー(eV)、縦軸:光電子強度(a.u.)]。
図3図3は、EMT浸漬前後の光電子収量分光(PYS)測定の結果を示すグラフである[横軸:結合エネルギー(eV)、縦軸:電子計数率の平方根]。図3中、○はEMT浸漬前の結果を示すグラフであり、△はEMT浸漬後の結果を示すグラフである。
図4図4は、EMT浸漬前後の接触角測定の結果を示す図である。
図5図5は、EMT浸漬後の線形掃引ボルタンメトリー測定の結果を示すグラフである[横軸:電圧(V)、縦軸:電流値(μA)]。
図6図6は、実施例1におけるヨウ化メチル添加に伴うゲート電圧とドレイン電流の絶対値との関係を示したグラフである(実線:添加前、破線:ヨウ化メチル(100μM)添加後)。
図7図7は、実施例1におけるトランジスタの閾値電圧の変化量とヨウ化メチル濃度(μM)との関係を示したグラフである。
図8図8は、ヨウ化メチル浸漬後のX線光電子分光(XPS)測定の結果を示すグラフである[横軸:結合エネルギー(eV)、縦軸:光電子強度(a.u.)]。
図9図9は、実施例2におけるヨウ化エチル添加に伴うゲート電圧とドレイン電流の絶対値との関係を示したグラフである(実線:添加前、破線:ヨウ化エチル(100μM)添加後)。
図10図10は、実施例2におけるトランジスタの閾値電圧の変化量とヨウ化エチル濃度(μM)との関係を示したグラフである。
図11図11は、実施例3における2-ヨード-2-メチルプロパン添加に伴うゲート電圧とドレイン電流の絶対値との関係を示したグラフである(実線:添加前、破線:2-ヨード-2-メチルプロパン(100μM)添加後)。
図12図12は、実施例3におけるトランジスタの閾値電圧の変化量と2-ヨード-2-メチルプロパン濃度(μM)との関係を示したグラフである。
図13図13は、実施例4におけるブロモエタン添加に伴うゲート電圧とドレイン電流の絶対値との関係を示したグラフである(実線:添加前、破線:ブロモエタン(100μM)添加後)。
図14図14は、実施例4におけるトランジスタの閾値電圧の変化量とブロモエタン濃度(μM)との関係を示したグラフである。
図15図15は、実施例5における臭化ベンジル添加に伴うゲート電圧とドレイン電流の絶対値との関係を示したグラフである(実線:添加前、破線:臭化ベンジル(100μM)添加後)。
図16図16は、実施例5におけるトランジスタの閾値電圧の変化量と臭化ベンジル濃度(μM)との関係を示したグラフである。
図17図17は、実施例6におけるトリフルオロメタンスルホン酸メチル添加に伴うゲート電圧とドレイン電流の絶対値との関係を示したグラフである(実線:添加前、破線:トリフルオロメタンスルホン酸メチル(100μM)添加後)。
図18図18は、実施例6におけるトランジスタの閾値電圧の変化量とトリフルオロメタンスルホン酸メチル濃度(μM)との関係を示したグラフである。
図19図19は、実施例1~6におけるトランジスタの閾値電圧の変化量と求電子剤濃度(μM)との関係を示したグラフである。
図20図20は、実施例7における2-ヨードプロパン添加に伴うゲート電圧とドレイン電流の絶対値との関係を示したグラフである(実線:添加前、破線:2-ヨードプロパン(50μM)添加後)。
図21図21は、実施例7におけるトランジスタの閾値電圧の変化量と2-ヨードプロパンの濃度(μM)との関係を示したグラフである。
図22図22は、実施例8における、脱離基を含む有機化合物6種(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、2-ヨードプロパン、2-ヨード-2-メチルプロパン、ブロモエタン及びトリフルオロメタンスルホン酸メチル)の主成分分析から得られたグラフである(横軸:第1主成分、縦軸:第2主成分)。図22において、○はヨウ化メチル、□はヨウ化エチル、△は2-ヨードプロパン、六角形の記号は2-ヨード-2-メチルプロパン、◇はブロモエタン、五角形の記号はトリフルオロメタンスルホン酸メチルを示す。
図23図23は、実施例9における、主成分分析による脱離基を含む有機化合物6種(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、2-ヨードプロパン、2-ヨード-2-メチルプロパン、ブロモエタン及びトリフルオロメタンスルホン酸メチル)の識別及び濃度測定試験の結果を示したグラフである(横軸:第1主成分、縦軸:第2主成分)。図23において、○はヨウ化メチル、□はヨウ化エチル、△は2-ヨードプロパン、六角形の記号は2-ヨード-2-メチルプロパン、◇はブロモエタン、五角形の記号はトリフルオロメタンスルホン酸メチルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態及び具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0013】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。また、本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。更に、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0014】
本明細書において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0015】
本明細書において、「A及び/又はB」とは、「A及びBの一方」又は「A及びBの両方」を意味し、具体的には、「A」、「B」、又は「A及びB」を意味する。
【0016】
1.センサ
本発明のセンサは、検出部位及びトランジスタを備えている。該検出部位の表面に、チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基の硫黄原子を介して固定されている(又は結合している)。該検出部位は、具体的には、基板とその上に設けられた貴金属膜とを有しており、該貴金属膜の表面に、該含窒素複素環化合物が該チオール基の硫黄原子を介して固定されている。本発明のセンサでは、通常、駆動部であるトランジスタと、検出部である検出部位が分離しており、該トランジスタと検出部位が電気的に接続されている。典型的には、トランジスタのゲート電極と、該検出部位の貴金属膜とが電気的に接続されている。
【0017】
検出部位において該含窒素複素環化合物と脱離基を含む有機化合物(特に、有機ハロゲン化物)とが反応することによりトランジスタの閾値電圧が変化する。生じた閾値電圧の変化を計測することにより脱離基を含む有機化合物を検出することができる。このような構成を有することにより、本発明のトランジスタを用いたセンサは、試料中の脱離基を含む有機化合物を簡便且つ高感度に検出することができる。本発明のセンサはまた、後述するように容易に作製することができる。
【0018】
本発明のセンサには、さらにトランジスタの閾値電圧の変化を検出する装置を別途備えていてもよく、該装置は公知のものを用いることができる。例えば、ソースメータ(製品名「KEITHLEY 2612B」、株式会社テクトロニクス&フルーク製)等が挙げられる。その場合、本発明のセンサ及び該トランジスタの閾値電圧の変化を検出する装置を含む態様を、脱離基を含む有機化合物を検出するために用いられるシステムとして把握することができる。
【0019】
以下、本明細書において、本発明の脱離基を含む有機化合物を検出するために用いられるセンサを、「脱離基を含む有機化合物検出用センサ」あるいは、単に「本発明のセンサ」と称する場合がある。また、チオール基を有する含窒素複素環化合物を、単に「含窒素複素環化合物」と称する場合がある。
【0020】
本発明のセンサにおいて、検出対象となる種は、脱離基を含む有機化合物であり、典型的には、sp混成炭素原子上に脱離基が結合した部位を分子内に有する有機化合物が挙げられる。当該部位は、分子内に1個又は2個以上有していてもよい。好ましくは1個である。
【0021】
脱離基を含む有機化合物における脱離基としては、本発明のセンサの検出原理に基づいて、検出部位の表面に存在する含窒素複素環化合物の窒素原子が反応(求核置換反応)できるものが好ましい。該脱離基としては、例えば、ハロゲン原子、式(A):-OSO-R(式中、Rは、アルキル基、ハロアルキル基、又はアリール基を示す。)で表される基、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等が挙げられる。これらの中でも、脱離基は、好ましくは、ハロゲン原子又は式(A):-OSO-R(式中、Rは、アルキル基、ハロアルキル基、又はアリール基を示す。)で表される基である。
【0022】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくは臭素原子又はヨウ素原子である。
【0023】
式(A)で表される基において、Rで示されるアルキル基としては、例えば、炭素数1~10(1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)のアルキル基が挙げられる。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられる。
【0024】
式(A)で表される基において、Rで示されるアルキル基は、好ましくは炭素数1~5(1、2、3、4又は5)のアルキル基であり、より好ましくはメチル基、エチル基、n-プロピル基又はイソプロピル基である。
【0025】
式(A)で表される基において、Rで示されるハロアルキル基としては、例えば、前述したアルキル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子(特に、フッ素原子)で置換された基が挙げられる。具体的には、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。
【0026】
式(A)で表される基において、Rで示されるアリール基としては、例えば、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0027】
式(A)で表される基は、好ましくは、メタンスルホニルオキシ基(-OMs)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基(-OTf)又はp-トルエンスルホニルオキシ基(-OTs)であり、特に好ましくはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基である。
【0028】
本発明のセンサにおいて、検出対象となる種は、特に好ましくはヨウ化メチル、ヨウ化エチル、2-ヨードプロパン、2-ヨード-2-メチルプロパン、ブロモエタン、臭化ベンジル又はトリフルオロメタンスルホン酸メチルである。
【0029】
本発明のセンサは、検出部位及びトランジスタを備えている。該検出部位の表面に、チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基の硫黄原子を介して固定されている(又は結合している)。該検出部位は、具体的には、基板とその上に設けられた貴金属膜とを有しており、該貴金属膜の表面に、該含窒素複素環化合物が該チオール基の硫黄原子を介して固定されている。検出部位は、該トランジスタと接続されており、典型的には、トランジスタのゲート電極と、該検出部位の貴金属膜とが電気的に接続されている。
【0030】
該検出部位において該含窒素複素環化合物と脱離基を含む有機化合物(特に、有機ハロゲン化物)とが反応することによりトランジスタの閾値電圧が変化する。生じた閾値電圧の変化を計測することにより脱離基を含む有機化合物を検出することができる。このような構成を有することにより、本発明のトランジスタを用いたセンサは、試料中の脱離基を含む有機化合物を簡便且つ高感度に検出することができる。本発明のセンサはまた、後述するように容易に作製することができる。
【0031】
本発明において、トランジスタ及び検出部位は、通常、電気的に接続されている。本発明のセンサは、トランジスタ及び検出部位を備え、該トランジスタがゲート電極を備え、該ゲート電極が該検出部位と電気的に接続されている、ことが好ましい。
【0032】
本明細書において、電気的に接続されているとは、導電性材料(例えば、導電ケーブル等)を介してトランジスタ及び検出部位が接続されている状態を意味する。
【0033】
本発明において、検出部位は、基板及び該基板上に形成された貴金属膜を含む部位を意味する。本発明において、検出部位の表面とは、通常、基板上に形成された貴金属膜の表面を意味する。従って、電気的に接続されているとは、より具体的には、トランジスタのゲート電極及び検出部位の貴金属膜が電気的に接続されていることを意味する。
【0034】
上記貴金属膜を構成する貴金属としては、例えば、金、銀、銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金等が挙げられる。これらの貴金属は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの貴金属の中でも、金、銀、パラジウム及び白金が好ましく、金がより好ましい。
【0035】
上記貴金属膜は、基板上に真空蒸着法により形成されることが好ましい。該貴金属膜の厚さは、通常、10nm~100nm、好ましくは20nm~80nmである。膜の厚さは、通常、触針式薄膜段差計を用いて測定することができる。
【0036】
検出部位における基板を構成する材料としては、特に限定されず、本技術分野において通常用いられる材料を広く採用することができる。該材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)等を挙げることができる。
【0037】
本発明において、通常、検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に、チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基を構成する硫黄原子を介して固定されている。該含窒素複素環化合物が、該硫黄原子を介して、検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に固定されることにより、該含窒素複素環化合物は化学的に安定である。
【0038】
検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に硫黄原子を介して固定されているチオール基を有する含窒素複素環化合物の量は、検出部位の単位面積当たりに硫黄原子を介して固定された(結合した)チオール基を有する含窒素複素環化合物のモル数で表すことができる。この量は、実施例に記載される線形掃引ボルタンメトリーにより測定することができる。検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に硫黄原子を介して固定されているチオール基を有する含窒素複素環化合物の量は、通常、0.1×10-9mol/cm~10.0×10-9mol/cmであり、好ましくは0.5×10-9mol/cm~7.0×10-9mol/cm、より好ましくは1×10-9mol/cm~5.0×10-9mol/cmである。
【0039】
本発明のセンサは、チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基を構成する硫黄原子を介して、検出部位の表面に固定された(結合した)構成を有する。すなわち、チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基に由来するスルフィド基(-S-)を介して、検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に固定された構成を有する。
【0040】
換言すれば、本発明のセンサは、検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に-S-を介して含窒素複素環化合物が結合し、該含窒素複素環化合物が検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に単分子で配列した構造を有している。そのため、検出部位の表面に含窒素複素環化合物が配列した自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)を形成しているということができる。
【0041】
検出部位の表面にこのSAMを形成する方法は、例えば、次のように実施することができる。検出部位の表面を、チオール基を有する含窒素複素環化合物を用いて自己組織化単分子膜(SAM)処理することにより、該チオール基を構成する硫黄原子を介して、該含窒素複素環化合物が、検出部位の表面に固定されている状態(即ち、含窒素複素環化合物の末端にあるチオール基の水素原子が脱離し、硫黄原子が検出部位の表面に結合し、検出部位の表面-S-含窒素複素環化合物の構造が形成されている状態)を形成することができる。
【0042】
典型的には、検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に、チオール基を有する含窒素複素環化合物を反応させることによりSAMを形成することができる。反応は、溶媒中で実施することができる。該チオール基を有する含窒素複素環化合物の安定性の観点から、還元剤を使用することが好ましい。
【0043】
還元剤としては、例えば、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP-HCl)、ジチオトレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール、水素化ホウ素ナトリウム、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。これらの還元剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの還元剤の中でも、TCEP-HClが好ましい。
【0044】
還元剤の使用量は、チオール基を有する含窒素複素環化合物1モルに対して、好ましくは0.1モル以上25モル以下、より好ましくは0.5モル以上20モル以下、より好ましくは1モル以上15モル以下、更に好ましくは5モル以上10モル以下である。
【0045】
溶媒としては、親水性有機溶媒が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロピルアルコール、ブタノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。
【0046】
検出部位の表面を、チオール基を有する含窒素複素環化合物を用いてSAM処理する手順の一例としては、まず、該含窒素複素環化合物と還元剤とを、親水性有機溶媒中に溶解させ、該含窒素複素環化合物と還元剤とを含む溶液を作製する。次に、作製した溶液に検出部位の表面を浸漬することによりSAMを形成することができる。
【0047】
作製した溶液に検出部位の表面を浸漬する際の温度は、通常5℃以上45℃以下、好ましくは10℃以上40℃以下、より好ましくは15℃以上35℃以下、より一層好ましくは20℃以上30℃以下である。
【0048】
作製した溶液に検出部位の表面を浸漬する時間は、通常、10分以上50時間以下、好ましくは20分以上65時間以下、より好ましくは30分以上20時間以下、より一層好ましくは45分以上10時間以下、更に好ましくは、1時間以上5時間以下である。
【0049】
また、本発明は、チオール基を有する含窒素複素環化合物を用いて基板上に設けた貴金属(膜)をSAM処理した部材をも提供する。該部材は、基板上に設けた貴金属(膜)並びにチオール基を有する含窒素複素環化合物を含み、該基板上に設けた貴金属(膜)の表面に、該含窒素複素環化合物が、該チオール基の硫黄原子を介して固定されている。該部材は、上記のように、還元剤の存在下、基板上に設けた貴金属(膜)にチオール基を有する含窒素複素環化合物を反応させて製造することができる。
【0050】
かくして得られたSAMは、検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に形成される。
【0051】
本発明の脱離基を含む有機化合物(特に、有機ハロゲン化物)の検出原理は、次のように推定される。すなわち、含窒素複素環化合物が有するチオール基を構成する硫黄原子が、該脱離基を含む有機化合物と反応して複合体を形成する。それにより生じるトランジスタの閾値電圧の変化を計測することにより、該脱離基を含む有機化合物を検出することができる。当該反応では、チオール基を有する含窒素複素環化合物の窒素原子と脱離基を含む有機化合物とが反応し、窒素を含むオニウム化合物(オニウム塩)が形成され、それにより該閾値電圧に変化が生じると考えられる。そのため、含窒素複素環化合物は、脱離基を含む有機化合物と反応し得る窒素原子を有するものであれば、広く採用することができる。
【0052】
本発明において、チオール基を有する含窒素複素環化合物における含窒素複素環は、窒素原子を1個以上含み、好ましくは窒素原子を1~10(1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)個、より好ましくは窒素原子を2~7(2、3、4、5、6又は7)個、さらに好ましくは窒素原子を3~5(3、4又は5)個、特に好ましくは窒素原子を4個含む。該含窒素複素環には、ヘテロ原子として、窒素原子の外に、硫黄原子、酸素原子等を含んでいてもよい。
【0053】
該含窒素複素環は、芳香族複素環又は脂肪族複素環のいずれでもよく、また単環又は2環以上のいずれでもよい。好ましくは単環の含窒素芳香族複素環又は含窒素脂肪族複素環であり、より好ましくは単環の含窒素芳香族複素環である。
【0054】
該含窒素複素環として、例えば、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール等の単環の含窒素芳香族複素環;インドール、イソインドール、1H-インダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、フェナンスリジン、アクリジン等の2環以上の含窒素芳香族複素環;ピロリジン、ピロリン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の単環の含窒素脂肪族複素環;キヌクリジン等の2環以上の含窒素脂肪族複素環等が挙げられる。
【0055】
チオール基を有する含窒素複素環化合物は、置換基としてチオール基を有する基が含窒素複素環に結合している化合物を意味し、チオール基が直接含窒素複素環に結合している化合物、チオール基を有する基(例えば、チオアルキル基等)が含窒素複素環に結合している化合物等を包含する。
【0056】
チオール基を有する含窒素複素環化合物として、好ましくは、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
(式中、環Aは、単環の含窒素複素環であり、Rは、単結合又はアルキレン基であり、Rは、水酸基を有していてもよいアルキル基であり、nは0、1、2又は3の整数であり、nが2又は3の場合、Rは同一又は異なっていてもよい。)
【0057】
環Aで示される単環の含窒素複素環としては、例えば、窒素原子を1~5(1、2、3、4又は5)個含む単環の含窒素複素環が挙げられる。さらに窒素原子を2~4(2、3又は4)個、よりさらに窒素原子を3又は4個、特に窒素原子を4個含む単環の含窒素複素環が挙げられる。該含窒素複素環には、ヘテロ原子として、窒素原子の外に、硫黄原子、酸素原子等を含んでいてもよい。該単環の含窒素複素環は、単環の含窒素芳香族複素環又は含窒素脂肪族複素環が挙げられ、好ましくは単環の含窒素芳香族複素環である。
【0058】
単環の含窒素複素環として、具体的には、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール等の単環の含窒素芳香族複素環;ピロリジン、ピロリン、イミダゾリジン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等の単環の含窒素脂肪族複素環が挙げられる。そのうち、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール等の単環の含窒素芳香族複素環が好ましい。
【0059】
で示されるアルキレン基としては、例えば、炭素数1~10(1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10)のアルキレン基(好ましくは炭素数1~5(1、2、3、4又は5)のアルキレン基)が挙げられる。該アルキレン基は鎖状又は分岐状のいずれでもよい。Rとして好ましくは、単結合である。
【0060】
で示される水酸基を有していてもよいアルキル基におけるアルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基(好ましくは炭素数1~5(1、2、3、4又は5)のアルキル基、よりさらに炭素数2又は3のアルキル基)が挙げられる。該アルキル基は鎖状又は分岐状のいずれでもよい。
水酸基を有するアルキル基としては、上記アルキル基上の1個以上(特に1個)の水素原子が水酸基に置換された基であり、具体的には、1-ヒドロキシメチル基、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基が挙げられ、好ましくは2-ヒドロキシエチル基である。
【0061】
nとして、好ましくは1又は2であり、より好ましくは1である。
【0062】
式(1)で表される化合物のうち好ましい化合物としては、環Aが窒素原子を3又は4個含む芳香族複素環(特に、トリアゾール環、テトラゾール環)である化合物が挙げられる。
【0063】
式(1)で表される化合物のうち他の好ましい化合物としては、Rが単結合であり、Rが水酸基を有する炭素数1~6(1、2、3、4、5又は6)のアルキル基であり、nが1である化合物が挙げられる。さらに環Aがテトラゾール環である化合物が挙げられる。
【0064】
式(1)で表される化合物のうち他の好ましい化合物としては、式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
(式中、環A1は、窒素原子を1~5(1、2、3、4又は5)個含む5又は6員の含窒素芳香族複素環であり、R21は、水酸基で置換された炭素数1~5(1、2、3、4又は5)のアルキル基である。)
【0065】
環A1で示される窒素原子を1~5(1、2、3、4又は5)個含む5又は6員の含窒素芳香族複素環としては、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール等の単環の含窒素芳香族複素環;そのうち、ピリジン、トリアゾール、テトラゾール等が好ましい。
【0066】
また、メルカプト基(-SH)とR21はそれぞれ、環A1を構成する隣りあう2つの原子に結合していることが好ましい。
【0067】
本発明において、チオール基を有する含窒素複素環化合物は、1-ヒドロキシエチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール(EMT)又は1-(3-ヒドロキシプロピル)-5-メルカプト-1H-テトラゾールが好ましく、EMTがより好ましい。
【0068】
本発明のセンサは、検出部位及びトランジスタを備えるトランジスタ型センサであって、脱離基を含む有機化合物を検出することができる。チオール基を有する含窒素複素環化合物が、該チオール基を構成する硫黄原子を介して該検出部位の表面に固定されており、該含窒素複素環(特に、式(1)で表される化合物の環A)に存在する窒素原子が、脱離基を含む有機化合物と反応することにより生じるトランジスタの閾値電圧の変化を計測することにより、該脱離基を含む有機化合物を検出することができる。
【0069】
上記式(1)で表される化合物はRに隣接するチオール基を構成する硫黄原子を介して検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に固定されている。
【0070】
本発明において、検出部位は、更に参照電極を備えていることが好ましい。該参照電極を備えることにより、複数の計測値、経時的な計測値等から、検出対象物の相対的な変化量(差分)を把握することが可能である。
【0071】
検出部位が更に参照電極を備える場合には、該参照電極として、銀/塩化銀電極(Ag/AgCl電極)、自己組織化単分子膜処理(SAM処理)した金電極又は高分子で被覆された金属を用いることが好ましく、Ag/AgCl電極がより好ましい。このような参照電極を設定すれば、検出対象物の絶対評価がより一層容易となる。
【0072】
本発明のトランジスタ型センサが備えるトランジスタは、公知のトランジスタ構造を広く用いることができるが、小型で簡易に用いることができる点から、薄膜トランジスタ(Thin-Film Transistor:TFT)が好ましい。TFTである場合、より一層フレキシブルな形態のトランジスタ型センサを構成することができる。
【0073】
本発明において、トランジスタは、無機トランジスタであってもよいし、有機トランジスタであってもよい。溶液プロセスを用いた作製が可能であるため、大量生産できるという点から、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)がより好ましい。
【0074】
トランジスタは、例えば、蒸着法、スパッタリング法等のドライプロセス;スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、バーコート、ダイコート、スプレーコート等による塗布;スクリーン印刷、グラビアオフセット印刷、凸版反転印刷、インクジェット印刷等の各種印刷機による印刷技術を用いて製造することができる。これらの中でも、スピンコート及びドロップキャストによれば、より効率的に且つより低コストでトランジスタを作製することができる。
【0075】
トランジスタを構成する基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、酸化アルミニウム、シリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属材料;ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリパラキシリレン[パリレン(登録商標)]等の樹脂材料;コート紙、クラフト紙等の紙材料;表面コート不織布等の材料等が挙げられる。これらの材料は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの材料を多層化した材料を用いることができる。
【0076】
トランジスタが有機TFTの場合には、基板としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリイミド、ポリパラキシリレン(パリレン(登録商標))等の樹脂材料;、コート紙、クラフト紙等の紙材料等を用いることができる。
【0077】
トランジスタを構成する半導体層は、好ましくは高分子半導体層である。
【0078】
上記高分子半導体層の構成材料としては、P型の場合は、ペンタセン、ジナフトチエノチオフェン、ベンゾチエノベンゾチオフェン(Cn-BTBT)、6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPSペンタセン)、5,11-ビス(トリエチルシリルエチニル)アントラジチオフェン(TES-ADT)、ルブレン、ポリ(3-ヘキシルチオフェン-2,5-ジイル)(P3HT)、ポリ[2,5-ビス(3-ドデシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン](pBTTT-C12)、ポリ[2,5-ビス(3-テトラデシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン](pBTTT-C14)、ポリ(2,5-ビス(3-ヘキサデシルチオフェン-2-イル)チエノ[3,2-b]チオフェン(pBTTT-C16)等を用いることができる。
【0079】
上記高分子半導体層の構成材料としては、N型の場合は、例えば、フラーレン等を用いることができる。
【0080】
トランジスタを構成するゲート電極の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、銅、チタン、酸化インジウムスズ(ITO)、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン):ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)等を用いることができる。本発明において、ゲート電極の構成材料としては、アルミニウムが好ましい。
【0081】
トランジスタを構成するソース電極の構成材料及びドレイン電極の材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、PEDOT:PSS等が挙げられる。ソース電極及びドレイン電極の構成材料としては、金が好ましい。
【0082】
トランジスタを構成するゲート絶縁膜の構成材料としては、例えば、シリカ、アルミナ、ポリスチレン、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリシルセスキオキサン、イオン液体、ポリテトラフルオロエチレン[テフロン(登録商標)AF]、サイトップ(登録商標)等が挙げられる。
【0083】
トランジスタは、基板上に、撥液性バンク層及び封止膜を備えていることが好ましい。
【0084】
トランジスタを構成する封止膜(保護膜)の構成材料としては、ポリテトラフルオロエチレン[テフロン(登録商標)AF]、サイトップ(登録商標)、ポリパラキシリレン[パリレン(登録商標)]等が挙げられる。
【0085】
本発明において、通常、トランジスタと検出部位とが別個に作製され、使用時にこれらを導電ケーブルで連結する構成とすることができる。これにより、試料(好ましくは、液体試料)と直接接触する検出部位は消耗し易いため、寿命に応じて検出部位のみを容易に交換して取り付けることができる。これにより、安定した状態でトランジスタによる計測が可能である。また、トランジスタ型センサ全体を交換する必要がなく、しかも、検出部位は洗浄操作を行うことにより繰り返し利用可能であるため、経済的であるという利点も有している。
【0086】
本発明のトランジスタ型センサは、検出部位及びトランジスタ以外に、例えば、参照電極を備える。
【0087】
本発明において、検出部位の表面(好ましくは基板上に設けた貴金属膜の表面、特に好ましくは基板上に設けた金薄膜の表面)に硫黄原子を介して固定されているチオール基を有する含窒素複素環化合物の量が、通常、0.1×10-9mol/cm~10.0×10-9mol/cm、好ましくは0.5×10―9 mol/cm以上7.0×10―9 mol/cm以下、より好ましくは1.0×10―9 mol/cm以上5.0×10―9 mol/cm以下である。検出部位の表面に硫黄原子を介して固定されているチオール基を有する含窒素複素環化合物の量は、線形掃引ボルタンメトリーにより測定することができる。
【0088】
2.センサの用途
(1)脱離基を含む有機化合物の検出
本発明のセンサは、広く試料(好ましくは、液体試料)中に含まれる脱離基を含む有機化合物を簡便かつ高感度に検出することができる。そのため、脱離基を含む有機化合物を検出するセンサとして有用である。脱離基を含む有機化合物の検出方法は、センサを、脱離基を含む有機化合物を含有する試料(好ましくは、液体試料)と接触させる工程(以下、「工程A」という)を含んでいる。センサの詳細は、特に言及がない限り、上記「1.センサ」に記載したとおりである。
【0089】
本発明のセンサの検出対象の脱離基を含む有機化合物は、上記「1.センサ」に記載したとおりである。
【0090】
本発明の脱離基を含む有機化合物の検出方法では、脱離基を含む有機化合物の添加に伴う本発明のセンサの伝達特性のデータ(即ち、脱離基を含む有機化合物の添加前後における本発明のセンサの伝達特性のデータ)を取得することができる。上記センサが備えるトランジスタは、有機薄膜トランジスタが好ましい。
【0091】
上記工程Aにおいて、接触させる手段としては、例えば、脱離基を含む有機化合物を含む液体試料に、本発明のセンサが有する検出部位の全部又は一部を浸漬させることが挙げられる。検出部位の全部を浸漬させるとは、本発明のセンサが有する検出部位が、脱離基を含む有機化合物を含む液体試料に完全に浸されていることを意味する。検出部位の一部を浸漬させるとは、本発明のセンサが有する検出部位が、脱離基を含む有機化合物を含む液体試料に部分的に浸されていることを意味する。
【0092】
試料は、液体試料が好ましい。試料としては、例えば、HEPES緩衝液、MES緩衝液等の緩衝液が挙げられる。試料として、HEPES緩衝液を使用する際、該緩衝液のpHは、6.0~8.0が好ましく、6.5~7.5がより好ましい。試料として、MES緩衝液を使用する際、該緩衝液のpHは、4.5~6.5が好ましく、5.0~6.0がより好ましい。
【0093】
本発明の脱離基を含む有機化合物の検出方法は、前記工程Aの後に、当該試料(好ましくは、液体試料)中に含有されている脱離基を含む有機化合物と含窒素複素環化合物を構成する窒素原子とが反応することにより生じるトランジスタの閾値電圧の変化を計測することにより、脱離基を含む有機化合物を検出する工程(工程B)を備えることが好ましい。この場合、本発明のセンサは、さらにトランジスタの閾値電圧の変化を計測する装置を備えたものであることが好ましい。本発明のセンサは、液体試料中の脱離基を含む有機化合物の濃度がマイクロモル(μM)レベルの低濃度でも検出可能である。
【0094】
(2)脱離基を含む有機化合物の識別及び濃度測定
脱離基を含む有機化合物の識別方法は、上記脱離基を含む有機化合物の検出方法を用いて得られたセンサの伝達特性変化のデータに基づき、主成分分析(Principal Component Analysis;PCA)によるパターン学習を行ったモデルを作成し、パターン認識により脱離基を含む有機化合物の識別を行う工程(以下、「工程1」という)を備えることができる。
【0095】
脱離基を含む有機化合物の識別方法において、本発明のセンサの詳細は、特に言及がない限り、上記「1.センサ」に記載したとおりである。脱離基を含む有機化合物の検出方法の詳細は、特に言及がない限り、上記「2.(1)脱離基を含む有機化合物の検出」に記載したとおりである。
【0096】
工程1において、モデルとは、通常、正準スコアプロットである。
【0097】
工程1において、パターン認識により2種以上の脱離基を含む有機化合物の識別を行うことが好ましい。
【0098】
本実施形態の脱離基を含む有機化合物の濃度測定方法は、脱離基を含む有機化合物の検出方法を用いて得られたセンサの伝達特性変化のデータに基づき、主成分分析によるパターン学習を行ったモデルを作成し、パターン認識により、測定対象の脱離基を含む有機化合物の識別を行う工程A、及び該工程Aで識別した測定対象の脱離基を含む有機化合物の濃度測定を行う工程Bを備える。
【0099】
工程Bにおいて、測定対象の脱離基を含む有機化合物以外の夾雑物の存在下で、該工程Aで識別した測定対象の脱離基を含む有機化合物の濃度測定を行う、ことが好ましい。
【0100】
脱離基を含む有機化合物の判別方法において、工程1の後に、機械学習モデルの一種であるサポートベクターマシン(Support Vector Machine、SVM)を用いて工程1で判別された脱離基を含む有機化合物の濃度測定を行う工程(以下、「工程2」という)を更に備えることが好ましい。脱離基を含む有機化合物の判別方法において、工程1及び工程2を併せて、脱離基を含む有機化合物の濃度測定方法とも称する。
【0101】
工程2は、SVMを用いて工程1で判別された2種以上の脱離基を含む有機化合物の中から、測定対象である特定の脱離基を含む有機化合物の濃度測定を行う工程であることが好ましい。
【0102】
工程2において、濃度測定には、通常、校正プロットより作成した検量線を用いることができる。
【0103】
脱離基を含む有機化合物の濃度測定方法は、上記脱離基を含む有機化合物の検出方法を用いて得られたセンサの伝達特性変化のデータに基づき、機械学習モデルの一種であるサポートベクターマシンを用いて、測定対象の脱離基を含む有機化合物以外の夾雑物の存在下で測定対象の脱離基を含む有機化合物の濃度測定を行う工程を備えることができる。該工程において、濃度測定には、通常、校正プロットより作成した検量線を用いることができる。
【0104】
脱離基を含む有機化合物の濃度測定方法において、本発明のセンサの詳細は、特に言及がない限り、上記「1.センサ」に記載したとおりである。脱離基を含む有機化合物の検出方法の詳細は、特に言及がない限り、上記「2.(1)脱離基を含む有機化合物の検出」に記載したとおりである。
【0105】
上記夾雑物とは、好ましくは、測定対象の脱離基を含む有機化合物以外の有機化合物、無機化合物、イオン等である。本発明のセンサは、脱離基を含む有機化合物を選択的に検出することができるため、夾雑物が含まれていても特定の脱離基を含む有機化合物の濃度を効果的に測定することができる。
【0106】
脱離基を含む有機化合物は、上記「1.センサ」に記載したとおりである。測定対象の脱離基を含む有機化合物は、特に好ましくはヨウ化メチル、ヨウ化エチル、2-ヨードプロパン、2-ヨード-2-メチルプロパン、ブロモエタン、臭化ベンジル又はトリフルオロメタンスルホン酸メチルである。
【実施例0107】
以下、製造例及び実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の製造例及び実施例により制限されるものではない。
【0108】
(製造例1)
1-ヒドロキシエチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール(EMT)が固定された検出電極及びトランジスタを備えるセンサの作製
ガラス基板11上に、真空蒸着によりゲート電極12[アルミニウム(Al)、膜厚30nm]を形成し、ゲート電極12の表面に、反応性イオンエッチング(RIE)処理により酸化アルミニウム(AlOx)膜を形成した。次に形成した酸化アルミニウム膜の表面に、サイトップ(登録商標)CTL-809Mをスピンコートしたのち、RIE処理によりパターニングを行った。パターニングを行った後のガラス基板11をテトラデシルホスホン酸溶液に浸漬させ、ゲート絶縁膜13を形成した。次に真空蒸着装置を用いて、ソース電極14[金(Au)、膜厚30nm]及びドレイン電極15[金(Au)、膜厚30nm]を形成した。次に、PBTTT-C14の0.01質量%溶液(溶媒は1,2-ジクロロベンゼン)を調製し、ドロップキャスト法で高分子半導体層17を形成した。基板上に、サイトップ(登録商標)CTL-809Mをスピンコートして封止膜18を形成し、トランジスタ1を作製した。
【0109】
次に、PENフィルム基板21(以下、「基板21」と表記)の表面上に真空蒸着法により金薄膜27を形成した。さらに、基板21の表面に参照電極(Ag/AgCl電極)22を設置した。次に、1mMの1-ヒドロキシエチル-5-メルカプト-1H-テトラゾール(EMT)と、還元剤である5mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP-HCl)とをメタノール中に溶解させ、EMT及びTCEP-HClを含むメタノール溶液を得た。金薄膜27が表面に形成された基板21(本発明の「検出部位」に相当)を該メタノール溶液に25℃で1時間浸漬(以下、「EMT浸漬」とも表記)することにより、該基板21の表面上の金薄膜27(以下、「基板21上の金薄膜27」と表記)を、EMTを用いて自己組織化単分子膜(SAM)処理し、検出電極2(本発明の「チオール基を有する含窒素複素環化合物+検出部位」に相当)を作製した。そして、SAM処理した基板21上の金薄膜27をトランジスタ1のゲート電極12と導電ケーブル4で接続し、EMTが固定された検出電極2及びトランジスタ1を備えるセンサを製造した(図1参照)。
【0110】
[X線光電子分光(XPS)測定、光電子収量分光(PYS)測定及び接触角測定]
X線光電子分光(XPS)測定、光電子収量分光(PYS)測定及び接触角測定を行うことにより、SAM処理した基板21上の金薄膜27にEMTがスルフィド基(-S-)を介して固定されているかを確認した。
【0111】
XPS測定は、X線光電子分光装置(製品名「ULVAC-PHI」、アルバック・ファイ株式会社製)を用いて、以下の測定条件で行った。411eV~391eVの結合エネルギーの範囲のナロースキャンでN1s軌道に起因するスペクトル信号の検出、及び175eV~155eVの結合エネルギーの範囲のナロースキャンでS2p軌道に起因するスペクトル信号の検出を行った。
<XPS測定条件>
・励起源:Al Kα
・光電子取出角:45°
・Pass Energy:1.5keV
【0112】
PYS測定は、大気中光電子収量分光装置(製品名「AC-2」、理研計器株式会社製)を用いて、以下の測定条件でイオン化ポテンシャル(Ip)の測定を行った。
<PYS測定条件>
・測定波長範囲:4.2eV~6.2eV
・測定間隔:0.05eV
・測定雰囲気:大気圧(0.10MPa)
【0113】
接触角測定は、接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、製品名「CA-X」)を用いて、以下の測定条件で、水の接触角を測定した。
<接触角測定条件>
使用溶媒:純水
測定温度:25℃
【0114】
図2に、EMT浸漬後のXPS測定の結果を示す。SAM処理した基板21上の金薄膜27にEMTがスルフィド基を介して固定されたことにより、窒素のピーク(図2の左図)と硫黄のピーク(図2の右図)とが確認された。
【0115】
図3に、EMT浸漬前及びEMT浸漬後のPYS測定の結果を示す。EMT浸漬前の金のイオン化ポテンシャルは4.9eVであるのに対し、EMT修飾後の金のイオン化ポテンシャルは4.7eVであった。
【0116】
図4に、EMT浸漬前(図4の上図)及びEMT浸漬後(図4の下図)における、基板21上の金薄膜27に接する水滴の写真を示す。金薄膜27表面と水滴のなす角度を接触角と呼ぶ。EMT浸漬前の接触角は46.4°であるのに対して、EMT浸漬後の接触角は29.6°であった。
【0117】
XPS測定、PYS測定及び接触角測定の結果から、SAM処理した基板21上の金薄膜27にEMTがスルフィド基を介して固定されていることが確認できた。
【0118】
さらに、線形掃引ボルタンメトリー測定を行うことにより、SAM処理した基板21上の金薄膜27にEMTがスルフィド基(-S-)を介して固定されているかを確認した。線形掃引ボルタンメトリー測定は、電気化学アナライザ装置(製品名「SP-300ポテンショスタット」、バイオロジック株式会社製)を用いて、以下の測定条件で線形掃引ボルタメトリーの測定を行った。
<線形掃引ボルタンメトリー測定条件>
・掃引速度:20mV/s
・掃引範囲:0~-1.5V vs Ag/AgCl(銀/塩化銀電極)
・掃引方向:負の方向
【0119】
図5に、EMT浸漬後の線形掃引ボルタンメトリー測定の結果を示す。
図5の結果から、金と結合している硫黄がチオラートに還元されたことを示すピークが観測され、EMTがスルフィド基を介して、金薄膜27上に固定されていることが確認された。金薄膜27の膜密度(金薄膜27上に固定されているEMTの量)は、(3.2±0.2)×10-9 mol/cmと算出された。
【0120】
以上から、本製造例によって、SAM処理した基板21上の金薄膜27にEMTがスルフィド基を介して固定された検出電極2及びトランジスタ1を備えるトランジスタ型センサ(以下、「製造例1で作製したセンサ」とも表記する)を製造することができた。
【0121】
(実施例1)
EMTが固定された検出電極及びトランジスタを備えるセンサを用いたヨウ化メチル検出試験
上記製造例1で作製したセンサを用いて、ヨウ化メチル検出試験を行った。該検出試験では、該センサの検出電極2を、測定溶液である液体試料に浸して25℃で10分間静置した後、検出電極2と電気的に接続されたトランジスタ1の伝達特性を、ソースメータ(製品名「KEITHLEY 2612B」、株式会社テクトロニクス&フルーク製)で測定した。測定条件は、ゲート電圧(VGS)=-3.0~0.5V、ドレイン電圧(VDS)=-2.0Vとした。上記測定溶液である液体試料(以下、「液体試料1」とも表記する)として、pH7.4の100mM HEPES緩衝溶液(100mM NaCl含有)中にヨウ化メチル[0~100マイクロモル(μM)]を添加したものを用いた。
【0122】
図6に、ヨウ化メチル添加に伴うゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値(|IDS|)との関係のグラフを示す[実線:添加前、破線:ヨウ化メチル(100μM)添加後]。図6に示したグラフから、ヨウ化メチル添加に伴うトランジスタ1の伝達特性変化を確認することができ、ヨウ化メチル検出を行うことができることが示された。ゲート電圧の負方向へのシフトは、ヨウ化メチル添加に伴い、SAM処理した基板21上の金薄膜27にスルフィド基を介して固定されたEMTとヨウ化メチルとの反応(具体的には、EMTに含まれる窒素原子のヨウ化メチルに対する求核置換反応)に起因する応答であると考えられる。
【0123】
図7に、トランジスタの閾値電圧の変化量とヨウ化メチルモル濃度(μM)との関係を示したグラフを示す。図7に示したグラフから、ヨウ化メチルモル濃度の変化に伴い、トランジスタの閾値電圧が変化することを確認することができ、ヨウ化メチルモル濃度の変化の検出を行うことができることが認められた。また、図7に示したグラフから、ヨウ化メチルをマイクロモル(μM)単位の低濃度で検出可能であることが認められた。
【0124】
さらに、上記製造例1で作製したセンサの検出電極2を、上記液体試料1に25℃で10分間浸漬した後、XPS測定を行い、633eV~613eVの結合エネルギーの範囲のナロースキャンでI3d軌道に起因するスペクトル信号の検出の検出を行った。XPSはX線光電子分光装置を用いて、以下の測定条件で行った。
<XPS測定条件>
・励起源:Al Kα
・光電子取出角:45°
・Pass Energy:1.5keV
【0125】
図8に、当該XPS測定の結果を示す。図8に示すように、2つのヨウ化メチルのピークが確認された。これらのピークは、EMTとヨウ化メチルとの反応によるオニウム塩形成に起因すると考えられる。
【0126】
(実施例2~6)
EMTが固定された検出電極及びトランジスタを備えるセンサを用いた各種脱離基を含む有機化合物の検出試験
上記製造例1で作製したセンサを用いて、ヨウ化エチル(実施例2)、2-ヨード-2-メチルプロパン(実施例3)、ブロモエタン(実施例4)、臭化ベンジル(実施例5)、及びトリフルオロメタンスルホン酸メチル(実施例6)の検出試験を行った。検出試験は、実施例1と同様にして実施した。
【0127】
(実施例2)
図9に、ヨウ化エチル添加に伴うゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値(|IDS|)との関係のグラフを示す[実線:添加前、破線:ヨウ化エチル(100μM)添加後]。図9に示したグラフから、ヨウ化エチル添加に伴うトランジスタ1の伝達特性変化を確認することができ、ヨウ化エチル検出を行うことができることが示された。ゲート電圧の負方向へのシフトは、ヨウ化エチル添加に伴い、SAM処理した基板21上の金薄膜27にスルフィド基を介して固定されたEMTとヨウ化エチルとの反応に起因する応答であると考えられる。
【0128】
図10に、トランジスタの閾値電圧の変化量とヨウ化エチルモル濃度(μM)との関係を示したグラフを示す。図10に示したグラフから、ヨウ化エチルモル濃度の変化に伴い、トランジスタの閾値電圧が変化することを確認することができ、ヨウ化エチルモル濃度の変化の検出を行うことができることが認められた。また、図10に示したグラフから、ヨウ化エチルをマイクロモル(μM)単位の低濃度で検出可能であることが認められた。
【0129】
(実施例3)
図11に、2-ヨード-2-メチルプロパン添加に伴うゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値(|IDS|)との関係のグラフを示す[実線:添加前、破線:2-ヨード-2-メチルプロパン(100μM)添加後]。図11に示したグラフから、2-ヨード-2-メチルプロパン添加に伴うトランジスタ1の伝達特性変化を確認することができ、2-ヨード-2-メチルプロパン検出を行うことができることが示された。ゲート電圧の負方向へのシフトは、2-ヨード-2-メチルプロパン添加に伴い、SAM処理した基板21上の金薄膜27にスルフィド基を介して固定されたEMTと2-ヨード-2-メチルプロパンとの反応に起因する応答であると考えられる。
【0130】
図12に、トランジスタの閾値電圧の変化量と2-ヨード-2-メチルプロパンモル濃度(μM)との関係を示したグラフを示す。図12に示したグラフから、2-ヨード-2-メチルプロパンモル濃度の変化に伴い、トランジスタの閾値電圧が変化することを確認することができ、2-ヨード-2-メチルプロパンモル濃度の変化の検出を行うことができることが認められた。また、図12に示したグラフから、2-ヨード-2-メチルプロパンをマイクロモル(μM)単位の低濃度で検出可能であることが認められた。
【0131】
(実施例4)
図13に、ブロモエタン添加に伴うゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値(|IDS|)との関係のグラフを示す[実線:添加前、破線:ブロモエタン(100μM)添加後]。図13に示したグラフから、ブロモエタン添加に伴うトランジスタ1の伝達特性変化を確認することができ、ブロモエタン検出を行うことができることが示された。ゲート電圧の負方向へのシフトは、ブロモエタン添加に伴い、SAM処理した基板21上の金薄膜27にスルフィド基を介して固定されたEMTとブロモエタンとの反応に起因する応答であると考えられる。
【0132】
図14に、トランジスタの閾値電圧の変化量とブロモエタンモル濃度(μM)との関係を示したグラフを示す。図14に示したグラフから、ブロモエタンモル濃度の変化に伴い、トランジスタの閾値電圧が変化することを確認することができ、ブロモエタンモル濃度の変化の検出を行うことができることが認められた。また、図14に示したグラフから、ブロモエタンをマイクロモル(μM)単位の低濃度で検出可能であることが認められた。
【0133】
(実施例5)
図15に、臭化ベンジル添加に伴うゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値(|IDS|)との関係のグラフを示す[実線:添加前、破線:臭化ベンジル(100μM)添加後]。図15に示したグラフから、臭化ベンジル添加に伴うトランジスタ1の伝達特性変化を確認することができ、臭化ベンジル検出を行うことができることが示された。ゲート電圧の正方向へのシフトは、臭化ベンジル添加に伴い、SAM処理した基板21上の金薄膜27にスルフィド基を介して固定されたEMTと臭化ベンジルとの反応に起因する応答であると考えられる。
【0134】
図16に、トランジスタの閾値電圧の変化量と臭化ベンジルモル濃度(μM)との関係を示したグラフを示す。図16に示したグラフから、臭化ベンジルモル濃度の変化に伴い、トランジスタの閾値電圧が変化することを確認することができ、臭化ベンジルモル濃度の変化の検出を行うことができることが認められた。また、図16に示したグラフから、臭化ベンジルをマイクロモル(μM)単位の低濃度で検出可能であることが認められた。
【0135】
(実施例6)
図17に、求電子剤の一種であるトリフルオロメタンスルホン酸メチル添加に伴うゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値(|IDS|)との関係のグラフを示す[実線:添加前、破線:トリフルオロメタンスルホン酸メチル(100μM)添加後]。図17に示したグラフから、トリフルオロメタンスルホン酸メチル添加に伴うトランジスタ1の伝達特性変化を確認することができ、トリフルオロメタンスルホン酸メチル検出を行うことができることが示された。ゲート電圧の負方向へのシフトは、トリフルオロメタンスルホン酸メチル添加に伴い、SAM処理した基板21上の金薄膜27にスルフィド基を介して固定されたEMTとトリフルオロメタンスルホン酸メチルとの反応に起因する応答であると考えられる。
【0136】
図18に、トランジスタの閾値電圧の変化量とトリフルオロメタンスルホン酸メチルモル濃度(μM)との関係を示したグラフを示す。図18に示したグラフから、トリフルオロメタンスルホン酸メチルモル濃度の変化に伴い、トランジスタの閾値電圧が変化することを確認することができ、トリフルオロメタンスルホン酸メチルモル濃度の変化の検出を行うことができることが認められた。また、図18に示したグラフから、トリフルオロメタンスルホン酸メチルをマイクロモル(μM)単位の低濃度で検出可能であることが認められた。
【0137】
図19に、トランジスタの閾値電圧の変化量と求電子剤のモル濃度(μM)との関係を示したグラフを示す。図19に示したグラフから、本発明のセンサは6種の求電子剤に対して異なる応答パターンを示すことが見出された。さらに、ヨウ化アルキルにおいて、その反応性の違いに基づく応答序列が観測された。
【0138】
(実施例7)
EMTが固定された検出電極及びトランジスタを備えるセンサを用いた2-ヨードプロパン検出試験
上記製造例1で作製したセンサを用いて、2-ヨードプロパン検出試験を行った。該検出試験では、該センサの検出電極2を、測定溶液である液体試料に浸して25℃で10分間静置した後、検出電極2と電気的に接続されたトランジスタ1の伝達特性を、ソースメータ(製品名「KEITHLEY 2612B」、株式会社テクトロニクス&フルーク製)で測定した。測定条件は、ゲート電圧(VGS)=-3.0~0.5V、ドレイン電圧(VDS)=-2.0Vとした。上記測定溶液である液体試料(以下、「液体試料1」とも表記する)として、pH7.4の100mM HEPES緩衝溶液(100mM NaCl含有)中に2-ヨードプロパン[1~50マイクロモル(μM)]を添加したものを用いた。
【0139】
図20に、2-ヨードプロパン添加に伴うゲート電圧(VGS)とドレイン電流の絶対値(|IDS|)との関係のグラフを示す[実線:添加前、破線:2-ヨードプロパン(50μM)添加後]。図20に示したグラフから、2-ヨードプロパン添加に伴うトランジスタ1の伝達特性変化を確認することができ、2-ヨードプロパン検出を行うことができることが示された。ゲート電圧の負方向へのシフトは、2-ヨードプロパン添加に伴い、SAM処理した基板21上の金薄膜27にスルフィド基を介して固定されたEMTと2-ヨードプロパンとの反応(具体的には、EMTに含まれる窒素原子の2-ヨードプロパンに対する求核置換反応)に起因する応答であると考えられる。
【0140】
図21に、トランジスタの閾値電圧の変化量と2-ヨードプロパンのモル濃度(μM)との関係を示したグラフを示す。2-ヨードプロパンのモル濃度が1μM、2μM、3μM、5μM、7μM、10μM、20μM、30μM及び50μM各々におけるトランジスタの閾値電圧を測定した。図21に示したグラフから、2-ヨードプロパンのモル濃度の変化に伴い、トランジスタの閾値電圧が変化することを確認することができ、2-ヨードプロパンモル濃度の変化の検出を行うことができることが認められた。また、図21に示したグラフから、2-ヨードプロパンをマイクロモル(μM)単位の低濃度で検出可能であることが認められた。
【0141】
(実施例8)
EMTが固定された検出電極及びトランジスタを備えるセンサを用いた、主成分分析による脱離基を含む有機化合物6種の定性分析
上記製造例1で作製したセンサの多成分検出能を評価するため、脱離基を含む有機化合物6種(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、2-ヨードプロパン、2-ヨード-2-メチルプロパン、ブロモエタン及びトリフルオロメタンスルホン酸メチル)に対する定性分析を行った。
【0142】
多成分分析用のデータマトリックスには、標的種とする上記脱離基を含む有機化合物6種をそれぞれ5μM添加して得られたトランジスタ1の伝達特性変化が含まれている。データの取得として、標的とする上記脱離基を含む有機化合物6種の添加前後におけるトランジスタ1の伝達特性変化を測定した。
【0143】
ゲート電圧(VGS)は-3.0~0.5Vに設定した。インセットデータの作成には、標的とする上記脱離基を含む有機化合物6種を添加して測定したドレイン電流値(IDS)を、添加前のドレイン電流値(IDS0)で規格化した値を用いており、脱離基を含む有機化合物6種に対して3回の繰り返し測定が行われた。
【0144】
標的とする上記脱離基を含む有機化合物6種の識別には、パターン学習の一種である主成分分析(Principal Component Analysis;PCA)を用いた。
【0145】
上記脱離基を含む有機化合物6種の主成分分析から得られたグラフを図22に示す。図22に示す各クラスターは、3回の繰り返し測定を意味する3つのプロットから構成されている。第1主成分(PC1)及び第2主成分(PC2)は標的とする上記脱離基を含む有機化合物6種を識別するうえで寄与率の大きい上位2つの因子であり、PC1及びPC2各々の括弧内の値はPCAの全分散の累積寄与率を示している。分類されたクラスターの分布は、上記脱離基を含む有機化合物6種のかさ高さに基づくトランジスタ1の応答性を反映し、本結果から、EMTが固定された検出電極及びトランジスタを備えるセンサを用いることにより、高精度で上記脱離基を含む有機化合物6種の識別が可能であることが明らかとなった。
【0146】
(実施例9)
EMTが固定された検出電極及びトランジスタを備えるセンサを用いた、主成分分析による脱離基を含む有機化合物6種の識別及び濃度測定試験
上記製造例1で作製したセンサの多成分検出能を評価するため、主成分分析による脱離基を含む有機化合物6種(ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、2-ヨードプロパン、2-ヨード-2-メチルプロパン、ブロモエタン及びトリフルオロメタンスルホン酸メチル)の識別及び濃度測定試験を行った。
【0147】
多成分分析用のデータマトリックスには、標的種とする上記脱離基を含む有機化合物6種をそれぞれ添加して得られたトランジスタ1の伝達特性変化が含まれている。本試験において、上記脱離基を含む有機化合物6種の添加濃度は、各々0μM、2μM,5μM及び10μMとした。データの取得として、標的とする上記脱離基を含む有機化合物6種の添加前後におけるトランジスタ1の伝達特性変化を測定した。
【0148】
ゲート電圧(VGS)は-3.0~0.5Vに設定した。インセットデータの作成には、標的とする上記脱離基を含む有機化合物6種を添加して測定したドレイン電流値(IDS)を、添加前のドレイン電流値(IDS0)で規格化した値を用いており、上記脱離基を含む有機化合物6種に対して3回の繰り返し測定を行った。
【0149】
主成分分析による上記脱離基を含む有機化合物6種の識別及び濃度測定試験の結果を示したグラフを図23に示す。図23に示す各クラスターは、それぞれの濃度(0μM、2μM,5μM及び10μM)において3回の繰り返し測定を意味する3つのプロットから構成されている。なお、上記脱離基を含む有機化合物6種各々の濃度0μMは、コントロールとして使用した。第1主成分(PC1)及び第2主成分(PC2)は標的とする異なる濃度の上記脱離基を含む有機化合物6種を識別するうえで寄与率の大きい上位2つの因子であり、PC1及びPC2の括弧内の値はPCAの全分散の累積寄与率を示している。図23は、PCAによる濃度依存性のクラスター分布を表しており、本結果から、EMTが固定された検出電極及びトランジスタを備えるセンサを用いることにより、上記脱離基を含む有機化合物6種の定性的識別及び半定量的識別が可能であることが明らかとなった。図23のPCAによる濃度依存性のクラスター分布を用いることにより、上記脱離基を含む有機化合物6種以外の脱離基を含む有機化合物の識別及び濃度測定が可能であることが推測される。
【符号の説明】
【0150】
1 トランジスタ
2,2A 検出電極
3 液体試料
4 導電ケーブル
11 ガラス基板
12 ゲート電極
13 ゲート絶縁膜
14 ソース電極
15 ドレイン電極
16 撥液性バンク層
17 高分子半導体層
18 封止膜
21 PENフィルム基板
22 参照電極(Ag/AgCl電極)
27 金薄膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23