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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037527
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】農作物収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 45/00 20180101AFI20250311BHJP
【FI】
A01D45/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144504
(22)【出願日】2023-09-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、農業機械技術クラスター事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】599165234
【氏名又は名称】東洋精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 善彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 循
(72)【発明者】
【氏名】金光 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】河野 政美
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075AA10
2B075GA01
2B075GA05
(57)【要約】
【課題】農作物の切断ミスの発生を抑制できる農作物収穫機を提供する。
【解決手段】農作物収穫機1は、走行体の前部および後部を畝溝に接地させた状態で走行しながら、畝頂部の農作物の茎部を刈刃で切断する農作物収穫機1であって、走行体10の後部12が枕地に接地し、前部14が枕地よりも低い畝溝に接地するとき、刈刃33の高さを略畝頂部の位置に調整する第1調整機構50と、走行体10の後部12が枕地を通過して前部14および後部12が畝溝に接地するとき、上方に変位した刈刃33の高さを略畝頂部の位置に一回の動作で調整する第2調整機構60と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体の前部および後部を畝溝に接地させた状態で走行しながら、畝頂部の農作物の茎部を刈刃で切断する農作物収穫機であって、
前記走行体の前記後部が枕地に接地し、前記前部が枕地よりも低い畝溝に接地するとき、前記刈刃の高さを略畝頂部の位置に調整する第1調整機構と、前記走行体の前記後部が枕地を通過して前記前部および前記後部が畝溝に接地するとき、上方に変位した前記刈刃の高さを略畝頂部の位置に一回の動作で調整する第2調整機構と、を備える、
農作物収穫機。
【請求項2】
前記第2調整機構は、
一回の動作で前記刈刃を変位させる量を畝頂部の高さに応じて調整可能である、
請求項1記載の農作物収穫機。
【請求項3】
前記第1調整機構は、
第1操作部を備え、
前記第1操作部の操作により、前記第1操作部と前記走行体の前記前部を連結する第1連結機構を変位させて前記刈刃の高さを略畝頂部の位置に調整し、
前記第2調整機構は、
第2操作部を備え、
前記第2操作部の操作により、前記第1連結機構を変位させる第2連結機構を動作させ、上方に変位した前記刈刃の高さを略畝頂部の位置に一回の動作で調整する、
請求項1又は2記載の農作物収穫機。
【請求項4】
前記第2連結機構は、平行リンク機構を含む、
請求項3記載の農作物収穫機。
【請求項5】
前記第2連結機構は、スライダ機構を含む、
請求項3記載の農作物収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、走行体に、白菜の根部を結球部から切り離す回転刈刃と、根部が切り離された白菜の結球部を搬送する搬送手段とを備えた白菜の収穫機を開示する。
また、特許文献2は、畝溝底面を移動しつつ畝上面上の農作物に対して所定の作業を行う収穫作業機を開示する。
【0003】
特許文献1、2のような収穫機では、畝端からの作業開始時に、平坦な枕地から枕地よりも低い畝溝に入る際の収穫機の傾きに起因して、回転切刃の位置が変動し、農作物に切断ミスが発生し易いという課題がある。
従来、切断ミスを回避するために、収穫機の前輪が平坦な枕地から枕地よりも低い畝溝に入って収穫機が前傾した時点で、回転切刃の位置を畝頂部の位置に調整し、収穫機の前輪、後輪のすべてが畝溝に入って収穫機が水平になった状態で、再度回転切刃の位置を調整する操作が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-164609号公報
【0005】
【特許文献2】特開2002-165512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1は、回転刈刃を昇降させるために油圧装置を用いるが、回転切刃の位置を再調整する場合、油圧方向制御弁を操作することは難しく、特許文献2は、回転刈刃を昇降させるために高さ調節用ハンドルを用いるが、同再調整する場合、高さ調節用ハンドルの回動操作を行うことは困難である。
本発明の目的は、上述した従来の課題を解消し、畝端からの作業開始時に、切刃の高さ位置を簡単に調整することができ、農作物の切断ミスの発生を抑制できる農作物収穫機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による一態様は、走行体の前部および後部を畝溝に接地させた状態で走行しながら、畝頂部の農作物の茎部を刈刃で切断する農作物収穫機であって、前記走行体の前記後部が枕地に接地し、前記前部が枕地よりも低い畝溝に接地するとき、前記刈刃の高さを略畝頂部の位置に調整する第1調整機構と、前記走行体の前記後部が枕地を通過して前記前部および前記後部が畝溝に接地するとき、上方に変位した前記刈刃の高さを略畝頂部の位置に一回の動作で調整する第2調整機構と、を備える、農作物収穫機である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、畝端からの作業開始時に、切刃の高さ位置を簡単に調整することができ、農作物の切断ミスの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るタカナ収穫機の左側面図。
図2】タカナ収穫機の平面図。
図3】第2調整機構の左側面図。
図4】レバー用ストッパの背面図。
図5】(a)は、前輪14が畝溝R1に接地し、後輪が枕地に接地するときのタカナ収穫機を示す側面図、(b)は、前輪および後輪が畝溝に接地するときのタカナ収穫機を示す側面図、(c)は、第2調整機構により回転刈刃の高さを調整された後のタカナ収穫機を示す側面図。
図6】実施の形態2に係る第2調整機構の側面図。
図7】実施の形態3に係るタカナ収穫機の左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態1)
(構成)
(基本構成)
図1は、実施の形態1に係るタカナ収穫機1(農作物収穫機)の左側面図である。図2は、タカナ収穫機1の平面図である。タカナ収穫機1は、走行しながらタカナCMを収穫する装置である。タカナCMの上部は葉であり、下部は茎部である。
タカナCMは、九州地方を中心に例えば各種漬物に加工される。タカナCMの収穫時には、圃場での風乾が必要であることから、収穫作業は畝立て栽培されたタカナCMの茎部を切断して反転して圃場に整列し、風乾し、半日から1日風乾した後にタカナCMを回収する作業が行われる。
【0011】
タカナ収穫機1は、圃場に形成された畝Rどうしの間の畝溝R1に前輪14および後輪12を接地させながら走行する。また、左右一対の後輪12は、1つの畝Rを左右に跨いだ位置に配置される。
タカナ収穫機1は、3輪式の後輪駆動歩行型の農作物収穫機であり、操縦用ハンドル(不図示)を把持した作業者は、左側の後輪12が位置する畝溝R1上を歩行しながら、タカナ収穫機1を後ろから操縦する。
【0012】
タカナ収穫機1は、走行体10を有する。走行体10には、台座部31、回転刈刃33、搬送ベルト35、載置板37、抵抗ローラ37b、掻き込み羽根39、第1シュート38、第2シュート40が搭載され、さらに、図示は省略したが、左右一対の後輪12と搬送ベルト35を駆動する内燃機関が搭載されている。搬送ベルト35は、ベルト駆動部36が有するV溝を備えたプーリ(駆動用、遊動用、テンション用)に巻き掛けられ、ベルト駆動部36に内燃機関の駆動力が伝達されることにより循環駆動し、載置板37上のタカナCMを後方に搬送する。載置板37上を後方に搬送されたタカナCMは、載置板37の後端部37aに位置する抵抗ローラ37b、および、複数の羽根39aを有する掻き込み羽根39の協働により、上下を反転した状態で畝溝に並べられる。
【0013】
走行体10は、前後方向に延びる機体フレーム11を有する。機体フレーム11は、タカナ収穫機1の左側面に位置する。走行体10は、それぞれ左右に延びる第1支持部材13および第2支持部材15を有する。第1支持部材13は、機体フレーム11の後端に固定され、機体フレーム11から右方向に延びる。第2支持部材15は、機体フレーム11の前後方向の中途部に固定され、機体フレーム11から右方向に延びる。
【0014】
左右一対の後輪12(走行体10の後部)は、機体フレーム11および第1支持部材13を左右に貫通する車軸12aに固定される。走行体10は、1つの前輪14(走行体10の前部)を有する。前輪14は、タカナ収穫機1の左側面に位置する。
【0015】
タカナ収穫機1は、走行体10に固定される台座部31を有する。台座部31は、第2支持部材15に固定され、第2支持部材15から前上がりに延びる。台座部31には、回転刈刃(刈刃)33が取り付けられる。
【0016】
回転刈刃33は、内燃機関の駆動力が伝達されることで回転し、タカナCMの茎部を切断する円盤形状の刃物である。
回転刈刃33は、台座部31から前方に延びる刈刃保持部材34の前端において、前下がりの姿勢で保持される。回転刈刃33は、左右方向において一対の後輪12の中央付近に位置するため、前輪14および後輪12が畝溝に位置するときに、平面視で畝Rの最上部である畝頂部R2と重なる位置にある。
【0017】
(回転刈刃の高さ調整に関する機構)
回転刈刃33は、畝頂部R2よりもおよそ2~4cmだけ上方の位置(略畝頂部R2の位置)でタカナCMを切断することが望ましい。回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に合わせるため、タカナ収穫機1には回転刈刃33の高さの調整をする第1調整機構50、および、第2調整機構60が設けられる。回転刈刃33の高さ位置が適宜調整されることで、タカナCMの茎部より上方を切断して葉が散乱すること、および、畝Rに回転刈刃33が接触することを防止できる。
【0018】
(第1調整機構50)
前輪14は、軸14aを介して、前輪回動アーム17の一端に取付けられ、前輪回動アーム17の他端には、前輪支軸17aが連結されている。
前輪支軸17aは、機体フレーム11を貫通し、機体フレーム11の内側で連結リンク部材51の一端に連結されている。連結リンク部材51の他端には、連結軸52を介して、中空状の連結アーム53の一端が連結されている。
連結アーム53の他端の内周には雌ねじ(不図示)が形成され、雌ねじにはロッド55側の雄ねじ55aが螺合されている。ロッド55は、直線部55bと、ハンドル部55c(第1操作部)と、を有している。
【0019】
作業者がハンドル部55cを回すことにより、連結アーム53の雌ねじに対する雄ねじ55aの締め込み量が変化し、連結アーム53が前後方向に進退する。連結アーム53が前後に進退すると、連結リンク部材51および前輪回動アーム17が前輪支軸17aを中心に回動し、機体フレーム11の前端が上下に移動し、第2支持部材15、台座部31、刈刃保持部材34、および、回転刈刃33は、機体フレーム11とともに上下に移動し、回転刈刃33の高さが調整される。
以降、連結アーム53、直線部55b、連結リンク部材51、および、前輪回動アーム17を、合わせて第1連結機構50aと呼称する。第1連結機構50aは、ハンドル部55cと前輪14とを連結し、ハンドル部55cの操作によって変位して回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に調整する。
【0020】
(第2調整機構60)
図3は、第2調整機構60の左側面図である。
第2調整機構60はロッド保持部62を有し、ロッド保持部62は第1調整機構50のロッド55の直線部55bを保持している。直線部55bには、直線部55bよりも径方向外側まで拡がる前部体S1と後部体S2が固定され、前部体S1と後部体S2との間の直線部55bがロッド保持部62に挿通されている。ロッド55は、ロッド保持部62の内側において回転自在である。前部体S1および後部体S2は、ロッド保持部62に接触することにより、ロッド55とロッド保持部62との間での前後方向に向けての相対移動を規制し、ロッド55およびロッド保持部62を前後方向に一体に移動させる。第2調整機構60は、走行体10に搭載される台座部61と、ロッド保持部62と、平行リンク機構63と、レバー用ストッパ65と、を有している。
【0021】
平行リンク機構63は、対向する一対のリンク63a、63cどうし、および、対向する他の一対のリンク63b、63dどうしの長さがそれぞれ等しい、クローズドループの四節リンク機構である。
リンク63cは、台座部61に固定され、リンク63a~63dは、ジョイント63e~63hにより連結されている。リンク63aの上面には、上述したロッド保持部62が取付けられている。また、リンク63dには、リンク63cとのジョイント部分よりも後方側に延長された操作レバー(第2操作部)64が設けられている。操作レバー64は後方側に向けて延びる棒状の部材である。操作レバー64は、ジョイント63gを中心としてリンク63dと一体に回動する。操作レバー64は、リンク63dよりも十分に長く、平行リンク機構63を変位させやすい。また、操作レバー64の中途部には関節部64aが設けられ、関節部64aよりも後方側の部分は、関節部64aを軸として左右に揺動可能に形成されている。
【0022】
図4は、レバー用ストッパ65の背面図である。
レバー用ストッパ65は、台座部61に固定される板状の部材である。レバー用ストッパ65には、操作レバー64が挿通されるレバー移動孔65aが形成されている。レバー移動孔65aは、上下に延びる孔である。
また、レバー用ストッパ65には、上下に間隔をあけて4つの切り欠き65bが設けられ、各々の切り欠き65bは、レバー移動孔65aに繋がる。各々の切り欠き65bは操作レバー64を挿通可能であり、操作レバー64の回動を規制する。すなわち、レバー用ストッパ65は、形成された切り欠き65bの数に応じた段階で操作レバー64および平行リンク機構63を位置決めする。
【0023】
作業者が操作レバー64を上下に揺動させることにより、平行リンク機構63が変位し、リンク63aに接続されたロッド保持部62が前後に移動する。これにより、ロッド55および連結アーム53はロッド保持部62と一体に前後に移動し、第1調整機構50の場合と同様に回転刈刃33が上下に移動する。以降、平行リンク機構63およびロッド保持部62を合わせて、第2連結機構60aと呼称する。第2連結機構60aは、操作レバー64と第1連結機構50aとを連結する。また、第2連結機構60aは、操作レバー64の操作によって変位することで、第1連結機構50aを変位させ、回転刈刃33の高さを調整する。
【0024】
(タカナ収穫機が枕地から畝溝に進入する際の動作)
図5(a)は、前輪14が畝溝R1に接地し、後輪12が枕地HLに接地するときのタカナ収穫機1を示す側面図である。
圃場においてタカナ収穫機1が最初に畝Rに沿った走行を始める場合、作業者は、前輪14が畝溝R1に接地した後、回転刈刃33がタカナCMに到達する前に、タカナ収穫機1の走行を一時停止させる。
一時停止中のタカナ収穫機1は、前輪14が畝溝R1に接地し、後輪12が枕地HLに接地した状態である。枕地HLは畝溝R1よりも高い位置にあるため、この状態のタカナ収穫機1は前傾している。
【0025】
この状態で、作業者は、第1調整機構50を用いて、回転刈刃33の高さを調整する。ハンドル部55cを右回転させると、連結アーム53の雌ねじと、ロッド55の雄ねじとの嵌合の度合いが進み、連結アーム53が後方に引っ張られる。これにより、前輪14が左方に移動し、機体フレーム11の前端が降下し、回転刈刃33の高さが低くなる方向に調整される。ハンドル部55cを左回転させると、連結アーム53の雌ねじと、ロッド55の雄ねじとの嵌合が少なくなる方向に進み、連結アーム53が前方に押し出される。これにより、前輪14が後方に移動し、機体フレーム11の前端が上昇し、回転刈刃33の高さが高くなる方向に調整される。
作業者は、ハンドル部55cを回転させて、畝頂部R2と回転刈刃33との上下方向の距離を、間隔G1にする。間隔G1は概ね2cm~4cmであり、回転刈刃33は略畝頂部R2の位置に移動する。
【0026】
回転刈刃33の高さを調整した後、作業者は、タカナ収穫機1の走行を再開させる。走行の再開時、後輪12が枕地HLに接地した状態における回転刈刃33は略畝頂部R2の位置にある。このため、後輪12が枕地HLに接地した状態でタカナCMを収穫してもタカナCMの切断ミスが発生しにくい。
【0027】
図5(b)は、前輪14および後輪12が畝溝R1に接地するときのタカナ収穫機1を示す側面図である。タカナ収穫機1が走行を続け、後輪12が畝溝R1に接地すると、図5(b)の状態となり、タカナ収穫機1の姿勢は略水平になる。
この状態になると、機体フレーム11は図5(a)の状態よりも後ろ下がりに回転した姿勢となるため、機体フレーム11と一体に回動する回転刈刃33は上方に変位する。従って、回転刈刃33と畝頂部R2との間隔G2は、間隔G1よりも大きくなる。間隔G2は、例えば、好適な寸法2cm~4cmよりも大きい間隔となる。
【0028】
図5(b)の状態でタカナCMを切断した場合には、タカナCMの葉を切断してしまう虞がある。そのために、図5(b)の状態に至ると、作業者は、第2調整機構60を用いて、再び回転刈刃33の高さの調整を行う。
作業者は、第2調整機構60の操作レバー64を、図5(b)、図5(c)に矢印で示す方向に回動させる。このとき、操作レバー64は、図4に示すレバー用ストッパ65の4つの切り欠き65bのうち、予め決められた一つの切り欠き65bに嵌合させて、回動の操作を終了する。何れの切り欠き65bに嵌合させるかは、畝溝R1から畝頂部R2までの高さに応じて、予め決定される。
【0029】
第2調整機構60による高さの調整の結果、図5(c)に示すように、回転刈刃33と畝頂部R2との間隔G3は、間隔G1と同程度とされ、回転刈刃33は略畝頂部R2の位置に調整される。第2調整機構60による高さの調整は、第1調整機構50の場合と比較して、1回の操作レバー64の操作により、間隔G2から間隔G3まで一挙に簡易に調整することができる。このため、タカナ収穫機1が、図5(b)から図5(c)の状態に進行する過程において、操作レバー64を1回操作するだけで、簡単に回転刈刃33の高さを調整でき、作業者はタカナ収穫機1を畝Rに沿って走行させるだけで、タカナCMを切断ミスなく収穫することができる。
【0030】
本実施の形態では、一列の略畝頂部R2のタカナCMを収穫した後に、二列目の略畝頂部R2のタカナCMの収穫に向かう際には、図5(a)~図5(c)の手順を繰り返すことになるが、同一の圃場であれば、畝溝R1の深さおよび畝頂部R2の高さは概ね均一であることが期待できるため、二列目の収穫において、図5(a)の状態で、操作レバー64を矢印とは反対方向に回動操作すればよい。これにより、前輪14が畝溝R1に接地し後輪12が枕地HLに接地するとき、回転刈刃33が畝頂部R2と干渉する、という事態を防止でき、タカナCMを切断ミスなく収穫できる。
【0031】
上述のように、第1調整機構50において、ハンドル部55cが1回転したときの連結アーム53の移動量は、雄ねじおよび連結アーム53の雌ねじのピッチと同等であり、ハンドル部55cの回動操作の回数に比べて、機体フレーム11の前端が上下方向へ移動する寸法はかなり小さい寸法に抑えられる。
これに対し、第2調整機構60において、操作レバー64が上下に揺動したときの連結アーム53の移動量は、雄ねじおよび連結アーム53の雌ねじのピッチよりもかなり大きい距離となる。したがって、第2調整機構60によって、回転刈刃33の高さを変更する場合には、作業者は操作レバー64を一回操作するだけでよく、回転刈刃33の高さを、簡単に調整できる。
【0032】
(効果等)
以上のように、本実施の形態のタカナ収穫機1は、走行体10の後輪12が枕地HLに接地し、前輪14が枕地HLよりも低い畝溝R1に接地するとき、回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に調整する第1調整機構50と、走行体10の後輪12が枕地を通過して前輪14および後輪12が畝溝R1に接地するとき、上方に変位した回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に一回の動作で調整する第2調整機構60と、を備える。
これにより、畝溝R1と枕地HLとの高さの差から回転刈刃33が上方に変位した場合でも、第2調整機構60を用いることで、一回の動作で回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に調整できる。このため、タカナCMの切断ミスの発生を抑制できる。
【0033】
また、本実施の形態のように、第2調整機構60は、一回の動作で回転刈刃33を変位させる量を畝頂部R2の高さに応じて調整可能である、構成としてもよい。
これにより、畝頂部R2の高さが様々に異なる圃場において、第2調整機構60を用いて一回の動作で回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に調整できる。このため、様々な圃場においてタカナCMの切断ミスの発生を抑制できる。
特に、本実施の形態では、一回の動作で回転刈刃33を変位させる量を調整するために、レバー移動孔65aおよび切り欠き65bが形成された板状のレバー用ストッパ65を用いている。このため、簡素な構成で、一回の動作で回転刈刃33を変位させる量の調整が可能である。
【0034】
また、本実施の形態のように、タカナ収穫機1において、第1調整機構50は、ハンドル部55cを備え、ハンドル部55cの操作により、ハンドル部55cと前輪14を連結する第1連結機構50aを変位させて回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に調整し、第2調整機構60は、操作レバー64を備え、操作レバー64の操作により、第1連結機構50aを変位させる第2連結機構60aを動作させ、上方に変位した回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に一回の動作で調整する、構成としてもよい。
このため、第1調整機構50と第2調整機構60による調整を、ロッド55および操作レバー64という異なる操作部に対する操作で使い分けることができる。
また、第1調整機構50および第2調整機構60は、ともに第1連結機構50aを変位させて回転刈刃33の高さを調整できる。このため、簡素な構成でタカナCMの切断ミスの発生を抑制できる。
【0035】
また、本実施の形態のように、第2連結機構60aは、平行リンク機構63を含む、構成としてもよい。これにより、簡素な構成で第2連結機構60aを構成できる。
【0036】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係る第2調整機構160の側面図である。
実施の形態2に係る第2調整機構160は、平行リンク機構63の代わりに、トグルジョイント式のスライダ機構163を有する。スライダ機構163は、台座部61の上面に固定されたレール163aと、レール163aに取り付けられたロッド保持部162と、ロッド保持部162と操作レバー(第2操作部)164とを連結させるリンク163bと、を有する。ロッド保持部162は、実施の形態1のロッド保持部62と同様の方式でロッド55を保持する。レール163aは、前後方向に沿って設けられる。ロッド保持部162は、レール163aに対して前後に摺動可能に取り付けられる。操作レバー164は、台座部61の上端に対して、左右方向を軸に回動可能である。
【0037】
第2調整機構160において、作業者の操作により操作レバー164が下方に下がると、リンク163bを介してロッド55が後方に引かれる。これにより、機体フレーム11の前端が下方に変位し、回転刈刃33の高さが下がる。
逆に、第2調整機構160において、操作レバー164が作業者の操作により上方に上がると、リンク163bを介してロッド55が前方に押し出される。これにより、機体フレーム11の前端が上方に変位し、回転刈刃33の高さが上がる。
すなわち、第2連結機構160aは、スライダ機構163を含む構成としてもよい。これにより、第2連結機構160aを簡単に構成できる。
【0038】
(実施の形態3)
図7は、実施の形態3に係るタカナ収穫機201の左側面図である。実施の形態3の第1調整機構250において、ロッド255と連結アーム253とは、ターンバックル257(第1操作部)を介して連結される。
ターンバックル257は、連結アーム253とロッド255との距離を調整可能に構成され、ターンバックル257の操作により、連結アーム253がロッド255に対して前後に移動する。第1連結機構250aは、連結アーム253、連結リンク部材51、および、前輪回動アーム17を含む。
【0039】
実施の形態3において、操作レバー264と第1連結機構250aとを連結させる第2連結機構260aは、スコットラッセル近似平行運動式のスライダ機構263を有する。スライダ機構263は、上述のレール163aと、レール163aに対して摺動可能に取り付けられたスライダ262と、台座部61の上端と操作レバー264とを連結するリンク263bと、を有する。スライダ262には、ロッド255の後端、および、操作レバー264の前端が、それぞれヒンジを介して左右方向を軸に回動可能に連結される。
【0040】
第2調整機構260において、作業者の操作により操作レバー264が下方に下がると、リンク263bが前方側に倒れて、スライダ262が前方に摺動する。これにより、回転刈刃33の高さが上がる。逆に、作業者の操作により操作レバー264が上方に上がると、リンク263bが上方に立ち上がり、スライダ262が後方に摺動する。これにより、回転刈刃33の高さが下がる。
【0041】
(他の実施の形態)
【0042】
上記実施の形態では、本発明の農作物収穫機をタカナ収穫機1に適用した例を説明したが、これは一例に過ぎない。例えば、本発明の農作物収穫機は、タカナ以外の任意の葉菜を収穫するための装置に適用してもよい。
【0043】
上記実施の形態では、タカナ収穫機1は、内燃機関の駆動力をもとに動作すると説明したが、これは一例である。例えば、タカナ収穫機1は、バッテリまたは発電機から出力される電力によって各部を動作させてもよい。
【0044】
上記実施の形態では、タカナ収穫機1は、回転刈刃33によりタカナCMを刈り取ると説明したが、これは一例である。タカナ収穫機1がタカナCMの刈り取りに使用する刈刃は、回転式のものに限られない。
【0045】
上記実施の形態では、レバー用ストッパ65には、レバー移動孔65aから左方に形成された4つの切り欠き65bが設けられると説明したが、これは一例である。切り欠き65bは、任意の数設けられていてもよく、レバー移動孔65aを基準として左右の片側または両側に設けられていてもよい。
【0046】
上記実施の形態では、前輪14は、タカナ収穫機1の左側面に設けられると説明したが、前輪14は、タカナ収穫機1の右側に設けられていてもよく、左右両側に設けられていてもよい。
【0047】
上記実施の形態の各要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることができる。例えば、実施の形態1の第1調整機構50と、実施の形態3の第2調整機構260と、を組み合わせて、新たな実施の形態としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 タカナ収穫機(農作物収穫機)
10 走行体
12 後輪(走行体の後部)
14 前輪(走行体の前部)
33 回転刈刃(刈刃)
50 第1調整機構
50a 第1連結機構
55c ハンドル部(第1操作部)
60 第2調整機構
60a 第2連結機構
63 平行リンク機構
64 操作レバー(第2操作部)
160 第2調整機構
160a 第2連結機構
163 スライダ機構
164 操作レバー(第2操作部)
250 第1調整機構
250a 第1連結機構
257 ターンバックル(第1操作部)
260 第2調整機構
260a 第2連結機構
263 スライダ機構
264 操作レバー(第2操作部)
CM タカナ
HL 枕地
R 畝
R1 畝溝
R2 畝頂部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7