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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025037528
(43)【公開日】2025-03-18
(54)【発明の名称】農作物収穫機
(51)【国際特許分類】
   A01D 45/00 20180101AFI20250311BHJP
【FI】
A01D45/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144505
(22)【出願日】2023-09-06
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和5年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、農業機械技術クラスター事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(71)【出願人】
【識別番号】599165234
【氏名又は名称】東洋精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 善彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 循
(72)【発明者】
【氏名】金光 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】河野 政美
【テーマコード(参考)】
2B075
【Fターム(参考)】
2B075AA10
2B075GA01
2B075GA05
(57)【要約】
【課題】収穫した農作物の上下を反転させて圃場に並べることを自動化する。
【解決手段】農作物収穫機1は、農作物を刈刃33で刈り取り、農作物を載置板37で支持しながら、一対の搬送ベルト35により挟んで搬送し、農作物を畝溝に並べる農作物収穫機1であって、載置板37の終端の近傍37aに設けられ、農作物の下部に搬送抵抗を与える下部抵抗体37bと、搬送ベルト35の出口の近傍に設けられ、農作物の上部を掻き込む上部抵抗体39と、を備え、下部抵抗体37b及び上部抵抗体39の協働により、農作物の上下を反転させて畝溝に並べる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物を刈刃で刈り取り、前記農作物を載置板で支持しながら、一対の搬送ベルトにより挟んで搬送し、前記農作物を畝溝に並べる農作物収穫機であって、
前記載置板の終端の近傍に設けられ、前記農作物の下部に搬送抵抗を与える下部抵抗体と、前記搬送ベルトの出口の近傍に設けられ、前記農作物の上部を掻き込む上部抵抗体と、を備え、前記下部抵抗体及び前記上部抵抗体の協働により、前記農作物の上下を反転させて畝溝に並べる、
農作物収穫機。
【請求項2】
前記載置板の出口に、下方に傾斜する第1シュートと、前記第1シュートと対向し、上下を反転した状態で前記農作物を起立させる第2シュートと、を備え、
前記第2シュートを経て、前記農作物が畝溝に並べられる、
請求項1記載の農作物収穫機。
【請求項3】
前記第2シュートは、前記農作物が衝突する位置に緩衝部を備える、
請求項2記載の農作物収穫機。
【請求項4】
前記下部抵抗体は、抵抗ローラである、
請求項1乃至3の何れか一項記載の農作物収穫機。
【請求項5】
前記上部抵抗体は、回転式の掻き込み羽根である、
請求項1乃至3の何れか一項記載の農作物収穫機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物収穫機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ネギなどの農作物を収容部内に整然と集積できる収穫機を開示する。
また、特許文献2は、茎葉を収穫目的とする野菜を損傷させずに、受ケースに収容する野菜の収穫装置を開示する。
また、例えば、タカナは、九州地方を中心に例えば各種漬物に加工される。タカナの収穫時には、圃場での風乾が必要であることから、収穫作業は畝立て栽培されたタカナの茎部を切断して反転して圃場に整列し、風乾し、半日から1日風乾した後にタカナを回収する作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-148387号公報
【0004】
【特許文献2】特開2010-252677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1、2のように、収穫した農作物を容器に収容する装置は、刈り取り後に圃場に並べて乾燥させることが必要な農作物には不適であった。また、タカナのように、刈り取り後に上下を反転した状態で圃場に並べることで乾燥効率を向上できる農作物の収穫には大きな労力がかかるため、自動化が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による一態様は、農作物を刈刃で刈り取り、前記農作物を載置板で支持しながら、一対の搬送ベルトにより挟んで搬送し、前記農作物を畝溝に並べる農作物収穫機であって、前記載置板の終端の近傍に設けられ、前記農作物の下部に搬送抵抗を与える下部抵抗体と、前記搬送ベルトの出口の近傍に設けられ、前記農作物の上部を掻き込む上部抵抗体と、を備え、前記下部抵抗体及び前記上部抵抗体の協働により、前記農作物の上下を反転させて畝溝に並べる、農作物収穫機である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、刈り取った農作物の上下を反転させて圃場に並べることを自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るタカナ収穫機の左側面図。
図2】タカナ収穫機の平面図。
図3】第2調整機構の左側面図。
図4】レバー用ストッパの背面図。
図5】第2シュートの斜視図。
図6】タカナ収穫機の走行順を示した模式図。
図7】刈り取られたタカナCMが反転して畝溝R1に並べられるまでの過程を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
(構成)
(基本構成)
図1は、実施の形態1に係るタカナ収穫機1(農作物収穫機)の左側面図である。図2は、タカナ収穫機1の平面図である。タカナ収穫機1は、走行しながらタカナCMを収穫する装置である。タカナCMの上部は葉であり、下部は茎部である。
【0010】
タカナ収穫機1は、圃場に形成された畝Rどうしの間の畝溝R1に前輪14および後輪12を接地させながら走行する。また、左右一対の後輪12は、1つの畝Rを左右に跨いだ位置に配置される。
タカナ収穫機1は、3輪式の後輪駆動歩行型の農作物収穫機であり、操縦用ハンドル(不図示)を把持した作業者は、左側の後輪12が位置する畝溝R1上を歩行しながら、タカナ収穫機1を後ろから操縦する。
【0011】
タカナ収穫機1は、走行体10を有する。走行体10には、台座部31、搬送ベルト35、載置板37、抵抗ローラ37b、掻き込み羽根39、第1シュート38、第2シュート40が搭載され、さらに、図示は省略したが、左右一対の後輪12と搬送ベルト35を駆動する内燃機関が搭載されている。
【0012】
走行体10は、前後方向に延びる機体フレーム11を有する。機体フレーム11は、タカナ収穫機1の左側面に位置する。走行体10は、それぞれ左右に延びる第1支持部材13および第2支持部材15を有する。第1支持部材13は、機体フレーム11の後端に固定され、機体フレーム11から右方向に延びる。第2支持部材15は、機体フレーム11の前後方向の中途部に固定され、機体フレーム11から右方向に延びる。
【0013】
左右一対の後輪12(走行体10の後部)は、機体フレーム11および第1支持部材13を左右に貫通する車軸12aに固定される。走行体10は、1つの前輪14(走行体10の前部)を有する。前輪14は、タカナ収穫機1の左側面に位置する。
【0014】
タカナ収穫機1は、走行体10に固定される台座部31を有する。台座部31は、第2支持部材15に固定され、第2支持部材15から前上がりに延びる。台座部31には、回転刈刃(刈刃)33が取り付けられる。
【0015】
回転刈刃33は、内燃機関の駆動力が伝達されることで回転し、タカナCMの茎部を切断する円盤形状の刃物である。
回転刈刃33は、台座部31から前方に延びる刈刃保持部材34の前端において、前下がりの姿勢で保持される。回転刈刃33は、左右方向において一対の後輪12の中央付近に位置するため、前輪14および後輪12が畝溝に位置するときに、平面視で畝Rの最上部である畝頂部R2と重なる位置にある。
【0016】
(回転刈刃の高さ調整に関する機構)
回転刈刃33は、畝頂部R2よりもおよそ2~4cmだけ上方の位置(略畝頂部R2の位置)でタカナCMを切断することが望ましい。回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に合わせるため、タカナ収穫機1には回転刈刃33の高さの調整をする第1調整機構50、および、第2調整機構60が設けられる。回転刈刃33の高さ位置が適宜調整されることで、タカナCMの茎部より上方を切断して葉が散乱すること、および、畝Rに回転刈刃33が接触することを防止できる。
【0017】
(第1調整機構50)
前輪14は、軸14aを介して、前輪回動アーム17の一端に取付けられ、前輪回動アーム17の他端には、前輪支軸17aが連結されている。
前輪支軸17aは、機体フレーム11を貫通し、機体フレーム11の内側で連結リンク部材51の一端に連結されている。連結リンク部材51の他端には、連結軸52を介して、中空状の連結アーム53の一端が連結されている。
連結アーム53の他端の内周には雌ねじ(不図示)が形成され、雌ねじにはロッド55側の雄ねじ55aが螺合されている。ロッド55は、直線部55bと、ハンドル部55c(第1操作部)と、を有している。
【0018】
作業者がハンドル部55cを回すことにより、連結アーム53の雌ねじに対する雄ねじ55aの締め込み量が変化し、連結アーム53が前後方向に進退する。連結アーム53が前後に進退すると、連結リンク部材51および前輪回動アーム17が前輪支軸17aを中心に回動し、機体フレーム11の前端が上下に移動し、第2支持部材15、台座部31、刈刃保持部材34、および、回転刈刃33は、機体フレーム11とともに上下に移動し、回転刈刃33の高さが調整される。以降、連結アーム53、直線部55b、連結リンク部材51、および、前輪回動アーム17を、合わせて第1連結機構50aと呼称する。第1連結機構50aは、ハンドル部55cと前輪14とを連結し、ハンドル部55cの操作によって変位して回転刈刃33の高さを略畝頂部R2の位置に調整する。
【0019】
(第2調整機構60)
図3は、第2調整機構60の左側面図である。
第2調整機構60はロッド保持部62を有し、ロッド保持部62は第1調整機構50のロッド55の直線部55bを保持している。直線部55bには、直線部55bよりも径方向外側まで拡がる前部体S1と後部体S2が固定され、前部体S1と後部体S2との間の直線部55bがロッド保持部62に挿通されている。ロッド55は、ロッド保持部62の内側において回転自在である。前部体S1および後部体S2は、ロッド保持部62に接触することにより、ロッド55とロッド保持部62との間での前後方向に向けての相対移動を規制し、ロッド55およびロッド保持部62を前後方向に一体に移動させる。第2調整機構60は、走行体10に搭載される台座部61と、ロッド保持部62と、平行リンク機構63と、レバー用ストッパ65と、を有している。
【0020】
平行リンク機構63は、対向する一対のリンク63a、63cどうし、および、対向する他の一対のリンク63b、63dどうしの長さがそれぞれ等しい、クローズドループの四節リンク機構である。
リンク63cは、台座部61に固定され、リンク63a~63dは、ジョイント63e~63hにより連結されている。リンク63aの上面には、上述したロッド保持部62が取付けられている。また、リンク63dには、リンク63cとのジョイント部分よりも後方側に延長された操作レバー(第2操作部)64が設けられている。操作レバー64は後方側に向けて延びる棒状の部材である。操作レバー64は、ジョイント63gを中心としてリンク63dと一体に回動する。操作レバー64は、リンク63dよりも十分に長く、平行リンク機構63を変位させやすい。また、操作レバー64の中途部には関節部64aが設けられ、関節部64aよりも後方側の部分は、関節部64aを軸として左右に揺動可能に形成されている。
【0021】
図4は、レバー用ストッパ65の背面図である。
レバー用ストッパ65は、台座部61に固定される板状の部材である。レバー用ストッパ65には、操作レバー64が挿通されるレバー移動孔65aが形成されている。レバー移動孔65aは、上下に延びる孔である。
また、レバー用ストッパ65には、上下に間隔をあけて4つの切り欠き65bが設けられ、各々の切り欠き65bは、レバー移動孔65aに繋がる。各々の切り欠き65bは操作レバー64を挿通可能であり、操作レバー64の回動を規制する。すなわち、レバー用ストッパ65は、形成された切り欠き65bの数に応じた段階で操作レバー64および平行リンク機構63を位置決めする。
【0022】
作業者が操作レバー64を上下に揺動させることにより、平行リンク機構63が変位し、リンク63aに接続されたロッド保持部62が前後に移動する。これにより、ロッド55および連結アーム53はロッド保持部62と一体に前後に移動し、第1調整機構50の場合と同様に回転刈刃33が上下に移動する。以降、平行リンク機構63およびロッド保持部62を合わせて、第2連結機構60aと呼称する。第2連結機構60aは、操作レバー64と第1連結機構50aとを連結する。また、第2連結機構60aは、操作レバー64の操作によって変位することで、第1連結機構50aを変位させ、回転刈刃33の高さを調整する。
【0023】
(タカナの搬送および反転に関する機構)
図1及び図2に示すように、台座部31には、回転刈刃33によって刈り取られたタカナCMを搬送するための、搬送ベルト35および載置板37が取り付けられる。
搬送ベルト35は、左右一対に設けられる環状のベルトであり、環状の外側に向けて等間隔に設けられた突起を有する。それぞれの搬送ベルト35は、台座部31に固定されるベルト駆動部36が有する複数のVプーリに巻き掛けられ、後ろ上がりに傾斜した状態で前後に張られている。一対の搬送ベルト35の前端は回転刈刃33の中心を左右に挟む位置にあり、後端は前端よりも右側に位置する。各々の搬送ベルト35はベルト駆動部36に内燃機関の駆動力が伝達されることにより互いに逆方向に循環駆動する。回転刈刃33に茎部を切断されたタカナCMは、循環駆動する一対の搬送ベルト35に挟まれることにより後方に向けて搬送され、搬送ベルト末端では斜上後方に放出される。
【0024】
載置板37は、前後方向に長い板状の部材であり、搬送ベルト35により搬送されるタカナCMを下方から支持する。載置板37は、搬送ベルト35と略平行な姿勢で、平面視で2つの搬送ベルト35の間の空間を占める位置に設けられる。載置板37は、搬送ベルト35よりも下方に位置し、載置板37に茎部が載ったタカナCMの葉を搬送ベルト35が挟む程度の高さに設けられる。載置板37の左右両端は上方に向けて立ち上げられている。本実施の形態では、載置板37はタカナCMを滑らせやすい、鉄板によって構成される。
【0025】
載置板37の後端部(載置板37の終端の近傍)37aには、抵抗ローラ(下部抵抗体)37bが設けられる。後端部37aは、載置板37のうち他の部分よりも後ろ上がりの傾斜が僅かに小さく、僅かに水平に近い角度の部分である。抵抗ローラ37bは、搬送ベルト35の搬送方向に略直交する水平な方向を軸として回動可能なローラである。抵抗ローラ37bは、後端部37aの下面に形成された開口に位置し、抵抗ローラ37bの上側の概ね半分が開口を介して後端部37aの下面よりも上方に露出している。抵抗ローラ37bは、搬送ベルト35により載置板37上を後方に搬送されるタカナCMの茎部に接触し、茎部の搬送を遅らせることにより、タカナCMの葉を後方側に向けて傾ける。
【0026】
載置板37のうち、出口側である後端部37aには、第1シュート38が接続されている。第1シュート38は、載置板37の後端から後方且つ下方に向けて延びる板状の部材である。第1シュート38は、平面視で載置板37と平行に延びる。第1シュート38は、後端が右側の後輪12よりも右側に到達する位置まで延びる。第1シュート38の後端は、右側の後輪12が接地する畝溝R1と平面視で重なる。
【0027】
搬送ベルト35の出口の近傍には、掻き込み羽根(上部抵抗体)39が設けられる。掻き込み羽根39は、搬送ベルト35の搬送方向に略直交する水平な方向を軸として回動可能である。掻き込み羽根39は、掻き込み羽根39の回動の軸を中心として放射状に設けられた6枚の羽根39aを有する。各々の羽根39aは、ゴムまたはシリコン等の撓みやすい材料で形成された板である。各々の羽根39aは、掻き込み羽根39の回転軸と平行な向きに設けられる。掻き込み羽根39は、搬送ベルト35で放出され後方側に傾けられたタカナCMの葉に接触し、タカナCMの葉を下方に向けて掻き込む。このため、タカナCMは、茎部が上方側に位置する状態で第1シュート38を滑り落ちる。
【0028】
図5は、第2シュート40の斜視図であり、左前方から見た第2シュート40を示す。第1シュート38の出口側には、第1シュート38と対向する第2シュート40が設けられる。第2シュート40は、右側の後輪12が接地する畝溝R1と平面視で重なる。第2シュート40は、第1シュート38から滑り落ちるタカナCMを、茎部を上方向に向けて起立させた状態で畝溝R1に落とす。第2シュート40は、本体部41と、緩衝部43とを有する。
【0029】
本体部41は、上下に貫通する略円筒形状の部材に切り欠き41aおよび開口41bを設けた部材である。本体部41の内径は、タカナCMが通過できる程度の大きさである。切り欠き41aは、本体部41の側面のうち、前方側、すなわち、第1シュート38側に位置する部分に形成され、上方側に開放する切り欠きである。切り欠き41aは、本体部41の円周方向において、側面の概ね半周分に亘って形成される。切り欠き41aは、タカナCMが第1シュート38から第2シュート40内に滑り落ちる際の入り口となる。
【0030】
開口41bは、本体部41の側面において、切り欠き41aに対向する位置に設けられる。開口41bは、切り欠き41aよりも下方まで形成される。
【0031】
緩衝部43は、第2シュート40内に滑り落ちるタカナCMの勢いを接触によって弱める、円弧状に湾曲した板状部材である。緩衝部43は、開口41bを塞ぐように設けられ、第1シュート38と対向している。緩衝部43は、開口41bを形成する際に本体部41から切り出される部分とほぼ同じ形状である。緩衝部43は、上端に取り付けられたヒンジ45を介して本体部41に対して接続される。緩衝部43は、ヒンジ45を中心として、下部が前方側、すなわち、第1シュート38に近付く方向側に回動可能である。
【0032】
緩衝部43の下部は、前後に延びる圧縮ばね47により、前方側、すなわち、第1シュート38に近付く方向側、に向けて押し出される。圧縮ばね47は、一端を緩衝部43の下部の後面に接続され、他端を本体部41に形成されるバネ保持部41cに保持される。バネ保持部41cは、本体部41の側面の外側において、開口41bの上方から下方に延び、緩衝部43の後方おいて圧縮ばね47の他端を保持する。圧縮ばね47に前方に押し出された緩衝部43に対してタカナCMが接触することにより、タカナCMの落下の速度は低下する。本実施の形態では、圧縮ばね47はコイルばねである。
【0033】
本体部41には、平面視で緩衝部43に対向する位置にあり、緩衝部43よりも下方まで延びる案内部41dが形成されている。案内部41dは、本体部41のうち、切り欠かれていない側面である。案内部41dは、緩衝部43により前方側に押し出されたタカナCMに接触し、タカナCMを鉛直下方に向けて案内する。
【0034】
(タカナの収穫時における動作)
(タカナ収穫機の走行順)
図6は、タカナCMの収穫時におけるタカナ収穫機1の走行順を示した模式図である。図6に示すように、タカナ収穫機1は、いわゆる回り刈りによってタカナCMを収穫する。始めに、作業者は、圃場において枕地HLに囲まれた複数の畝Rのうち、最も外側の畝Rに沿ってタカナ収穫機1を走行させ、タカナCMを収穫する。このとき、タカナ収穫機1の進行方向は、タカナ収穫機1の右側に畝Rが位置しない方向Aとされる。次に、作業者は、枕地HLを経由して、最初にタカナCMを収穫した畝Rと反対側且つ最も外側の畝Rまでタカナ収穫機1を移動させる。その後、作業者は、方向Aの逆方向である方向Bに向けて、移動先の畝Rに沿ってタカナ収穫機1を走行させる。これにより、最も外側の2つの畝Rの外側に位置する2つの畝溝R1は、タカナCMが茎部を上方に向けた状態で並べられる。
【0035】
次に、作業者は、最初にタカナCMを収穫した畝Rの隣の畝Rに沿って、タカナ収穫機1を方向Aに向けて走行させる。その後、作業者は、2番目にタカナCMを収穫した畝Rの隣の畝Rに沿って、タカナ収穫機1を方向Bに向けて走行させる。このように、作業者は、外側の畝Rから順に、最も内側の畝RのタカナCMの収穫が完了するまで、渦状の走行路でタカナ収穫機1を走行させる。このような順序で収穫を行うことにより、収穫され、反転された状態で畝溝R1に並べられたタカナCMが、タカナ収穫機1および作業者の移動を妨げることが無くなる。
【0036】
(切断したタカナの搬送に関する動作)
図7は、回転刈刃33に刈り取られたタカナCMが反転して畝溝R1に並べられるまでの過程を示した図である。図7(a)に示すように、刈り取られたタカナCMは、載置板37の上に茎部を接した状態で、搬送ベルト35により葉を挟まれて後ろ上がりに搬送される。
【0037】
図7(b)に示すように、タカナCMが載置板37の後端部37aに到達すると、タカナCMの茎部には抵抗ローラ37bが後方側から接触する。これにより、搬送ベルト35に挟まれたタカナCMの葉の後方への移動速度に比べ、タカナCMの茎部の後方への移動速度が低くなる。このため、タカナCMは、葉が後方側に向かう方向に傾く。また、本実施の形態では抵抗ローラ37bはタカナCMの接触によって回動するため、タカナCMに過度な負荷を与えにくい。
【0038】
図7(c)に示すように、搬送ベルト35の後端から後方に送り出されたタカナCMは掻き込み羽根39に接触する。タカナCMは葉が後方側に向かう方向に傾いているため、掻き込み羽根39にはタカナCMの葉が接触する。掻き込み羽根39は、接触したタカナCMの葉を下方に向けて掻き込む。また、掻き込み羽根39は回転可能であり、各々の羽根39aはゴム等で形成されるため、タカナCMを掻き込む際にタカナCMを傷つけにくい。
【0039】
図7(d)に示すように、掻き込み羽根39により下方に向けて掻き込まれたタカナCMは、葉を後方且つ下方向に向け、茎部を前方且つ上方向に向けた姿勢で、第1シュート38を後方に滑り落ちる。
【0040】
図7(e)に示すように、第1シュート38の後端から後方に滑り落ちたタカナCMは、切り欠き41aを介して第2シュート40の内部に進入する。タカナCMの葉は、第2シュート40内において、第1シュート38と対向する位置に設けられた緩衝部43に接触する。これにより、後方に向かうタカナCMを緩衝部43で受け止め、タカナCMを起立させて、葉が下方に位置する姿勢で略鉛直下方に落下させることができる。また、緩衝部43は圧縮ばね47により前方に付勢される。このため、緩衝部43はタカナCMとの接触により後退し、タカナCMを傷つけずにタカナCMの落下速度を低下させる。なお、緩衝部43によりタカナCMが前方側に向けて跳ね返された場合でも、タカナCMは案内部41dに沿って略鉛直下方に落下する。
【0041】
第2シュート40から略鉛直下方に落下したタカナCMは、平面視で第2シュート40と重なる位置にある、右側の後輪12が接地する畝溝R1に対して、葉を下方に向けて落下する。これにより、回転刈刃33によって刈り取られたタカナCMは、畝溝R1に対して上下が反転した状態で並べられる。また、タカナCMの落下速度は緩衝部43によって低下しているため、落下時の衝撃でタカナCMの葉等が傷つきにくい。
【0042】
(効果等)
以上のように、本実施の形態のタカナ収穫機1は、タカナCMを回転刈刃33で刈り取り、タカナCMを載置板37で支持しながら、一対の搬送ベルト35により挟んで搬送し、タカナCMを畝溝R1に並べる農作物収穫機であって、載置板37の後端部37aに設けられ、タカナCMの茎部に搬送抵抗を与える抵抗ローラ37bと、搬送ベルト35の出口の近傍に設けられ、タカナCMの葉を掻き込む掻き込み羽根39と、を備え、抵抗ローラ37b及び掻き込み羽根39の協働により、タカナCMの上下を反転させて畝溝R1に並べる。
これにより、タカナ収穫機1により刈り取ったタカナCMを、上下を反転した状態で自動的に畝溝R1に対して並べることができる。
【0043】
また、本実施の形態のように、載置板37の出口に、下方に傾斜する第1シュート38と、第1シュート38と対向し、上下を反転した状態でタカナCMを起立させる第2シュート40と、を備え、第2シュート40を経て、タカナCMが畝溝に並べられる、構成としてもよい。
これにより、タカナ収穫機1により刈り取られたタカナCMは、畝溝に並べられた際に転げにくくなる。このため、タカナ収穫機1により刈り取ったタカナCMを、上下を反転した状態で畝溝R1に対して整然と並べることができる。
【0044】
また、本実施の形態のように、第2シュート40は、タカナCMが衝突する位置に緩衝部43を備える、構成としてもよい。
これにより、タカナCMの落下速度を低下させることができる。このため、タカナ収穫機1により刈り取ったタカナCMを損傷させることなく、上下を反転した状態で畝溝R1に対して整然と並べることができる。
【0045】
また、本実施の形態のように、下部抵抗体は、抵抗ローラ37bである構成としてもよい。これにより、簡素な構成で、下部抵抗体を構成できる。
【0046】
また、本実施の形態のように、上部抵抗体は、回転式の掻き込み羽根39である、構成としてもよい。これにより、簡素な構成で、上部抵抗体を構成できる。
(他の実施の形態)
【0047】
上記実施の形態では、本発明の農作物収穫機をタカナ収穫機1に適用した例を説明したが、これは一例に過ぎない。例えば、本発明の農作物収穫機は、タカナ以外の任意の葉菜を収穫するための装置に適用してもよい。
【0048】
上記実施の形態では、タカナ収穫機1は、内燃機関の駆動力をもとに動作すると説明したが、これは一例である。例えば、タカナ収穫機1は、バッテリまたは発電機から出力される電力によって各部を動作させてもよい。
【0049】
上記実施の形態では、圧縮ばね47はコイルばねであると説明したが、これは一例である。圧縮ばね47は、板ばね等のコイルばね以外のばねであってもよい。また、圧縮ばね47の代わりに、ゴムなどの弾性体がバネ保持部41cと緩衝部43とに接続されていてもよい。
【0050】
上記実施の形態では、前輪14は、タカナ収穫機1の左側面に設けられると説明したが、前輪14は、タカナ収穫機1の右側に設けられていてもよく、左右両側に設けられていてもよい。
【0051】
上記実施の形態では、下部抵抗体の一例として、抵抗ローラ37bを説明したが、これは一例である。下部抵抗体は、載置板37の終端付近において、タカナCMの茎部に搬送抵抗を与えることができる構造体であれば、任意の構造体を用いてもよい。また、抵抗ローラ37bは、内燃機関等からの駆動力により、駆動される構成であってもよい。
【0052】
上記実施の形態では、上部抵抗体の一例として、掻き込み羽根39を説明したが、これは一例である。上部抵抗体は、搬送ベルト35から後方に送り出されるタカナCMの葉を下方に掻き込むことができる構造物であれば、任意の構造体を用いてもよい。例えば、上部抵抗体は、吊り下げられたゴム状のシート(トラック等の泥除けに用いられる、いわゆるタレゴム)等であってもよい。また、掻き込み羽根39は、内燃機関からの駆動力等により、下半分が後方側に向かう方向(図7の紙面反時計方向)に駆動される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 タカナ収穫機(農作物収穫機)
33 回転刈刃(刈刃)
35 搬送ベルト
37 載置板
37a 後端部(載置板の終端の近傍)
37b 抵抗ローラ(下部抵抗体)
38 第1シュート
39 掻き込み羽根(上部抵抗体)
40 第2シュート
43 緩衝部
CM タカナ
R 畝
R1 畝溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7