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特開2025-38686センサ及び電気インピーダンストモグラフィシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025038686
(43)【公開日】2025-03-19
(54)【発明の名称】センサ及び電気インピーダンストモグラフィシステム
(51)【国際特許分類】
   G01L 1/14 20060101AFI20250312BHJP
【FI】
G01L1/14 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145439
(22)【出願日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(74)【代理人】
【識別番号】100163463
【弁理士】
【氏名又は名称】西尾 光彦
(72)【発明者】
【氏名】吉元 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】坂本 航士
(57)【要約】      (修正有)
【課題】導電性部材同士の接触抵抗の変動以外の現象を利用してEITが可能な新規のセンサを提供する。
【解決手段】センサ1aは、複数の電極10と、第一導電体20と、第二導電体30と、絶縁体40と、計測部5とを備えている。第一導電体20は、複数の電極10に接して配置されている。センサ1aにおいて、第一導電体20、絶縁体40、及び第二導電体30は、この順番で特定方向に積層されている。計測部5は、複数の電極10の電位を計測する。計測部5は、複数の電極10において電圧が印加される1つ以上の電極10を選択し、かつ、複数の電極10において電圧が印加される電極10を順次切り替えながら複数の電極10の電位を計測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極と、
前記複数の電極に接する第一導電体と、
第二導電体と、
絶縁体と、
前記複数の電極の電位を計測する計測部と、を備え、
前記第一導電体、前記絶縁体、及び前記第二導電体は、この順番で特定方向に積層されており、
前記複数の電極は、互いに離れて配置されており、
前記計測部は、前記複数の電極において電圧が印加される1つ以上の前記電極を選択し、かつ、前記複数の電極において電圧が印加される前記電極を順次切り替えながら前記複数の電極の電位を計測する、
センサ。
【請求項2】
前記センサは、前記計測部における前記複数の電極の電位の計測結果に基づいて、前記第一導電体及び前記第二導電体の少なくとも1つに対する物体の接触力を検出する、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記センサは、前記計測部における前記複数の電極の電位の計測結果に基づいて、前記センサの周囲の物体と前記第一導電体との間の距離を検出する、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記第一導電体は、多孔体である、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記絶縁体は、多孔体である、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
前記絶縁体は、10~30%の応力緩和率を有する、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
前記絶縁体は、0.01MPa~100GPaの圧縮弾性率を有する、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項8】
前記絶縁体は、10μm~100mmの厚みを有する、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項9】
前記第二導電体は、複数の貫通孔を有する、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載のセンサと、
前記センサから出力される信号が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記信号を処理して表示用データを生成する処理部と、
前記表示用データを表示する表示部と、を備えた、
電気インピーダンストモグラフィシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ及び電気インピーダンストモグラフィシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、触覚センサ等のセンサが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の電極と、導電性多孔体と、導電体と、計測部とを備えた、触覚センサが記載されている。導電性多孔体は、特定方向の導電体側の一端に形成された第一端部と、特定方向の他端に形成された第二端部とを有する。導電性多孔体の第一端部における導電率は、導電性多孔体の第二端部における導電率より高い。導電性多孔体及び導電体の少なくとも1つに物体が接触すると、導電性多孔体及び導電体の少なくとも1つの変形に伴い、導電性多孔体及び導電体が互いに接触し、導電性多孔体と導電体との間の接触抵抗の大きさが変動しうる。この接触抵抗の大きさの変動により、複数の電極の電位が変化しうる。このため、複数の電極の電位に基づいて、導電性多孔体及び導電体の少なくとも1つに対する物体の接触状態を測定できる。計測部は、複数の電極における1つ以上の電極を選択的に接地させ、かつ、接地させる電極を順次切り替えて、物体の接触状態を測定する。
【0004】
特許文献2には、圧力センサシートが記載されている。圧力センサシートにおいて、基板上に第一電極が形成されている。第一電極上に絶縁層が形成されている。絶縁層上に第二電極が形成されている。第二電極上に保護層が形成されている。絶縁層には諧調がある。絶縁層の階調は、材質の密度、硬度や弾性率、及びせん断強度のいずれかによるものである。第一電極と複数の第二電極との間で発生する静電容量値の変化を検出することにより、保護層上から加わるせん断力を算出できる。
【0005】
特許文献3には、静電容量型センサが記載されている。この静電容量型センサは、エラストマー製の誘電膜と、この誘電膜を介して配置されている一対の電極とを備えている。一対の電極は、エラストマーと、このエラストマーの中に配合されている導電性フィラーとを有する。一対の電極は、誘電膜の変形に応じて伸縮可能であり、伸縮しても導電性の変化が小さい。一対の電極間の静電容量変化に基づいて変形が検出される。
【0006】
特許文献4には、静電容量センサが記載されている。この静電容量センサは、検知電極と、静電容量検知回路と、制御回路とを備えている。検知電極は、被検知物体の近接によって静電容量が変化する。静電容量検知回路は、検知電極の静電容量を検知する。制御回路は、静電容量検知回路で検知された静電容量に基づいて被検知物体と検知電極との距離を検出する。制御回路は、被検知物体が測定開始点に位置しているときに静電容量検知回路で検出された第1の静電容量と、被測定物体を測定開始点から所定距離移動させた点に位置したときに静電容量検知回路で検出された第2の静電容量との差分値から、被検知物体の位置を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2023/080021号
【特許文献2】特開2020-46375号公報
【特許文献3】特開2009-20006号公報
【特許文献4】特開2008-46080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の触覚センサでは、導電性多孔体及び導電体の少なくとも1つの変形に伴い、導電性多孔体及び導電体が互いに接触し、導電性多孔体と導電体との間の接触抵抗の大きさが変動することを利用して、導電性多孔体及び導電体の少なくとも1つに対する物体の接触状態を測定できる。特許文献2から4に記載のセンサでは、電極に関する静電容量の変化に基づいて、せん断力、変形、及び被検知物体の位置等の物理状態がセンシングされている。これらの特許文献に記載のセンサは、導電性多孔体と導電体との間の接触抵抗の大きさの変動以外の現象を利用して電気インピーダンストモグラフィ(EIT)を実現する観点から再検討の余地を有する。
【0009】
そこで、本発明は、導電性部材同士の接触抵抗の変動以外の現象を利用してEITが可能な新規のセンサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
複数の電極と、
前記複数の電極に接する第一導電体と、
第二導電体と、
絶縁体と、
前記複数の電極の電位を計測する計測部と、を備え、
前記第一導電体、前記絶縁体、及び前記第二導電体は、この順番で特定方向に積層されており、
前記複数の電極は、互いに離れて配置されており、
前記計測部は、前記複数の電極において電圧が印加される1つ以上の前記電極を選択し、かつ、前記複数の電極において電圧が印加される前記電極を順次切り替えながら前記複数の電極の電位を計測する、
センサを提供する。
【0011】
また、本発明は、
上記のセンサと、
前記センサから出力される信号が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記信号を処理して表示用データを生成する処理部と、
前記表示用データを表示する表示部と、を備えた、
電気インピーダンストモグラフィシステムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
上記のセンサによれば、導電性部材同士の接触抵抗の変動以外の現象を利用してEITが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明に係るセンサの一例を示す平面図である。
図2図2は、図1のII-II線を切断線とするセンサの断面図である。
図3図3は、図1に示す計測部の構成を示す図である。
図4図4は、図1に示すセンサの原理を模式的に示す断面図である。
図5図5は、計測部の別の一例の構成を示す図である。
図6図6は、本発明に係るセンサの別の一例を示す断面図である。
図7図7に示すセンサ及び対象物Tの等価回路を示す図である。
図8図8は、本発明に係るEITシステムの一例を示す図である。
図9図9は、本発明に係るEITシステムにおける処理の一例を示すフローチャートである。
図10図10は、センサの中央部の感度の評価方法を示す図である。
図11図11は、センサの空間分解能の評価方法を示す図である。
図12図12は、センサの評価方法を示す図である。
図13図13は、センサを評価するシステムの構成を模式的に示す図である。
図14図14は、実施例14に係るセンサの出力信号の振幅と、対象物とセンサとの間の距離との関係を示すグラフである。
図15図15は、参考例に係るセンサの出力信号の振幅と、対象物とセンサとの間の距離との関係を示すグラフである。
図16図16は、実施例14に係るセンサの交流信号の振幅と、対象物とセンサとの間の距離との関係を示すグラフである。
図17図17は、実施例14に係るセンサの直流信号の大きさと、対象物とセンサとの間の接触力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、下記の説明は、本発明を例示的に説明するものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるわけではない。
【0015】
図1及び図2に示す通り、センサ1aは、複数の電極10と、第一導電体20と、第二導電体30と、絶縁体40と、計測部5とを備えている。第一導電体20は、複数の電極10に接して配置されている。センサ1aにおいて、第一導電体20、絶縁体40、及び第二導電体30は、この順番で特定方向(Z方向)に積層されている。複数の電極10は、互いに離れて配置されている。複数の電極10は、例えば、第一導電体20がなす特定方向に垂直な表面に沿って平面格子の格子点に対応する位置に互いに離れて配置されている。平面格子は、例えば、正方形格子、長方形格子、又は平行四辺形格子である。計測部5は、複数の電極10の電位を計測する。計測部5は、複数の電極10において電圧が印加される1つ以上の電極10を選択し、かつ、複数の電極10において電圧が印加される電極10を順次切り替えながら複数の電極10の電位を計測する。
【0016】
図3に示す通り、計測部5は、複数の配線51、A/Dコンバータ(ADC)53、及びマルチプレクサ(MUX)55を備えている。各配線51は、複数の電極10のいずれか1つに接続されている。加えて、複数の配線51は、複数の電極10とADC53との間で延びている。ADC53は、バス等の信号路によって処理部3と接続されうる。複数の配線51は、複数の電極10とADC53との間の特定位置で分岐してMUX55まで延びている。MUX55には、処理部3からの制御信号が入力されうる。MUX55には、交流電源70が接続されうる。
【0017】
図2に示す通り、第二導電体3は接地されている。図4に示す通り、例えば、何らかの物体が第一導電体20又は第二導電体30に接触すると、第一導電体20と第二導電体30との間の距離が変動し、第一導電体20と第二導電体30との間で静電容量の変化ΔCが生じる。例えば、MUX55によって複数の電極10における1つ以上の電極10が選択され、選択された電極10に交流電源70に起因する交流電圧が印加される。例えば、このようにして、計測部5において電圧が印加される1つ以上の電極10が選択される。ADC53は、特定の電極10への交流電圧の印加に伴い生じる複数の電極10の電位を示す信号を処理部3に出力する。MUX55によって交流電圧が印加される電極10が順次切り替えられながら、複数の電極10の電位を示す信号が処理部3に出力される。
【0018】
処理部3は、ADC53から取得した複数の電極10の電位を示す信号から静電容量の変化ΔCを算出する。例えば、下記の式(1)及び(2)に示す関係に基づいて静電容量の変化ΔCが算出される。式(1)及び(2)において、Vは、所定の基準に対する電極10の電圧であり、iは、特定の電圧調整条件における電極を特定する番号であり、kはメッシュ数であり、Cは静電容量密度であり、λはハイパーパラメータであり、Qは正規化行列である。
ΔC=(JTJ+λ2Q)-1TΔV 式(1)
i,k=∂Vi/∂Ck 式(2)
【0019】
センサ1aによれば、例えば、第一導電体20と第二導電体30との間で静電容量の変化ΔCを利用してEITを実現できる。このため、導電性部材同士の接触抵抗の変動以外の現象を利用してEITが可能である。
【0020】
センサ1aは、例えば、計測部5における複数の電極10の電位の計測結果に基づいて、第一導電体10及び第二導電体20の少なくとも1つに対する物体の接触力を検出する。上記の通り、センサ1aによれば、複数の電極10の電位を示す信号から静電容量の変化ΔCが計算される。静電容量の変化ΔCと、第一導電体10及び第二導電体20の少なくとも1つに対する物体の接触力との間には相関関係がある。このため、センサ1aは、この相関関係を利用して、複数の電極10の電位の計測結果に基づいて、第一導電体10及び第二導電体20の少なくとも1つに対する物体の接触力を検出できる。
【0021】
図2に示す通り、第一導電体20は、例えば、多孔体である。この場合、感度、誤差、及び分解能等のセンサ1aの特性を高める観点から、第一導電体20が所望の特性を有しやすい。第一導電体20は、例えば、導電性発泡ゴムであってよいし、導電性樹脂多孔体であってもよい。導電性発泡ゴムに含まれるゴムの例はエチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム及びクロロプレンゴムである。導電性樹脂多孔体の例は、導電性ウレタンフォームである。第一導電体20は非多孔体であってもよい。
【0022】
第一導電体20の導電率は特定の値に限定されない。第一導電体20の導電率は、例えば0.0001~1000S/mである。これにより、センサ1aを用いたセンシングに適した交流電圧の周波数が低くなりやすく、センサ1aの取扱いが容易になりやすい。第一導電体20の導電率は、望ましくは0.01~100S/mであり、より望ましくは0.1~10S/mである。第一導電体20の導電率が低いと、電極10に印加される交流電圧の周波数を低くしやすい。
【0023】
第一導電体20は、例えば、シート状又はフィルム状である。第一導電体20の厚みは特定の値に限定されない。その厚みは、例えば、10μm~10mmである。その厚みは、20μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、又は500μm以上であってもよく、5mm以下又は2mm以下であってもよい。
【0024】
第一導電体20の表面抵抗率は特定の値に限定されない。この表面抵抗率は、例えば、0.01~100kΩ/sq.である。この表面抵抗率は、0.05kΩ/sq.以上、0.1kΩ/sq.以上、0.2kΩ/sq.以上、又は0.3kΩ/sq.以上であってもよく、50kΩ/sq.以下、20kΩ/sq.以下、又は15kΩ/sq.以下であってもよい。
【0025】
第一導電体20の圧縮弾性率は特定の値に限定されない。この圧縮弾性率は、例えば、0.1~20MPaである。この圧縮弾性率は、0.2MPa以上又は0.5MPa以上であってもよく、15MPa以下、10MPa以下、又は5MPa以下であってもよい。圧縮弾性率は、例えば、日本産業規格(JIS)K7181:2011に従って決定できる。
【0026】
第二導電体30は、例えば、非多孔体である。第二導電体30は、例えば、シート状又はフィルム状である。第二導電体30の厚みは特定の値に限定されない。その厚みは、例えば0.01mm~20mmである。その厚みは、0.02mm以上、0.05mm以上、又は0.1mm以上であってもよく、20mm以下、10mm以下、5mm以下、1mm以下、又は0.1mm以下であってもよい。第二導電体30は、例えば、導電ゴムである。
【0027】
絶縁体40は、例えば、多孔体である。この場合、例えば、第一導電体20又は第二導電体30に物体が接触したときに、その物体の接触に伴い絶縁体40に作用する外力に応じて絶縁体40が変形しやすい。加えて、第一導電体20又は第二導電体30と物体との接触が生じた箇所で局所的な変形が生じやすい。これにより、絶縁体40に作用する外力の大きさと静電容量の変化ΔCとが所望の相関関係を有しやすく、外部の物体と接触するセンサ1aの接触面が柔軟になりやすく、その接触面の圧力分布の検出が容易になりやすい。絶縁体40は、非多孔体であってもよい。
【0028】
絶縁体40の応力緩和率は特定の値に限定されない。この応力緩和率は、例えば、10~30%である。この場合、第一導電体20又は第二導電体30への物体の接触に伴って作用する外力の大きさに応じて絶縁体40が所望の状態で変形しやすい。このため、接触面の圧力分布の検出がより容易になりやすい。応力緩和率は、例えば、実施例に記載の方法に従って決定できる。
【0029】
絶縁体40の圧縮弾性率は特定の値に限定されない。この圧縮弾性率は、例えば、0.01MPa~100GPaの圧縮弾性率を有する。これにより、第一導電体20又は第二導電体30への物体の接触に伴って作用する外力の大きさに応じて絶縁体40が所望の状態で変形しやすい。このため、接触面の圧力分布の検出がより容易になりやすい。圧縮弾性率は、JIS K7181:2011に従って決定できる。
【0030】
絶縁体40の圧縮弾性率は、0.05MPa以上又は0.1MPa以上であってもよい。絶縁体40の圧縮弾性率は、50GPa以下、20GPa以下、又は10GPa以下であってもよい。
【0031】
絶縁体40は、例えば、シート状又はフィルム状である。絶縁体40の厚みは特定の値に限定されない。この厚みは、例えば、10μm~100mmである。これにより、第一導電体20又は第二導電体30への物体の接触に伴って作用する外力の大きさに応じて絶縁体40が所望の状態で変形しやすい。このため、接触面の圧力分布の検出がより容易になりやすい。
【0032】
絶縁体40の厚みは、50μm以上、100μm以上、500μm以上、又は1mm以上であってもよく、50mm以下、20mm以下、10mm以下、又は5mm以下であってもよい。
【0033】
絶縁体40の導電率は、例えば1.0×10-6S/m以下である。絶縁体40は、例えばウレタンフォームである。
【0034】
絶縁体40の比誘電率は特定の値に限定されない。その比誘電率は、例えば、1以上であり、2以上であってもよく、10000以下、1000以下、100以下、又は10以下であってもよい。絶縁体40の比誘電率が高いと、電極10に印加される交流電圧の周波数を低くしやすい。
【0035】
センサ1aは、様々な観点から変更可能である。例えば、センサ1aにおいて、計測部5は、複数の電極10とADC53との間で複数の配線51が接続された二乗検波回路56をさらに備えていてもよい。例えば、高周波の計測のためにADC53の高性能化が必要になる場合でも、計測部5が二乗検波回路56を備えることにより、ADC53に高い性能が求められることを回避でき、センサ1aの製造コストが低くなりやすい。また、二乗検波回路56がない場合に比べて、センサ1aを小型化しやすい。
【0036】
センサ1aは、図6に示すセンサ1bのように変更されていてもよい。センサ1bは、特に説明する部分を除き、センサ1aと同様に構成されている。センサ1aの構成要素と同一又は対応するセンサ1bの構成要素には同一の符号を付し詳細な説明を省略する。センサ1aに関する説明は技術的に矛盾しない限り、センサ1bにもあてはまる。
【0037】
センサ1bは、例えば、計測部5における複数の電極10の電位の計測結果に基づいて、センサ1bの周囲の物体と第一導電体20との間の距離を検出する。図6に示す通り、センサ1bにおいて、所定の導電性を有する物体Tがセンサ1bの第一導電体20に向かって接近すると、物体Tと第一導電体20との間で静電容量の変化ΔCが生じる。図7は、センサ1b及び物体Tの等価回路を示す。例えば、センサ1bによれば、複数の電極10の電位を示す信号からこの静電容量の変化ΔCが算出される。物体Tと第一導電体20との間の距離、静電容量の変化ΔCとの間には相関関係がある。このため、センサ1bは、この相関関係を利用して、複数の電極10の電位の計測結果に基づいて、センサ1bの周囲の物体Tと第一導電体20との間の距離を検出できる。また、物体Tと第一導電体20との間での静電容量の変化ΔCを利用してEITを実現できる。
【0038】
図6に示す通り、センサ1bにおいて、第二導電体30は、複数の貫通孔32を有する。センサ1bにおいて、第二導電体30には直流電圧が印加されうる。この場合、第二導電体30が貫通孔32を有していないと第二導電体30によって電界遮蔽が生じ、複数の電極10の電位の計測結果に基づいた静電容量の変化ΔCの算出が困難になる。一方、第二導電体30が複数の貫通孔32を有することにより、物体Tと第一導電体20との間で静電容量結合が生じ、物体Tと第二導電体30との間の距離の変動により静電容量の変化ΔCを生じさせることができる。その結果、静電容量の変化ΔCを利用してEITを実現できる。
【0039】
複数の貫通孔32に起因する第二導電体30の開口率は特定の値に限定されない。その開口率は、例えば1~50%であり、1~45%又は1~40%であってもよい。
【0040】
貫通孔32の大きさは特定の値に限定されない。貫通孔32の直径は、例えば0.5~50mmであり、1mm~40mm、1mm~30mm、1mm~20mm、又は1mm~10mmであってもよい。第二導電体30の平面視で、貫通孔32は、円形であってもよいし、正方形であってもよいし、その他の多角形状であってもよい。
【0041】
第二導電体30における複数の貫通孔32の配置は特定の配置に限定されない。例えば、複数の貫通孔32の中心は、第二導電体30の平面視で平面格子の格子点に対応する位置に位置している。平面格子は、正方形格子、長方形格子、又は平行四辺形格子である。
【0042】
センサ1bにおいて、物体Tが第二導電体30に接触して第二導電体30が変形して、第一導電体20に接触すると、物体Tと第二導電体30との接触状態に応じて、第二導電体30と第一導電体20との間の接触抵抗が変動しうる。例えば、第二導電体30に直流電圧を印加しつつ、計測部5によって複数の電極10において交流電圧が印加される電極を順次切り替えて、複数の電極10の電位を計測する。これにより、第二導電体30と第一導電体20との間の接触抵抗の変動を利用したEITが可能となる。このようにセンサ1bによれば、物体Tと第一導電体20との間での静電容量の変化ΔC及び第二導電体30と第一導電体20との間の接触抵抗の変動を利用したEITを実現できる。
【0043】
上記の通り、物体Tと第二導電体30との接触状態に応じて、第二導電体30と第一導電体20との間の接触抵抗が変動する場合、絶縁体40は、例えば、特定方向(Z方向)に延びる空隙42を有する。このような構成によれば、第一導電体20又は第二導電体30の少なくとも1つに物体が接触したときに、物体との接触部の近くの空隙42において第一導電体20と第二導電体30とが接触しうる。物体との接触部から離れた空隙42では、第一導電体20と第二導電体30とは接触しない。絶縁体40は、例えば、絶縁材料製の多孔体、メッシュ、織布、又は不織布であってもよい。
【0044】
例えば、センサ1a又は1bを備えたEITシステムを提供できる。図8に示す通り、EITシステム100は、例えば、センサ1aと、入力部4と、処理部3と、表示部6とを備えている。入力部4には、センサ1aから出力される信号Sが入力される。処理部3は、入力部4に入力された信号Sを処理して表示用データDeを生成する。表示部6は、処理部3によって生成された表示用データDeを表示する。
【0045】
入力部4は、信号Sを処理部3に転送できる限り、特定の構成に限定されない。入力部4は、Universal Serial Bus(USB)等の有線通信の規格に対応したモジュールであってもよいし、Bluetooth及びWi-Fi等の無線通信の規格に対応したモジュールであってもよい。Bluetooth及びWi-Fiは、登録商標である。
【0046】
処理部3は、信号Sを処理して表示用データDeを生成できる限り、特定の構成に限定されない。図8に示す通り、処理部3は、主記憶装置3aと、中央処理装置(CPU)3bとを備えている。入力部4から主記憶装置3aに信号Sが転送される。その後、主記憶装置3aとCPU3bとの協働により、表示用データDeを生成するためのプログラムが実行されて信号Sが処理され、表示用データDeが生成される。
【0047】
表示用データDeは、主記憶装置3aから表示部6に転送され、表示部6で表示される。表示部6は、表示用データDeを表示できる限り、特定の構成に限定されない。表示部6は、液晶ディスプレイ(LCD)及び有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイであってもよいし、プロジェクターであってもよいし、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)であってもよい。
【0048】
表示データDeは、信号Sが処理されて生成される限り特定のデータに限定されない。表示データDeは、例えば、第一導電体20及び第二導電体30の少なくとも1つに対する物体の接触力の分布を示すデータであってもよいし、周囲の物体Tと第二導電体30との間の距離を示すデータであってもよい。表示データDeは、例えば、センサ1a又は1bのセンシングのための面における圧力分布を示すデータを含む。この場合、圧力分布を示すデータから触覚センサ1aに接触している物体の接触部に対応する座標を特定し、その座標に対応する位置にその物体を模したイメージが配置されるように表示データDeが生成されてもよい。また、圧力分布を示すデータからヒートマップのデータを作成し、このデータを色に関するデータに変換することによって、ヒートマップのイメージデータとして表示データDeが生成されてもよい。
【0049】
図8に示す通り、EITシステム100は、例えば、2つのセンサ1aを備えている。この場合、例えば、2つのセンサ1aから得られた信号Sを処理して表示用データDeが生成されてもよい。EITシステム100は、1つのみのセンサ1aを備えていてもよいし、3以上のセンサ1aを備えていてもよい。EITシステム100は、センサ1bを備えていてもよい。
【0050】
図9は、EITシステム100における処理の一例を示すフローチャートである。図9に示す通り、EITシステム100における処理が開始されると、例えば、ステップS1において、センサ1aによる測定が行われ、センサ1aの測定結果を示す信号Sが取得される。信号Sは、センサ1aから入力部4に入力され、入力部4から処理部3の主記憶装置3aに転送される。次に、ステップS2において、処理部3は、信号Sを処理して表示用データDeを生成する。その後、ステップS3において、表示用データDeが表示部6に表示される。ステップS1~S3の処理は、終了コマンドが入力されるまで繰り返される。
【実施例0051】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0052】
<実施例1>
イノアックコーポレーション社製の導電性ゴムスポンジE‐4385から1mmの厚みを有する導電体シートA1を作製した。E‐4385は、EPDMゴムを主成分とした発泡体であり、導電体シートA1の表面抵抗率は、0.38kΩ/sq.であった。導電体シートA1から作製した試料を用いて、JIS K7181:2011に従って導電体シートA1の圧縮弾性率を測定した。結果を表1に示す。導電体シートA1は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0053】
イノアックコーポレーション社製のウレタンフォームMF‐50から10mmの厚みを有する絶縁体シートB1を作製した。絶縁体シートB1から作製した試料を用いてJIS K7181:2011に従って絶縁体シートB1の圧縮弾性率を測定した。結果を表1に示す。また、絶縁体シートB1から作製した試料を用いて島津製作所社製の試験機オートグラフAG5000Eを用いて圧縮モードでの応力緩和試験を23℃の環境で行った。その試験の結果に基づいて絶縁体シートB1の応力緩和率を求めた。結果を表1に示す。絶縁体シートB1は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0054】
信越化学工業社製の導電性シリコーンシートEC‐20BHから0.2mmの厚みを有する導電体シートC1を作製した。導電体シートC1は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0055】
導電体シートA1の厚み方向に、導電体シートA1、絶縁体シートB1、及び導電体シートC1をこの順番で積層した。導電体シートA1と絶縁体シートB1とを両面テープで接合し、絶縁体シートB1と導電体シートC1とを両面テープで接合した。このようにして実施例1に係る積層体を得た。
【0056】
平面視で1辺の長さが60mmである正方形内に、5mmの直径を有する16個の電極が正方格子の格子点上に配置された電極基板の上に実施例1に係る積層体を配置し、16個の電極と導電体シートA1とを接触させた。この状態で、電極と導電体シートA1とをCircuit Works社が提供する導電性接着剤CW2401によって接合した。電極基板には、16個の電極と電気的に接続された配線がまとめられたコネクタが設けられていた。このコネクタと、図5に示す構成を有する計測回路を接続した。計測回路にはマルチプレクサが含まれており、16個の電極の中から交流電圧が印加される電極が順次切り替えられるように構成されていた。このようにして、実施例1に係るセンサが得られた。
【0057】
XYステージ上に実施例1に係るセンサを固定した。さらに、オリエンタルモーター社製の直動アクチュエータDRLM42G-04A2P-Kに、テック技販社製の力覚センサUSL06-H5-50N-A及び直径10mmの接触子を取り付けた。実施例1に係るセンサの積層体の導電体シートC1の中心に接触子を接触させ、0~7Nの範囲の力を加えた。計測回路によって、実施例1に係るセンサの16個の電極に交流電圧を順次印加して、16個の電極の電位を示す信号を取得した。得られた信号から計測回路に接続されたパーソナルコンピュータ(PC)で式(1)及び式(2)の関係に基づいて、導電体シートA1と導電体シートC1との間の静電容量の分布を求めた。
【0058】
(中央部の感度)
得られた静電容量分布において中央部に加えられた力(x)及び算出された中央部の静電容量(y)との関係をプロットし、グラフを得た。図10に示す通り、このグラフから近似関数y=ax/(b-cx)を求めるフィッテイングを行った。a、b、及びcは定数である。この関数におけるa/cの値を中央部の感度と決定した。結果を表1に示す。a/cの値が大きいほど中央部の感度が良い。
【0059】
(位置誤差)
導電体シートC1の中心に7Nの力を加えたときに、静電容量分布の極大値を取る位置の導電体シートC1の中心までの距離を特定し、この距離を位置誤差と決定した。結果を表1に示す。センサにおいて位置誤差が小さいほど良い。
【0060】
(空間分解能)
導電体シートC1の中心に7Nの力を加えたときに、図11に示す通り、導電体シートC1の中心を通る中心線における正規化出力とその中心線上の正規化位置との関係を示すグラフから標準偏差を求め、空間分解能を評価した。結果を表1に示す。センサにおいて空間分解能が小さいほど良い。
【0061】
<実施例2>
イノアックコーポレーション社製の導電性ゴムスポンジC‐4255から1mmの厚みを有する導電体シートA2を作製した。C‐4255は、クロロプレンゴムを主成分とした発泡体であり、導電体シートA2の表面抵抗率は、0.88kΩ/sq.であった。導電体シートA2から作製した試料を用いて、JIS K7181:2011に従って導電体シートA2の圧縮弾性率を測定した。結果を表1に示す。導電体シートA2は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0062】
導電体シートA1の代わりに導電体シートA2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2に係るセンサを得た。実施例1に係るセンサと同様にして、実施例2に係るセンサの中央部の感度、位置誤差、及び空間分解能を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
<実施例3>
サンワサプライ社製の導電性ポリウレタンスポンジTK‐2から1mmの厚みを有する導電体シートA3を作製した。導電体シートA3の表面抵抗率は、12kΩ/sq.であった。導電体シートA3から作製した試料を用いて、JIS K7181:2011に従って導電体シートA3の圧縮弾性率を測定した。結果を表1に示す。導電体シートA3は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0064】
導電体シートA1の代わりに導電体シートA3を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3に係るセンサを得た。実施例1に係るセンサと同様にして、実施例3に係るセンサの中央部の感度、位置誤差、及び空間分解能を評価した。結果を表1に示す。
【0065】
<実施例4>
ホーザン社製の導電性ポリウレタンフォームF‐10から1mmの厚みを有する導電体シートA4を作製した。導電体シートA4の表面抵抗率は、2.5kΩ/sq.であった。導電体シートA4から作製した試料を用いて、JIS K7181:2011に従ってF‐10の圧縮弾性率を測定した。結果を表1に示す。導電体シートA4は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0066】
導電体シートA1の代わりに導電体シートA4を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4に係るセンサを得た。実施例1に係るセンサと同様にして、実施例4に係るセンサの中央部の感度、位置誤差、及び空間分解能を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
<実施例5>
エンジニア社製の導電性バッグZC86から0.05mmの厚みを有する導電体シートA5を作製した。導電体シートA5の表面抵抗率は、5kΩ/sq.であった。ZC86は、カーボン入のポリエチレン製であった。
【0068】
導電体シートA1の代わりに導電体シートA5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5に係るセンサを得た。実施例1に係るセンサと同様にして、実施例5に係るセンサの中央部の感度、位置誤差、及び空間分解能を評価した。結果を表1に示す。
【0069】
<実施例6>
日東電工社製のEPDM発泡体No.6800から3mmの厚みを有する絶縁体シートB2を作製した。絶縁体シートB1と同様にして、絶縁体シートB2の圧縮弾性率及び応力緩和率を測定した。結果を表2に示す。絶縁体シートB2は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0070】
絶縁体シートB1の代わりに絶縁体シートB2を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例6に係るセンサを得た。実施例1に係るセンサと同様にして、実施例6に係るセンサの中央部の感度、位置誤差、及び空間分解能を評価した。結果を表2に示す。
【0071】
<実施例7>
イノアックコーポレーション社製のウレタンフォームMF‐30から3mmの厚みを有する絶縁体シートB3を作製した。絶縁体シートB1と同様にして、絶縁体シートB3の圧縮弾性率及び応力緩和率を測定した。結果を表2に示す。絶縁体シートB3は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0072】
絶縁体シートB1の代わりに絶縁体シートB3を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例7に係るセンサを得た。実施例1に係るセンサと同様にして、実施例7に係るセンサの中央部の感度、位置誤差、及び空間分解能を評価した。結果を表2に示す。
【0073】
<実施例8>
ウレタンフォームMF‐80から3mmの厚みを有する絶縁体シートB4を作製した。絶縁体シートB1と同様にして、絶縁体シートB4の圧縮弾性率及び応力緩和率を測定した。結果を表2に示す。絶縁体シートB4は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0074】
絶縁体シートB1の代わりに絶縁体シートB4を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例8に係るセンサを得た。実施例1に係るセンサと同様にして、実施例8に係るセンサの中央部の感度、位置誤差、及び空間分解能を評価した。結果を表2に示す。
【0075】
<実施例9>
ウレタンフォームMF‐50から1mmの厚みを有する絶縁体シートB5を作製した。絶縁体シートB1と同様にして、絶縁体シートB5の圧縮弾性率及び応力緩和率を測定した。結果を表2に示す。絶縁体シートB5は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0076】
絶縁体シートB1の代わりに絶縁体シートB5を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例9に係るセンサを得た。実施例1に係るセンサと同様にして、実施例9に係るセンサの中央部の感度、位置誤差、及び空間分解能を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
<実施例10>
ウレタンフォームMF‐80から5mmの厚みを有する絶縁体シートB6を作製した。絶縁体シートB1と同様にして、絶縁体シートB6の圧縮弾性率及び応力緩和率を測定した。結果を表2に示す。絶縁体シートB6は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0078】
絶縁体シートB1の代わりに絶縁体シートB6を用いたこと以外は、実施例2と同様にして、実施例10に係るセンサを得た。実施例1に係るセンサと同様にして、実施例10に係るセンサの中央部の感度、位置誤差、及び空間分解能を評価した。結果を表2に示す。
【0079】
<実施例11>
イノアックコーポレーション社製の導電性ゴムスポンジC‐4255から1mmの厚みを有する導電体シートα1を作製した。導電体シートα1の表面抵抗率は0.88kΩ/sq.であった。導電体シートα1から作製した試料を用いて、JIS K7181:2011に従って導電体シートα1の圧縮弾性率を測定した。結果を表1に示す。導電体シートα1は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0080】
東レ・デュポン社製のポリイミドフィルム50Hから0.0125mmの厚みを有する絶縁体シートβ1を作製した。絶縁体シートβ1は、平面視で1辺の長さが60mmである正方形状であった。
【0081】
信越化学工業社製の導電性シリコーンシートEC‐20BHに直径2mmの複数の貫通孔を所定の間隔で形成し、0.2mmの厚みを有する導電体シートγ1を作製した。導電体シートγ1における開口率は2%であった。
【0082】
導電体シートα1の厚み方向に、導電体シートα1、絶縁体シートβ1、及び導電体シートγ1をこの順番で積層した。導電体シートα1と絶縁体シートβ1とを両面テープで接合し、絶縁体シートβ1と導電体シートγ1とを両面テープで接合した。このようにして実施例11に係る積層体を得た。
【0083】
平面視で1辺の長さが60mmである正方形内に、5mmの直径を有する16個の電極が正方格子の格子点上に配置された電極基板上に実施例11に係る積層体を配置し、16個の電極と導電体シートA1とを接触させた。この状態で、電極と導電体シートA1とをCircuit Works社が提供する導電性接着剤CW2401によって接合した。電極基板には、16個の電極と電気的に接続された配線がまとめられたコネクタが設けられていた。このコネクタと、図5に示す構成を有する計測回路を接続した。計測回路にはマルチプレクサが含まれており、16個の電極の中から交流電圧が印加される電極が順次切り替えられるように構成されていた。このようにして、実施例11に係るセンサが得られた。
【0084】
XYステージ上に実施例11に係るセンサを固定した。さらに、図12に示すように、直動アクチュエータに検出対象であるアルミニウム板を取り付けた。アルミニウム板は、設置されており、平面視で1辺の長さが30mm又は60mmの正方形状であった。また、直動アクチュエータにレーザー変位計を固定した。これにより、図13に示す、実施例11に係るセンサを評価するためのシステムを構成した。
【0085】
直動アクチュエータによって実施例11に係るセンサの積層体である検出部に対してアルミニウム板を近づけたり遠ざけたりした。計測回路によって、実施例11に係るセンサの16個の電極のうち1つに交流電圧を順次印加して、その他の1つの電極からの出力信号を取得した。また、レーザー変位計によって、アルミニウム板と検出部との間の距離を測定した。レーザー変位計によって測定されたアルミニウム板と検出部との間の距離と、出力信号の振幅の大きさとを座標にプロットしてグラフを作成した。座標の縦軸が振幅の値を示し、座標の横軸がレーザー変位計によって測定されたアルミニウム板と検出部との間の距離を示すように定めた。図7に示す等価回路から導かれる入力と出力との関係式に基づいて、得られたグラフの近似曲線を求めた。得られた近似曲線と、この近似曲線を得るために用いられたデータから正規化された二乗平均平方根誤差(NRMSD)を求めた。結果を表1に示す。
【0086】
<実施例12>
信越化学工業社製の導電性シリコーンシートEC‐20BHに直径4mmの複数の貫通孔を所定の間隔で形成し、0.2mmの厚みを有する導電体シートγ2を作製した。導電体シートγ2における開口率は9%であった。
【0087】
導電体シートγ1の代わりに導電体シートγ2を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、実施例12に係るセンサを作製した。実施例12に係るセンサを実施例11と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0088】
<実施例13>
信越化学工業社製の導電性シリコーンシートEC‐20BHに直径6mmの複数の貫通孔を所定の間隔で形成し、0.2mmの厚みを有する導電体シートγ3を作製した。導電体シートγ3における開口率は20%であった。
【0089】
導電体シートγ1の代わりに導電体シートγ3を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、実施例13に係るセンサを作製した。実施例13に係るセンサを実施例11と同様にして評価した。結果を表3に示す。
【0090】
<実施例14>
信越化学工業社製の導電性シリコーンシートEC‐20BHに直径8mmの複数の貫通孔を所定の間隔で形成し、0.2mmの厚みを有する導電体シートγ4を作製した。導電体シートγ4における開口率は35%であった。
【0091】
導電体シートγ1の代わりに導電体シートγ4を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、実施例14に係るセンサを作製した。実施例14に係るセンサを実施例11と同様にして評価した。結果を表3に示す。実施例14に係るセンサの出力信号の振幅と、レーザー変位計によって測定されたアルミニウム板と検出部との間の距離を示すグラフを図14に示す。
【0092】
直動アクチュエータによって実施例14に係るセンサの積層体である検出部に対してアルミニウム板を近づけたり遠ざけたりした。また、アルミニウム板を近づけた後にアルミニウム板を検出部に接触させ、5Nまで力を加えた。計測回路によって、実施例14に係るセンサの16個の電極のうち1つに交流電圧を印加して、その他の1つの電極からの出力信号を取得した。また、レーザー変位計によって、アルミニウム板と検出部との間の距離を測定した。図16に示すように、レーザー変位計によって測定されたアルミニウム板と検出部との間の距離と、交流信号の振幅の大きさとを座標にプロットしてグラフを作成した。座標の縦軸が交流信号の振幅の値を示し、座標の横軸がレーザー変位計によって測定されたアルミニウム板と検出部との間の距離を示すように定めた。
【0093】
加えて、ロードセルによって、アルミニウム板と検出部との垂直方向の接触力を測定した。図17に示すように、ロードセルによって測定されたアルミニウム板と検出部の接触力と、直流信号の大きさとを座標にプロットしてグラフを作成した。座標の縦軸が直流信号の値を示し、座標の横軸がロードセルによって測定されたアルミニウム板と検出部との接触力を示すように定めた。
【0094】
<参考例>
信越化学工業社製の導電性シリコーンシートEC‐20BHに貫通孔を形成せずに、0.2mmの厚みを有する導電体シートγ5を作製した。
【0095】
導電体シートγ1の代わりに導電体シートγ5を用いたこと以外は、実施例11と同様にして、参考例に係るセンサを作製した。参考例に係るセンサを実施例11と同様にして評価した。参考例に係るセンサの出力信号の振幅とレーザー変位計によって測定されたアルミニウム板と検出部との間の距離を示すグラフを図15に示す。
【0096】
図14図15との対比によれば、複数の貫通孔が形成された導電体シートを用いることによってアルミニウム板と検出部との間の距離の変動によって、センサの出力信号の大きさが変動し、センサが対象物との距離を検出できることが示唆された。
【0097】
図16に示す通り、アルミニウム板と検出部とが接触することによって交流信号の振幅の変動が大きくなっており、これを利用して、検出部への対象物の接触を検出できることが示唆された。図17に示す通り、アルミニウム板と検出部の接触力の大きさに応じて直流信号の出力が変動しており、これを利用して、検出部と対称物との接触力を測定できることが示唆された。
【0098】
【表1】
【0099】
【表2】
【0100】
【表3】
【0101】
本発明の第1側面は、
複数の電極と、
前記複数の電極に接する第一導電体と、
第二導電体と、
絶縁体と、
前記複数の電極の電位を計測する計測部と、を備え、
前記第一導電体、前記絶縁体、及び前記第二導電体は、この順番で特定方向に積層されており、
前記複数の電極は、互いに離れて配置されており、
前記計測部は、前記複数の電極において電圧が印加される1つ以上の前記電極を選択し、かつ、前記複数の電極において電圧が印加される前記電極を順次切り替えながら前記複数の電極の電位を計測する、
センサを提供する。
【0102】
本発明の第2側面は、
前記センサは、前記計測部における前記複数の電極の電位の計測結果に基づいて、前記第一導電体及び前記第二導電体の少なくとも1つに対する物体の接触力を検出する、
第1側面に係るセンサを提供する。
【0103】
本発明の第3側面は、
前記センサは、前記計測部における前記複数の電極の電位の計測結果に基づいて、前記センサの周囲の物体と前記第一導電体との間の距離を検出する、
第1側面に係るセンサを提供する。
【0104】
本発明の第4側面は、
前記第一導電体は、多孔体である、
第1側面から第3側面のいずれか1つに係るセンサを提供する。
【0105】
本発明の第5側面は、
前記絶縁体は、多孔体である、
第1側面から第4側面のいずれか1つに係るセンサを提供する。
【0106】
本発明の第6側面は、
前記絶縁体は、10~30%の応力緩和率を有する、
第1側面から第5側面のいずれか1つに係るセンサを提供する。
【0107】
本発明の第7側面は、
前記絶縁体は、0.01MPa~100GPaの圧縮弾性率を有する、
第1側面から第6側面のいずれか1つに係るセンサを提供する。
【0108】
本発明の第8側面は、
前記絶縁体は、10μm~100mmの厚みを有する、
第1側面から第7側面のいずれか1つに係るセンサを提供する。
【0109】
本発明の第9側面は、
前記第二導電体は、複数の貫通孔を有する、
第1側面から第8側面のいずれか1つに係るセンサを提供する。
【0110】
本発明の第10側面は、
第1側面から第9側面のいずれか1つに係るセンサと、
前記センサから出力される信号が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記信号を処理して表示用データを生成する処理部と、
前記表示用データを表示する表示部と、を備えた、
電気インピーダンストモグラフィシステムを提供する。
【符号の説明】
【0111】
1a、1b センサ
3 処理部
4 入力部
5 計測部
6 表示部
10 電極
20 第一導電体
30 第二導電体
32 貫通孔
40 絶縁体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17