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特開2025-3967窒化シリコン膜を選択的にエッチングするための組成物及び方法
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  • 特開-窒化シリコン膜を選択的にエッチングするための組成物及び方法 図1
  • 特開-窒化シリコン膜を選択的にエッチングするための組成物及び方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025003967
(43)【公開日】2025-01-14
(54)【発明の名称】窒化シリコン膜を選択的にエッチングするための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20250106BHJP
   H01L 21/308 20060101ALI20250106BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L21/308 E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024155223
(22)【出願日】2024-09-09
(62)【分割の表示】P 2023505897の分割
【原出願日】2021-07-29
(31)【優先権主張番号】63/058,663
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビロドウ, スティーヴン エム.
(72)【発明者】
【氏名】クーパー, エマニュエル アイ.
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト, ダニエラ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二酸化シリコン及びポリシリコンの存在下で、窒化シリコン膜を選択的にエッチングするための組成物及び方法を提供する。
【解決手段】マイクロ電子デバイスの表面をエッチングするためのウェットエッチング組成物は、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン及びシリコンよりも電気化学的に貴な化合物を含む表面と接触しているポリシリコン並びに任意選択で、マイクロ電子デバイスにおいて有用な導電性材料、半導体性材料若しくは絶縁材料又はマイクロ電子デバイスの作製において有用な処理材料を含む他の材料を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電子デバイス基板上の窒化シリコンをエッチングする方法であって、前記基板は、窒化シリコンを含む表面と、酸化シリコンを含む表面と、ポリシリコンを含む表面とを含み、方法は、
エッチング組成物であって、
a.組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.ポリシリコン腐食抑制剤化合物と、
c.アミノアルキルシラノールと、
d.任意選択でフッ素化合物と
を含むエッチング組成物
を提供すること、
窒化シリコンを含む表面とポリシリコンを含む表面とを有する基板を提供すること、
窒化シリコンをエッチングするのに有効な条件下で、基板を組成物に接触させること
を含む。
【請求項2】
ポリシリコンを含む前記表面が、シリコンよりも電気化学的に貴な組成物を含む表面と接触している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
シリコンよりも貴な組成物を含む前記表面が、タングステンシリサイド、ニッケルシリサイド、白金シリサイド及びチタンシリサイドから選ばれる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記フッ素化合物が存在し、前記フッ素化合物が、HF、フッ化アンモニウム、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロケイ酸、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、フッ化テトラ(C1~アルキル)アンモニウム、及びそれらの組合せから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記フッ素化合物が、フロウロ界面活性剤(flourosurfactant)である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記フッ素化合物がHFである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記アミノアルキルシラノールが、3-アミノプロピルシラントリオール、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルシラノール、3-アミノプロピルトリエトキシド、及び3-アミノプロピルトリメトキシド、並びに(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アミノアルキルシラノールが、アミノアルコキシシランからin situで形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリシリコン腐食抑制剤が、直鎖状及び分枝状のC~C16アルキルベンゼンスルホン酸から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリシリコン腐食抑制剤が、C~C16アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸、C~C16アルキルジフェニルスルフィドジスルホン酸、及びC~C16アルキルジフェニルアミンジスルホン酸から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリシリコン腐食抑制剤が、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸、及びドデシルベンゼンスルホン酸から選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記基板を、約130℃~約180℃の温度で組成物と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が、
a.前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.ドデシルベンゼンスルホン酸と、
c.3-アミノプロピルシラントリオールと
からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が、
a.前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.C~C16アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸、C~C16アルキルジフェニルスルフィドジスルホン酸、又はC~C16アルキルジフェニルアミンジスルホン酸と、
c.3-アミノプロピルシラントリオールと
からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
フッ素化合物をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
組成物であって、
a.組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.直鎖状及び分枝状のC~C16アルキルベンゼンスルホン酸、C~C16アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸、C~C16アルキルジフェニルスルフィドジスルホン酸、又はC~C16アルキルジフェニルアミンジスルホン酸から選ばれるポリシリコン腐食抑制剤化合物と、
c.アミノアルキルシラノールと
を含む、組成物。
【請求項17】
前記アミノアルキルシラノールが、3-アミノプロピルシラントリオール、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルシラノール、3-アミノプロピルトリエトキシド、及び3-アミノプロピルトリメトキシド、並びに(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンから選ばれる、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリシリコン腐食抑制剤が、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸、及びドデシルベンゼンスルホン酸から選ばれる、請求項15に記載の組成物。
【請求項19】
フッ素化合物をさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項20】
前記フッ素化合物がHFである、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
a.前記組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.ドデシルベンゼンスルホン酸と、
c.3-アミノプロピルシラントリオールと
を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項22】
HFをさらに含む、請求項20に記載の組成物。
【請求項23】
1つ又は複数の容器内に、請求項1に記載の1つ又は複数の構成成分a.からd.を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、二酸化シリコン及びポリシリコンの存在下で、窒化シリコン膜を選択的にエッチングするための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス産業においては、デバイス性能の改善並びにデバイスの小型化及びデバイス特徴部の小型化に対して、継続的に需要がある。特徴部の縮小化には、デバイス特徴部の密度の向上とデバイス速度の向上という二重の利点がある。
【0003】
特徴部及びデバイスを縮小化するには、新しい方法を見出して、マイクロ電子デバイスを製造する多段階プロセスの工程を改善する必要がある。多くの種類のマイクロ電子デバイスを作製する方法においては、窒化シリコンを除去する工程が一般的である。窒化シリコン(Si)の薄層は、通常、シラン(SiH)及びアンモニア(NH)から化学気相堆積によって堆積されるものであるが、水及びナトリウムに対するバリアとして、マイクロ電子デバイスにおいて有用であり得る。また、パターニングされた窒化シリコン層は、空間的に選択的な酸化シリコン成長のためのマスクとして使用される。この窒化シリコン材料は、付与された後、その全部又は一部の除去が必要となる場合があり、それは一般的にエッチングによって行われる。
【0004】
エッチングによる窒化シリコンの基板からの除去は、有利には、マイクロ電子デバイスの露出又は被覆された他の特徴部を損傷又は破壊しない手法で行われる。多くの場合、窒化シリコンを除去するプロセスは、マイクロ電子デバイス基板の表面に同じく存在する二酸化シリコンなどの他の材料に対して、窒化シリコンを優先的に除去する手法で行われる。様々な工業的な方法によれば、窒化シリコンは、高温の、例えば温度が150℃~180℃の範囲の浴中で、基板表面を濃リン酸(HPO)に曝露するウェットエッチングのプロセスによってマイクロ電子デバイス表面から除去される。酸化シリコンに対して窒化シリコンを選択的に除去するための従来のウェットエッチング技術では、リン酸(HPO)水溶液、通常は約85重量パーセントのリン酸と15重量パーセントの水とが使用されてきた。新鮮な熱リン酸を使用すると、通常、Si:SiOの選択性を約40:1とすることができる。
【0005】
さらにデバイス構造体では、酸化シリコンに加えて、ポリシリコンの露出面も存在する場合があるため、所望の選択的窒化シリコンエッチングのプロセスがさらに複雑になる。したがって、酸化シリコン表面及びポリシリコン表面の存在下で、窒化シリコンを優先的にエッチングするのに有用な組成物及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
要約すると、本発明は、窒化シリコン(SiN)、酸化シリコン、及びポリシリコンを含有する、マイクロ電子デバイスの表面をエッチングするためのウェットエッチング組成物に関する。ある実施形態において、ポリシリコンは、シリコンよりも電気化学的に貴な化合物を含む表面と接触している。任意選択で、他の材料、例えば、マイクロ電子デバイスにおいて有用な導電性材料、半導体性材料、若しくは絶縁材料、又はマイクロ電子デバイスの作製において有用な処理材料が存在する。記載のエッチング組成物は、リン酸、アミノアルキルシラノール、ある種のポリシリコン腐食抑制剤、任意選択でフッ素化合物、及びエッチング組成物の成分に関連するか又は別に添加されるある量の水を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の方法を実施した際のエッチング工程の前後の状態を表し、例示的な基板を示したものである。
図2】提供された実施例を支持する表1を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
第1の態様では、本発明は、マイクロ電子デバイス基板上の窒化シリコンをエッチングする方法を提供し、前記基板は、窒化シリコンを含む表面と、酸化シリコンを含む表面と、ポリシリコンを含む表面とを含み、方法は、
エッチング組成物であって、
a.組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.ポリシリコン腐食抑制剤化合物と、
c.アミノアルキルシラノールと、
d.任意選択でフッ素化合物と
を含むエッチング組成物
を提供すること、
窒化シリコンを含む表面とポリシリコンを含む表面とを有する基板を提供すること、
窒化シリコンをエッチングするのに有効な条件下で、基板を組成物に接触させること
を含む。
【0009】
一実施形態では、ポリシリコンを含む前記表面は、シリコンよりも電気化学的に貴な組成物を含む表面と接触している。一実施形態では、組成物はフッ素化合物を含有しない。
【0010】
本発明の組成物は、ある種のマイクロ電子デバイス上の窒化シリコン膜のエッチング又は除去においてエッチング組成物として有用である。当該組成物は、ある種のマイクロ電子デバイスに一般的に存在する他の材料の存在下で、窒化シリコンのエッチングにおいて予想外に優れた選択性を示した。
【0011】
本明細書で使用される場合、「マイクロ電子デバイス」(又は「マイクロ電子デバイス基板」若しくは単に「基板」)という用語は、エレクトロニクス、マイクロエレクトロニクス、及び半導体製造技術分野におけるこの用語の一般に理解されている意味と一致する形で使用され、例えば、様々な異なる種類の半導体基板;集積回路;ソリッド・ステート・メモリ・デバイス;ハードディスクメモリ;読取りヘッド、書込みヘッド、読取り/書込みヘッド及びそれらの機械部品又は電子部品;フラットパネルディスプレイ;相変化メモリデバイス;太陽電池パネル及び1つ又は複数の太陽電池デバイスを含む他の製品;光電池;並びに、マイクロエレクトロニクス、集積回路、エネルギー収集、又はコンピュータチップの用途で使用するために製造された微小電気機械システム(microelectromechanical system:MEMS)のいずれかを指す。「マイクロ電子デバイス」という用語は、マイクロ電子デバイス又はマイクロ電子組立て品における最終的な電子的使用のための、機能性電子(通電)構造体、機能性半導体構造体、及び絶縁構造体を含むか、又は含むように作製されているインプロセスのいかなるマイクロ電子デバイス又はマイクロ電子デバイス基板をも指し得ることを理解されたい。
【0012】
本明細書で使用される場合、「窒化シリコン」という用語は、マイクロエレクトロニクス産業及び半導体製造産業で使用される用語の意味と一致する意味を表す。これと一致して、窒化シリコンは、工業的に有用な低レベルの他の材料又は不純物、及びSiに名目上化学量論的に近い何らかの可能な変形形態を有する非晶質窒化シリコンからなる薄膜などの材料を指す。窒化シリコンは、デバイスの機能性特徴部として、例えばバリア層又は絶縁層としてマイクロ電子デバイス基板の一部として存在してもよく、又はマイクロ電子デバイスを作製するための多段階製造方法を容易にする材料として機能するように存在してもよい。
【0013】
本明細書で使用される場合、「酸化シリコン」という用語は、マイクロエレクトロニクス産業及び半導体製造産業で使用される用語の意味と一致する意味を表す。これと一致して、酸化シリコンは、酸化シリコン(SiO)、例えばSiO、「熱酸化物」(ThO)などからなる薄膜を指す。酸化シリコンは、任意の方法によって、例えば、テトラエトキシシラン(tetra ethoxy silane:TEOS)又は別の供給源から化学気相堆積で堆積されることによって、又は熱的に堆積されることによって、基板上に付与することができる。酸化シリコンは、有利には、工業的に有用な低レベルの他の材料又は不純物を含有し得る。酸化シリコンは、マイクロ電子デバイスの特徴部として、例えば絶縁層としてマイクロ電子デバイス基板の一部として存在してもよい。
【0014】
本明細書で使用される場合、「ポリシリコン」という用語は、シリコンの多結晶形態として、マイクロエレクトロニクス産業及び半導体製造産業で使用される用語の、通常理解されている当該用語の意味を有する。言い換えれば、ポリシリコンすなわち「poly-Si」は、シリコンの電気的特性を改変するためにドープされ得るシリコンの高純度多結晶形態である。
【0015】
本明細書において、シリコンよりも電気化学的に貴な組成物を含む表面と接触しているポリシリコン表面についての言及は、ポリシリコンと接触している場合に(ポリシリコンの)ガルバニック腐食を引き起こすことができる表面について説明することを意図している。本明細書で使用される「貴な」という用語は、種々の貴な元素の特色を指すことを意図しており、貴な元素は、水性環境において、酸化及び腐食に耐性のある元素としてその特性を示す。したがって、上記のような表面を含む表面及び組成物は、水性環境でポリシリコンと密着している場合に電気化学的フラックスを生じさせ、そのため経時的に腐食劣化を生じさせることができる場合、シリコンよりも十分に「貴」である。本明細書に記載されるように、本発明の方法及び組成物は、そのような「より貴な表面」と接触しているそのようなポリシリコン構造体又は表面も有するマイクロ電子デバイス基板上の窒化シリコンの選択的エッチングにおいて、特に有用である。このような表面の例としては、タングステンシリサイド、ニッケルシリサイド、白金シリサイド、及びチタンシリサイドが挙げられる。
【0016】
ある種のエッチング組成物の実施形態は、窒化シリコンの(有用又は有利なエッチング速度などの)所望のエッチングを生成するのに有効な量の水性リン酸(例えば、濃リン酸と任意選択のある量の添加水)及びフッ素化合物と、酸化シリコンに対する窒化シリコンの選択性を改善するのに有効な量のアミノアルキルシラノールと、有効量の1つ又は複数のある種のガルバニック抑制剤と、任意選択で溶解シリカとを含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる水溶液の形態の組成物を含む。これら及び実施例の他の組成物は、列挙した成分及び任意選択の成分を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になることができる。本明細書を通し全体的に規定することとして、記載のエッチング組成物などの物質の組成物、又はその成分若しくは構成成分は、特定の成分又は材料の群「から本質的になる」と言われ、特定の成分又は材料を、低量又はわずかな量以下の他の成分又は材料、例えば、5、2、1、0.5、0.1、又は0.05重量部以下の他の成分又は材料と共に含有する組成物を指す。例えば、記載されているように、水性リン酸、アミノアルキルシラン、ポリシリコン腐食抑制剤、及び任意選択の成分から本質的になる材料を含有するエッチング組成物は、これらの成分と、5、2、1、0.5、0.1、又は0.05重量部以下の、溶解又は不溶解の任意の他の材料、又は(個々に又は全体として)特定の材料以外の材料を含有するエッチング組成物を意味する。
【0017】
エッチング組成物は、窒化シリコンの所望のエッチングを生成するのに有効な量の水性リン酸(例えば濃リン酸)を含む。「水性リン酸」という用語は、エッチング組成物の他の成分と混合又は組み合わせてエッチング組成物を形成するエッチング組成物の成分を指す。「リン酸固体」という用語は、水性リン酸成分の非水性構成成分、又は水性リン酸成分から作製されるエッチング組成物の非水性構成成分を指す。
【0018】
エッチング組成物に含有されるリン酸固体の量は、エッチング組成物の他の材料と組み合わせて、所望の窒化シリコンエッチング速度及び選択性などの所望のエッチング性能を提供する量とすることができ、これには通常、比較的多量の(濃度の)リン酸固体が必要である。例えば、エッチング組成物は、エッチング組成物の総重量に基づいて少なくとも約50重量パーセントのある量のリン酸固体、例えばエッチング組成物の総重量に基づいて少なくとも70重量パーセント、又は少なくとも約80若しくは85重量パーセントのリン酸固体を含有することができる。
【0019】
所望の量のリン酸固体を提供するために、組成物は、エッチング組成物を生成するために他の成分(任意選択で水であり、何らかの形態の1つの成分)と混合又は組み合わせる成分として、「濃」リン酸を含有してもよい。「濃」リン酸は、少量又は最小量の水の存在下で多量又は最大量のリン酸固体を含有し、他の成分(例えば、0.5又は0.1重量パーセント未満の任意の非水材料又は非リン酸固体材料)を実質的に含有しない水性リン酸成分を指す。濃リン酸は、通常、約15又は20重量パーセントの水に少なくとも約80又は85重量パーセントのリン酸固体を有していると考えることができる。あるいは、エッチング組成物は、水で希釈されたある量の濃リン酸又は何らかの手法で形成された等価物を含むと考えてもよく、水で希釈されたある量の濃リン酸とは、例えば、エッチング組成物の他の成分と組み合わせる前又は後にある量の水で希釈された濃リン酸を意味する。別の選択肢として、エッチング組成物の成分は、濃リン酸又は希釈リン酸とすることができ、エッチング組成物は、異なる成分の構成成分又は別個の水成分のいずれかとして、エッチング組成物に提供される追加的な量の水を含有することができる。
【0020】
一例として、濃リン酸を使用して組成物を形成する場合、濃リン酸の量(水中85重量パーセント)は、総重量エッチング組成物に基づいて、エッチング組成物の少なくとも60重量パーセント、例えば少なくとも80重量パーセント又は少なくとも90、93、95、若しくは少なくとも98重量パーセントの量とすることができる。
【0021】
本明細書で使用される場合、「フッ素化合物」という用語は、窒化チタンのエッチング速度を向上させるために任意選択で添加されるある種のエッチャントを指す。そのような化合物としては、HF、フッ化アンモニウム、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロケイ酸、B-F結合又はSi-F結合を含む他の化合物、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート(TBA-BF)、フッ化テトラアルキルアンモニウム(NRF)、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、フッ化化合物は、HF、フッ化アンモニウム、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロケイ酸、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート、フッ化テトラ(C1~アルキル)アンモニウム、及びそれらの組合せから選ばれる。別の実施形態では、フッ素化合物は、炭素に共有結合した任意のフッ素化合物を含むことができ、任意のCF2基若しくはCF3基又は任意のフルオロ界面活性剤基とすることができる。
【0022】
本発明の組成物に含有される任意選択のフッ素化合物の量は、エッチング組成物の他の材料と組み合わせて、所望の窒化シリコンのエッチング速度及び選択性などの所望のエッチング性能を提供する量とすることができる。例えば、エッチング組成物は、エッチング組成物の総重量に基づいて約5~10,000ppm、又はさらには最大50,000ppm(すなわち、0.0005~1重量パーセント又はさらには5重量パーセント)の範囲、例えばエッチング組成物の総重量に基づいて約20~2,000ppm(すなわち0.002~0.2重量パーセント)のある量のフッ素源化合物を含有することができる。
【0023】
当該組成物はアミノアルキルシラノールを含み、アミノアルキルシラノールという用語は、本明細書で使用される場合、シラン(-SiO-)系の化合物又は分子であって、少なくとも1つのシリコン原子と、シラン系化合物のアルキル置換基に位置する少なくとも1つのアミン基、すなわちシリコン原子に連結したアミノアルキル置換基とを含むシラン系化合物又は分子を指す。シラノール官能基は、製造された配合物中に存在してもよく、又は配合物に添加された場合に若しくはプロセス条件下で、加水分解によって形成されてもよい。例えば、シリコンアルコキシドは強酸性条件下で急速に加水分解することが知られており、シロキサンはプロセス条件下で加水分解する。
【0024】
ある実施形態では、アミノアルキルシラノール化合物は、式:
(HO)Si-(C~C12アルキル)-NH、及び
(HO)Si-(C~Cアルキル)-NH-(C~Cアルキル)-NH
を有する。
【0025】
本発明によれば、出願人は、フッ素化合物及びポリシリコン腐食抑制剤との組合せでリン酸を含有するエッチング組成物の一部としてアミノアルキルシラノール化合物が存在することにより、本明細書に記載されるように性能が改善され得ることを見出した。
【0026】
アミノアルキルシラノールの例としては、3-アミノプロピルシラントリオール、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルシラノール、N-(2,アミノエチル)-(2,アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、及び(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンが挙げられる。
【0027】
本発明の組成物において、そのような組成物に含有されるアミノアルキルシラノールの量は、エッチング組成物の他の材料と組み合わせて、二酸化シリコン及びポリシリコンに対する窒化シリコンの所望のエッチング速度及び選択性などの所望の選択的エッチング性能を提供する量とすることができる。例えば、エッチング組成物は、組成物の総重量に基づいて約20~10,000ppm(すなわち、0.0020~1.0重量パーセント)の範囲、又は組成物の総重量に基づいて約20~2,000、4,000、若しくは5,000ppm(すなわち、0.002~0.2、0.4、若しくは0.5重量パーセント)の範囲の、単一の種又は2つ以上の種の組合せであってもよいある量のアミノアルキルシラノール化合物を含有することができる。
【0028】
本発明の組成物では、ポリシリコンの存在下で、窒化シリコンの選択的エッチングの間にポリシリコン抑制剤として機能する少なくとも1つの化合物が利用される。これについては、理論に束縛されることを望むものではないが、本出願人らは、組成物中のこの構成成分が、上記のようなポリシリコンの表面がシリコンよりも貴な材料を含む表面と接触している場合、電子の流れ及び/又は腐食生成物の移動を抑制することによって、ポリシリコンの表面の腐食を抑制するのに役立つと考えている。これに関して、本発明者らは、ポリシリコン腐食抑制のこの目的に役立ち得る複数の化合物を発見したが、あるものは界面活性剤として分類され得るものである。例としては、以下が挙げられる。
デシルトリメチルアンモニウムクロリド
ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド
ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド
4-フェニルピリジンN-オキシド
3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸(cyclohexylamino)-1-propanesulfonic acid:CAPS)
トリメチルアミンN-オキシド
4-アミノベンゼンスルホン酸
ドデシルアミン
イソニコチン酸N-オキシド
トリメチルフェニルアンモニウムクロリド
4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸(4-(cyclohexylamino)-1-butanesulfonic acid:CABS)
ラウリルジメチルアミンオキシド
1-デシル-3-メチルイミダゾリウムクロリド
[2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド
Tomamine AO-405
ニコチン酸N-オキシド
ポリ(4-ビニルピリジン)
4-(ベンジルオキシ)ピリジンN-オキシド
1-オクチル-2-ピロリドン
1-ドデシル-2-ピロリジノン
アンモニウムジノニルスルホサクシネート
ポリ(4-スチレンスルホン酸)
トリルトリアゾール
ミリスチルジメチルアミンN-オキシド(N-オキシド、テトラデシルジエムチルアミン(tetradecyl diemthylamine))
1-オクタンスルホン酸
ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド
p-アミノベンゼンスルホンアミド
ピリジンN-オキシド
ポリエチレンイミン
ポリアクリル酸
ポリビニルピロリドン
Thetawet FS-8150
2,5ジメチルフェニル酢酸
2-ヒドロキシピリジンn-オキシド
4-(シクロヘキシルアミノ)-1-ブタンスルホン酸(4-(Cyclohexylamino)-1-butanesulfonic acid:CABS)
テトラデシルジメチルアミンオキシド)
ベンザルコニウムクロリド
ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸(5-ヘキシル-2-(4-ヘキシル-2-スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸)
ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸(5-ドデシル-2-(4-ドデシル-2-スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸)
Capstone FS-35(フルオロ界面活性剤)
ドデシルベンゼンスルホン酸(dodecylbenzenesulfonic acid:DDBSA)
Flexiwet(登録商標)NF(低泡性、アニオン性のフルオロ界面活性剤)
Flexiwet(登録商標)NI-M(フッ素化非イオン性界面活性剤)
ヘプタン-4-スルホン酸
p-トリ酢酸(p-tolyacetic acid)
スルホコハク酸
Thetawet FS-8050(非イオン性エトキシル化フルオロ界面活性剤)
Tomamine AO-14-2(50%活性ビス-(2-ヒドロキシエチル)イソデシルオキシプロピルアミンオキシド)
【0029】
一実施形態では、ポリシリコン腐食抑制剤は、直鎖状及び分枝状のC~C16アルキルベンゼンスルホン酸から選ばれる。例としては、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルアルキルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、ヘプタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、並びにC~C16アルキルジフェニルスルフィドジスルホン酸及びC~C16アルキルジフェニルアミンジスルホン酸が挙げられる。一実施形態では、ポリシリコン腐食抑制剤はドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0030】
一実施形態では、ポリシリコン腐食抑制剤は、カルコゲン化物又はC~C16アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸から選ばれる。一実施形態では、ポリシリコン腐食抑制剤は、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸及びドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸から選ばれる。
【0031】
任意選択で、本発明の組成物はまた、例えば固体シリカ材料をリン酸に溶解することによって、又は水性リン酸との反応によって溶解シリカを形成することができる可溶性シリコン含有化合物を添加することによって、リン酸に溶解したシリカをある量含有することができ、そのような化合物の例としては、テトラメチルアンモニウムシリケート(tetramethylammonium silicate:TMAS)、テトラアセトキシシラン、又はテトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシランが挙げられる。溶解シリカは、窒化シリコンに対するエッチング組成物の選択性を改善するのに有効であり得る。シリカの量は、エッチングプロセス条件での前処理シリカの過飽和をもたらさない任意の有用な量、例えばエッチング組成物の総重量に基づいて約5~10,000ppmの溶解シリカ又は可溶性シリコン含有化合物、又はエッチング組成物の総重量に基づいて約20~5,000、3,000、1,000、又は500ppmとしてもよい。
【0032】
エッチング組成物は、1つ又は複数の供給源からの水を含有することができる。例えば、水は水性リン酸成分中に存在する。さらに、水は、組成物の1つ又は複数の他の成分の担体として使用されてもよく、組成物自体の成分として単独で添加されてもよい。水の量は、有用な(十分に高い)窒化シリコンエッチング速度などの所望の若しくは好ましい又は有利な性能特性を組成物が示すように、十分に低くするべきである。存在する水が増えると、窒化シリコンのエッチング速度が向上する傾向があるが、組成物の沸点を低下させる可能性もあり、それは組成物が作用する温度を低下させ、逆効果になる。エッチング組成物において、すべての供給源からの水の量は、例えば、約50、40、又は30重量パーセント未満とすることができ、例えば、エッチング組成物の総重量に基づいて約5重量パーセント~約25パーセント重量パーセントの範囲、又はエッチング組成物の総重量に基づいて約10~20重量パーセントの水の範囲とすることができる。
【0033】
任意選択で、これら及び他の実施例の記載のエッチング組成物は、リン酸、アミノアルキルシラン、少なくとも1つのポリシリコン腐食抑制剤、及び特定の任意選択の成分のいずれか1つ又は任意の組合せを含有するか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなることができる。ある実施形態では、本発明の組成物は、エッチング組成物に通常含まれない他の種類の成分、例えば、pH調整剤(本明細書で可能な成分として言及される酸以外)及び研磨剤などの固体材料を必要とせず、除外してもよい。
【0034】
本発明の組成物は、記載のエッチング組成物を生成するのに有用な任意の方法によって作製することができる。1つの方法によって、水性成分又は固体成分を任意選択で加熱して組み合わせ、混合して均一にすることができる。
【0035】
記載の組成物は、マイクロ電子デバイス基板の表面から窒化シリコンを除去する方法に有用であり得る。当該基板は、マイクロ電子デバイスにおいて有用な他の材料、例えば、絶縁体、バリア層、導電材料、半導体性材料、又はマイクロ電子デバイスの処理に有用な材料(例えば、とりわけフォトレジスト、マスク)のうちの1つ又は複数を含むことができる。実施例の基板は、窒化シリコン、熱酸化物(ThOx)、及びプラズマ強化テトラエチルオルトシリケート(plasma enhanced tetra ethyl ortho silicate:PETEOS、プラズマ強化テトラエチルオルトシリケートを使用して堆積された酸化物)、並びにポリシリコンを含む表面を有する。
【0036】
本発明の組成物は、使用の際、工業的性能のニーズ及び期待に基づく有用なエッチング性能を提供することができ、比較のエッチング組成物と比べて、窒化シリコンのエッチング速度及び選択性に関して改善された性能を提供することができる。
【0037】
マイクロ電子デバイス基板をエッチングする方法は、半導体製造技術分野で知られており、既知の市販の装置で行うことができる。一般に、基板をエッチングして基板の表面の材料を選択的に除去するためには、エッチング組成物をその表面に付与し、表面構造体に接触させることで、構造体のいくつかを化学的、選択的に除去することができる。
【0038】
組成物は非常にゆっくりと酸化物をエッチングするように設計されるため、エッチングプロセスを抑制することができる薄い酸化表面を窒化シリコン膜が有することがある。そのような場合、希釈HFによる非常に短時間の処理を、有利な第1のプロセス工程とすることができる。
【0039】
エッチング工程では、エッチング組成物を任意の適切な手法、例えば、エッチング組成物を表面に噴霧することによって;基板をエッチング組成物に(静的体積又は動的体積の組成物において)浸漬することによって;エッチング組成物が吸収された別の材料、例えばパッド又は繊維吸着剤アプリケータエレメントに表面を接触させることによって;基板を循環プール内のある量のエッチング組成物と接触させることによって;又は、エッチング組成物を、シリコンゲルマニウム及びシリコンを含むマイクロ電子基板の表面に除去接触させる任意の他の適切な手段、手法又は技術によって、基板の表面に付与することができる。その付与は、動的洗浄又は静的洗浄のためのバッチ式又は枚葉式の装置においてであってもよい。
【0040】
有用なエッチングプロセスの条件(例えば、時間及び温度)は、有効又は有利であることが分かっている任意のものとすることができる。一般に、エッチング組成物は、窒化シリコンを選択的に除去するのに十分な時間、当該表面と接触するが、それは、例えばエッチング組成物の浴中に当該表面を沈めることによる。エッチング組成物への曝露時間及びエッチング組成物の温度は、基板の表面から窒化シリコンを所望の量除去するのに有効であり得る。エッチング工程の時間は短すぎてはならない。それは、窒化シリコンのエッチング速度が高くなりすぎる可能性があり、これがプロセス制御を困難にし、エッチング工程の終了時のマイクロ電子デバイスの品質低下につながりかねないことを意味するからである。当然ながら、エッチング工程に必要な時間は、エッチングプロセス及び半導体製造ラインの良好な効率及びスループットを可能にするために、過度に長くないことが好ましい。エッチング工程に有用な時間は、約100℃~約180℃の範囲の温度で、例えば、約5分~約200分、又は約10分~約60分の範囲としてもよい。そのような接触時間及び温度は例示であり、必要とされる除去選択性を達成するのに効果的な任意の他の適切な時間及び温度条件を用いてもよい。
【0041】
本明細書のエッチング工程は、任意の種類の基板の表面から、窒化シリコン材料をエッチングするのに有用であり得る。特定の実施形態によれば、基板は、酸化シリコン、並びにポリシリコン、導電性金属シリサイド、及び酸化ジルコニウム又は酸化アルミニウムなどの誘電体と共に窒化シリコン層の交互の薄膜層を含む基板の構造的特徴部として、窒化シリコンの交互の薄膜層を含むことができる。酸化シリコン層は、酸化シリコンの層間に配置された窒化シリコン層を含む高アスペクト比の構造体である。図1を参照すると、選択的手法で、例えば酸化シリコンに対して優先的に、窒化シリコンを基板から除去するのに有効な、本明細書に記載の選択的エッチング工程の前後の基板が示されている。エッチング工程前の基板は、高アスペクト比の酸化シリコン構造体の間の開口部に配された窒化シリコンの交互層を含む。当該チング工程により、図1の右側の基板に示しているように、開口部又は「スリット」が酸化シリコン層を分離する状態で、酸化シリコン層を残すように窒化シリコンが除去される。本明細書によれば、図1に示すようにエッチングプロセスを用いて、図1に示す基板をエッチングすることができる。実施例のエッチングプロセスは、先行技術及び同等のエッチング組成物及びエッチングプロセスと比較して、SiNエッチング速度を顕著に向上させ、酸化シリコンに対する良好な選択性(>50、好ましくは100に近いか又はそれを超える)を示し、かつ(スリット開口部を閉鎖又はほぼ閉鎖することによって立証される)多量のシリカの再堆積を回避することができる。
【0042】
窒化シリコンの所望の量の選択的エッチングが完了した後、エッチングされたマイクロ電子デバイスの表面に残っているエッチング組成物を、任意の所望の有用な方法、例えば、水(又は任意選択でリン酸とそれに続く水)を使用して、すすぎ、洗浄、又は他の除去工程によって、表面から除去することができる。例えば、エッチング後、マイクロ電子デバイス基板を(例えば約20~約90℃の範囲の温度の)脱イオン水のリンス液ですすぎ、続いて、例えばスピンドライ、N、蒸気乾燥などの乾燥を行ってもよい。すすいだ後に、基板表面を、表面に粒子が存在するか、かつその量について評価してもよい。
【0043】
上記のように、本発明の組成物は、ポリシリコン腐食抑制剤成分の存在により、ポリシリコン被覆領域を有するマイクロ電子デバイス基板上で、ウェットエッチング環境において驚くほど優れた選択性を示す。したがって、さらなる態様では、本発明は、
a.組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.直鎖状及び分枝状のC~C16アルキルベンゼンスルホン酸及びC~C12アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸から選ばれるから選ばれるポリシリコン腐食抑制剤化合物と、
c.アミノアルキルシラノールと
を含む組成物を提供する。
【0044】
ある実施形態では、アミノアルキルシラノールは、3-アミノプロピルシラントリオール、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルシラノール、3-アミノプロピルトリエトキシド、及び3-アミノプロピルトリメトキシド、並びに(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミンから選ばれる。ある実施形態では、ポリシリコン腐食抑制剤は、ヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸、及びドデシルベンゼンスルホン酸から選ばれる。ある実施形態では、組成物は、フッ素化合物、例えばHFをさらに含む。
【0045】
一実施形態では、組成物は、
a.組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.ドデシルベンゼンスルホン酸と、
c.3-アミノプロピルシラントリオールと
を含む。一実施形態では、組成物はHFをさらに含む。
【0046】
一実施形態では、組成物は、
a.組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.直鎖状及び分枝状のC~C16アルキルベンゼンスルホン酸及びC~C16アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸から選ばれるポリシリコン腐食抑制剤化合物と、
c.アミノアルキルシラノールと、任意選択で、
d.フッ素化合物と
を含む。
【0047】
一実施形態では、ポリシリコン腐食抑制剤化合物は、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸、及びヘキシルジフェニルオキシドジスルホン酸から選ばれる。
【0048】
一実施形態では、アミノアルキルシラノール化合物は、式:
(HO)Si-(C~C12アルキル)-NH、及び
(HO)Si-(C~Cアルキル)-NH-(C~Cアルキル)-NH
を有する。
【0049】
一実施形態では、アルキルアミノシラノールは、3-アミノプロピルシラントリオール及びN-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルシラノールから選ばれる。別の実施形態では、フッ素化合物はHFであり、ポリシリコン腐食抑制剤化合物はドデシルベンゼンスルホン酸であり、アミノアルキルシランは3-アミノプロピルシラントリオールである。
【0050】
当該半水性組成物を濃縮した形態にして、使用前に希釈することが一般的な方法であることが理解されよう。例えば、より濃縮した形態で当該組成物を製造し、その後、製造業者において、使用前に、かつ/又は製造工場での使用の間に、少なくとも1つの溶媒で希釈してもよい。希釈比は、約0.1部の希釈剤:1部の組成物濃縮物~約100部の希釈剤:1部の組成物濃縮物の範囲としてもよい。本明細書に記載の組成物は、それぞれの成分を単に添加し、均一な状態になるまで混合することによって容易に調製することができる。さらに、組成物は、使用時に又はその前に混合される単一パッケージ配合物又は複数要素配合物、好ましくは複数要素配合物として容易に調製され得る。複数要素配合物の個々の要素は、ツールで、又はインラインミキサーなどの混合領域/区域において、又はツールの上流の貯蔵タンクで混合されてもよい。複数要素配合物の様々な要素は、一緒に混合された場合に所望の組成物を形成する成分/構成要素の任意の組合せを含有してもよいことが企図される。それぞれの成分の濃度は、半水性組成物の特定の倍量で大きく異なってもよく、すなわち、より希釈されるか、又はより濃縮されてもよく、半水性組成物は、本明細書の開示と一致する成分の任意の組合せを様々にかつ代替的に含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなることができることが理解されよう。
【0051】
したがって、第3の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物を形成するように適合された1つ又は複数の構成成分を、1つ又は複数の容器に含むキットを提供する。キットの容器は、前記半水性組成物構成成分を貯蔵及び輸送するのに適していなければならず、例えば、NOWPak(登録商標)容器(アドバンスト・テクノロジー・マテリアルズ社、米国コネティカット州ダンベリー)がある。組成物の構成成分を入れる1つ又は複数の容器は、好ましくは、前記1つ又は複数の容器の中の構成成分を配合及び分注するために流体連通させる手段を含む。例えば、NOWPak(登録商標)容器について述べると、前記1つ又は複数の容器内のライナの外側にガス圧を加えて、ライナの内容物の少なくとも一部を吐出させることにより、配合及び分注のために流体連通できるようにしてもよい。あるいは、従来の加圧容器のヘッドスペースにガス圧を加えてもよいし、ポンプを使用して流体連通できるようにしてもよい。また、当該システムは、好ましくは、配合された組成物をプロセスツールに分注するための分注ポートを含む。
【0052】
前記1つ又は複数の容器のためのライナの製造には、実質的に化学的に不活性で、不純物がなく、可撓性で弾力性のあるポリマーフィルム材料、例えば高密度ポリエチレンを使用することができる。望ましいライナ材料は、一般に、共押出又はバリア層を必要とせず、かつ、ライナに配置される構成成分の純度要件に悪影響を及ぼす可能性のあるいかなる顔料、UV抑制剤、又は加工剤も用いずに加工される。望ましいライナ材料を列挙すると、未加工(添加剤不含)ポリエチレン、未加工ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene:PTFE)、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリブチレンなどを含むフィルムが挙げられる。そのようなライナ材料の好ましい厚さは、約5ミル(0.005インチ)~約30ミル(0.030インチ)の範囲、例えば20ミル(0.020インチ)の厚さである。
【0053】
キット用の容器に関しては、以下の特許及び特許出願の開示、すなわち、「APPARATUS AND METHOD FOR MINIMIZING THE GENERATION OF PARTICLES IN ULTRAPURE LIQUIDS」と題された米国特許第7,188,644号明細書、「RETURNABLE AND REUSABLE,BAG-IN-DRUM FLUID STORAGE AND DISPENSING CONTAINER SYSTEM」と題された米国特許第6,698,619号明細書、及び2008年5月9日に出願された「SYSTEMS AND METHODS FOR MATERIAL BLENDING AND DISTRIBUTION」と題されたPCT/US 08/63276号明細書は、それぞれの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0054】
本発明は、本発明のある実施形態の以下の実施例によってさらに説明することができるが、これらの実施例は単に説明する目的で含まれ、特に明記しない限り、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されよう。
【実施例0055】
選択的窒化シリコンエッチングによるポリシリコンの腐食は、少量の多種多様なポリシリコン腐食抑制剤の添加によって改変することができる。これらの抑制剤がなければ、ポリシリコン表面において、全体的にエロージョン速度が高く、エロージョンが不均一になるため粗い膜ができる。選択的窒化シリコンエッチング配合物の一例を実施例Aに示す。これは、溶解シリコンの再堆積を低減するために少量の3-アミノプロピルシラントリオールが添加された濃リン酸からなる。少量のHFもまた、窒化シリコン除去速度を向上させるために含まれる。
【0056】
多種多様な化合物が、選択的窒化物エッチングにおけるポリシリコン腐食挙動を改変する(すなわち、抑制剤として作用する)ことが見出されている(図2に示す表1)。これらのポリシリコン腐食抑制剤のいくつかについての性能を表3に示す。選択的窒化シリコンエッチング配合物に曝露する前に、常温で60秒間、0.5重量%HF水溶液を使用し、2分間、流動脱イオン水ですすいで、自然酸化物を除去した。150℃で1時間曝露の間のポリシリコン損失を用いて、腐食速度を評価した。ガルバニックポリシリコン腐食速度は、より貴な金属と接触しているポリシリコン膜を有し、かつエッチング溶液と接触している膜を両面に有する構造体を用いて評価した。
【0057】
凡例:
APST:3-アミノプロピルシラントリオール(3-aminopropylsilanetriol)
DIW:脱イオン水(deionized water)
Aromox 14D-W970:テトラデシルジメチルアミンオキシド
PSSA:ポリ(4-スチレンスルホン酸)(poly(4-styrenesulfonic acid))
CAPS:3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸(3-(cylohexylamino)-1-propanesulfonic acid)
PAA:ポリ(アクリル酸)(poly(acrylic acid))
FlexiWet(登録商標)NF:低発泡性フルオロ界面活性剤
FlexiWet(登録商標)NI-M:水溶性非イオン性フルオロ界面活性剤
Thetawet(商標)FS-8050:50%活性水溶性非イオン性界面活性剤
FlexiWet(登録商標)Q22:カチオン性フルオロ界面活性剤
DDBSA:ドデシルベンゼンスルホン酸(dodecylbenzenesulfonic acid)
Thetawet(商標)FS-8150:非イオン性フルロ界面活性剤(flurosurfactant)
Calfax(登録商標)6LA-70:72%活性C-6直鎖状ジフェニルオキシドジスルホン酸
Calfax(登録商標)DBA-70:71%活性C-12分枝状ジフェニルオキシドジスルホン酸
【0058】
性能データ:
【0059】
実施例Aは、ベース配合物のポリシリコン腐食速度を示す。これは、ポリシリコン腐食速度が最も高く、ガルバニック腐食速度が約50%高い。実施例B~Nでは、テトラメチルアンモニウムシリケートを使用し、45ppmの溶解シリコンを溶液に添加して、通常の窒化シリコン除去プロセスにおいて窒化シリコンを部分的にエッチングした後の、想定される通常の溶液濃度を再現した。実施例Bは、溶解シリコンを添加したベース配合物からなる。一般の腐食及びガルバニック腐食の両方がわずかに低下している。実施例C~Nでは、ガルバニック抑制剤及び45ppmの溶解シリコンをベース配合物に添加した。実施例C、D、E及びFでは、腐食速度は添加剤によって低下していないが、除去がより均一であることにより、より滑らかな表面になっている。実施例G~Nでは、腐食速度が抑えられている。
【0060】
本発明のある実施形態に特に言及して本発明を詳細に説明したが、本発明の趣旨及び範囲の中で、変更及び改変を行い得ることが理解されよう。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-10-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ電子デバイス基板上の窒化シリコンをエッチングする方法であって、前記基板は、窒化シリコンを含む表面と、酸化シリコンを含む表面と、ポリシリコンを含む表面とを含み、方法は、
エッチング組成物であって、
a.組成物の総重量に基づいて、少なくとも60重量パーセントの量の濃リン酸と、
b.ポリシリコン腐食抑制剤化合物と、
c.アミノアルキルシラノールと、
d.任意選択でフッ素化合物と
を含むエッチング組成物を提供すること、
窒化シリコンを含む表面とポリシリコンを含む表面とを有する基板を提供すること、及び
窒化シリコンをエッチングするのに有効な条件下で、基板を組成物に接触させること
を含む、方法。
【外国語明細書】