(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025040414
(43)【公開日】2025-03-24
(54)【発明の名称】研磨用組成物および該組成物を用いて基板を研磨する方法
(51)【国際特許分類】
C09K 3/14 20060101AFI20250314BHJP
C09G 1/02 20060101ALI20250314BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20250314BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20250314BHJP
【FI】
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024153113
(22)【出願日】2024-09-05
(31)【優先権主張番号】63/537,636
(32)【優先日】2023-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000236702
【氏名又は名称】株式会社フジミインコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】大西 正悟
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー ワイ. キム
(72)【発明者】
【氏名】アレキサンドラ カールソン
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CA04
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
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5F057AA28
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5F057EA01
5F057EA16
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5F057EA25
(57)【要約】
【課題】砥粒の安定性を損なわずに、酸化ケイ素の研磨レートを向上させる研磨用組成物の提供。
【解決手段】砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物であって、前記砥粒が、約30nm~約70nmの範囲の一次粒子径および約50nm~約130nmの範囲の二次粒子径を有するシリカ砥粒であり;前記塩基化合物が、無機塩基であり;前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、双性イオンであり;前記酸化剤が、過酸化物である、研磨用組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物であって、
前記砥粒が、約30nm~約70nmの範囲の一次粒子径および約50nm~約130nmの範囲の二次粒子径を有するシリカ砥粒であり;
前記塩基化合物が、無機塩基であり;
前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、双性イオンであり;
前記酸化剤が、過酸化物である、研磨用組成物。
【請求項2】
前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、25℃において、約7~約11のpKaを有する、請求項1に記載の研磨用組成物。
【請求項3】
前記砥粒が表面修飾されていない、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項4】
前記砥粒が、約1.5~約2.0の範囲の一次粒子径に対する二次粒子径の比を有する、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項5】
前記砥粒が、約1.6~約1.8の範囲のD90/D50比を有する、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項6】
前記砥粒が、約2.8~約3.1の範囲のD90/D10比を有する、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項7】
前記無機塩基がアルカリ金属水酸化物である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項8】
前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムである、請求項7に記載の研磨用組成物。
【請求項9】
前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)ブタン-1-スルホン酸(CABS)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項10】
前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、25℃において、約9.5~約11のpKaを有する、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項11】
前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項12】
前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が約0.05重量%~約0.2重量%の濃度で存在する、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項13】
pHが約9.5~約10.6の範囲である、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項14】
砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物であって、
前記砥粒が、約60nm~約70nmの範囲の一次粒子径、約110nm~約130nmの範囲の二次粒子径を有するシリカ砥粒であり、その表面が修飾されておらず、約0.1重量%~約2.5重量%の濃度で存在し;
前記塩基化合物が水酸化カリウムであり、約0.2重量%~約0.5重量%の濃度で存在し;
前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)ブタン-1-スルホン酸(CABS)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)およびN-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)からなる群から選択され、約0.8重量%~約1.2重量%の濃度で存在し;
前記酸化剤が過酸化水素であり、約0.8重量%~約1.2重量%の濃度で存在し;
前記研磨用組成物のpHが、約9.5~約10.5である、研磨用組成物。
【請求項15】
研磨対象物が、酸化ケイ素、タンタルおよび銅からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1または2に記載の研磨用組成物。
【請求項16】
基板を研磨する方法であって、
(a)請求項1または2に記載の研磨用組成物を準備する工程;
(b)酸化ケイ素含有層を含む、基板を準備する工程;および
(c)前記研磨用組成物で前記基板を研磨して、研磨された基板を提供する工程を含む、方法。
【請求項17】
前記基板が、タンタル含有層および/または銅含有層をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基板が半導体である、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、酸化ケイ素研磨レート制御剤を含む酸化ケイ素(例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS))化学的機械研磨(CMP)組成物に関する。より詳細には、酸化ケイ素CMP組成物は、特定の量で組み合わせた砥粒、酸化ケイ素研磨レート制御剤、塩基成分および酸化剤を含み、高い安定性を有しつつ、酸化ケイ素(例えばTEOS)の研磨レートを向上する。酸化ケイ素CMP組成物は、特定の量で組み合わせた砥粒、酸化ケイ素研磨レート制御剤、塩基成分および酸化剤を含み、高い酸化ケイ素(例えばTEOS)研磨レートだけではなく、高いタンタル(Ta)研磨レートおよび/または銅(Cu)研磨レートもまた実現する。
【背景技術】
【0002】
化学的機械研磨(CMP)は、基板(半導体ウェーハなど)の表面から材料を除去し、研削などの物理的プロセスと酸化またはキレート化などの化学的プロセスとを組み合わせて表面を研磨(平坦化)するプロセスである。最も基本的な形態では、CMPは、基板表面または基板を研磨する研磨パッドに研磨用組成物を塗布することを必要とする。このプロセスにより、不要な材料の除去および基板表面の平坦化の両方が実現する。除去または研磨プロセスが純粋に物理的または純粋に化学的であることは望ましくなく、むしろ両方の相乗的な組合せを含むことが望ましい。
【0003】
CMPは多種多様な対象物に使用される。その例には、層間または埋め込み誘電体の二酸化ケイ素(SiO2);配線層またはそのような配線層に接続するプラグ内のアルミニウム(Al)、銅(Cu)、およびタングステン(W)などの金属;タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)、およびチタン(Ti)などのバリア金属層、トレンチキャパシタとして使用するためのポリシリコン、ならびに幅広い用途で使用される窒化ケイ素が含まれる。窒化ケイ素の使用に関する例は、誘電性材料、不動態層、エッチングマスクなどを含む。
【0004】
CMPプロセスは、通常、2段階順序で行われる。第1の段階は、基板の表面から銅などの相互接続された金属を迅速に除去するよう特別に設計される。第2の段階は、相互接続された金属構造体の物理構造または電気特性に悪影響を及ぼさないよう試みながら、Taなどのバリア層を除去する。
【0005】
バリア(Taなど)層を除去している間、下層もまた、部分的にまたは完全に除去されることがある。この下層は、酸化ケイ素(例えばテトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate)(TEOS))などのシリコン酸化物含有材料であることが多い。酸化ケイ素(例えばTEOS)は、半導体における薄層フィルムとして一般に使用され、酸化ケイ素(例えばTEOS)薄層フィルムの厚さ、および/またはフィルムの表面特性、例えば、粗さを改変するために研磨を必要とすることがある。
【0006】
したがって、高効率(すなわち、高い研磨レート)で異なる材料から作製された様々な層を除去することができる、研磨用組成物の開発が高度に望まれていると思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本明細書において具体化され、広く説明される、本明細書に開示される主題の目的、または本発明が解決しようとする課題によれば、本発明の目的は、高い安定性を有しつつ、酸化ケイ素(例えばTEOS)の研磨レートを向上する基板研磨用組成物を提供することである。また、本発明の他の目的は、CMP使用時の研磨速度の向上を促進する、酸化ケイ素(例えばテトラエチルオルトシリケート(TEOS))、タンタル(Ta)および/または銅(Cu)などの基板研磨用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、一態様における本開示の主題は、砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物であって、砥粒が、約30nm~約70nmの範囲の一次粒子径、および約50nm~約130nmの範囲の二次粒子径を有するシリカ砥粒であり;塩基化合物が無機塩基であり;酸化ケイ素研磨レート制御剤が、双性イオンであり;酸化剤が、過酸化物である、研磨用組成物に関する。
【0009】
一実施形態によれば、研磨用組成物において、酸化ケイ素研磨レート制御剤が、約7~約11の範囲のpKaを有する。
【0010】
一実施形態において、研磨用組成物は、クエン酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酒石酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-二ホスホン酸(HEDP)、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酪酸およびそれらの組合せからなる群から選択される酸をさらに含むことができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、研磨用組成物は、ベンゾトリアゾールをさらに含むことができる。
【0012】
別の態様において、本明細書に記載される主題は、基板を研磨する方法であって、1)本明細書に記載される研磨用組成物を準備する工程;2)基板であり、酸化ケイ素層(例えばTEOS層)、Ta層およびCu層から選択される1つまたは複数の層を含む基板を準備する工程;および3)研磨用組成物で基板を研磨して、研磨された基板を提供する工程を含む、方法に関する。
【0013】
これらの態様および他の態様が、以下にさらに詳細に開示される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、以下の本発明の詳細な説明、およびそこに含まれる実施例を参照することにより、より容易に理解することができる。なお、本明細書中の数値範囲「A~B」は、AおよびBを含み、「A以上、B以下」を意味する。また、「Aおよび/またはB」とは、「AまたはBのいずれか一方」又は「AおよびBの両方」を意味する。
【0015】
本発明の化合物、組成物、物品、システム、デバイス、および/または方法が開示および説明される前に、それらは、特に明記しない限り特定の合成方法に限定されない、または特に明記しない限り特定の成分に限定されないことを理解されたい。そのような合成方法や成分は当然、変更される場合があるためである。本明細書で使用される専門用語は、特定の態様のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本明細書に記載されるものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、ここで、例示的な方法および材料を記載する。
【0016】
本明細書に記載されるように、本発明の一態様は、砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物である。本態様の研磨用組成物は基板を研磨することを目的としており、該研磨用組成物によれば、高い安定性を有しつつ、酸化ケイ素(例えばTEOS)の研磨レートを向上する。また、一実施形態によれば、該研磨用組成物は、高い安定性と高い酸化ケイ素(例えばTEOS)研磨レートを有し、高いTa研磨レート;および高いCu研磨レート;の、少なくとも1つの利点を示す。また、一実施形態によれば、該研磨用組成物は、1)高い酸化ケイ素(例えばTEOS)研磨レート;2)高いTa研磨レート;3)高いCu研磨レート;および4)高い組成物安定性などの、利点を示す。
【0017】
本明細書に記載される研磨用組成物の高い安定性、酸化ケイ素(例えばTEOS)研磨レート、Ta研磨レートおよびCu研磨レートは、重要な特性である。これらの重要な特性を示す組成物は、必要な量の特定の成分を使用することによって得ることができる。例えば、一実施形態において、砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物は、高い酸化ケイ素(例えばTEOS)研磨レートおよび/またはTa研磨レートおよび/またはCu研磨レートをもたらすことが見出されており、ここで研磨用組成物の各成分の濃度は、このような高い研磨レートが実現するよう特定の量で存在する必要がある。
【0018】
半導体製造に関する主な化学機械研磨(CMP)の課題の1つは、特定の材料の選択的研磨である。銅(Cu)は半導体デバイス制作の相互接続材料として広く使用されている一方、タンタル(Ta)は、バリア材料として広く使用されている。そして、これら銅(Cu)やタンタル(Ta)の層は、酸化ケイ素(例えばTEOS)層上に形成されることが多い。近年、これら銅(Cu)やタンタル(Ta)の層を除去しつつ、下層の酸化ケイ素(例えばTEOS)層も除去することを求められる場合がある。このような場合、銅(Cu)やタンタル(Ta)の研磨をしつつ、酸化ケイ素(例えばTEOS)の研磨も同時に行われるが、銅(Cu)やタンタル(Ta)に比べて、酸化ケイ素(例えばTEOS)は研磨が抑制される傾向にある。そこで、砥粒の安定性を確保するという基本的性能を満たしながら、高いTa研磨レートおよび高いCu研磨レートを有しつつ、酸化ケイ素(例えばTEOS)の研磨レートを向上させることを目的のひとつとする。
【0019】
本明細書に記載される研磨用組成物は、酸化ケイ素含有基板(例えばTEOS含有基板)、Ta含有基板および/またはCu含有基板のCMPなどの用途を有するが、これに限定されない。
【0020】
A.定義
以下に記載されるのは、本発明を記載するために使用される様々な用語の定義である。これらの定義は、個別に、またはより大きな群の一部として、特定の場合で特に制限されていない限り、本明細書全体で使用される用語に適用される。
【0021】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、複数のものを含むものとする。したがって、例えば、「砥粒」または「pH調整剤」への言及は、2種以上のそのような砥粒またはpH調整剤の混合物を含む。
【0022】
範囲は、本明細書では、「約」ある特定の値から、および/または「約」別の特定の値までとして表すことができる。そのような範囲が表される場合、別の態様は、ある特定の値から、および/または他の特定の値までを含む。同様に、先行詞「約」を使用することにより、値が近似として表される場合、特定の値により別の態様が形成されることが理解されよう。さらに、各範囲の端点は、他方の端点との関係で、および他方の端点とは独立して、重要であることが理解されよう。また、本明細書に開示される値は多数あり、各値は、値自体に加えて、「約」その特定の値として本明細書に開示されることも理解される。例えば、値「10」が開示されている場合、「約10」も開示されている。また、2つの特定の構成単位間にある各構成単位も開示されることも理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13、および14も開示されている。
【0023】
本明細書で使用される場合、酸化ケイ素含有基板の例としては、例えば、オルトケイ酸テトラエチルを前駆体として使用して生成されるTEOS(Tetraethyl Orthosilicate)タイプ酸化ケイ素(以下、単に「TEOS」とも称する)、HDP(High Density Plasma)、USG(Undoped Silicate Glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)膜、BPSG(Boron-Phospho Silicate Glass)、RTO(Rapid Thermal Oxidation)等を含む層(膜)が挙げられる。なお、「TEOS」という用語は、テトラエチルオルトシリケートだけを具体的に指すのではなく、テトラエチルオルトシリケートから作製されたシリコン酸化物(二酸化シリコン;SiO2)(シリコン酸化物層)も指す。
【0024】
明細書および結論の請求項における、組成物中の特定の要素または成分の重量部に対する参照は、該要素または成分と、任意の他の要素または成分との間の、重量部が表される組成物または物品中の重量関係を示す。したがって、成分X2重量部および成分Y5重量部を含有する化合物において、XおよびYは、2:5の重量比で存在し、別の成分が組成物に含有されているかどうかに関わらず、該比率で存在する。
【0025】
成分の重量パーセント(重量%)は、特に明記しない限り、成分が含まれているビヒクルまたは組成物の総重量に基づいている。
【0026】
本明細書で使用される場合、「任意の(optional)」および「任意で(optionally)」という用語は、その後に記載される事象または状況が発生する可能性がある、または発生する可能性がないことを意味し、該記載には、該事象または状況が発生する場合および発生しない場合が含まれる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、1~10個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖炭化水素を指す。アルキルの代表例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルなどが含まれるが、これらに限定されない。これらの基は、ハロ(例えば、ハロアルキル)、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロ、ヘテロシクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシ(これによって、ポリエチレングリコールなどのポリアルコキシが生成する)、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、ハロアルコキシ、シクロアルコキシ、シクロアルキルアルキルオキシ、アリールオキシ、アリールアルキルオキシ、ヘテロシクロオキシ、ヘテロシクロルアルキルオキシ(heterocyclolalkyloxy)、メルカプト、カルボキシ、アルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、ハロアルキルアミノ、シクロアルキルアミノ、シクロアルキルアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ヘテロシクロアルキルアミノ、二置換アミノ、エステル、アミド、ニトロまたはシアノから選択される基で置換されていてもよい。
【0028】
本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、1つまたは複数の追加の有機基に結合した部分(ヘテロアリールなど)を指す。いくつかの実施形態において、置換された部分は、1、2、3、4または5つの追加の置換基または基を含む。適切な有機置換基には、ヒドロキシル、アミノ、一置換アミノ、二置換アミノ、メルカプト、アルキルチオール、アルコキシ、置換アルコキシまたはハロアルコキシ基が含まれるが、これらに限定されず、この用語は、本明細書に定義されている。特に本明細書に示さない限り、有機置換基は、1~4個または5~8個の炭素原子を含むことができる。置換された部分が、この上に、1つ超の置換基と結合している場合、この置換基は同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
本明細書で使用される場合、「アルコキシ」という用語は、単独でまたは別の基の一部として使用される場合、-OR基を意味し、Rは、本明細書で定義されているアルキル基である。
【0030】
本明細書で使用される場合、「ハロ」という用語は、F、-Cl、-Brおよび-Iを含む、任意の適切なハロゲンを指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「メルカプト」という用語は、-SH基を指す。
【0032】
本明細書で使用される場合、「シアノ」という用語は、-CN基を指す。
【0033】
本明細書で使用される場合、「カルボン酸」という用語は、-C(O)OH基を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を指す。
【0035】
本明細書で使用される場合、「ニトロ」という用語は、-NO2基を指す。
【0036】
本明細書で使用される場合、「アシル」という用語は、単独でまたは別の基の一部として使用される場合、-C(O)R基を指し、Rは、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたは本明細書に記載される他の適切な置換基などの、任意の適切な置換基である。
【0037】
本明細書で使用される場合、「アルキルチオ」という用語は、単独でまたは別の基の一部として使用される場合、本明細書において定義されているチオ部分を介して親分子部分に結合した、本明細書で定義されているアルキル基を指す。アルキルチオの代表例は、メチルチオ、エチルチオ、tert-ブチルチオ、ヘキシルチオなどを含むが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書で使用される場合、「アミノ」という用語は、-NH2基を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、「アルキルアミノ」または「一置換アミノ」という用語は、単独でまたは別の基の一部として使用される場合、-NHR基を意味し、Rはアルキル基である。
【0040】
本明細書で使用される場合、「二置換アミノ」という用語は、単独でまたは別の基の一部として使用される場合、-NRaRb基を意味し、RaおよびRbは、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロシクロおよびヘテロシクロアルキル基から独立して選択される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「エステル」という用語は、単独でまたは別の基の一部として使用される場合、-C(O)OR基を指し、Rは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールなどの、任意の適切な置換基である。
【0042】
本明細書で使用される場合、「アミド」という用語は、単独でまたは別の基の一部として使用される場合、-C(O)NRaRb基を指し、RaおよびRbは、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニルまたはアリールなどの、任意の適切な置換基である。
【0043】
本明細書で使用される場合、「スルホン酸」という用語は、式-S(O)(O)OHの化合物を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「無置換の」という用語は、上記の1つもしくは複数の追加の有機または無機置換基に結合していない部分(アルキルなど)を指し、このような部分は、水素だけによって置換されていることを意味する。
【0045】
本明細書で使用される場合、「D10」という用語は、粒子(すなわち、本明細書に開示される砥粒)の粒子径分布のパラメータを指し、D10は、最小粒子径分布ヒストグラムから10%の累積数に等しい粒子径として定義される。
【0046】
本明細書で使用される場合、「D50」という用語は、粒子(すなわち、本明細書に開示される砥粒)の粒子径分布のパラメータを指し、D50は、最小粒子径分布ヒストグラムから50%の累積数に等しい粒子径として定義される。
【0047】
本明細書で使用される場合、「D90」という用語は、粒子(すなわち、本明細書に開示される砥粒)の粒子径分布のパラメータを指し、D90は、最小粒子径分布ヒストグラムから90%の累積数に等しい粒子径として定義される。
【0048】
B.研磨用組成物
CMPの基本的なメカニズムは、化学反応によって表面層を軟化させ、次いで研磨粒子を用いた機械的な力によって軟化した層を除去することである。但し、CMPの役割は材料の除去だけでなく、平坦化、表面平滑化、均一性制御、欠陥低減、その他もある。したがって、半導体の歩留まりの向上は、CMP加工の影響を受ける。CMPにより発生する可能性のある表面のスクラッチは、半導体製造において非常に有害な欠陥である。したがって、表面にスクラッチを付けずに適切なCMP性能を達成するには、研磨用組成物の開発が非常に重要である。CMPの要件には、平面度15nm未満の平坦化された表面、表面粗さ1nm未満の粗さのない表面、ウェーハあたりのスクラッチ数およびピット数が0カウントである欠陥のない表面、コンタミネーションがないこと、生産性が高いこと、および除去したい材料の研磨レートが高い状態で平坦化されていること、が含まれる。
【0049】
酸化ケイ素含有基板(例えばTEOS含有基板)で使用するための研磨用組成物において1つの重要な性能指標は、高い酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)を有することである。高いTEOS研磨を備える研磨用組成物は、理想的には、9.5より高いpHで配合される。さらに、高いTaおよび/またはCu研磨レートが観察される。しかし、より重要なことに、これらの研磨用組成物はまた、試験期間全体を通じて、良好な組成物安定性を示す。
【0050】
したがって、本明細書に記載される研磨用組成物の重要な態様には、1)酸化ケイ素(例えばTEOS)、Taおよび/またはCuに対する高い研磨レート;2)所望の極性を有する様々な成分のゼータ電位を維持することで、高い研磨レートを促進する、特定のpH;および3)該研磨用組成物の安定性が含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
1.砥粒
本明細書に記載される研磨用組成物は、砥粒を含有する。砥粒は通常、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゲルマニア、セリアおよびそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される金属酸化物砥粒である。いくつかの実施形態において、砥粒はシリカである。さらなる実施形態において、砥粒はコロイダルシリカである。いくつかの実施形態において、砥粒は、表面修飾されていないコロイダルシリカである。
【0052】
いくつかの実施形態において、砥粒は、市販品または合成生成物のいずれかである。コロイダルシリカの製造方法としては、例えば、ケイ酸ナトリウム法およびゾルゲル法を例示することができ、いずれの方法で製造されたコロイダルシリカも本発明の砥粒として好ましく使用することができる。但し、金属不純物の低減の観点からは、高純度でコロイダルシリカを製造できるゾルゲル法で製造したコロイダルシリカがより好ましい。
【0053】
砥粒は、任意の適切な粒子径を有することができる。いくつかの実施形態では、本発明で使用される砥粒は、10nm以上100nm以下の平均一次粒子径を有する。いくつかの実施形態において、本発明で使用される砥粒は、約10nm~約100nm、約15nm~約90nm、約20nm~約80nm、約30nm~約75nm、約35nm~約75nm、約40nm~約75nm、約45nm~約75nm、約50nm~約75nm、または約55nm~約75nmの平均一次粒子径を有する。いくつかの実施形態において、本発明において使用される砥粒は、約30nm~約80nm、約40nm~約70nm、約55nm~約75nm、または約60nm~約70nmの平均一次粒子径を有する。いくつかの実施形態において、本発明において使用される砥粒は、約10nm~約50nm、約20nm~約40nm、約25nm~約40nm、約30nm~約40nmまたは約35nm~約40nmの平均一次粒子径を有する。砥粒の平均一次粒子径の下限は、好ましくは12nm以上、23nm以上、35nm以上、50nm以上、60nm以上、または65nm以上である。さらに、砥粒の平均一次粒子径の上限は、好ましくは90nm未満、80nm未満、70nm未満、66nm未満、50nm未満、40nm未満、または37nm未満である。
【0054】
なお、砥粒の平均一次粒子径は、FESEM(電界放出形走査電子顕微鏡)により測定することができる。
【0055】
砥粒は、任意の適切な二次粒子径を有することができる。例えば、砥粒は、約50nm~約130nm、約80nm~約130nm、約100nm~約130nm、または約105nm~約130nmの二次粒子径を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒は、約110nm~約125nmの二次粒子径を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒は、約15nm~約75nm、約35nm~約75nm、約45nm~約70nm、または約50nm~約65nmの二次粒子径を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒は、約25nm以上、約50nm以上、約70nm以上、約80nm以上、約90nm以上、約100nm以上または約110nm以上の二次粒子径を有することができる。あるいは、またはさらに、砥粒は、約130nm以下、約120nm以下、約110nm以下、約100nm以下、約90nm以下、約80nm以下、約70nm以下、または約65nm以下の二次粒子径を有することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、開示されている砥粒は、約1.2~約2.5、約1.3~約2.3、約1.4~約2.1、約1.5~約2.0、約1.6~約2.0、または約1.7~約2.0の範囲の、一次粒子径に対する二次粒子径の比を有する。いくつかの実施形態において、一次粒子径に対する二次粒子径の比は、約1.65~約1.95である。いくつかの実施形態において、一次粒子径に対する二次粒子径の比は、約1.7である。いくつかの実施形態において、一次粒子径に対する二次粒子径の比は、約1.9である。いくつかの実施形態において、一次粒子に対する二次粒子径の比は、約2.3未満、約2.1未満、約2.0未満、約1.9未満、約1.8未満、約1.7未満または約1.6未満である。あるいは、またはさらに、一次粒子径に対する二次粒子径の比は、約1.5以上、約1.6以上、約1.7以上、約1.8以上、または約1.9以上である。
【0057】
砥粒は、任意の適切な平均(D50)粒子径を有することができる。例えば、砥粒は、約10nm~約200nm、約20nm~約180nm、約30nm~約170nm、約40nm~約160nm、約50nm~約150nm、約50nm~約140nm、約55nm~約130nm、約60nm~約130nm、約70nm~約130nm、約80nm~約130nm、約90nm~約130nm、約100nm~約130nm、または約105nm~約125nmの平均(D50)粒子径を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒は、約30nm以上、約45nm以上、約55以上または約58nm以上の平均(D50)粒子径を有することができる。あるいは、またはさらに、砥粒は、約100nm以下、約80nm以下、約70nm以下、約60nm以下、または約58nm以下の平均(D50)粒子径を有することができる。
【0058】
粒子径分布測定装置(Horiba粒度分布装置など)は、砥粒の平均粒子径を測定することができる。
【0059】
砥粒は、任意の適切な粒子径分布を有することができる。例えば、砥粒は、約10nm~約100nm、約15nm~約90nm、約20nm~約85nmまたは約30nm~約80nmのD10値を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒は、約10nm~約100nm、約35nm~約100nm、約50nm~約100nm、約55nm~約95nm、約60nm~約90nm、約65nm~約85nmまたは約70nm~約80nmのD10値を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒は、約10nm~約50nm、約20nm~約45nm、約25nm~約40nm、または約30nm~約40nmのD10値を有することができる。
【0060】
いくつかの実施形態において、砥粒は、約50nm~約250nm、約80nm~約200nm、約80nm~約150nm、約85nm~約120nm、約90~約120nmまたは約95nm~約110nmのD90値を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒は、約100nm~約300nm、約150nm~約250nm、約180nm~約240nm、約190nm~約230nm、約195nm~約225nmまたは約200nm~約220nmのD90値を有することができる。
【0061】
砥粒のD90/D50比は、変化し得る。いくつかの実施形態において、砥粒は、少なくとも約1.2以上、少なくとも約1.4以上、少なくとも約1.6以上、または少なくとも約1.7以上のD90/D50比を有することができる。あるいは、またはさらに、砥粒は、約4.0以下、約3.8以下、約3.6以下、約3.2以下、約3.1以下、約2.5以下、約2.0以下、または約1.9以下のD90/D50比を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒のD90/D50比は、約1.0~約2.0、約1.5~約2.0または約1.6~約1.8の範囲である。
【0062】
砥粒のD90/D10比は、変化し得る。いくつかの実施形態において、砥粒は、少なくとも約1.0、少なくとも約2.0、少なくとも約2.5、少なくとも約2.8、少なくとも約2.9または少なくとも約3.0のD90/D10比を有することができる。あるいは、またはさらに、砥粒は、約3.5以下、約3.3以下、約3.2以下、約3.1以下、約3.0以下または約2.9以下のD90/D10比を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒のD90/D10比は、約1.0~約4.0、約2.0~約3.75、約2.8~約3.5、約2.8~約3.2、または2.8~約3.1の範囲である。
【0063】
砥粒は、任意の適切な表面積を有することができる。例えば、砥粒は、約5m2/g以上、約10m2/g以上、約15m2/g以上、約20m2/g以上、約25m2/g以上、約30m2/g以上、約35m2/g以上、約40m2/g以上、約45m2/g以上、約50m2/g以上、約55m2/g以上、約60m2/g以上、約65m2/g以上、約70m2/g以上、約75m2/g以上、約80m2/g以上、または約85m2/g以上の平均BET表面積を有することができる。あるいは、またはさらに、砥粒は、約120m2/g以下、約100m2/g以下、約80m2/g以下、約70m2/g以下、約60m2/g以下、約55m2/g以下、約50m2/g以下、約45m2/g以下、または40m2/g以下の平均BET表面積を有することができる。いくつかの実施形態において、砥粒は、約5m2/g~約100m2/g、約10m2/g~約90m2/g、約15m2/g~約80m2/g、約20m2/g~約70m2/g、約25m2/g~約60m2/g、約30m2/g~約50m2/g、または約35m2/g~約45m2/gの範囲の平均BET表面積を有することができる。
【0064】
いくつかの実施形態において、砥粒は、約10m2/g~約150m2/g、約20m2/g~約150m2/g、約30m2/g~約150m2/g、約40m2/g~約140m2/g、約50m2/g~約130m2/g、約60m2/g~約120m2/g、約70m2/g~約110m2/g、約80m2/g~約100m2/gまたは約85m2/g~約95m2/gの範囲の平均BET表面積を有することができる。
【0065】
砥粒のシリカ表面のシラノール基密度は、変化し得る。いくつかの実施形態において、本発明の研磨用組成物に含有される砥粒のシリカ表面の平均シラノール基密度は、6.0nm-2以下である。平均シラノール基密度が6.0nm-2を超えると、砥粒の硬度が低くなり、それに伴い研磨速度が低下する。
【0066】
砥粒表面の平均シラノール基密度は、好ましくは5.9nm-2以下、またはより好ましくは5.8nm-2以下である。いくつかの実施形態において、砥粒の表面の平均シラノール基密度は、5.9nm-2である。いくつかの実施形態において、砥粒の表面の平均シラノール基密度は、5.8nm-2である。
【0067】
いくつかの実施形態において、砥粒の表面の平均シラノール基密度は、約1.0nm-2~約6.0nm-2、約2.0nm-2~約6.0nm-2、約3.0nm-2~約6.0nm-2、約4.0nm-2~約6.0nm-2、約5.0nm-2~約6.0nm-2、約5.5nm-2~約6.0nm-2、約5.7nm-2~約6.0nm-2であるか、または約5.75nm-2~約5.95nm-2である。
【0068】
平均シラノール基密度の下限値は、0である。
【0069】
砥粒の単位表面積あたりのシラノール基の数は、G.W.Searsによる「Determination of Specific Surface Area of Colloidal Silica by Titration with Sodium Hydroxide」、Analytical Chemistry、1956年、28巻(12号)、1982~1983頁に記載されている中和滴定を使用する、Sears法によって計算することができる。シラノール基の数の計算式は、以下の式で計算される。
【0070】
ρ=(c×a×NA)/(C×S)
ρ:シラノール基の数[個/nm2]
c:滴定に使用した水酸化ナトリウム水溶液の濃度[mol/L]
a:滴下されるpH4~9の水酸化ナトリウム水溶液の量[ml]
NA:アボガドロ数(6.022×1023[個/mol])
C:シリカの質量[g]
S:BET比表面積[nm2/g]
砥粒の単位表面積当たりにおけるシラノール基の数は、砥粒の製造方法の選択などによって制御することができる。
【0071】
さらに、砥粒は、その平均シラノール基密度が上記の範囲内であれば、表面修飾されていてもよい。特に、有機酸が固定化されたコロイダルシリカが好ましい。研磨用組成物に含有されるコロイダルシリカ表面への有機酸のこのような固定化は、例えば、有機酸の官能基をコロイダルシリカ表面へ化学的に結合させることにより行われる。コロイダルシリカと有機酸を共存させるだけでは、有機酸はコロイダルシリカに固定化されない。このような有機酸の1種であるスルホン酸をコロイダルシリカに固定化する場合、例えば、「Sulfonic acid-functionalized silica through quantitative oxidation of thiol groups」Chem. Commun.、2003年、2巻、246~247頁に記載されている方法を利用することができる。より詳細には、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどの、チオール基を有するシランカップリング剤をコロイダルシリカに結合させ、その後、チオール基を過酸化水素で酸化することにより、表面にスルホン酸が固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。あるいは、コロイダルシリカにカルボン酸を固定化する場合、例えば、「Novel Silane Coupling Agents Containing a Photolabile 2-Nitrobenzyl Ester for Introduction of a Carboxy Group on the Surface of Silica Gel」Chemistry Letters、2000年、29巻(3号)、228~229頁に記載されている方法を利用することができる。より詳細には、光分解性の2-ニトロベンジルエステルを含有するシランカップリング剤をコロイダルシリカに結合させ、その後、コロイダルシリカに光を照射することにより、表面にカルボン酸が固定化されたコロイダルシリカを得ることができる。
【0072】
本明細書に記載されるように、実施例および比較例に使用されている砥粒は、スルホン酸表面修飾されているか、または表面修飾されていない。いくつかの実施形態において、砥粒は、表面修飾されていない。
【0073】
一実施形態において、砥粒は、負のゼータ電位を有する。さらなる実施形態において、砥粒は、研磨用組成物中に存在する場合、負のゼータ電位を有するシリカである。負のゼータ電位は、約-60mV~約0mV、約-58mV~約-5mV、約-55mV~約-10mV、約-53mV~約-20mV、約-50mV~約-30mVまたは約-50mV~約-35mVの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される砥粒の負のゼータ電位は、約-35mV、-37mV、-38mV、-39mV、-40mV、-42mV、-44mV、-46mV、-48mVまたは約-50mVである。
【0074】
砥粒のアスペクト比は、変化し得る。いくつかの実施形態において、砥粒の砥粒は、少なくとも約1.0、少なくとも約1.1、少なくとも約1.2、少なくとも約1.3、少なくとも約1.4、少なくとも約1.5、または少なくとも約1.6のアスペクト比を有することができる。あるいは、またはさらに、砥粒の砥粒は、約1.8以下、約1.7以下、約1.6以下、約1.5以下、約1.4以下、約1.3以下、約1.2以下または約1.1以下のアスペクト比を有することができる。なお、アスペクト比は、走査型電子顕微鏡により砥粒粒子の画像に外接する最小の長方形をとり、その長方形の長辺の長さを同じ長方形の短辺の長さで除することにより得られる値の平均であり、一般的な画像解析ソフトウエアを用いて求めることができる。
【0075】
開示される研磨用組成物中に存在する砥粒の量は、変わり得る。いくつかの実施形態において、砥粒は、約0.01重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.25重量%以上、約0.5重量%以上、約0.75重量%以上、約1重量%以上、約1.3重量%以上、約1.5重量%以上、約1.75重量%以上、約2.0重量%以上、約2.5重量%以上または約3重量%以上の濃度で、研磨用組成物中に存在する。あるいは、またはさらに、研磨用組成物中の砥粒の濃度は、約3重量%以下、約2.5重量%以下、約2.3重量%以下、約2.0重量%以下、約1.5重量%以下、約0.75重量%以下、約0.5重量%以下、約0.25重量%以下、約0.1重量%以下、約0.05重量%以下、約0.01重量%以下、または約0.005重量%以下であり得る。いくつかの実施形態において、研磨用組成物中の砥粒の濃度は、約0.1重量%~約3重量%、約0.5重量%~約3重量%、約1.0重量%~約3.5重量%、約1.5重量%~約3.0重量%、約1.5重量%~約2.5重量%、または約1.75重量%~約2.25重量%の範囲であり得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、砥粒の濃度は、酸化ケイ素研磨レート(以下、「酸化ケイ素 RR」;TEOSの場合「TEOS RR」)、Ta研磨レート(Ta RR)および/またはCu研磨レート(Cu RR)などの研磨用組成物の特性に対して影響を及ぼす。一実施形態において、砥粒の濃度は、約1.0重量%~約3.5重量%、約1.1重量%~約3.0重量%または約1.3重量%~約2.5重量%である。一実施形態において、砥粒の濃度は、全組成物に対して、約2.0重量%である。
【0077】
砥粒は任意の妥当なサイズであってよいが、砥粒のサイズは、得られる仕上げの平滑度に影響する。光学部品、プラスチック、金属、宝石、半導体部品などの精密研磨作業材料は、通常、より小さなサイズの砥粒の使用を必要とする。例えば、精密研磨に関連する使用のための組成物は、より小さな平均粒子径を備える砥粒の懸濁液を必要とする。
【0078】
一実施形態において、砥粒はコロイダルシリカである。いくつかの実施形態において、砥粒はコロイダルシリカを実質的に含む。本明細書で使用される場合、「実質的に」とは、砥粒を構成する粒子の95重量%以上、好ましくは98重量%以上、より好ましくは99重量%以上がコロイダルシリカであることを意味し、これは粒子の100重量%がコロイダルシリカであることを含む。
【0079】
砥粒は、本明細書に開示される組成物に懸濁され、コロイド的に安定である。コロイドという用語は、液体キャリア中の研磨粒子の懸濁液を指す。コロイド安定性とは、懸濁液の経時的な維持を指す。いくつかの実施形態において、懸濁液は、少なくとも1、2、3、4、5、6、または7日間安定である。いくつかの実施形態において、懸濁液は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間安定である。
【0080】
本発明の文脈において、研磨用組成物は、シリカを100mLメスシリンダーに入れ、2時間撹拌せずに放置したときに、メスシリンダーの下部50mLにおける粒子濃度([B]、g/mL単位)と、メスシリンダーの上部50mLにおける粒子濃度([T]、g/mL単位)の差を、研磨用組成物中における粒子の総濃度([C]、g/mL単位)で割った値が0.5以下である(すなわち、([B]-[T])/[C]≦0.5である)場合に、コロイド的に安定であると見なされる。([B]-[T]/[C])の値は、望ましくは0.3以下であり、好ましくは0.1以下である。
【0081】
2.酸化剤
研磨用組成物に添加される酸化剤は、研磨対象物の表面を酸化させる作用を有し、研磨用組成物による研磨対象物の研磨速度を向上させるものである。いくつかの実施形態において、酸化剤は過酸化物である。例示的な過酸化物には、過酸化水素、過酸化ナトリウム、過酸化バリウム、およびそれらの塩が含まれる。いくつかの実施形態において、酸化剤は過酸化水素である。
【0082】
他の酸化剤のさらなる例には、オゾン水、銀(II)塩、過マンガン酸、クロム酸、二クロム酸、ペルオキソ二硫酸、ペルオキソリン酸、ペルオキソ硫酸、過ホウ酸、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、ペルフタル酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、塩素酸、亜塩素酸、過塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、過硫酸、ジクロロイソシアヌル酸、およびこれらの塩が含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態において、他の酸化剤は、アミンオキシド化合物を含んでもよい。アミンオキシド化合物の非限定的な例には、N-メチルモルホリンN-オキシド、ミリストアミンオキシド、ラウアミンオキシド(lauamine oxide)、デシルアミンオキシド、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N-ジメチルラウリルアミンオキシドが含まれるが、これらに限定されない。これらの酸化剤は、単独で、またはそれらの2種以上の種類のものの混合物のどちらかで使用され得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、酸化剤の濃度は、TEOS、Taおよび/またはCuなどの、研磨用組成物の特性に影響を及ぼす。酸化剤は、約0.1重量%~約10重量%、約0.25重量%~約7.5重量%、約0.3重量%~約3重量%、約0.5重量%~約2.5重量%、約0.5重量%~約2重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.8重量%~約1.25重量%または約0.8重量%~約1.20重量%の範囲の濃度で存在し得る。いくつかの実施形態において、酸化剤の濃度は、約0.001重量%~約2重量%、約0.01重量%~約2重量%、約0.01重量%~約1.5重量%、約0.1重量%~約1.5重量%、約0.5重量%~約1.5重量%、約0.75重量%~約1.25重量%または約1.0重量%の範囲にあってもよい。いくつかの実施形態において、酸化剤は、約0.01重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、約0.3重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、または約0.6重量%以上の濃度で存在する。あるいは、またはさらに、酸化剤の量は、約5.0重量%以下、約3.50重量%以下、約2.0重量%以下、約1.50重量%以下、約1.25重量%以下、約1.0重量%以下、約0.5重量%以下、または約0.1重量%以下である。
【0084】
酸化剤の百分率は、組成物全体に対して測定される。さらに、酸化剤の百分率は、ポイントオブユース(POU)組成物として測定される。本明細書で使用される場合、「ポイントオブユース」という用語は、CMPプロセスで使用するために個々の研磨装置研磨用組成物を供給する、研磨装置の近くで調製され使用される組成物を指す。
【0085】
3.酸化ケイ素研磨レート制御剤
一態様において、研磨用組成物は、酸化ケイ素研磨レート制御剤を含んでもよい。このような酸化ケイ素研磨レート制御剤は、任意の作用剤とすることができるが、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、双性イオンである。本明細書で使用される場合、双性イオンは、分子上の隣接部位または非隣接部位のいずれかにおいて、2つの個別の反対の電荷を有することを特徴とする。
【0086】
また、酸化ケイ素研磨レート制御剤は特定のpKaを示すことが好ましい。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に開示される酸化ケイ素研磨レート制御剤は、25℃において、約7~約11、約7.5~約11、約8~約11、約8.5~約11、約9~約11、約9.5~約11、約9.6~約11、約10~約11または約10.4~約11のpKaを有する。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、25℃において、約7.5~約11.0、約8.0~約11.0、約8.5~約11.0、約9.0~約11.0、約9.5~約11.0または約9.5~約10.5のpKaを有する。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、25℃において、少なくとも約7、少なくとも約8、少なくとも約9、少なくとも約9.4、少なくとも約9.5または少なくとも約9.7のpKaを有する。あるいは、またはさらに、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、25℃において、約11以下、約10.9以下、約10.8以下、約10.7以下、約10.5以下、約10.4以下、約10以下、約9.6以下、約9.5超または約9.4以下であるpKaを有する。
【0087】
いくつかの実施形態において、上記のpKaは、室温(すなわち、20℃~25℃の間)におけるものである。いくつかの実施形態において、上記のpKaは、高温(すなわち、約40℃)におけるものである。
【0088】
酸化ケイ素研磨レート制御剤は、双性イオンである。いくつかの実施形態において、双性イオンは、スルホン化された双性イオンである。いくつかの実施形態において、双性イオンは、スルホ基(-SO3H)を有する第1級アミン、第2級アミンまたは第3級アミンである。いくつかの実施形態において、双性イオンは、スルホ基(-SO3H)を有する第2級アミンまたはスルホ基(-SO3H)を有する第3級アミンである。いくつかの実施形態において、双性イオンは、アミノアルキルスルホ基(-NH-R1-SO3H;R1は炭素原子数1~6の置換または無置換のアルキレン基)を有する化合物である。ここで、NH-R1-SO3Hにおいて、R1は炭素原子数1~4であるのが好ましく、炭素原子数1~3であるのがより好ましい。アルキレン基を置換する置換基としては、ヒドロキシ基であるのが好ましい。
【0089】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、25℃において約8.0~約11.0(好ましくは約9.5~約11.0)のpKaを有する、スルホ基(-SO3H)を有する第2級アミンまたはスルホ基(-SO3H)を有する第3級アミンである。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、25℃において約8.0~約11.0(好ましくは約9.5~約11.0)のpKaを有する、アミノアルキルスルホ基(-NH-R1-SO3H;R1は炭素原子数1~6の置換または無置換のアルキレン基)を有する化合物である。
【0090】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、下記式(a-1)または(a-2):
【0091】
【0092】
式(a-1)において、
RaおよびRbは、それぞれ独立して、水素、置換(C1~C6)アルキル基または無置換(C1~C6)アルキル基であり、ここで、RaおよびRbは、互いに結合して環を形成してもよく(ただし、ピペラジン環を除く)、
Rcは、単結合、置換(C1~C6)アルキレン基または無置換(C1~C6)アルキレン基である;
【0093】
【0094】
式(a-2)において、
Rdは、単結合、置換(C1~C6)アルキレン基または無置換(C1~C6)アルキレン基であり、
Reは、水素、置換(C1~C6)アルキル基、無置換(C1~C6)アルキル基または-Rf-SO3H(ここで、Rfは、単結合、置換(C1~C6)アルキレン基または無置換(C1~C6)アルキレン基である)である;
で表される化合物である。
【0095】
ここで、Ra、Rb、Reにおける(C1~C6)アルキル基とは、炭素原子数1~6の直鎖、分枝または環状のアルキル基を表す。(C1~C6)アルキルとしては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。RaおよびRbが互いに結合して環を形成した場合、環形成原子に窒素が含まれていてもよい(この場合、RaまたはRbが置換基としてアミノ基を有する置換(C1~C6)アルキルであり、アミノ基の窒素原子が置換されて環形成原子となる)。RaまたはRbが互いに結合して環を形成する場合、形成される環としては、ピペラジン環を除く5~6員環化合物が挙げられ、例えば、ピロリジン環、イミダゾリジン環、ピラゾリジン、ピペリジン環等が例示できる。
【0096】
Rc、Rd、Rfにおける(C1~C6)アルキレン基とは、炭素原子数1~6の直鎖、分枝または環状のアルキレン基を表す。(C1~C6)アルキレンとしては、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレン、n-ブチレン、sec-ブチレン、イソブチレン、tert-ブチレン、n-ペンチレン、イソペンチレン、ネオペンチレン、n-ヘキシル、シクロヘキシレン等が挙げられる。
【0097】
Ra~Rfにおいて基が置換されている場合の置換基としては、上述した「置換された」という用語の説明に記載の基が適用されうる。それらのなかでも、Ra~Rfにおける置換基としては、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アミノ基、メルカプト基、(C1~C6)アルキルチオール基、(C1~C6)アルコキシ基等が好ましく、ヒドロキシ基、ハロゲン基、アミノ基がより好ましい。
【0098】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、式(I)の化合物:
【0099】
【0100】
であり、
式中、nは、1~10から選択される整数であり、
Rは、各場合において、-H、-OH、-NH2、-COOH、置換(C1~C6)アルキルおよび無置換(C1~C6)アルキルからなる群から、選択される。
【0101】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、nが、2、3および4から選択される整数である、式(I)の化合物である。
【0102】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、各場合において、Rが-Hである、式(I)の化合物である。
【0103】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、nが、2、3および4から選択される整数であり、Rが、各場合において、-Hである、式(I)の化合物である。
【0104】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、nが、2、3および4から選択される整数であり、Rが、1つの場合において、-OHである、式(I)の化合物である。
【0105】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤が、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)ブタン-1-スルホン酸(CABS)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、ピペラジン-1,4-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)、2-[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル]-エタンスルホン酸(HEPES)および それらの組合せからなる群から選択される。
【0106】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤が、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)ブタン-1-スルホン酸(CABS)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)およびそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)である。
【0107】
いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、100重量%としての研磨用組成物の総量に基づいて、約0.01重量%~約1.5重量%、約0.01重量%~約1.25重量%、約0.01重量%~約1.0重量%、約0.01重量%~約0.75重量%、約0.01重量%~約0.5重量%、約0.1重量%~約0.5重量%、または約0.1重量%~約0.3重量%の範囲の濃度で、研磨用組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤は、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.04重量%以上、約0.06重量%以上、約0.08重量%以上、約0.1重量%以上、約0.12重量%以上、約0.14重量%以上、約0.16重量%以上、約0.18重量%以上、約0.2重量%以上、約0.5重量%以上または約0.8重量%以上の濃度で、研磨用組成物中に存在する。あるいは、またはさらに、研磨用組成物中の酸化ケイ素研磨レート制御剤の濃度は、約2.0重量%以下、約1.5重量%以下、約1.2重量%以下、約1.0重量%以下、約0.75重量%以下、約0.5重量%以下、約0.30重量%以下、約0.25重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下または約0.05重量%以下であり得る。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート制御剤の濃度は、約0.01重量%~約1.00重量%、約0.05重量%~約0.50重量%または約0.2重量%である。
【0108】
4.塩基化合物
一態様において、研磨用組成物は、塩基化合物を含むことができる。いくつかの実施形態において、塩基化合物は無機塩基である。無機塩基の非限定的な例は、アルカリ金属水酸化物である。いくつかの実施形態において、無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムおよびそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、無機塩基は水酸化カリウムである。
【0109】
塩基化合物は、特定の濃度範囲で存在し得る。例えば、いくつかの実施形態において、塩基化合物の量は、約0.01重量%~約2.0重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.1重量%~約0.8重量%、約0.1重量%~約0.6重量%、約0.2重量%~約0.5重量%または約0.3重量%~約0.4重量%の範囲である。いくつかの実施形態において、塩基化合物の量は、約1.0重量%未満、約0.8重量%未満、約0.6重量%未満、約0.5重量%未満、約0.4重量%未満、約0.3重量%未満または約0.2重量%未満である。いくつかの実施形態において、塩基化合物の量は、少なくとも約0.05重量%以上、少なくとも約0.1重量%以上、少なくとも約0.2重量%以上、少なくとも約0.3重量%以上、少なくとも約0.4重量%以上または少なくとも0.5重量%以上である。
【0110】
5.酸成分(酸化合物)
一態様において、研磨用組成物は、酸成分(「酸化合物」とも称する)を含有してもよい。酸成分中の酸は、これが、所望の酸性度を示す限り、特に限定されない。いくつかの実施形態において、酸成分は有機酸である。いくつかの実施形態において、有機酸は、クエン酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酒石酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-二ホスホン酸(HEDP)、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酪酸およびそれらの組合せからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、有機酸はクエン酸である。
【0111】
研磨用組成物中に存在する酸成分の量は、変わり得る。いくつかの実施形態において、酸成分は、約0.01重量%~約1重量%、約0.02重量%~約0.75重量%、約0.05重量%~約0.5重量%、約0.15重量%~約0.2重量%または約0.1重量%の量で、研磨用組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.1重量%、少なくとも約0.15重量%または少なくとも約0.2重量%の酸成分の量が、研磨用組成物中に存在する。いくつかの実施形態において、酸成分は、約1重量%未満、約0.5重量%未満、約0.4重量%未満、約0.3重量%未満、約0.25重量%未満、約0.2重量%未満または約0.15重量%未満の量で存在する。いくつかの実施形態において、酸成分は、0.1重量%の量で、研磨用組成物中に存在する。
【0112】
6.pH調整剤
本開示の研磨用組成物は、pHを制御するため、少なくとも1種のpH調整剤を任意で含有する。一実施形態において、pH調整剤は、塩基性化合物である。塩基性化合物は、該化合物が溶解している研磨用組成物のpHを上げる機能を有する様々な塩基性化合物から適切に選択することができる。例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、様々な炭酸塩、重炭酸塩などの無機塩基性化合物を使用することができる。このような塩基性化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0113】
アルカリ金属水酸化物の具体例には、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウムなどが含まれる。炭酸塩および炭酸水素塩の具体例には、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが含まれる。
【0114】
代替実施形態において、pH調整剤は、性質が酸性であり得る。酸の選択は特に限定されず、但し、酸の強度が、本発明の研磨用組成物のpHを低下させるのに十分であることを条件とする。
【0115】
酸性pH調整剤は、無機酸であってもよく、有機酸であってもよい。例えば、これらに限定されないが、そのような無機酸には、塩酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、炭酸、次亜リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、およびリン酸が含まれる。
【0116】
例えば、限定されないが、そのような有機酸には、ギ酸、酢酸、クロロ酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、吉草酸、2-メチル酪酸、N-ヘキサン酸、3,3-ジメチルブタン酸、2-エチルブタン酸、4-メチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘキサン酸、n-オクタン酸、2-エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコール酸、サリチル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸塩、クエン酸、乳酸、ジグリコール酸、2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸、2-テトラヒドロフランカルボン酸、メトキシ酢酸、メトキシフェニル酢酸およびフェノキシ酢酸が含まれる。そのような有機酸はまた、限定されないが、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸およびイセチオン酸などの有機スルホン酸を含む。
【0117】
pH調整剤は、酸性剤と塩基性剤(緩衝剤など)との混合物であってもよい。
【0118】
いくつかの実施形態において、研磨用組成物のpHは、約6.5~約12.0、約7.5~約11.5、約8.5~約11.0、約9.0~約11.0、約9.5~約10.6、約9.5~約10.5または約9.8~約10.2の範囲に調整される。いくつかの実施形態において、pHは、約6未満、約5未満、約4未満または3未満である。あるいは、またはさらに、pHは、約7.0超、約8.0超、約9.2超、約9.3超または約9.6超である。いくつかの実施形態において、pHは、約11.0以下、約10.8以下、約10.6以下、約10.4以下、約10.3以下、約10.2以下または約10.1以下である。いくつかの実施形態において、pHは、約10.0である。
【0119】
pH調整剤は、pHに関係なく、特定の濃度範囲で存在し得る。例えば、いくつかの実施形態において、pH調整剤の量は、約0.0001重量%~約1重量%、約0.005重量%~約0.5%、または約0.001重量%~約0.1重量%の範囲である。代替実施形態において、pH調整剤の量は、約0.0001重量%~約0.0010重量%、約0.0003重量%~約0.0009重量%または約0.0005重量%~約0.0008重量%の範囲である。代替実施形態において、pH調整剤の量は、約0.0009重量%~約0.0040重量%または約0.0010重量%~約0.0030重量%の範囲である。さらに代替的な実施形態において、pH調整剤は、約0.001重量%~約0.01重量%の範囲である。いくつかの実施形態において、pH調整剤の量は、少なくとも約0.0001重量%、少なくとも約0.0005重量%、少なくとも約0.001重量%、少なくとも約0.005重量%、少なくとも約0.01重量%、少なくとも約0.025重量%、少なくとも約0.05重量%、少なくとも約0.075重量%または少なくとも約0.1重量%の量で存在する。いくつかの実施形態において、pH調整剤は、約0.01重量%未満、約0.005重量%未満、約0.001重量%未満または約0.0005重量%未満の量で存在する。いくつかの実施形態において、pH調整剤は、約0.0001重量%、約0.00025重量%、約0.0005重量%、約0.0006重量%、約0.0007重量%、約0.0008重量%、約0.0009重量%、約0.001重量%、約0.005重量%、約0.0075重量%、約0.01重量%、約0.025重量%または約0.05重量%である量で存在する。
【0120】
7.水
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される研磨用組成物は、キャリア、媒体、またはビヒクルを含有する。いくつかの実施形態において、キャリア、媒体、またはビヒクルは水である。イオン交換水(脱イオン水)、純水、超純水、蒸留水などを水として使用することができる。水中に存在する不要な成分の量を減らすために、イオン交換樹脂による不純物イオンの除去、フィルターによる汚染物質の除去、および/または蒸留などの操作によって、水の純度を高めてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態において、水は比較的不純物を含まない。いくつかの実施形態において、水は、水の総重量に基づいて約10%w/w、約9%w/w、約8%w/w、約7%w/w、約6%w/w、約5%w/w、約4%w/w、約3%w/w、約2%w/w、約1%w/w、約0.9%w/w、約0.8%w/w、約0.7%w/w、約0.6%w/w、約0.5%w/w、約0.4%w/w、約0.3%w/w未満、または約0.1%w/w未満の不純物を含有する。
【0122】
8.追加の成分
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される研磨用組成物は、腐食防止剤、多糖、キレート剤、殺生物剤、界面活性剤、または共溶媒などの追加の成分を含有し得る。さらに、またはあるいは、本明細書に開示される組成物は、当業者によって理解されるように、他の添加剤を含んでもよい。
【0123】
別の実施形態において、追加の成分は、腐食防止剤を含んでもよい。腐食防止剤の非限定的な例は、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-2-ピラゾリン-5-オン、8-ヒドロキシキノリンおよびジシアンジアミド、ベンゾトリアゾールおよびその誘導体、ピラゾールおよびその誘導体、イミダゾールおよびその誘導体、ベンゾイミダゾールおよびその誘導体、イソシアヌレートおよびその誘導体およびそれらの混合物を含むことができる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される研磨用組成物は、ベンゾトリアゾール(BTA)を含有する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される研磨用組成物は、1-メチルベンゾトリアゾールまたは5-メチルベンゾトリアゾールを含有する。研磨用組成物中に存在する腐食防止剤の濃度は、約0.0005重量%~約0.25重量%、約0.001重量%~約0.25重量%、約0.01重量%~約0.25重量%、約0.05重量%~約0.20重量%、約0.05重量%~約0.15重量%または約0.07重量%~約0.12重量%の範囲にあってもよい。いくつかの実施形態において、研磨用組成物中に存在する腐食防止剤の濃度は、腐食防止剤が約0.02重量%~約0.10重量%または好ましくは、約0.05重量%~約0.15重量%の範囲にあってもよい。いくつかの実施形態において、研磨用組成物中に存在する腐食防止剤の濃度は、0.10重量%である。
【0124】
代替的な実施形態において、研磨用組成物は、腐食防止剤を含まない。「腐食防止剤不含」という用語は、本明細書で使用される場合、研磨用組成物が、腐食防止剤として当分野において公知の化合物を含有しないことを意味する。
【0125】
一実施形態において、炭水化物は、プルランとして知られている多糖である。多糖であるプルランは、3個のα-1,4-連結したグルコース分子からなるマルトトリオース単位から構成され、α-1,6-結合によってさらに連結されている。一実施形態において、プルランは、10,000~1,000,000の範囲の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、プルランの濃度は、約0.02重量%などの、約0.01重量%~約0.05重量%の範囲で研磨用組成物中に存在する。
【0126】
代替的な実施形態において、研磨用組成物は、炭水化物を含まない。本明細書で使用する「炭水化物不含」という用語は、研磨用組成物が、炭水化物として当分野において公知の化合物を含有しないことを意味する。
【0127】
別の実施形態において、追加の成分は、キレート剤を含んでもよい。キレート剤という用語は、水溶液の存在下で銅などの金属をキレート化する任意の物質を意味することを意図している。キレート剤の非限定的な例には、無機酸、有機酸、アミン、およびグリシン、アラニンなどのアミノ酸、クエン酸、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、フタル酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン、CDTA、およびEDTAが含まれる。
【0128】
代替的な実施形態において、研磨用組成物は、キレート剤を含まない。「キレート剤不含」という用語は、本明細書で使用される場合、研磨用組成物が、キレート剤として当分野において公知の化合物を含有しないことを意味する。キレート剤の非限定的な例には、グリシン、アラニン、クエン酸、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、マロン酸、フタル酸、コハク酸、ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン、CDTAおよびEDTAなどの化合物を含む。
【0129】
いくつかの実施形態において、追加の成分は、殺生物剤であってもよい。殺生物剤の非限定的な例には、過酸化水素、第四級アンモニウム化合物、および塩素化合物が含まれる。第四級アンモニウム化合物のより詳細な例には、メチルイソチアゾリノン、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラプロピルアンモニウムクロリド、アルキル鎖の炭素原子が1~約20の範囲であるアルキルベンジルジメチルアンモニウムクロリドおよびアルキルベンジルジメチルアンモニウムヒドロキシドが含まれるが、これらに限定されない。塩素化合物のより詳細な例には、亜塩素酸ナトリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムが含まれるが、これらに限定されない。殺生物剤の追加の例には、ビグアニド、アルデヒド、エチレンオキシド、イソチアゾリノン、ヨードフォア、DuPontのKordek(商標)MLX(2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの水性組成物)、Dow chemicalsから市販されているKATHON(商標)およびNEOLENE(商標)製品群、ならびにLanxessのPreventol(商標)群が含まれる。研磨用組成物において使用される殺生物剤の量は、約0.0001重量%~0.10重量%、好ましくは0.0001重量%~0.005重量%およびより好ましくは0.0002重量%~0.0025重量%の範囲であってもよい。
【0130】
別の実施形態において、追加の成分は界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、または両性イオン性であり得、ビヒクルまたは組成物の潤滑性を増加させ得る。界面活性剤の非限定的な例は、ドデシル硫酸塩、ナトリウム塩またはカリウム塩、ラウリル硫酸塩、第二級アルカンスルホン酸塩、アルコールエトキシレート、アセチレンジオール界面活性剤、第四級アンモニウムベースの界面活性剤、ベタインなどの両性界面活性剤、アミノ酸誘導体ベースの界面活性剤、およびそれらの任意の組合せである。適切な市販の界面活性剤の例には、Dow Chemicalsによって製造されている、TRITON(商標)、TERGITOL(商標)、DOWFAX(商標)というファミリーの界面活性剤、およびAir Products and Chemicalsによって製造されている、SURFYNOL(商標)、DYNOL(商標)、ZETASPERSE(商標)、NONIDET(商標)およびTOMADOL(商標)という界面活性剤ファミリーにおける様々な界面活性剤を含む。また、界面活性剤のうちの適切な界面活性剤には、エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)基を含む高分子も含まれ得る。EO-PO高分子の例は、BASF ChemicalsのTETRONIC(商標)90R4である。アセチレンジオール界面活性剤の例は、Air Products and Chemicals製のDYNOL(商標)607である。研磨用組成物に使用される界面活性剤の量は、約0.0005重量%~0.15重量%、好ましくは0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは0.0025重量%~0.025重量%の範囲で変動し得る。
【0131】
別の実施形態において、追加の成分は、共溶媒と呼ばれる別の溶媒を含み得る。共溶媒の非限定的な例には、アルコール(メタノールまたはエタノールなど)、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アルカン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、トルエン、ケトン(アセトンなど)、アルデヒド、およびエステルが含まれるが、これらに限定されない。共溶媒の他の非限定的な例には、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ピリジン、アセトニトリル、グリコール、およびそれらの混合物が含まれる。共溶媒は、様々な量で、好ましくは下限約0.0001、0.001、0.01、0.1、0.5、1、5、または10%(重量%)~上限約0.001、0.01、0.1、1、5、10、15、20、25、または35%(重量%)まで使用することができる。
【0132】
本明細書に記載されるように、研磨用組成物は、組成物中の成分の種類および量の両方によって大きく影響される特定の特性を有する。したがって、所望の特性を維持するため、特定の材料を組成物から除外する必要がある場合がある。
【0133】
本発明の研磨用組成物は、任意の適切な技術によって調製することができ、その多くは当業者に知られている。研磨用組成物は、バッチまたは連続プロセスで調製することができる。一般に、研磨用組成物は、本明細書に開示される成分を任意の順序で組み合わせることによって調製することができる。本明細書で使用する「成分」という用語は、個々の成分(例えば、砥粒、酸化ケイ素研磨レート制御剤、酸化剤、塩基成分など)および成分の任意の組合せを含む。例えば、砥粒を水に分散させることができ、酸化ケイ素研磨レート制御剤、塩基化合物および酸化剤、ならびに任意の他の添加剤を添加し、成分を研磨用組成物に組み込むことができる任意の方法によって混合することができる。所望する場合、必要に応じて酸、塩基、または緩衝液を添加することにより、任意の適切な時間にpHをさらに調整することができる。
【0134】
本明細書に記載される研磨用組成物は、高い安定性を有する。例えば、後述する実施例に記載の安定性試験(3日後のMPS Gap)が、25以下であれば高い安定性を有すると判断できる。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される研磨用組成物は、後述する実施例に記載の安定性試験(3日後のMPS Gap)が、20以下、15以下、10以下、または5以下である。なお、安定性試験(3日後のMPS Gap)は、Malvern Panalytical ZetaSizer Nano light scattering system)を用いて、砥粒の平均粒子径(Mean Particle Size;MPS)の変化を評価するものである。具体的には、組成物を調製直後の平均粒子径MPS1と、55℃で3日間保管後の平均粒子径MPS2との差(MPS2-MPS1(単位:nm))を計算することにより得られる値である。
【0135】
したがって、本明細書に記載される研磨用組成物は、酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)、Ta研磨レートおよび/またはCu研磨レート性能によって例示される特定の特性を有する。
【0136】
本明細書に記載される研磨用組成物は、TEOS、タンタルおよび銅からなる群より選択される1種以上を含む研磨対象物を研磨するのに用いられる。いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される研磨用組成物は、TEOSと、タンタルおよび/または銅を含む研磨対象物を研磨するのに用いられる。
【0137】
本明細書に開示される研磨用組成物について、研磨用組成物は、少なくとも約60Å/分以上;少なくとも約70Å/分以上;少なくとも約74Å/分以上;少なくとも約80Å/分以上;少なくとも約85Å/分以上;少なくとも約90Å/分以上;少なくとも約95Å/分以上;少なくとも約100Å/分以上;少なくとも約105Å/分以上;少なくとも約110;または少なくとも約115Å/分以上の酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)を有する。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)は、約60Å/分~約150Å/分;約70Å/分~約125Å/分;約79Å/分~約120Å/分;約98Å/分~約118Å/分;約98Å/分~約111Å/分;または約100Å/分~約111Å/分の範囲である。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)は、約95Å/分~約130Å/分;約95Å/分~約120Å/分;約100Å/分~約125Å/分;約105Å/分~約120Å/分;約105Å/分~約115Å/分;または約110Å/分~約115Å/分の範囲である。
【0138】
本明細書に開示される研磨用組成物について、研磨用組成物は、少なくとも約75Å/分以上;少なくとも約85Å/分以上;少なくとも約95Å/分以上;少なくとも約105Å/分以上;少なくとも約110Å/分以上;少なくとも約115Å/分以上;少なくとも約120Å/分以上;少なくとも約125Å/分以上;少なくとも約130Å/分以上;少なくとも約135Å/分以上;少なくとも約140;または少なくとも約145Å/分以上のTa研磨レートを有する。いくつかの実施形態において、Ta研磨レートは、約75Å/分~約200Å/分;約75Å/分~約175Å/分;約100Å/分~約160Å/分;約115Å/分~約160Å/分;約125Å/分~約155Å/分;約130Å/分~約155Å/分;約135Å/分~約155Å/分;または約140Å/分~約150Å/分の範囲である。いくつかの実施形態において、Ta研磨レートは、約100Å/分~約145Å/分;約105Å/分~約135Å/分;約115Å/分~約130Å/分;約120Å/分~約130Å/分;または約125Å/分~約130Å/分の範囲である。
【0139】
本明細書に開示される研磨用組成物について、研磨用組成物は、少なくとも約40Å/分以上;少なくとも約50Å/分以上;少なくとも約60Å/分以上;少なくとも約70Å/分以上;少なくとも約80Å/分以上;少なくとも約90Å/分以上;少なくとも約100Å/分以上;少なくとも約105Å/分以上;少なくとも約110Å/分以上;または少なくとも約115Å/分以上のCu研磨レートを有する。いくつかの実施形態において、Cu研磨レートは、約50Å/分~約150Å/分;約70Å/分~約141Å/分;約80Å/分~約141Å/分;約90Å/分~約133Å/分;約100Å/分~約130Å/分;110Å/分~約130Å/分;または約115Å/分~約130Å/分の範囲である。
【0140】
したがって、本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態において、砥粒、塩基成分、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物であって、砥粒が、約30nm~約70nmの範囲の一次粒子径、および約50nm~約130nmの範囲の二次粒子径を有するシリカ砥粒であり、塩基化合物が無機塩基であり、酸化ケイ素研磨レート制御剤が、25℃において約7~約11の範囲のpKaを有し、酸化剤が過酸化物である、研磨用組成物である。
【0141】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、表面修飾されていない砥粒を含む。
【0142】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約60nm~約70nmの範囲の一次粒子径を有する砥粒を含む。
【0143】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約105nm~約125nmの範囲の二次粒子径を有する砥粒を含む。
【0144】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約1.5~約2.0(好ましくは約1.6~約2.0、より好ましくは約1.7~約2.0)の範囲の一次粒子径に対する二次粒子径の比を有する砥粒を含む。
【0145】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約1.6~約1.8の範囲のD90/D50比を有する砥粒を含む。
【0146】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約2.8~約3.1の範囲のD90/D10比を有する砥粒を含む。
【0147】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約100nm~約220nmのD90を有する砥粒を含む。
【0148】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約30nm~約75nmのD10を有する砥粒を含む。
【0149】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約55nm~約60nmのD50を有する砥粒を含む。
【0150】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約0.1重量%~約3.0重量%の濃度で存在する砥粒を含む。
【0151】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、アルカリ金属水酸化物である無機塩基を含む。
【0152】
上記の任意の実施形態のように、アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムである、研磨用組成物。
【0153】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約0.1重量%~約1重量%の濃度で存在する塩基化合物を含む。
【0154】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)ブタン-1-スルホン酸(CABS)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)およびそれらの組合せからなる群から選択される、酸化ケイ素研磨レート制御剤を含む。
【0155】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、25℃において約9.5~約11(好ましくは約9.5~約10.8、より好ましくは約9.5~約10.5)のpKaを有する、酸化ケイ素研磨レート制御剤を含む。
【0156】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)である、酸化ケイ素研磨レート制御剤を含む。
【0157】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約0.01重量%~約0.5重量%の濃度で存在する、酸化ケイ素研磨レート制御剤を含む。
【0158】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約0.3重量%~約3.0重量%の濃度で存在する、酸化ケイ素研磨レート制御剤を含む。
【0159】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、ベンゾトリアゾールをさらに含む。
【0160】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約0.01重量%~約0.15重量%の濃度で存在する、ベンゾトリアゾールをさらに含む。
【0161】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約0.1重量%~約2.5重量%の濃度で存在する砥粒を含む。
【0162】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、クエン酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酒石酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-二ホスホン酸(HEDP)、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酪酸およびそれらの組合せからなる群から選択される酸をさらに含む。
【0163】
上記の任意の実施形態のように、酸がクエン酸である、研磨用組成物。
【0164】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約0.01重量%~約1.0重量%の濃度で存在する酸をさらに含む。
【0165】
上記の任意の実施形態のように、約9.5~約11(好ましくはpHが約9.5~約10.8)の範囲である、研磨用組成物。
【0166】
上記の任意の実施形態のように、pHが約9.5~約10.6の範囲である、研磨用組成物。
【0167】
さらに、本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態において、砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物であって、
砥粒が、約60nm~約70nmの範囲の一次粒子径、約110nm~約130nmの範囲の二次粒子径を有するシリカ砥粒であり、その表面が修飾されておらず、シリカ砥粒は、約0.1重量%~約2.5重量%の濃度で存在し、
塩基化合物が水酸化カリウムであり、約0.2重量%~約0.5重量%の濃度で存在し、
酸化ケイ素研磨レート制御剤が、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)ブタン-1-スルホン酸(CABS)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)およびN-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)からなる群から選択され、約0.8重量%~約1.2重量%の濃度で存在し、
酸化剤が過酸化水素であり、約0.8重量%~約1.2重量%の濃度で存在し、
該研磨用組成物のpHが約9.5~約10.5である、研磨用組成物である。
【0168】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約0.05重量%~約0.15重量%の濃度で存在するベンゾトリアゾールをさらに含む。
【0169】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、約0.05重量%~約0.15重量%の濃度で存在するクエン酸をさらに含む。
【0170】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、少なくとも約100Å/分の酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)をさらに有する。
【0171】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、少なくとも約120Å/分のタンタル研磨レートをさらに有する。
【0172】
上記の任意の実施形態のように、研磨用組成物は、少なくとも約100Å/分の銅研磨レートをさらに有する。
【0173】
上記の任意の実施形態のように、研磨対象物が、酸化ケイ素、タンタルおよび銅からなる群より選択される1種以上を含む。
【0174】
C.研磨用組成物を使用する方法
本明細書に記載される研磨用組成物は、任意の適切な基板を研磨するのに有用である。一実施形態において、研磨される基板は、任意の適切な基板とすることができ、これは、少なくとも1つのTEOS、Taおよび/またはCuの層を含む。TEOSの少なくとも1つの層を含む適切な基板は、半導体、フラットパネルディスプレイ、集積回路、(マイクロ)電子デバイス、高密度相互接続およびメモリセルが含まれるが、これらに限定されない。
【0175】
別の例として、研磨用組成物は、基板を研磨するための使用されることができ、この基板は、少なくとも1つのタンタル(Ta)の層を含む。適切な基板には、キャパシタ、半導体、高温度デバイス、表面弾性波(SAW)フィルター、携帯電話、電池およびマイクロ電子デバイスが含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
別の例として、研磨用組成物は、シリコン酸化層を含む基板を研磨するために使用され得る。別の実施形態において、研磨用組成物は、銅(Cu)層を含む基板を研磨するために使用され得る。適切な基板には、フラットパネルディスプレイ、集積回路、半導体、高電気伝導性材料および/または熱伝導性材料、微小電気機械システム(MEMS)が含まれるが、これらに限定されない。
【0177】
基板は、少なくとも1つの他の層、例えば、絶縁層をさらに含むことができる。絶縁層は、金属酸化物、多孔質金属酸化物、ガラス、有機高分子、フッ素化有機高分子、または任意の他の適切なhigh-Kまたはlow-K絶縁層であり得る。絶縁層は、シリコン酸化物、SiN、もしくはそれらの組合せを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなることができる。シリコン酸化層は、任意の適切なシリコン酸化物を含むか、本質的にそれからなるか、またはそれからなることができ、任意の適切なシリコン酸化物の多くは当技術分野において既知である。例えば、シリコン酸化層は、TEOS、高密度プラズマ(HDP)酸化物、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)、高アスペクト比プロセス(HARP)酸化物、スピンオン絶縁膜(SOD)酸化物、化学蒸着(CVD)酸化物、プラズマ励起オルトケイ酸テトラエチル(PETEOS)、熱酸化物、またはアンドープシリケートガラスを含むことができる。
【0178】
特定の実施形態において、シリコン酸化層は、TEOSである。いくつかの実施形態において、このようなシリコン酸化層は、上記のTEOS層に相当する。基板は、金属層をさらに含むことができる。特定の実施形態において、金属層は、タンタル(Ta)である。別の特定の実施形態において、金属層は、銅(Cu)である。いくつかの実施形態において、基板は、1つ超の金属層を有することができる。
【0179】
本明細書に開示される主題は、本明細書に記載される研磨用組成物で基板を研磨する方法も含む。基板を研磨する方法は、(a)基板を準備する工程、(b)本明細書に記載される研磨用組成物を準備する工程、(c)研磨用組成物を基板の少なくとも一部に塗布する工程、および(d)研磨用組成物で基板の少なくとも一部を研削し、基板を研磨する工程を含む。
【0180】
上記の任意の実施形態のように、研磨対象物が、酸化ケイ素、タンタルおよび銅からなる群より選択される1種以上を含む。
【0181】
本明細書に開示される研磨用組成物について、研磨用組成物は、少なくとも約60Å/分以上;少なくとも約70Å/分以上;少なくとも約74Å/分以上;少なくとも約80Å/分以上;少なくとも約85Å/分以上;少なくとも約90Å/分以上;少なくとも約95Å/分以上;少なくとも約100Å/分以上;少なくとも約105Å/分以上;少なくとも約110;または少なくとも約115Å/分以上の酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)を有する。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)は、約60Å/分~約150Å/分;約70Å/分~約125Å/分;約79Å/分~約120Å/分;約98Å/分~約118Å/分;約98Å/分~約111Å/分;または約100Å/分~約111Å/分の範囲である。いくつかの実施形態において、酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)は、約95Å/分~約130Å/分;約95Å/分~約120Å/分;約100Å/分~約125Å/分;約105Å/分~約120Å/分;約105Å/分~約115Å/分;または約110Å/分~約115Å/分の範囲である。
【0182】
本明細書に開示される研磨用組成物について、研磨用組成物は、少なくとも約75Å/分以上;少なくとも約85Å/分以上;少なくとも約95Å/分以上;少なくとも約105Å/分以上;少なくとも約110Å/分以上;少なくとも約115Å/分以上;少なくとも約120Å/分以上;少なくとも約125Å/分以上;少なくとも約130Å/分以上;少なくとも約135Å/分以上;少なくとも約140;または少なくとも約145Å/分以上のTa研磨レートを有する。いくつかの実施形態において、Ta研磨レートは、約75Å/分~約200Å/分;約75Å/分~約175Å/分;約100Å/分~約160Å/分;約115Å/分~約160Å/分;約125Å/分~約155Å/分;約130Å/分~約155Å/分;約135Å/分~約155Å/分;または約140Å/分~約150Å/分の範囲である。いくつかの実施形態において、Ta研磨レートは、約100Å/分~約145Å/分;約105Å/分~約135Å/分;約115Å/分~約130Å/分;約120Å/分~約130Å/分;または約125Å/分~約130Å/分の範囲である。
【0183】
本明細書に開示される研磨用組成物について、研磨用組成物は、少なくとも約40Å/分以上;少なくとも約50Å/分以上;少なくとも約60Å/分以上;少なくとも約70Å/分以上;少なくとも約80Å/分以上;少なくとも約90Å/分以上;少なくとも約100Å/分以上;少なくとも約105Å/分以上;少なくとも約110Å/分以上;または少なくとも約115Å/分以上のCu研磨レートを有する。いくつかの実施形態において、Cu研磨レートは、約50Å/分~約150Å/分;約70Å/分~約141Å/分;約80Å/分~約141Å/分;約90Å/分~約133Å/分;約100Å/分~約130Å/分;110Å/分~約130Å/分;または約115Å/分~約130Å/分の範囲である。
【0184】
いくつかの実施形態によれば、研磨用組成物は、酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)と、Ta研磨レートおよび/またはCu研磨レートとの差が少ない方が好ましい。例えば、酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)と、Ta研磨レートおよび/またはCu研磨レートとの差が、50Å/分以下、40Å/分以下、30Å/分以下、または20Å/分以下である。
【0185】
したがって、本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、研磨用組成物を使用する方法であって、a)本明細書に記載される研磨用組成物を準備する工程;b)酸化ケイ素含有層(例えばTEOS含有層)を含む基板を準備する工程;およびc)研磨用組成物で基板を研磨して、研磨された基板を提供する工程を含む、方法である。
【0186】
上記の任意の実施形態のように、基板が、タンタル含有層および/または銅含有層をさらに含む、方法。
【0187】
上記の任意の実施形態のように、研磨対象物が、酸化ケイ素、タンタルおよび銅からなる群より選択される1種以上を含む。方法。
【0188】
上記の任意の実施形態のように、少なくとも約100A/分の酸化ケイ素研磨レート(例えばTEOS研磨レート)を有する、方法。
【0189】
上記の任意の実施形態のように、少なくとも約120A/分のタンタル研磨レートを有する、方法。
【0190】
上記の任意の実施形態のように、少なくとも約100A/分の銅研磨レートを有する、方法。
【0191】
上記の任意の実施形態のように、基板が半導体である、方法。
【0192】
本発明は、下記態様および形態を包含する。
【0193】
[1]砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物であって、前記砥粒が、約30nm~約70nmの範囲の一次粒子径および約50nm~約130nmの範囲の二次粒子径を有するシリカ砥粒であり;前記塩基化合物が、無機塩基であり;前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、双性イオンであり;前記酸化剤が、過酸化物である、研磨用組成物:
[2]前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、25℃において、約7~約11のpKaを有する、上記[1]に記載の研磨用組成物:
[3]前記砥粒が表面修飾されていない、上記[1]または[2]に記載の研磨用組成物:
[4]前記砥粒が、約1.5~約2.0の範囲の一次粒子径に対する二次粒子径の比を有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[5]前記砥粒が、約1.6~約1.8の範囲のD90/D50比を有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[6]前記砥粒が、約2.8~約3.1の範囲のD90/D10比を有する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[7]前記無機塩基がアルカリ金属水酸化物である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[8]前記アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムである、上記[7]に記載の研磨用組成物:
[9]前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)ブタン-1-スルホン酸(CABS)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)、N-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)およびそれらの組合せからなる群から選択される、上記[1]~[8]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[10]前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、25℃において、約9.5~約11のpKaを有する、上記[1]~[9]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[11]前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[12]前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が約0.05重量%~約0.2重量%の濃度で存在する、上記[1]~[11]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[13]pHが約9.5~約10.6の範囲である、上記[1]~[12]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[14]砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤および酸化剤を含む研磨用組成物であって、前記砥粒が、約60nm~約70nmの範囲の一次粒子径、約110nm~約130nmの範囲の二次粒子径を有するシリカ砥粒であり、その表面が修飾されておらず、約0.1重量%~約2.5重量%の濃度で存在し;前記塩基化合物が水酸化カリウムであり、約0.2重量%~約0.5重量%の濃度で存在し;前記酸化ケイ素研磨レート制御剤が、N-シクロヘキシル-3-アミノプロパンスルホン酸(CAPS)、4-(シクロヘキシルアミノ)ブタン-1-スルホン酸(CABS)、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)およびN-シクロヘキシル-2-アミノエタンスルホン酸(CHES)からなる群から選択され、約0.8重量%~約1.2重量%の濃度で存在し;前記酸化剤が過酸化水素であり、約0.8重量%~約1.2重量%の濃度で存在し;前記研磨用組成物のpHが、約9.5~約10.5である、研磨用組成物:
[15]研磨対象物が、酸化ケイ素、タンタルおよび銅からなる群より選択される1種以上を含む、上記[1]~[14]のいずれかに記載の研磨用組成物:
[16]基板を研磨する方法であって、
(a)上記[1]~[15]のいずれかに記載の研磨用組成物を準備する工程;
(b)酸化ケイ素含有層を含む、基板を準備する工程;および
(c)前記研磨用組成物で前記基板を研磨して、研磨された基板を提供する工程を含む、方法:
[17]前記基板が、タンタル含有層および/または銅含有層をさらに含む、上記[16]に記載の方法:
[18]前記基板が半導体である、上記[16]または[17]に記載の方法。
【実施例0194】
D.実施例
本発明を、以下の実施例および比較例を用いてさらに詳細に説明する。以下の調製および実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することを可能にするために与えられている。これらは、本発明の範囲を限定するものとしてみなされるべきではなく、単に例示的かつ代表的なものとして見なされるべきである。なお、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。また、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(20℃以上25℃以下)/相対湿度30%RH以上50%RH以下の条件下で行われた。
【0195】
一態様において、研磨用組成物を作製する方法が開示されている。別の態様において、材料の研磨に研磨用組成物を使用する方法が開示されている。
【0196】
実施例1
研磨用組成物として下記のスラリー1~25を調製した。また、調製されたスラリー1~25を用いて、下記条件の研磨条件で研磨対象物を研磨し、研磨レートを評価した。また、スラリー1~25の安定性として、MPS Gapを下記の方法にて評価した。
【0197】
配合物実施例
各スラリーの組成は、表3~5に示した。各スラリーは、砥粒、塩基化合物、酸化ケイ素研磨レート制御剤、酸化剤、酸およびベンゾトリアゾールを、分散媒である純水に室温(25℃)で加え、室温(25℃)で30分攪拌混合することにより調製した。なお、純水の量は、スラリーの全量が100質量%となる量で加えた。砥粒は表1、酸化ケイ素研磨レート制御剤(表3~5中、「TEOS RR剤」と表記)は表2に詳細を示した。
【0198】
<研磨レート評価>
《研磨条件》
使用した材料および装置:
・研磨条件
・装置:300mm Polisher Reflexion LK
・プレート回転速度:73rpm
・ヘッド回転速度:6
・流量:200mL/分
・ダウンフォース:1psi
・研磨時間:60秒
・パッド:Fujibo H800
・パッドコンディショナー:30ナイロンブラシ
・希釈係数:1倍
・1.0% H2O2。
【0199】
研磨レシピ:
・ダウンフォース:1.0psi
・回転:73/67rpm
・スラリー流量:200mL/分
・研磨時間:60秒。
【0200】
《研磨対象物》
ウェーハタイプ:Si基板上のPE-10kA-TEOS;3kA熱酸化Si基板上の4kA-Ta;およびSi基板上の10kA-EP-Cuの3種。
【0201】
本実施例では酸化ケイ素膜としてTEOSを用いたため、以下では酸化ケイ素膜を「TEOS」と表記する。
【0202】
エッチング速度の条件:
・25℃で3分間
・ウェーハ試験片サイズ:1.5インチ×1.5インチ。
【0203】
<安定性評価>
《MPS Gapの測定》
安定性試験(3日後のMPS Gap)は、Malvern Panalytical ZetaSizer Nano light scattering system)を用いて、砥粒の平均粒子径(Mean Particle Size;MPS)の変化を評価した。具体的には、組成物を調製直後の平均粒子径MPS1と、55℃で3日間保管後の平均粒子径MPS2との差(MPS2-MPS1(単位:nm))を計算することによりMPS Gapを算出した。
【0204】
実施例2
上記で調製されたスラリー1~25を用いて、上記条件の研磨条件で上記の研磨対象物を研磨した。
【0205】
様々な研磨用組成物の評価
本研究のために、砥粒が、一次粒子径、二次粒子径、シラノール(SiOH)密度およびゼータ電位などの特性が異なる、いくつかの砥粒(タイプ1~5として番号付与する)を調査した。結果を以下の表1に要約する。
【0206】
【0207】
さらに、一連の様々な酸化ケイ素研磨レート制御剤もまた、試験した。タイプ4~10として番号付与した酸化ケイ素研磨レート制御剤は、双性イオンである一方、タイプ1~3として番号付与した酸化ケイ素研磨レート制御剤は、それぞれ、重炭酸塩、硝酸塩および硫酸塩である。表2は、使用した酸化ケイ素研磨レート制御剤のすべてを示す。
【0208】
【0209】
表3に例示されているように、スラリー5および16~19を、その様々な砥粒タイプに関してスクリーニングした。スラリーの安定性と、TEOS研磨レート(TEOS RR)、Ta研磨レート(Ta RR)およびCu研磨レート(Cu RR)とを評価した。本態様のスラリー(研磨用組成物)は、高い安定性を有することが望ましい。表3におけるデータにより、スラリー5および16~19は、高い安定性を有することが示されている。また、一般に、TEOSおよび/またはTaおよび/またはCuに関して高いRRを有するスラリーが望ましい。表3におけるデータにより、スラリー5およびスラリー19は、他のスラリー(すなわち、スラリー16、スラリー17およびスラリー18)と比べて、一層高いTEOS RR、一層高いTa RRおよび一層高いCu RRをもたらしたことが示される。特に、砥粒タイプ5を含むスラリー5は、最高のTEOS RRを生じた。これらの結果は、低シラノール(SiOH)密度によって表面修飾されておらず、高いアスペクト比を有する砥粒は、高いTEOS RRを示すスラリーをもたらすことができることを実証する。
【0210】
【0211】
次に、スラリー5および21~25を、様々な酸成分に関してスクリーニングした。以下の表において分かる通り、クエン酸(スラリー5)、硝酸(スラリー21)、リン酸(スラリー22)、マレイン酸(スラリー23)、酒石酸(スラリー24)および1-ヒドロキシエチリデン-1,1-二ホスホン酸(HEDP;スラリー25)などの酸を含むスラリーのTEOS、Taおよび/またはCu RR、並びにスラリーの安定性に関してスクリーニングした。表4におけるデータにより、スラリー5および21~25は、高い安定性を有することが示されている。また、表4中のデータにより、スラリー5、22および24はすべて、TEOS、TaおよびCuに対して高い研磨レートを実現したことが示される。クエン酸を含むスラリー5は、安定性の点でも十分に良好である。
【0212】
【0213】
次に、いくつかのスラリーを調製して、そのTEOS RR、Ta RRおよびCu RRに及ぼす、研磨用組成物中に存在する酸化ケイ素研磨レート制御剤のタイプの効果を調べた。下記表5に例示されている通り、酸化ケイ素研磨レート制御剤として、7~11のpKaを有する双性イオンを含むスラリー(スラリー5~11、13~15)は、高い安定性と、高いTEOS RRとを実現することができた。また、以下の表5に例示されている通り、酸化ケイ素研磨レート制御剤(酸化ケイ素研磨レート制御剤4、5、6および7など)として、少なくとも9.4のpKaを有する双性イオンを含むスラリー(スラリー5、スラリー6、スラリー7、スラリー8など)は、高い安定性と、高いTEOS RR、Ta RRおよびCu RRとを実現することができた。対照的に、酸化ケイ素研磨レート制御剤(8、9および10など)として9.4未満のpKaを有する双性イオンを含むスラリー(スラリー9、スラリー10およびスラリー11など)は、かなり一層低いTEOS研磨レートをもたらした。さらに、双性イオンではない酸化ケイ素研磨レート制御剤を有するスラリー2、スラリー3およびスラリー4は、TEOS、TaおよびCuに関して良好な研磨レートを示すが、それらは、表5中の他のスラリーに比べて、安定性がかなり低い。
【0214】
【0215】
最後に、表5により、酸化ケイ素研磨レート制御剤の量を変えることにより、そのTEOS RRを変化させることが示される。具体的には、スラリー5、スラリー13、スラリー14およびスラリー15は、0.01重量%~0.2重量%の範囲の酸化ケイ素研磨レート制御剤の量で調製した。スラリー中の酸化ケイ素研磨レート制御剤の量が増加するにつれて、TEOS RRが一般に向上することが観察され得る。
【0216】
本発明の範囲から逸脱することなく、本発明において様々な修正および変形を行うことができることは、当業者には明らかであろう。本発明の他の態様は、ここに開示される本発明の明細書および実施を考慮することから当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は例示としてのみ考慮され、本発明の真の範囲は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。
【0217】
本出願は、2023年9月11日に出願された米国仮出願第63/537,636号の願書に添付して提出された外国語明細書に基づいており、その開示内容は、その全体が参照により本明細書に組みこまれる。