(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004555
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】光ファイバ保護具、並びに、これを用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造、及び、金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造
(51)【国際特許分類】
G02B 6/44 20060101AFI20250107BHJP
【FI】
G02B6/44 341
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104301
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】松浦 正樹
【テーマコード(参考)】
2H250
【Fターム(参考)】
2H250BB05
2H250BB08
2H250BB10
2H250BB15
2H250BB17
2H250BB26
2H250BC03
2H250BC11
2H250BD03
2H250BD05
(57)【要約】
【課題】敷設時や使用時における動的挙動によって、内部の光ファイバが損傷したり、光ファイバケーブル全体としての品質低下したりすることを抑制し得る光ファイバ保護具を提供する。
【解決手段】光ファイバ保護具1は、金属管3と、金属管3に挿入され、金属管3の末端31から突出する光ファイバ2と、を有する金属管被覆光ファイバケーブル4の末端に用いられ、内径が最小であり、光ファイバ2が挿入される小径部11a、外径が最大である大径部11b、並びに、小径部11a及び大径部11bの間を繋ぐ拡径部11cからなる末端開口部11と、小径部11aまたは大径部11bから、軸x方向における拡径部側Kとは逆側Jに連なって延伸する筒部12と、を有し、拡径部11cが、小径部11a側から大径部11b側へと向かうにしたがって径が漸次拡がっており、軸xを含む断面において、拡径部11cの少なくとも一部が湾曲している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管と、該金属管に挿入され、当該金属管の末端から突出する光ファイバと、を有する金属管被覆光ファイバケーブルの末端に用いられ、
内径が最小であり、前記光ファイバが挿入される小径部、外径が最大である大径部、並びに、前記小径部及び前記大径部の間を繋ぐ拡径部からなる末端開口部と、前記小径部または前記大径部から、軸方向における前記拡径部側とは逆側に連なって延伸する筒部と、を有し、
前記拡径部が、前記小径部側から前記大径部側へと向かうにしたがって径が漸次拡がっており、
軸を含む断面において、前記拡径部の少なくとも一部が湾曲している、光ファイバ保護具。
【請求項2】
前記筒部が、前記小径部から前記拡径部側とは逆側に連なって延伸し、前記光ファイバが挿入されるとともに前記金属管の末端に挿入される、請求項1に記載の光ファイバ保護具。
【請求項3】
前記筒部が、前記大径部から前記拡径部側とは逆側に連なって延伸し、前記金属管が挿入される、請求項1に記載の光ファイバ保護具。
【請求項4】
軸を含む断面において、少なくとも、前記小径部の近傍、及び、前記拡径部における前記小径部から最も離れた部位の近傍が湾曲している、請求項1~3の何れかに記載の光ファイバ保護具。
【請求項5】
前記大径部の外径が前記金属管の内径より大きい、請求項1~3の何れかに記載の光ファイバ保護具。
【請求項6】
軸方向に延在する、少なくとも1本のスリットを有する、請求項1~3の何れかに記載の光ファイバ保護具。
【請求項7】
分割された2以上の部材からなる、請求項1~3の何れかに記載の光ファイバ保護具。
【請求項8】
樹脂製の材料からなる、請求項1~3の何れかに記載の光ファイバ保護具。
【請求項9】
金属管及び該金属管が挿入された光ファイバを有する金属管被覆光ファイバケーブルと、請求項1~3の何れかに記載の光ファイバ保護具と、を備え、
前記光ファイバ保護具が、前記金属管被覆光ファイバケーブルにおける前記金属管の末端に取り付けられるとともに、前記小径部に前記光ファイバが挿入されている、金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造。
【請求項10】
金属管及び該金属管が挿入された光ファイバを有する2つの金属管被覆光ファイバケーブルと、請求項1~3の何れかに記載の2つの光ファイバ保護具と、さや管と、を備え、
前記2つの光ファイバ保護具がそれぞれ、別々の前記金属管被覆光ファイバケーブルにおける前記金属管の末端に取り付けられるとともに、前記小径部に、前記光ファイバが挿入され、
前記さや管が、その両側に前記2つの金属管被覆光ファイバケーブルの末端がそれぞれ挿し込まれて、前記金属管の末端、及び、前記光ファイバ保護具の前記小径部に挿通された前記光ファイバを覆う、金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管被覆光ファイバケーブルの末端や接続部において、金属管被覆光ファイバケーブルに内挿された光ファイバを保護する光ファイバ保護具、並びに、これを用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造、及び、金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属管の被覆によって光ファイバが保護された金属管被覆光ファイバケーブルが知られている。当該金属管被覆光ファイバケーブルによれば、機械的強度が高い金属で光ファイバが保護されているので、細径化、軽量化が容易であるとともに、金属管の内部の光ファイバを海水等から保護することができる。したがって、例えば、金属管被覆光ファイバケーブルは、海底電力ケーブルに光ファイバケーブルを複合させた複合海底線や、海底光ケーブル等の用途として、極めて有用性が高い。
【0003】
金属管被覆光ファイバケーブルを海底ケーブルや複合海底線における光ケーブルとして用いる場合、長距離にわたって敷設されるため、金属管被覆光ファイバケーブルの長尺化が必要になる。そこで、従来より、所定の長さの複数の金属管被覆光ファイバケーブルを接続し工場接続部(FJ)を構成して長尺化している。一度に製造できる長さに制限があっても、それを複数繋げることにより、出荷時の大径のドラム乃至ボビンに巻かれる長尺ケーブルや、数十キロメートルクラスの極めて長尺のケーブルであっても製造することができる。
【0004】
工場接続部の構造としては、金属管の端部にまたがるように、これら金属管の外径よりも内径が大きい金属スリーブの両端を外挿し、該スリーブの端部とそれぞれの金属管の端部とを溶接して金属管同士を接続する技術が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
この工場接続部においては、金属管の端部から光ケーブルが突出した状態になっており、金属管端縁に光ファイバが接すると損傷や品質低下に繋がる恐れがある。そのため、金属管の端部近傍においては、光ファイバを保護チューブに挿入して金属管との間に介在させることで、光ファイバを保護することが行われている。
【0006】
しかし、海底ケーブルや光ケーブルの敷設時や使用時における動的挙動によって、金属管内にセットされた保護チューブの位置がずれる可能性がある。金属管の末端では、一般的に、外周から締め付ける方向に切断しているため、そのままでは鋭利なエッジが内周方向に向いた状態になっている。そのため、保護チューブの位置がずれた際、例えば金属管端縁が鋭利なままであると、内部の光ファイバが損傷し伝送損失が発生したり、光ファイバケーブル全体としての品質低下に繋がる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8-15554号公報
【特許文献2】特開2012-93527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、敷設時や使用時における動的挙動によって、内部の光ファイバが損傷したり、光ファイバケーブル全体としての品質低下したりすることを抑制し得る光ファイバ保護具、並びに、これを用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造、及び、金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様である光ファイバ保護具は、金属管と、該金属管に挿入され、当該金属管の末端から突出する光ファイバと、を有する金属管被覆光ファイバケーブルの末端に用いられ、
内径が最小であり、前記光ファイバが挿入される小径部、外径が最大である大径部、並びに、前記小径部及び前記大径部の間を繋ぐ拡径部からなる末端開口部と、前記小径部または前記大径部から、軸方向における前記拡径部側とは逆側に連なって延伸する筒部と、を有し、
前記拡径部が、前記小径部側から前記大径部側へと向かうにしたがって径が漸次拡がっており、
軸を含む断面において、前記拡径部の少なくとも一部が湾曲している。
【0010】
本発明の一態様である光ファイバ保護具においては、前記筒部が、前記小径部から前記拡径部側とは逆側に連なって延伸し、前記光ファイバが挿入されるとともに前記金属管の末端に挿入されていてもよい。
【0011】
本発明の一態様である光ファイバ保護具においては、前記筒部が、前記大径部から前記拡径部側とは逆側に連なって延伸し、前記金属管が挿入されていてもよい。
【0012】
本発明の一態様である光ファイバ保護具においては、軸を含む断面において、少なくとも、前記小径部の近傍、及び、前記拡径部における前記小径部から最も離れた部位の近傍が湾曲していてもよい。
【0013】
本発明の一態様である光ファイバ保護具においては、前記大径部の外径が前記金属管の内径より大きくてもよい。
【0014】
本発明の一態様である光ファイバ保護具においては、軸方向に延在する、少なくとも1本のスリットを有していてもよい。
【0015】
本発明の一態様である光ファイバ保護具においては、分割された2以上の部材からなるものであってもよい。
【0016】
本発明の一態様である光ファイバ保護具においては、樹脂製の材料からなるものであってもよい。
【0017】
一方、本発明の一態様である金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造は、金属管及び該金属管が挿入された光ファイバを有する金属管被覆光ファイバケーブルと、上記一態様である光ファイバ保護具と、を備え、
前記光ファイバ保護具が、前記金属管被覆光ファイバケーブルにおける前記金属管の末端に取り付けられるとともに、前記小径部に前記光ファイバが挿入されている。
【0018】
さらに、本発明の一態様である金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造は、金属管及び該金属管が挿入された光ファイバを有する2つの金属管被覆光ファイバケーブルと、上記一態様である光ファイバ保護具と、さや管と、を備え、
前記2つの光ファイバ保護具がそれぞれ、別々の前記金属管被覆光ファイバケーブルにおける前記金属管の末端に取り付けられるとともに、前記小径部に、前記光ファイバが挿入され、
前記さや管が、その両側に前記2つの金属管被覆光ファイバケーブルの末端がそれぞれ挿し込まれて、前記金属管の末端、及び、前記光ファイバ保護具の前記小径部に挿通された前記光ファイバを覆っている。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様によれば、敷設時や使用時における動的挙動によって、内部の光ファイバが損傷する等の、光ファイバケーブル全体としての品質低下を抑制し得る光ファイバ保護具、並びに、これを用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造、及び、金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の例示的態様である第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す縦断面図であり、
図2及び
図3におけるC-C断面にかかる断面図である。
【
図2】第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す横断面図であり、
図1におけるA-A断面にかかる断面図である。
【
図3】第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す横断面図であり、
図1におけるB-B断面にかかる断面図である。
【
図4】第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具のみを抜き出した側面図である。
【
図5】第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具のみを抜き出した斜視図である。
【
図6】第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具のみを抜き出した縦断面図であり、
図4におけるD-D断面図である。
【
図7】第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造を説明するための模式図である。
【
図8】第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造を説明するための拡大縦断面図である。
【
図9】第2の実施形態にかかる光ファイバ保護具の側面図である。
【
図10】第2の実施形態にかかる光ファイバ保護具の斜視図である。
【
図11】第2の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す横断面図であり、第1の実施形態における
図2と同様の箇所の断面にかかる断面図である。
【
図12】第3の実施形態にかかる光ファイバ保護具の側面図である。
【
図13】第3の実施形態にかかる光ファイバ保護具の斜視図である。
【
図14】第3の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す横断面図であり、第1の実施形態における
図2と同様の箇所の断面にかかる断面図である。
【
図15】第4の実施形態にかかる光ファイバ保護具の側面図である。
【
図16】第4の実施形態にかかる光ファイバ保護具の斜視図である。
【
図17】第4の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す横断面図であり、第1の実施形態における
図2と同様の箇所の断面にかかる断面図である。
【
図18】第4の実施形態にかかる光ファイバ保護具の変形例を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す横断面図であり、
図17と同様の箇所の断面にかかる断面図である。
【
図19】第5の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す縦断面図であり、
図20におけるF-F断面にかかる断面図である。
【
図20】第5の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す横断面図であり、
図19におけるE-E断面にかかる断面図である。
【
図21】第5の実施形態にかかる光ファイバ保護具のみを抜き出した縦断面図であり、
図19と同じ断面にかかる断面図である。
【
図22】第6の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す縦断面図であり、
図23におけるH-H断面にかかる断面図である。
【
図23】第6の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す横断面図であり、
図22におけるG-G断面にかかる断面図である。
【
図24】第6の実施形態にかかる光ファイバ保護具のみを抜き出した縦断面図であり、
図22と同じ断面にかかる断面図である。
【
図25】第7の実施形態にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す縦断面図であり、第1の実施形態における
図1と同様の箇所の断面にかかる断面図である。
【
図26】第7の実施形態にかかる光ファイバ保護具のみを抜き出した縦断面図であり、
図25と同じ断面にかかる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
「金属管被覆光ファイバケーブル」とは、金属管の被覆によって光ファイバが保護されたケーブルを意味するが、この明細書においては、特に金属管や光ファイバがそれぞれ一体で成形された物を指し、これを複数本接続してより長尺にしたケーブルは、本明細書において「金属管被覆光ファイバケーブル連結体」と称する。勿論、本発明の接続構造により複数本の「金属管被覆光ファイバケーブル」が接続された「金属管被覆光ファイバケーブル連結体」は、本発明の範疇に含まれるものである。
【0022】
以下、本発明の例示的態様である実施形態にかかる光ファイバ保護具、並びに、これを用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造、及び、金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0023】
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1を用いた金属管被覆光ファイバケーブル4の末端構造を示す縦断面図であり、
図2は金属管被覆光ファイバケーブル4の末端構造を示す横断面図であり、
図3は金属管被覆光ファイバケーブル4の末端構造を示す
図2とは異なる横断面図である。詳しくは、
図1は
図2及び
図3におけるC-C断面にかかる断面図であり、
図2は
図1におけるA-A断面にかかる断面図であり、
図3は
図2におけるB-B断面にかかる断面図である。
【0024】
図1~
図3に示すように、金属管被覆光ファイバケーブル4は、金属管3と、金属管3に挿入され、当該金属管3の末端31から突出する光ファイバ2と、を有する。
図1において、金属管被覆光ファイバケーブル4は、左側(矢印J側)の途中から図示が省略されているが、矢印J側に延びる長尺状であり、図示が省略された領域では、不図示のシースにより被覆されている。
【0025】
金属管3は、内部の光ファイバ2を海水から保護する目的で光ファイバ2に外挿される部材である。金属管3の材質としては、特に制限はなく、ステンレス、アルミニウム、銅、ニッケル、鉛等が挙げられるが、遮水性の観点から、ステンレスが好ましく、各種性能とコストのバランスからSUS304が特に好ましい。
【0026】
金属管被覆光ファイバケーブル4における金属管3の末端には、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1が取り付けられている。
図4~
図6に、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1のみを抜き出し拡大して示す。詳しくは、
図4は光ファイバ保護具1の側面図を示し、
図5は斜視図を示し、
図6は縦断面図であり、
図4におけるD-D断面を示す。
【0027】
図4~
図6に示すように、本実施形態にかかる光ファイバ保護具1は、末端開口部11と、内側筒部(筒部)12と、を有する。末端開口部11は、内径が最小であり、光ファイバ2が挿入される小径部11aと、外径が最大である大径部11bと、小径部11a及び大径部11bの間を繋ぐ拡径部11cと、からなる。本実施形態において、大径部11bの径(外径)は、金属管3の外径よりも大きい。ただし、大径部11bの径(外径)としては、金属管3の内径よりも大きければよい。一方、小径部11aの径(外径)は、金属管3の内径よりも小さい。
【0028】
拡径部11cは、小径部11a側から大径部11b側へと向かうにしたがって径が漸次拡がっている。本実施形態では、軸xを含む断面(
図6の縦断面図の断面に相当。以下、本実施形態において同様。)において、拡径部11cにおける小径部11aの近傍、及び、小径部11aから最も離れた部位である大径部11bの近傍を含む拡径部11cの全域にわたって湾曲している。即ち、本実施形態において、末端開口部11は、全体として矢印K方向に開口したいわゆるラッパ状の形状を有している。
【0029】
一方、内側筒部12は、小径部11aから、軸x方向におけ拡径部11c側(矢印K側)とは逆側(矢印J側)に連なって延伸している。この内側筒部12は、内側に光ファイバ2が挿入されるとともに金属管3の末端31に挿入されて、内側筒部12の外周が金属管3の内周に対向した状態になっている。
【0030】
光ファイバ保護具1の材質としては、特に制限はなく、金属、樹脂、セラミックス等何れの材質であっても構わないが、成形の容易性から樹脂製であることが好ましい。特に好ましい樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン、エポキシ樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、テフロン(登録商標)などのふっ素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
後述するさや管との溶接を考慮すると耐熱性を有する材料であることが好ましく、また、後述する加締めに対する適性を考慮すると塑性変形可能な材料であることが好ましい。具体的には、耐熱性を有する樹脂(フッ素樹脂、エポキシ樹脂等)や金属(ステンレス等)を好適な材料として例示することができる。
【0032】
軸x方向において、金属管3の末端31及びその近傍にわたり、光ファイバ2に保護チューブ5が取り付けられている。保護チューブ5は、光ファイバ2と光ファイバ保護具1との間に介在し、光ファイバ2を保護するための部材である。本実施形態では、光ファイバ保護具1によって光ファイバ2は金属管3の末端31から保護されるため、保護チューブ5は必須の構成ではないが、保護チューブ5によってより確実に光ファイバ2を保護することができる。
【0033】
実際の保護チューブ5及び光ファイバ保護具1の取り付け作業は、例えば以下のように行う。即ち、保護チューブ5に挿入された光ファイバ2に対して、光ファイバ保護具1を保護チューブ5の端部からずらして(
図1に示す光ファイバ保護具1と保護チューブ5の位置関係)設置する。このとき、光ファイバ2と保護チューブ5との間、並びに、保護チューブ5と光ファイバ保護具1との間には、図面には現れていないが、所定のクリアランスが保たれている。
【0034】
そして、光ファイバ保護具1内に保護チューブ5が、さらに保護チューブ5内に光ファイバ2が挿入されある程度位置決めされた状態で、光ファイバ保護具1の内側筒部12側を末端31側から金属管3内に入れ、光ファイバ保護具1の末端開口部11が金属管3の末端31に接触するまで挿入する。
【0035】
光ファイバ2、保護チューブ5及び光ファイバ保護具1が軸x方向における所定の位置に達したら、加締め工具にて
図1において矢印Mで示すマーキング位置で金属管3の外周から加締め加工する。この加締め加工によって、金属管3と光ファイバ保護具1が加締められて、両者の軸x方向の相対的位置関係が固定される。また、光ファイバ保護具1の内周側の保護チューブ5を光ファイバ2に押し付ける効果も期待することができる。
【0036】
本実施形態によれば、海底ケーブルや光ケーブルの敷設時や使用時における動的挙動によって、光ファイバ2乃至保護チューブ5が曲がって金属管3の末端31に向けて押し付けられても、金属管3の末端31との間に光ファイバ保護具1が介在するため、光ファイバ2乃至保護チューブ5は保護される。
【0037】
しかも、本実施形態においては、軸xを含む断面において、拡径部11cの全域にわたって湾曲しているため、保護チューブ5が被覆された光ファイバ2が接触し得る領域が滑らかな湾曲形状となっている。そのため、光ファイバ2乃至保護チューブ5が、光ファイバ保護具1の拡径部11cの湾曲形状に強く押し付けられたとしても、圧が分散して作用するので、光ファイバ2乃至保護チューブ5への負荷が軽減され、また衝撃がやわらげられ、損傷等の影響を抑制することができる。
【0038】
本実施形態によれば、保護チューブ5の本来の目的である金属管3の末端31の切断部のエッジからの光ファイバ2の表面保護が、仮に、保護チューブ5が位置ズレを起こして機能しなくなった場合においても、金属管3の末端31と光ファイバ2との間に介在する光ファイバ保護具1に、保護チューブ5に代わって機能させることができる。したがって、保護チューブ5のズレによる不具合を回避するために為される金属管3の末端31のエッジ処理を施す手間が省ける。
【0039】
また、光ファイバ保護具1の末端開口部11の大径部11bの外径が金属管3の内径より大きいため、光ファイバ保護具1の末端開口部11の拡径部11cが金属管3の末端31に引っ掛かり、金属管3内部に光ファイバ保護具1が引き込まれることが防止される。したがって、本実施形態によれば、金属管3の末端31のエッジが光ファイバ2乃至保護チューブ5と接触してしまう心配がほとんどない。
【0040】
本実施形態においては、
図1に示すように矢印Mの位置で金属管3の外周から加締めることで、金属管3の末端31近傍における金属管被覆光ファイバケーブル4全体を、軸x方向において相対的に固定することが好ましい。金属管3の外周から加締めることで、金属管3に光ファイバ保護具1が固定される。
【0041】
また、光ファイバ保護具1直下にある保護チューブ5も加締め位置で固定され、保護チューブ5の軸x方向へのズレが抑制される。当該効果を考慮すると、保護チューブ5としては、光ファイバ保護具1(詳しくは、小径部11a)の内径に近い外径を有することが好ましい。
【0042】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具1を用いた金属管被覆光ファイバケーブル4の接続構造について説明する。
図7は、本実施形態にかかる光ファイバ保護具1を用いた金属管被覆光ファイバケーブル4の接続構造(以下、単に「本接続構造」と称する場合がある。)を説明するための模式図である。
図7に示す通り、本接続構造においては、金属管被覆光ファイバケーブル4の末端同士がさや管(スリーブともいう)6によって接続されている。
【0043】
本接続構造においては、2つの金属管被覆光ファイバケーブル4と、2つの光ファイバ保護具1と、さや管6と、を備える。2つの光ファイバ保護具1は、それぞれ別々の金属管被覆光ファイバケーブル4における金属管3の末端に取り付けられるとともに、小径部11aに、光ファイバ2が挿入される。
【0044】
さや管6は、例えばステンレス等の金属製の管であり、両端の開口に金属管被覆光ファイバケーブル4の末端が挿し込まれて、金属管3の末端、及び、光ファイバ保護具1の小径部11aに挿通された光ファイバ2を覆っている。金属管被覆光ファイバケーブル4及びさや管6にはシース7が被覆されており、シース7が被覆されていない金属管被覆光ファイバケーブル4とさや管6との間の接続領域及びその近傍は、塩化ビニル製のテープ8が巻き付けられて養生されている。
【0045】
図8は、本接続構造における金属管被覆光ファイバケーブル4とさや管6との接続部分の拡大縦断面図である。
図8においては、
図7における左側の金属管被覆光ファイバケーブル4とさや管6との間の接続状態のみが表されている。
図8に示す通り、保護チューブ5で被覆された光ファイバ2と金属管3との間に光ファイバ保護具1を介在させた
図1の状態の末端構造の金属管被覆光ファイバケーブル4(の金属管3)が、末端31側からさや管6に挿し込まれている。
【0046】
図8に示す通り、金属管3には、
図1に矢印Mで示される位置に加締めによる跡(加締め跡32)が残されている。実際の金属管被覆光ファイバケーブル4及びさや管6の接続作業は、例えば以下のように行う。まず、既述の通り、保護チューブ5及び光ファイバ保護具1の取り付け作業によって、
図1に示す状態の金属管被覆光ファイバケーブル4の末端状態にする。
【0047】
そして、保護チューブ5及び光ファイバ保護具1が取り付けられた金属管被覆光ファイバケーブル4に、末端31側からさや管6を被せ、そのまま金属管被覆光ファイバケーブル4を挿し込ませて、末端31からさや管6を退避させて、末端31から突出した光ファイバ2を露出させておく。この露出した光ファイバ2の端部と、連結する別の金属管被覆光ファイバケーブル4の末端の一方から露出している光ファイバ2の端部と、を融着接続する。
【0048】
次に、光ファイバ2同士の融着接続部分を含む光ファイバ2の露出部(金属管3で覆われていない部分)を覆う位置までさや管6を移動させて、さや管6の一方の端部を金属管3と溶接する。
図8には、当該溶接による溶接痕61が示されている。このさや管6と金属管3との溶接作業をさや管6の他方の端部でも、連結する別の金属管被覆光ファイバケーブル4の金属管3に対して行うことにより、金属管被覆光ファイバケーブル4の接続作業が完了し、本実施形態にかかる金属管被覆光ファイバケーブル4の接続構造が得られる。以上のようにして、本実施形態の光ファイバ保護具1を用いた接続構造による金属管被覆光ファイバケーブル連結体を製造することができる。
【0049】
本実施形態によれば、金属管3に光ファイバ保護具1がセットされていることで、金属管3とさや管6とを溶接接続する際に生じる熱が、保護チューブ5による遮熱効果だけでなく、光ファイバ保護具1と保護チューブ5とで遮熱され、光ファイバ2へ伝わりにくくなる。そのため、本実施形態にかかる光ファイバ保護具1を用いることで、既述の効果に加えて、金属管3とさや管6との溶接時の熱による光ファイバ2への影響を抑制することができる。
【0050】
<第2の実施形態>
図9は第2の実施形態にかかる光ファイバ保護具101の側面図であり、
図10は光ファイバ保護具101の斜視図である。また、
図11は第2の実施形態にかかる光ファイバ保護具101を用いた金属管被覆光ファイバケーブル104の末端構造を示す横断面図であり、第1の実施形態における
図2と同様の箇所の断面にかかる断面図である。
【0051】
なお、第2の実施形態にかかる光ファイバ保護具101を用いた金属管被覆光ファイバケーブル104の末端構造の縦断面については、第1の実施形態における
図1とほぼ同様であるため、記載を省略する。
【0052】
図9~
図11において、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1並びにこれを用いた金属管被覆光ファイバケーブル4の末端構造と同様の構成の各部材には、第1の実施形態における各部材と下二桁が同一で百番台の符号を付すことで、各部材における同様の構成等については説明を省略する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0053】
図9~
図11に示すように、本実施形態にかかる光ファイバ保護具101は、軸x方向に延在する1本のスリット113を有する。スリット113は、光ファイバ保護具101の軸x方向の両端まで達している。
【0054】
なお、本実施形態において内側筒部(筒部)112は、周方向におけるスリット113の部分が欠落しているため、完全な筒状を形成してはいない。しかし、このように周方向の一部が欠落していても、欠落部分を補完すれば筒状になる場合には、本明細書において、「筒」の概念に含まれるものとする。欠落部分が2カ所以上にわたる場合(例:後述する第3の実施形態)についても同様である(以上、後述する外側筒部においても適用される。)。
【0055】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具101によれば、スリット113を有することで、光ファイバ保護具101の側方から保護チューブ105で被覆された光ファイバ102(以下、単に「光ファイバ102」と称する。)を嵌め込むようにして、光ファイバ保護具101内に光ファイバ102を挿入することができる。
【0056】
スリット113の幅は、光ファイバ102が側面から通過して光ファイバ保護具101に嵌め込むことが可能な大きさになっている。したがって、スリット113に比して光ファイバ102の径が若干大きくても、スリット113を広げつつ光ファイバ102を嵌め込むようにすればよい。光ファイバ保護具101における末端開口部111とは逆側の端部開口から挿し込むようにして光ファイバ102を挿入する場合に比べて、本実施形態では、光ファイバ保護具101への光ファイバ102の挿入の作業が容易である。
【0057】
また、金属管103の内径と内側筒部112の外径との差が小さい場合、あるいは、金属管103の内径の方が大きい場合であっても、スリット113を狭めて内側筒部112の外径を縮径させることで、金属管103に末端131から光ファイバ保護具101を挿し込むことが容易になる。
【0058】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具101は、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1と同様に、金属管被覆光ファイバケーブル104の末端構造及び金属管被覆光ファイバケーブル104の接続構造に適用でき、同様の作用及び効果が期待できる。
【0059】
<第3の実施形態>
図12は第3の実施形態にかかる光ファイバ保護具201の側面図であり、
図13は光ファイバ保護具201の斜視図である。また、
図14は第3の実施形態にかかる光ファイバ保護具201を用いた金属管被覆光ファイバケーブル204の末端構造を示す横断面図であり、第1の実施形態における
図2と同様の箇所の断面にかかる断面図である。
【0060】
なお、第3の実施形態にかかる光ファイバ保護具201を用いた金属管被覆光ファイバケーブル204の末端構造の縦断面については、第1の実施形態における
図1とほぼ同様であるため、記載を省略する。
【0061】
図12~
図14において、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1並びにこれを用いた金属管被覆光ファイバケーブル4の末端構造と同様の構成の各部材には、第1の実施形態における各部材と下二桁が同一で二百番台の符号を付すことで、各部材における同様の構成等については説明を省略する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0062】
図12~
図14に示すように、本実施形態にかかる光ファイバ保護具201は、軸x方向に延在する2本のスリット214を有する。スリット214は、光ファイバ保護具101の軸x方向における矢印J側の端部から延在し中途で終わっており、軸x方向の両端には達していない。当該スリット214は、軸x方向の何れかの側(
図12における左右何れか。
図14の断面図においても確認可。)から見て、左右に一対(計2つ)設けられている。
【0063】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具201によれば、スリット214を有することで、金属管203の内径と内側筒部12の外径との差が小さい場合、あるいは、金属管203の内径の方が大きい場合であっても、スリット214を狭めて内側筒部212の外径を縮径させることで、金属管203に末端231から光ファイバ保護具201を挿し込むことが容易になる。
【0064】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具201は、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1と同様に、金属管被覆光ファイバケーブル204の末端構造及び金属管被覆光ファイバケーブル204の接続構造に適用でき、同様の作用及び効果が期待できる。
なお、本実施形態においてスリット214の本数は2本であったが、これに限定されるものではなく、1本であっても3本以上であっても構わない。
【0065】
<第4の実施形態>
図15は第4の実施形態にかかる光ファイバ保護具301の側面図であり、
図16は光ファイバ保護具301の斜視図である。また、
図17は第4の実施形態にかかる光ファイバ保護具301を用いた金属管被覆光ファイバケーブル304の末端構造を示す横断面図であり、第1の実施形態における
図2と同様の箇所の断面にかかる断面図である。
【0066】
なお、第4の実施形態にかかる光ファイバ保護具301を用いた金属管被覆光ファイバケーブル304の末端構造の縦断面については、第1の実施形態における
図1とほぼ同様であるため、記載を省略する。
【0067】
図15~
図17において、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1並びにこれを用いた金属管被覆光ファイバケーブル4の末端構造と同様の構成の各部材には、第1の実施形態における各部材と下二桁が同一で三百番台の符号を付すことで、各部材における同様の構成等については説明を省略する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0068】
図15~
図17に示すように、本実施形態にかかる光ファイバ保護具301は、軸xを含む面を分割面(
図15の図面上において、軸xを含む奥行き方向の面)として分割された2つの部材301x,301yからなる。2つの部材301x,301yが合わさって、1つの光ファイバ保護具301を構成する。
【0069】
各部材301x,301yはそれぞれ、末端開口部片311x,311yと内側筒部片312x,312yとを有し、2つの部材301x,301yが一体となって、末端開口部片311xと末端開口部片311yとで1つの末端開口部311を構成し、内側筒部片312xと内側筒部片312yとで1つの末端開口部311を構成する。
【0070】
このように光ファイバ保護具301が2つの部材301x,301yに分かれていることで、保護チューブ305で被覆された光ファイバ302(以下、単に「光ファイバ302」と称する。)を当該2つの部材301x,301yで挟み込むようにして、光ファイバ保護具301内に光ファイバ302を挿入することができる。
【0071】
2つの部材301x,301yが分かれていないと仮定し、光ファイバ保護具301の末端開口部311から挿し込むようにして光ファイバ302を挿入する場合に比べて、2つの部材301x,301yに分かれている本実施形態では、光ファイバ保護具301への光ファイバ302のセット(挿入)の作業が容易である。
【0072】
2つの部材301x,301yの間は、固定しても固定しなくても構わない。2つの部材301x,301yを固定する場合には、光ファイバ302のセット(挿入)後に固定することが好ましい。固定する場合の固定方法としては、接着剤により接着する方法や両者に係止構造を予め設けておく方法、ネジなどの固定具を用いる方法等が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0073】
2つの部材301x,301yの間を固定しない場合であっても、光ファイバ保護具301の形状を安定化させるために、例えば、両者に嵌合構造を予め設けておく等の形状を安定化する手段を講じておくことが好ましい。
【0074】
本実施形態では、2つの部材301x,301yにおける周方向に対向する面同士が当接して1つの光ファイバ保護具301を構成しているが、周方向のそれぞれの端部において、径方向に重なり合う領域があっても構わない。
図18に、構造が本実施形態とは異なる変形例にかかる光ファイバ保護具を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す。
図18は、第4の実施形態にかかる光ファイバ保護具の変形例を用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造を示す横断面図であり、
図17と同様の箇所の断面にかかる断面図である。ただし、
図18は
図17よりも拡大して示している。
【0075】
図18に示されるように、本変形例にかかる光ファイバ保護具301′は、第4の実施形態にかかる光ファイバ保護具301と同様、分割された2つの部材301x′,301y′からなる。2つの部材301x′,301y′が合わさって、1つの光ファイバ保護具301′を構成する。
【0076】
部材301x′,301y′は、周方向のそれぞれの端部に、内周側突出部316x′,316y′と外周側突出部317x′,317y′とを備えている。そして、部材301x′,301y′は、周方向のそれぞれの端部において、内周側突出部316x′,316y′と外周側突出部317x′,317y′とが径方向に重なり合って、1つの光ファイバ保護具301′を構成する。
【0077】
この内周側突出部316x′,316y′と外周側突出部317x′,317y′とが重なり合う領域における重ね合わせる長さを適宜調整することで、光ファイバ保護具301′の内外径の大きさを適宜制御することができる。そのため、本変形例にかかる光ファイバ保護具301′によれば、異なる太さの光ファイバ302や金属管303に対応することができる。内周側突出部316x′,316y′及び外周側突出部317x′,317y′肉厚は、部材301x′,301y′における他の部位(重ならない領域)より薄く(好ましくは2分の1に)することで、光ファイバ保護具301′の形状を安定化することができる。
【0078】
なお、本変形例では、2つの部材301x′,301y′がともに内周側突出部及び外周側突出部を備える同じ形状となっている例を挙げたが、一方の部材が内周側突出部のみを備え、他方の部材が外周側突出部のみを備える異なる形状となっていても構わない。この場合には、周方向の両側で、他方の部材の外周側突出部に対して、一方の部材の内周側突出部が嵌まり込んで重なり合う領域が形成され、1つの光ファイバ保護具を構成する。
【0079】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具301並びに変形例にかかる光ファイバ保護具301′は、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1と同様に、金属管被覆光ファイバケーブル304の末端構造及び金属管被覆光ファイバケーブル304の接続構造に適用でき、同様の作用及び効果が期待できる。
【0080】
<第5の実施形態>
図19は第5の実施形態にかかる光ファイバ保護具401を用いた金属管被覆光ファイバケーブル404の末端構造を示す縦断面図であり、
図20は金属管被覆光ファイバケーブル404の末端構造を示す横断面図である。詳しくは、
図19は
図20におけるF-F断面にかかる断面図であり、
図20は
図19におけるE-E断面にかかる断面図である。また、
図21は第5の実施形態にかかる光ファイバ保護具401のみを抜き出した縦断面図であり、
図19と同じ断面にかかる断面図である。
【0081】
図19~
図21において、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1並びにこれを用いた金属管被覆光ファイバケーブル4の末端構造と同様の構成の各部材には、第1の実施形態における各部材と下二桁が同一で四百番台の符号を付すことで、各部材における同様の構成等については説明を省略する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0082】
本実施形態においては、末端開口部411の形状が第1の実施形態と異なっている。即ち、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1における末端開口部11は、軸xを含む断面において、小径部11aから大径部11bに向けて、軸x方向の矢印K側に進むとともに湾曲状に拡径する、いわゆるラッパ状になっている。
【0083】
これに対して、本実施形態における末端開口部411では、軸xを含む断面(
図21の縦断面図の断面に相当。以下、本実施形態において同様。)において、大径部11bに相当する部位(
図21において符号411dで示される部位。以下、このような部位を「突端部」と称する。)からさらに進行し、軸x方向の矢印J側に戻りつつ湾曲状に拡径する形状を有している(
図19及び
図21参照)。以下、このように一方(本実施形態では矢印K方向)に進行した後に、逆方向(同様に矢印J方向)に戻ることを「返し」と称し、当該返しを含む形状を「返しを有する形状」と称する。
【0084】
本実施形態において、小径部411aは第1の実施形態と同様の位置であるが、大径部411bは第1の実施形態で大径部11bに相当する突端部411dとは異なった位置になっている。本実施形態でも、軸xを含む断面において、拡径部411cにおける小径部411aの近傍、及び、小径部411aから最も離れた部位である突端部411dの近傍を含む拡径部411cの全域にわたって湾曲している。
【0085】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具401は、末端開口部311が返しを有する形状であるため、光ファイバ保護具401単体として強度を出しやすい。また、末端開口部411が返しを有する形状であるため、金属管403の末端431が引っ掛かりやすく、金属管403内部への光ファイバ保護具401の引き込まれ防止効果がより一層高くなっている。
【0086】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具401は、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1と同様に、金属管被覆光ファイバケーブル404の末端構造及び金属管被覆光ファイバケーブル404の接続構造に適用でき、同様の作用及び効果が期待できる。
【0087】
<第6の実施形態>
図22は第6の実施形態にかかる光ファイバ保護具501を用いた金属管被覆光ファイバケーブル504の末端構造を示す縦断面図であり、
図23は金属管被覆光ファイバケーブル504の末端構造を示す横断面図である。詳しくは、
図22は
図23におけるH-H断面にかかる断面図であり、
図23は
図22におけるG-G断面にかかる断面図である。また、
図24は第6の実施形態にかかる光ファイバ保護具501のみを抜き出した縦断面図であり、
図22と同じ断面にかかる断面図である。
【0088】
図22~
図24において、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1並びにこれを用いた金属管被覆光ファイバケーブル4の末端構造と同様の構成の各部材には、第1の実施形態における各部材と下二桁が同一で五百番台の符号を付すことで、各部材における同様の構成等については説明を省略する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0089】
図22~
図24に示すように、本実施形態にかかる光ファイバ保護具501は、末端開口部511と、外側筒部(筒部)512と、を有する。末端開口部511は、内径が最小であり、光ファイバ502が挿入される小径部511aと、外径が最大である大径部511bと、小径部511a及び大径部511bの間を繋ぐ拡径部511cと、からなる。大径部511bの径(外径)は、金属管503の外径よりも大きい。一方、小径部511aの径(外径)は、金属管503の内径よりも小さい。
【0090】
拡径部511cは、小径部511a側から大径部511b側へと向かうにしたがって径が漸次拡がっている。本実施形態では、軸xを含む断面(
図22の縦断面図の断面に相当。以下、本実施形態において同様。)において、拡径部511cにおける小径部511aの近傍、及び、小径部511aから最も離れた部位である突端部511dの近傍を含む拡径部511cの全域にわたって湾曲している。即ち、本実施形態において、末端開口部511は、第5の実施形態と同様、返しを有する形状を有している(ただし、本実施形態のいて、返しは、突端部511dから小径部511aに向けて形成されている。)。
【0091】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具501は、末端開口部511が返しを有する形状であるため、光ファイバ保護具501単体として強度を出しやすい。また、末端開口部511が返しを有する形状であるため、金属管503の末端531が引っ掛かりやすく、光ファイバ保護具501の金属管503からの脱落防止効果がより一層高くなっている。
【0092】
一方、外側筒部513は、大径部511bから、軸x方向におけ拡径部511c側(矢印K側)とは逆側(矢印J側)に連なって延伸している。この外側筒部513には、金属管503が末端531から挿入されて、当該外側筒部513の内周が金属管503の外周に対向した状態になっている。
【0093】
本実施形態においては、軸xを含む断面において、拡径部511cの全域にわたって湾曲しているため、保護チューブ505が被覆された光ファイバ502が接触し得る領域(小径部511a、及び拡径部511cにおける小径部511a近傍の領域)が滑らかな湾曲形状となっている。そのため、光ファイバ502乃至保護チューブ505が、光ファイバ保護具501の拡径部511cの湾曲形状に強く押し付けられたとしても、圧が分散して作用するので、光ファイバ502乃至保護チューブ505への負荷が軽減され、また衝撃がやわらげられ、損傷等の影響を抑制することができる。
【0094】
本実施形態においては、第1の実施形態とは異なり、光ファイバ保護具501の筒部が金属管503の内側にはなく、外側の外側筒部513のみを有している。そのため、末端開口部511が、外側筒部513から内周側に突出した形状となっている。しかし、本実施形態では、末端開口部51における小径部511a及び大径部511bの間を繋ぐ拡径部511cが湾曲しているため、光ファイバ502乃至保護チューブ505が末端開口部511近傍に強く押し付けられたとしても、光ファイバ502乃至保護チューブ505への負荷が軽減され、また衝撃がやわらげられ、損傷等の影響を抑制することができる。
【0095】
この小径部511aの近傍における湾曲形状の効果を十分ならしめるとともに、金属管の末端531を末端開口部511で覆うためには、末端開口部511における内側の返しがある程度大きいことが望ましい。末端開口部511における内側の返しの程度としては、軸x方向を含む平面において、小径部511aの内周側の接線が軸xと平行もしくは小径部511aの端部が外周側を向くようにすると、光ファイバの保護効果がより高まり好ましい。
【0096】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具501は、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具501と同様に、金属管被覆光ファイバケーブル504の末端構造及び金属管被覆光ファイバケーブル504の接続構造に適用でき、同様の作用及び効果が期待できる。
【0097】
なお、第1の実施形態で説明した金属管3の外周からの加締め加工は、本実施形態においても同様に、矢印Mで示すマーキング位置で行えばよい。ただし、本実施形態においては、径方向において、金属管503と光ファイバ保護具501との位置関係が内外逆なので、本実施形態の場合には、光ファイバ保護具501における外側筒部513の外周から加締め加工する。金属管503と外側筒部513の位置関係が内外逆であるだけで、加締めによってもたらされる作用や効果は第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0098】
<第7の実施形態>
図25は第7の実施形態にかかる光ファイバ保護具601を用いた金属管被覆光ファイバケーブル604の末端構造を示す縦断面図であり、第1の実施形態における
図1と同様の箇所の断面にかかる断面図である。また、
図26は第7の実施形態にかかる光ファイバ保護具601のみを抜き出した縦断面図であり、
図25と同じ断面にかかる断面図である。
【0099】
図25及び
図26において、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具1並びにこれを用いた金属管被覆光ファイバケーブル4の末端構造と同様の構成の各部材には、第1の実施形態における各部材と下二桁が同一で六百番台の符号を付すことで、各部材における同様の構成等については説明を省略する。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0100】
本実施形態においては、光ファイバ保護具601の形状が第5の実施形態と異なっている。即ち、第7の実施形態にかかる光ファイバ保護具601は、末端開口部611の大径部611bに連なってさらに巻き込み端部615が延伸している。巻き込み端部615は、軸xを含む断面(
図26の縦断面図の断面に相当。以下、本実施形態において同様。)において、末端開口部611の拡径部611cと略同じ曲率で湾曲し、内側筒部(筒部)612に向かって延び、さらに矢印K側に向かい始めたところが縁端となっている。
【0101】
末端開口部611の小径部611aに連なってさらに巻き込み端部714が延伸する巻き込み形状を有するため、光ファイバ保護具601単体としてより強度を出しやすい。また、金属管603の内面と接触し得る領域(大径部611b及びその近傍)が滑らかな湾曲形状となっているため、金属管603への負荷を軽減することができる。
【0102】
本実施形態にかかる光ファイバ保護具601は、第1の実施形態にかかる光ファイバ保護具601と同様に、金属管被覆光ファイバケーブル604の末端構造及び金属管被覆光ファイバケーブル604の接続構造に適用でき、同様の作用及び効果が期待できる。
【0103】
以上説明した実施形態は、本発明の代表的な形態の例を示したに過ぎず、本発明は、これら実施形態に限定されるものではない。即ち、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。かかる変形によってもなお本発明の光ファイバ保護具、並びに、これを用いた金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造、及び、金属管被覆光ファイバケーブルの接続構造の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【0104】
例えば、上記実施形態においては全て、軸を含む断面において、末端開口部の拡径部の全域にわたって湾曲している例を挙げているが、本発明においてはこれに限定されない。軸を含む断面において、例えば、拡径部の一部に直線的に拡径する領域が含まれても、拡径部における少なくとも一部が湾曲していれば構わない。ただし、軸を含む断面において、少なくとも、拡径部における小径部から最も離れた部位(末端開口部の端部)の近傍が金属管端部を覆うように湾曲していると、例えば光ファイバが金属管の端部近傍に接触し曲げ負荷がかかっても光ファイバを損傷させにくく、好ましい。
【0105】
また、第4の実施形態では、軸を含む面を分割面として2つの部材に分割された光ファイバ保護具の例を挙げているが、本発明においてはこれに限定されず、3つ以上の部材からなる光ファイバ保護具であっても構わない。また、分割面が軸を含まなくても構わない。なお、本明細書において「分割面」とは、分割された隣り合う部材同士の分割面を指す。
【0106】
また、光ファイバ保護具が分割されて複数の部材からなる構成は、光ファイバ保護具の形状が第4の実施形態で例示した光ファイバ保護具401の形状に限定されず、あらゆる形状に対して、適用することができる。したがって、例えば、第5または第6の実施形態における光ファイバ保護具501,601の形状であっても、分割されて複数の部材からなる構成とすることができる。また、例えば、第2または第3の実施形態における光ファイバ保護具201,301の形状であっても、スリット113,214の意義は減じられるものの、分割されて複数の部材からなる構成とすることができる。
【0107】
上記実施形態においては、基本的に、金属管被覆光ファイバケーブル連結体における金属管被覆光ファイバケーブル同士の接続構造を中心に説明しているが、金属管被覆光ファイバケーブル連結体としての末端や、連結せずに用いられる金属管被覆光ファイバケーブルの末端に対して、本発明の「金属管被覆光ファイバケーブルの末端構造」を適用することも勿論可能である。
【符号の説明】
【0108】
1,101,201,301,301′,401,501,601 光ファイバ保護具、
2,102,202,302,402,502,602 光ファイバ、
3,103,203,303,403,503,603 金属管、
4,104,204,304,404,504,604 金属管被覆光ファイバケーブル、
5,105,205,305,405,505,605 保護チューブ、
11,111,211,311,311′,411,511,611 末端開口部、
11a,111a,211a,311a,411a,511a,611a 小径部、
11b,111b,211b,311b,411b,511b,611b 大径部、
11c,111c,211c,311c,411c,511c,611c 拡径部、
12,112,212,312,312′,412,612 内側筒部(筒部)、
513 外側筒部(筒部)、
31 末端、
32 加締め跡、
113,214 スリット、
301x,301y,301x′,301y′ 部材、
311x,311y 末端開口部片、
312x,312y 内側筒部片、
316x′,316y′ 内周側突出部、
317x′,317y′ 外周側突出部、
411d,511d,611d 突端部、
513 外側筒部(筒部)、
615 巻き込み端部