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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004593
(43)【公開日】2025-01-15
(54)【発明の名称】早朝尿量増加剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/076 20060101AFI20250107BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/68 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/54 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/714 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/8968 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/258 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/539 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/481 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/815 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/804 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/40 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/894 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/884 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/65 20060101ALI20250107BHJP
   A61K 36/21 20060101ALI20250107BHJP
【FI】
A61K36/076
A61P7/10
A61K36/68
A61K36/54
A61K36/714
A61K36/185
A61K36/8968
A61K36/258
A61K36/539
A61K36/481
A61K36/815
A61K36/484
A61K36/804
A61K36/40
A61K36/894
A61K36/884
A61K36/65
A61K36/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104378
(22)【出願日】2023-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 圭太
(72)【発明者】
【氏名】松下 哲也
【テーマコード(参考)】
4C088
【Fターム(参考)】
4C088AA04
4C088AB12
4C088AB16
4C088AB22
4C088AB32
4C088AB33
4C088AB37
4C088AB38
4C088AB48
4C088AB58
4C088AB59
4C088AB60
4C088AB71
4C088AB84
4C088AB85
4C088MA07
4C088MA16
4C088MA23
4C088MA28
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
4C088NA14
4C088ZA83
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、早朝の排尿量を増加させる医薬品を提供することである。
【解決手段】ブクリョウ及びシャゼンを含む生薬混合物A、ブクリョウ、ケイヒ及びブシを含む生薬混合物B、及び/又はそれらのエキスは、早朝尿量増加剤の有効成分として有用である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブクリョウ及びシャゼンシを含む生薬混合物A、ブクリョウ、ケイヒ及びブシを含む生薬混合物B、及び/又はそれらのエキスを含む、早朝尿量増加剤。
【請求項2】
起床後1回目の排尿時の尿量を増加させる、請求項1に記載の早朝尿量増加剤。
【請求項3】
前記生薬混合物Aが、レンニク、バクモンドウ、ブクリョウ、ニンジン、シャゼンシ、オウゴン、オウギ、ジコッピ、及びカンゾウからなる、請求項1に記載の早朝尿量増加剤。
【請求項4】
前記生薬混合物Bが、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、及びブシからなる、請求項1に記載の早朝尿量増加剤。
【請求項5】
前記生薬混合物A又はBが、ゴシツ、シャゼンシ、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、及びブシからなる、請求項1に記載の早朝尿量増加剤。
【請求項6】
夜間頻尿の改善用以外に用いられる、請求項1に記載の早朝尿量増加剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、早朝尿量増加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
正常な排尿は、排尿(尿を出す)と蓄尿(尿をためる)との排尿サイクルから成り立っており、それが円滑に機能しなくなった状態のことを排尿障害という。男女問わず、加齢とともに排尿障害に悩む人が増え、生活の質(QOL)を著しく損なうといわれている。
【0003】
排尿障害に対する薬物療法としては、膀胱の容量を増やす抗コリン剤、及び尿道をひき締め膀胱を緩めるα・βアドレナリン受容体刺激薬等が使用される。しかしながら、これらの西洋薬は副作用の問題があるため、漢方薬が選択される場合もある。例えば、六味丸(非特許文献1)は、排尿困難、頻尿を効能とする漢方薬として用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】漢方製剤 ツムラ六味丸エキス顆粒(医療用)付属書、2007年5月改訂
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排尿障害を効能とする漢方薬は副作用が少ないため治療に取り入れやすいが、効果の実感に欠けることも多い。
【0006】
また、排尿が正常な人において、早朝の排尿で尿量が最も多いのが一般的であるが、早朝の排尿が少ないことで悩む人もいる。このような人に対して、早朝の排尿量を増加させる医薬品があれば、効果を実感しやすい医薬品の提供が可能になると考えられる。
【0007】
本開示は、早朝の排尿量を増加させる医薬品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、所定の生薬の組み合わせを含む生薬混合物又はそのエキスに、早朝の排尿量を増加させる作用があることを見出した。本開示は、この知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. ブクリョウ及びシャゼンシを含む生薬混合物A、ブクリョウ、ケイヒ及びブシを含む生薬混合物B、及び/又はそれらのエキスを含む、早朝尿量増加剤。
項2. 起床後1回目の排尿時の尿量を増加させる、項1に記載の早朝尿量増加剤。
項3. 前記生薬混合物Aが、レンニク、バクモンドウ、ブクリョウ、ニンジン、シャゼンシ、オウゴン、オウギ、ジコッピ、及びカンゾウからなる、項1又は2に記載の早朝尿量増加剤。
項4. 前記生薬混合物Bが、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、及びブシからなる、項1又は2に記載の早朝尿量増加剤。
項5. 前記生薬混合物A又はBが、ゴシツ、シャゼンシ、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、及びブシからなる、項1又は2に記載の早朝尿量増加剤。
項6. 夜間頻尿の改善用以外に用いられる、項1~5のいずれかに記載の早朝尿量増加剤。
項7.早朝尿量の増加が必要な対象に、有効量の、ブクリョウ及びシャゼンシを含む生薬混合物A、ブクリョウ、ケイヒ及びブシを含む生薬混合物B、及び/又はそれらのエキスを投与する、早朝尿量増加方法。
項8.早朝尿量の増加用組成物の製造のための、ブクリョウ及びシャゼンシを含む生薬混合物A、ブクリョウ、ケイヒ及びブシを含む生薬混合物B、及び/又はそれらのエキスの使用。
項9.早朝尿量が少ないことに関連して生じる疾患の治療に用いるための、ブクリョウ及びシャゼンシを含む生薬混合物A、ブクリョウ、ケイヒ及びブシを含む生薬混合物B、及び/又はそれらのエキス。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、早朝の排尿量を増加させる医薬品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の早朝尿量増加剤は、ブクリョウ及びシャゼンシを含む生薬混合物A、ブクリョウ、ケイヒ及びブシを含む生薬混合物B、及び/又はそれらのエキスを含有することを特徴とする。以下、本開示の早朝尿量増加剤について詳述する。
【0012】
有効成分
本開示の早朝尿量増加剤は、有効成分として、ブクリョウ及びシャゼンシを含む生薬混合物A、ブクリョウ、ケイヒ及びブシを含む生薬混合物B、及び/又はそれらのエキスを含有する。
【0013】
生薬混合物Aは、ブクリョウ及びシャゼンシを含む限り特に限定されず、他の任意の生薬を含んでよいが、早朝尿量増加効果を高める観点から、好ましくは、レンニク、バクモンドウ、ブクリョウ、ニンジン、シャゼンシ、オウゴン、オウギ、ジコッピ、及びカンゾウからなる生薬混合物a、並びに、ゴシツ、シャゼンシ、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、及びブシからなる生薬混合物abが挙げられる。
【0014】
生薬混合物Bは、ブクリョウ、ケイヒ及びブシを含む限り特に限定されず、他の任意の生薬を含んでよいが、早朝尿量増加効果を高める観点から、好ましくは、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、及びブシからなる生薬混合物b、並びに、ゴシツ、シャゼンシ、ジオウ、サンシュユ、サンヤク、タクシャ、ブクリョウ、ボタンピ、ケイヒ、及びブシからなる生薬混合物abが挙げられる。
【0015】
生薬混合物aを構成する生薬の混合比については特に制限されないが、例えば、レンニク2~5重量部、好ましくは3~4重量部;バクモンドウ1.5~4重量部、好ましくは2~3重量部;ブクリョウ2~4重量部、好ましくは2.5~3.5重量部;ニンジン1.5~5重量部、好ましくは2~4重量部;シャゼンシ1.5~3重量部、好ましくは2~2.5重量部;オウゴン1.5~3重量部、好ましくは2~2.5重量部;オウギ1~4重量部、好ましくは2~3重量部;ジコッピ1~3重量部、好ましくは2~2.5重量部;カンゾウ0.7~2重量部、好ましくは0.7~1重量部が挙げられる。
【0016】
生薬混合物bを構成する生薬の混合比については特に制限されないが、例えば、ジオウ2.5~8重量部、好ましくは6~8重量部;サンシュユ1.5~4重量部、好ましくは3~4重量部:サンヤク1.5~4重量部、好ましくは3~4重量部;タクシャ1.5~3重量部、好ましくは2~3重量部;ブクリョウ1.5~3重量部、好ましくは2~3重量部;ボタンピ1.5~3重量部、好ましくは2~4重量部;ケイヒ0.5~1重量部、好ましくは0.8~1重量部;ブシ(加工ブシ)0.25~1重量部、好ましくは0.5~1重量部が挙げられる。
【0017】
生薬混合物abを構成する生薬の混合比については特に制限されないが、例えば、ゴシツ1~3重量部、好ましくは1.5~3重量部;シャゼンシ1~3重量部、好ましくは1.5~3重量部;ジオウ2~8重量部、好ましく2~3重量部;サンシュユ1~4重量部、好ましくは2~4重量部;サンヤク1~4重量部、好ましくは1.5~4重量部;タクシャ1~3重量部、好ましくは1.5~3重量部;ブクリョウ1~4重量部、好ましくは1.5~4重量部;ボタンピ1~4重量部、好ましくは1.5~4重量部;ケイヒ0.25~2重量部、好ましくは0.5~2重量部;ブシ(加工ブシ)0.25~1重量部、好ましくは0.5~1重量部が挙げられる。
【0018】
本開示の早朝尿量増加剤において、有効成分としては、早朝尿量増加効果を高める観点から、好ましくは上記生薬混合物のエキスが挙げられる。また、本開示の早朝尿量増加剤において、有効成分としては、早朝尿量増加効果を高める観点から、好ましくは生薬混合物A又はそのエキス、より好ましくは生薬混合物a又はそのエキス、さらに好ましくは生薬混合物aのエキスが挙げられる。
【0019】
上記生薬混合物のエキスの形態としては、流エキス、軟エキス等の液状のエキス、及び固形状の乾燥エキス末のいずれであってもよい。
【0020】
上記生薬混合物の液状のエキスは、上記生薬混合物を抽出処理し、得られた抽出液を必要に応じて濃縮することにより得ることができる。抽出処理に使用される抽出溶媒としては、特に限定されず、水又は含水エタノール、好ましくは水が挙げられる。また、上記生薬混合物の乾燥エキス末は、液状のエキスを乾燥処理することにより得ることができる。乾燥処理の方法としては特に限定されず、例えば、スプレードライ法、エキスの濃度を高めた軟エキスに適当な吸着剤(例えば無水ケイ酸、デンプン等)を加えて吸着末とする方法等が挙げられる。
【0021】
本開示の早朝尿量増加剤において、上記有効成分の含有量としては、本開示の効果を奏する限り特に限定されず、通常5~100重量%、好ましくは10~90重量%、より好ましくは20~80重量%、更に好ましくは30~60重量%が挙げられる。有効成分としてエキスを用いる場合、上記含有量は、乾燥エキス末量換算であり、乾燥エキス末量換算とは、乾燥エキス末を使用する場合にはそれ自体の量であり、液状のエキスを使用する場合には溶媒を除去した残量に換算した量であり、乾燥エキス末が製造時に添加された吸着剤等の添加剤を含む場合は、当該添加剤を除いた量である。
【0022】
その他の成分
本開示の早朝尿量増加剤は、上記有効成分単独からなるものであってもよいし、製剤形態に応じた添加剤及び/又は基剤を含んでいてもよい。本開示の早朝尿量増加剤が含んでいてもよくまた含んでいなくてもよい添加剤及び基剤としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、等張化剤、可塑剤、分散剤、乳化剤、溶解補助剤、湿潤化剤、安定化剤、懸濁化剤、粘着剤、コーティング剤、光沢化剤、水、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、水溶性高分子、界面活性剤、金属石鹸、低級アルコール類、多価アルコール、pH調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、防腐剤、矯味剤、香料、粉体、増粘剤、色素、キレート剤等が挙げられる。これらの基剤及び添加剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの添加剤及び基剤の含有量については、使用する添加剤及び基剤の種類、並びに/若しくは早朝尿量増加剤の製剤形態等に応じて適宜設定される。
【0023】
また、本開示の早朝尿量増加剤は、上記有効成分の他に、必要に応じて、他の栄養成分及び/又は薬理成分を含有していてもよいし、含有していなくてもよい。本開示の早朝尿量増加剤が含んでいてもよくまた含んでいなくてもよい栄養成分及び薬理成分としては、薬学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、制酸剤、健胃剤、消化剤、整腸剤、鎮痙剤、粘膜修復剤、抗炎症剤、収れん剤、鎮吐剤、鎮咳剤、去痰剤、消炎酵素剤、鎮静催眠剤、抗ヒスタミン剤、カフェイン類、強心利尿剤、抗菌剤、血管収縮剤、血管拡張剤、局所麻酔剤、生薬エキス、ビタミン類、メントール類等が挙げられる。これらの栄養成分及び薬理成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、これらの成分の含有量については、使用する成分の種類等に応じて適宜設定される。
【0024】
製剤形態
本開示の早朝尿量増加剤の製剤形態については、経口投与が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、トローチ剤、チュアブル剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、丸剤等の固形状製剤;ゼリー剤等の半固形状製剤;液剤、懸濁剤、シロップ剤等の液状製剤が挙げられ、好ましくは丸剤、顆粒剤又は錠剤が挙げられる。
【0025】
製造方法
本開示の早朝尿量増加剤の製造方法は、上記生薬成分を用いて、医薬分野で採用されている通常の製剤化手法に従って製剤化すればよい。
【0026】
用途
本開示の早朝尿量増加剤は、早朝の排尿時の尿量を増加させる目的で使用される。目的とする尿量の増加量としては、本開示の早朝尿量増加剤を服用する前における早朝尿量の1.8倍以上、好ましくは2倍以上、より好ましくは2.2倍以上(体積基準)が挙げられる。
【0027】
本開示の早朝尿量増加剤は、より具体的には、起床後1回目の排尿時の尿量を増加させる目的で用いられる。また、本開示の早朝尿量増加剤は、適用対象に夜間頻尿(就寝後に1回以上、好ましくは2回以上排尿に起きる症状)の症状が無い場合であっても早朝尿量を増加させることができ、適用対象に夜間頻尿の症状があって、本開示の早朝尿量増加剤により夜間頻尿の改善効果が得られない場合であっても早朝尿量を増加させることができ、若しくは、適用対象に夜間頻尿の症状があって、本開示の早朝尿量増加剤により夜間頻尿の改善効果が表れるよりも先立って、早朝尿量を増加させることができる。従って、本開示の早朝尿量増加剤は、夜間頻尿の改善用以外の目的で使用されてもよい。
【0028】
本開示の早朝尿量増加剤の適用対象の性別としては、男女を問わない。また、本開示の早朝尿量増加剤の適用対象の年齢としても特に限定されないが、例えば40歳代以上、好ましくは50歳代以上、又は60歳代以上が挙げられ、また、その上限としては、例えば80歳代以下、好ましくは70歳代以下が挙げられる。
【0029】
用量・用法
本開示の早朝尿量増加剤は、経口投与によって使用される。本開示の早朝尿量増加剤の用量については、投与対象者の年齢、体質、症状の程度等に応じて適宜設定されるが、例えば、ヒトに対して1日当たり、生薬混合物Aの場合、ブクリョウ及びシャゼンシの原生薬換算量の総量で、例えば2.4~7g、好ましくは2.9~5gが挙げられ、生薬混合物Bの場合、ブクリョウ、ケイヒ及びブシの原生薬換算量の総量で、例えば2~7g、好ましくは2.4~5gが挙げられる。
【0030】
また、本開示の早朝尿量増加剤のヒトに対する1日当たりの用量は、生薬混合物aの場合、生薬混合物aの原生薬換算量の総量で例えば12~35g、好ましくは20~25gが挙げられ、生薬混合物aのエキスの場合、乾燥エキス末量換算量で、例えば1.5~3g、好ましくは2~2.5gが挙げられ;生薬混合物bの場合、生薬混合物bの原生薬換算量の総量で例えば8~22g、好ましくは10~14gが挙げられ、生薬混合物bのエキスの場合、乾燥エキス末量換算量で、例えば1~4g、好ましくは1.5~2.5gが挙げられ;生薬混合物abの場合、生薬混合物abの原生薬換算量の総量で例えば10~35g、好ましくは12~20gが挙げられ、生薬混合物abのエキスの場合、乾燥エキス末量換算量で、例えば2~5g、好ましくは2~3gが挙げられる。
【0031】
本開示の早朝尿量増加剤の服用頻度としては、1日1~3回、好ましくは2回が挙げられる。服用タイミングについては、特に制限されず、食前、食後、又は食間のいずれであってもよいが、食前(食事の30分前)又は食間(食後2時間後)が好ましく、食前がより好ましい。
【0032】
また、本開示の早朝尿量増加剤の服用期間としては、例えば4日以上、好ましくは5日以上、より好ましくは6日以上、さらに好ましくは1週間以上が挙げられる。服用期間の上限としては特に限定されないが、本開示の早朝尿量増加剤による早朝尿量増加効果は比較的早期に表れるため、例えば2週間以下、10日以下、又は1週間以下が挙げられる。
【実施例0033】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0034】
(1)早朝尿量増加剤の調製
(1-1)生薬混合物aのエキス
レンニク3.5重量部、バクモンドウ2.1重量部、ブクリョウ2.8重量部、ニンジン3.5重量部、シャゼンシ2.1重量部、オウゴン2.1重量部、オウギ2.8重量部、ジコッピ2.1重量部、及びカンゾウ0.7重量部を用い、これらを刻んだ後、水10倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、生薬混合物aのエキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0035】
(1-2)生薬混合物bのエキス
ジオウ2.5重量部、サンシュユ1.5重量部、サンヤク1.5重量部、タクシャ1.5重量部、ブクリョウ1.5重量部、ボタンピ1.5重量部、ケイヒ0.5重量部、及び加工ブシ0.5重量部を用い、これらを刻んだ後、水10倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、生薬混合物bのエキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0036】
(1-3)生薬混合物abのエキス
ゴシツ1.5重量部、シャゼンシ1.5重量部、ジオウ2.5重量部、サンシュユ1.5重量部、サンヤク1.5重量部、タクシャ1.5重量部、ブクリョウ1.5重量部、ボタンピ1.5重量部、ケイヒ0.5重量部、及び加工ブシ0.5重量部を用い、これらを刻んだ後、水10倍重量を用いて約100℃で1時間抽出し、遠心分離して抽出液を得た。抽出液を減圧下で濃縮してスプレードライヤーを用いて乾燥し、生薬混合物abのエキス末を得た。なお、スプレードライヤーによる乾燥は、抽出液を回転数10000rpmのアトマイザーに落下させ、150℃の空気の熱風を供給して行った。
【0037】
(2)実験方法
40~70歳代の男女20名を4群(N=5)に分け、各群に、生薬混合物aのエキスの錠剤、生薬混合物bのエキスの錠剤、生薬混合物abのエキスの錠剤、六味丸エキスの錠剤を、1日2回、朝食前及び夕食前に、1週間服用させた。なお、被験者20名(A~T)のうち、被験者E、F、I、K、М、及びTに、夜間頻尿の症状があり、その他の被験者には夜間頻尿の症状は無かった。
【0038】
用量は、生薬混合物aのエキスについては、ブクリョウ及びシャゼンシの原生薬換算量の総量で4.9g/日、生薬混合物aの原生薬換算量の総量で21.7g/日、生薬混合物aのエキスの乾燥エキス末量換算量で2.2g/日であり;生薬混合物bのエキスについては、ブクリョウ、ケイヒ及びブシの原生薬換算量の総量で2.5g/日、生薬混合物bの原生薬換算量の総量で11g/日、生薬混合物bのエキスの乾燥エキス末量換算量で2g/日であり;生薬混合物abのエキスについては、ブクリョウ及びシャゼンシの原生薬換算量の総量で3g/日、ブクリョウ、ケイヒ及びブシの原生薬換算量の総量で2.5g/日、生薬混合物abの原生薬換算量の総量で14g/日、生薬混合物abのエキスの乾燥エキス末量換算量で2.5g/日であった。六味丸エキスについては、原生薬換算量で20g/日、乾燥エキス末量換算量で3.75g/日であった。
【0039】
服用前と服用開始1週間後とにおいて、毎回の排尿時に紙コップを用いて、尿量を計測、及び排尿日誌への記録をさせた。生薬混合物aのエキス投与群の結果を表1に、生薬混合物bのエキス投与群の結果を表2に、生薬混合物abのエキス投与群の結果を表3に、六味丸エキス投与群の結果を表4に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
表1~3と表4との対比に示される通り、表1~3では、起床後1回目の排尿時の尿量が顕著に増加(具体的には1.9倍以上)していた。なお、生薬混合物b(表2)は、ケイヒ及びブシを含む点を除いて六味丸(表4)と生薬構成が共通しているが、表2(生薬混合物bのエキス投与群)で、起床後1回目の排尿時の尿量が顕著に増加していた。
【0045】
また、表1~3の中でも、表1(生薬混合物aのエキス投与群)で、起床後1回目の排尿時の尿量の増加が特に顕著であった。
【0046】
さらに、表1~3のいずれにおいても、夜間頻尿の改善が認められない被験者(被験者E、I、K)でも起床後1回目の排尿時の尿量の増加が認められた。つまり、本開示の早朝尿量増加剤は、夜間頻尿の改善とは無関係に、早朝尿量を増加させることが分かった。