IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポリプラスチックス株式会社の特許一覧

特開2025-47823離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法
<>
  • 特開-離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法 図1
  • 特開-離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法 図2
  • 特開-離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法 図3
  • 特開-離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法 図4
  • 特開-離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法 図5
  • 特開-離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法 図6
  • 特開-離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法 図7
  • 特開-離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法 図8
  • 特開-離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025047823
(43)【公開日】2025-04-03
(54)【発明の名称】離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/40 20060101AFI20250326BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20250326BHJP
【FI】
B29C45/40
B29C45/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023156557
(22)【出願日】2023-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三輪 勝正
(72)【発明者】
【氏名】増谷 勇佑
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅季
(72)【発明者】
【氏名】橋本 將太
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AM23
4F202AP01
4F202AP11
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CK06
4F202CM03
4F202CM90
(57)【要約】
【課題】可動側金型からの樹脂成形品の離型時において、可動側金型と樹脂成形品の表面の正面密着力を精度良く評価することが可能な離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法を提供する。
【解決手段】
本発明の一の態様によれば、固定側金型11と、固定側金型11に対して開閉方向DR1に移動可能であり、固定側金型11との間にキャビティ12Aを形成する可動側金型12とを備える金型10と、樹脂成形品60を可動側金型12から離型させるエジェクタ機構20と、エジェクタ機構20に設けられた圧力センサ40と、可動側金型12に設置され、かつ樹脂組成物の成形温度以上の耐熱性を有する板材30と、を備え、樹脂成形品60と板材30が一体化された状態で可動側金型12から離型される、離型抵抗評価用金型2が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型からの樹脂成形品の離型時の抵抗値を評価するための離型抵抗評価用金型であって、
固定側金型と、前記固定側金型に対して開閉方向に移動可能であり、前記固定側金型との間にキャビティを形成する可動側金型とを備え、前記キャビティ内に樹脂組成物が射出される金型と、
前記可動側金型に設けられ、かつ型開き時に前記樹脂組成物を成形した樹脂成形品を前記可動側金型から離型させるエジェクタ機構と、
前記エジェクタ機構に設けられ、かつ前記エジェクタ機構による前記可動側金型からの前記樹脂成形品の離型時の離型抵抗値を測定する圧力センサと、
前記可動側金型に設置され、かつ前記樹脂組成物の成形温度以上の耐熱性を有する板材と、を備え、
前記樹脂成形品と前記板材が一体化された状態で前記可動側金型から離型される、離型抵抗評価用金型。
【請求項2】
前記樹脂成形品が、板状の本体部を有し、前記可動側金型の内壁面が、前記樹脂成形品の前記本体部における前記板材側の面とは反対側の面である表面に接する第1内壁面と、前記第1内壁面から前記板材側に向けて立ち上がり、前記第1内壁面の法線方向に対して前記板材側に向けて末広がりとなるように傾斜し、かつ前記樹脂成形品の前記本体部の側面に接する第2内壁面とを有する、請求項1に記載の離型抵抗評価用金型。
【請求項3】
前記樹脂成形品が、板状の本体部と、前記本体部に結合された円錐状のスプルー部とを備える、請求項1に記載の離型抵抗評価用金型。
【請求項4】
前記板材の厚みが、1mm以上10mm以下である、請求項1に記載の離型抵抗評価用金型。
【請求項5】
前記板材が、350℃以上の耐熱性を有する、請求項1に記載の離型抵抗評価用金型。
【請求項6】
前記板材が、前記板材における前記樹脂成形品と接する面に溝を有する、請求項1に記載の離型抵抗評価用金型。
【請求項7】
前記固定側金型が、スプルーを有さない、またはスプルーを有し、かつ前記スプルーの長さが40mm以下である、請求項1に記載の離型抵抗評価用金型。
【請求項8】
前記固定側金型が、前記型開き時に前記板材を前記可動側金型に押し付ける機構を有する、請求項1に記載の離型抵抗評価用金型。
【請求項9】
前記板材が、貫通孔を有し、前記エジェクタ機構が、前記貫通孔に対応する位置に前記樹脂成形品を押し出すエジェクタピンを有し、前記エジェクタピンの径が、前記貫通孔の孔径以上である、請求項1に記載の離型抵抗評価用金型。
【請求項10】
前記可動側金型の前記第1内壁面近傍の温度を測定する熱電対をさらに備える、請求項2に記載の離型抵抗評価用金型。
【請求項11】
請求項1に記載の離型抵抗評価用金型を用いて、金型からの樹脂成形品の離型時の抵抗値を評価する離型抵抗評価方法であって、
前記キャビティ内に樹脂組成物を射出して、請求項3に記載の樹脂成形品を成形するステップと、
前記固定側金型に対して前記可動側金型を移動させて、型開きするステップと、
前記エジェクタ機構によって、前記可動側金型から前記樹脂成形品および前記板材を一体化した状態で離型させるステップと、
前記エジェクタ機構による前記樹脂成形品および前記板材の離型時の離型抵抗値を前記圧力センサで測定するステップと、
を備える、離型抵抗評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金型を用いた樹脂組成物の射出成形によって様々な樹脂成形品が製造されているが、樹脂組成物の射出成形における市場問題の一つとして樹脂成形品の離型不良という問題がある。離型不良は、寸法の規格外れや製品へのクラック発生につながる場合がある。
【0003】
離型不良の原因としては、成形時のガス発生や収縮等の材料の要因、金型の内壁面の粗さや傷等の金型の要因、金型温度や保圧力等の成形条件の要因など様々な要因があるが、これらのうち、樹脂成形品の収縮による金型への樹脂成形品の抱き付きと、金型への樹脂成形品の貼り付きが大きな要因となっている。このようなことから、金型からの樹脂成形品を離型する際の樹脂成形品の抵抗力である離型抵抗力を測定して、評価することがある。
【0004】
型開きしたときに樹脂成形品が可動側金型とともに移動する場合、可動側金型からの樹脂成形品を離型する際の離型抵抗力には、可動側金型と樹脂成形品の表面の貼り付き力(正面密着力)と、可動側金型と樹脂成形品の側面の貼り付き力(側面密着力)、可動側金型と樹脂成形品の側面の摩擦力等の抵抗力(側面抵抗力)が含まれるが、これらを分離して、正面密着力のみ測定することが望まれている。
【0005】
現在、樹脂成形品の離型時の離型抵抗力を測定する手法としては、例えば、エジェクタピンと移動筒体との摺動抵抗力を無くした状態で樹脂成形品の離型抵抗力を測定する方法(例えば、特許文献1参照)や固定側金型側に試験片を固定して、離型の際の樹脂成形品と試験片との正面密着力を測定する方法(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9-123231号公報
【特許文献2】特開2002-1778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術においては、エジェクタピンによって樹脂成形品を離型させる際に、樹脂成形品が変形してしまい、正面密着性を正確に評価することができない。特許文献2の技術においては、型開きにおける固定側金型からの樹脂成形品の離型時の正面密着力を測定するものであるので、測定される正面密着力は、可動側金型と樹脂成形品の正面密着力ではない。
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、可動側金型からの樹脂成形品の離型時において、可動側金型と樹脂成形品の表面の正面密着力を精度良く評価することが可能な離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]金型からの樹脂成形品の離型時の抵抗値を評価するための離型抵抗評価用金型であって、固定側金型と、前記固定側金型に対して開閉方向に移動可能であり、前記固定側金型との間にキャビティを形成する可動側金型とを備え、前記キャビティ内に樹脂組成物が射出される金型と、前記可動側金型に設けられ、かつ型開き時に前記樹脂組成物を成形した樹脂成形品を前記可動側金型から離型させるエジェクタ機構と、前記エジェクタ機構に設けられ、かつ前記エジェクタ機構による前記可動側金型からの前記樹脂成形品の離型時の離型抵抗値を測定する圧力センサと、前記可動側金型に設置され、かつ前記樹脂組成物の成形温度以上の耐熱性を有する板材と、を備え、前記樹脂成形品と前記板材が一体化された状態で前記可動側金型から離型される、離型抵抗評価用金型。
【0010】
[2]前記樹脂成形品が、板状の本体部を有し、前記可動側金型の内壁面が、前記樹脂成形品の前記本体部における前記板材側の面とは反対側の面である表面に接する第1内壁面と、前記第1内壁面から前記板材側に向けて立ち上がり、前記第1内壁面の法線方向に対して前記板材側に向けて末広がりとなるように傾斜し、かつ前記樹脂成形品の前記本体部の側面に接する第2内壁面とを有する、上記[1]に記載の離型抵抗評価用金型。
【0011】
[3]前記樹脂成形品が、板状の本体部と、前記本体部に結合された円錐状のスプルー部とを備える、上記[1]に記載の離型抵抗評価用金型。
【0012】
[4]前記板材の厚みが、1mm以上10mm以下である、上記[1]ないし[3]のいずれか一項に記載の離型抵抗評価用金型。
【0013】
[5]前記板材が、350℃以上の耐熱性を有する、上記[1]ないし[4]のいずれか一項に記載の離型抵抗評価用金型。
【0014】
[6]前記板材が、前記板材における前記樹脂成形品と接する面に溝を有する、上記[1]ないし[5]のいずれか一項に記載の離型抵抗評価用金型。
【0015】
[7]前記固定側金型が、スプルーを有さない、またはスプルーを有し、かつ前記スプルーの長さが40mm以下である、上記[1]ないし[6]のいずれか一項に記載の離型抵抗評価用金型。
【0016】
[8]前記固定側金型が、前記型開き時に前記板材を前記可動側金型に押し付ける機構を有する、上記[1]ないし[7]のいずれか一項に記載の離型抵抗評価用金型。
【0017】
[9]前記板材が、貫通孔を有し、前記エジェクタ機構が、前記貫通孔に対応する位置に前記樹脂成形品を押し出すエジェクタピンを有し、前記エジェクタピンの径が、前記貫通孔の孔径以上である、上記[1]ないし[8]のいずれか一項に記載の離型抵抗評価用金型。
【0018】
[10]前記可動側金型の第1内壁面近傍の温度を測定する熱電対をさらに備える、上記[2]に記載の離型抵抗評価用金型。
【0019】
[11]上記[1]に記載の離型抵抗評価用金型を用いて、金型からの樹脂成形品の離型時の抵抗値を評価する離型抵抗評価方法であって、前記キャビティ内に樹脂組成物を射出して、上記[3]に記載の樹脂成形品を成形するステップと、前記固定側金型に対して前記可動側金型を移動させて、型開きするステップと、前記エジェクタ機構によって、前記可動側金型から前記樹脂成形品および前記板材を一体化した状態で離型させるステップと、前記エジェクタ機構による前記樹脂成形品および前記板材の離型時の離型抵抗値を前記圧力センサで測定するステップと、を備える、離型抵抗評価方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、可動側金型からの樹脂成形品の離型時において、可動側金型と樹脂成形品の表面の正面密着力を精度良く評価できる離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、実施形態に係る離型抵抗評価用金型を備える射出成形機の概略構成図である。
図2図2は、図1の一部を拡大した図である。
図3図3は、実施形態に係る離型抵抗評価用金型で得られる樹脂成形品を樹脂成形品の表面側から視認した平面図である。
図4図4は、実施形態に係る離型抵抗評価用金型で得られる他の樹脂成形品を樹脂成形品の表面側から視認した平面図である。
図5図5Aは、実施形態に係る離型抵抗評価用樹脂成形品と一体化する板材の表面側を視認した平面図であり、図5Bは、実施形態に係る離型抵抗評価用樹脂成形品と一体化する他の板材の表面側を視認した平面図である。
図6図6Aおよび図6Bは、実施形態に係る離型抵抗評価用金型を用いた離型抵抗評価工程を示す模式図である。
図7図7は、実施形態に係る離型抵抗評価用金型を用いた離型抵抗評価工程を示す模式図である。
図8図8は、実施例1に係る離型抵抗評価用金型のエジェクタピンの移動距離に対するPPS樹脂成形品の離型抵抗値を示すグラフである。
図9図9は、実施例2および比較例1に係る離型抵抗評価用金型のエジェクタピンの移動距離に対するPPS樹脂成形品の離型抵抗値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る離型抵抗評価用金型および離型抵抗評価方法について説明する。図1は、本実施形態に係る離型抵抗評価用金型の概略構成図であり、図2は、図1の一部を拡大した図である。図3は、本実施形態に係る離型抵抗評価用金型で得られる樹脂成形品を樹脂成形品の表面側から視認した平面図であり、図4は、本実施形態に係る離型抵抗評価用金型で得られる他の樹脂成形品を樹脂成形品の表面側から視認した平面図であり、図5Aは、本実施形態に係る離型抵抗評価用樹脂成形品と一体化する板材の表面側を視認した平面図であり、図5Bは、本実施形態に係る離型抵抗評価用樹脂成形品と一体化する他の板材の表面側を視認した平面図である。図6Aおよび図6Bは、本実施形態に係る離型抵抗評価用金型を用いた離型抵抗評価工程を示す模式図であり、図7は、本実施形態に係る離型抵抗評価用金型を用いた離型抵抗評価工程を示す模式図である。
【0023】
<<<射出成形機および離型抵抗評価用金型>>>
図1に示される射出成形機1は、主に、離型抵抗評価用金型2と、離型抵抗評価用金型2に樹脂組成物を供給するノズル3とを備える。離型抵抗評価用金型2は、金型10からの樹脂成形品60の離型時の抵抗値を評価するためのものである。ノズル3は、取付板4に固定されている。離型抵抗評価用金型2は、主に、金型10と、エジェクタ機構20と、板材30と、圧力センサ40と、熱電対50とを備えている。
【0024】
<<金型>>
金型10は、固定側金型11と、固定側金型11に対して開閉方向DR1に移動可能であり、かつ固定側金型11との間にキャビティ12Aを形成する可動側金型12とを備えている。
【0025】
<固定側金型>
固定側金型11は、図2に示されるように樹脂組成物の流路であるスプルー11Aを有している。スプルー11Aの長さdは、40mm以下であることが好ましい。スプルー11Aの長さdが、40mm以下であれば、固定側金型11に対して可動側金型12を移動させて、金型10を型開きしたときに、固定側金型11側に樹脂成形品60が残存することを抑制できる。スプルー11Aの長さdは、固定側金型11側への樹脂成形品60の残存を抑制する観点から、25mm以下、20mm以下、または15mm以下であることがより好ましい。固定側金型11は、スプルー11Aを有しているが、固定側金型11側への樹脂成形品60の残存を抑制する観点から、スプルー11Aを有していなくともよい。
【0026】
固定側金型11は、型開き時に板材30を可動側金型12に押し付ける押圧機構11Bを有している。固定側金型11が押圧機構11Bを有することにより、型開き時に樹脂成形品60が固定側金型11側に残存することを抑制できる。押圧機構11Bは、例えば、開閉方向DR1に弾性力を付与する弾性体11B1を備えている。弾性体11B1は、バネであることが好ましい。
【0027】
<可動側金型>
可動側金型12は、キャビティ12Aを形成する可動側金型12の内壁面12Bを有している。内壁面12Bは、樹脂成形品60の本体部61における板材30側の面である裏面61C(図2参照)とは反対側の面である表面61Aに接する第1内壁面12Cと、第1内壁面12Cから板材30側に向けて立ち上がり、樹脂成形品60の本体部61の側面61Bに接する第2内壁面12Dとを有する。第2内壁面12Dは、第1内壁面12Cの法線方向DR2に対して板材30側に向けて末広がりとなるように傾斜している。樹脂成形品60は、図2および図3に示されるように板状の本体部61と、本体部61の裏面61Cに結合したスプルー部62とを有する。スプルー部62は、スプルー11Aに対応した部分である。スプルー部62は、本体部61の中央部となる位置に結合されている。固定側金型11が、スプルー11Aを有しない場合には、スプルー部62は形成されないので、この場合には、樹脂成形品60は、本体部61のみから構成される。本体部61の表面61Aは、裏面61Cよりもエジェクタ機構20側に位置する。なお、樹脂成形品60の本体部61は、円板状となっているが、特に形状は、限定されない。例えば樹脂成形品の本体部は、樹脂成形品70の本体部71のように、四角形の平板状となっていてもよい。樹脂成形品70は、本体部71の他、スプルー部72を有している。本体部71は、表面71Aを有している。
【0028】
第1内壁面12Cは、開閉方向DR1に対して垂直または略垂直な平面となっている。第1内壁面12Cは、可動側金型12の内部にエジェクタピン21を突出させるための開口12C1を有している。開口12C1は、第1内壁面12Cの中央部に設けられている。これにより、樹脂成形品60の中央部にエジェクタピン21の先端が接するので、離型しやすくなる。第1内壁面12Cは、平面状となっている。第1内壁面12Cの形状は、特に限定されないが、例えば、円状となっていることが好ましい。第1内壁面12Cの形状を円状とすることにより、一般的に流通しているエジェクタピンを搭載することができる。
【0029】
第2内壁面12Dは、第1内壁面12Cから固定側金型11側に向けて立ち上がっているので、第1内壁面12Cと第2内壁面12Dとの間には、他の内壁面は存在していない。また、板材30の表面30Aは、第2内壁面12Dの固定側金型11側の縁に接している。これにより、第2内壁面12Dと板材30との間にも、他の内壁面は存在していない。
【0030】
第2内壁面12Dは、上記したように第1内壁面12Cの法線方向DR2に対して板材30側に向けて末広がりとなるように傾斜しているが、第1内壁面12Cの法線方向DR2(図2参照)に対する第2内壁面12Dの角度θ(図1参照)は、0°を超え90°未満であると良く、60°未満となっていることが好ましい。上記角度θが、この範囲内であれば、樹脂成形品60の離型時における樹脂成形品60の本体部61の側面61Bの側面密着力および側面抵抗力をほぼ排除できる。上記角度θの下限は、0.25°以上であることが好ましく、上限は、85°以下であることが好ましい。樹脂成形品60は、可動側金型12を用いて得られるので、本体部61は表面61A側から裏面61C側に向けて末広がりの形状となっている。また、本体部61の表面61Aの法線方向DR2に対する側面61Bの角度も、角度θとなっている。
【0031】
<エジェクタ機構>
エジェクタ機構20は、型開き時に樹脂成形品60を樹脂成形品60の本体部61の表面61A側から固定側金型11側に押し出すことにより樹脂成形品60を可動側金型12から離型させるものである。エジェクタ機構20は、固定側金型11側に突出可能なエジェクタピン21を備えている。エジェクタピン21は、可動側金型12の開口12C1を介して、可動側金型12に突出可能となっている。
【0032】
エジェクタピンの径が板材の後述する貫通孔の孔径よりも小さいと、エジェクタピンによる可動側金型からの樹脂成形品の離型時に、エジェクタピンが樹脂成形品を突き破ってしまうおそれがある。このため、エジェクタピン21における樹脂成形品60の突き破りを抑制する観点から、エジェクタピン21の径は、貫通孔31の孔径以上であることが好ましい。エジェクタピン21の径は、4mm以上10mm以下であることがより好ましい。エジェクタピン21の径がこの範囲であれば、エジェクタピン21における樹脂成形品60の突き破りをより抑制できるとともに、樹脂成形品60が離型する際の正面密着力を精度良く測定できる。エジェクタピンの断面形状が円状である場合には、エジェクタピンの径とは、直径を意味し、エジェクタピンの断面形状が円以外である場合には、エジェクタピンの径とは、断面形状の外接円の直径を意味する。
【0033】
エジェクタピン21における第1内壁面12Cからの突き出し距離は、6mm以上であることが好ましい。この突き出し距離が、6mm以上であれば、エジェクタピン21により可動側金型12から樹脂成形品60を離型させることができる。
【0034】
<板材>
板材30は、可動側金型12に配置されている。具体的には、板材30の表面30Aが、樹脂成形品60の本体部61の裏面61Cに接するように配置される。板材30は、樹脂組成物の成形時に金型10内に位置するので、樹脂組成物の成形温度以上の耐熱性を有している。本明細書における「樹脂組成物の成形温度以上の耐熱性」とは、樹脂組成物の成形温度で使用しても、板材の形状を維持できる程度に高温に耐える性質を意味する。例えば、板材30は、好ましくは350℃以上、より好ましくは400℃以上の耐熱性を有する。
【0035】
板材30の構成材料としては、樹脂組成物の成形温度以上の耐熱性を有していれば、特に限定されないが、例えば、金属や樹脂であってもよい。金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、またはステンレス鋼等が挙げられる。樹脂としては、成形する樹脂組成物の成形温度にもよるが、例えば、熱硬化性樹脂、または熱硬化性樹脂を無機繊維で強化した樹脂等が挙げられる。
【0036】
板材30の300℃での剛性(ヤング率)は、8000MPa以上であることが好ましい。板材30の300℃での剛性が、8000MPa以上であれば、樹脂成形品60を離型する際に板材30の変形が生じない。板材30の300℃での剛性の下限は、10000MPa以上、50000MPa以上、または100000MPa以上であることがより好ましく、上限は、200000MPa以下であってもよい。板材30の剛性は、引張試験によって測定することができる。
【0037】
板材30の厚みは、1mm以上10mm以下であることが好ましい。板材30の厚みが、1mm以上であれば、可動側金型22からの樹脂成形品60の離型時に樹脂成形品60の変形を抑制でき、また10mm以下であれば、離型性評価における取り扱いが容易となる。板材30の厚みの下限は、1.5mm以上、2mm以上、または2.5mm以上であることがより好ましく、上限は、8mm以下、6mm以下、または4mm以下であることがより好ましい。なお、本明細書の「板材の厚み」とは、板材における後述する溝以外の部分の厚みとする。
【0038】
板材30は、平板状となっていることが好ましい。板材30が平板状であることにより、可動型金型12へ板材30を挿入する時の板材30の向きと配置を一定に保つことができる。板材30の大きさは、樹脂成形品60の本体部61の大きさと同等またはそれ以上であることが好ましい。このような大きさの板材30とすることにより、可動側金型12からの樹脂成形品60の離型時における樹脂成形品60の変形をより抑制できる。
【0039】
板材30は、図2および図5Aに示されるように、スプルー11Aから供給される樹脂組成物を可動側金型12側に供給するための貫通孔31を有する。板材30にこのような貫通孔31を設けることにより、固定側金型11のスプルー11Aから供給された樹脂組成物がこの貫通孔31を介して可動側金型12側に流れる。貫通孔31は、板材30の中央部に位置しているが、貫通孔31の配置箇所は、特に限定されない。
【0040】
貫通孔31の形状は、特に限定されないが、例えば、円状となっていることが好ましい。貫通孔31の形状を円状することにより、一般的に円錐状で設計される樹脂成形品のスプルー形状に適用でき、表面積を最小化できる。貫通孔31の径は、2mm以上6mm以下であることが好ましい。貫通孔31の径が2mm以上であれば、樹脂組成物を可動側金型12にスムーズに流すことができ、また6mm以下であれば、板材30における樹脂成形品60の本体部61の裏面61Cとの接触面積が低下しすぎることがなく、可動側金型12から樹脂成形品60を離型させる際の樹脂成形品60の変形をより抑制できる。貫通孔31の径の下限は、3mm以上、3.5mm以上、または4mm以上であることがより好ましく、上限は、5mm以下または4.5mm以下であることがより好ましい。貫通孔の断面形状が円状である場合には、貫通孔の径とは、直径を意味し、貫通孔の断面形状が円以外である場合には、貫通孔の径とは、断面形状の外接円の直径を意味する。
【0041】
板材30における樹脂成形品と接する面には、表面加工が施されていることが好ましい。この面に表面加工が施されることにより、表面加工された部分の存在によって樹脂成形品を構成する樹脂の収縮を抑制できる。表面加工としては、溝加工、凸加工、シボ加工、アンダーカット加工、表面荒らし加工等が挙げられる。図2および図5Aに示される板材30においては、板材30における樹脂成形品と接する面に溝32が形成されている。板材30にこのような溝32を形成することにより、樹脂組成物の成形の際に、樹脂組成物の一部を溝32内に入り込ませることができるので、樹脂成形品60の本体部61の裏面61Cに形成され、かつ溝32に入り込んだ凸部61Dを形成することができる。これにより、樹脂成形品60を構成する樹脂の収縮を抑制できる。なお、板材は、図5Bに示される板材30のように溝が設けられていなくともよい。
【0042】
溝32の形状は、特に限定されないが、例えば、環状または格子状となっていることが好ましい。溝32の形状を環状とすることにより、樹脂成形品60の収縮をおおむね均一に抑制できる。溝32が環状の場合、四角環状または円環状となっていてもよい。溝32が円環状である場合、溝32の内径は、39mm以上41mm以下であることが好ましく、溝32の外径は、44mm以上46mm以下であることが好ましい。
【0043】
溝32の幅は樹脂成形品60の厚みよりも薄いことが好ましい。溝32の幅が樹脂成形品60の厚みよりも薄いことにより、樹脂成形品60を構成する樹脂の収縮をより抑制できる。溝32の幅は、2.4mm以上2.6mm以下であることが好ましい。
【0044】
溝32の深さは、板材30の厚みの1/3程度が好ましい。溝32の深さが板材30の厚みの1/3程度であれば、樹脂成形品60を構成する樹脂の収縮をより抑制できる。溝32の深さは、0.9mm以上1.1mm以下であることが好ましい。溝32の深さがこの範囲内であれば、樹脂成形品60を構成する樹脂の収縮をより抑制できるとともに板材30の強度を確保することができる。
【0045】
<圧力センサ>
圧力センサ40は、エジェクタ機構20による可動側金型12からの樹脂成形品60の離型時の離型抵抗値を測定するものである。圧力センサ40は、エジェクタ機構20に設けられている。具体的には、エジェクタ機構20のエジェクタピン21の後端部に設けられている。
【0046】
圧力センサ40は、金型10外に配置されるので、樹脂組成物の成形温度以上の耐熱性までは必要ないが、ある程度の耐熱性を有することが好ましい。本明細書における「ある程度の耐熱性」とは、樹脂組成物の成形工程時およびそれ以降の工程において、正常に圧力を測定することができる性質を意味する。例えば、圧力センサ40は、好ましくは100℃以上、より好ましくは125℃以上、さらにこの好ましくは150℃以上の耐熱性を有する。圧力センサ40としては、市販品を用いることができる。
【0047】
<熱電対>
熱電対50は、可動側金型12の第1内壁面12C近傍の温度を測定するためのものであり、可動側金型12に設けられた孔12Eに挿入されている。
【0048】
<<離型抵抗評価方法>>
離型抵抗評価用金型2を用いて、樹脂成形品60の離型抵抗を評価する際には、型締めされた状態で、図6Aに示されるように、ノズル3によって固定側金型11のスプルー11Aを介してキャビティ12A内に樹脂組成物80を充填する。金型10内には、板材30が配置されているが、板材30には、貫通孔31が形成されているので、樹脂組成物80が貫通孔31を介して固定側金型11側から可動側金型12側に流れ込む。これにより、樹脂組成物80が成形され、樹脂成形品60が得られる。
【0049】
樹脂成形品60の冷却後に、図6Bに示されるように、可動側金型12を固定側金型11に対して移動させて、型開きする。可動側金型12が移動すると、樹脂成形品60および板材30が可動側金型12とともに移動して、固定側金型11から離間する。
【0050】
その後、図7に示されるように、エジェクタ機構20のエジェクタピン21を可動側金型12のキャビティ12A側に向けて押し出して、可動側金型12から樹脂成形品60および板材30を離型させる。エジェクタピン21には、圧力センサ40が設けられているので、圧力センサ40により可動側金型12から樹脂成形品60および板材30を離型させる際の抵抗値である離型抵抗値を測定する。
【0051】
本実施形態によれば、可動側金型12に設置され、かつ樹脂組成物の成形温度以上の耐熱性を有する板材30を備え、樹脂成形品60と板材30が一体化された状態で可動側金型12から離型されるので、可動側金型12から樹脂成形品60を離型させる際の樹脂成形品60の変形を抑制でき、瞬時に可動側金型12から樹脂成形品60を離型させることができる。これにより、圧力センサ40によりエジェクタ機構20による可動側金型12からの樹脂成形品60の離型時の離型抵抗値を測定することにより、可動側金型12から樹脂成形品60を離型させる際の樹脂成形品60の本体部61の表面61Aの正面密着力を精度良く評価することができる。
【0052】
本実施形態によれば、板材30の設置の他に、第2内壁面12Dを板材30側に向けて末広がりとなるように傾斜させているので、樹脂成形品60の離型時における樹脂成形品60の本体部61の側面61Bの側面密着力および側面抵抗力をほぼ排除できる。また、板材30における樹脂成形品と接する面に溝32を形成しているので、樹脂成形品60を構成する樹脂の収縮を抑制できる。これにより、圧力センサ40によりエジェクタ機構20による可動側金型12からの樹脂成形品60の離型時の離型抵抗値を測定することにより、可動側金型12から樹脂成形品60を離型させる際の樹脂成形品60の本体部61の表面61Aの正面密着力をより精度良く評価することができる。
【実施例0053】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの記載に限定されない。図8は、実施例1に係る離型抵抗評価用金型のエジェクタピンの移動距離に対するPPS樹脂成形品の離型抵抗値を示すグラフであり、図9は、実施例2および比較例1に係る離型抵抗評価用金型のエジェクタピンの移動距離に対するPPS樹脂成形品の離型抵抗値を示すグラフである。
【0054】
<実施例1>
まず、固定側金型および可動側金型からなる金型を用意した。固定側金型は、焼入れ焼戻し鋼から構成されたものであった。固定側金型は、長さ12mmおよび最大直径4mmのスプルーを有していた。また、固定側金型の可動側金型側の面には、窪みが形成されており、窪み内には、可動側金型の移動方向に伸縮する長さ20mmおよび直径10.5mmのバネ用オイルテンパー線(型番「NT-SWS10.5-20」、株式会社ミスミ製)が配置されていた。
【0055】
可動側金型は、焼入れ焼戻し鋼から構成されたものであった。可動側金型にはキャビティが形成されており、可動側金型の内壁面は、樹脂成形品の本体部の表面に接し、かつ開閉方向に対し垂直な平面である第1内壁面と、第1内壁面から固定側金型側に立ち上がり、第1内壁面の法線方向に対して固定側金型側に向けて末広がりとなるように30°傾斜し(θ=30°)、かつ樹脂成形品の本体部の側面に接する第2内壁面とを有していた。第1内壁面は直径が50mmの円形状となっていた。可動側金型には、直径6mmの円柱状のエジェクタピンを有するエジェクタ機構が設けられており、エジェクタピンが、第1内壁面に設けられた開口から可動側金型のキャビティ内に突出可能となっていた。エジェクタピンの後端部には、圧力センサ(品番「9221AC1」、キスラーインストルメンテ社製)が設けられていた。
【0056】
また、板材を用意した。板材は、焼入れ焼戻し鋼(商品名「S-STAR」、大同特殊鋼株式会社)から構成されたものであった。板材は、大きさが60mm角の四角形状の平板のものに、直径が6mmの円状の貫通孔が設けられているものであった。板材の厚みは3mmであった。また、板材の耐熱性は、350℃以上であり、板材の剛性は300℃で200000MPaであった。また、板材には、幅が2.5mmの環状の溝が形成されていた。溝の外径は45mmであり、溝の内径は40mmであった。
【0057】
次いで、板材を用意した後、板材を板材の溝側が可動側金型の第1内壁面側となり、かつ可動側金型のキャビティを覆うように可動側金型に設けた。第1内壁面から板材までの距離は、2.5mmであった。これにより、離型抵抗評価用金型を作製した。
【0058】
次いで、離型抵抗評価用金型の固定側金型および可動側金型を型閉じおよび型締めした。その後、金型が195℃の状態で、320℃のシリンダーからガラス繊維30質量%を含むポリフェニレンサルファイド樹脂組成物(PPS樹脂組成物)を固定側金型のスプルーを介してキャビティにPPS樹脂組成物を射出速度30mm/秒で射出し、充填した。PPS樹脂組成物は、板材の貫通孔を介して、可動側金型側に供給された。そして、キャビティに充填されたPPS樹脂組成物に対し40MPaの保圧力を加えた。
【0059】
保圧後、20秒間冷却して、PPS樹脂組成物が固化した。PPS樹脂組成物が固化した後、可動側金型を固定側金型に対して、移動させて、型開きした。型開きしたとき、PPS樹脂組成物が固化して得られたPPS樹脂成形品と板材は、可動側金型とともに移動した。従って、PPS樹脂成形品は固定側金型に残存しなかった。
【0060】
型開きした後に、エジェクタピン機構のエジェクタピンを可動側金型のキャビティ内に突き出して、可動側金型からPPS樹脂成形品および板材を離型させた。また、この際、圧力センサによって離型の際の離型抵抗値を測定したところ、図8に示されるグラフが得られた。PPS樹脂成形品は、直径が50mmであり、かつ厚みが2.5mmの本体部および本体部の裏面から突出した長さが12mmおよび最大直径が4mmのスプルー部を有するものであった。
【0061】
<実施例2>
まず、固定側金型および可動側金型からなる金型を用意した。固定側金型は、焼き入れ焼き戻し鋼から構成されたものであった。固定側金型は、長さ12mmおよび最大直径4mmのスプルーを有していた。
【0062】
可動側金型は、焼入れ焼戻し鋼から構成されたものであった。可動側金型にはキャビティが形成されており、可動側金型の内壁面は、樹脂成形品の本体部の表面に接し、かつ開閉方向に対し垂直な平面である第1内壁面と、第1内壁面から第1内壁面の法線方向に対する角度が0°なるように、すなわち第1内壁面に対して直角となるように固定側金型側に立ち上がり、かつ樹脂成形品の本体部の側面に接する第2内壁面とを有していた。第1内壁面は大きさが40mm×40mmの四角形状となっていた。可動側金型には、直径6mmの円柱状のエジェクタピンを有するエジェクタ機構が設けられており、エジェクタピンが、第1内壁面に設けられた開口から可動側金型のキャビティ内に突出可能となっていた。エジェクタピンの後端部には、圧力センサ(品番「9221AC1」、キスラーインストルメンテ社製)が設けられていた。
【0063】
また、板材を用意した。板材は、焼入れ焼戻し鋼(商品名「S-STAR」、大同特殊鋼株式会社)から構成されたものであった。板材は、大きさが60mm角の四角形状の平板のものに、直径が6mmの円状の貫通孔が設けられているものであった。板材の厚みは3mmであった。また、板材の耐熱性は、350℃以上であり、板材の剛性(ヤング率)は300℃で200000MPaであった。なお、板材は、溝が設けられていないものであった。
【0064】
次いで、板材を用意した後、板材を可動側金型のキャビティを覆うように可動側金型に設けた。第1内壁面から板材までの距離は、2.5mmであった。これにより、離型抵抗評価用金型を作製した。
【0065】
次いで、離型抵抗評価用金型の固定側金型および可動側金型を型閉じおよび型締めした。その後、金型が180℃の状態で、320℃のシリンダーからガラス繊維30質量%を含むポリフェニレンサルファイド樹脂組成物(PPS樹脂組成物)を固定側金型のスプルーを介してキャビティにPPS樹脂組成物を射出速度30mm/秒で射出し、充填した。PPS樹脂組成物は、板材の貫通孔を介して、可動側金型側に供給された。そして、キャビティに充填されたPPS樹脂組成物に対し50MPaの保圧力を加えた。
【0066】
保圧後、30秒間冷却して、PPS樹脂組成物が固化した。PPS樹脂組成物が固化した後、可動側金型を固定側金型に対して、移動させて、型開きした。型開きしたとき、PPS樹脂組成物が固化して得られたPPS樹脂成形品と板材は、可動側金型とともに移動した。従って、PPS樹脂成形品は固定側金型に残存しなかった。
【0067】
型開きした後に、エジェクタピン機構のエジェクタピンを可動側金型のキャビティ内に突き出して、可動側金型からPPS樹脂成形品および板材を離型させた。また、この際、圧力センサによって離型の際の離型抵抗値を測定したところ、図9に示されるグラフが得られた。PPS樹脂成形品は、大きさが40mm×40mmであり、かつ厚みが2.5mmの本体部および本体部の裏面から突出した長さが12mmおよび最大直径が4mmのスプルー部を有するものであった。
【0068】
<比較例1>
比較例1においては、板材を設けなかった以外は、実施例2と同様の離型抵抗評価用金型を用い、かつ実施例2と同様の条件および同様の手順によって、PPS樹脂成形品を得て、可動側金型からPPS樹脂成形品を離型させた。また、この際、圧力センサによって離型の際の離型抵抗値を測定したところ、図9に示されるグラフが得られた。
【0069】
<結果>
図8および図9に示されるように実施例1および実施例2に係る離型抵抗評価用金型を用いて測定した離型抵抗値のグラフにおいては、鋭いピークが得られた。また、図8のグラフにおいては、エジェクタピンの移動距離が0.204mmのとき、離型抵抗値が最大となっていた。また、図9のグラフのうち実施例2に係る離型抵抗評価用金型を用いて測定した離型抵抗値のグラフにおいては、エジェクタピンの移動距離が0.23mmのとき、離型抵抗値が最大となっていた。これに対し、図9に示される比較例1に係る離型抵抗評価用金型を用いて測定した離型抵抗値のグラフにおいては、ブロードな波形となっていた。このグラフにおいては、エジェクタピンの移動距離が0.63mmのとき、離型抵抗値が最大となっていた。なお、実施例1、2および比較例1に係る離型抵抗評価用金型においては、エジェクタピンの移動距離が0.6mm~0.8mmのときに、PPS樹脂成形品が可動側金型から離型した。この結果から、実施例1、2に係る離型抵抗評価用金型を用いて離型抵抗値を測定した場合には、可動側金型と樹脂成形品の表面の正面密着力を精度良く測定できることが確認された。
【0070】
図8における実施例1に係る離型抵抗評価用金型を用いて測定した離型抵抗値のグラフおよび図9における実施例2に係る離型抵抗評価用金型を用いて測定した離型抵抗値のグラフを比べると、実施例1に係る離型抵抗評価用金型を用いた方が、実施例2に係る離型抵抗評価用金型を用いた場合よりも、より鋭いピークが得られた。これは、実施例1に係る離型抵抗評価用金型においては、溝が形成された板材および第2内壁面が第1内壁面の法線方向に対して固定側金型側に向けて末広がりとなるように傾斜した可動側金型を用いたのに対し、実施例2に係る離型抵抗評価用金型においては、溝が形成されていない板材および第2内壁面が第1内壁面に対して直角となった可動側金型を用いたためであると考えられる。この結果から、溝が形成された板材および第2内壁面が第1内壁面の法線方向に対して固定側金型側に向けて末広がりとなるように傾斜した可動側金型を用いた場合には、可動側金型と樹脂成形品の表面の正面密着力をより精度良く測定できることが確認された。
【0071】
1…射出成形機
2…離型抵抗評価用金型
3…ノズル
10…金型
11…固定側金型
12…可動側金型
12A…キャビティ
12B…内壁面
12C…第1内壁面
12D…第2内壁面
20…エジェクタ機構
21…エジェクタピン
30…板材
31…貫通孔
32…溝
40…圧力センサ
50…熱電対
60…樹脂成形品
61…本体部
61A…表面
61B…側面
61C…裏面
80…樹脂組成物

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9