(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025004811
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】接着剤およびそれを用いた電子デバイス
(51)【国際特許分類】
C09J 171/12 20060101AFI20250108BHJP
C08G 59/20 20060101ALI20250108BHJP
C09J 129/14 20060101ALI20250108BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20250108BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
C09J171/12
C08G59/20
C09J129/14
C09J11/04
C09J163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023104648
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
(72)【発明者】
【氏名】佐郷 弘毅
(72)【発明者】
【氏名】高田 章博
(72)【発明者】
【氏名】室本 和美
【テーマコード(参考)】
4J036
4J040
【Fターム(参考)】
4J036AD07
4J036AD08
4J036AJ01
4J036AJ15
4J036FB12
4J036HA12
4J036JA06
4J040DD071
4J040EC001
4J040EC051
4J040EC061
4J040EE061
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4J040FA011
4J040FA141
4J040FA151
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4J040GA01
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4J040HA206
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4J040HB16
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4J040HB41
4J040HC01
4J040HC02
4J040HC04
4J040HC05
4J040HC06
4J040HC08
4J040HC09
4J040HC16
4J040HC20
4J040HC21
4J040HC23
4J040HD30
4J040JA02
4J040JA09
4J040JB02
4J040KA11
4J040KA14
4J040KA16
4J040KA23
4J040KA29
4J040KA42
4J040LA08
4J040LA09
4J040MA01
4J040MA02
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA19
4J040PA30
4J040PA33
(57)【要約】
【課題】 低誘電電子基板の原料である低誘電率樹脂シートと接着性が良好で、低粗度銅箔や低誘電率レジスト層とも接着性が良好である、耐熱性に優れた低誘電率な接着剤を、これまで低粗度銅箔と接着性が低いグラファイトシートを積層することに使用してきたポリビニルアセタール樹脂を応用することにより開発することである。
【手段】 ポリビニルアセタール樹脂、2官能以上の重合性化合物、および硬化成分を含む接着剤であり、低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせるための接着剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂、2官能以上の重合性化合物、および硬化成分を含む接着剤であり、低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせるための接着剤。
【請求項2】
前記ポリビニルアセタール樹脂が、構成単位A、BおよびCを含む、請求項1に記載の接着剤。
構成単位A中、Rは水素または炭素数1~5のアルキルである。
【請求項3】
前記ポリビニルアセタール樹脂が、さらに、構成単位Dを含む、請求項2に記載の接着剤。
構成単位D中、R
1は水素または炭素数1~5のアルキルである。
【請求項4】
前記構成単位AにおけるRが、水素または炭素数1~3のアルキルである、請求項2に記載の接着剤。
【請求項5】
前記2官能以上の重合性化合物が、両末端に式(1-1)または(1-2)で表される重合性基を有する重合性化合物である、請求項1に記載の接着剤。
式(1-1)および(1-2)中、R
bは、水素、ハロゲン、-CF
3、または炭素数1~5のアルキルであり、qは0または1であり、式中に複数あるR
bは、それらが同一であっても異なっていてもよい。
【請求項6】
前記2官能以上の重合性化合物が、式(2)で表される重合性液晶性化合物である、請求項5に記載の接着剤。
R1a-Z1-A1-Z2-A2-(Z3-A3)m1-Z4-R1b (2)
式(2)中、
A1、A2、およびA3は独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ビシクロ[2.2.2]オクト-1,4-ジイル、ビシクロ[3.1.0]ヘキス-3,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH=は-N=で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-C=C-で置き換えられてもよく;
Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立して、単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-、-N=CH-、または-N=N-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
m1は、0、1、または2であり、
式中に、Z3またはA3が複数ある場合は、それらが同一であっても異なっていてもよく、
R1aおよびR1bは独立して、前記式(1-1)または(1-2)で表される重合性基であり;
A1およびA2が1,4-フェニレンであり、Z2が単結合であり、m1が0であり、かつ、R1aおよびR1bが式(1-1)または(1-2)で表される重合性基の場合は、Z1およびZ4は炭素数が3~20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-、-N=CH-、または-N=N-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【請求項7】
前記2官能以上の重合性液晶性化合物のA1から右末端のA3までのメソゲン部分が、ビフェニル構造であり、ビフェニル構造とR1aおよびR1bのエポキシ基の間に炭素数が3以上の直鎖状のZ1およびZ4が介在する、請求項6に記載の接着剤。
【請求項8】
前記2官能以上の重合性液晶性化合物のメソゲン部分が、ビシクロヘキシル構造である、請求項6に記載の接着剤。
【請求項9】
前記硬化成分が、硬化剤、重合開始剤、硬化促進剤、および架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項10】
前記硬化剤が、少なくとも2つの水酸基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー、活性エステル硬化剤、少なくとも2つの水酸基を有するアルキル・エーテル、および式(3―1)で表される重合性化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項9に記載の接着剤。
HO-Z10-A10-Z20-A20-(Z30-A30)m10-Z40-OH (3-1)
式(3-1)中、
A10、A20、およびA30は独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ビシクロ[2.2.2]オクト-1,4-ジイル、ビシクロ[3.1.0]ヘキス-3,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH=は-N=で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-C=C-で置き換えられてもよく;
Z10、Z20、Z30、およびZ40は独立して、単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-、-N=CH-、または-N=N-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
m10は、0、1、または2であり、
式中に、Z30またはA30が複数ある場合は、それらが同一であっても異なっていてもよい。
【請求項11】
さらに、無機充填剤を1~30体積%含む、請求項1に記載の接着剤。
【請求項12】
無機充填剤が、球状シリカ、粉砕シリカ、中空シリカおよびヒュームドシリカ、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛、ならびに窒化ホウ素、窒化珪素および窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項11に記載の接着剤。
【請求項13】
無機充填剤が、窒化物充填剤であり、接着剤を硬化した硬化物の熱伝導率が1W/m・K以上である、請求項12に記載の接着剤。
【請求項14】
前記接着剤が、固体状の接着剤である、請求項1に記載の接着剤。
【請求項15】
前記低誘電電子基板が、液晶ポリマー樹脂、モディファイドポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、シクロオレフィン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂層を含む、請求項1または14に記載の接着剤。
【請求項16】
請求項1または14に記載の接着剤を用いた電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5Gや6G用の高周波数領域で使用される電子基板に用いられる低誘電電子基板に金属箔や低誘電率レジスト層を、従来の生産設備およびプロセスで積層可能にするために、低誘電率樹脂シートと接着性が良好で、平滑な銅箔などの金属箔や低誘電率レジスト層などのレジスト層との接着性も良好である、接着層の誘電特性に優れた、ポリビニルアセタール樹脂を用いた低誘電電子基板の接着剤およびこの接着剤を用いた電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器の5G化さらにはbeyond5Gや6G化に伴い、電子基板上での電気信号の高周波化や、アンテナが送受信する電波も高周波化しており、信号処理回路基板やアンテナ基板による信号の損失が問題になっている。そのため、プリント配線基板や、2D、2.5Dでくみ上げられた半導体モジュール用基板に用いられる樹脂材料の低誘電率化、低誘電正接が求められており、従来のポリイミドやエポキシ樹脂に代わり、液晶ポリマー(LCP),ポリフェニレンエーテル(PPE)、シクロオレフィンポリマー(COP)、フッ素樹脂(PTFE)などの樹脂が基板原料として使用され始めている(非特許文献1)。
これらの基板原料の低誘電率樹脂シートやレジスト層は、誘電率を低く抑えるために、樹脂の極性を減らしているので従来のエポキシ接着剤との接着性が悪く、300℃近い高温でラミネートする熱可塑性接着剤を用いたり、低誘電率樹脂シートやレジスト層の表面に接着しやすくする処理を行ったりする必要がある。高温で低誘電率樹脂シートと銅箔またはレジスト層とをラミネートするためには、従来の200℃で設計された生産装置を使用することはできず、高温に対応した貼り合わせ装置が新たに必要になる。また、その高温により低誘電電子基板またはレジスト層を構成している樹脂や銅箔が熱による酸化や熱膨張率の差によるダメージを大きく受けてしまう難しさがあるので、200℃以下で強力に接着できる接着剤の開発が望まれている。
【0003】
また、電極や配線となる銅箔は、銅箔表面に凹凸があると表皮効果により高周波特性が悪化するために、可能な限り平坦な物を使用する必要がある。一方、銅は接着しにくい金属であり、接着性を向上させるために電解時の成長面の凹凸を利用したり、その凹凸面をさらに酸化処理したり、他の金属粒子を表面に析出させたりして、ガラスエポキシ基板やポリイミドフレキシブル基板に接着されている。以上の理由により、高周波用銅箔は接着性が低いため、その接着剤には、この平滑な銅箔との接着性も併せて求められる(非特許文献1)。
【0004】
さらに、低誘電電子基板用の接着剤には、低誘電率樹脂シートと平滑な銅箔または低誘電率レジスト層との接着性が求められるだけでなく、接着剤が硬化した接着層そのものも誘電体層としての特性が現れてしまうため、その誘電特性も重要である。そのため、誘電特性に優れたポリオレフィン系の熱圧着式の接着シートや低誘電フィラーを含む複合接着剤等が使用される場合が多い(特許文献1-4)。ただし、リフローはんだによる電子部品の固定にも耐え得るために、圧着温度はかなり高めに設計されている。一方、エポキシ樹脂を使用した熱硬化型の接着剤も開発されているが、誘電特性、耐熱性や接着性の調整のため様々なポリマーや添加剤と混合されている(特許文献5、6)。
【0005】
プリント配線基板では、最表層にレジストフィルムやカバーレイフィルムを付与したり、基板となるフィルムやプリプレグを積層する場合も多いので(非特許文献2)、レジストフィルムや、基板同士の接着性が求められる場合も多い。
【0006】
一般的には、強い接着性を実現させるために、エポキシ基を多く含む接着剤が使用されるが、誘電特性を向上させるためにエポキシ基を有する重合性化合物は減らす方向にあり、誘電特性を悪化させずに接着強度を高くする添加成分が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-89090号公報
【特許文献2】特表2019-506488号公報
【特許文献3】特開2013-206892号公報
【特許文献4】特開2015-074089号公報
【特許文献5】国際公開第2019/235439号
【特許文献6】国際公開第2017/029917号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「次世代通信・ミリ波技術の最新技術動向・今後の展望」、AndTech、2021、p.p.28-34。
【非特許文献2】「-5G/Beyond5Gにむけた-高速・高周波対応部材の最新開発動向」、技術情報協会、2021、p.p.84-90。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、従来の低誘電電子基板用の接着剤が有する問題点を解決するために、低誘電電子基板の原料である低誘電率樹脂シートと接着性が良好で、低粗度銅箔や低誘電率レジスト層とも接着性が良好である、耐熱性に優れた低誘電率な接着剤を、これまで低粗度銅箔と接着性が低いグラファイトシートを積層することに使用してきたポリビニルアセタール樹脂を応用することにより開発することである。
本発明の接着剤を用いることで、高周波数領域における次世代通信機器およびレーダーなどの基板作製に好適な接着剤を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エナメル線の絶縁被覆剤、または銅箔とグラファイトシートの接着剤などとして用いられているポリビニルアセタール樹脂、2官能以上の重合性化合物および硬化成分のこれら3成分を、接着成分として用いることにより、優れた誘電特性と接着性を併せ持つ接着剤を実現できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
[1] ポリビニルアセタール樹脂、2官能以上の重合性化合物、および硬化成分を含む接着剤であり、低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせるための接着剤。
【0012】
[2] 前記ポリビニルアセタール樹脂が、構成単位A、BおよびCを含む、[1]に記載の接着剤。
構成単位A中、Rは水素または炭素数1~5のアルキルである。
【0013】
[3] 前記ポリビニルアセタール樹脂が、さらに、構成単位Dを含む、[2]に記載の接着剤。
構成単位D中、R
1は水素または炭素数1~5のアルキルである。
【0014】
[4] 前記構成単位AにおけるRが、水素または炭素数1~3のアルキルである、[2]または[3]に記載の接着剤。
【0015】
[5] 前記2官能以上の重合性化合物が、両末端に式(1-1)または(1-2)で表される重合性基を有する重合性化合物である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の接着剤。
式(1-1)および(1-2)中、R
bは、水素、ハロゲン、-CF
3、または炭素数1~5のアルキルであり、qは0または1であり、式中に複数あるR
bは、それらが同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
[6] 前記2官能以上の重合性化合物が、式(2)で表される重合性液晶性化合物である、[5]に記載の接着剤。
R1a-Z1-A1-Z2-A2-(Z3-A3)m1-Z4-R1b (2)
式(2)中、
A1、A2、およびA3は独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ビシクロ[2.2.2]オクト-1,4-ジイル、ビシクロ[3.1.0]ヘキス-3,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH=は-N=で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-C=C-で置き換えられてもよく;
Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立して、単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-、-N=CH-、または-N=N-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
m1は、0、1、または2であり、
式中に、Z3またはA3が複数ある場合は、それらが同一であっても異なっていてもよく、
R1aおよびR1bは独立して、前記式(1-1)または(1-2)で表される重合性基であり;
A1およびA2が1,4-フェニレンであり、Z2が単結合であり、m1が0であり、かつ、R1aおよびR1bが式(1-1)または(1-2)で表される重合性基の場合は、Z1およびZ4は炭素数が3~20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-、-N=CH-、または-N=N-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
【0017】
[7] 前記2官能以上の重合性液晶性化合物のA1から右末端のA3までのメソゲン部分が、ビフェニル構造であり、ビフェニル構造とR1aおよびR1bのエポキシ基の間に炭素数が3以上の直鎖状のZ1およびZ4が介在する、[6]に記載の接着剤。
【0018】
[8] 前記2官能以上の重合性液晶性化合物のメソゲン部分が、ビシクロヘキシル構造である、[6]に記載の接着剤。
【0019】
[9] 前記硬化成分が、硬化剤、重合開始剤、硬化促進剤、および架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを含む、[1]~[8]のいずれか1項に記載の接着剤。
【0020】
[10] 前記硬化剤が、少なくとも2つの水酸基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー、活性エステル硬化剤、少なくとも2つの水酸基を有するアルキル・エーテル、および式(3―1)で表される重合性化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、[9]に記載の接着剤。
HO-Z10-A10-Z20-A20-(Z30-A30)m10-Z40-OH (3-1)
式(3-1)中、
A10、A20、およびA30は独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ビシクロ[2.2.2]オクト-1,4-ジイル、ビシクロ[3.1.0]ヘキス-3,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH=は-N=で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-C=C-で置き換えられてもよく;
Z10、Z20、Z30、およびZ40は独立して、単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-、-N=CH-、または-N=N-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
m10は、0、1、または2であり、
式中に、Z30またはA30が複数ある場合は、それらが同一であっても異なっていてもよい。
【0021】
[11] さらに、無機充填剤を1~30体積%含む、[1]~[10]のいずれか1項に記載の接着剤。
【0022】
[12] 無機充填剤が、球状シリカ、粉砕シリカ、中空シリカおよびヒュームドシリカ、酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛、ならびに窒化ホウ素、窒化珪素および窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1つである、[11]に記載の接着剤。
【0023】
[13] 無機充填剤が、窒化物充填剤であり、接着剤を硬化した硬化物の熱伝導率が1W/m・K以上である、[12]に記載の接着剤。
【0024】
[14] 前記接着剤が、固体状の接着剤である、[1]~[13]のいずれか1項に記載の接着剤。
【0025】
[15] 前記低誘電電子基板が、液晶ポリマー樹脂、モディファイドポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、シクロオレフィン樹脂、およびフッ素樹脂からなる群から選択される少なくとも1つの樹脂層を含む、[1]~[14]のいずれか1項に記載の接着剤。
【0026】
[16] [1]~[15]のいずれか1項に記載の接着剤を用いた電子デバイス。
【発明の効果】
【0027】
本発明の接着剤は、ポリビニルアセタール樹脂を接着強化成分に用いた低誘電電子基板用の接着剤として用いることにより、低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせて得られる積層体を製造する工程において、設定温度が200℃以下の従来の生産設備を用いて、低誘電率の樹脂を基板原料とする低誘電電子基板と低粗度の銅箔などの金属箔や低誘電率レジスト層などのレジスト層とを接着することができる。また本発明の接着剤は、接着剤が硬化した樹脂部分の誘電特性が優れ、高耐熱な前記積層体を製造することができる。そのことにより、本発明の接着剤は、beyond5G、6Gと高周波化が進む電子基板での信号ロスが少なく、半導体チップの発熱量増加に伴う高温にも耐え、放熱性をも兼ね備えた電子デバイスを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、[実施例]および[比較例]において、低誘電フィルムと銅箔とのピール強度を測定するために作製した試料の概略図である。5cm角の低誘電フィルムの上に、
図1のように7cm×1cmの接着成分塗布層付き銅箔を載せ、その後、加熱プレスを用いて本発明の接着剤(接着成分塗布層)を硬化させることにより低誘電フィルムと銅箔とを接着し、2cmのはみ出た部分を引張試験機(オートグラフ)でつかめるようにしている。
【
図2】
図2は、
図1の試料を引張試験機に取り付ける際に用いたジグの概略図である。2mm厚のアルミ板に
図1の試料を
図2のように取り付けて測定した。JIS規格では接着長10cmの試料を使用しているが、
図2のような簡易法では、測定が進むにつれて銅箔と低誘電フィルムの基材との間の角度が小さくなってしまい、垂直の場合からの測定値からずれてしまうので、接着長を半分の5cmとした。この長さであれば、引張試験機のロードセルの長さもあるため、大きな角度の差はつかない。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について説明する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
本発明で用いる用語について説明する。式(1)で表わされる化合物を化合物(1)と表記することがある。他の式で表される化合物についても同様に簡略化して称することがある。「少なくとも1つのAはBまたはCで置き換えられてもよい」という表現は、少なくとも1つのAがBで置き換えられる場合および少なくとも1つのAがCで置き換えられる場合に加えて、少なくとも1つのAがBで置き換えられると同時に、その他のAの少なくとも1つがCで置き換えられる場合があることを意味する。「液晶性化合物」は、ネマチック相やスメクチック相などの液晶相を有する化合物、および、液晶相を有しないが誘電率異方性、屈折率異方性、磁化率異方性などのような液晶に特有の物性を有し、液晶組成物の成分として有用な化合物の総称である。液晶温度範囲では配向処理が容易になり、熱可塑性樹脂における延伸処理のように分子の配向を制御することができる。実施例においては、電子天秤の表示データを質量単位であるg(グラム)を用いて示した。重量%や重量比(重量部)はこのような数値に基づくデータである。
【0030】
<接着剤>
本発明の接着剤は、ポリビニルアセタール樹脂、2官能以上の重合性化合物、および硬化成分を含む接着剤であり、低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせるための接着剤である。
【0031】
<ポリビニルアセタール樹脂>
ポリビニルアセタール樹脂としては、特に制限されないが、靱性、耐熱性および耐衝撃性に優れ、被着体、特に金属シートなどの金属箔や低誘電電子基板の原料である低誘電率樹脂シートとの接着性に優れる接着層が得られる等の点から、構成単位A、BおよびCを含む樹脂であることが好ましい。
【0032】
構成単位Aは、アセタール部位を有する構成単位であって、例えば、ビニルアルコール単位とアルデヒド(R-CHO)との反応により形成され得る。
【0033】
構成単位AにおけるRは独立して、水素またはアルキルである。前記Rが嵩高い基(例えば炭素数が多い炭化水素基)であると、ポリビニルアセタール樹脂の軟化点が低下する可能性がある。また、前記Rが嵩高い基であるポリビニルアセタール樹脂は、溶剤への溶解性は高くなるが、一方で耐薬品性に劣ることがある。そのため前記Rは、水素または炭素数1~5のアルキルであることが好ましく、得られる接着層の靭性などの点から水素または炭素数1~3のアルキルであることがより好ましく、水素またはプロピルであることがさらに好ましく、ガラス転移温度の高さなどの点から水素であることが特に好ましい。
【0034】
【0035】
ポリビニルアセタール樹脂は、構成単位A~Cに加えて、構成単位Dを含むことが、耐熱性および金属シートなどの金属材料やグラファイトシートなどの炭素材料との高温下での接着性に優れる接着層を得ることができる等の点から好ましい。
【0036】
構成単位D中、R
1は水素または炭素数1~5のアルキルであり、好ましくは水素または炭素数1~3のアルキルであり、より好ましくは水素である。
【0037】
ポリビニルアセタール樹脂における構成単位A、B、CおよびDの総含有率は、該樹脂の全構成単位に対して80~100mol%であることが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂に含まれ得るその他の構成単位としては、構成単位A以外のビニルアセタール鎖単位(前記構成単位AにおけるRが水素またはアルキル以外である構成単位)、分子間アセタール単位、およびヘミアセタール単位などが挙げられる。構成単位A以外のビニルアセタール鎖単位の含有率は、ポリビニルアセタール樹脂の全構成単位に対して5mol%未満であることが好ましい。
【0038】
(分子間アセタール単位中のRは、前記構成単位A中のRと同義である。)
【0039】
(ヘミアセタール単位中のRは、前記構成単位A中のRと同義である。)
【0040】
ポリビニルアセタール樹脂において、構成単位A~Dは、規則性をもって配列(ブロック共重合体、交互共重合体など)していても、ランダムに配列(ランダム共重合体)していてもよいが、ランダムに配列していることが好ましい。
【0041】
ポリビニルアセタール樹脂における各構成単位は、該樹脂の全構成単位に対して、構成単位Aの含有率が49.9~80mol%であり、構成単位Bの含有率が0.1~49.9mol%であり、構成単位Cの含有率が0.1~49.9mol%であり、構成単位Dの含有率が0~49.9mol%であることが好ましい。より好ましくは、前記ポリビニルアセタール樹脂の全構成単位に対して、構成単位Aの含有率が49.9~80mol%であり、構成単位Bの含有率が1~30mol%であり、構成単位Cの含有率が1~30mol%であり、構成単位Dの含有率が1~30mol%である。
【0042】
耐薬品性、可撓性、耐摩耗性および機械的強度に優れるポリビニルアセタール樹脂を得るなどの点から、構成単位Aの含有率は49.9mol%以上であることが好ましい。
【0043】
構成単位Bの含有率が0.1mol%以上であると、ポリビニルアセタール樹脂の溶剤への溶解性が良好となるため好ましい。また、構成単位Bの含有率が49.9mol%以下であると、ポリビニルアセタール樹脂の耐薬品性、可撓性、耐摩耗性および機械的強度が低下しにくいため好ましい。
【0044】
構成単位Cは、ポリビニルアセタール樹脂の溶剤への溶解性や、得られる接着層の、金属シートなどの金属材料やグラファイトシートなどの炭素材料との接着性等の点から、含有率が49.9mol%以下であることが好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂の製造において、ポリビニルアルコール鎖をアセタール化する際、構成単位Bと構成単位Cが平衡関係となるため、構成単位Cの含有率は0.1mol%以上であることが好ましい。
【0045】
金属シートなどの金属材料やグラファイトシートなどの炭素材料との接着性に優れる接着層を得ることができる等の点から、構成単位Dの含有率は前記範囲にあることが好ましい。
【0046】
ポリビニルアセタール樹脂における構成単位A~Cのそれぞれの含有率は、JIS K 6728またはJIS K 6729に準じて測定することができる。
【0047】
ポリビニルアセタール樹脂における構成単位Dの含有率は、以下に述べる方法で測定することができる。
1mol/l水酸化ナトリウム水溶液中で、ポリビニルアセタール樹脂を、2時間、80℃で加温する。この操作により、カルボキシル基にナトリウムが付加し、-COONaを有するポリマーが得られる。該ポリマーから過剰な水酸化ナトリウムを抽出した後、脱水乾燥を行なう。その後、炭化させて原子吸光分析を行い、ナトリウムの付加量を求めて定量する。
なお、構成単位B(ビニルアセテート鎖)の含有率を分析する際に、構成単位Dは、ビニルアセテート鎖として定量されるため、前記JIS K 6728またはJIS K6729に準じて測定された構成単位Bの含有率より、定量した構成単位Dの含有率を差し引き、構成単位Bの含有率を補正する。
【0048】
ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、5000~300000であることが好ましく、10000~150000であることがより好ましい。重量平均分子量が大きいほど機械強度やドリル耐性、耐衝撃性は大きくなるが、溶媒に溶けにくくなるので、前記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、本発明の接着剤を容易に製造できるため好ましい。
【0049】
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。具体的な測定条件は以下の通りである。
検出器:830-RI (日本分光(株)製)
オーブン:西尾工業(株)製 NFL-700M
分離カラム:昭和電工(株)製 Shodex KF-805L×2本直列
ポンプ:PU-980(日本分光(株)製)
温度:30℃
キャリア:テトラヒドロフラン
標準試料:ポリスチレン
【0050】
ポリビニルアセタール樹脂のオストワルド粘度は、1~100mPa・sであることが好ましい。オストワルド粘度が前記範囲にあるポリビニルアセタール樹脂を用いると、本発明の接着剤を容易に製造でき、低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを本発明の接着剤を用いて貼り合わせると、靭性に優れる積層体、好適には本発明の電子デバイスが得られるため好ましい。
オストワルド粘度は、ポリビニルアセタール樹脂5gをジクロロエタン100mlに溶解した溶液を用い、20℃で、Ostwald-Cannon Fenske Viscometerを用いて測定することができる。
【0051】
ポリビニルアセタール樹脂としては、具体的には、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタールおよびこれらの誘導体等が挙げられ、被着体、特に銅箔と低誘電電子基板との接着性および耐熱性に優れる接着層が得られる等の点から、ポリビニルホルマールが好ましい。
【0052】
ポリビニルアセタール樹脂は、合成して得てもよく、市販品でもよい。
前記構成単位A、BおよびCを含む樹脂の合成方法は、特に制限されないが、例えば、特開2009-298833号公報に記載の方法を挙げることができる。また、前記構成単位A、B、CおよびDを含む樹脂の合成方法は、特に制限されないが、例えば、特開2010-202862号公報に記載の方法を挙げることができる。
【0053】
ポリビニルアセタール樹脂の市販品としては、ポリビニルホルマールとして、ビニレック(登録商標)-C、ビニレック(登録商標) K(商品名、JNC(株)製)などが挙げられ、ポリビニルブチラールとして、デンカブチラール 3000-K(商品名、デンカ(株)製)などが挙げられる。
【0054】
ポリビニルアセタール樹脂としては、前記樹脂を単独で用いてもよく、構成単位の種類、結合の順番や結合の数等が異なる樹脂を2種以上用いてもよい。本発明の接着剤は、接着性および耐熱性の観点から、ポリビニルアセタール樹脂を接着剤中に好ましくは1~50重量%、より好ましくは5~30重量%含む。
【0055】
<2官能以上の重合性化合物>
2官能以上の重合性化合物としては、特に制限されないが、式(1-1)または(1-2)で表される重合性基を2個以上有する重合性化合物が好ましく、両末端に式(1-1)または(1-2)で表される重合性基を有する重合性化合物がより好ましい。
式(1-1)および(1-2)中、R
bは、水素、ハロゲン、-CF
3、または炭素数1~5のアルキルであり、qは0または1であり、式中に複数あるR
bは、それらが同一であっても異なっていてもよい。
【0056】
式(1-1)で表される重合性基を2個以上有する重合性化合物としては、環状エーテル化合物であるエポキシ(オキシランまたはオキセタン)化合物が好ましい。
オキシラン化合物としては、ビフェノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラクロロビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA等のビスフェノール類のジグリシジルエーテル類、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ブロム化フェノールノボラック、オルトクレゾールノボラック等のノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等のアルキレングリコール類のジグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ヘキサヒドロフタル酸のグリシジルエステルやダイマー酸のジグリシジルエステル等のグリシジルエステル類、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート((株)ダイセル製の商品名:セロキサイド2021P)、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4-エポキシ-4-メチルシクロヘキシル-2-プロピレンオキサイド、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ラクトン変性3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサン)、エチレンビス(3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ジシクロペンタジエンジエポキシド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)エーテル、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)-4,5-エポキシテトラヒドロフタレート、1,2:8,9ジエポキシリモネン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)ジエチルシロキサン等の脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。これらのオキシラン化合物を単独で用いてもよいし、複数のオキシラン化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
オキセタン化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成(株)製の商品名:OXT-101)、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン(東亞合成(株)製の商品名:OXT-211)、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(東亞合成(株)製の商品名:OXT-212)、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン(東亞合成(株)製の商品名:OXT-121)、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル(東亞合成(株)製の商品名:OXT-221)、脂肪族カルボン酸系オキセタン化合物(例えばアジペートビスオキセタン)、芳香族カルボン酸系オキセタン化合物(例えばテレフタレートビスオキセタン)、脂環式カルボン酸系オキセタン化合物(例えばシクロヘキサンジカルボン酸ビスオキセタン)、芳香族イソシアネート系オキセタン化合物(例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)ビスオキセタン)などが挙げられる。これらのオキセタン化合物を単独で用いてもよいし、複数のオキセタン化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
式(1-2)で表される重合性基を2個以上有する重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸誘導体が好ましい。
(メタ)アクリル酸誘導体としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロキシネオペンチルグリコール]アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン・エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン・エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリ(メタ)アクリレート、およびカルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸誘導体を単独で用いてもよいし、複数の(メタ)アクリル酸誘導体を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
2官能以上の重合性化合物としては、式(2)で表される重合性液晶性化合物がより好ましい。
R1a-Z1-A1-Z2-A2-(Z3-A3)m1-Z4-R1b (2)
式(2)中、
A1、A2、およびA3は独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ビシクロ[2.2.2]オクト-1,4-ジイル、ビシクロ[3.1.0]ヘキス-3,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH=は-N=で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-C=C-で置き換えられてもよく;
なお、「アルキルにおける少なくとも1つの-CH2-は、-O-で置き換えられてもよい」などの句の意味を一例で示す。C4H9-における少なくとも1つの-CH2-が、-O-で置き換えられた基としては、C3H7O-、CH3-O-(CH2)2-、CH3-O-CH2-O-などである。このように「少なくとも1つの」という語は、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。なお、化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接したCH3-O-O-CH2-よりも、酸素と酸素とが隣接しないCH3-O-CH2-O-の方が好ましい。
Z1、Z2、Z3、およびZ4は独立して、単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-、-N=CH-、または-N=N-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
m1は、0、1、または2であり、
式中に、Z3またはA3が複数ある場合は、それらが同一であっても異なっていてもよく、
R1aおよびR1bは独立して、前記式(1-1)または(1-2)で表される重合性基であり;
A1およびA2が1,4-フェニレンであり、Z2が単結合であり、m1が0であり、かつ、R1aおよびR1bが式(1-1)または(1-2)で表される重合性基の場合は、Z1およびZ4は炭素数が3~20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-、-N=CH-、または-N=N-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよい。
化合物(2)としては、重合性液晶性化合物のA1から右末端のA3までのメソゲン部分が、ビフェニル構造であり、ビフェニル構造とR1aおよびR1bのエポキシ(オキシランまたはオキセタン)基の間に炭素数が3以上の直鎖状のZ1およびZ4が介在する化合物、または重合性液晶性化合物のメソゲン部分が、ビシクロヘキシル構造である化合物がさらに好ましい。
【0060】
<硬化成分>
硬化成分としては、硬化剤、重合開始剤、硬化促進剤、および架橋剤からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。これらの内、硬化剤としては、少なくとも2つの水酸基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマー、活性エステル硬化剤、少なくとも2つの水酸基を有するアルキル・エーテル、および式(3-1)で表される重合性化合物からなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましい。
HO-Z10-A10-Z20-A20-(Z30-A30)m10-Z40-OH (3-1)
式(3-1)中、
A10、A20、およびA30は独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ビシクロ[2.2.2]オクト-1,4-ジイル、ビシクロ[3.1.0]ヘキス-3,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH=は-N=で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素は、ハロゲン、または少なくとも1つの水素がハロゲンで置き換えられてもよい炭素数1~12のアルキルで置き換えられてもよく、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、または-C=C-で置き換えられてもよく;
Z10、Z20、Z30、およびZ40は独立して、単結合または炭素数1~20のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-SO2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=N-、-N=CH-、または-N=N-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの水素はハロゲンで置き換えられてもよく;
m10は、0、1、または2であり、
式中に、Z30またはA30が複数ある場合は、それらが同一であっても異なっていてもよい。
硬化成分は2官能以上の重合性化合物の重合性基が式(1-1)の場合、ジアミンやフェノールなど、硬化した高分子の構成単位として共重合される硬化剤と、イミダゾール触媒などの硬化促進剤を使用することが好ましい。重合性基が式(1-2)の場合は、熱ラジカル発生剤、酸発生剤などの重合開始剤を使用することが好ましい。好ましい硬化成分の例を以下に示す。
【0061】
<硬化剤>
本発明の接着剤は硬化剤を構成要素としてもよい。好ましい硬化剤の例を以下に示す。
アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、o-キシレンジアミン、m-キシレンジアミン、p-キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、3,9-ジプロパンアミン-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルエタン、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリシクロヘキシルポリアミン、N-アミノエチルピペラジンなどが挙げられる。
【0062】
酸無水物系硬化剤としては、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメチレート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニルコハク酸無水物、クロレンド酸無水物などが挙げられる。
【0063】
フェノール系硬化剤としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3,5-トリメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、o-イソプロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、o-sec-ブチルフェノール、p-オクチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、レゾルシノール、1-ナフトール、2-ナフトール、ビスフェノールA、フェノールノボラック、キシリレンノボラック、ビスフェノールAノボラックなどが挙げられる。また、ポリフェニレンエーテルの末端に水酸基を導入したオリゴマーは低誘電正接を重視する場合の硬化剤に、重合性液晶を合成する中間体として使用されるメソゲン骨格の両端に水酸基を導入したモノマーは熱伝導率や耐熱性を重視した接着剤に特に有効である。
上記以外にも特開2004-256687号公報、特開2002-226550号公報などに記載されている硬化剤も使用することができる。
【0064】
活性エステル系硬化剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物としてDIC(株)製商品名「HPC-8000H-65T」、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物としてDIC(株)製商品名「EXB-8150-65T」、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として三菱ケミカル(株)製商品名「DC808」、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として三菱ケミカル(株)製商品名「YLH1026」、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として三菱ケミカル(株)製商品名「DC808」、フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル系硬化剤として三菱ケミカル(株)製商品名「YLH1026」などの市販品が挙げられる。
【0065】
また、硬化促進剤として、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン等のシクロアミジン化合物;該シクロアミジン化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂などのπ結合を有する化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物;該3級アミン化合物の誘導体;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;該イミダゾール化合物の誘導体;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン化合物;該有機ホスフィン化合物に無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合を有する化合物を付加してなる分子内分極を有するリン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2-エチル-4-メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N-メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩;該テトラフェニルボロン塩の誘導体;トリフェニルホスホニウム-トリフェニルボラン、N-メチルモルホリンテトラフェニルホスホニウム-テトラフェニルボレート等のホスフィン化合物と該テトラフェニルボロン塩との付加物などが挙げられる。
【0066】
<重合開始剤>
本発明の接着剤は重合開始剤を構成要素としてもよい。重合開始剤は、接着剤の硬化方法(重合方法)に応じて、熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤などを用いればよい。本発明に用いられる2官能以上の重合性化合物を、銅箔と低誘電電子基板の接着に用いる場合には、銅箔は光を反射してしまい、低誘電率樹脂シートは光を吸収してしまうので、熱ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。
【0067】
好ましい熱ラジカル重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ-t-ブチルパーオキシド(DTBPO)、t-ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチルなどが挙げられる。
市販品の過酸化物系の重合開始剤としては、各社から市販されている過酸化ベンゾイルの他、東京化成工業(株)製商品名「ジクミルペルオキシド」、日油(株)製商品名「パークミルD、ナイパーBMT、パーヘキサ25Z」などが挙げられる。アゾ重合開始剤としては、各社から市販されているAIBNの他、富士フイルム和光純薬(株)製商品名「V-40、V-50、V-59、V-65、V-70、V-501、V-601」などが挙げられる。一般に、アゾ重合開始剤は熱ラジカル重合と光ラジカル重合の両方に好適に使用できる。
【0068】
アニオン重合、配位重合およびリビング重合用の好ましい重合開始剤としては、n-C4H9Li、t-C4H9Li-R3Alなどのアルカリ金属アルキル化合物、アルミニウム化合物、遷移金属化合物などが挙げられる。
【0069】
<架橋剤>
本発明の接着剤に含まれる、ポリビニルアセタール樹脂に構成単位Dが含まれる場合には、このカルボキシル基を利用した架橋を行い、耐熱性や機械物性を調整することができる。架橋剤を添加しない場合は、ポリビニルアセタール樹脂内の水酸基や、2官能以上の重合性化合物中のエポキシ基と反応し、架橋点を生成させるために、カルボキシル基と水酸基の反応を促進する硬化触媒を用いることが好ましい。また、別途架橋剤を加える場合には、2官能以上のエポキシ基、水酸基、アミノ基、オキサゾリル基などを有する架橋剤を添加することが好ましい。さらにシランカップリング剤を反応させることにより架橋効果を狙ってもよい。
2官能以上のエポキシ基を有する架橋剤としては、2官能以上の重合性化合物の内、前記オキシラン化合物またはオキセタン化合物を用いることができる。オキシラン化合物またはオキセタン化合物を本発明の接着剤に用いる量は、2官能以上の重合性化合物と硬化成分とが反応して消費されるので、ポリビニルアセタール樹脂に含まれる構成単位Dのカルボキシル基と化学量論比で反応できるオキシラン化合物またはオキセタン化合物の量を用いることが好ましい。
2官能以上の水酸基またはアミン基を有する架橋剤としては、硬化成分の内、前記フェノール系硬化剤またはアミン系硬化剤を用いることができる。フェノール系硬化剤またはアミン系硬化剤を本発明の接着剤に用いる量は、2官能以上の重合性化合物と硬化成分とが反応して消費されるので、ポリビニルアセタール樹脂に含まれる構成単位Dのカルボキシル基と化学量論比で反応できるフェノール系硬化剤またはアミン系硬化剤の量を用いることが好ましい。
【0070】
架橋剤としては、特に限定されず、公知のものを使用することができ、日本触媒(株)製商品名「エポクロスRPS-1005」、ナガセケムテックス(株)製商品名「デナコールEX-321、EX-622、EX-201,EX-211」などが好適に使用できる。
【0071】
〔溶剤〕
本発明の接着剤は、溶剤を含んでもよく、含まなくてもよいが、接着層の形成容易性等の点から、溶剤を含むことが好ましい。該溶剤としては、前記ポリビニルアセタール樹脂および前記2官能以上の重合性化合物を溶解できるものであることが好ましい。このような溶剤としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、n-オクタノール、ジアセトンアルコール、ベンジルアルコールなどのアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソホロンなどのケトン系溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドンなどのアミド系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル系溶媒;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;メチレンクロライド、クロロホルムなどの塩素化炭化水素系溶媒;トルエン、ピリジンなどの芳香族系溶媒;ジメチルスルホキシド;酢酸;テルピネオール;ブチルカルビトール;ブチルカルビトールアセテート等の有機溶媒や無機溶媒の水が挙げられる。
これらの溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。例えば、ポリアセタール成分が少ない場合にはトルエンやメチルエチルケトンの使用が好ましく、ポリアセタール成分が多い場合には、トルエンやメチルエチルケトンに加えて1-メチル-2-ピロリドンの混合溶媒を使用することが好ましい。例えば、ポリビニルアセタール成分が20重量%以下の場合にはトルエンやメチルエチルケトンで溶解できるが、30重量%以上では1-メチル-2-ピロリドンなどの高極性・高沸点溶媒との混合溶媒を使用しないとポリビニルアセタール樹脂を溶解させにくい。
【0072】
前記溶剤は、本発明の接着剤中のポリビニルアセタール樹脂100重量部に対し、好ましくは500~5000重量部、より好ましくは700~1500重量部となる量で用いることが、沈殿などが生じにくく、保存安定性に優れる接着剤が得られる等の点から好ましい。
【0073】
〔添加剤〕
本発明の接着剤には、通常用いられる範囲で安定剤、改質剤等の添加剤を加えてもよい。このような添加剤としては、市販されている添加剤を使用できる。また、本発明の接着剤には、ポリビニルアセタール樹脂の特性を損なわない範囲で他の樹脂を添加することもできる。
これらの添加剤は、それぞれ、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0074】
前記添加剤としては、例えば、接着層を形成する樹脂が金属との接触により劣化する場合には、特開平5-48265号公報に挙げられているような銅害防止剤または金属不活性化剤の添加が好ましく、本発明の接着剤が熱伝導性充填剤を含む場合には、該熱伝導性充填剤とポリビニルアセタール樹脂との密着性を向上させるために、シランカップリング剤の添加が好ましい。
【0075】
シランカップリング剤としては、JNC(株)製のシランカップリング剤(商品名;サイラエース(登録商標)S330、S510、S520、S530)などが好ましい。
シランカップリング剤の添加量は、金属シートとの接着性を向上させることができるなどの点から、本発明の接着剤に含まれる樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは1~10重量部である。
【0076】
銅害防止剤(商品名)としては、(株)ADEKA製、アデカスタブ ZS-27、アデカスタブ CDA-16;三光(株)製、SANKO-EPOCLEAN;BASF社製、Irganox MD1024;などが好ましい。
銅害防止剤の添加量は、接着層の金属と接触する部分の樹脂の劣化を防止できるなどの点から、本発明の接着剤に含まれる樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは0.1~3重量部である。
【0077】
〔無機充填剤〕
本発明の接着剤は、誘電正接を低下させる、および熱伝導率を向上させることを目的として少量の無機充填剤を含んでいてもよい。熱伝導性充填剤の少量の添加は、添加量と接着性能とのバランスに留意する必要があり、無機充填剤を接着剤中に1~30体積%含むことが好ましい。
好ましい無機充填剤として、球状シリカ、粉砕シリカ、シリカウイスカー、中空シリカおよびヒュームドシリカなどの酸化珪素化合物の使用が、低誘電正接化のために好ましい。一方、高熱伝導化のためには、高熱伝導充填剤の中では誘電率が低い酸化マグネシウムおよび酸化亜鉛などの金属酸化物、窒化ホウ素、窒化珪素および窒化アルミニウムなどの窒化物を使用することが好ましい。
【0078】
[製造方法]
以下、低誘電電子基板接着用の本発明の接着剤を製造する方法、および該接着剤を用いて低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせて得られる積層体や本発明の電子デバイスを製造する方法について具体的に説明する。
【0079】
本発明の接着剤は、そのまま無溶媒の液状接着剤や、その接着剤を半硬化させた固体状の接着剤、好ましい形態として例えば接着シートの他、有機溶媒に溶解させて溶液やスラリーの液状接着剤として使用することもできる。これら接着剤の内、0~130℃の温度範囲で固体状の接着剤が好ましい。接着剤の調製は、ポリビニルアセタール樹脂、2官能以上の重合性化合物、および硬化成分に、必要に応じて溶剤、無機充填剤、上述した各種の添加剤などを加え、撹拌機を用いて組成ムラが無くなる程度まで撹拌・脱泡する。例えば、自転・公転ミキサーを用い、回転数2000rpmで10分間撹拌後、回転数2200rpmで10分間脱泡する。自転・公転ミキサーの他には、攪拌モーター、らいかい機、三本ロール、ボールミル、自転・公転ミル、遊星ミル、ビーズミル、ジェットミルなどを用いて分散させることができる。
【0080】
本発明の接着剤を用いて低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせて、積層体や本発明の電子デバイスを製造する方法を以下に説明する。
低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせるために、本発明の接着剤を低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせる面に塗布する。接着剤の塗布は、これら貼り合わせる面の全てに行ってもよく、片方、例えば、低誘電電子基板の貼り合わせる面に行い、金属箔またはレジスト層の貼り合わせる面には行わなくてもよい。
これら貼り合わせる面に対する接着剤の塗布方法には、上記低誘電電子基板用の本発明の接着剤を均一にコーティングするために、ウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法の内、上記積層体や本発明の電子デバイスを少量作製する場合には簡便で均質な製膜が可能であるスピンコート法が好ましい。生産性を重視する場合には、グラビアコート法、ダイコート法、バーコート法、リバースコート法、ロールコート法、スリットコート法、ディッピング法、スプレーコート法、キスコート法、リバースキスコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ロッドコート法などが好ましい。ウェットコーティング法は、これらの方法から必要とする膜厚、粘度や硬化条件などに応じて適宜選択することができる。
一方、必要な部分にのみ接着剤を印刷したい場合には、溶剤やシリカの量を調整することにより粘度を調整し、インクジェット法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ディスペンサー法を用いてパターニングすることができる。
本発明の接着剤を用いてこれらを貼り合わせる面に接着剤を塗布した後、多段真空プレス機や、ロール・トゥー・ロール方式の連続プレス機により低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせて積層体や本発明の電子デバイスを製造することができる。
【0081】
固体状の接着剤として好ましい形態である接着シートを製造する場合には、離型処理した基材上に上記液状接着剤を上記塗布方法などでコーティングし剥離するキャスト成形法などの樹脂成形法を用いることができる。キャスト成形法を用いて、接着剤を半硬化させることにより、転写可能な接着シートを形成することもできる。得られた接着シートを用いて、多段真空プレス機や、ロール・トゥー・ロール方式の連続プレス機により低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせて積層体や本発明の電子デバイスを製造することができる。
【実施例0082】
[誘電特性(比誘電率および誘電正接)および放熱性(熱拡散率)の物性評価]
[実施例1]
<誘電特性評価用試料の作製>
ガラス製の30mLスクリュー瓶に2官能以上の重合性化合物として市販のビフェニル型エポキシ樹脂であるYX4000H(三菱ケミカル(株)製商品名:JER(登録商標)YX4000H)0.38gと、硬化成分(硬化剤)として変性ポリフェニレンエーテルオリゴマー(SABIC(合)製ポリフェニレンエーテルオリゴマー(両末端水酸基)、商品名:ノリルTMSA90-100樹脂)1.70gを入れ、さらに4gのトルエンと4gのN-メチルピロリドンを加え、80℃に設定したドライバスを用いて溶解させた。この溶液を25℃に温度設定した実験室に一晩放置した後、固形分が析出していないことを確認し、ポリビニルアセタール樹脂として樹脂分の5重量%に相当する0.11gのポリビニルホルマール樹脂粉末であるPVF-K(JNC(株)製商品名:ビニレック(登録商標)K)と、0.06gの硬化成分(硬化促進剤)としてリン系硬化促進剤(北興化学工業(株)製商品名:TBP-LA)をさらに加え、低誘電電子基板用の接着剤である溶液を得た。
低誘電電子基板用の接着剤である溶液を、A5サイズのポリイミドフィルム(パナック(株)製商品名:カプトン200H)上にドライ膜厚が約100μm、塗布された部分が8cm角以上になるようにバーコーターを用いて塗布し、80℃に設定したホットプレート上で30分間乾燥させた。乾燥後の2層フィルムを、内部を窒素ガス100ml/分でフローさせた密閉容器に入れ、熱風式オーブンを用い200℃で1時間硬化した。膜厚のばらつきが大きいと、誘電特性の測定誤差が大きくなるので、可能な範囲で膜厚が均質な部分を8cm角で切り出し、誘電特性評価用の試料とした。
硬化後の試料は、大気中で放置すると水分を吸収してしまうため、電子デシケータ中に保管した。
【0083】
<誘電特性の評価方法>
ベクトルネットワークアナライザー(アンリツ(株)製MS46522B-043型)に接続した、(株)エーイーティー(AET, INC.)製の空洞共振器(TEモード10GHz用、28GHz用、40GHz用)を用いて、誘電特性評価用試料の、共振周波数のシフト量と減衰量を測定し、同社製ソフトウエアを用いて比誘電率(Dk)および誘電正接(tanδ、Df)の誘電特性を求めた。この際、膜厚が測定精度に大きく影響するため、作製した試料の総厚を(株)ミツトヨ製のデジマチックマイクロメータで5点測定しその平均値を計算に用いた。測定時は試料中の水分量の影響を少なくするために、前夜はデシケータ内に静置し、測定日は温度20℃、相対湿度48%RHの実験室で、試料を60分以上静置したあとで測定を開始した。膜厚が大きいので硬化収縮により試料がカールする場合があるが、共振器に差し込むことができるように平らに押さえて測定した。
この測定値はポリイミドフィルムと硬化膜の2層分の測定結果であるので、試料作製と同時に、200℃で1時間熱処理したポリイミドフィルムのみを準備しておき、このポリイミドフィルムの測定値を第1層の誘電特性として用いて、同社の2層膜計算用の表計算シートで硬化膜のみの比誘電率および誘電正接の誘電特性を求めた。
【0084】
<接着特性測定用試料の作製と接着特性評価>
誘電特性評価用に調製した、低誘電電子基板用の接着剤である溶液を、7cm角にカットした、金属箔である高周波基板用銅箔(福田金属箔粉工業(株)製商品名:CF-T9DA-SV-12(厚み12μm))の微細粗化面に、乾燥後の厚みが約5μmになるようにスピンコーターを用いて塗布し(1000rpmで20秒回転)、100℃に設定したホットプレートで30分間溶媒を乾燥させた。
乾燥後の接着成分塗布層付き銅箔を1cm幅にデザインカッターナイフで切断し、5cm角に切り出し、低誘電電子基板としてアセトンで脱脂洗浄した低誘電フィルムである液晶ポリマーフィルム(千代田インテグレ(株)製商品名:ぺリキュール(登録商標)LCP、50μm厚み)の中央部分に
図1のように載せ、2枚の200μm厚みのアズワン(株)製のPTFEシートで挟み込み、(株)井元製作所製の小型手動加熱プレスを用いて10MPaの圧力で、200℃で30分間硬化させた。昇温時は、100℃から20℃温度が高くなる毎に、一度圧力をリリースさせることにより、脱ガスを行った。このようにして本発明の接着剤を用いて、接着剤が硬化した硬化物である接着層によって低誘電電子基板と金属箔とを貼り合わせた積層体の試験片を得た。
出来上がった上記試験片の裏面の全面に両面テープ(ニチバン(株)製商品名:ナイスタック)を貼り、
図2のように2mm厚のアルミ板を曲げて自作したジグに固定し、(株)島津製作所製オートグラフAGC-X(1kNタイプ)に取り付け、接着層を形成した長さ2cm部分の銅箔であって、5cm角の低誘電フィルムからはみ出た2cm部分の接着層付き銅箔を50mm/分の速度で真上に引っ張ることにより、接着特性(ピール強度)を測定した。また、垂直方向への引き剥がしピール強度を測定しているが、測定長が長くなりすぎると、基材を取り付けてあるステージを移動させないと、角度がついてくるため、測定開始後、1~21mmの間の引き剥がしトルクの最も小さい部分を測定値とした。測定結果は表1のように規定した。
【0085】
【0086】
<放熱性(熱拡散率)の評価方法>
誘電特性を評価するための試料を作製する際に、同時に離形処理したポリイミドフィルム(ニッパ(株)製商品名:耐熱離形フィルムJ2グレード)上にも接着剤層を製膜し硬化させた後、接着剤の硬化物と2層になったフィルムを折り曲げ、ポリイミドフィルムから剥がれた硬化物の小片を得た。この硬化物の小片の厚み方向の放熱性(熱拡散率)を、(株)アイフェイズ製熱拡散率測定装置アイフェイズ・モバイル1型を用いて測定した(この装置は、1辺が2mm以上で平坦かつ上下面が平行であれば、精度良く熱拡散率が測定できるものである)。
【0087】
[実施例2]
PVF-Kの添加量を10重量%になるように0.21gに増量した以外は実施例1と同様に試料を作製し測定した。その結果を実施例2とする。
【0088】
[実施例3]
PVF-Kの添加量を30重量%になるように0.62gに増量した以外は実施例1と同様に試料を作製し測定した。その結果を実施例3とする。
【0089】
[比較例1]
実施例1の溶液を準備する際に、PVF-Kを添加しなかった以外は実施例1と同様に試料を作製し測定した。その結果を比較例1とする。実施例1~3、比較例1の、誘電特性と接着性の評価結果を表2とし、熱拡散率を表3とする。
【0090】
[表2]
接着剤の硬化物の誘電特性と接着性(PVF-K添加量依存性、Dk=比誘電率、Df=誘電正接)
【0091】
【0092】
表2より、ポリビニルアセタール樹脂(PVF-K)を添加しない場合(比較例1)にくらべ、PVF-Kを添加すると誘電特性および接着性がともに向上することが分かる。また、10GHzにおける誘電特性を重視する場合には添加量は5重量%が、28GHzを重視する場合は10重量%が適している。さらに、接着特性を重視する場合には10重量%が適していることが分かる。これは、PVF-Kと2官能以上の重合性化合物の架橋度合いや、分子鎖間の分子間力の影響によるものであり、添加量は5~30重量%の間で、使用する周波数帯域や接着強度などにより、最適化を行うことが好ましい。表3より、ポリビニルアセタール樹脂を添加することにより、熱拡散率が下がってしまうことが懸念されたがその心配はなく、むしろ僅かに上昇傾向にある。
【0093】
[実施例4]
2官能以上の重合性化合物としてYX4000Hを0.38g、硬化成分(硬化剤)としてアミン系硬化剤である市販のジアミン(富士フイルム和光純薬(株)製:4,4’-メチレンジアニリン(和光特級))を0.20g使用した以外は、実施例2と同様に試料を作製し、測定した。その結果を実施例4とする。
【0094】
[実施例5]
2官能以上の重合性化合物としてYX4000Hを0.38g、硬化成分(硬化剤)として活性エステル硬化剤(DIC(株)製商品名:HPC-8000H-65T)を0.45g使用し、硬化成分(硬化促進剤)としてテトラブチルホスホニウム系触媒(北興化学工業(株)製:製品名TBP-3S)を0.06g使用した以外は、実施例2と同様に試料を作製し、測定した。その結果を実施例5とする。
【0095】
[実施例6]
2官能以上の重合性化合物として液晶性を有する重合性化合物(S01)を0.37g使用した以外は、実施例2と同様に試料を作製し、測定した。その結果を実施例6とする。液晶性を有する重合性化合物(S01)は、特許第5084148号公報(特開2006-265527号公報)に記載の方法で合成した。
実施例2、実施例4~6、比較例1の誘電特性と接着性の評価結果を表4とし、熱拡散率を表5とする。
【0096】
[表4]
2官能以上の重合性化合物または硬化成分を変えた場合の誘電特性と接着性
【0097】
[表5]
2官能以上の重合性化合物または硬化成分を変えた場合の熱拡散率
【0098】
表4より硬化成分をアミン系硬化剤に変更しても誘電特性はほとんど変化しないが、活性エステル硬化剤を用いた場合には、比誘電率が大きく低下していることが分かる。また、液晶性を有する重合性化合物を使用すると、熱拡散率が1割以上向上している。したがって、比誘電率をより低くしたい場合には硬化成分に活性エステル硬化剤を使用し、放熱性をより高くしたい場合には、液晶性を有する重合性化合物を使用することが好ましい。
以上のように、本発明の接着剤を用いることにより、低誘電電子基板の原料である低誘電率樹脂シートと低粗度な銅箔との接着性が高く、誘電特性が良好で、放熱性をも兼ね揃えた本発明の電子デバイスを作製可能であることが分かる。
本発明の接着剤は、低誘電電子基板と金属箔またはレジスト層とを貼り合わせるのに用いられ、これから得られる積層体は、各種電子部品として用いることができる。さらには、本発明の接着剤を用いて得られる各種電子部品は、本発明の各種電子デバイスとしての用途に有用である。