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特開2025-50418ネガ型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025050418
(43)【公開日】2025-04-04
(54)【発明の名称】ネガ型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20250327BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20250327BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
G03F7/038 601
G03F7/004 512
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159206
(22)【出願日】2023-09-22
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 豪
(72)【発明者】
【氏名】石川 信広
(72)【発明者】
【氏名】行森 大貴
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 香帆
(72)【発明者】
【氏名】奥田 綾乃
【テーマコード(参考)】
2H225
4J043
【Fターム(参考)】
2H225AE03P
2H225AF82P
2H225AF83P
2H225AM13P
2H225AM15P
2H225AM73P
2H225AM75P
2H225AM90P
2H225AM99P
2H225AN41P
2H225AN54P
2H225AN64P
2H225AP11P
2H225BA26P
2H225CA12
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC17
4J043PA02
4J043PA19
4J043PB02
4J043QB15
4J043QB34
4J043SA06
4J043SA71
4J043SB01
4J043SB03
4J043TA26
4J043TB01
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB061
4J043UB062
4J043UB122
4J043XA04
4J043XA13
4J043XA19
4J043YA02
4J043YA23
4J043ZA46
4J043ZB22
4J043ZB50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より優れた解像性と絶縁信頼性とを有する新しいネガ型感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ネガ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリヒドロキシアミド化合物と、(B)光酸発生剤と、(C)架橋剤と、を含む。前記(A)ポリヒドロキシアミド化合物は、式(1)で示される繰返構造単位を含み、かつ、末端にアルカリ可溶基を含む。前記(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位の全個数に占める前記下式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合は、80%以上である。

(式中Rは2価の有機基、Rは4価の有機基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリヒドロキシアミド化合物と、
(B)光酸発生剤と、
(C)架橋剤と、
を含み、
前記(A)ポリヒドロキシアミド化合物は、下式(1)で示される繰返構造単位を含み、かつ、少なくとも一方の末端にアルカリ可溶基を含み、
前記(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位の全個数に占める前記下式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合は、80%以上であるネガ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中Rは2価の有機基、Rは4価の有機基である。)
【請求項2】
前記アルカリ可溶基は、カルボキシル基又はフェノール性水酸基である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)光酸発生剤は、オキシムスルホネート化合物を含む、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記オキシムスルホネート化合物は、下式(2)で示される構造を有する、請求項3に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【化2】
(式中Xは、炭化水素基又はハロゲン原子、mは0~3の整数、Rは水素原子、炭化水素基、ケトン基を含む有機基又はハロゲン原子である。)
【請求項5】
前記(C)架橋剤は、複素環骨格を有する、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(C)架橋剤は、メトキシメチル基及びメチロール基からなる群より選ばれる少なくとも一種以上を有する化合物である、請求項5に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
(D)フェノール性水酸基を含む化合物を含む、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
前記(D)フェノール性水酸基を含む化合物は、ポリヒドロキシスチレン重合体又はポリヒドロキシスチレン共重合体を含む、請求項7記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項9】
(E)塩基性化合物を含む、請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備える、ドライフィルム。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のネガ型感光性樹脂組成物又は請求項10に記載のドライフィルムの樹脂層により形成される、硬化物。
【請求項12】
請求項11に記載の硬化物を有する、電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリベンゾオキサゾール前駆体を含む感光性樹脂組成物は、絶縁性、耐熱性、機械強度等に優れた特性を発現することから、絶縁膜として半導体、電子部品等の様々な分野において広く利用されている。
【0003】
従来、電子部品や電気機器の高性能化、小型化の要求にともなって半導体素子の高集積化が求められている。近年、これらの要求に応えるため、ウエハレベルパッケージ等の半導体素子パッケージ分野における高性能化、小型化技術が開発され、再配線層に用いられる絶縁膜においてはパターン形成の微細化(解像性)の要求が高まっている。
【0004】
特許文献1には、感光性を有するポリベンゾオキサゾール前駆体である特定のポリアミド誘導体、放射線照射により酸を発生する化合物、前記特定のポリアミド誘導体を架橋し得る化合物を含有するネガ型感光性樹脂組成物を用いることが開示されている。特許文献1の開示によれば、感度、解像度及び耐熱性に優れ、良好な形状のパターン、及び、信頼性の高い電子部品が提供される。
【0005】
特許文献2には、反応性の末端基を有する異なる2種類以上の耐熱性ポリマーからなるポリマー成分と、活性光線照射により酸を発生する化合物と、酸の作用により架橋あるいは重合し得る化合物と、を含有するネガ型感光性樹脂組成物を用いることで、感度、解像度に優れたパターン形成が可能であることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-125267号公報
【特許文献2】特開2008-033159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のネガ型感光性樹脂組成物を用いると、5~8μmの解像度のパターン形成が可能であり、特許文献2のネガ型感光性樹脂組成物を用いると、5~6μmの解像度のパターン形成が可能である。しかし、これらのネガ型感光性樹脂組成物を用いた場合の解像度の程度では十分に高集積化された回路形成ができないおそれがあった。
【0008】
そこで本開示の目的は、より優れた解像性を有する新しいネガ型感光性樹脂組成物を提供することを課題とする。また、本開示の他の目的は、前記ネガ型感光性樹脂組成物を用いた硬化物、また、それらを用いたプリント配線板、半導体素子等の電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、特定のポリヒドロキシアミド化合物と、光酸発生剤と、架橋剤とを組み合わせることにより、前記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本開示技術のある態様は、
(A)ポリヒドロキシアミド化合物と、
(B)光酸発生剤と、
(C)架橋剤と、
を含み、
前記(A)ポリヒドロキシアミド化合物は、下式(1)で示される繰返構造単位を含み、かつ、末端にアルカリ可溶基を含み、
前記(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位の全個数に占める前記下式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合は、80%以上であるネガ型感光性樹脂組成物である。
【化1】
(式中Rは2価の有機基、Rは4価の有機基である。)
前記アルカリ可溶基は、カルボキシル基又はフェノール性水酸基であってもよい。
前記(B)光酸発生剤は、オキシムスルホネート化合物を含んでもよい。
前記オキシムスルホネート化合物は、下式(2)で示される構造を有していてもよい。
【化2】
(式中Xは、炭化水素基又はハロゲン原子、mは0~3の整数、Rは水素原子、炭化水素基、ケトン基を含む有機基又はハロゲン原子である。)
前記(C)架橋剤は複素環骨格を有してもよい。
前記(C)架橋剤はトリアジン環を有する化合物であってもよい。
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、(D)フェノール性水酸基を含む化合物を含んでもよい。
前記(D)フェノール性水酸基を含む化合物は、ポリヒドロキシスチレン重合体又はポリヒドロキシスチレン共重合体を含んでもよい。
前記ネガ型感光性樹脂組成物は、(E)塩基性化合物を含んでもよい。
本開示の別の態様は、前記ネガ型感光性樹脂組成物により形成された樹脂層を備えるドライフィルムである。
本開示の別の態様は、前記ネガ型感光性樹脂組成物又は前記ドライフィルムの樹脂層により形成される硬化物である。
本開示の別の態様は、前記硬化物を有する電子部品である。
【発明の効果】
【0010】
本開示技術によれば、より優れた解像性を有する新しいネガ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示技術の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0012】
1.ネガ型感光性樹脂組成物
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリヒドロキシアミド化合物と、(B)光酸発生剤と、(C)架橋剤とを含むことが好ましい。本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は解像性が高いため、微細なパターニングを形成することができる。具体的には、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、半導体回路や回路基板のパターンにおけるライン/スペース(L/S)を3.0μm/3.0μm以下とすることができ、1.5μm/1.5μm以下、さらには1.0μm/1.0μm以下とすることも可能である。また、アスペクト比(ラインの高さ/ラインの幅)を1.0以上とすることができ、2.0以上や3.0以上、さらには3.5以上とすることも可能である。また、開口径2.0μm以下のビアを形成することも可能である。
【0013】
1-1.(A)ポリヒドロキシアミド化合物
(A)ポリヒドロキシアミド化合物は、下式(1)で示される繰返構造単位を含み、かつ、少なくとも一方の末端にアルカリ可溶基を含むことが好ましい。また、(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位の全個数に占める前記下式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合は、80%以上であることが好ましい。
【化3】
(式中、Rは2価の有機基、Rは4価の有機基である。)
【0014】
式(1)中のRは、2価の有機基であれば特に限定されないが、例えば、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、アルキルエーテル基、ケトン基、エステル基等を挙げることができる。これらのうちベンゼン、ナフタレン、ペリレン、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ベンゾフェノン等の骨格を有する2価の芳香族炭化水素基、又は、ブタン、シクロブタン等の骨格を有する2価の脂肪族炭化水素基が好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物の解像性及び硬化物の絶縁信頼性の観点から、Rの炭素数は4~30が好ましく、フェニル、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルヘキサフルオロプロパンが好ましい。なお、(A)ポリヒドロキシアミド化合物の分子中に、Rとして上記にて例示した基の2種類以上を含有させることもできる。
【0015】
式(1)中のRは、4価の有機基であれば特に限定されないが、ビフェニル、ジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル、ベンゾフェノン、ジフェニルメタン、ジフェニルプロパン、ジフェニルヘキサフルオロプロパン、ジフェニルスルホキシド、ジフェニルスルホン、ベンゼン等の骨格を有する4価の芳香族炭化水素基が好ましく、下式(3)に示す構造を有する有機基がより好ましい。
【化4】
(式中aは0~3の整数であり、*は結合していることを示す)
【0016】
(A)ポリヒドロキシアミド化合物の末端のアルカリ可溶基としては、特に限定されないが、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基、酸無水物基、カルボキシル基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、活性メチレン基等の官能基が挙げられ、現像液への溶解性の観点からカルボキシル基又はフェノール性水酸基を有することが好ましい。また、(A)ポリヒドロキシアミド化合物は、両末端にアルカリ可溶基を含むことが好ましい。
これらのアルカリ可溶基のうち、フェノール性水酸基が特に好ましい。(A)ポリヒドロキシアミド化合物が末端にフェノール性水酸基を有する場合には、(A)ポリヒドロキシアミド化合物の現像液への溶解性を向上させることができる。さらに、フェノール性水酸基はカルボキシル基と比較して反応性が低いことから架橋剤との過剰な反応が抑制され、PEB工程を行った場合であっても未露光部の現像液への溶解性を維持することができ、これにより解像性を維持することができるために、より微細かつ高アスペクト比であるL/Sパターンを形成し得るネガ型感光性樹脂組成物を提供することができるものと推測される。
また、これらのポリヒドロキシアミド化合物の末端に位置するアルカリ可溶基は、ポリヒドロキシアミド化合物を構成するモノマーの残基として有するものでもよく、アルカリ可溶基を有する末端封止剤により導入された末端構造として有するものでもよい。ポリヒドロキシアミド化合物の末端に位置するアルカリ可溶基は、アルカリ可溶基を有する末端封止剤により導入された末端構造として有するものであることが好ましい。
【0017】
末端封止剤としては、特に限定されないが、アミノフェノール化合物、ヒドロキシベンジルアミン化合物、アミノベンジルアルコール化合物、アルコールアミン化合物等の1つのアミノ基と水酸基を有する化合物;ヒドロキシ酸等の1つのカルボキシル基と水酸基を有する化合物;ヒドロキシ酸無水物等の水酸基を有する酸無水物化合物等;アミノ安息香酸やアミノ酸等の、アミノ基とカルボキシル基を有する化合物;フタル酸無水物や5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の酸無水物化合物等が挙げられる。
【0018】
(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位の全個数に占める式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合は、80%以上が好ましい。すなわち、(A)ポリヒドロキシアミド化合物は、式(1)で示される繰返構造単位に加え、その他の繰返構造単位を含むことができる。
【0019】
ここで、(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する繰返構造単位とは、例えば、原材料を重合又は共重合させて(A)ポリヒドロキシアミド化合物を得る際の原材料であるモノマー由来の構造単位(式(1)の繰返構造単位など)を示し、全繰返構造単位の全個数とは、(A)ポリヒドロキシアミド化合物に含まれるすべてのモノマー由来の構造単位の全個数をいう。モノマー由来の構造単位は、複数の異なるモノマー由来の構造単位が結合して一つの繰返構造単位を形成する場合も含む。
また、(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位の全個数に占める前記式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合(L)は下式(Y)で求められる。ここで(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位のうち式(1)の繰返構造単位がm個含まれ、式(1)以外の繰返構造単位がn個含まれるものとする。
L(%)={m/(m+n)}×100・・・(Y)
L:(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位の全個数に占める前記式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合
【0020】
ここで、本開示技術にかかる(A)ポリヒドロキシアミド化合物は、(A)ポリヒドロキシアミド化合物に含まれる式(1)で示される繰返構造単位とその他の繰返構造単位との総和である全個数(全繰返構造単位の全個数)を100%とした場合に、式(1)で示される繰返構造単位の数が80%以上である。また、当該(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位に占める式(1)で示される繰返構造単位の割合は、85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、100%が最も好ましい。式(1)で示される繰返構造単位の割合が高いほど、より微細なパターニングを形成しやすい。
【0021】
(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位の全個数に占める式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合は、(A)ポリヒドロキシアミド化合物を製造する際の原料(モノマーなど)の配合によって調整することができる。(A)ポリヒドロキシアミド化合物の製造方法としては、例えば、原料として、式(4)で示されるヒドロキシアミノ化合物と、式(5)で示されるジカルボニルジクロリド化合物と、これらと共重合可能な他の化合物を共重合させる方法を用いることができる。共重合可能な他の化合物としては、例えば、ジオール化合物、酸二無水物、ジイソシアネート化合物、式(4)で示されるヒドロキシアミノ化合物とは異なるジアミン化合物等が挙げられる。これら原料の組成比を式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合が80%以上となるように配合することで当該(A)ポリヒドロキシアミド化合物を構成する全繰返構造単位の全個数に占める式(1)で示される繰返構造単位の個数の割合を80%以上に調整することができる。
【化5】
【化6】
【0022】
(A)ポリヒドロキシアミド化合物の重量平均分子量(Mw)は、例えば、2,000~40,000とすることができ、2,000~20,000が好ましく、3,000~15,000がより好ましく、4,000~10,000が特に好ましい。このような範囲とすることで、より微細かつ高アスペクト比であるL/Sパターンを形成することが可能となる。
(A)ポリヒドロキシアミド化合物の数平均分子量(Mn)は、1,000~15,000であることが好ましく、1,500~10,000がより好ましく、1,500~6,000が特に好ましい。
(A)ポリヒドロキシアミド化合物の分子量分散度(PDI)は、1.5~4.0が好ましく、1.5~3.5がより好ましい。
(A)ポリヒドロキシアミド化合物の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分散度(PDI)がかかる範囲にある場合には、未露光部における現像液への溶解性と露光における(C)架橋剤との反応が好適なバランスとなり、解像性により優れたネガ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(GL Sience社製 GL7700)で測定し、標準ポリスチレンで換算した数値である。具体的な測定条件は以下のとおりである。
カラム:TSKgelαM(東ソー社製)
カラム内温度:40℃
溶離液組成:100mmol/LのHPO(HPO85%水溶液を原料として使用)及び10mmol/LのLiBrを含むNMP溶液
溶離液流速:0.5mL/min
校正用標準試薬:ポリスチレン
検出器波長:260nm及び300nm
検出器温度:室温
解析時ベースライン範囲:15分~40分
解析時分子量算出範囲:20~35分
また、本明細書において、分子量分散度(PDI)は下式(Z)により算出される。
(式Z)
PDI=Mw/Mn
【0023】
(A)ポリヒドロキシアミド化合物が、カルボキシル基を含む場合には、(A)ポリヒドロキシアミド化合物のカルボキシル基当量は、例えば、1,500g/eq以上とすることができる。(A)ポリヒドロキシアミド化合物は、カルボキシル基を含まないか又はカルボキシル基を含む場合には2,000g/eq以上が好ましく、カルボキシル基を含まないことがより好ましい。(A)ポリヒドロキシアミド化合物にカルボキシル基が含まれないか又はカルボキシル基当量が当該範囲にある場合には、解像性により優れたネガ型感光性樹脂組成物を得ることができる。なお、カルボキシル基は、ポリヒドロキシアミド化合物の現像液への溶解性を向上させる働きがあるが、現像工程前に行う熱処理(PEB(Post Exposure Bake)とも称す)における(C)架橋剤との反応が過剰に進行し、未露光部の現像液への溶解性が低下するため、解像性を悪化させるものと推測されるが詳細は不明である。
【0024】
(A)ポリヒドロキシアミド化合物の水酸基当量は、特に限定されないが、例えば、100~400g/eqとすることができ、150~350g/eqが好ましく、200~300g/eqがより好ましい。
【0025】
(A)ポリヒドロキシアミド化合物の分子構造中に含まれる塩素原子濃度(又は塩素イオン濃度)は、特に限定されないが、(A)ポリヒドロキシアミド化合物全体の質量に対して、5質量ppm以下が好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物の分子構造中に含まれる塩素原子濃度(又は塩素イオン濃度)が少ないほど硬化物の絶縁信頼性をより優れたものとすることが容易となる。
【0026】
1-2.(B)光酸発生剤
(B)光酸発生剤は、紫外線や可視光等の光照射により酸を発生する化合物であれば特に限定されず、例えば、ナフトキノンジアジド化合物、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、芳香族N-オキシアミドスルフォネ―ト、芳香族N-オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、オキシムスルホネート化合物、ナフタルイミド、ベンゾキノンジアゾスルホン酸エステル等を挙げることができる。これらは単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。光酸発生剤は、絶縁信頼性をより優れたものとする観点でオキシムスルホネート化合物であることが好ましく、下式(2)の構造を含むものがより好ましい。
【化7】
(式中Xは、炭化水素基又はハロゲン原子、mは0~3の整数、Rは水素原子、炭化水素基、ケトン基を含む有機基又はハロゲン原子である。)
式(2)におけるXは、特に限定されず、例えば、炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等)、又は、ハロゲン原子とすることができる。
炭化水素基は、置換基を有していてもよく、直鎖状、分岐鎖状、環状の構造を有することができる。炭化水素基は、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のものが好ましく用いられる。
ハロゲン原子として、塩素原子又はフッ素原子が好ましく用いられる。
【0027】
式(2)におけるmは、0~3の整数を表し、0又は1が好ましい。mが2又は3であるとき、複数のXは同一でも異なっていてもよい。
【0028】
式(2)におけるRは、水素原子、炭化水素基、ケトン基を含む有機基、又は、ハロゲン原子とすることが好ましい。炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基等)は無置換であってもよいが、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
炭化水素基は、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、環状のものが好ましく、炭素数1~10の直鎖状、分岐鎖状、環状のものがより好ましく用いられる。
ハロゲン原子は、塩素原子又はフッ素原子が好ましく用いられる。
【0029】
オキシムスルホネート化合物のうち市販されているものとしては、BASF社製のIrgacure PAG103、Irgacure PAG108、Irgacure PAG121、Irgacure PAG203等を挙げることができる。
【0030】
1-3.(C)架橋剤
(C)架橋剤は、特に限定されず公知のものを用いることができ、例えば、メラミン化合物、グアナミン化合物、トリアジン化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物、イソシアネート化合物、オキサゾリン化合物などが挙げられる。架橋剤は、メトキシメチル基及びメチロール基からなる群より選ばれる少なくとも一種以上を有する化合物が好ましい。これらの架橋剤は、(B)光酸発生剤から発生する酸を活性種として、加熱により(A)ポリヒドロキシアミド化合物等に含まれるフェノール性水酸基及びカルボキシル基と架橋反応を生じるため、露光、PEB及び現像処理によりネガ型のフォトリソグラフィ(パターン形成)が実現される。また、パターン形成後、さらに加熱することで、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化反応が進行し、硬化物として優れた特性が発現させる。
【0031】
また(C)架橋剤は、ネガ型感光性樹脂組成物の解像性と硬化後の絶縁信頼性を向上することから複素環骨格を有することが好ましい。複素環は、特に限定されず、ホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、アンチモン、ヒ素、ビスマス、セレン、ケイ素、テルル、スズ等のヘテロ原子を1つ以上含み、3員環、4員環、5員環、6員環、7員環又は8員環の飽和環又は不飽和環を含む。複素環は、ネガ型感光性樹脂組成物の解像性及び硬化物の絶縁信頼性の観点から、窒素を含む複素環が好ましく、窒素を複数含む複素環がより好ましい。具体的には、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン等のトリアジン構造を有する化合物、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン等のグアナミン構造を有する化合物、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル等のグリコールウリル構造を有する化合物、1,3-ビス(メトキシメチル)-2-イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン構造を有する化合物がより好ましい。これらのうち、特に、より微細かつ高アスペクト比であるL/Sパターンを形成し得るネガ型感光性樹脂組成物を提供できる観点から、トリアジン環を含むトリアジン構造を有する化合物、グアナミン構造を有する化合物を好ましく用いることができる。
【0032】
1-4.(D)フェノール性水酸基を含む化合物
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、(D)フェノール性水酸基を含む化合物を含むことができる。ネガ型感光性樹脂組成物が(D)フェノール性水酸基を含む化合物を含む場合には、ネガ型感光性樹脂組成物の解像性はより優れたものとなる。これはネガ型感光性樹脂組成物中のフェノール性水酸基の増加により、露光部の(C)架橋剤との架橋反応と未露光部の現像性が促進によるものと推測されるが、予想以上に解像性を著しく向上させるため詳細なメカニズムは不明である。
なお、(D)フェノール性水酸基を含む化合物は、(A)ポリヒドロキシアミド化合物、(B)光酸発生剤、(C)架橋剤とは異なる化合物である。
【0033】
(D)フェノール性水酸基を含む化合物は、1つ以上のフェノール性水酸基を含めばよく、特に限定されない。(D)フェノール性水酸基を含む化合物としては、例えば、単量体としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、ヒドロキノン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキシキノール、フロログルシノール、ピロガロール、ヘキサヒドロキシベンゼン、p-tert-ブチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-キシレノール、2,5-キシレノール、m-エチルフェノール、3,5-キシレノール、m-メトキシフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールFを挙げることができる。
また、多量体としては、レゾール型フェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂等のフェノール樹脂;ヒドロキシスチレン(o-、m-、p-のいずれでもよい)を重合させたポリヒドロキシスチレン重合体等のポリフェノール重合体;ヒドロキシスチレン(o-、m-、p-のいずれでもよい)とスチレン等の他の重合性化合物を共重合させたポリヒドロキシスチレン共重合体等のポリフェノール共重合体を挙げることができる。
これらの(D)フェノール性水酸基を含む化合物は、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。これらのうち、ヒドロキシスチレン(o-、m-、p-のいずれでもよい)を重合させたポリヒドロキシスチレン重合体又はヒドロキシスチレン(o-、m-、p-のいずれでもよい)を他の重合性化合物と共重合させたポリヒドロキシスチレン共重合体が好ましく、ヒドロキシスチレン(o-、m-、p-のいずれでもよい)とスチレンとを共重合させたポリヒドロキシスチレン共重合体がより好ましい。
【0034】
ポリヒドロキシスチレン重合体又はポリヒドロキシスチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)は、2,000~10,000が好ましく、3,000~8,000がより好ましく、4,000~6,000がさらに好ましい。
ポリヒドロキシスチレン重合体又はポリヒドロキシスチレン共重合体の数平均分子量(Mn)は、1,000~5,000であることが好ましく、1,500~4,000がより好ましく、2,000~3,000がさらに好ましい。
ポリヒドロキシスチレン重合体又はポリヒドロキシスチレン共重合体の分子量分散度(PDI)は、1.5~4.0が好ましく、1.5~3.0がより好ましい。
ポリヒドロキシスチレン重合体又はポリヒドロキシスチレン共重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分散度(PDI)がかかる範囲にある場合には、ネガ型感光性樹脂組成物の解像性をさらに優れたものとすることができる。
【0035】
(D)フェノール性水酸基を含む化合物の水酸基当量は、特に限定されないが、例えば、100~300g/eqが好ましく、100~200g/eqがより好ましい。
【0036】
(D)フェノール性水酸基を含む化合物の分子構造中に含まれる塩素原子濃度(又は塩素イオン濃度)は、特に限定されないが、(D)フェノール性水酸基を含む化合物の全質量に対して、5質量ppm以下が好ましい。ネガ型感光性樹脂組成物の分子構造中に含まれる塩素原子濃度(又は塩素イオン濃度)が少ないほど硬化物の絶縁信頼性をより優れたものとすることが容易となる。
【0037】
1-5.(E)塩基性化合物
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、溶解コントラストや解像性の向上や、感光性樹脂組成物を塗布してから露光するまでの引き置き時間における塗膜の安定性等における向上の観点から、(E)塩基性化合物を含むことが好ましい。特に、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物が(E)塩基性化合物を含む場合には、露光により(B)光酸発生剤から生じた酸が未露光部にまで拡散することを抑制できるため、現像後の未露光部に現像残渣が生じることを防止できる。
【0038】
(E)塩基性化合物としては、特に限定されず、例えば、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ペンチルアミン、トリベンジルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、n-ヘキシルアミン、n-ヘプチルアミン、n-オクチルアミン、n-ノニルアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン等のアミン化合物;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド等のアミド化合物;ピロリドン、N-メチルピロリドン等のラクタム;メチルウレア、1,1-ジメチルウレア、1,3-ジメチルウレア、1,1,3,3-テトラメチルウレア、1,3-ジフェニルウレア等のウレア化合物;イミダゾール、ベンズイミダゾール、4-メチルイミダゾール、8-オキシキノリン、アクリジン、プリン、ピロリジン、ピペリジン、2,4,6-トリ(2-ピリジル)-S-トリアジン、ピペラジン、1,4-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ピリジン等の含窒素複素環式化合物;モルホリン、4-メチルモルホリン等のモルホリン化合物等を挙げることができる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0039】
1-6.(F)無機フィラー
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は(F)無機フィラーを含むことができる。(F)無機フィラーとしては特に限定されず、従来公知の無機フィラーを用いることができるが、例えば、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、窒化アルミ、窒化ホウ素、ガラス粉末、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。絶縁信頼性に優れ、ネガ型感光性樹脂組成物の熱膨張率を低くする観点からシリカを用いることが好ましく、特に球状シリカを用いることが好ましい。
【0040】
(F)無機フィラーの体積平均粒子径(D50)は1.0μm以下とすることができ、500nm以下が好ましく、100nm以下とすることが特に好ましい。(F)無機フィラーの体積平均粒子径はレーザー回折法により測定することができる。
【0041】
1-7.溶剤
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は溶剤を含むことができる。溶剤としては、特に限定されず、例えば、エーテル類、エステル類、グリコールエステル類、ケトン類、ラクトン類、ラクタム類、スルホキシド類、テトラメチル尿素、ジメチルスルホン、ピリジン等を挙げることができる。
【0042】
エーテル類としては、酢酸-2-メトキシ-1-メチルエチル(PGMEA)、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等を挙げることができる。
【0043】
エステル類としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-エトキシプロピオン酸エチル等を挙げることができる。
【0044】
ケトン類としては、メチルエチルケトン;メチルイソブチルケトン(4-メチル-2-ペンタノン);2-ヘプタノン;
シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2-ノルボルナノン、2-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、2,2-ジメチルシクロペンタノン等のモノケトンであるシクロアルカノン類;
1,3-シクロペンタンジオン、3-メチル-1,2-シクロペンタンジオン、1,2-シクロヘキサンジオン、1,3-シクロヘキサンジオン、1,4-シクロヘキサンジオン、2-メチル-1,3-シクロペンタンジオン等のジケトンのシクロアルカノン類;
4-メチル-2-シクロペンテノン、2-シクロヘキセノン、2-シクロペンテン-1-オン、2-シクロヘキセン-1-オン等のシクロアルケノン類;
2-アゼチジノン、4,5-ジヒドロ-3(2H)-チオフェノン、4-オキソチアン、ジヒドロレボグルコノセン等の複素環骨格を有する環状ケトン類;を挙げることができる。
【0045】
グリコールエステル類としては、カルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
【0046】
また、ラクトン類としてはγ-ブチロラクトン等を、ラクタム類としてはN-メチルピロリドン、N-メチルカプロラクタム等を、スルホキシド類としてはジメチルスルホキシド、へキサメチルスルホキシド等をそれぞれ挙げることができる。
【0047】
これらの溶剤は、単独で、又は、複数を任意の比率での組み合わせて用いることができる。これらの溶剤の中でも、ネガ型感光性樹脂組成物中の各成分との親和性に優れる観点から、ラクトン類又は環状ケトンが好ましく、γ-ブチロラクトン又はシクロペンタノンが好ましい。また、ネガ型感光性樹脂組成物の乾燥時における溶剤除去性に優れることや、半導体製造におけるエッジリンス工程への適合性の観点から、環状ケトンが好ましく、モノケトンであるシクロアルカノン類がより好ましく、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、2-ノルボルナノン、2-メチルシクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、3-メチルシクロヘキサノン、2,2-ジメチルシクロペンタノンであることがさらに好ましく、シクロペンタノンであることが特に好ましい。
【0048】
1-8.その他の成分
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、本開示技術の効果を損なわない限りにおいて、その他の成分を含むことができる。その他の成分としては、ネガ型感光性樹脂組成物に含むことのできる公知のものを用いることができ、例えば、密着剤、界面活性剤、可塑剤、熱酸発生剤、増感剤、レベリング剤、着色剤、繊維、微粒子等を挙げることができる。
【0049】
界面活性剤としては、特に限定されず、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤等が挙げられる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、DIC社製の「メガファック」シリーズ(例えば、メガファックF-281、F-477、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-563、F-569等)等が挙げられる。シリコン系界面活性剤の市販品としては、ビックケミー社表面調整剤シリーズ(例えば、BYK-302、BYK-307、BYK‐310、BYK-322、BYK-323、BYK-326、BYK-331、BYK-332、BYK-333、BYK-348、BYK-349、BYK-377、BYK-378、BYK-3455、BYK-3760等)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
2.ネガ型感光性樹脂組成物の調製
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリヒドロキシアミド化合物、(B)光酸発生剤、(C)架橋剤の各成分に加え、(D)フェノール性水酸基を含む化合物、(E)塩基性化合物、(F)無機フィラーをはじめとする任意の成分を混合することにより得ることができる。各成分の混合は、必要に応じて加熱下で行うことができる。
【0051】
(A)ポリヒドロキシアミド化合物の含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分の全質量を100質量%とした場合に、50~80質量%とすることができる。ここで、本明細書における固形分質量とは、揮発成分を完全に揮発させた残渣の質量をいうものとする。
【0052】
(B)光酸発生剤の含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分の全質量を100質量%とした場合に、0.5~10質量%とすることができ、1~5質量%が好ましい。
【0053】
(C)架橋剤の含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分の全質量を100質量%とした場合に、10~40質量%とすることができる。また(C)架橋剤の含有量は、(C)架橋剤に含まれる官能基(反応基)数(例えば、メトキシメチル基数及び/又はメチロール基数)と、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれるフェノール性水酸基数との比(メトキシメチル基及び/又はメチロール基:フェノール性水酸基)を120:100~200:100にすることができる。このような比率とすることで、ネガ型感光性樹脂組成物の解像性と硬化後の絶縁信頼性をより優れたものとすることができる。
【0054】
(D)フェノール性水酸基を含む化合物を添加する場合の含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分の全質量を100質量%とした場合に、1~15質量%とすることができ、5~12質量%が好ましく、6~11質量%がより好ましい。また、(A)ポリヒドロキシアミド化合物の含有量:(D)フェノール性水酸基を含む化合物の含有量(質量比)を、80:20~99:1とすることができ、80:20~95:5が好ましく、85:15~90:10がより好ましい。
また、(A)ポリヒドロキシアミド化合物及び(D)フェノール性水酸基を含む化合物の含有量は、(C)架橋剤に含まれる官能基(反応基)数(例えば、メトキシメチル基数及び/又はメチロール基数)と、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれるフェノール性水酸基数との比(官能基(反応基)数:フェノール性水酸基)を120:100~200:100にするように調整することができる。このような比率とすることで、ネガ型感光性樹脂組成物の解像性と硬化後の絶縁信頼性をより優れたものとすることができる。
【0055】
(E)塩基性化合物を添加する場合の含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分の全質量を100質量%とした場合に、0.01~0.50質量%とすることができ、0.08~0.40質量%であることが好ましい。このような範囲とすることで、ネガ型感光性樹脂組成物を現像した後に、未露光部において現像残渣が発生することを抑制しやすくなる。
【0056】
(F)無機フィラーを添加する場合の含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物の固形分の全質量を100質量%とした場合に1質量%~50質量%とすることができ、10質量%~40質量%とすることが好ましい。このような範囲とすることで、ネガ型感光性樹脂組成物の現像性を維持しながら、ネガ型感光性樹脂組成物の硬化物を低熱膨張率とすることができる。
【0057】
3.ドライフィルム
本実施形態のドライフィルムは、基材と、この基材上に、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を用いて形成された樹脂層とを備える。また、樹脂層の保護のため、さらに樹脂層の表面に保護フィルムを積層してもよい。
【0058】
基材は、特に限定されないが、例えば、銅箔等の金属箔;ポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム等のフィルム;を挙げることができる。
【0059】
保護フィルムは、特に限定されないが、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、紙等を用いることができる。保護フィルムは、保護フィルムと樹脂層の密着力が、基材と樹脂層の密着力よりも低くなるものを選択することが好ましい。保護フィルムと樹脂層の密着力を、基材と樹脂層の密着力よりも低くするため、保護フィルムの表面に剥離処理を施したものを用いることができる。
【0060】
樹脂層の厚さは、特に限定されないが、用途に応じて、1~150μmとすることができる。樹脂層は、例えば、基材上にネガ型感光性樹脂組成物を塗布し、コンマコーター、ブレードコーター、リップコーター、ロッドコーター、スクイズコーター、リバースコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター又はスプレーコーター等を用い、樹脂層の厚さを調整し、乾燥させることで得ることができる。
【0061】
4.硬化物
本実施形態硬化物は、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物又はドライフィルムの樹脂層を硬化させたものである。硬化物としては、パターニングされた硬化物であってもよい。パターニングされた硬化物の製造方法の例として、以下の方法を挙げることができる。
【0062】
4-1.乾燥塗膜形成工程
乾燥塗膜形成工程は、本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し塗膜を形成し、その後乾燥させる工程である。乾燥塗膜形成工程は、ドライフィルムの樹脂層を基板上に転写することで基板上に乾燥塗膜を形成することも可能である。
【0063】
ネガ型感光性樹脂組成物の基板上への塗布方法は、特に限定されず、例えば、スピンコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、スクリーン印刷機等を用いて塗布する方法、スプレーコーターで噴霧塗布する方法、インクジェット法等を挙げることができる。塗布膜厚は特に限定されないが、例えば10μm以下、5μm以下、3μm以下とすることができる。膜厚を薄くすることにより、パターンのアスペクト比を維持しながら、より微細なL/Sのパターニングが可能となる。
【0064】
塗膜の乾燥方法は、特に限定されず、例えば、送風乾燥、オーブン又はホットプレートによる加熱乾燥、真空乾燥等が挙げられる。加熱乾燥を行う場合の条件は、例えば、加熱温度70~140℃、乾燥時間1~30分である。
【0065】
ドライフィルムの樹脂層の基材上への転写は、真空ラミネーター等を用いて、加圧及び加熱下で行うことが好ましい。加熱温度としては、例えば、60~100℃とすることができる。
【0066】
基板は、特に限定されず、例えば、回路形成されたプリント配線板、フレキシブルプリント配線板、半導体素子が形成されたウエハとすることができる。
【0067】
4-2.露光工程
露光工程は、乾燥塗膜形成工程において形成された乾燥塗膜に対し、所望するパターン形成が可能なフォトマスクを介して放射線を照射することにより、露光部の(B)光酸発生剤を感光させ、活性種を発生させる工程である。パターニングが不要の場合にはフォトマスクを介す必要はない。また、直接描画装置を用いて、直接レーザーでパターンを描画してもよい。
【0068】
放射線の波長としては、(B)光酸発生剤が活性化できる波長のものが用いられ、微細化されたパターニングを行うためには、最大波長が410nm以下のものが好ましい。照射エネルギーは、形成した乾燥塗膜の厚さ等により調整することができ、例えば、10~1000mJ/cmとすることができる。露光光源としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ、KRFレーザー等を用いることができる。
【0069】
4-3.PEB工程
PEB工程は、露光工程で露光された乾燥塗膜を加熱処理し、乾燥塗膜の露光部(以降、露光部と略す場合がある)に耐現像性を付与する工程である。PEB工程では、露光部にて(B)光酸発生剤より発生した酸を活性種として、(A)ポリヒドロキシアミド化合物や(D)フェノール性水酸基を含む化合物と(C)架橋剤との架橋反応が進行し、露光部が現像液に対して不溶化する。PEB工程における加熱温度は、90~150℃とすることができ、加熱時間は、0.5~10分とすることができる。加熱は、ホットプレートや加熱炉等の公知の方法で行うことができる。
【0070】
4-4.現像工程
現像工程は、PEB工程で加熱した乾燥塗膜を現像液により処理し、乾燥塗膜の未露光部を現像液に溶解、除去することによって、パターン塗膜を得る工程である。現像方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、回転スプレー法、パドル法、超音波処理をともなう浸せき法等を挙げることができる。
【0071】
現像液は、公知のものを用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の四級アンモニウム塩類等の水溶液を挙げることができる。必要に応じて、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を添加することができる。
【0072】
現像液による処理の後、必要に応じて塗膜をリンス液により洗浄してパターン塗膜を得ることができる。リンス液は、特に限定されず、純水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で、又は、複数を任意の比率で組み合わせて用いることができる。
【0073】
4-5.現像後加熱工程
現像後加熱工程は、現像工程で形成されたパターン塗膜を加熱して、パターン塗膜の硬化を完了し、硬化パターン塗膜(硬化物)を得る工程である。加熱温度は、150~200℃、加熱時間は、1~120分とすることができる。加熱は、ホットプレートやイナートオーブン等の公知の方法で行うことができ、窒素雰囲気下にて加熱することが望ましい。
【0074】
5.ネガ型感光性樹脂組成物の用途
本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、表示装置、半導体素子、電子部品、光学部品、建築材料等の形成材料として好適に用いることができる。半導体素子の形成材料は、例えば、レジスト材料、バッファーコート膜、ウエハレベルパッケージ(WLP)の再配線層用絶縁膜である。本実施形態のネガ型感光性樹脂組成物は、L/Sが3.0μm/3.0μm以下かつアスペクト比1.0以上である極めて微細な配線を形成することができることから、特にダマシン法を用いた再配線層形成工程に好ましく用いることができる。また、電子部品の形成材料として、例えば、プリント配線板、層間絶縁膜、配線被覆膜等が挙げられる。
【実施例0075】
本開示技術を、実施例を用いてより詳細に説明するが、本開示技術は実施例に限定されるものではない。
【0076】
実施例及び比較例で使用した各成分は、以下のとおりである。
<(A)ポリヒドロキシアミド化合物>
(合成例1:実施例のポリヒドロキシアミド化合物(A-1)の合成例)
攪拌機、温度計を備えた500mLフラスコ中で、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)21.62g(59.03mmol)を、N-メチルピロリドン(NMP)140g中で撹拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)12.09g(40.97mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。室温で18時間撹拌後、室温にて5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物5.93g(36.13mmol)加え、さらに3時間攪拌を続けた。撹拌した溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。得られた固体を酢酸エチル160gに溶解させた。ここに陰イオン交換樹脂(オルガノ社アンバーリストB-20)20gを投入し、1時間激しく攪拌した。撹拌した溶液を濃縮した後、大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥して両末端がカルボキシル基のポリヒドロキシアミド化合物(A-1)を得た。
得られたポリヒドロキシアミド化合物(A-1)は、重量平均分子量(Mw)が8,613、数平均分子量(Mn)が4,557、分子量分散度(PDI)が1.9、塩素イオン濃度が3.3ppm、フェノール性水酸基当量が294g/eq、カルボキシル基当量が2,279g/eqであった。
【0077】
(A-1)ポリヒドロキシアミド化合物
【化8】
【0078】
(合成例2:実施例のポリヒドロキシアミド化合物(A-2)の合成例)
攪拌機、温度計を備えた500mLフラスコ中で、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)14.93g(44.39mmol)及び3-アミノフェノール4.90g(44.84mmol)を、N-メチルピロリドン(NMP)79g中で撹拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)16.41g(55.61mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。室温で18時間撹拌後、溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。得られた固体を酢酸エチル135gに溶解させた。ここに陰イオン交換樹脂 (オルガノ社アンバーリストB-20)18gを投入し、1時間激しく攪拌した。撹拌した溶液を濃縮した後、大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥して両末端がフェノール性水酸基のポリヒドロキシアミド化合物(A-2)を得た。
得られたポリヒドロキシアミド化合物(A-2)は、重量平均分子量(Mw)が4,580、数平均分子量(Mn)が1,696、分子量分散度(PDI)が2.7、塩素イオン濃度が2.3ppm、フェノール性水酸基当量が218g/eqであった。
【0079】
(A-2)ポリヒドロキシアミド化合物
【化9】
【0080】
(合成例3:実施例のポリヒドロキシアミド化合物(A-3)の合成例)
攪拌機、温度計を備えた500mLフラスコ中で、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)14.93g(44.39mmol)及び3-アミノフェノール2.45g(22.42mmol)を、N-メチルピロリドン(NMP)79g中で撹拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)16.41g(55.61mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。室温で18時間撹拌後、溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。得られた固体を酢酸エチル79gに溶解させた。ここに陰イオン交換樹脂 (オルガノ社アンバーリストB-20)17gを投入し、1時間激しく攪拌した。撹拌した溶液を濃縮した後、大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥して両末端がフェノール性水酸基のポリヒドロキシアミド化合物(A-3)を得た。
得られたポリヒドロキシアミド化合物(A-3)は、重量平均分子量(Mw)が9,222、数平均分子量(Mn)が3,561、分子量分散度(PDI)が2.6、塩素イオン濃度が3.1ppm、フェノール性水酸基当量が252g/eqであった。
【0081】
(A-3)ポリヒドロキシアミド化合物
【化10】
【0082】
(合成例4~8:実施例のポリヒドロキシアミド化合物(A-4~A-8)の合成例)
2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)、3-アミノフェノール、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)の配合量を表1に記載の割合とした以外は、合成例3と同様の方法によりポリヒドロキシアミド化合物を合成した。ポリヒドロキシアミド化合物(A-4~A-8)は、両末端にフェノール性水酸基を有するものであった。また、得られたポリヒドロキシアミド化合物の重量平均分子量、数平均分子量、分子量分散度も表1に示した。
【0083】
【表1】
【0084】
(合成例9:実施例のポリヒドロキシアミド化合物(A-9)の合成例)
攪拌機、温度計を備えた500mLフラスコ中で、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)18.90g(51.60mmol)を、N-メチルピロリドン(NMP)80g中で撹拌溶解した。その後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)14.28g(48.40mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。室温で18時間撹拌後、室温にて5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物1.05g(6.40mmol)加え、さらに3時間攪拌を続けた。撹拌した溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。得られた固体を酢酸エチル140gに溶解させた。ここに陰イオン交換樹脂(オルガノ社アンバーリストB-20)8gを投入し、1時間激しく攪拌した。撹拌した溶液を濃縮した後、大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥して両末端がカルボキシル基のポリヒドロキシアミド化合物を得た。
得られたポリヒドロキシアミド化合物は、重量平均分子量(Mw)が32,992、数平均分子量(Mn)が12,310、分子量分散度(PDI)が2.7、塩素イオン濃度が2.8ppm、フェノール性水酸基当量が294g/eq、カルボキシル基当量が6,155g/eqであった。
【0085】
ポリヒドロキシアミド化合物
【化11】
【0086】
(合成例10:比較例のポリアミド酸化合物(A-10)の合成例)
攪拌機、温度計を備えた500mLフラスコ中で、酢酸-2-メトキシ-1-メチルエチル(PGMEA)96g、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)14.87g(46.45mmol)を仕込み撹拌溶解した。モノマーが完全に溶解したことを確認した後、6FDA23.79g(53.55mmol)を固体のまま5分間かけて加え、室温で1時間撹拌を続けた。その後、攪拌溶液に5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物2.33g(14.20mmol)を固体のまま加え、室温で16時間攪拌した。撹拌した溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。減圧乾燥して両末端がカルボキシル基のポリアミド酸化合物を得た。
得られたポリアミド酸化合物は、重量平均分子量(Mw)が10,324、数平均分子量(Mn)が4,382、分子量分散度(PDI)が2.4、塩素イオン濃度が2.1ppm、カルボキシル基当量が382g/eqであった。
【0087】
ポリアミド酸化合物
【化12】
【0088】
(合成例11:比較例のポリヒドロキシアミド-ポリアミド酸共重合化合物(A-11)の合成例)
攪拌機、温度計を備えた500mLフラスコ中で、N-メチルピロリドン(NMP)80g中、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)13.97g(38.15mmol)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)5.24g(16.35mmol)を仕込み撹拌溶解した。モノマーが完全に溶解したことを確認した後、フラスコを氷浴に浸し、フラスコ内を0~5℃に保ちながら、6FDA8.11g(18.26mmol)、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(DEDC)9.40g(31.85mmol)を固体のまま10分間かけて加え、氷浴中で30分間撹拌した。その後、攪拌溶液に5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物2.95g(18.00mmol)を固体のまま加え、室温で3時間攪拌した。撹拌した溶液を大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。得られた固体を酢酸エチル150gに溶解させた。ここに陰イオン交換樹脂(オルガノ社アンバーリストB-20)38gを投入し、1時間激しく攪拌した。撹拌した溶液を濃縮した後、大量のイオン交換水に投入し、析出物を回収した。析出した固体を回収後、減圧乾燥して両末端がカルボキシル基のポリヒドロキシアミド-ポリアミド酸共重合化合物を得た。ポリヒドロキシアミド-ポリアミド酸共重合化合物(A-11)中の式(1)で示される繰返構造単位の割合の理論値は70%である。
得られたポリヒドロキシアミド-ポリアミド酸共重合化合物は、重量平均分子量(Mw)が11,447、数平均分子量(Mn)が5,283、分子量分散度(PDI)が2.2、塩素イオン濃度が4.2ppm、フェノール性水酸基当量が458g/eq、カルボキシル基当量が1,069g/eqであった。
【0089】
<(B)光酸発生剤>
(B-1)PAG-103(BASF社製オキシムスルホネート化合物)
【化13】
【0090】
(B-2)SP606(ADEKA社製ナフタルイミド化合物)
【化14】
【0091】
<(C)架橋剤>
(C-1)MW-390(日本カーバイド工業社製ヘキサメトキシメチルメラミン化合物)
【化15】
【0092】
<(D)フェノール性水酸基を含む化合物>
(D-1)VPS-2515(日本曹達社製ポリヒドロキシスチレン-スチレン共重合体、重量平均分子量(Mw):4,667、数平均分子量(Mn):2,593、分子量分散度(PDI):1.8、塩素イオン濃度:2.8ppm、フェノール性水酸基当量:140g/eq)
【0093】
<(E)塩基性化合物>
(E-1)トリエタノールアミン(TEA)
<(F)無機フィラー>
(F-1)Y50SV-AH2(アドマテックス社製球状シリカ、体積平均粒子径D50=50nm)
<界面活性剤>
BYK-310(ビックケミー社製、シリコン系界面活性剤)
<溶剤>
γ-ブチロラクトン(大伸化学社製)
シクロペンタノン(東京化成工業社製)
【0094】
<ネガ型感光性樹脂組成物の調製>
各成分を表2~4に示された量にて配合し、溶剤にてワニス中の不揮発成分の濃度が30%となるように溶解、調整することで、各実施例及び比較例のネガ型感光性樹脂組成物のワニスを得た。なお、表2~4における各成分の配合量のうち、溶剤の配合量以外は固形分質量を示す。また、ネガ型感光性樹脂組成物の原料の配合量から算出した架橋剤の官能基とフェノール性水酸基との当量比(NCHOCH基:OH基)を表2~4に示した。
【0095】
<評価>
得られた各実施例及び比較例のワニスを用いて以下の評価を行った。各評価結果を表2~4に示した。
【0096】
(エッジリンス性評価)
各実施例及び比較例のワニスをそれぞれSi基板へスピン塗布したのち、各基板を600rpmで回転させた状態で、各基板のエッジ部分(スピン塗布した際に各実施例及び比較例のワニスが塗布されている)にOK73シンナー(東京応化工業社)を45秒間ノズルより吐出させた。その後、各基板を1000rpmで5秒間回転させた。得られた基板について、基板エッジ部分の残膜について評価した。残膜が認められないものを「A」(良好)と、残膜が認められるものを「B」(不良)と評価した。
【0097】
(解像性評価)
・ライン/スペース(L/S)の測定、アスペクト比の測定
各実施例及び比較例のワニスをシリコンウエハ上にスピンコーターを用いて硬化後の膜厚が3.0μm又は3.5μmとなるように塗布し、ホットプレートを用いて110℃、3分乾燥させ、各実施例及び比較例のネガ型感光性樹脂組成物の乾燥塗膜を得た。この乾燥塗膜に線ステッパー(縮小投影露光装置:NSR-2005i9C(ニコン社製;NA(開口数)=0.5、σ=0.68、光源:高圧水銀灯ランプ))を用い、L/Sが0.5/0.5μm、0.6/0.6μm、0.7/0.7μm、0.8/0.8μm、1/1μm、1.2/1.2μm、1.5/1.5μm、1.7/1.7μm、2/2μm、3/3μm、4/4μm、5/5μmのテストパターンを露光し、ホットプレートにて140℃、60分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、2.38%TMAH水溶液を用いて、60秒間現像し30秒間超純水にてリンスを行い、30秒間スピン乾燥を行った。各実施例及び比較例のネガ型感光性樹脂組成物のパターンを有する試料を得た。なお、各実施例及び比較例のネガ型感光性樹脂組成物における露光条件(露光量及びフォーカス)は、各実施例及び比較例のネガ型感光性樹脂組成物ごとに最も解像性が良くなる条件を選択して行った。各実施例及び比較例の露光条件を表2~4に示した。
得られた各実施例及び比較例の試料を、パターンの長手方向に垂直な断面が観察できるように切断した。パターンの切断面を、走査型電子顕微鏡(観察倍率は10,000倍)を用いて観察し、正常にパターニングされている最小のL/Sを求めた。なお、各パターンが倒れることなく垂直にパターニングされている試料が正常にパターニングされていると判断した。
また、各実施例及び比較例のネガ型感光性樹脂組成物にて形成された最小のL/Sのパターンについて、アスペクト比(=膜厚÷最小L/Sのライン幅)を求めた。
また、正常にパターニングされている最小のL/Sについて前述した断面観察の際に、未露光部に現像残渣があるか否かについても合わせて観察を行った。わずかに現像残渣が見られた試料については、表2~4中の最小L/Sの欄に(残渣)と記載した。
【0098】
・ビア開口径の測定
コンタクト露光装置(光源:高圧水銀灯ランプ)を用い、開口径1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0、8.0、9.0、10.0、15.0、20.0μmのテストパターンを露光した。露光工程以外は上記のL/Sの測定と同様の方法で、パターニング可能な最小ビア開口径を求めた。わずかに現像残渣が見られた試料については、表2~4中の最小ビア開口径の欄に(残渣)と記載した。
【0099】
(絶縁信頼性評価)
各実施例及び比較例のワニスについて、京セラ社製のL/S=12/13μmの櫛場配線基板にスピンコーターを用いて膜厚20μmとなるよう塗布した。ホットプレートを用いて、110℃、5分乾燥させ、櫛場配線基板上に形成された各実施例及び比較例のネガ型感光性樹脂組成物塗膜を得た。この塗膜に高圧水銀灯ランプを用いて全面露光(1000mJ/cm)し、イナートオーブンにて窒素雰囲気下で、200℃、1時間加熱硬化を行った。その後、櫛場配線基板の電極部上の硬化物をカッターナイフにて除いた後、電源プラグをハンダ接続して絶縁信頼性評価基板とした。この評価基板について、130℃、85RH%の環境下で20V(配線12μmに対して、1.7V/μmとなる)の電圧を印加し、櫛場配線間(ネガ型感光性樹脂組成物からなる硬化物)の抵抗が10MΩ以下になるまでの時間を測定した。なお、櫛場配線間(ネガ型感光性樹脂組成物フィルム)の抵抗が10MΩ以下になった場合には、回路が故障したとみなされる。
なお測定結果に「>300h」と記載されている場合は、300時間を超えても、櫛場配線間(ネガ型感光性樹脂組成物フィルム)の抵抗が10MΩ以下にならなかったことを示す。また、「<20h」と記載されている場合には、20時間未満で櫛場配線間(ネガ型感光性樹脂組成物フィルム)の抵抗が10MΩ以下になったことを示す。
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】