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特開2025-5083二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム並びに炭酸塩の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005083
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム並びに炭酸塩の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/18 20060101AFI20250108BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20250108BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20250108BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
C01F11/18 B
B01D53/14 210
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105094
(22)【出願日】2023-06-27
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度から2023年度まで実施された国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の産業廃棄物中カルシウム等を用いた加速炭酸塩化プロセス研究開発に関する委託研究における産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004411
【氏名又は名称】日揮ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大谷 晃平
(72)【発明者】
【氏名】宮本 真二
(72)【発明者】
【氏名】河野 直弥
(72)【発明者】
【氏名】藤本 翔
(72)【発明者】
【氏名】倉本 美紀子
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G076
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC01
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA14
4D002CA06
4D002DA04
4D002DA05
4D002DA06
4D002DA07
4D002DA11
4D002DA12
4D002DA17
4D002DA31
4D002DA66
4D002EA01
4D002EA06
4D002EA07
4D002EA13
4D002FA02
4D002FA10
4D002GA03
4D002GB08
4D002GB09
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA02
4D020BA07
4D020BA11
4D020BA16
4D020BB03
4D020BC06
4D020BC10
4D020CB01
4D020CC09
4D020CD02
4D020DA01
4D020DB07
4D020DB08
4G076AA16
4G076AB09
4G076AB28
4G076BA30
4G076BC06
4G076BE11
4G076CA01
4G076DA02
4G076DA15
(57)【要約】
【課題】弱塩基と強酸の塩の損失を極力抑えながらも、アルカリ土類金属の炭酸塩の収率を向上させることのできる二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム、並びに炭酸塩の製造方法を提供する。
【解決手段】アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させてアルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製する第1工程(S1)と、
前記第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成する第2工程(S2)とを含み、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路を備えて、前記炭酸塩を生成する際に生じる液相を、前記炭酸塩を生成する際に、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として再利用する、二酸化炭素の固定化方法において、さらに特定の洗浄・返送工程を含むようにした。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させてアルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製する第1工程(S1)と、
前記第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成する第2工程(S2)と、
を含み、
前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路を備えて、前記炭酸塩を生成する際に生じる液相を、前記炭酸塩を生成する際に、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として再利用する、二酸化炭素の固定化方法において、
前記第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄する第1洗浄工程(SW1)と、
前記第1洗浄工程(SW1)で生じた第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)を、水(C)で洗浄する第2洗浄工程(SW2)と、
前記第1洗浄工程(SW1)で生じた液相を、前記第1工程(S1)に返送する第1返送工程(SR1)と、
前記第2洗浄工程(SW2)で生じた液相を膜濃縮処理して濃縮液と水とを生成し、前記濃縮液を前記第1工程(S1)に返送するとともに、前記水を前記水(C)として前記第2洗浄工程(SW2)に返送する第2返送工程(SR2)と、
をさらに含む、二酸化炭素の固定化方法。
【請求項2】
前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)は、塩化アンモニウム(NHCl)水溶液である、請求項1に記載の二酸化炭素の固定化方法。
【請求項3】
前記第2返送工程(SR2)において、前記第2洗浄工程(SW2)で生じた液相の水素イオン指数(pH)を5.0~7.0に調整する、請求項1又は2に記載の二酸化炭素の固定化方法。
【請求項4】
前記第2返送工程(SR2)において、前記膜濃縮処理が、電気透析法及び逆浸透膜法からなる群から選択される1種以上の方法により行われる、請求項1~3のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定化方法。
【請求項5】
アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させてアルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製するアルカリ土類金属抽出部と、
前記第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属炭酸塩を生成する生成部と、
を少なくとも備え、
前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路をさらに備えて、前記炭酸塩を生成する際に生じる液相を、前記炭酸塩を生成する際に、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として再利用する、二酸化炭素の固定化システムにおいて、
前記第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄する第1洗浄部と、
前記第1洗浄部で生じた第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)を、水(C)で洗浄する第2洗浄部と、
前記第1洗浄部で生じた液相を、前記アルカリ土類金属抽出部に返送する第1返送部と、
膜濃縮装置を備え、前記第2洗浄部で生じた液相に対して膜濃縮を行い、濃縮液と水とを生成し、前記濃縮液を前記アルカリ土類金属抽出部に返送するとともに、前記水を前記水(C2)として前記第2洗浄部に返送する第2返送部と、
をさらに備える、二酸化炭素の固定化システム。
【請求項6】
前記強酸及び弱塩基の塩(B1)は、塩化アンモニウム(NHCl)である、請求項5に記載の二酸化炭素の固定化システム。
【請求項7】
前記第2返送部において、前記第2洗浄部で生じた液相の水素イオン指数(pH)を5.0~7.0に調整する水素イオン指数調整部をさらに備える、請求項5又は6に記載の二酸化炭素の固定化システム。
【請求項8】
前記膜濃縮装置が、電気透析装置及び逆浸透膜装置からなる群から選択される1種以上である、請求項5~7のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定化システム。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか1項に記載の二酸化炭素の固定化方法を実施する工程を含む、炭酸塩の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム並びに炭酸塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の原因物質と言われている温室効果ガスの中でも、特に影響が大きいのが二酸化炭素(炭酸ガス)であり、大気中の二酸化炭素濃度の増大を防止することが地球温暖化抑制手段の1つとなりうる。そのため、化石資源の利用を制限して大気中への二酸化炭素の放出量を削減する技術についての研究が行われている。また、既に放出した大気中の二酸化炭素を吸収・固定する技術や、化石資源を燃焼した二酸化炭素を大気中に放出させることなく、あるいは大気中への放出を抑えつつ吸収・固定する技術について、日本を含む多くの国で盛んに研究されている。
【0003】
近年、二酸化炭素を吸収・固定する方法の1つとして、二酸化炭素を化学反応により炭酸塩として固定するというアイディアが提案されている。例えば特許文献1では、二酸化炭素を含むガスを、水、アルカリ土類金属含有物(例えば鉄鋼スラグ)、及び弱塩基と強酸の塩から得られる水溶液に接触させて、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-097072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1で提案されている方法では、弱塩基と強酸の塩の損失が大きいため無駄が多く、また、アルカリ土類金属の炭酸塩の収率(投入したアルカリ土類金属含有物からのアルカリ土類金属の回収率)も十分ではなく、さらなる改善の余地があると考えられた。
【0006】
そこで、本発明は、弱塩基と強酸の塩の損失を極力抑えながらも、アルカリ土類金属の炭酸塩の収率を向上させることのできる二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム、並びに炭酸塩の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、下記[1]~[3]が提供される。
[1]
アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させてアルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製する第1工程(S1)と、
前記第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成する第2工程(S2)と、
を含み、
前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路を備えて、前記炭酸塩を生成する際に生じる液相を、前記炭酸塩を生成する際に、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として再利用する、二酸化炭素の固定化方法において、
前記第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄する第1洗浄工程(SW1)と、
前記第1洗浄工程(SW1)で生じた第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)を、水(C)で洗浄する第2洗浄工程(SW2)と、
前記第1洗浄工程(SW1)で生じた液相を、前記第1工程(S1)に返送する第1返送工程(SR1)と、
前記第2洗浄工程(SW2)で生じた液相を膜濃縮処理して濃縮液と水とを生成し、前記濃縮液を前記第1工程(S1)に返送するとともに、前記水を前記水(C)として前記第2洗浄工程(SW2)に返送する第2返送工程(SR2)と、
をさらに含む、二酸化炭素の固定化方法。
[2]
アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させてアルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製するアルカリ土類金属抽出部と、
前記第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属炭酸塩を生成する生成部と、
を少なくとも備え、
前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路をさらに備えて、前記炭酸塩を生成する際に生じる液相を、前記炭酸塩を生成する際に、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として再利用する、二酸化炭素の固定化システムにおいて、
前記第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄する第1洗浄部と、
前記第1洗浄部で生じた第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)を、水(C)で洗浄する第2洗浄部と、
前記第1洗浄部で生じた液相を、前記アルカリ土類金属抽出部に返送する第1返送部と、
膜濃縮装置を備え、前記第2洗浄部で生じた液相に対して膜濃縮を行い、濃縮液と水とを生成し、前記濃縮液を前記アルカリ土類金属抽出部に返送するとともに、前記水を前記水(C2)として前記第2洗浄部に返送する第2返送部と、
をさらに備える、二酸化炭素の固定化システム。
[3]
上記[1]に記載の二酸化炭素の固定化方法を実施する工程を含む、炭酸塩の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、弱塩基と強酸の塩の損失を極力抑えながらも、アルカリ土類金属の炭酸塩の収率を向上させることのできる二酸化炭素の固定化方法及び固定化システム、並びに炭酸塩の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の二酸化炭素の固定化方法の一例を示す概略図である。
図2】本実施形態の二酸化炭素の固定化システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載された数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。例えば、数値範囲として「A~B」及び「C~D」が記載されている場合、「A~D」及び「C~B」の数値範囲も、本発明の範囲に含まれる。
また、本明細書に記載された数値範囲「下限値~上限値」は、特に断りのない限り、下限値以上、上限値以下であることを意味する。
また、本明細書において、実施例の数値は、上限値又は下限値として用いられ得る数値である。
なお、本明細書において、「アルカリ土類金属」とは、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、及びバリウム(Ba)を意味する。
【0011】
[本実施形態の二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムの態様]
本実施形態の二酸化炭素の固定化方法は、図1に示すように、大まかには、第1工程(S1)、第2工程(S2)、及び洗浄・返送工程から構成される。
第1工程(S1)では、アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させて、アルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製する。なお、図1中、「AE」は「アルカリ土類金属」を意味する。
第2工程(S2)では、第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成する。
なお、本実施形態の二酸化炭素の固定化方法では、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路を備えて、炭酸塩を生成する際に生じる液相を、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として、炭酸塩を生成する際に再利用する。
そして、本実施形態の二酸化炭素の固定化方法では、洗浄・返送工程をさらに含む。
洗浄・返送工程の詳細は、下記のとおりである。
・第1洗浄工程(SW1):第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄する。
・第2洗浄工程(SW2):第1洗浄工程(SW1)で生じた第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)を、水(C)で洗浄する。
・第1返送工程(SR1):第1洗浄工程(SW1)で生じた液相を、第1工程(S1)に返送する。
・第2返送工程(SR2):第2洗浄工程(SW2)で生じた液相を膜濃縮処理して濃縮液と水とを生成し、濃縮液を第1工程(S1)に返送するとともに、水を水(C)として第2洗浄工程(SW2)に返送する。
【0012】
本実施形態の二酸化炭素の固定化方法は、例えば、図2に示す二酸化炭素の固定化システム1により実施される。図2に示す二酸化炭素の固定化システム1は、大まかには、アルカリ土類金属抽出部10、生成部40、及び洗浄・返送部100を少なくとも備える。
アルカリ土類金属抽出部10では、アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させて、アルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製する。
生成部40では、前記第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成する。
なお、図2に示す二酸化炭素の固定化システム1では、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路40aをさらに備えて、炭酸塩を生成する際に生じる液相を、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として、炭酸塩を生成する際に再利用する。
そして、洗浄・返送部100は、少なくとも下記構成を備える。
・第1洗浄部20:第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄する。
・第2洗浄部30:第1洗浄部20で生じた第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)を、水(C)で洗浄する。
・第1返送部25:第1洗浄部20で生じた液相を、アルカリ土類金属抽出部10に返送する。
・第2返送部60:膜濃縮装置61を備え、第2洗浄部30で生じた液相に対して膜濃縮を行い、濃縮液と水とを生成し、濃縮液を前記アルカリ土類金属抽出部10に返送するとともに、水を前記水(C2)として第2洗浄部30に返送する。
【0013】
以下、本実施形態の二酸化炭素の固定化方法及び固定化システムについて、詳細に説明する。
【0014】
<第1工程(S1)>
第1工程(S1)では、アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させてアルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製する。
第1工程(S1)では、第2工程(S4)においてアルカリ土類金属の炭酸塩を生成するためのアルカリ土類金属源として、アルカリ土類金属含有物(A1)に含まれるアルカリ土類金属を抽出する。
第1工程(S1)は、例えば、図2に示す二酸化炭素の固定化システム1のアルカリ土類金属抽出部10にて実施される。
【0015】
アルカリ土類金属含有物(A1)としては、例えば、廃コンクリート、セメント、モルタル、鉄鋼スラグ、石灰石、カルシウム含有岩石、廃石膏、製紙スラッジ、生コンスラッジ、石炭流動層ボイラー燃焼灰、及びごみ焼却灰からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
ここで、建材、セメント、製紙、プラスチック、ゴム、食品、及び医薬品等といった幅広い分野で有用である炭酸カルシウムを製造する観点から、アルカリ土類金属含有物(A1)は、アルカリ土類金属としてカルシウムを含有するカルシウム含有物であることが好ましい。
また、アルカリ土類金属含有物(A1)からのアルカリ土類金属抽出効率向上の観点から、アルカリ土類金属含有物(A1)は、破砕処理物又は粉砕処理物であることが好ましく、粉砕処理物であることが好ましい。具体的には、アルカリ土類金属含有物(A1)は、粒径が、好ましくは1,000μm以下、より好ましくは500μm以下、更に好ましくは300μm以下、より更に好ましくは100μm以下である。
【0016】
本実施形態で用いられる塩としては、強酸及び弱塩基から形成される塩であれば特に制限なく用いることができる。
強酸としては、例えば、塩酸(HCl)、硫酸(HSO)、硝酸(HNO)、クロム酸(HCrO)、過マンガン酸(HMnO)、ヨウ化水素酸(HI)、臭化水素酸(HBr)、過塩素酸(HClO)、塩素酸(HClO)、ヨウ素酸(HIO)、臭素酸(HBrO)、メタスルフォン酸(CHSOH)、トリフルオロメタスルフォン酸(CFSOH)、ベンゼンスルフォン酸(CSOH)等が挙げられる。
弱塩基としては、例えばアンモニア(NH)、メチルアミン(CHNH)、アニリン(CNH)、ピリジン(CN)、またはヒドラジン(N)、メチルヒドラジン、エチルヒドラジン等のヒドラジン誘導体等の有機塩基および水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化鉄(Fe(OH))、水酸化銅(Cu(OH))、水酸化亜鉛(Zn(OH))、水酸化マグネシウム(Mg(OH))等が挙げられる。
強酸及び弱塩基から形成される塩としては、例えばNHCl、NHNOCu(NO、CuCl、MgCl、Mg(NO、Zn(NO、Fe(NO、AlCl、塩酸ヒドラジン、硫酸ヒドラジン等が挙げられる。これらの中でも、塩化アンモニウム(NHCl)が好ましい。すなわち、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)は、塩化アンモニウム(NHCl)水溶液であることが好ましい。
例えば、強酸及び弱塩基から形成される塩として、塩化アンモニウム(NHCl)を用いる場合、アルカリ土類金属(AE)は、下記反応式(1)等により抽出される。
AEO(s)+2NHCl(l)→AECl(l)+2NH(l)+HO ・・・(1)
なお、上記反応式(1)において、NHの揮発が生じた場合、揮発したNHは回収し、炭酸塩を生成させる前に、第1溶液(X1)に供給して溶解させることが好ましい。
【0017】
第1工程(S1)で用いられる強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の塩の濃度は、アルカリ土類金属含有物(A1)からのアルカリ土類金属抽出効率向上の観点から、好ましくは5モル/L~0.1モル/L、より好ましくは1モル/L~0.1モル/Lである。
【0018】
また、アルカリ土類金属抽出部10においては、アルカリ土類金属含有物(A1)からのアルカリ土類金属抽出効率向上の観点から、アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させて得られた第1溶液(X1)に対し、撹拌及び超音波印加からなる群から選択される1種以上の処理を施すようにしてもよい。
【0019】
第1工程(S1)におけるアルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)との配合比率(固液比:S/L)は、アルカリ土類金属含有物(A1)からのアルカリ土類金属抽出効率向上の観点から、質量比で、好ましくは20g/L~1000g/L、より好ましくは、80g/L~400g/Lである。
【0020】
第1工程(S1)における強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の温度は、アルカリ土類金属含有物(A1)からのアルカリ土類金属抽出効率向上の観点から、好ましくは10℃以上である。また、アルカリ土類金属含有物(A1)からのアルカリ土類金属抽出にかかるエネルギーを抑制して系全体にかかるエネルギーの低減を図る観点から、好ましくは100℃以下、好ましくは25℃以下である。
【0021】
第1工程(S1)において、アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)との接触時間は、上記条件に応じて適宜設定される。
【0022】
第1工程(S1)で調製された、アルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)は、第2工程(S2)に供される。
第1溶液(X1)は、例えば、図2に示す二酸化炭素の固定化システム1の第1溶液(X1)の送液管10aを介して、生成部40に送液される。
なお、アルカリ土類金属イオン抽出後の残渣(第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2))は、第1溶液(X1)から除去され、例えばベルトコンベア等の供給装置70aにより第1洗浄工程(SW1)に供される。
【0023】
<第2工程(S2)>
第2工程(S2)では、第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成する。
この工程により、二酸化炭素が炭酸塩として固定される。また、炭酸塩を生成する際に生じる液相は、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として、第1工程(S1)に返送する。これにより、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)を循環利用することができる。
ここで、例えば、強酸及び弱塩基から形成される塩として、塩化アンモニウム(NHCl)を用いる場合、炭酸塩は、下記反応式(2)等により生成する。
AECl(l)+2NH(l)+HO+CO(g)→AECO(s)↓+2NHCl(l) ・・・(2)
【0024】
二酸化炭素を含むガス(Y1)としては、例えば、空気、燃焼排ガス等が挙げられる。
燃焼排ガスとしては、例えば、製鉄所等の各種工場から排出される燃焼排ガス、LNG火力発電所から排出される燃焼排ガス、石炭火力発電所から排出される燃焼排ガス、製油所の水素製造装置から排出されるオフガスが挙げられる。
ここで、二酸化炭素を含むガス(Y1)は、例えば、図2に示す処理装置50により、二酸化炭素を高濃度化した後、生成部40に供することが好ましい。
処理装置50としては、例えばアミン吸収液等を用いた化学吸収法を実施するための化学吸収装置等が挙げられる。
なお、二酸化炭素を含むガスが燃焼排ガスのように高温のガスである場合、燃焼排ガスを冷却して適切な温度に低下させた後、処理装置50に供給するようにしてもよい。燃焼排ガスの冷却方法としては、例えば熱交換器を用いた方法等が挙げられる。また、燃焼排ガスは、必要に応じて、脱硝、集塵、及び脱硫から選択される1種以上の処理を施した後、処理装置50に供給するようにしてもよい。
【0025】
二酸化炭素を含むガス(Y1)は、流路50aを介して生成部40に供給される。第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させる方法は、特に制限されないが、例えば、第1溶液(X1)に二酸化炭素を含むガス(Y1)を吹き込む方法等が挙げられる。
【0026】
<第1洗浄工程(SW1)>
第1洗浄工程(SW1)では、第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、系内を循環している強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄する。
第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)には、第1工程(S1)において、アルカリ土類金属含有物(A1)から溶出した、アルカリ土類金属を含む溶出物(例えば、AECl等)が付着している。
第1洗浄工程(SW1)では、第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄することにより、第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)からアルカリ土類金属を含む溶出物を除去する。そして、後述する第1返送工程(SR1)によって、第1洗浄工程(SW1)で生じた液相(アルカリ土類金属を含む溶出物が溶け込んだ強酸及び弱塩基の塩(B1)の水溶液)を第1工程(S1)に返送することで、第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)に付着していたアルカリ土類金属を含む溶出物を、炭酸塩生成のための原料として利用することが可能となる。これにより、炭酸塩の収量を向上させることができる。
また、第1洗浄工程(SW1)によって、アルカリ土類金属を含む溶出物が第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)から除去されて低減されている。そのため、第2洗浄工程(SW2)に供される第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)を、第2洗浄工程(SW2)において水(C)で洗浄した際に生じる液相中には、アルカリ土類金属を含む溶出物がほとんど含まれていない。したがって、膜濃縮処理を行う際に、アルカリ土類金属を含む溶出物に起因する膜の目詰まりを抑制することができ、膜濃縮処理を良好に実施し得る。なお、当該溶出物としては、濃縮液側の塩濃度が上昇することに伴う低溶解成分(例えば、炭酸カルシウム、フッ化カルシウム、硫酸カルシウム、ケイ酸塩等)の析出により生じる溶出物が挙げられる。
【0027】
第1洗浄工程(SW1)は、例えば、図2に示す二酸化炭素の固定化システム1の第1洗浄部20において実施される。
洗浄方法は特に制限されず、第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを適宜接触させるようにすればよいが、洗浄効率の向上の観点から向流接触等を行うことが好ましく、多段向流接触等を行うことがより好ましい。
洗浄後の残渣(第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3))は、固液分離後、例えばベルトコンベア等の供給装置70bにより第2洗浄工程(SW2)に供される。
また、洗浄後に生じた液相は、第2返送部25により、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路40aを介して、第1工程(S1)に返送される。
【0028】
ここで、第1洗浄工程(SW1)は、1回のみ実施してもよいが、アルカリ土類金属を含む溶出物をより低減しやすくする観点から、2回以上実施することが好ましい。具体的には、抽出後の液相中のカルシウム濃度が1,000mg/L以下となるように洗浄回数を調整することが好ましい。
【0029】
<第2洗浄工程(SW2)>
第2洗浄工程(SW2)では、第1洗浄工程(SW1)で生じた第2のアルカリ土類金属含有物質残渣(A3)を、水(C)で洗浄する。
【0030】
前記第1洗浄工程(SW1)で生じた第2のアルカリ土類金属含有物質残渣(A3)には、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)が付着している。
第2洗浄工程(SW2)では、第2のアルカリ土類金属含有物質残渣(A3)を、水(C)で洗浄することにより、第2のアルカリ土類金属含有物質残渣(A3)から強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)を除去する。そして、後述する第2返送工程(SR2)によって、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)を第1工程(S1)に返送することで、強酸及び弱塩基の塩を回収して、強酸及び弱塩基の塩の損失を抑えながら、二酸化炭素の固定化を実施することができる。
【0031】
第2洗浄工程(SW2)は、例えば、図2に示す二酸化炭素の固定化システム1の第2洗浄部30において実施される。
洗浄方法は特に制限されず、第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)と水(C)とを適宜接触させるようにすればよいが、洗浄効率の向上の観点から向流接触等を行うことが好ましく、多段向流接触等を行うことがより好ましい。
また、洗浄後に生じた液相は、送液管30aを介して、膜濃縮装置61に供される。
【0032】
<第1返送工程(SR1)>
第1返送工程(SR1)では、第1洗浄工程(SW1)で生じた液相を、第1工程(S1)に返送する。具体的には、例えば、図2に示す二酸化炭素の固定化システム1の第1返送部25及び強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路40aを介して、強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として第1工程(S1)に返送される。
【0033】
第1返送工程(SR1)によって、第1洗浄工程(SW1)で生じた液相(強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)にアルカリ土類金属を含む溶出物が溶け込んだ液相)を第1工程(S1)に返送することで、第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)に付着していたアルカリ土類金属を含む溶出物を、炭酸塩生成のための原料として利用することが可能となる。これにより、炭酸塩の収量を向上させることができる。
【0034】
<第2返送工程(SR2)>
第2返送工程(SR2)では、第2洗浄工程(SW2)で生じた液相(強酸及び弱塩基の塩の希薄水溶液)に対して膜濃縮を行い、濃縮液と水とを生成し、濃縮液を第1工程(S1)に返送するとともに、水を水(C2)として第2洗浄工程(SW2)に返送する。
これにより、強酸及び弱塩基の塩を回収して再利用することができ、しかも水は第2洗浄工程(SW2)において用いることができるため、二酸化炭素の固定化を行うための無駄のない系を成立させることができる。
【0035】
ここで、第2洗浄工程(SW2)で生じた液相(強酸及び弱塩基の塩の希薄水溶液)に対して膜濃縮を行う際には、当該液相に酸(例えば、好ましくは塩酸等)を添加し、膜濃縮に適したpHに調整することが好ましい。具体的には、水素イオン指数調整部30bにより、第2洗浄工程(SW2)で生じた液相(強酸及び弱塩基の塩の希薄水溶液)のpHを5.0~7.0に調整することが好ましく、pHを5.5~6.5に調整することがより好ましい。これにより、膜濃縮処理を良好に実施することができる。しかも、膜濃縮処理に適したpHに調整することで、第1工程(S1)において要求される強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)のpHと、膜濃縮後の濃縮液のpHが近接又は一致し、第1工程(S1)におけるアルカリ土類金属の抽出を効率よく行うことができる。つまり、pHの調整によって、膜濃縮処理を良好に実施しながらも、濃縮液に対して特定の処理を必須とすることなく、第1工程(S1)に適切なpHを有する濃縮液を供給することができる。
【0036】
膜濃縮装置61は、電気透析処理及び逆浸透膜処理からなる群から選択される1種以上の処理を行うことのできる装置が好ましく挙げられる。電気透析処理を行う装置としては、例えばAGCエンジニアリング株式会社製の電気透析実験装置CH0(3室)型、AGCエンジニアリング株式会社製の3室型電気透析装置等が挙げられる。逆浸透膜処理行う装置としては、例えば東洋紡株式会社製の逆浸透膜実験装置ホロセップミニ(登録商標)ラボ試験機(型式U5-BCX)、東洋紡株式会社製ホロセップ(登録商標)逆浸透膜装置等が挙げられる。
膜濃縮装置61にて得られた水は、送液管63を介し、水(C)として第2洗浄部30に供給される。また、膜濃縮装置61で得られた濃縮液は、送液管62を介して、第1工程(S1)に供される。
【0037】
[炭酸塩の製造方法]
既述のように、本実施形態の二酸化炭素の固定化方法によれば、アルカリ土類金属の炭酸塩を回収することができる。したがって、本発明によれば、本実施形態の二酸化炭素の固定化方法を用いた、炭酸塩の製造方法も提供される。
アルカリ土類金属の炭酸塩は、各種用途として有用である。
例えば、炭酸カルシウムは、製紙、ゴム、プラスチック、食品、及び化粧品等の広範囲な工業分野で、充填剤、顔料、及び増量剤などとして利用することができる。
また、炭酸ストロンチウムは、ブラウン管及びフェライト磁石の原料等として利用することができる。
さらに、炭酸バリウムは、電子材料用の原料等として利用することができる。
【0038】
[提供される本発明の一態様]
本発明の一態様では、下記[1]~[9]が提供される。
[1]
アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させてアルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製する第1工程(S1)と、
前記第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属の炭酸塩を生成する第2工程(S2)と、
を含み、
前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路を備えて、前記炭酸塩を生成する際に生じる液相を、前記炭酸塩を生成する際に、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として再利用する、二酸化炭素の固定化方法において、
前記第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄する第1洗浄工程(SW1)と、
前記第1洗浄工程(SW1)で生じた第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)を、水(C)で洗浄する第2洗浄工程(SW2)と、
前記第1洗浄工程(SW1)で生じた液相を、前記第1工程(S1)に返送する第1返送工程(SR1)と、
前記第2洗浄工程(SW2)で生じた液相を膜濃縮処理して濃縮液と水とを生成し、前記濃縮液を前記第1工程(S1)に返送するとともに、前記水を前記水(C)として前記第2洗浄工程(SW2)に返送する第2返送工程(SR2)と、
をさらに含む、二酸化炭素の固定化方法。
[2]
前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)は、塩化アンモニウム(NHCl)水溶液である、上記[1]に記載の二酸化炭素の固定化方法。
[3]
前記第2返送工程(SR2)において、前記第2洗浄工程(SW2)で生じた液相の水素イオン指数(pH)を5.0~7.0に調整する、上記[1]又は[2]に記載の二酸化炭素の固定化方法。
[4]
前記第2返送工程(SR2)において、前記膜濃縮処理が、電気透析法及び逆浸透膜法からなる群から選択される1種以上の方法により行われる、上記[1]~[3]のいずれか1つに記載の二酸化炭素の固定化方法。
[5]
アルカリ土類金属含有物(A1)と強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)とを接触させてアルカリ土類金属イオンを含む第1溶液(X1)を調製するアルカリ土類金属抽出部と、
前記第1溶液(X1)と二酸化炭素を含むガス(Y1)とを接触させて、アルカリ土類金属炭酸塩を生成する生成部と、
を少なくとも備え、
前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)の循環経路をさらに備えて、前記炭酸塩を生成する際に生じる液相を、前記炭酸塩を生成する際に、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として再利用する、二酸化炭素の固定化システムにおいて、
前記第1溶液(X1)から回収した第1のアルカリ土類金属含有物残渣(A2)を、前記強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)で洗浄する第1洗浄部と、
前記第1洗浄部で生じた第2のアルカリ土類金属含有物残渣(A3)を、水(C)で洗浄する第2洗浄部と、
前記第1洗浄部で生じた液相を、前記アルカリ土類金属抽出部に返送する第1返送部と、
膜濃縮装置を備え、前記第2洗浄部で生じた液相に対して膜濃縮を行い、濃縮液と水とを生成し、前記濃縮液を前記調製部に返送するとともに、前記水を前記水(C2)として前記第2洗浄部に返送する第2返送部と、
をさらに備える、二酸化炭素の固定化システム。
[6]
前記強酸及び弱塩基の塩(B1)は、塩化アンモニウム(NHCl)である、上記[5]に記載の二酸化炭素の固定化システム。
[7]
前記第2返送部において、前記第2洗浄部で生じた液相の水素イオン指数(pH)を5.0~7.0に調整する水素イオン指数調整部をさらに備える、上記[5]又は[6]に記載の二酸化炭素の固定化システム。
[8]
前記膜濃縮装置が、電気透析装置及び逆浸透膜装置からなる群から選択される1種以上である、上記[5]~[7]のいずれか1つに記載の二酸化炭素の固定化システム。
[9]
上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の二酸化炭素の固定化方法を実施する工程を含む、炭酸塩の製造方法。
【実施例0039】
本発明について、以下の実施例により具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
[比較例1~2、実施例1~2]
下記比較例1~2及び実施例1~2を実施し、強酸及び弱塩基の塩(塩化アンモニウム)の損失とカルシウム損失について検討した。
なお、下記比較例1~2及び実施例1~2の処理においては、加熱は行わず、いずれも室温(20℃)で実施した。
【0041】
<比較例1>
撹拌槽に1モル/Lの塩化アンモニウム水溶液(強酸及び弱塩基の塩の水溶液(B1)として使用)300mLと石炭流動層ボイラー燃焼灰(平均粒径約10μm、アルカリ土類金属含有物(A1)として使用)100gを加えて、第1溶液(X1)を調製し、石炭流動層ボイラー燃焼灰からアルカリ土類金属を抽出した。次いで、第1溶液(X1)を真空ろ過器で固液分離し、液相(表1中では「第1工程(S1)後の液相」と呼ぶ)225.7gと抽出残渣(A2)177.3gを得た。抽出残渣(A2)の同伴液の量は、77.3gである。
次いで、抽出残渣(A2)を、1モル/Lの塩化アンモニウム水溶液300mLで6回洗浄し(第1洗浄工程(SW1))、洗浄回毎に真空ろ過器で固液分離して液相と抽出残渣を得て、液相のカルシウムイオン濃度(イオンクロマト分析値、表1中では「Ca濃度」と記載)を測定し、液相のカルシウムイオン濃度に基づいて抽出残渣同伴液中の残存カルシウム量を計算した。結果を表1に示す。
なお、イオンクロマト分析は、イオンクロマト測定装置(Metrohm社製、製品名:Eco IC)により行った。
【0042】
【表1】
【0043】
次に、洗浄6回目の液相の測定結果に基づき、カルシウム損失と塩化アンモニウム損失を下記式により算出した。
カルシウム損失=(抽出残渣同伴カルシウム量/アルカリ土類金属含有物カルシウム量)×100
なお、「抽出残渣同伴カルシウム量」とは、抽出残渣同伴液と抽出残渣の双方に含まれるカルシウムの合計量を意味する。
また、「アルカリ土類金属含有物カルシウム量」とは、石炭流動層ボイラー燃焼灰中のカルシウム量である。なお、石炭流動層ボイラー燃焼灰のカルシウム含有量は、8質量%である。
石炭流動層ボイラー燃焼灰及び抽出残渣のカルシウム含有量は、蛍光X線分析装置(XRF、Marvern Panalytical社製Zetium)により測定した。
塩化アンモニウム損失=(抽出残渣同伴塩化アンモニウム量/強酸及び弱塩基の塩の水溶液含有塩化アンモニウム量)×100
なお、「抽出残渣同伴塩化アンモニウム量」とは、抽出残渣同伴液に含まれる塩化アンモニウム量である。抽出残渣同伴液に含まれる塩化アンモニウム量は、抽出残渣同伴液の塩化アンモニウム濃度をイオンクロマト分析により測定し、マテリアルバランスに基づいて算出した。
なお、イオンクロマト分析は、イオンクロマト測定装置(Metrohm社製、製品名:Eco IC)により行った。
【0044】
<実施例1>
比較例1において生じた、塩化アンモニウム洗浄後(洗浄6回目)から固液分離した抽出残渣(A3)を3倍量の水で洗浄し、生じた液相(希薄塩化アンモニウム水溶液、pH=5.5~6.5)を電気透析法により濃縮回収し、カルシウム損失と塩化アンモニウム損失を算出した。電気透析処理は、AGCエンジニアリング株式会社製の電気透析実験装置 CH0(3室)型を用いて行った。
なお、実施例1及び後述する実施例2では、塩化アンモニウム損失を下記式により算出した。
塩化アンモニウム損失=(第2洗浄工程後の液相(膜濃縮に供される液相)中の塩化アンモニウム量×膜濃縮での塩化アンモニウムロス率/強酸及び弱塩基の塩の水溶液含有塩化アンモニウム量)×100
また、膜濃縮での塩化アンモニウムロス率は、別途実験を行った際の実験結果から得られた下記値を用いた。
・電気透析濃縮実験:18.6%
・逆浸透膜濃縮実験:2.9%
【0045】
<実施例2>
電気透析法を逆浸透膜法に変更し、実施例1と同様の方法で実験を行い、カルシウム損失と塩化アンモニウム損失を算出した。逆浸透膜処理は、東洋紡株式会社製の逆浸透膜実験装置 ホロセップミニ(登録商標) ラボ試験機(型式U5-BCX)を用いた行った。
【0046】
<比較例2>
生じた抽出残渣(A2)の塩化アンモニウム水溶液洗浄および、水洗浄・濃縮回収を行うことなく、塩化アンモニウム損失とカルシウム損失を算出した。
【0047】
結果を表2示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2より、実施例1及び2では、カルシウム損失及び塩化アンモニウム損失の双方が抑えられていることがわかる。
【符号の説明】
【0050】
1 二酸化炭素固定化システム
10 アルカリ土類金属抽出部
10a 第1溶液(X1)の送液管
20 第1洗浄部
25 第1返送部
30 第2洗浄部
30a 強酸及び弱塩基の塩の希薄水溶液の送液管
30b 水素イオン指数調整部
40 生成部
40a 循環経路
50 処理装置
50a 二酸化炭素を含むガス(Y1)の流路
60 第2返送部
61 膜濃縮装置
62 水の送液管
63 濃縮液の送液管
図1
図2