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特開2025-51565塩化ビニル系樹脂粒子及びそれを含む塩化ビニル系樹脂組成物
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  • 特開-塩化ビニル系樹脂粒子及びそれを含む塩化ビニル系樹脂組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025051565
(43)【公開日】2025-04-04
(54)【発明の名称】塩化ビニル系樹脂粒子及びそれを含む塩化ビニル系樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/06 20060101AFI20250327BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250327BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20250327BHJP
   C09D 127/06 20060101ALI20250327BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20250327BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20250327BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20250327BHJP
【FI】
C08L27/06
C08K3/013
C08K7/00
C09D127/06
C09D7/62
C09D7/65
C09K3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003000
(22)【出願日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2023156589
(32)【優先日】2023-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松田 茉美
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 勇太
【テーマコード(参考)】
4H017
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4H017AA04
4H017AB10
4H017AC19
4H017AD02
4H017AE05
4J002AE002
4J002BD041
4J002BD081
4J002BD091
4J002DE146
4J002DE286
4J002DJ006
4J002DJ036
4J002DJ056
4J002EH097
4J002EH107
4J002EH147
4J002EV247
4J002EW047
4J002FA016
4J002FD016
4J002FD022
4J002FD027
4J002GC00
4J002GH01
4J002GL01
4J002GT00
4J002HA08
4J038CD021
4J038HA456
4J038HA466
4J038HA506
4J038KA10
4J038KA20
4J038MA15
4J038NA26
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】 可塑剤と混練した際の組成物であるゾルの粘度経時変化が少なく、特に40℃以上の環境における貯蔵安定性に優れると共に、特に自動車アンダーボディコート用、自動車シーラント用として優れた特性を有する塩化ビニル系樹脂粒子を提供する。
【解決手段】 外表面に無機フィラーが存在する塩化ビニル系樹脂粒子であって、該無機フィラーが粒径60~7000nmかつアスペクト比20~2000の板状無機フィラーである塩化ビニル系樹脂粒子。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に無機フィラーが存在する塩化ビニル系樹脂粒子であって、該無機フィラーが粒径60~7000nmかつアスペクト比20~2000の板状無機フィラーであることを特徴とする塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項2】
無機フィラーが、塩化ビニル系樹脂粒子表面のコート層として存在することを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項3】
塩化ビニル系樹脂粒子が、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂粒子であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項4】
塩化ビニル系樹脂粒子が、酢酸ビニル残基含量1~20wt%のペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項5】
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して板状無機フィラーが0.1~25重量部で存在することを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項6】
板状無機フィラーが、モンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、板状アルミナ、カオリン、ハイドロタルサイトから選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂粒子。
【請求項7】
請求項1に記載の塩化ビニル系樹脂粒子100重量部に対し、少なくとも可塑剤50~200重量部を含むことを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の塩化ビニル系樹脂組成物製であることを特徴とするシート。
【請求項9】
請求項7に記載の塩化ビニル系樹脂組成物製であることを特徴とする自動車アンダーボディコート。
【請求項10】
請求項7に記載の塩化ビニル系樹脂組成物製であることを特徴とする自動車シーラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外表面に特定の無機フィラーが存在する新規な塩化ビニル系樹脂粒子に関するものであり、特に外表面に特定の無機フィラーが存在することから可塑剤と混練した際の組成物であるゾルの粘度経時変化が少なく、更には40℃以上の環境における貯蔵安定性に優れることから、自動車アンダーボディコート用、自動車シーラント用として有用な塩化ビニル系樹脂粒子、塩化ビニル系樹脂組成物及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可塑剤を媒体とし重合体微粒子を分散させてなるプラスチゾルは、自動車アンダーコート、自動車ボディーシーラー、壁紙、カーペットバッキング材、床材、塗料、玩具など多岐に亘る産業分野で使用されている。
【0003】
汎用的に用いられるプラスチゾルとして、塩化ビニル系樹脂が挙げられ、一般に可塑剤、充填剤、安定剤又はその他の配合剤などと共に混練することにより塩ビゾルを調製し、種々の成形加工法により壁紙、タイルカーペット、手袋などの様々な成形加工品に用いられている。
【0004】
また、加工温度の低い用途用として、比較的低温でも機械的強度が得られるゲル化溶融性に優れた特性を持つ、塩化ビニルに酢酸ビニルを共重合させた塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂が知られており、さらに、塩ビゾル調製後から加工までの長期の保存安定性に対する対策として、ゾル粘度の経時変化が少ない塩化ビニル系樹脂が求められている。
【0005】
ゾル粘度の経時変化の少ない塩化ビニル系樹脂を製造する方法として、特定の界面活性剤を使用したペースト加工用塩化ビニル樹脂の製造方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
その他に、ペースト塩ビゾルに特定の化合物を配合する塩化ビニル系樹脂組成物が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平06-056915号公報
【特許文献2】特開2010-241977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に提案の方法によって得られる塩化ビニル系樹脂は、ゾル粘度の経時変化に対する厳しい安定性を要求される用途、例えば自動車用アンダーコート、自動車用シーラント等の用途に用いる場合には、市場要求を満足できるものではなかった。また、特許文献2に提案の方法において、粘度の経時変化が比較的少ない塩ビゾルを提供することが可能なものの、長期の粘度安定性については検討されていないものであった。
【0009】
そこで、本発明は、ゾル粘度の経時変化が極めて少なく、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を有する塩化ビニル系樹脂粒子及びその用途を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題について鋭意検討を重ねた結果、特定の板状無機フィラーが外表面に存在する塩化ビニル系樹脂粒子が、可塑剤を含む塩化ビニル系樹脂ゾルとした際に貯蔵安定性に優れ、コート剤、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた物性を有するものとなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明は、外表面に無機フィラーが存在する塩化ビニル系樹脂粒子であって、該無機フィラーが粒径60~7000nmかつアスペクト比20~2000の板状無機フィラーであることを特徴とする塩化ビニル系樹脂粒子に関するものである。
【0012】
以下に、本発明に関し詳細に説明する。
【0013】
本発明の塩化ビニル系樹脂粒子は、その外表面に板状無機フィラーを有するものであり、外表面に板状無機フィラーが存在することにより可塑剤吸収の制御が可能となり、貯蔵安定性に優れるものとなるものであり、特に板状無機フィラーを表面のコート層として有するものであることが好ましい。なお、コート層とは完全な被覆状態を含むものであることは無論、本発明の効果を発現するものであれば多少のボイド等を有するものをも含むものである。
【0014】
本発明の塩化ビニル系樹脂粒子を構成する塩化ビニル系樹脂としては、一般的に塩化ビニル系樹脂と称される範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えば単独重合体である塩化ビニル樹脂の他、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル酸ブチル共重合樹脂、塩化ビニル-メタクリル酸ブチル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル酸エチル共重合樹脂、塩化ビニル-メタクリル酸エチル共重合樹脂、塩化ビニル-プロピオン酸ビニル共重合樹脂等を挙げることができ、中でも加工時の低温加工性に優れるものとなることから、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂であることが好ましく、特に酢酸ビニル残基含量1~20wt%の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂であることが好ましい。また、その際の粒子径としては如何なるものであってもよく、特に取扱い性、物性と成形加工性のバランスに優れるものとなることから、平均粒子径0.05~100μmのものであることが好ましく、0.1~50μmであることが更に好ましい。なお、本発明における粒子径、平均粒子径等の測定方法としては、例えばディスク遠心式粒度分布測定装置を用いて測定する方法を挙げることができる。そして、塩化ビニル系樹脂としては、SUS系塩化ビニル系樹脂、ペースト加工用塩化ビニル系樹脂と称されるいずれのものであってもよく、特に可塑剤を配合した組成物である(プラスチ)ゾル状態にて、例えばコート、シーラント、壁紙、手袋等への成形加工が可能となることからペースト加工用塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。
【0015】
本発明の塩化ビニル系樹脂粒子を構成する板状無機フィラーとしては、板状無機フィラーと称さる範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えばベントナイト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、バイデライト、ノントリロナイト、ソーコナイト等のスメクタイト系粘土鉱物;板状アルミナ、カオリン、ハイドロタルサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカなどが挙げられ、天然物でも合成物でも構わない。中でも特に貯蔵安定性に優れる塩化ビニル系樹脂粒子となることから、モンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、ヘクトライト、板状アルミナ、カオリン、ハイドロタルサイトであることが好ましい。
【0016】
そして、該板状無機フィラーは、粒径60~7000nmを有する無機フィラーであり特に塩化ビニル系樹脂ゾルとした際の貯蔵安定性に優れるものとなることから、60~4000nmの範囲であることが好ましい。ここで、粒子径が60nm未満、あるいは7000nmより大きい場合、ゾルとした際の増粘変化が顕著なものとなり貯蔵安定性に劣るものとなる。また、該板状無機フィラーは、アスペクト比20~2000の範囲の無機フィラーであり、特に貯蔵安定性に優れるものとなることから、30~500nmの範囲であることが好ましい。ここで、アスペクト比が20未満、あるいは2000より大きい場合、ゾルとした際の増粘抑制の効果に乏しいものとなる。
【0017】
本発明の塩化ビニル系樹脂粒子における該板状無機フィラーの含有量としては、ゾルとした際の増粘抑制効果が発現でき、外表面に板状無機フィラーを有する粒子の調製が可能であれば如何なる制限はなく、中でも粒子とする際のラテックスの乾燥が容易となり、増粘抑制効果に優れるものとなることから、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、0.1~30重量部、特に0.1~25重量部、更には0.3~25重量部であることが好ましい。
【0018】
本発明の塩化ビニル系樹脂粒子の製造方法としては、該塩化ビニル系樹脂粒子の製造が可能であれば如何なる方法をも用いることが可能であり、例えば塩化ビニル系樹脂の重合法である懸濁重合法、乳化重合法、ミクロ懸濁重合法、シード乳化重合法、シードミクロ懸濁重合法等により得られる塩化ビニル系樹脂粒子を含むラテックス、エマルション等に板状無機フィラーを分散し、溶媒、水分等を乾燥等の方法により除去することにより、外表面に板状無機フィラーを有する塩化ビニル系樹脂粒子として製造することができる。そして、塩化ビニル系樹脂粒子を製造する際には、重合開始剤、脱イオン水、乳化剤、緩衝剤、必要に応じて高級アルコール等の乳化助剤を適宜用いることができる。当該添加剤については、本発明の目的を奏する限りにおいて、塩化ビニル系樹脂粒子に含まれていてもよい。
【0019】
重合開始剤としては、重合開始剤の範疇に属するものであれば如何なるものであってもよく、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性重合開始剤;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物,ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルペルオキシピバレート、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカボネート等の過酸化物,等の油溶性重合開始剤等を挙げることができる。また、シードミクロ懸濁重合法を行う際には、油溶性開始剤を含む種粒子(シード)であってもよい。
【0020】
乳化剤としては、例えばラウリル硫酸エステルナトリウム、ミリスチル硫酸エステル等のアルキル硫酸エステル塩類;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;ラウリン酸アンモニウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸塩類;ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルアリール硫酸エステル塩類等のアニオン系乳化剤:ソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート等のソルビタンエステル類;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンアルキルエステル類等のノニオン系乳化剤等の従来より知られているものを1種類又は2種類以上用いることができる。
【0021】
緩衝剤としては、例えばリン酸一水素アルカリ金属塩、リン酸二水素アルカリ金属塩、フタル酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸-苛性カリウム溶液等が挙げられる。
【0022】
必要に応じて用いられる乳化助剤としては、例えばセチルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール;ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸;そのエステル;芳香族炭化水素、高級脂肪酸炭化水素、塩素化パラフィンのようなハロゲン化炭化水素等が挙げられる。
【0023】
本発明の塩化ビニル系樹脂粒子の構成成分である塩化ビニル系樹脂の重合法、特にペースト加工用塩化ビニル系樹脂のより具体的な重合方法としては、例えば塩化ビニル系単量体、乳化剤、油溶性重合開始剤、必要に応じて脂肪族高級アルコール等の乳化補助剤を脱イオン水に添加しホモジナイザー等で混合分散した後、緩やかな攪拌下で重合を行うミクロ懸濁重合法;ミクロ懸濁重合法で得られた油溶性重合開始剤を含む種粒子(シード)を用いて行うシードミクロ懸濁重合法;塩化ビニル系単量体を脱イオン水、界面活性剤、水溶性重合開始剤とともに緩やかな攪拌下で重合を行う乳化重合法で得られた粒子をシードとして用いて乳化重合を行うシード乳化重合法等があげられ、その際に、例えば重合温度は20~80℃とし、塩化ビニル系樹脂ラテックスとして得ることができる。そして、これらの重合により製造された塩化ビニル系樹脂ラテックスに板状無機フィラーを分散させた分散液を噴霧乾燥し、必要に応じて粉砕することにより塩化ビニル系樹脂粒子を得ることができる。
【0024】
塩化ビニル系樹脂粒子とする際に用いる乾燥機は一般的に使用されているものでよく、例えば、噴霧乾燥機等が挙げられる(具体例としては、「SPRAYDRYING HANDBOOK」(K.Masters著、3版、1979年、Georgegodwin Limitedより出版)の121頁第4.10図に記載されている各種の噴霧乾燥機)。乾燥用空気入口温度、乾燥用空気出口温度に特に制限はなく、乾燥用空気入口温度は80~210℃、乾燥用空気出口温度は45~75℃が一般的に用いられる。乾燥用空気入口温度は160~210℃、乾燥用空気出口温度は55~75℃が更に好ましい。
【0025】
本発明の塩化ビニル系樹脂粒子は、その外表面に板状無機フィラーを有することから、可塑剤等を配合した組成物であるゾルとした際の可塑剤の吸収制御が可能となり、ゾルの増粘抑制が可能となり、貯蔵安定性に優れるゾルの提供が可能となるものである。そして、ゾルである塩化ビニル系樹脂組成物とする際には、塩化ビニル系樹脂粒子100重量部に対して、可塑剤50~200重量部、特に加工性、成形性に優れるゾルをより容易に提供できることから80~150重量部であることが好ましい。
【0026】
可塑剤としては、塩化ビニル系樹脂の可塑剤に属する範疇ものであれば如何なるものであってもよく、例えばフタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DOPと略記する場合もある)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジブチル等のフタル酸エステル類;アジピン酸(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル等のアジピン酸エステル類;トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル)、トリメリット酸トリイソデシル、トリメリット酸トリノルマルオクチル等のトリメリット酸エステル類;リン酸トリ(2-エチルヘキシル)、リン酸トリクレジル、リン酸トリキシレニル等のリン酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾアート、ジプロピレングリコールジベンゾアート等の安息香酸エステル;アセチルクエン酸トリブチル等のクエン酸エステル類;アルキルスルホン酸フェニルエステル等のスルホン酸エステル類;その他ポリエステル系可塑剤やセバシン酸エステル、マゼライン酸エステル、マレイン酸エステル、エポキシ化植物油等、を挙げることができる。
【0027】
また、塩化ビニル系樹脂組成物とする際には、必要に応じて充填剤を含むものであってもよく、その際には優れる特性を有するゾルとなることから塩化ビニル系樹脂粒子100重量部に対して、充填剤1~150重量部を含有するものであることが好ましい。該充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、珪藻土、炭酸マグネシウム、酸化チタン等が挙げられ、その際には表面処理を施されたものであってもよい。
【0028】
さらに、塩化ビニル系樹脂組成物とする際には、本発明の目的を超えない範囲で塩ビゾルに通常添加される添加剤、例えば、酸化防止剤、難燃剤、希釈剤、滑剤、紫外線吸収剤、顔料等の着色剤、界面活性剤、帯電防止剤等を添加してもよく、またそれらの配合量も一般に使用される範囲で差し支えない。
【0029】
本発明の塩化ビニル系樹脂粒子は、可塑剤等と配合した際に貯蔵安定性に優れる塩化ビニル系樹脂組成物を提供することが可能となり、壁紙、タイルカーペット、手袋、コート剤、カーペットバッキング材、床材、塗料、玩具等の各種用途に適用可能なものとなる。
【0030】
そして、特にシート、自動車アンダーボディコート、自動車シーラント等に適したものとなる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の塩化ビニル系樹脂粒子は、可塑剤等と混練した際のゾルの粘度経時変化が少なく、特に40℃以上の環境における貯蔵安定性に優れると共に、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を発現するものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】実施例1で得られた塩化ビニル系樹脂粒子の薄膜断面のTEM-EDSによるアルミニウムの元素マッピングの図。
【実施例0033】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
以下に、実施例における塩化ビニル系樹脂粒子の評価方法を示す。
【0035】
<酢酸ビニル残基単位含量>
ペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂中に含有する酢酸ビニル残基含有量(wt%)は、フーリエ変換赤外分光光度計(株式会社島津製作所製、(商品名)IRAffinity-1)を用いて赤外吸収スペクトルを得た。得られた赤外吸収スペクトルにおける1430cm-1付近のC-H面内変角による吸収ピークトップのAbs.値と1740cm-1付近のC=O伸縮による吸収ピークトップのAbs.値の比から、別途測定した検量線を用いて算出した。
【0036】
<破断伸びと破断強度>
得られた塩化ビニル系樹脂粒子より、塩化ビニル系樹脂組成物シートを調製し、JIS3号ダンベルを準拠した試験片を作成し、試験片の中央に20mm間隔の標線を入れ、引張り試験装置に取り付け、23℃で50mm/分の速度で引張り、破断時の標線間の伸びと応力を測定し、破断伸びと破断強度を求めた。
【0037】
<増粘率(貯蔵安定性)>
得られた塩化ビニル系樹脂粒子より、塩化ビニル系樹脂組成物を調製し、23℃で24時間保管した後、粘弾性測定装置(株式会社アントンパール・ジャパン製、(商品名)MCR302)を用いてせん断速度4s-1で測定した粘度を初期粘度とした。さらに、塩化ビニル系樹脂組成物を40℃雰囲気下で7日保管した後、初期粘度と同様の方法で粘度(β)を測定し、この値と初期粘度(α)から下記式(1)により増粘率(%)を求めた。
増粘率(%)=((β-α)/α)×100 (1)
<塩化ビニル系樹脂粒子の表面の元素分析>
得られた塩化ビニル系樹脂粒子を包埋樹脂に包埋後、カーボン蒸着を施し、FIB加工装置(日本工フイー・アイ製;(商品名)Helios G4 UX)内にてプラチナ保護層を施した。その後、イオンビームにより薄膜断面作製を実施し、電界放出形透過電子顕微鏡(日本電子製;(商品名)JEM-ARM200F)にて薄膜断面のEDS(エネルギー分散型X線分光分析装置)による元素分析を行った。アルミニウムの元素マッピングを実施し、アルミニウムの分布を観測した。
【0038】
合成例1
1mオートクレーブ中に脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル10kg、及び15wt%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液30kg、ドデシルメルカプタン1.5kgを仕込み、2時間ホモジナイザーを用いて循環し、均質化処理後、温度を45℃に上げて重合を進めた。圧力が低下した後、未反応の塩化ビニル単量体を回収し、平均粒径0.60μm、固形分含有率39wt%のシードラテックス(a)を得た。
【0039】
合成例2
1mステンレス製オートクレーブに脱イオン水360kg、塩化ビニル単量体300kg、過酸化ラウロイル5.7kg及び15wt%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩水溶液30kgを仕込み、ホモジナイザーを用いて3時間循環し均質化処理を行なった後、反応系の温度を45℃に上げて重合を開始した。重合系の圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収し、固形分含有率35wt%、平均粒子径0.55μm、塩化ビニル系樹脂に対して2wt%の過酸化ラウロイルを含有する塩化ビニル系樹脂シードラテックス(b)を得た。
【0040】
合成例3
1mオートクレーブ中に脱イオン水400kg、塩化ビニル単量体350kg、16wt%ラウリン酸カリウム水溶液2kg及び16wt%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液5kg、2wt%過硫酸カリウム水溶液7kgを仕込み、温度を54℃に上げて重合を進めた。そして、圧力が低下した後、未反応塩化ビニル単量体を回収し、平均粒径0.13μm、固形分含有率42wt%のシードラテックス(c)を得た。
【0041】
製造例1
2.5リットルオートクレーブ中に脱イオン水500g、塩化ビニル単量体を640g と酢酸ビニル単量体を160g(混合単量体の全仕込み量に対して20wt%)、5wt%水溶液ラウリル硫酸ナトリウムを9g、シードラテックス(a)を85g、0.1wt%水溶液硫酸銅を4g仕込み、その後、この反応混合物の温度を35℃に上げて重合を開始するとともに、0.05wt%アスコルビン酸水溶液を、全重合時間を通じて、重合温度を維持するように連続的に添加し、重合転化率が90%となったところで重合を終了した。なお、重合開始してから重合終了までの間、5wt%水溶液ラウリル硫酸ナトリウム120gを連続的に添加した。
【0042】
そして、未反応単量体を回収してラテックスとした。得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂ラテックス(A)は、酢酸ビニル残基単位含有量15wt%含むものであった。
【0043】
製造例2
2.5リットル重合缶内に脱イオン水610g、塩化ビニル単量体730g、シードラテックス(a)を24g、シードラテックス(b)を50g、シードラテックス(c)を120g、及び5wt%水溶液ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム15gを仕込み、その後、この反応混合物の温度を61℃に上げて重合を開始し、重合転化率が95%となったところで重合を終了した。なお、重合開始してから重合終了までの間、5wt%水溶液ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム100gを連続的に添加した。そして、未反応単量体を回収してペースト加工用塩化ビニル樹脂ラテックス(B)を得た。
【0044】
実施例1
製造例1で得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂ラテックス(A)に、ラテックス固形分100重量部に対し、5重量部のモンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製、(商品名)クニピアF;粒径300nm、アスペクト比300)を分散させ、さらに噴霧乾燥機にて、熱風入口160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、ペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を得た。得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行った結果を図1に示す。ペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の外表面に沿ってモンモリロナイト由来のアルミニウムが存在し、モンモリロナイトが粒子の表面にコート層として存在する事を確認した。
【0045】
得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル160重量部、表面処理炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製、(商品名)NEOLIGHTSP-60)70重量部、重質炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製、(商品名)NN♯500)35重量部、希釈剤(エクソンモービル社製、(商品名)エクソールD80)20重量部を混練してペースト塩ビ樹脂組成物1を得た。得られたペースト塩ビ組成物1を用いて増粘率の測定を行い、評価した。
【0046】
得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子100重量部に対し、フタル酸ジイソノニル100重量部、表面処理炭酸カルシウム(竹原化学工業株式会社製、(商品名)NEOLIGHTSP-60)70重量部、重質炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製、(商品名)NN♯500)35重量部、希釈剤(エクソンモービル社製、(商品名)エクソールD80)20重量部を混練してペースト塩ビ樹脂組成物2を得た。
【0047】
得られたペースト塩ビ樹脂組成物2を離型紙上に2mm厚に塗布し、120℃×30分間加熱してペースト塩ビ組成物シートを作成した。得られたペースト塩ビ組成物シートを用いて破断伸び及び破断強度の測定を行い、評価した。増粘率は2100%と低く、貯蔵安定性に優れるのであった。また、120℃加工時の破断伸びは193%、破断強度は1.8MPaであった。評価結果を表1に示す。
【0048】
実施例2
添加する無機フィラーをサポナイト(クニミネ工業株式会社製、(商品名)スメクトンSA;粒径40nm、アスペクト比40)とし、無機フィラー添加量をラテックス固形分100重量部に対し、0.6重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を得た。得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行ったところ、ペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の外表面に沿ってサポナイト由来のアルミニウムが存在し、サポナイトがペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の表面にコート層として存在する事を確認した。
【0049】
得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法により組成物及びペースト塩ビ組成物シートを得た。増粘率は9100%と低いものであり、貯蔵安定性に優れるものであった。また、120℃加工時の破断伸びは285%、破断強度は4.3MPaであった。その評価結果を表1に示す。
【0050】
実施例3
添加する無機フィラーを板状アルミナ(DIC株式会社製、(商品名)AP05;粒径4000nm、アスペクト比30)とした以外は、実施例1と同様の方法によりペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を得た。得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行ったところ、ペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の外表面に沿って板状アルミナ由来のアルミニウムが存在し、板状アルミナがペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の表面にコート層として存在する事を確認した。
【0051】
得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂組成物及びペースト塩ビ組成物シートを得た。増粘率は9000%と低く、貯蔵安定性に優れるものであった。また、120℃加工時の破断伸びは293%、破断強度は4.5MPaであった。その評価結果を表1に示す。
【0052】
実施例4
添加する無機フィラーを板状アルミナ(DIC株式会社製、(商品名)AP05)とし、無機フィラー添加量をラテックス固形分100重量部に対し、24重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を得た。得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行ったところ、ペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の外表面に沿って板状アルミナ由来のアルミニウムが存在し、板状アルミナがペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の表面にコート層として存在している事を確認した。
【0053】
得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂組成物及びペースト塩ビ組成物シートを得た。増粘率は6500%と低く、貯蔵安定性に優れるものであった。また、120℃加工時の破断伸びは325%、破断強度は3.5MPaであった。その評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例5
製造例2で得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂ラテックス(B)に、ラテックス固形分100重量部に対し、5重量部のモンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製、(商品名)クニピアF)を分散させ、さらに噴霧乾燥機にて、熱風入口160℃、出口温度55℃で噴霧乾燥を行って、ペースト加工用塩化ビニル樹脂粒子を得た。得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行ったところ、ペースト加工用塩化ビニル樹脂粒子の外表面に沿ってモンモリロナイト由来のアルミニウムが存在し、モンモリロナイトがペースト加工用塩化ビニル樹脂粒子の表面にコート層として存在する事を確認した。
【0055】
得られたペースト加工用塩化ビニル樹脂粒子を用い、実施例1と同様にゾル混練を行い、ペースト塩ビ樹脂組成物及びペースト塩ビ組成物シートを得た。得られたペースト塩ビ組成物及びペースト塩ビ組成物シートを実施例1と同様の方法にて評価した。増粘率は12%と低く、貯蔵安定性に優れるものであった。また、120℃加工時の破断伸びは28%、破断強度は0.5MPaであった。評価結果を表1に示す。
【0056】
実施例6
添加する無機フィラーをカオリン(林化成株式会社製、(商品名)HydriteN)とした以外は、実施例1と同様の方法によりペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を得た。得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行ったところ、ペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の外表面に沿ってカオリン由来のアルミニウムが存在し、カオリンがペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の表面にコート層として存在している事を確認した。
【0057】
得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂組成物及びペースト塩ビ組成物シートを得た。増粘率は9100%と低く、貯蔵安定性に優れるものであった。また、120℃加工時の破断伸びは337%、破断強度は3.4MPaであった。その評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例7
添加する無機フィラーをハイドロタルサイト(戸田工業株式会社製、(商品名)LT-015D)とした以外は、実施例1と同様の方法によりペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を得た。得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行ったところ、ペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の外表面に沿ってハイドロタルサイト由来のアルミニウムが存在し、ハイドロタルサイトがペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子の表面にコート層として存在している事を確認した。
【0059】
得られたペースト加工用塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂組成物及びペースト塩ビ組成物シートを得た。増粘率は9300%と低く、貯蔵安定性に優れるものであった。また、120℃加工時の破断伸びは348%、破断強度は3.7MPaであった。その評価結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
比較例1
無機フィラーの未添加とした以外は、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂粒子を得た。得られたペースト塩ビ樹脂粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行ったところ、ペースト塩ビ樹脂粒子の外表面にアルミニウムが観察されなかった。
【0062】
得られたペースト塩ビ樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂組成物及びペースト塩ビ組成物シートを得た。増粘率は12000%と非常に高いものであった。また、120℃加工時の破断伸びは302%、破断強度は4.3MPaであった。その評価結果を表2に示す。
【0063】
比較例2
添加する無機フィラーを板状アルミナ(DIC株式会社製、(商品名)AP10;粒径8000nm、アスペクト比15)とした以外は、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂粒子を得た。得られたペースト塩ビ樹脂粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行ったところ、ペースト塩ビ樹脂粒子の外表面に沿って板状アルミナ由来のアルミニウムが存在し、板状アルミナがペースト塩ビ樹脂粒子の表面に存在する事を確認した。
【0064】
得られたペースト塩ビ樹脂粒子を用い、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂組成物及びペースト塩ビ組成物シートを得た。増粘率は12300%と非常に高いものであった。また、120℃加工時の破断伸びは348%、破断強度は3.9MPaであった。その評価結果を表2に示す。
【0065】
比較例3
添加する無機フィラーを柱状アルミナ(川研ファインケミカル株式会社製、(商品名)アルミゾル10A;粒径50nm、アスペクト比5)とし、無機フィラー添加量をラテックス固形分100重量部に対し、0.6重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂粒子を得た。得られたペースト塩ビ樹脂粒子について、薄膜断面のTEM-EDS元素分析を行ったところ、ペースト塩ビ樹脂粒子の外表面に沿って柱状アルミナ由来のアルミニウムが存在し、柱状アルミナがペースト塩ビ樹脂粒子の表面に存在する事を確認した。
【0066】
得られたペースト塩ビ樹脂を用い、実施例1と同様の方法によりペースト塩ビ樹脂組成物及びペースト塩ビ組成物シートを得た。増粘率は10800%と非常に高いものであった。また、120℃加工時の破断伸びは305%、破断強度は5.0MPaであった。その評価結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明により得られる塩化ビニル系樹脂粒子は、可塑剤と混練した際の組成物であるゾルの粘度経時変化が少なく、特に40℃以上の環境における貯蔵安定性に優れると共に、特に自動車アンダーボディコート用、自動車用シーラント用として優れた特性を有するものであり、その産業上の利用価値は高いものである。
図1