(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005158
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】地形検知システム、および地形検知方法
(51)【国際特許分類】
G01S 17/89 20200101AFI20250108BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20250108BHJP
G01S 17/86 20200101ALI20250108BHJP
【FI】
G01S17/89
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
G01S17/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105215
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 馨
(72)【発明者】
【氏名】栗栖 正充
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュンウォン
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112CA05
2F112CA12
2F112FA03
2F112FA45
5J084AA05
5J084AA10
5J084AA13
5J084AB16
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA20
(57)【要約】
【課題】地面の三次元マップを精度よく生成する。
【解決手段】地形検知システムは、地面に向けてレーザ光を照射し、レーザ光の反射強度を含む受信データを取得する、レーザセンサと、反射強度を用いて複数の受信データをつなぎ合わせて、地面の三次元マップを生成する、処理装置と、を備えている。
【選択図】
図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に向けてレーザ光を照射し、前記レーザ光の反射強度を含む受信データを取得する、レーザセンサと、
前記反射強度を用いて複数の前記受信データをつなぎ合わせて、前記地面の三次元マップを生成する、処理装置と、を備える、地形検知システム。
【請求項2】
前記受信データは、前記レーザ光が反射された反射点の三次元座標を含む、請求項1に記載の地形検知システム。
【請求項3】
前記地面を撮像する撮像装置をさらに備え、
前記レーザセンサは、前記撮像装置の撮像範囲を含む範囲の前記地面に向けて前記レーザ光を照射する、請求項2に記載の地形検知システム。
【請求項4】
前記処理装置は、前記撮像装置による撮像画像から、前記地面における特徴点を抽出する、請求項3に記載の地形検知システム。
【請求項5】
前記処理装置は、前記反射点の三次元座標を用いて、重心演算することにより前記特徴点の三次元座標を算出する、請求項4に記載の地形検知システム。
【請求項6】
前記処理装置は、前記特徴点の三次元座標を座標変換した座標変換後の三次元座標と、異なる時刻に撮像された前記撮像画像から抽出された前記特徴点の三次元座標と、の距離を小さくする関係式を求めるときに、前記反射強度を重み付け係数として用いる、請求項5に記載の地形検知システム。
【請求項7】
前記処理装置は、前記特徴点の三次元座標の算出に用いられた前記反射点の前記反射強度のうちの最小の反射強度を、前記重み付け係数として用いる、請求項6に記載の地形検知システム。
【請求項8】
前記処理装置は、前記距離に前記重み付け係数を掛けた積の総和が最小となる前記関係式を求める、請求項6または請求項7に記載の地形検知システム。
【請求項9】
前記レーザセンサを搭載する作業機械をさらに備える、請求項1に記載の地形検知システム。
【請求項10】
前記レーザセンサは、走行する前記作業機械の前方の地面に向けて、前記レーザ光を照射する、請求項9に記載の地形検知システム。
【請求項11】
地面に向けてレーザ光を照射し、前記レーザ光の反射強度を含む受信データを取得することと、
前記反射強度を用いて複数の前記受信データをつなぎ合わせて、前記地面の三次元マップを生成することと、を備える、地形検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、地形検知システム、および地形検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2022-76876号公報(特許文献1)には、車両の位置を決定する位置推定装置が開示されている。車両は、光照射に対する反射光を検出することで車両の周囲環境の特徴点の点群である環境点群を検出するLiDARと、周囲環境を撮像する外界カメラとを搭載する。位置推定装置は、カメラによる撮像画像から、周囲環境におけるランドマークを検出する。位置推定装置は、環境点群から、ランドマークが存在すると推定される範囲である推定範囲内の点群を、範囲内点群として抽出する。位置推定装置は、ランドマークに対応する点群であるランドマーク点群を、範囲内点群の中から特定する。位置推定装置は、ランドマーク点群を点群地図とマッチングさせて、推定される車両の位置を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
地面にレーザ光を照射するレーザセンサの検出結果に基づいて、精度のよい地面の三次元マップを生成することが求められている。
【0005】
本開示では、地面の三次元マップを精度よく生成するための技術が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に係る地形検知システムは、地面に向けてレーザ光を照射し、レーザ光の反射強度を含む受信データを取得する、レーザセンサと、反射強度を用いて複数の受信データをつなぎ合わせて、地面の三次元マップを生成する、処理装置と、を備えている。
【0007】
本開示のある局面に係る地形検知方法は、以下のステップを備えている。第1のステップは、地面に向けてレーザ光を照射し、レーザ光の反射強度を含む受信データを取得することである。第2のステップは、反射強度を用いて複数の受信データをつなぎ合わせて、地面の三次元マップを生成することである。
【発明の効果】
【0008】
本開示に従うと、地面の三次元マップを精度よく生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】ダンプトラックの走行時における地面上の撮像範囲を示す模式図である。
【
図3】地形検知システムのシステム構成を示すブロック図である。
【
図5】撮像画像中に抽出される特徴点を示す図である。
【
図7】三次元点群データを画像平面に投影する処理を示す模式図である。
【
図11】特徴点を三次元化する処理の模式図である。
【
図12】座標変換行列を算出する処理を示す模式図である。
【
図13】粉塵を含む三次元点群データを示す図である。
【
図14】粉塵を含む反射点の反射強度を示す図である。
【
図15】反射強度を考慮しない地面の形状を示す図である。
【
図16】反射強度を考慮した地面の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0011】
図1は、作業機械の一例としてのダンプトラック1の構成を示す模式図である。ダンプトラック1は、車体フレーム2と、車体フレーム2に搭載されているキャブ3およびベッセル4と、車体フレーム2に回転可能に支持されている前輪5および後輪6とを備えている。
【0012】
前輪5と後輪6とは、ダンプトラック1を走行させる走行用回転体である。ダンプトラック1は、前輪5と後輪6とのいずれか一方または両方が回転駆動されることにより、自走可能である。ダンプトラック1は、作業現場で走行して作業を行う。
図1および後続の図で矢印で示される移動方向DRは、ダンプトラック1の前進方向である。ダンプトラック1は、ベッセル4にマテリアルを積載した状態で走行することにより、マテリアルを運搬する。マテリアルは、作業現場で掘削された、またはダンプトラック1により作業現場に搬入される、土砂、岩石または鉱石などである。
【0013】
キャブ3は、ダンプトラック1の前方に配置されている。キャブ3は、オペレータが搭乗する運転室である。キャブ3に搭乗したオペレータが、ダンプトラック1の走行、ベッセル4の昇降などの操作を行う。キャブ3内には、オペレータが着座する運転席、オペレータが操作する操作装置などが配置されている。
【0014】
ダンプトラック1は、オペレータがキャブ3に搭乗する有人車両に限られない。ダンプトラック1は、無人車両であってもよい。ダンプトラック1は、オペレータが搭乗して操作するためのキャブ3を備えていなくてもよい。ダンプトラック1は、搭乗したオペレータによる操縦機能を搭載していなくてもよい。ダンプトラック1は、遠隔操縦専用の作業機械であってもよい。ダンプトラック1の操縦は、遠隔操縦装置からの無線信号により行われてもよい。
【0015】
ダンプトラック1は、撮像装置10とLiDAR(Light Detection and Ranging)20とをさらに備えている。撮像装置10とLiDAR20とは、ダンプトラック1の前部に配置されている。撮像装置10とLiDAR20とは、前方を向いてダンプトラック1に搭載されており、ダンプトラック1の前方の地面Gの情報を取得可能である。地面Gはたとえば、鉱山の搬送路などの、作業現場の地面である。作業現場の地面は、非舗装路の一例である。撮像装置10とLiDAR20とは、車体フレーム2に取り付けられてもよく、キャブ3に取り付けられてもよい。
【0016】
撮像装置10は、ダンプトラック1の周辺の撮像対象を撮像して、撮像対象の撮像画像を取得する。撮像装置10の撮像対象は、走行するダンプトラック1の前方の地面Gを含む。撮像装置10は、ダンプトラック1の前方の地面Gを撮像する。撮像装置10は、たとえば赤外線カメラである。撮像装置10として赤外線カメラを用いることで、夜間でも鮮明な撮像画像を取得することができる。撮像装置10が撮像する撮像画像は、グレースケール画像であってもよい。
【0017】
LiDAR20は、レーザ光を射出して対象物にレーザ光を照射することにより、対象物の情報を取得する。LiDAR20は、走行するダンプトラック1の前方の地面Gに向けてレーザ光を照射する。LiDAR20は、地面Gなどの反射点においてレーザ光が反射した反射光を受光する。LiDAR20は、「レーザセンサ」の一例に対応する。レーザ光は、赤外領域の波長帯の光を発生させる赤外レーザであってもよい。レーザ光は、近赤外線の領域の波長を有してもよい。
【0018】
LiDAR20は、受信データを取得する。LiDAR20が取得する受信データは、三次元の位置情報を持つ点の集合である点群データを含む。LiDAR20が取得する受信データは、反射点の三次元座標値を示す点群データを含み、点群データに含まれる各点に対応するレーザ光の反射強度を含む。
【0019】
撮像装置10による地面Gの撮像、および、LiDAR20による受信データの取得は、単位時間毎に実行される。異なる時刻にLiDAR20が取得した複数の点群データをつなぎ合わせることにより、地面Gの三次元マップが生成される。
【0020】
図2は、ダンプトラック1の前進走行時における地面G上の撮像範囲を示す模式図である。ダンプトラック1は、移動方向DRに走行する。走行するダンプトラック1に搭載されている撮像装置10が、単位時間毎に地面Gを繰り返し撮像する。走行するダンプトラック1に搭載されているLiDAR20が、単位時間毎に地面Gの点群データを繰り返し取得する。
図2には、地面Gの情報の取得を開始したときを第1回目とした場合の、第(n-1)回目の情報取得によって情報が取得される地面Gの範囲A
n-1と、第n回目の情報取得によって情報が取得される地面Gの範囲A
nと、が示されている。nは2以上の整数である。
【0021】
第(n-1)回目の情報取得の時刻から第n回目の情報取得の時刻までに、ダンプトラック1は距離xだけ前進走行している。そのため、範囲An-1と範囲Anとの間には、移動方向DRに距離x分のずれがある。第(n-1)回目の情報取得で取得された地面Gの三次元点群データと、第n回目の情報取得で取得された地面Gの三次元点群データと、を適切につなぎ合わせることができれば、精度のよい地面Gの三次元マップを広範囲に生成することが可能になる。
【0022】
図3は、地形検知システムのシステム構成を示すブロック図である。
図3および後続の図を適宜参照して、地形検知システムが地面Gの三次元マップを生成する処理の流れについて、順に説明する。
【0023】
地形検知システムは、
図1,2にも示される撮像装置10およびLiDAR20に加えて、処理装置30を備えている。撮像装置10が撮像した撮像画像11は、処理装置30に入力される。撮像画像
nIは、第n回目の情報取得で取得された撮像画像である。撮像画像
n-1Iは、第(n-1)回目の情報取得で取得された撮像画像である。
図4は、撮像画像11の一例を示す図である。
【0024】
なお、
図3には、簡略化のため、第(n-1)回目および第n回目の情報取得に係る情報の処理のみが示されている。処理装置30は、第(n-1)回目よりも前の情報取得、および第n回目よりも後の情報取得で取得される情報も同様に処理することは勿論であり、これによって処理装置30は、地面Gの広範囲の三次元マップを生成できる。
【0025】
図5は、撮像画像11中に抽出される特徴点p
tを示す図である。処理装置30は、撮像装置10による撮像画像11から、地面Gにおける特徴点p
tを抽出する。処理装置30は、撮像装置10が撮像した撮像画像11を画像処理することにより、特徴点p
tを抽出する。
図3を併せて参照して、処理装置30は、第(n-1)回目に撮像された撮像画像
n-1I中の特徴点
n-1p
tを、撮像画像
n-1Iを画像処理することにより、抽出する。処理装置30は、第n回目に撮像された撮像画像
nI中の特徴点
np
tを、撮像画像
1Iを画像処理することにより、抽出する。
【0026】
処理装置30は、第(n-1)回目に撮像された撮像画像n-1I中の特徴点n-1ptと第n回目に撮像された撮像画像nI中の特徴点nptとを対応付ける、マッチングを実行する。処理装置30は、第(n-1)回目に撮像された撮像画像n-1I中の特徴点n-1ptと第n回目に撮像された撮像画像nI中の特徴点nptとのうち、類似度が高い特徴点を選定して、類似度が高い特徴点同士をマッチングする。マッチングされた特徴点は、異なる時刻に撮像された撮像画像n-1Iと撮像画像nIとに共通して含まれる、地面G上の同じ点に対応する。
【0027】
図6は、三次元点群データ21の一例を示す図である。三次元点群データ21は、LiDAR20によって取得される、地面Gなどのレーザ光が反射された反射点の三次元の点の集合である。LiDAR20が取得した三次元点群データ21は、処理装置30に入力される。三次元点群データ
nPGは、第n回目の情報取得で取得された三次元点群データである。三次元点群データ
n-1PGは、第(n-1)回目の情報取得で取得された三次元点群データである。
【0028】
処理装置30は、撮像画像11中の特徴点p
tに対応する三次元の点(三次元特徴点)p
sを求める。
図7は、三次元点群データ21を画像平面24に投影する処理を示す模式図である。
図7に示されるLiDAR座標系F1は、LiDAR20の位置を原点とする三次元直交座標系である。画像平面24は、撮像装置10の光軸に直交する平面である。
図7に示される矩形が、撮像装置10の撮像範囲を示す。LiDAR20は、撮像装置10の撮像範囲を含む範囲の地面Gに向けて、レーザ光を照射して、三次元点群データ21を取得する。
図7に示される画像座標系F2は、画像平面24上に定義される二次元直交座標系である。画像座標系F2の第一軸をU軸とし、画像座標系F2の第二軸をV軸とする。
【0029】
投影点25は、三次元点群データ21に含まれる反射点の三次元の点を、画像平面24上に投影して二次元化した点である。各投影点25は、U座標とV座標とを有している。三次元点群データ21に含まれる多数の三次元の点の各々を、撮像装置10で撮像した平面に相当する画像平面24上に投影することにより、二次元化点群データ26を作り出す。
図8は、二次元化点群データ26の一例を示す図である。二次元化点群データ26は、三次元点群データ21を、撮像装置10と同じ視点から見て二次元化したデータである。したがって二次元化点群データ26は、地面Gを斜め上から俯瞰したデータである。二次元化点群データ26は、撮像装置10の撮像範囲と同じ範囲のデータを含んでいる。
【0030】
図9は、画像平面24上の投影点25の模式図である。
図10は、画像平面24上の特徴点p
tを示す模式図である。処理装置30は、画像平面24上で特徴点p
tがどの位置にあるのかを求める。処理装置30は、
図5に示される撮像画像11と、
図8に示される二次元化点群データ26とを重ねたときに、撮像画像11中の特徴点p
tと、三次元座標がわかっているLiDAR20の点群に対応する投影点25と、を比較する。
【0031】
図11は、特徴点を三次元化する処理の模式図である。
図11には、
図10中に示される領域XIを拡大した図が模式的に図示されている。処理装置30は、特徴点p
tに近い投影点25、典型的には特徴点p
tを取り囲む三点の投影点25を抽出する。
図11に示される点p
1,p
2,p
3は、画像平面24上の3点の投影点25の一例である。特徴点p
tは、点p
1,p
2,p
3を頂点とする三角形に内包されている。画像座標系F2における点p
1の座標が(u
1,v
1)であり、画像座標系F2における点p
2の座標が(u
2,v
2)であり、画像座標系F2における点p
3の座標が(u
3,v
3)である。また、画像座標系F2における点p
tの座標を(u
s,v
s)とする。
【0032】
処理装置30は、特徴点ptを三次元化した三次元特徴点psの三次元座標を、投影点25に対応する三次元の反射点の三次元座標を用いて、重心演算することにより求める。処理装置30は、三次元特徴点psの三次元座標を、点p1,p2,p3に対応する三次元の点を三次元補間することにより、求める。LiDAR20によって取得された三次元の点群に含まれる点のうち、点p1に対応する三次元の点を、点ps1とする。点p2に対応する三次元の点を、点ps2とする。点p3に対応する三次元の点を、点ps3とする。三次元特徴点psの三次元座標は、点ps1,ps2,ps3の三次元座標に重みm1,m2,m3を係数として掛けることにより、以下の式(1)で求められる。
【0033】
【0034】
ここで、重みm
1,m
2,m
3は、
図11に示される特徴点p
tが、近傍の投影点25である点p
1,p
2,p
3で形成される三角形の重心となるように、算出される。具体的に、重みm
1,m
2,m
3は、以下の式(2)で求められる。
【0035】
【0036】
処理装置30は、画像平面24上の特徴点p
tの個数だけ、特徴点p
tを内包する近傍3点の抽出と、式(2)に従った重みm
1,m
2,m
3の算出と、式(1)に従った三次元特徴点p
sの三次元座標の算出と、を繰り返す。
図3に示されるように、処理装置30は、第(n-1)回目の撮像画像
n-1I中の特徴点
n-1p
tを、三次元点群データ
n-1PGに含まれる反射点の点群の三次元座標を用いて三次元化した、三次元特徴点
n-1p
sを求める。処理装置30は、第n回目の撮像画像
nI中の特徴点
np
tを、三次元点群データ
nPGに含まれる反射点の点群の三次元座標を用いて三次元化した、三次元特徴点
np
sを求める。
【0037】
処理装置30は、次に、第n回目の三次元特徴点
np
sを第(n-1)回目の三次元特徴点
n-1p
sに重ね合わせるための関係式である、座標変換行列を算出する。
図12は、座標変換行列を算出する処理を示す模式図である。
【0038】
図12に示される、LiDAR座標系
n-1F1は、第(n-1)回目の情報取得をしたときのLiDAR20の位置を原点とする座標系である。点
n-1p
s1,
n-1p
s2,…,
n-1p
siは、各々、第(n-1)回目の撮像画像中の特徴点を三次元化した三次元特徴点である。処理装置30は、第(n-1)回目の三次元特徴点を、複数求めている。
【0039】
図12に示される、LiDAR座標系
nF1は、第n回目の情報取得をしたときのLiDAR20の位置を原点とする座標系である。点
np
s1,
np
s2,…,
np
siは、各々、第n回目の撮像画像中の特徴点を三次元化した三次元特徴点である。処理装置30は、第n回目の三次元特徴点を、複数求めている。
【0040】
第(n-1)回目の三次元特徴点と第n回目の三次元特徴点とは、異なる三次元座標を有している。第(n-1)回目の1番目の三次元特徴点n-1ps1と、第n回目の1番目の三次元特徴点nps1とが対応している。第(n-1)回目の2番目の三次元特徴点n-1ps2と、第n回目の2番目の三次元特徴点nps2とが対応している。第(n-1)回目のi番目の三次元特徴点n-1psiと、第n回目のi番目の三次元特徴点npsiとが対応している。
【0041】
処理装置30は、第n回目のLiDAR座標系nF1を第(n-1)回目のLiDAR座標系n-1F1に変換するための、座標変換行列(n-1Rn,n-1tn)*を算出する。座標変換行列は、回転行列n-1Rnと、平行移動行列n-1tnとを含んでいる。処理装置30は、対応する三次元特徴点間の距離の総合計が最小となる座標変換行列(n-1Rn,n-1tn)*を求める。処理装置30は、第n回目の三次元特徴点の三次元座標を座標変換した座標変換後の三次元座標と、第(n-1)回目の三次元特徴点の三次元座標と、の間の距離を算出して、その距離の総和が最小となるような関係式を求める。この関係式に基づいて、第n回目の三次元特徴点を座標変換することで、座標変換後の第n回目の三次元特徴点が、第(n-1)回目の三次元特徴点に重ね合わされる。
【0042】
ここで、処理装置30は、三次元特徴点を合わせて三次元マップを生成するが、LiDAR20によって取得される三次元点群データ21の中には、誤検出された点が含まれることがある。具体的に、作業現場を他の作業機械が走行することにより、作業現場に粉塵が発生する。LiDAR20が射出するレーザ光が粉塵に反射することがある。LiDAR20が照射するレーザ光が反射される反射点は、地面G上の測定点だけでなく、粉塵を含むことがある。
【0043】
図13は、粉塵を含む三次元点群データ21Aを示す図である。
図14は、粉塵を含む反射点の反射強度を示す図である。
図14には、取得した三次元点群のうち、ランダムに抽出した100個の点を、各反射点における反射強度で整理した図が、表示されている。
図14中の各点を表すマーカの色および形状が、反射強度の大小に対応している。
図14において、黒丸のマーカで示される点の反射強度が最も小さく、マーカの色が薄くなるに従って反射強度が大きくなる。また、マーカの形状が黒丸、白四角、白三角、白ひし形、+印の順に、反射強度が大きい。
【0044】
図13,14に示されるように、粉塵の影響で、三次元特徴点の三次元座標が地面G上の座標ではない誤った座標になることがある。具体的に、
図14中の左上部分にプロットされるべき地面の点群が、粉塵の影響で間違った位置に誤検出されて、
図14中の中央下部分にプロットされている。その場合、三次元マップが正しい形状にならないことがある。また、三次元特徴点を合わせることができずに、三次元マップを生成できないことがある。
【0045】
そのため、実施形態の処理装置30は、粉塵の影響を低減することで、三次元マップの生成の精度を向上させている。具体的に、処理装置30は、レーザ光の反射強度を、三次元特徴点間の距離を計算するときの重み付け係数として用いる。
図14に示されるように、粉塵の影響で誤検出された点は黒丸のマーカで表示されており、粉塵で反射したレーザ光の反射強度は小さいことがわかっている。
【0046】
そのため、処理装置30は、重み付け係数として反射強度を使い、距離に反射強度を掛けた重み付き距離の総和が最小となるような座標変換行列を求める。処理装置30は、以下の式(3)に従って、座標変換行列(n-1Rn,n-1tn)*を求める。
【0047】
【0048】
式(3)中の反射強度nIiは、第n回目のi番目の三次元特徴点npsiの算出に用いられたLiDAR20の点の反射強度を示す。min(n-1Ii,nIi)は、第(n-1)回目および第n回目の三次元特徴点の算出に用いられたLiDAR20の反射点の反射強度のうちの、最小の反射強度を示す。式(3)に従って、第n回目のi番目の三次元特徴点npsiを回転行列n-1Rnによって回転し平行移動行列n-1tnによって平行移動させる座標変換をした点と、第(n-1)回目のi番目の三次元特徴点n-1psiと、の距離に、反射強度を考慮した重み付け係数min(n-1Ii,nIi)を掛けた積の総和が最小になるような、座標変換行列(n-1Rn,n-1tn)*が求められる。
【0049】
図15は、反射強度を考慮しない地面Gの形状を示す図である。
図15(a)は地面Gを平面視した図であり、
図15(b)は地面Gを側面視した図である。図中の左側から右側に向かう方向が、移動方向DRである。
図15では、反射強度を考慮せずに座標変換行列を求めて、その求められた座標変換行列を用いて三次元特徴点を合わせる処理をした結果が示されている。
【0050】
図15では、粉塵の影響によって、三次元特徴点を重ね合わせることができていない。典型的に、側面視した地面Gの形状は線状に示されるはずであるが、
図15(b)に示されるように、三次元特徴点が正しく合わせられていないことで、地面Gが高さ方向に幅を持った不適切な形状となっている。
【0051】
図16は、反射強度を考慮した地面Gの形状を示す図である。
図16(a)は地面Gを平面視した図であり、
図16(b)は地面Gを側面視した図である。図中の左側から右側に向かう方向が、移動方向DRである。
図16では、反射強度を考慮した重み付き距離の総合計を最小化するような座標変換行列を求めて、その求められた座標変換行列を用いて三次元特徴点を合わせる処理をした結果が示されている。
【0052】
粉塵にレーザ光が反射した反射強度は小さいので、距離に反射強度を掛ける重み付き距離を用いることで、粉塵の影響が低減されている。座標変換行列を求めるときに、レーザ光が粉塵に反射した誤検出された点の影響を小さくすることで、三次元特徴点を重ね合わせることが可能になっている。典型的に、
図16(b)に示されるように、側面視した地面Gの形状は、線状の適切な形状となっている。
【0053】
図17は、三次元マップ50の一例を示す図である。処理装置30は、適切な座標変換行列を求めて、その座標変換行列を用いて三次元特徴点を重ね合わせるようにして、異なる時刻に取得された複数の三次元点群データ21をつなぎ合わせる。このようにして、
図17に示されるように、広範囲の地面Gの三次元マップ50を精度よく生成することができる。
【0054】
以上説明したように、実施形態の地形検知システムは、
図3に示されるように、LiDAR20と処理装置30とを備えている。
図1,6に示されるように、LiDAR20は、地面Gに向けてレーザ光を照射して、レーザ光の反射強度を含む受信データを取得する。
図12,16~17に示されるように、処理装置30は、レーザ光の反射強度を用いて複数の受信データをつなぎ合わせて、地面Gの三次元マップ50を生成する。
【0055】
LiDAR20によって取得された三次元の受信データは、反射強度を含んでいる。異なる時刻に取得した複数の受信データを互いにつなぎ合わせる処理をする際に、その反射強度を使うことで、粉塵の影響を小さくすることができる。作業現場に粉塵が発生している状況下においても、受信データのつなぎ合わせのズレを小さくすることができ、地面Gの三次元マップ50を精度よく生成することができる。
【0056】
図7に示されるように、LiDAR20の取得する受信データは、レーザ光が反射された反射点の三次元座標を含んでもよい。LiDAR20が地面Gに向けてレーザ光を照射してからレーザ光が反射点で反射した反射光をLiDAR20が受光するまでの時間と、レーザ光の照射角度とに基づいて、LiDAR20は反射点の三次元座標を取得することができる。
【0057】
図1に示されるように、撮像装置10は、地面Gを撮像し、LiDAR20は、撮像装置10の撮像範囲を含む範囲の地面Gにレーザ光を照射してもよい。処理装置30は、撮像装置10による撮像画像11と撮像画像11に対応する画像平面24とを重ね合わせて、撮像画像11中の特徴点p
tと、LiDAR20によって取得された三次元点群データ21を画像平面24上に投影した投影点25と、を比較することができる。処理装置30は、撮像画像11中の特徴点p
tの近傍の投影点25の三次元座標を用いて、特徴点p
tの三次元座標を算出することができる。
【0058】
図5に示されるように、処理装置30は、撮像装置10による撮像画像11から、地面Gにおける特徴点p
tを抽出してもよい。LiDAR20によって取得された地面Gの三次元点群データ21から特徴点を見つけるのは、困難である。一方、グレースケール画像である撮像画像11を使うと、明暗のコントラストで、異なる時刻に撮像された2つの撮像画像に共通して含まれる地面G上の同じ点を、容易に見つけることができる。この地面G上の点を、特徴点p
tとして抽出することができる。
【0059】
図10,11に示されるように、処理装置30は、反射点の三次元座標を用いて、重心演算することにより特徴点p
tの三次元座標を算出してもよい。処理装置30は、特徴点p
tを内包する三角形の頂点を成す3つの投影点25を見出し、その三角形の重心に特徴点p
tが位置するように、重みm
1,m
2,m
3を算出する。処理装置30は、三角形の頂点を成す3つの投影点25に対応する三次元座標に、重みm
1,m
2,m
3を掛け合わせることにより、特徴点p
tの三次元座標を精度よく算出することができる。
【0060】
図14に示されるように、処理装置30は、特徴点p
tの三次元座標を座標変換した座標変換後の三次元座標と、異なる時刻に撮像された撮像画像11から抽出された特徴点p
tの三次元座標と、の距離を小さくする関係式を求めるときに、反射強度を重み付け係数として用いてもよい。特徴点p
tの三次元座標を算出するときに反射点の三次元座標が使用されるが、その反射点が地面G上になく粉塵であることがある。粉塵に反射したレーザ光の反射強度は、地面Gに対する反射強度よりも小さいことが知られている。レーザ光の反射強度を重み付け係数として用いることにより、粉塵によって誤検出された反射点の影響を確実に小さくすることができる。
【0061】
図11,14に示されるように、処理装置30は、特徴点p
tの三次元座標の算出に用いられた反射点の反射強度のうちの最小の反射強度を、重み付け係数として用いてもよい。特徴点p
tの三次元座標は、特徴点p
tを内包する三角形の頂点を成す3つの投影点25に対応する3つの反射点の三次元座標を用いて、算出される。これら3つの反射点のうちのいずれかの反射点が粉塵であると、その反射点の反射強度が小さくなる。複数の反射点のうちの最小の反射強度を重み付け係数として用いることにより、粉塵によって誤検出された反射点の影響を確実に小さくすることができる。
【0062】
処理装置30は、特徴点ptの三次元座標を座標変換した座標変換後の三次元座標と、異なる時刻に撮像された撮像画像11から抽出された特徴点ptの三次元座標と、の距離に、重み付け係数を掛けた積の総和が最小となる関係式を求めてもよい。地面G上の特徴点ptの三次元座標と粉塵の三次元座標との距離が大きい場合でも、その距離に掛けられる重み付け係数を小さくすることで、粉塵の影響を確実に小さくすることができる。
【0063】
図1に示されるように、LiDAR20はダンプトラック1に搭載されていてもよい。ダンプトラック1が作業現場を走行するときに、LiDAR20によって地面Gの受信データをリアルタイムに取得することができ、これにより作業現場の精度よい三次元マップ50を生成することができる。作業現場の地面G上に轍、水たまりなどの損傷が存在する場合に、その損傷を発見することが容易になるので、損傷を早期に補修して作業機械の燃費および安全性を改善することができる。
【0064】
図1に示されるように、LiDAR20は、走行するダンプトラック1の前方の地面Gに向けて、レーザ光を照射してもよい。ダンプトラック1は、マテリアルを運搬するために作業現場を前進走行することが多い。ダンプトラック1が作業現場を走行しながら、LiDAR20によって地面Gの受信データをリアルタイムに取得することができ、受信データをつなぎ合わせて作業現場の地面Gの精度よい三次元マップ50を生成することができる。
【0065】
上記の実施形態では、作業現場の粉塵の影響を低減して地面Gの三次元マップ50を精度よく生成する例について説明した。LiDAR20は、粉塵だけでなく、降雪および霧を誤検出する可能性がある。レーザ光が、雪または霧の水滴で反射される可能性がある。実施形態の地形検知システムによれば、降雪および霧の影響も小さくすることができ、地面Gの精度よい三次元マップ50を生成することができる。
【0066】
実施形態では、撮像装置10およびLiDAR20がダンプトラック1に搭載されている例について説明した。撮像装置10およびLiDAR20を搭載する作業機械は、ブルドーザ、ホイールローダ、モータグレーダなどの、他の種類の走行して作業をする作業機械であってもよい。作業機械における、撮像装置10およびLiDAR20の設置場所および設置方向は限定されない。撮像装置10は、作業機械の前方以外の地面を撮像してもよく、LiDAR20は、作業機械の前方以外の地面に向けてレーザ光を照射してもよい。たとえば、撮像装置10は、作業機械の後部に配置されて作業機械の後方の地面を撮像してもよく、LiDAR20は、作業機械の後部に配置されて作業機械の後方の地面に向けてレーザ光を照射してもよい。
【0067】
撮像装置10およびLiDAR20は、作業機械の外部に配置されてもよい。撮像装置10およびLiDAR20は、ドローンなどの無人航空機に搭載されてもよい。撮像装置10およびLiDAR20は、専用の計測車に搭載されてもよい。
【0068】
実施形態の地形検知システムで生成された地面Gの三次元マップ50を用いれば、作業現場の現況地形をより正確に認識することができる。この現況地形に基づいて、自動運行されている作業機械に、障害物回避などの動作を行わせることができる。また、現況地形に基づいて、マシンガイダンス、マシンコントロールなどの情報化施工を、より正確に実行することが可能になる。
【0069】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0070】
1 ダンプトラック、2 車体フレーム、3 キャブ、4 ベッセル、5 前輪、6 後輪、10 撮像装置、11 撮像画像、20 LiDAR、21,21A 三次元点群データ、24 画像平面、25 投影点、26 二次元化点群データ、30 処理装置、50 三次元マップ、DR 移動方向、F1 LiDAR座標系、F2 画像座標系、G 地面、pt 特徴点、ps 三次元特徴点。