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特開2025-5217バイポーラプレート、セルの製造方法、セルの評価方法およびバイポーラプレートの評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005217
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】バイポーラプレート、セルの製造方法、セルの評価方法およびバイポーラプレートの評価方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 9/23 20210101AFI20250108BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20250108BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20250108BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250108BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20250108BHJP
【FI】
C25B9/23
H01M8/0228
H01M8/0258
C25B9/00 A
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105311
(22)【出願日】2023-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(71)【出願人】
【識別番号】591006298
【氏名又は名称】JFEテクノリサーチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】道畑 日出夫
(72)【発明者】
【氏名】八代 仁
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 昌信
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021DB31
4K021DB53
5H126AA08
5H126AA12
5H126BB06
5H126DD05
5H126DD14
5H126DD17
5H126EE03
5H126JJ02
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】低コスト化することができるバイポーラプレート、バイポーラプレートの製造方法およびバイポーラプレートの評価方法を提供する。
【解決手段】バイポーラプレート1は、XY平面に沿って延びる第1板部としての基板2と、基板2に対してZ方向の一方側に積層される第2板部としての中間板3と、を備える。中間板3には、XY平面に沿って延びるとともにZ方向に貫通した流路形成部31が形成されている。流路形成部31の内面313を側面とし、基板2の一方側の面としての内面21を底面とした溝状の流路部A1が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定平面に沿って延びる第1板部と、
前記第1板部に対して板厚方向の一方側に積層される第2板部と、を備え、
前記第2板部には、前記所定平面に沿って延びるとともに前記板厚方向に貫通した流路形成部が形成され、
前記流路形成部の内面を側面とし、前記第1板部の前記一方側の面を底面とした溝状の流路部が形成されていることを特徴とするバイポーラプレート。
【請求項2】
前記第1板部と前記第2板部とは、別体に構成されるとともに分離可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバイポーラプレート。
【請求項3】
前記第2板部には、少なくとも一面に被膜が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイポーラプレート。
【請求項4】
前記第1板部の方が前記第2板部よりも厚く、前記第2板部の方が前記被膜よりも厚いことを特徴とする請求項3に記載のバイポーラプレート。
【請求項5】
水電解装置又は燃料電池に用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイポーラプレート。
【請求項6】
前記流路形成部の外周縁の内側領域において、前記第1板部の前記一方側の面の露出した割合が、全体の40~60%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイポーラプレート。
【請求項7】
前記流路形成部は、複数の直線部と、隣り合う前記直線部の片側端部同士を接続する複数の接続部と、を含む蛇行形状を有し、
前記直線部の幅と、隣り合う前記直線部同士の間隔と、の比率が0.2:1~1:1であることを特徴とする請求項1又は2に記載のバイポーラプレート。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のバイポーラプレートを用いたセルの製造方法であって、
互いに別体に構成された前記第1板部と前記第2板部とを一体化する一体化工程を含むことを特徴とするセルの製造方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のバイポーラプレートを備えた水電解装置又は燃料電池において、電解又は電池性能特性を評価することを特徴とするセルの評価方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のバイポーラプレートを備えた水電解装置又は燃料電池において、電解又は電池性能特性を評価することを特徴とするバイポーラプレートの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイポーラプレート、セルの製造方法、セルの評価方法およびバイポーラプレートの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、燃料電池又は水分解装置では、エンドプレートであるカソード及びアノードと、これらの間に配置されて水素イオンが通過可能な膜と、が積層され、さらにこの両側にバイポーラプレートが配置される。このような燃料電池又は電気分解装置として、バイポーラプレートが吸熱器として機能するとともに放熱構造が設けられた電気化学セルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された電気化学セルでは、バイポーラプレートは、アルミニウムや鋼、ステンレス鋼、チタン、銅、Ni-Cr合金、インコネル等の電気及び熱伝導性材料から作製されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-530727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたようなバイポーラプレートを燃料電池又は水分解装置において用いる際、アノード側およびカソード側の少なくとも一方に、水やガスを供給するまたは排出するための流路を形成する必要がある。溝状の流路は、例えば切削等の加工により形成される。しかしながら、バイポーラプレートは、機械的強度や電気化学的特性等の要求を満たすように材質が選択されるため、このような加工が困難であり高コスト化してしまう場合があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、低コスト化することができるバイポーラプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るバイポーラプレートは、所定平面に沿って延びる第1板部と、前記第1板部に対して板厚方向の一方側に積層される第2板部と、を備え、前記第2板部には、前記所定平面に沿って延びるとともに前記板厚方向に貫通した流路形成部が形成され、前記流路形成部の内面を側面とし、前記第1板部の前記一方側の面を底面とした溝状の流路部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係るバイポーラプレートにおいて、前記第1板部と前記第2板部とは、別体に構成されるとともに分離可能に設けられている。
【0008】
本発明の一態様に係るバイポーラプレートにおいて、前記第2板部には、少なくとも一面に、被膜が設けられている。
【0009】
本発明の一態様に係るバイポーラプレートにおいて、前記第1板部の方が前記第2板部よりも厚く、前記第2板部の方が前記被膜よりも厚い。
【0010】
本発明の一態様に係るバイポーラプレートにおいて、水電解装置又は燃料電池に用いられる。
【0011】
本発明の一態様に係るバイポーラプレートにおいて、前記流路形成部の外周縁の内側領域において、前記第1板部の前記一方側の面の露出した割合が、全体の40~60%である。
【0012】
本発明の一態様に係るバイポーラプレートにおいて、前記流路形成部は、複数の直線部と、隣り合う前記直線部の片側端部同士を接続する複数の接続部と、を含む蛇行形状を有し、前記直線部の幅と、隣り合う前記直線部同士の間隔と、の比率が0.2:1~1:1である。
【0013】
一方、本発明に係るバイポーラプレートを用いたセルの製造方法は、互いに別体に構成された前記第1板部と前記第2板部とを一体化する一体化工程を含むことを特徴とする。
【0014】
一方、本発明に係るセルの評価方法は、上記のバイポーラプレートを備えた水電解装置又は燃料電池において、電解又は電池性能特性を評価することを特徴とする。
【0015】
一方、本発明に係るバイポーラプレートの評価方法は、上記のバイポーラプレートを備えた水電解装置又は燃料電池において、電解又は電池性能特性を評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るバイポーラプレートによれば、低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係るバイポーラプレートが用いられた水電解装置を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るバイポーラプレートを示す断面図である。
図3】本発明の実施形態に係るバイポーラプレートの製造途中の状態を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係るバイポーラプレートの第2板部の平面図である。
図5】本発明の実施形態に係るバイポーラプレートの第1板部の平面図である。
図6】本発明の変形例のバイポーラプレートの平面図である。
図7図6のA-A線に沿った断面図である。
図8】本発明の実施例および比較例のバイポーラプレートの電流電圧特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るバイポーラプレート1が用いられた水電解装置のセル100を示す模式図であり、図2は、バイポーラプレート1を示す断面図であり、図3は、バイポーラプレート1の製造途中の状態を示す断面図であり、図4は、バイポーラプレート1の第2板部としての中間板3の平面図であり、図5は、バイポーラプレート1の第1板部としての基板2の平面図である。
【0019】
図2に示すように、本発明の実施形態に係るバイポーラプレート1は、所定平面(XY平面)に沿って延びる第1板部としての基板2と、基板2に対して板厚方向(Z方向)の一方側に積層される第2板部としての中間板3と、を備える。中間板3には、XY平面に沿って延びるとともにZ方向に貫通した流路形成部31が形成されている。流路形成部31の内面313を側面とし、基板2の一方側の面としての内面2Aを底面とした溝状の流路部A1が形成されている。
【0020】
図1に示すように、バイポーラプレート1は、水電解装置のセル100に用いられる。セル100は、中央に配置される固体高分子膜101と、固体高分子膜101を両面から挟むように重ねられるアノード触媒102及びカソード103触媒と、アノード触媒102及びカソード触媒103の外側に重ねられるアノードPTL(多孔質輸送層)104と、カソードPTL105と、アノードPTL104及びカソードPTL105の外側に重ねられるバイポーラプレート1と、を備える。以下では、セル100の積層方向(図1の左右方向)において固体高分子膜101に向かう方向を「内側」とし、固体高分子膜101から離れる方向を「外側」とする。
【0021】
固体高分子膜101は、例えばパーフルオロエチレンスルホン酸系カチオン交換膜等のフッ素樹脂系イオン交換膜であればよい。
【0022】
アノード触媒102は、例えば酸化イリジウム等であればよい。
【0023】
カソード触媒103は、例えば白金担持カーボン等であればよい。
【0024】
セル100においては、上記の固体高分子膜101とアノード触媒102とカソード触媒103とが、CCM(Catalyst Coated Membrane)として構成される。
【0025】
アノード触媒102に重ねられるアノードPTL104は、例えば白金めっきした多孔質チタン等であればよい。
【0026】
カソード触媒103に重ねられるカソードPTL105は、例えばカーボンペーパーやカーボンクロス等であればよい。
【0027】
アノード側およびカソード側の各バイポーラプレート1は、被膜4が少なくとも内側(即ちアノードPTL104及びカソードPTL105側)を向くように配置される。バイポーラプレート1には、不図示の電極部が設けられており、この電極部に対し、電源106から延びる配線等が接続されるようになっている。
【0028】
上記のようなセル100を作動させると、アノード側に配置されたCCMにおいては、水分子が分解されて酸素ガスと水素イオンとが生じる。
【0029】
また、アノード側のCCMにおける上記反応により生じた水素イオンが固体高分子膜101を通過してカソード側に向かい、カソード側に配置されたCCMにおいて、水素ガスが生じる。
【0030】
ここで、バイポーラプレート1の詳細について説明する。まず、基板2は、チタン又はステンレス鋼を基材として構成されている。このとき、例えば金や白金等の貴金属めっきスプレー塗布によるコーティングや、PVD又はCVD等の蒸着又は熱窒化等が施されていてもよいし、コーティングや蒸着、熱窒化等が施されていなくてもよい。基板2の厚さは、例えば0.1mm以上且つ1mm以下である。
【0031】
以下では、バイポーラプレート1の基板2が沿って延びる平面(所定平面)をXY平面とし、基板2の板厚方向をZ方向とする。また、Z方向は、セル100の積層方向と一致しており、Z方向においても、セル100において内側を向いた側(一方側)を「内側」とし、セル100において外側を向いた側(他方側)を「外側」とする。基板2は、内面2Aと外面2Bとを有する。
【0032】
基板2は、図5に示すように例えば四角形板状に形成され、斜めに対向する(対角線によって結ばれる)角部に貫通孔21が形成されている。
【0033】
中間板3は、チタン又はステンレス鋼を基材として構成されている。中間板3の厚さは、例えば0.1mm以上且つ1mm以下である。中間板3は、基板2に対して内面2Aに積層される。中間板3は、XY平面に沿って延び、内面3Aと外面3Bとを有する。即ち、基板2と中間板3とは平行に延びており、板厚方向が互いに一致する。
【0034】
中間板3には、図4にも示すように、XY平面に沿って延びるとともに中間板3をZ方向に貫通した流路形成部31と、貫通孔32と、流路形成部31と貫通孔32とを接続する傾斜部33と、が形成されている。貫通孔32は、例えば四角形板状に形成された中間板3において対角線によって結ばれる角部に形成され、基板2の貫通孔21と重なるように配置されている。
【0035】
流路形成部31は、X方向に沿って延びる複数の直線部311と、隣り合う直線部311の片側端部同士を接続する複数の接続部312と、を含む蛇行形状を有している。流路形成部31は、図4における左上の角部および右下の角部を端部31A,31Bとしており、これらの端部31A,31Bが、X方向およびY方向に対して傾斜した傾斜部33によって、貫通孔32に接続されている。
【0036】
貫通孔である流路形成部31は、Z方向に沿って延びる内面313を有する。例えば図2に示すような断面においては、Y方向に対向する一対の内面313が形成されている。
【0037】
基板2に中間板3が積層されると、流路形成部31において基板2の内面2Aが露出する。内面2Aのうち露出した部分を露出部2Cとする。これにより、露出部2Cを底面とし、流路形成部31の一対の内面313を側面とする溝状の流路部A1が形成される。流路部A1は一面側が開放された樋状となっているが、この開放された側はアノードPTL104及びカソードPTL105によって閉塞される。
【0038】
基板2の外面2B側に位置する水は、流路部A1を通過して再び外面2B側に戻ることができるようになっている。即ち、基板2の外面2B側から一方の貫通孔21に導入された水は、貫通孔31に到達し、傾斜部33を経由して流路部A1に導入される。この水は流路部A1を通過し、他方の傾斜部33に到達し、他方の貫通孔31および貫通孔21を通過して再び基板2の外面2B側に到達する。
【0039】
上記のような流路形成部31の外周縁の内側領域A2において、内側領域A2の全体の面積に対する露出部2Cの面積の割合は、40~60%であることが好ましい。また、直線部311の幅Wと、Y方向に隣り合う直線部311同士の間隔Lと、の比率が、0.2:1~1:1であることが好ましい。尚、流路形成部3の一対の内面313は、互いに平行でなくてもよく、例えば内面2Aに向かうにしたがって互いに近づくことにより、断面V字状の流路形成部が形成されてもよい。このように一対の内面313が互いに平行でない場合、これらの最大の間隔を上記の間隔Lとした場合も、最小の間隔を上記の間隔Lとした場合のいずれにおいても、幅Wと間隔Lとの上記比率を満たすことが好ましい。
【0040】
被膜4は、例えば金や白金等の貴金属めっきスプレー塗布によるコーティングや、PVD又はCVD等の蒸着又は熱窒化等により構成されている。被膜4の形成方法は、材質等に応じた適宜なものが採用されればよい。被膜4の厚さは、例えば0.5μm以上且つ3μm以下である。図2においては、被膜4が内面3A及び外面3Bの両方に設けられた様子を示している。外面3Bに被膜を設けることにより、中間板3と基板2との接触抵抗を減少させることができる。
【0041】
中間板3と被膜4とは、一体的に設けられ、内側板部材5を構成する。内側板部材5は、基板2とは別体に構成されるとともに、分離可能に設けられている。即ち、中間板3の外面3Bは、基板2の内面2Aに対して接着されておらず、単に重ねられて接触した構成となっている。
【0042】
バイポーラプレート1では、Z方向において、基板2の方が中間板3よりも厚く、中間板3の方が被膜4よりも厚い。尚、被膜4は中間板3に対して両面に設けられているが、片側の厚さも、両側合計の厚さも、中間板3の厚さよりも小さい。
【0043】
上記のようなバイポーラプレート1を備えたセル100は、以下に説明する製造方法によって製造される。まず、切断等の適宜な加工によって、板状の基板2を形成する。切断等の適宜な加工によって、基板2とは独立に、板状且つ流路形成部33を有する中間板3を形成する。次に、この中間板3に対し、上記のような方法で被膜4を形成し(被膜形成工程)、内側板部材5を形成する。その後、セル100における他の部材(固体高分子膜101やアノード触媒102、カソード触媒103、アノードPTL104,カソードPTL105)とともに、互いに別体に構成された基板2と内側板部材5と一体化する(一体化工程)。一体化工程においては、例えばねじ等の締結部材によって積層方向から締め付ければよい。尚、基板2と内側板部材5とのみを固定してもよく、この場合、例えば溶接や圧着等により一体化してもよい。
【0044】
上記のように構成されたバイポーラプレート1は、電解又は電池性能が評価される。このように評価される特性としては、電流電圧特性や、電気化学インピーダンス、定電圧、定電流、サイクリックボルタンメトリが例示される。また、バイポーラプレート1を備えた水電解装置又は燃料電池のセルについて電解又は電池性能を評価してもよい。また、誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)や、誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-ES)、イオンクロマトグラフィー(IC)等によってセルの特性を評価してもよい。
【0045】
このように、本発明の実施形態に係るバイポーラプレート1によれば、露出部2Cを底面とし、貫通孔である流路形成部31の一対の内面313を側面とする溝状の流路部A1が形成されていることで、1部材の基板に対して溝を形成する場合と比較して、材質の選択自由度が高く、容易に加工することができ、低コスト化することができる。例えば、基板2と中間板3とのうち中間板3のみを加工容易な材質とすることができる。また、貫通孔を形成する場合には、非貫通の溝を形成する場合とは異なり、加工時に溝深さを管理する必要がない。
【0046】
また、上記のように流路部A1が形成されていることで、基板2がアノードPTL104及びカソードPTL105と直接接触しない。これにより、基板2の材質として耐食性が比較的低いものを選択したり、被膜を設ける等の表面処理等を省略したりすることができ、低コスト化することができる。
【0047】
また、基板2と中間板3と被膜4とを有し、少なくとも3層構造を有することで、チタン又はチタン合金製の板部材と被膜との2層構造である場合と比較して、材料の選択自由度を向上させることができる。即ち、チタン又はチタン合金からなる中間板3と被膜4とによってセル100に用いられた際の性能(耐食性性)を確保しつつ、基板2を適宜に選択することで低コスト化することができる。このとき、基板2が中間板3よりも厚いことにより、中間板3の材料の使用量を削減することができ、低コスト化しやすい。
【0048】
また、基板2と内側板部材5とが別体に構成されるとともに分離可能に設けられていることで、基板2と中間板3との材質の組み合わせによらず、これらを組み付けることができ、材質の選択自由度をさらに向上させることができる。
【0049】
また、基板2がステンレス鋼を基材として構成されている場合には、バイポーラプレート1の機械的強度を確保しつつ低コスト化することができる。
【0050】
また、基板2の厚さが0.1mm以上且つ1mm以下であり、中間板3の厚さが0.1mm以上且つ1mm以下であり、被膜4の厚さが0.5μm以上且つ3μm以下であることで、バイポーラプレート1の耐食性および機械的強度を確保しつつ低コスト化しやすくすることができる。
【0051】
尚、本発明は上記の実施形態の形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、上記の本発明の実施形態では、基板2がチタン又はステンレス鋼を基材として構成されているものとしたが、基板の材質は、機械的強度やコストだけでなく例えば重量や加工容易性等に応じて適宜に選択されればよい。
【0052】
また、上記の実施形態では、第2板部としての中間板3の内面(基板2とは反対側を向いた面)3Aおよび外面(基板2側を向いた面)3Bの両方に被膜4が設けられるものとしたが、内面3Aのみ又は外面3Bのみに被膜を設けてもよい。即ち、中間板3の少なくとも一面に被膜を設けるようにしてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、バイポーラプレート1が基板2と中間板3と被膜4とを備えて3層構造となっているものとしたが、バイポーラプレートは少なくとも2つの板部を備えていればよく、その層数は限定されない。
【0054】
また、上記の実施形態では、基板2の厚さが0.1mm以上且つ1mm以下であり、中間板3の厚さが0.1mm以上且つ1mm以下であり、被膜4の厚さが0.5μm以上且つ3μm以下であるものとしたが、これらの厚さは、バイポーラプレートに要求される性能やコスト、その他の特性に応じて適宜に設定されればよい。例えば、より高い機械的強度が要求される場合には基板を厚くしてもよいし、バイポーラプレートの耐食性を向上させたい場合には中間板および被膜を厚くしてもよいし、さらなる低コスト化が要求される場合には各層を薄くしてもよい。このとき、各層の厚さの関係は、上記の実施形態のように基板2の方が中間板3よりも厚く、中間板3の方が被膜4よりも厚い関係に限定されない。
【0055】
また、上記の実施形態では、基板2と内側板部材5とが別体に構成されるとともに分離可能に設けられているものとしたが、基板と内側板部材とが一体的に(即ち分離不能に)構成されていてもよい。このとき、基板と内側板部材とを別体に構成した後に例えば接着等により一体化してもよい。このような構成によれば、バイポーラプレートを水電解装置に組み込む際の組み付け性を向上させることができる。
【0056】
また、上記の実施形態では、内側領域A2の全体の面積に対する露出部2Cの面積の割合が40~60%であり、直線部311の幅Wと隣り合う直線部311同士の間隔Lとの比率が、0.2:1~1:1であるものとしたが、これらの比率は、バイポーラプレートに要求される各種の特性に応じて決定されればよく、上記の範囲外であってもよい。
【0057】
また、上記の実施形態では、流路形成部31が蛇行形状を有しているものとしたが、流路形成部は、流体が通過可能な形状を有していればよく、蛇行形状に限定されない。例えば図6,7に示すように、中間板3において、Z方向に貫通した流路形成部34と、複数の島形成部35~39と、を有する構成としてもよい。流路形成部34は、島形成部35~39を囲む位置に形成されている。また、島形成部35~39は、その対角線がX方向又はY方向に沿った正方形状に形成され、互いに接続されるとともに、中間板3の本体に対して接続されており、分離しないようになっている。中間板3を基板2に対して積層すると、上記の実施形態同様に、流路形成部34において基板2の内面2Aが露出し、流路部が形成される。このとき、島形成部35~39は、内面2A(露出部2C)から突出した島状となり、即ち流体が通過しない部分となる。このような形態においても、流路形成部34の外周縁の内側領域A3において、内側領域A3の全体の面積に対する露出部2Cの面積の割合は、40~60%であることが好ましい。尚、図7では、説明の都合上、被膜を省略しているが、上記の実施形態同様に、被膜が設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に係るバイポーラプレートに限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0059】
[実施例]
実施例1および比較例1のバイポーラプレートのそれぞれを備えたセルにおいて、電流電圧特性を評価した。尚、各々のセルにおいては、アノード側及びカソード側の両方に実施例1のバイポーラプレートを用いるか、又は、両方に比較例1のバイポーラプレートを用いた。
【0060】
実施例1のバイポーラプレートとしては、上記の実施形態同様に、基板2と、蛇行形状の流路形成部31を有する中間板3と、を有するものを用いた。比較例1のバイポーラプレートとしては、1枚の板材に対して切削加工を施すことにより流路部を形成したものを用いた。また、実施例1および比較例1の共通条件は、表1に示す通りである。
【0061】
【表1】
【0062】
図8に示すように、実施例において、比較例と同等の電流電圧特性が得られ、水電解装置に用いるためのバイポーラプレートとして、充分な特性を有することが確認された。
【0063】
また、燃料電池に用いるためのバイポーラプレートについても上記同様に電流電圧特性を評価した。この場合も、基板2と、蛇行形状の流路形成部31を有する中間板3と、を有する実施例2のバイポーラプレートにおいて、1枚の板材に対して切削加工を施すことにより流路部を形成した比較例2のバイポーラプレートと同等の電流電圧特性が得られ、燃料電池に用いるためのバイポーラプレートとして、充分な特性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0064】
1…バイポーラプレート、2…基板(第1板部)、21A…内面(一方側の面)、3…中間板(第2板部)、31…流路形成部、313…内面、4…被膜、A1…流路部、100…セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8