(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005429
(43)【公開日】2025-01-16
(54)【発明の名称】磁気レンズ、それを含む荷電粒子顕微鏡システム、及び関連する方法
(51)【国際特許分類】
H01J 37/141 20060101AFI20250108BHJP
H01J 37/28 20060101ALI20250108BHJP
【FI】
H01J37/141
H01J37/141 A
H01J37/28 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024102487
(22)【出願日】2024-06-26
(31)【優先権主張番号】18/342,643
(32)【優先日】2023-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ストプカ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ラドリッカ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン オーラル
【テーマコード(参考)】
5C101
【Fターム(参考)】
5C101AA03
5C101EE14
5C101EE42
5C101EE63
5C101EE64
5C101EE68
5C101FF56
5C101FF59
5C101GG04
5C101GG05
5C101LL04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来技術の問題を解決する。
【解決手段】磁気レンズ、それを含む荷電粒子顕微鏡システム、及び関連する方法。一例では、磁気レンズは、荷電粒子ビームを試料位置に方向付けるように構成されており、複数の磁極片と少なくとも2つの独立コイルとを備える。磁気レンズは、試料を磁場に界浸することなく、可変主対物面を有する対物レンズとして動作する。可変主対物面は、磁気レンズのコイルによって生成される磁場に試料位置を界浸することなく、焦点面における荷電粒子ビームの倍率の選択的調整を可能にする。一例では、荷電粒子顕微鏡システムは、荷電粒子源と、試料ホルダと、磁気対物レンズとを備える。一例では、方法は、試料を磁気レンズに対して位置決めすることと、荷電粒子ビームを焦点位置に集束させるように磁気レンズを動作させることと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置であって、
荷電粒子ビームを焦点面内の試料位置に方向付けるように構成されている磁気レンズを備え、前記磁気レンズは、
少なくとも2つの軸方向間隙を画定する複数の磁極片と、
前記少なくとも2つの軸方向間隙とそれぞれ連通し、前記磁気レンズが可変主対物面を有する単一の対物レンズとして動作するように磁場を生成するよう構成されている少なくとも2つの独立コイルと、を備え、
前記可変主対物面は、前記磁気レンズのコイルによって生成される前記磁場に前記試料位置を界浸することなく、前記焦点面における前記荷電粒子ビームの倍率の選択的調整を可能にする、
装置。
【請求項2】
前記磁気レンズが中心ボアを備え、前記複数の磁極片が、
前記中心ボアの周りに円周方向に延在している、第1の磁極片と、
前記中心ボアの周りに円周方向に延在し、前記第1の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている、第2の磁極片と、
前記中心ボアの周りに円周方向に延在し、前記第2の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている、第3の磁極片と、を含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの独立コイルが、全磁場を生成するように構成されており、前記全磁場は、前記磁気レンズ内の前記全磁場の最大振幅を表す最大集束磁場振幅を有し、前記試料位置において測定される前記全磁場の大きさは、前記最大集束磁場振幅の最大5%である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
磁気レンズであって、
レンズ本体と、
前記レンズ本体によって支持されており、第1の磁場を生成するように構成されている、第1のコイルと、
前記レンズ本体によって支持されており、第2の磁場を生成するように構成されている、第2のコイルと、を備え、
前記レンズ本体は、
前記磁気レンズを通過する荷電粒子ビームを受け取るように構成されている、中心ボアと、
前記中心ボアの周りに円周方向に延在している、第1の磁極片と、
前記中心ボアの周りに円周方向に延在し、前記第1の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている、第2の磁極片と、
前記中心ボアの周りに円周方向に延在し、前記第2の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている、第3の磁極片と、を含む、
磁気レンズ。
【請求項5】
前記磁気レンズは、前記第1のコイルが前記第1の磁場を生成し、前記第2のコイルが前記第2の磁場を生成するとき、前記第1の磁極片、前記第2の磁極片、及び前記第3の磁極片が共通磁気回路の一部を集合的に形成するように構成されている、請求項4に記載の磁気レンズ。
【請求項6】
前記磁気レンズが、焦点面において前記荷電粒子ビームを試料上に集束させるように構成されており、前記磁気レンズは、前記第1の磁場及び前記第2の磁場の一方又は両方を選択的に変化させることにより、前記荷電粒子ビームの前記焦点面が不変のままであるように前記磁気レンズの主対物面の位置を調整するよう構成されている、請求項4に記載の磁気レンズ。
【請求項7】
前記磁気レンズが、前記第1の磁場と前記第2の磁場とが重なり合って、前記第1の磁場と前記第2の磁場との和である全磁場を形成するように構成されており、前記全磁場は、前記中心ボア内の全磁場の最大振幅を表す最大集束磁場振幅を有し、前記試料において測定される前記全磁場の大きさは、前記最大集束磁場振幅の最大2%である、請求項6に記載の磁気レンズ。
【請求項8】
前記第1のコイルが、前記第1の磁極片と前記第2の磁極片との間に少なくとも部分的に配置されており、前記第2のコイルは、前記第2の磁極片と前記第3の磁極片との間に少なくとも部分的に配置されている、請求項4に記載の磁気レンズ。
【請求項9】
前記磁気レンズは、前記中心ボアを通って延在する中心軸を画定し、前記第1の磁極片、前記第2の磁極片、及び前記第3の磁極片の各々は、前記中心軸の周りに完全に円周方向に延在し、前記第1の磁極片、前記第2の磁極片、及び前記第3の磁極片のうちの1つ以上は、前記中心ボアを少なくとも部分的に画定する、請求項4に記載の磁気レンズ。
【請求項10】
前記第1の磁極片が、第1の終端縁領域で終端し、前記第2の磁極片が、第2の終端縁領域で終端し、前記第3の磁極片が、第3の終端縁領域で終端し、前記第1の終端縁領域及び前記第2の終端縁領域が、第1の磁極片間隙によって分離され、前記第2の終端縁領域及び前記第3の終端縁領域が、第2の磁極片間隙によって分離され、前記第1の磁極片間隙及び前記第2の磁極片間隙の各々が、前記磁気レンズの中心軸に面する、請求項4に記載の磁気レンズ。
【請求項11】
前記第1の磁極片及び前記第2の磁極片は、前記第1の磁極片と前記第2の磁極片との間に第1の磁場領域を画定し、前記第2の磁極片及び前記第3の磁極片は、前記第2の磁極片と前記第3の磁極片との間に前記第1の磁場領域とは別個の第2の磁場領域を画定し、前記第1の磁場領域及び前記第2の磁場領域の各々は、前記中心ボアに対して開いており、前記磁気レンズは、前記第1の磁極片、前記第2の磁極片、及び前記第3の磁極片が、前記第1の磁場領域及び前記第2の磁場領域の各々を通って延在する共通磁気回路の一部を集合的に形成するように構成されている、請求項4に記載の磁気レンズ。
【請求項12】
前記第1の磁場領域は、前記第1のコイルと前記中心ボアとの間に延在し、前記第2の磁場領域は、前記第2のコイルと前記中心ボアとの間に延在する、請求項11に記載の磁気レンズ。
【請求項13】
荷電粒子顕微鏡システムであって、
荷電粒子ビームを光軸に沿って試料に向けて放出するように構成されている、荷電粒子源と、
前記試料を保持するように構成されている、試料ホルダと、
前記荷電粒子ビームを前記試料の位置に対応する焦点位置に集束させるように構成されている、磁気対物レンズと、を備え、
前記磁気対物レンズは、
前記荷電粒子ビームが延在する中心ボアを有するレンズ本体と、
前記レンズ本体によって支持されており、第1の場の大きさを有する第1の磁場を生成するように構成されている、第1のコイルと、
前記レンズ本体によって支持されており、第2の場の大きさを有する第2の磁場を生成するように構成されている、第2のコイルと、を備え、
前記磁気対物レンズは、前記第1の場の大きさと前記第2の場の大きさとの間の比を調整することが、前記磁気対物レンズの倍率を調整するように動作するよう構成されており、前記焦点位置は、前記レンズ本体の外部に配置され、前記第1の磁場及び前記第2の磁場の各々は、前記焦点位置から離れた領域に局所化されている、
荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項14】
前記磁気対物レンズは、前記荷電粒子顕微鏡システムの動作使用中に、前記試料が前記第1の磁場及び前記第2の磁場から少なくとも実質的に隔離されるように構成されている、請求項13に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項15】
前記レンズ本体が、
前記中心ボアの周りに円周方向に延在している、第1の磁極片と、
前記中心ボアの周りに円周方向に延在し、前記第1の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている、第2の磁極片と、
前記中心ボアの周りに円周方向に延在し、前記第2の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている、第3の磁極片と、を含み、
前記磁気対物レンズは、前記第1のコイルが前記第1の磁場を生成し、前記第2のコイルが前記第2の磁場を生成するとき、前記第1の磁極片、前記第2の磁極片、及び前記第3の磁極片が共通磁気回路の一部を集合的に形成するように構成されている、請求項13に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項16】
前記荷電粒子ビームが電子ビームを含み、前記荷電粒子顕微鏡システムは、走査電子顕微鏡(SEM)として動作するように構成されている、
請求項13に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【請求項17】
方法であって、
試料を磁気レンズに対して位置決めすることと、
荷電粒子ビームを焦点位置に集束させるように前記磁気レンズを動作させることと、を含み、
前記磁気レンズは、
少なくとも2つの軸方向間隙を画定する複数の磁極片と、
前記磁気レンズが可変主対物面を有する単一の対物レンズとして動作するように、前記少なくとも2つの軸方向間隙とそれぞれ連通する少なくとも2つの独立コイルと、を備える、
方法。
【請求項18】
前記試料を前記位置決めすることが、前記試料を完全に前記磁気レンズの外部に位置決めすることを含み、前記磁気レンズを前記動作させることが、磁場を生成し、前記試料を前記磁場に界浸することなく前記荷電粒子ビームを集束させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記磁気レンズを前記動作させることが、
前記磁気レンズの第1のコイルを用いて第1の磁場を生成することと、
前記磁気レンズの第2のコイルを用いて第2の磁場を生成することと、を含み、
前記磁気レンズを前記動作させることは、前記第1の磁場及び前記第2の磁場の一方又は両方を調整して、前記磁気レンズと前記焦点位置との間の作動距離を変化させることなく前記磁気レンズの倍率を変化させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つの独立コイルは、第1の磁場を生成するように構成されている第1のコイルと、第2の磁場を生成するように構成されている第2のコイルとを含み、前記荷電粒子ビームは、複数の荷電粒子ビームレットを含み、前記磁気レンズを前記動作させることは、
前記複数の荷電粒子ビームレットを焦点面内のそれぞれの焦点位置に集束させることと、
前記第1の磁場及び前記第2の磁場の一方又は両方を調整して、前記焦点面の位置をシフトさせることなく前記焦点面における集束した前記荷電粒子ビームレットのピッチを変化させることと、を含む、
請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2023年6月27日に出願された、米国特許出願第18/342,643号の優先権を主張し、その開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
(技術分野)
本開示は、概して、荷電粒子顕微鏡システムのための磁気レンズ、及びそのような磁気レンズを備える荷電粒子顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0003】
荷電粒子顕微鏡法は、特に電子顕微鏡法の形態で顕微鏡物体を撮像するための周知の、かつますます重要な技術である。電子顕微鏡の基本的な種類は、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope、TEM)、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)、走査透過型電子顕微鏡(Scanning Transmission Electron Microscope、STEM)などの様々な装置種、更には様々な亜種の形態で実用化されている。
【0004】
SEMでは、走査電子ビームによる標本の照射は、例えば、二次電子、後方散乱電子、X線、並びに陰極線ルミネセンス(赤外光子、可視光子、及び/又は紫外光子)の形態の「補助」放射線を標本から放出させる。次に、この放出される放射線の1つ以上のコンポーネントが、画像を蓄積する目的で検出されて、使用される。
【0005】
照射ビームとして電子を使用する代わりに、荷電粒子顕微鏡法は、荷電粒子の他の種を使用して実行することもできる。この点に関して、「荷電粒子」という語句は、例えば、電子、正イオン(例えば、ガリウム(Ga)イオン又はヘリウム(He)イオン)、負イオン、陽子、及び陽電子を包含するものとして理解されてもよい。なお、画像作成や(局所的な)表面改質(例えば、ミリング、エッチング、蒸着等)の実行に加えて、荷電粒子顕微鏡はまた、分光法の実施、ディフラクトグラムの検査を行う等のその他の機能性をも有する場合がある。
【0006】
全ての場合において、荷電粒子顕微鏡(charged particle microscope、CPM)は、一般に、少なくとも放射源(例えば、電子源又はイオン銃)、ビーム方向付けシステム、標本ホルダ、及び検出器を備えるであろう。
【0007】
検出器は、検出される放射線に応じて多くの異なる形態をとり得る。例としては、光ダイオード、CMOS検出器(Complementary Metal Oxide-Semiconductor detectors、相補的金属酸化物半導体検出器)、CCD検出器(Charge Coupled Device detectors、電荷結合素子検出器)、光起電セル、X線検出器(シリコンドリフト検出器(Silicon Drift Detectors)及びシリコンリチウム検出器(Si(Li)detectors)等)などが挙げられる。一般に、CPMは、いくつかの異なる種類の検出器を備えてもよく、検出器の選択は、異なる状況において導き出され得る。一般に、検出器は、広範囲の入射荷電粒子信号の規模を表すのに十分に広いダイナミックレンジを示すことが望ましい。
【0008】
本開示は、一般に、荷電粒子顕微鏡法の特定の文脈に関し、より具体的には、電子顕微鏡法に関するが、このような説明は、限定することを意図するものではなく、本明細書で開示される装置及び方法が、任意の好適な文脈において適用され得ることが、本開示の範囲内である。
【発明の概要】
【0009】
磁気レンズ、それを含む荷電粒子顕微鏡システム、及び関連する方法が本明細書で開示される。
【0010】
代表的な例では、装置は、荷電粒子ビームを焦点面内の試料位置に向けるように構成されている磁気レンズを備える。磁気レンズは、少なくとも2つの軸方向間隙を画定する複数の磁極片と、少なくとも2つの軸方向間隙とそれぞれ連通し、磁気レンズが可変主対物面を有する単一の対物レンズとして動作するように磁場を生成するよう構成されている少なくとも2つの独立コイルと、を備える。可変主対物面は、磁気レンズのコイルによって生成される磁場に試料位置を界浸することなく、焦点面における荷電粒子ビームの倍率の選択的調整を可能にする。
【0011】
別の代表的な例では、磁気レンズは、レンズ本体と、レンズ本体によって支持されている第1のコイルと、レンズ本体によって支持されている第2のコイルと、を備える。第1のコイルは、第1の磁場を生成するように構成されており、第2のコイルは、第2の磁場を生成するように構成されている。レンズ本体は、磁気レンズを通過する荷電粒子ビームを受けるように構成されている中心ボアと、第1の磁極片と、第2の磁極片と、第3の磁極片と、を備える。第1の磁極片は、中心ボアの周りに円周方向に延在する。第2の磁極片は、中心ボアの周りに円周方向に延在し、少なくとも部分的に第1の磁極片の半径方向外側に配置されている。第3の磁極片は、中心ボアの周りに円周方向に延在し、少なくとも部分的に第2の磁極片の半径方向外側に配置されている。
【0012】
別の代表的な例では、荷電粒子顕微鏡システムは、荷電粒子ビームを光軸に沿って試料に向けて放出するように構成されている荷電粒子源と、試料を支持するように構成されている試料ホルダと、荷電粒子ビームを試料の位置に対応する焦点位置に集束させるように構成されている磁気対物レンズと、を備える。磁気対物レンズは、荷電粒子ビームが延在する中心ボアを有するレンズ本体と、第1のコイルと、第2のコイルと、を備える。第1のコイルは、レンズ本体によって支持されており、第1の場の大きさを有する第1の磁場を生成するように構成されている。第2のコイルは、レンズ本体によって支持されており、第2の場の大きさを有する第2の磁場を生成するように構成されている。磁気対物レンズは、第1の場の大きさと第2の場の大きさとの間の比率を調整することが、磁気対物レンズの倍率を調整するように動作するよう構成されている。焦点位置は、レンズ本体の外部に位置付けられ、第1の磁場及び第2の磁場の各々は、焦点位置から離れた領域に局在化される。
【0013】
別の代表的な例では、方法は、試料を磁気レンズに対して位置決めすることと、荷電粒子ビームを焦点位置に集束させるように磁気レンズを動作することと、を含む。磁気レンズは、磁気レンズが可変主対物面を有する単一の対物レンズとして動作するように、少なくとも2つの軸方向間隙を画定する複数の磁極片と、少なくとも2つの軸方向間隙とそれぞれ連通する少なくとも2つの独立コイルと、を備える。
【0014】
開示される技術の前述及び他の目的、特徴、及び利点は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一例による本明細書に開示される磁気レンズを利用できるCPMシステムの概略図である。
【
図2】一例による試料に入射する荷電粒子ビームの概略図である。
【
図4】第1の実施例による磁気レンズによって生成される第1の磁場、第2の磁場、及び全磁場の大きさの概略図である。
【
図5】第2の実施例による磁気レンズによって生成される第1の磁場、第2の磁場、及び全磁場の大きさの概略図である。
【
図6】第3の実施例による磁気レンズによって生成される第1の磁場、第2の磁場、及び全磁場の大きさの概略図である。
【
図7】第4の実施例による磁気レンズによって生成される第1の磁場、第2の磁場、及び全磁場の大きさの概略図である。
【
図8】一例による磁気レンズを製造及び/又は使用する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、概して、1つ以上の荷電粒子ビームを試料上に集束させるために荷電粒子顕微鏡(CPM)システムと併せて使用するように構成されている磁気レンズに関する。以下でより詳細に説明するように、そのような磁気レンズは、試料を磁場に界浸することなく、主対物面及び/又は荷電粒子ビームの倍率の選択的な調整を可能にすることができる。例は、固定された作動距離又は焦点面位置を可能にする一方で、調整可能な倍率及び収束角を提供する。
【0017】
図1は、荷電粒子顕微鏡(CPM)システム100の一例の概略図である。CPMシステム100は、荷電粒子源120と、試料152を支持するように構成されている試料ホルダ150と、ビーム方向付けシステム130とを備え得る。荷電粒子源120は、荷電粒子ビーム122を光軸112に沿って試料152に向けて生成及び/又は放出することができ、ビーム方向付けシステム130は、荷電粒子ビーム122を成形し、変調し、集束して、かつ/又は試料152に誘導することができる。
【0018】
ビーム方向付けシステム130は、荷電粒子ビーム122に作用するための様々な構成要素及び/又は要素のいずれかを備え得る。例えば、
図1に示すように、ビーム方向付けシステム130は、荷電粒子ビーム122の角度範囲を制限するように構成されているアパーチャ132、荷電粒子ビーム122を試料154に向かって収束させるように構成されている集光レンズ134、及び/又は荷電粒子ビーム122を偏向させるように構成されている1つ以上の走査コイル136を備え得る。以下でより詳細に説明するように、ビーム方向付けシステム130はまた、荷電粒子ビーム122を試料152上の焦点位置124に方向付ける(例えば、収束及び/又は集束させる)ように動作する磁気対物レンズ138を備える。
図1に示すように、磁気対物レンズ138は、荷電粒子ビーム122が移動できる中心ボア106を備える。様々な例において、ビーム方向付けシステム130は、追加的に又は代替的に、光照射器、対物レンズ、映写レンズ、集光レンズ、静電/磁気レンズ、偏向器(例えば、走査コイル)、補正器(例えば、スティグメータ)などを任意の適切な組み合わせで備え得る。
【0019】
焦点位置124は、本明細書で説明するように、試料152のプローブとして機能するように荷電粒子ビームが十分に集束される任意の位置(例えば、点、領域、線、面、体積など)を含むこと、任意の位置であること、及び/又は任意の位置に対応することができる。例として、焦点位置124は、磁気対物レンズ138に関連付けられた焦点及び/又は焦点面を含むこと、及び/又はこれらであることができる。したがって、本明細書で使用される場合、焦点位置124は、追加的に又は代替的に、焦点124及び/又は焦点面124と呼ばれることがある。焦点位置124が焦点面の少なくとも一部である例では、そのような焦点面は必ずしも完全に平面である必要はないことを理解されたい。例えば、焦点面は、磁気対物レンズ138に関連付けられた像面湾曲を受け得る。
【0020】
以下でより詳細に説明するように、磁気対物レンズ138は、荷電粒子ビーム122の光線を共通の焦点位置(例えば、焦点位置124)に向かって偏向させる1つ以上の磁場を生成することによって、荷電粒子ビーム122を集束させるように動作することができる。様々な例では、
図1に示すように、磁気対物レンズ138は、第1の磁場を生成するように構成されている第1のコイル140と、第2の磁場を生成するように構成されている第2のコイル142とを含む。例えば、第1のコイル140及び/又は第2のコイル142の各々は、各コイルに電流を流すことがそれぞれの磁場を生成するように動作するよう構成されている導電性材料(例えば、ワイヤ)のコイルを含むこと、及び/又はそのようなコイルであることができる。
【0021】
磁気対物レンズ138は、一般に、試料152が、CPMシステム100の動作使用中に第1の磁場及び第2の磁場の各々から実質的に遮蔽及び/又は隔離されるように構成されている。例えば、
図1に示すように、CPMシステム100は、試料ホルダ150及び試料152が、CPMシステム100の動作使用中に磁気対物レンズ138の完全に外部に位置決めされるように構成されている。更に、以下でより詳細に説明するように、磁気対物レンズ138は、第1及び第2の磁場を中心ボア106に向かって、かつ/又は試料152から離れるように誘導及び/又は局在化するように構成されている複数の磁極片を有する。
【0022】
CPMシステム100は、様々なCPMシステムのいずれかの例を表すことができる。特に、本開示は、一般に、CPMシステム100が走査型電子顕微鏡(SEM)システムを含む、及び/又は走査型電子顕微鏡(SEM)システムである例を対象とし、荷電粒子ビーム122は、ビーム方向付けシステム130によって試料152に誘導され集束される電子ビーム122である。そのような例では、(収束した)電子ビーム122は、(例えば)二次電子、後方散乱電子、X線、及び/又は光放射(カソードルミネセンス)を含む、様々なタイプの誘導放射を試料152から発散させるような方法で、試料152と相互作用することができる。
【0023】
本開示は、概して、CPMシステム100がSEMシステムである例に関するが、これは、全ての例に要求されるわけではなく、加えて、本明細書に開示されるシステム及び装置(例えば、磁気対物レンズ138)が、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)、集束イオンビーム(FIB)システム等を含む、任意の好適なCPM構成と併せて使用され得ることは、本開示の範囲内である。
【0024】
図1に示すように、CPMシステム100は、試料152から放出された電子を検出するように構成されている電子検出器160を備え得る。特に、
図1に示す電子検出器160は、試料152から放出される二次電子(SE)を検出するための検出器を表すことができる。CPMシステムが、追加的又は代替的に、試料152からのその他の放出、例えば後方散乱電子(BSE)を検出するように構成されている電子検出器を備え得ることも、本開示の範囲内である。このようにして、電子検出器に入射する電子を特徴付ける(例えば、そのような検出された電子の強度及び/又はエネルギーを特徴付ける)測定値は、電子ビーム122が試料152に入射する位置(例えば、焦点位置124)における試料152の様々な物理的特性の指標、例えば試料152の幾何学的構造及び/又は試料152の化学組成を提供することができる。したがって、CPMシステム100が試料152を特徴付け得る空間分解能は、試料152が位置する場所に対応する平面内の電子ビーム122の最小サイズ(例えば、最小直径)に少なくとも部分的に基づく。
【0025】
したがって、試料152の表面全体を電子ビーム122で走査すると、走査された領域内の試料152の画像及び/又は他の表現をもたらすことができる。そのような走査は、任意の好適な方式で達成できる。例えば、走査コイル136は、電子ビーム122を偏向させて試料152に対して焦点位置124を移動させるように動作することができる。追加的又は代替的に、試料ホルダ150は、試料152を1つ以上の次元にわたって回転及び/又は平行移動させ、試料152を焦点位置124に対して移動させるように構成され得る。したがって、試料152のそのような平行移動及び/又は電子ビーム122の走査は、試料152の選択された部分が、光軸112に沿って進行する電子ビーム122による照射/撮像/検査を可能にすることができる。
【0026】
図1に示すように、CPMシステム100は、CPMシステム100の動作を少なくとも部分的に制御するようにプログラム及び/又は構成されているコントローラ180を更に備え得る。例えば、コントローラ180は、荷電粒子ビーム122を発生させるために荷電粒子源120の動作を少なくとも部分的に制御し得る、及び/又は、ビーム方向付けシステム130の少なくとも一部の動作を少なくとも部分的に制御し得る。追加的に又は代替的に、コントローラ180は、試料152の表面から放出された電子を表す信号を電子検出器160から受信することができ、この信号を用いて試料152の画像及び/又は他の表現を生成することができる。
【0027】
いくつかの例では、コントローラ180はまた、第1の磁場及び/又は第2の磁場を選択的かつ動的に変化させることなどによって、磁気対物レンズ138の動作を少なくとも部分的に制御することができる。これは、磁場を生成するために磁気対物レンズ138に送達される1つ以上の電流を調節することによって達成され得る。例えば、
図1に示すように、コントローラ180は、第1の電流184を第1のコイル140に伝達するように構成されている第1の電流源182と、第2の電流188を第2のコイル142に伝達するように構成されている第2の電流源186とを備え得る。そのような例では、コントローラ180は、磁気対物レンズ138の焦点面を調整するために、第1の電流184及び/又は第2の電流188を選択的に変化させるように構成され得る。
【0028】
様々な例において、第1のコイル140及び第2のコイル142は、対応する磁場を生成するために互いに独立して動作するように構成されている。例えば、第1の電流184を第1のコイル140のみに供給し、第2の電流188を第2のコイル142のみに供給することができ、第1の電流184及び第2の電流188は独立して及び/又は別々に制御される。このように、本開示において、第1のコイル140と第2のコイル142とは、独立したコイルとして及び/又は別々のコイルとして説明され得る。
【0029】
図1に示すように、コントローラ180は、人間のユーザからの入力を受信するため、並びに/又は情報を記録及び/若しくは表示するためのユーザインターフェース190を含み得る。特に、ユーザインターフェース190は、1つ以上の入力デバイス192及び/又は1つ以上の出力デバイス194を含むことができる。1つ以上の入力デバイス192は、キーボード、マウス、ディスプレイ、タッチスクリーンなどといった、CPMシステム100の動作を少なくとも部分的に指示するために人間のユーザからの入力を受信するための任意の適切なデバイスを含んでよく、かつ/又は任意の適切なデバイスであってよい。1つ以上の出力デバイス194は、ディスプレイ、タッチスクリーン、物理的記憶ドライブなどといった、人間のユーザに情報を伝達するための任意の適切なデバイスを含んでよく、かつ/又は任意の適切なデバイスであってよい。
【0030】
コントローラ180は、これら及びその他の機能を実行するための様々なモジュール(例えば、ハードウェア及び/又はソフトウェア)のいずれかを含み得る。いくつかの例では、コントローラ180は、本明細書で説明される構成要素の各々を含む単一のデバイスである。他の例では、コントローラ80は、少なくとも部分的に空間的に分離され得る構成要素の集合を指す、及び/又は包含することができる。コントローラ180は、任意の好適な様式で、例えば1つ以上の制御線を介して、及び/又は無線接続を介して、CPMシステム100の任意の他の好適な構成要素に接続され得る。例として、そのような制御線は、ワイヤ、電気バス、光ファイバなどといった物理的信号管路を含んでよく、かつ/又はそのような物理的信号管路であってよい。
【0031】
図2は、試料252の表面上の焦点位置248に集束される荷電粒子ビーム226の一例を示す。荷電粒子ビーム226は、
図1の荷電粒子ビーム122の一例を表すことができ、試料252は、
図1の試料152の一例を表すことができる。
図2に示されるように、荷電粒子ビーム226は、
図1のビーム方向付けシステム130の一部(例えば、磁気対物レンズ138)を表し得る対物レンズ240によって試料252上に集束され得る。
図2の例では、試料252は、作動距離270だけ対物レンズ240から離間している。
【0032】
図2に示すように、荷電粒子ビーム226は、荷電粒子ビーム源220によって放出され、アパーチャ232によって制限される。荷電粒子ビーム源220及びアパーチャ232は、それぞれ、
図1の荷電粒子源120及びアパーチャ132の例を表すことができる。荷電粒子ビーム226は、対物レンズ240の上流及び/又はその位置での第1のビーム直径224によって特徴付けることができる。荷電粒子ビーム226は、更に、焦点位置248における集束ビーム直径246によって特徴付けることができる。
【0033】
荷電粒子ビーム源220及び対物レンズ240に先行する他の光学要素(
図2には図示せず)と共に、対物レンズ240は、光学カラムの光学倍率、すなわち、荷電粒子ビーム源220における荷電粒子ビーム源直径222から焦点位置248における集束ビーム直径246までの荷電粒子ビーム226の倍率を画定するように動作することができる。例えば、集束ビーム直径246の荷電粒子ビーム源直径222に対する比は、この倍率に対応し得る。
【0034】
荷電粒子ビーム226はまた、光軸212とビームエンベロープの外側範囲との間で測定することができるビーム収束角244(又は「開口角」)によって、及び/又は対物レンズ240の主対物面242と焦点位置248との間の光軸212に沿った距離を表す焦点距離260によって特徴付けることができる。具体的には、本明細書で使用される場合、対物レンズ240の主対物レンズ面242は、焦点距離260が測定される対物レンズ240に空間的に関連付けられた(例えば、少なくとも部分的に対物レンズ240内にある)面を指す。一般に、光学カラムの光学倍率は、収束角244を決定し、これも焦点距離260に関連付けることができる。このようにして、対物レンズ240を調整して主対物レンズ面242の位置を変化させることはまた、焦点距離260、収束角244、及び光学カラムの光学倍率を調整するようにも動作する。そのような調整はまた、対物レンズ240の構造と試料252との間の固定作動距離270を維持しながら行うことができる。
【0035】
上述したように、関連するCPMシステムの空間分解能を最大化するために、集束ビーム直径246は可能な限り小さいことが一般に望ましい。しかしながら、実際には、球面収差、色収差、非点収差、回折などの光学現象が、焦点位置248を含む対物レンズ240の下流の荷電粒子ビーム226の理想的な取得可能なビーム幅の望ましくない増加に寄与する。したがって、焦点位置248は、荷電粒子ビーム226が最小直径(例えば、集束ビーム直径246)を有する位置、及び/又は荷電粒子ビーム226を表す光線の空間密度が最大に達する位置(例えば、光軸212に垂直な平面)を指すことができ、かつ/又はそれに対応することができる。焦点におけるビーム幅の望ましくない増加に対する様々な寄与の合計は、収束角244の最適化された値を選択することによって最小化することができる。したがって、光学カラム倍率が収束角244を決定するため、光学カラム倍率の選択的な変化は、最小の集束ビーム直径246を提供する収束角244の選択を可能にすることができる。
【0036】
実際には、対物レンズ240は、焦点距離260を調整するように動作することができ、それにより、光学カラム倍率及び集束ビーム直径246を調整することができる。このようにして、焦点距離260を調整することは、荷電粒子ビーム源と試料252との間の光学カラムの定められた倍率を調整するように動作することができる。いくつかの例では、集束ビーム直径246は、集束ビーム直径246が特定の対応する焦点距離260において最小値に達するように焦点距離260に依存してもよく、これは、いくつかの例では、焦点距離260の最適化された値と呼ばれる場合がある。
【0037】
いくつかの例では、SEMシステムは、複数の荷電粒子ビームの各々を試料上に集束させるように構成することができる。例えば、
図1を参照すると、荷電粒子ビーム122は第1の荷電粒子ビーム122であってもよく、焦点位置124は第1の焦点位置124であってもよく、ビーム方向付けシステム130は更に、第1の焦点位置124に隣接する試料152上の第2の焦点位置128に第2の荷電粒子ビーム126を方向付けるように構成されてもよい。いくつかの例では、第1の焦点位置124及び第2の焦点位置128は、光軸112に対して垂直に延在する共通焦点面内に位置する。そのような例では、第1の焦点位置124と第2の焦点位置128とを分離する距離(例えば、光軸112に垂直及び/又は試料152の表面に平行な方向に沿って)は、CPMシステム100のビームピッチとして説明される場合がある。そのような例では、CPMシステム100は、マルチビームCPMシステム100及び/又はマルチビームSEMシステム100と呼ばれる場合もある。
【0038】
CPMシステムのいくつかの従来の例では、ビーム方向付けシステムの倍率を調節することは、試料上に入射する荷電粒子ビーム(又は「ビームレット」)のマルチプローブパターンのビームピッチを調節するように動作することもできるため、重要である場合がある。したがって、いくつかの例では、1つ以上の集光レンズ(例えば、
図1の集光レンズ134)を使用して、荷電粒子ビームの開口角及び/又は総倍率を調整することができる。しかしながら、マルチビームSEMシステムなどのいくつかの例では、集光レンズの収差の影響を軽減及び/又は最小化するために、荷電粒子ビームの軌道を制約することができる。そのような例では、このように集光レンズを用いて荷電粒子ビームの開口角及び/又は総倍率を調整することは実際的でない場合がある。
【0039】
別の例として、CPMシステムのいくつかの従来の例では、対物レンズの焦点距離も調整され得るが、そのような焦点距離は、対物レンズの主対物面の概して固定された位置に対して測定され得る。これは、焦点距離が変化するにつれて、光軸212に沿った(例えば、対物レンズに対する)焦点面の位置の変化につながる。いくつかのそのような例では、試料を支持するステージ(例えば、
図1の試料ホルダ150)を使用して、試料を新たに位置決めされた焦点面に移動させることによって作動距離を調整することができる。しかしながら、そのような調整は、信号の品質に望ましくない影響を及ぼす可能性がある。例えば、試料を遠い作動距離に移動させると、カラム内検出器では少数の信号電子しか検出できなくなる可能性がある。あるいは、試料をより短い作動距離に移動させると、チャンバ内検出器を閉塞する可能性がある。更に、いくつかの例では、マルチビームSEMの透過検出は、固定された作動距離を必要とする。
【0040】
一定の作動距離で焦点距離の変化を可能にするために、CPMシステムの対物レンズは、高分解能レンズ及び、荷電粒子ビームの焦点面をシフトさせるために互いに独立して調整できる液浸対物レンズを有する複合磁気レンズを含むことができ、かつ/又はそのようなレンズとすることができる。特に、そのような例では、高分解能レンズ及び液浸対物レンズによって生成される磁場の各々の大きさ間の比を変化させることにより、対物レンズの主対物面の位置をシフトさせることができ、したがって、ビーム方向付けシステムの倍率を調整することができる。そのような例は、概して、試料が液浸対物レンズによって生成される磁場に曝露される(例えば、界浸される)ことを必要とし、これは望ましくない場合がある。例えば、このように界浸磁場を使用することは、磁気感受性試料と共に使用するのに適していない場合があり、そのような構成は、使用可能な作動距離の範囲を制限し得る。加えて、いくつかの例では、高分解能レンズ及び液浸対物レンズによって生成されるそれぞれの磁場は、望ましくない収差を導入する複雑な様式でのみ重複し得、それによって、CPMシステムの分解能を制限する。
【0041】
対照的に、本開示の磁気対物レンズは、レンズによって生成される有意な磁場に試料を曝露することなく、従来の複合磁気レンズと同様の様式で主対物レンズ面の調整を可能にすることができる。このようにして、本開示の磁気対物レンズは、磁気感受性試料と共に使用するのに、並びに/又は顕著な幾何学的及び/若しくは光学的制約を有するマルチビームSEMシステムなどのCPMシステムにおいて使用するのに特によく適し得る。
【0042】
本開示では、物体及び/又は位置(例えば、試料及び/又はその位置)は、磁場が、例えば、磁場の最大振幅の少なくとも75%、磁場の最大振幅の少なくとも50%、磁場の最大振幅の少なくとも30%、磁場の最大振幅の少なくとも20%、磁場の最大振幅の少なくとも10%、磁場の最大振幅の少なくとも5%、磁場の最大振幅の少なくとも2%、磁場の最大振幅の少なくとも1%、磁場の最大振幅の少なくとも0.5%、磁場の最大振幅の少なくとも0.1%、及び/又は磁場の最大振幅の少なくとも0.01%の磁場振幅で、物体及び/若しくは位置まで、それらを通って、並びに/又はそれらの周囲に延在するとき、磁場に「界浸」されていると説明され得る。例えば、従来の液浸対物レンズは、試料位置において磁場の最大振幅の約30%~100%である磁場を生成することができる。
【0043】
同様に、本開示では、物体及び/又は位置は、磁場が、磁場の最大振幅の50%未満、磁場の最大振幅の40%未満、磁場の最大振幅の30%未満、磁場の最大振幅の20%未満、磁場の最大振幅の10%未満、磁場の最大振幅の5%未満、磁場の最大振幅の2%未満、磁場の最大振幅の1%未満、磁場の最大振幅の0.5%未満、磁場の最大振幅の0.1%未満、及び/又は磁場の最大振幅の0.01%未満の磁場振幅でのみ、物体及び/若しくは位置まで、それらを通って、並びに/又はそれらの周囲に延在するとき、磁場から少なくとも実質的に隔離されている、磁場から少なくとも実質的に遮蔽されている、及び/又は磁場に界浸されていないと説明され得る。例えば、本開示による磁気レンズは、試料位置が約6ミリメートル(mm)の作動距離に位置付けられるとき、磁場の最大振幅の約0.07%~5%である磁場を試料位置において生成するように構成され得る。作動距離が短縮されるとき、試料位置における磁場は、最大磁場振幅の約0.6%~40%であり得る。作動距離が約10mmに延長されるとき、試料位置における磁場は、最大磁場振幅の約0.02%~3%であり得る。全てのそのような例において、試料位置に配置された試料は、磁場から少なくとも実質的に隔離されている、磁場から少なくとも実質的に遮蔽されている、及び/又は磁場に界浸されていないと説明され得る。
【0044】
いくつかの例では、磁場の最大振幅は、自由空間(例えば、磁石と関連付けられる磁石構成要素、コイル、磁極片などの外部)における磁場の最大振幅に対応し得る。追加的又は代替的に、いくつかの例では、磁場の最大振幅は、上述した磁気対物レンズ138の中心ボア106内などの、磁場を生成する構成要素の内部領域における磁場の最大振幅に対応し得る。
【0045】
図3は、
図1の磁気対物レンズ138及び/又は
図2の対物レンズ240の例であり得る磁気レンズ300の例を示す。
図3に示すように、磁気レンズ300は、磁気レンズ300の中心ボア304を画定するレンズ本体330を備える。中心ボア304は、磁気レンズ300の中心軸302を画定する及び/又はそれに沿って延在するものとして説明され得る。例えば、レンズ本体330は、中心軸302に対して少なくとも実質的に軸対称であってもよく、荷電粒子ビーム(例えば、
図1の荷電粒子ビーム122)が中心ボア304を通って移動できるように中心ボア304を画定してもよい。特に、いくつかの例では、荷電粒子ビームは、中心軸302と平行及び/又は同一直線上にある光軸(例えば、
図1の光軸112及び/又は
図2の光軸212)に沿ってレンズ本体330を通って進むことができ、いくつかの例では、荷電粒子ビームは複数のビームレットを含み得る。
【0046】
図3を参照すると、磁気レンズ300は、概して、CPMシステムの試料ホルダ380によって支持され得る試料382上に荷電粒子ビームを集束させるように構成されている。試料382は、
図1の試料152及び/又は
図2の試料252を表すことができる。同様に、試料ホルダ380は、
図1の試料ホルダ150を表すことができる。具体的には、磁気レンズ300は、荷電粒子ビームの荷電粒子を偏向させて荷電粒子ビームを試料382の局所領域及び/又は試料382が位置する試料位置384に方向付け及び/又は集束させる1つ以上の磁場を生成するように構成されている。荷電粒子ビームが複数のビームレットを含む例では、磁気レンズ300は、試料382上及び/又は試料位置384におけるそれぞれの離間した焦点位置にビームレットを方向付けるように構成され得る。
【0047】
いくつかの例では、試料位置384は、荷電粒子ビームの焦点位置(例えば、
図1の焦点位置124及び/又は
図2の焦点位置248)に対応し得る。追加的又は代替的に、試料位置384は、荷電粒子ビームが最小特性ビームサイズ(例えば、最小ビーム幅又は直径)及び/又は最適焦点条件に達する位置(例えば、平面)に対応し得る。このようにして、本明細書で使用される場合、試料位置384は、試料382が試料位置384に配置されているか否かにかかわらず、試料382及び/又はその一部(例えば、試料382の露出面)が磁気レンズ300の動作使用中に配置され得る位置(例えば、点及び/又は平面)を表し得る。
【0048】
図3に示すように、磁気レンズ300は、試料位置384及び/又は磁気レンズ300の焦点位置がレンズ本体330の完全に外部に配置されるように構成されている。したがって、磁気レンズ300は、試料382が磁気レンズ300の動作使用中に磁気レンズ300の完全に外部に配置され得るように構成されている。
【0049】
本開示では、試料位置384及び/又は荷電粒子ビームの焦点位置は、任意の適切な方法で表現及び/又は定量化されてもよい。例えば、
図3に示すように、磁気レンズ300及び/又は磁気レンズ300を含むCPMシステムの構成は、レンズ本体330と試料位置384とを分離する作動距離370を参照して特徴付けることができる。
【0050】
図3に示されるように、作動距離370は、中心軸302に平行な方向に沿って測定される、レンズ本体330の一部と試料位置384との間の最小距離を表し得る。より具体的には、作動距離370は、レンズ本体330に接する中心軸302に垂直な第1の平面と、試料位置384に接する(又はそれを含む)中心軸302に垂直な第2の平面との間の最小距離として定義することができる。このようにして、試料382が存在しない場合であっても、磁気レンズ300の作動距離370を画定することができる。
【0051】
作動距離370は、関連するCPMシステムの全体的サイズに関連付けられ得る、及び/又は磁気レンズ300の倍率に関連付けられ得る等、種々の値のうちのいずれかをとり得る。例として、作動距離370は、少なくとも1ミリメートル(mm)、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、最大25mm、最大17mm、最大12mm、最大7mm、及び/又は最大2mmであってよい。作動距離370は、追加的又は代替的に、前述の値のうちの1つ以上を包含及び/又は含む値の範囲等、任意の好適な値の範囲を通して調節可能であってもよい。
【0052】
追加的に又は代替的に、磁気レンズ300及び/又は磁気レンズ300を含むCPMシステムの構成は、磁気レンズ300の焦点距離を参照して特徴付けることができる。特に、
図3に示されるように、磁気レンズ300は、主対物面390を画定することができ、したがって、中心軸302に平行な方向に沿って測定される、主対物面390と試料位置384とを分離する焦点距離392によって特徴付けることができる。
【0053】
焦点距離392はまた、磁気レンズ300の所望の倍率によって少なくとも部分的に決定され得るような様々な値のうちのいずれかをとり得る。例として、焦点距離392は、少なくとも1mm、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、最大25mm、最大17mm、最大12mm、最大7mm、及び/又は最大2mmであってよい。焦点距離392は、追加的又は代替的に、前述の値のうちの1つ以上を包含及び/又は含む値の範囲等、任意の好適な値の範囲を通して調節可能であってもよい。
【0054】
図3に示すように、磁気レンズ300は、第1のコイル310及び第2のコイル320を含み、その各々は、レンズ本体330によって支持されている。第1のコイル310は第1の磁場を生成するように構成されており、第2のコイル320は第2の磁場を生成するように構成されており、その各々は、磁気レンズ300を通って移動する荷電粒子ビームの粒子に作用して(例えば、ローレンツ力を及ぼして)荷電粒子ビームを試料382上に集束させることができる。
図3の第1のコイル310及び第2のコイル320は、それぞれ、
図1の第1のコイル140及び第2のコイル142の例を表すことができる。
【0055】
様々な例において、磁気レンズ300は、磁気レンズ300が第1の磁場及び第2の磁場の各々を生成するときに、第1の磁場及び第2の磁場が(例えば、空間的に)重なり合って、第1の磁場及び第2の磁場の和である全磁場を形成するように構成されている。特に、第1の磁場は、第1のコイル310の周りの空間内の各点における第1の場の大きさによって特徴付けられてもよく、第2の磁場は、第2のコイル320の周りの空間内の各点における第2の場の大きさによって特徴付けられてもよい。したがって、全磁場は、第1のコイル310及び第2のコイル320の周りの空間内の各点における、その点において第1の場の大きさと第2の場の大きさとの和である全場の大きさによって特徴付けられ得る。第1の磁場及び第2の磁場は、中心ボア304を通過する荷電粒子ビームが全磁場によって集束されるように、磁気レンズ300の中心ボア304内で少なくとも部分的に重なり合うことができる。
【0056】
様々な例において、磁気レンズ300の特性及び/又は動作は、第1の磁場単独、第2の磁場単独、第1の磁場及び第2の磁場、並びに/又は全磁場に関して説明され得る。別段の記載がない限り、第1の磁場、第2の磁場、及び/又は全磁場を参照する説明は、概して、参照される磁場が非ゼロの大きさを有する例に関する。
【0057】
従来の磁気レンズと同様に、磁気レンズ300は、第1の磁場の第1の場の大きさと第2の磁場の第2の場の大きさとの比の調整を介して、焦点距離392及び/又は荷電粒子ビームの焦点位置の場所を選択的に調整するように構成され得る。
【0058】
以下でより詳細に説明されるように、レンズ本体330は、概して、試料位置384から離れて全磁場を局在化するように構成されている。特に、レンズ本体330は、磁気レンズ300が全磁場を生成するように動作するとき、レンズ本体330を通過する荷電粒子ビームが第1の磁場及び第2の磁場の各々を受ける一方で、第1の磁場及び第2の磁場の各々が試料位置384から離れた領域に閉じ込められる及び/又は局在化されるように構成することができる。このようにして、磁気レンズ300は、第1の場の大きさの第2の場の大きさに対する比の調整を通じて主対物面390の位置を調整するように構成することができる。したがって、これは、磁気レンズ300を備える光学システムの倍率の調整を可能にする一方で、作動距離370を不変のままにする(又は少量だけ変化させる)ことを可能にし、試料382を全磁場から遮蔽及び/又は隔離することができる。別の言い方をすれば、磁気レンズ300は、液浸レンズを使用することなく開口角及び光学カラム倍率を選択的に調整する能力を保持しながら、動作使用中に試料382が第1の磁場及び第2の磁場の各々から少なくとも実質的に隔離されるように構成することができる。したがって、磁気レンズ300は、磁気感受性試料及び/又はそうでない場合は界浸磁気レンズと共に使用するのに適さない試料と併せて使用することができる。
【0059】
磁気レンズ300は、全磁場を任意の適切な程度に局在化させ、試料位置384において比較的小さい及び/又は無視できる磁場をもたらすように構成されてもよい。いくつかの例では、全磁場の局在化は、中心ボア304内及び試料位置384における磁場の各々の大きさの比較を介して特徴付けられ、及び/又は定量化され得る。例えば、全磁場は、中心ボア304内の任意の点における全磁場の最大振幅を表す最大集束磁場振幅によって特徴付けられてもよく、試料位置384において測定される全磁場の大きさは、最大集束磁場振幅の最大5%、最大集束磁場振幅の最大2%、最大集束磁場振幅の最大1%、最大集束磁場振幅の最大0.5%、及び/又は最大集束磁場振幅の最大0.1%であってもよい。
【0060】
レンズ本体330は、本明細書で説明されるように、全磁場を局在化するための任意の好適な構造及び/又は構成を有することができる。例えば、
図3に示すように、レンズ本体330は、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344を備えることができ、これらの各々は、中心ボア304の周りに少なくとも部分的に円周方向に延在する。第2の磁極片336は、第1の磁極片332の半径方向外側に少なくとも部分的に配置することができ、第3の磁極片344は、第2の磁極片336の半径方向外側に少なくとも部分的に配置することができる。
【0061】
図3の例では、第1のコイル310は第1の磁極片332と第2の磁極片336との間に配置され、第2のコイル320は第2の磁極片336と第3の磁極片344との間に配置されている。したがって、この例では、第2の磁極片336は、第1の磁極片332と第3の磁極片344との間(例えば、半径方向の間)に配置されている。したがって、本開示では、第1の磁極片332は内側磁極片332とも呼ばれ、第2の磁極片336は中間磁極片336とも呼ばれ、及び/又は第3の磁極片344は外側磁極片344とも呼ばれ得る。
【0062】
第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び/又は第3の磁極片344は、任意の適切な方法で第1の磁場及び/又は第2の磁場を成形及び/又は誘導するように構成することができる。特に、第1の磁極片332及び第2の磁極片336は、第1の磁場を中心ボア304に向かって誘導するように構成されてもよく、第2の磁極片336及び第3の磁極片344は、第2の磁場を中心ボア304に向かって誘導するように構成されてもよい。
【0063】
様々な例において、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び/又は第3の磁極片344の各々は、第1の磁場及び/又は第2の磁場の各々を集中させる及び/又は方向付けるように動作する磁性材料(例えば、鉄などの強磁性材料)から形成されてもよい。例えば、そのような磁極片が存在しない場合の第1及び/又は第2の磁場の空間分布に対して、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び/又は第3の磁極片344は、第1及び/又は第2の磁場に関連付けられた磁力線をその中に集中させるように動作することができ、それによって、レンズ本体330の外部のそのような磁場の空間範囲を低減する。
【0064】
上述したように、磁気レンズ300は、第1の磁場及び第2の磁場が少なくとも部分的に空間的に重なり合うように構成されてもよい。特に、磁気レンズ300は、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344が、第1の磁場及び第2の磁場の各々に関連付けられた共通磁気回路の一部を集合的に形成するように構成されてもよい。別の言い方をすれば、第1の磁場及び第2の磁場がそれぞれ非ゼロであるとき、全磁場は、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344の各々を通って延在する磁力線によって特徴付けることができる。
【0065】
この共通磁気回路(例えば、全磁場の磁力線によって表される)は更に、磁極片の間及び/又は中心ボア304内に延在することができる。例えば、
図3に示すように、第1の磁極片332及び第2の磁極片336は、それらの間に第1の磁場領域360を画定することができ、これは、第1の磁場が主に位置する領域を表すことができる。同様に、第2の磁極片336及び第3の磁極片344は、それらの間に第2の磁場領域362を画定することができ、これは、第2の磁場が主に位置する領域を表すことができる。
【0066】
そのような例では、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344を通って延在する共通磁気回路は、第1の磁場領域360及び第2の磁場領域362の各々を通って更に延在し得る。追加的に又は代替的に、第1の磁極片332及び第2の磁極片336は、第1の磁界を第1の磁場領域360を通って中心ボア304に誘導するように構成されてもよく、並びに/又は、第2の磁極片336及び第3の磁極片344は、第2の磁界を第2の磁場領域362を通って中心ボア304に誘導するように構成されてもよい。
【0067】
上述したように、磁気レンズ300によって生成される全磁場は、第1のコイル310によって生成される第1の磁場と第2のコイル320によって生成される第2の磁場との和を表し、これらの各々は、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び/又は第3の磁極片344によって少なくとも部分的に成形される。したがって、磁気レンズ300が第1の磁場及び第2の磁場の各々を生成するように動作するとき、磁気レンズ300内又はその周囲の任意の所与の位置における磁場は、概して、第1の磁場単独又は第2の磁場単独を表さず、代わりに、これらの磁場の和を表す。
【0068】
したがって、本開示では、第1の(又は第2の)磁場を成形又は含有するものとしての構成要素又は領域の説明は、主に第1の(又は第2の)磁場に関係するものとして理解され得るが、そのような説明は、そのような位置における第2の(又は第1の)磁場にも関係し得ることを認識されたい。別の言い方をすれば、本開示は、第1の磁場又は第2の磁場のみに関して構成要素又は領域に言及する説明を含むが、そのような説明は、より一般的には、全磁場の対応する構成要素及び/又は全磁場自体に関することを理解されたい。
【0069】
第1の磁場領域360及び/又は第2の磁場領域362は、様々な形態、形状、及び/又は構成のいずれかを有することができる。例えば、
図3に示されるように、第1の磁場領域360及び/又は第2の磁場領域362は、中心ボア304に対して開いていてもよく、及び/又はそれと同一の広がりを有していてもよい。追加的に又は代替的に、第2の磁場領域362は、例えば、第1の磁場領域360及び第2の磁場領域362が中心ボア304を介してのみ互いに接続されるように、第1の磁場領域360から分離されてもよい。
図3の例では、第1の磁場領域360は、第1のコイル310と中心ボア304との間に延在し、かつ/又はそれらによって境界付けられ、第2の磁場領域362は、第2のコイル320と中心ボア304との間に延在し、かつ/又はそれらによって境界付けられる。
【0070】
図3は、第1のコイル310、第2のコイル320、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344の各々が中心軸302の周りに完全に円周方向に延在する例を表す。しかしながら、これは全ての例に必要とされるわけではなく、加えて、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び/又は第3の磁極片344が中心軸302の周りに部分的にのみ延在できることは、本開示の範囲内である。
【0071】
図3の例では、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344の各々は、少なくとも部分的に中心ボア304を画定する。特に、この例では、第1の磁極片332は第1の終端縁領域334で終端し、第2の磁極片336は第2の終端縁領域338で終端し、第3の磁極片344は第3の終端縁領域346で終端する。
【0072】
この例では、第1の終端縁領域334、第2の終端縁領域338、及び第3の終端縁領域346の各々は、中心ボア304を部分的に画定する略環状の表面を含む、及び/又はこの表面である。そのような例では、第1の終端縁領域334、第2の終端縁領域338、及び第3の終端縁領域346の各々は、追加的又は代替的に、それぞれの磁極片の中心アパーチャを含む、それである、及び/又はそれを画定するものとして説明され得る。
【0073】
図3に示されるように、中心ボア304は、中心軸302に垂直な方向に沿って測定されるボア直径306によって特徴付けられ得る。いくつかの例では、ボア直径306は、第1の終端縁領域334、第2の終端縁領域338、及び/又は第3の終端縁領域346の直径(例えば、最小直径)に対応し得る。
【0074】
図3の例では、第1の終端縁領域334、第2の終端縁領域338、及び第3の終端縁領域346の各々の直径は互いにほぼ等しく、ボア直径306は第1の終端縁領域334に対して示されている。しかしながら、これは全ての例に必要とされるわけではなく、加えて、第1の終端縁領域334、第2の終端縁領域338、及び第3の終端縁領域346のうちの2つ以上が異なるそれぞれの直径を有することは、本開示の範囲内である。そのような例では、ボア直径306は、第1の終端縁領域334、第2の終端縁領域338、及び第3の終端縁領域346の各々の直径のうちの最小のものに対応し得る。いくつかの例では、第1の終端縁領域334、第2の終端縁領域338、及び第3の終端縁領域346の各々の直径は、互いに最大20%異なる。
【0075】
ボア直径306は、荷電粒子ビームが中心ボア304を通過することを可能にするのに十分に大きい値、及び/又は中心軸302に沿った全磁場の大きさを著しく減衰させないのに十分に小さい値など、任意の適切な値をとることができる。例として、ボア直径306は、少なくとも0.1mm、少なくとも0.5mm、少なくとも1mm、少なくとも5mm、最大10mm、最大2mm、最大0.7mm、及び/又は最大0.2mmであり得る。
【0076】
レンズ本体330はまた、中心軸302の方向に沿った第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び/又は第3の磁極片344の互いに対する軸方向オフセットを参照して特徴付けることができる。例えば、
図3に示すように、第1の終端縁領域334及び第2の終端縁領域338は、第1の磁極片間隙350によって分離されてもよく、第2の終端縁領域338及び第3の終端縁領域346は、第2の磁極片間隙354によって分離されてもよい。
【0077】
第1の磁極片間隙350は、第1のコイル310と、例えば第1の磁場領域360を介して連通しているものとして説明することができる。別の言い方をすれば、第1の磁場領域360は、第1のコイル310と第1の磁極片間隙350との間に連続的に延在することができる。同様に、第2の磁極片間隙は、第2のコイル320と、例えば第2の磁場領域362を介して連通しているものとして説明することができる。別の言い方をすれば、第2の磁場領域362は、第2のコイル320と第2の磁極片間隙354との間に連続的に延在することができる。
【0078】
図3に示すように、第1の磁極片間隙350は第1の間隙幅352を有し、第2の磁極片間隙は第2の間隙幅356を有する。この例では、第1の間隙幅352及び第2の間隙幅356の各々は、中心軸302に平行な方向に沿って測定される。
【0079】
第1の磁極片間隙350及び第2の磁極片間隙354は、任意の適切な構成及び/又は相対寸法を有することができる。例として、第1の間隙幅352と第2の間隙幅356との比は、少なくとも1:10、少なくとも1:5、少なくとも1:2、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも5:1、最大10:1、最大5:1、最大2:1、最大1:1、最大1:2、最大1:5、及び/又は最大1:10であり得る。
【0080】
追加的に又は代替的に、
図3に示すように、第1の磁極片間隙350及び第2の磁極片間隙354の各々は、中心軸302に面していてもよい。このような例では、第1の磁極片間隙350及び第2の磁極片間隙354の各々は、軸方向間隙として説明することができる。別の言い方をすれば、そのような例では、第1の終端縁領域334及び第2の終端縁領域338は、主に中心軸302に平行な方向に沿って互いから離間されてもよく、第2の終端縁領域338及び第3の終端縁領域346は、同様に、主に中心軸302に平行な方向に沿って互いから離間されてもよい。したがって、そのような構成は、第2の終端縁領域及び第3の終端縁領域が、中心軸に沿って測定される試料位置の平面からほぼ等距離にある代替例と対比して説明されてもよく、その場合、第2及び第3の磁極片の終端縁領域間の間隙は、試料に面していると説明され得る。しかしながら、そのような代替構成も本開示の範囲内であると理解されるべきである。特に、そのような構成は、界浸磁場を試料に向かって及び/又は試料に方向付けるように動作し得るが、そのような構成は、第3の磁極片を欠く従来の界浸レンズと比較して、改善された特性(例えば、より少ないコイル電流でより強いレンズ効果)をもたらし得る。
【0081】
図3に示すように、第3の磁極片344は、磁気レンズ300の動作使用中に、試料382と第1の磁極片332及び第2の磁極片336の各々との間に位置決めすることができる。別の言い方をすれば、レンズ本体330は、第3の磁極片344が第1の磁極片332及び第2の磁極片336の各々に対して試料382及び/又は試料位置384に近接するように構成され得る。このようにして、第3の磁極片344は、第3の磁極片344がない場合に試料382に到達する磁場から試料382を遮蔽及び/又は隔離するように動作することができる。
【0082】
いくつかの例では、
図3に示すように、第3の磁極片344は、中心孔304及び/又は第3の終端縁領域346に近接する第3の磁極片344の表面(例えば、外面)と、中心軸302に垂直な方向との間で測定されるテーパ角348によって特徴付けることができる。そのようなテーパ角348は、様々な値のいずれかをとることができ、その例には、0度、少なくとも1度、少なくとも5度、少なくとも10度、少なくとも20度、少なくとも30度、最大45度、最大25度、最大15度、最大7度、及び/又は最大3度が含まれる。
【0083】
様々な例において、
図3に示すように、第2の磁極片336は、第1の磁場領域360と第2の磁場領域362との間に連続的に延在するモノリシック磁極片である。このようにして、例えば、第2の磁極片336を通って第1の磁場領域360と第2の磁場領域362との間に延在する磁力線は、第1の磁場領域360と第2の磁場領域362との間の全ての点において、第2の磁極片336の材料内に留まることができる。
【0084】
しかしながら、これは全ての例に必要とされるわけではなく、加えて、第2の磁極片336が複数の離間した磁極片セグメントを含み得ることは、本開示の範囲内である。例えば、
図3に破線で示すように、第2の磁極片336は、第1の中間磁極片セグメント340と、第1の中間磁極片セグメント340から少なくとも部分的に離間した第2の中間磁極片セグメント342とを含むことができる。そのような例では、第1の磁極片332及び第1の中間磁極片セグメント340は、第1の磁場を中心ボア304に向かって誘導するように構成されてもよく、第2の中間磁極片セグメント342及び第3の磁極片344は、第2の磁場を中心ボア304に向かって誘導するように構成されてもよい。
【0085】
いくつかの例では、磁気レンズ300は、第1の中間磁極片セグメント340及び第2の中間磁極片セグメント342の各々が、第1の磁極片332及び第3の磁極片344の各々を更に含む共通磁気回路の一部を形成するように構成されてもよい。
【0086】
上述したように、レンズ本体330は、概して、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344が、第1の磁極片間隙350、第2の磁極片間隙354、第1の磁場領域360、及び/又は第2の磁場領域362などによって少なくとも部分的に互いに離間されるように構成されている。しかしながら、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344のうちの2つ以上が様々な方法で互いに接続されることも本開示の範囲内である。
【0087】
例えば、いくつかの例では、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344のうちの2つ以上は、互いに一体的に形成されてもよい。例として、レンズ本体330は、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344のうちの2つ以上をその各々の部分として含むモノリシックユニットを含んでもよく、かつ/又はモノリシックユニットであってもよい。
【0088】
追加的に又は代替的に、いくつかの例では、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344のうちの2つ以上は、別々に形成され、互いに動作可能に接続及び/又は取り付けられてもよい。例えば、
図3に破線で示すように、レンズ本体330は、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344のうちの2つ以上が、動作可能に、例えば接着、溶接、締結具などを介して結合される磁極片接続基部331を備えてもよい。他の例では、例えば、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344のうちの2つ以上が互いに一体的に形成され得る場合、磁極片接続基部331は、そのような磁極片の間に延在し、それらを相互接続するレンズ本体330の一部を表してもよい。
【0089】
更に、いくつかの例では、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344のうちの2つ以上は、互いに完全に離間していてもよく、かつ/又は互いから切り離されていてもよい。例えば、いくつかのそのような例では、2つ以上のそのような磁極片は、磁極片を含む共通磁気回路の全ての磁力線が、問題の磁極片間に延在するために自由空間(例えば、真空、空気、又は別の周囲環境)を横断しなければならないように、互いから離間されてもよい。
【0090】
図4~
図7は、第1及び第2の磁場の様々なそれぞれの大きさにおける、本開示による磁気レンズによって生成される全磁場の分布及び大きさを示す。特に、
図4~
図7の各々は、第1のコイルに供給される所与の値の第1の電流及び第2のコイルに供給される所与の値の第2の電流に対して生成される磁場を表すものとして理解され得る。
【0091】
図4~
図7の各々において、磁気レンズの様々な構成要素は、
図3に示されるものと類似の参照番号で標識される。特に、
図4~
図7において「NXX」の形態の数字でラベル付けされ、Nが図番号を表す様々な構成要素は、
図3において「3XX」とラベル付けされた対応する構成要素の例を表すものとして理解され得る。したがって、例えば、
図4は、第1の磁極片432、第2の磁極片436、及び第3の磁極片444を有する磁気レンズ400を示しており、これらは、それぞれ、
図3の第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344の類似物及び/又は例とみなすことができる。したがって、
図4~
図7のそのような構成要素は、そのような構成要素が
図4~
図7を参照して具体的に説明されていない場合であっても、
図3の対応する構成要素の任意の適切な特徴、特性、構成などを共有できることを理解されたい。
【0092】
加えて、
図4~
図7は、第1の磁場(412/512/612)及び第2の磁場(522/622/722)に対応する(例えば、主に対応する)磁力線、並びに磁気レンズ400/500/600/700内及びその周囲の軸方向位置の関数としてプロットされた全磁場(424/524/624/724)の大きさを示す。
【0093】
図4は、第1のコイルに供給される第1の電流が457アンペア回数(At)であり、第2のコイルに供給される第2の電流が0である例を示す。
【0094】
図5は、第1のコイルに供給される第1の電流が400Atであり、第2のコイルに供給される第2の電流が680Atである例を示す。
【0095】
図6は、第1のコイルに供給される第1の電流が200Atであり、第2のコイルに供給される第2の電流が1167Atである例を示す。
【0096】
図7は、第1のコイルに供給される第1の電流が0であり、第2のコイルに供給される第2の電流が1277Atである例を示す。
【0097】
図4~
図7の各々において、全磁場424/524/624/724の大きさは、レンズ本体430/530/630/730の外部、特に中心ボア404/504/604/704に対応する軸方向位置において急速に減衰することが分かる。具体的には、
図4~
図7は、試料位置484/584/684/784における全磁場424/524/624/724の大きさが、中心ボア404/504/604/704内及び/又はそれに直接隣接する全磁場424/524/624/724の最大の大きさのごく一部であることを示す。このようにして、本明細書に開示される磁気レンズは、試料位置484/584/684/784に位置付けられた試料を全磁場から実質的に遮蔽及び/又は隔離するように動作することができ、それによって、磁気感受性試料と併せて複合磁気レンズの使用を可能にする。
【0098】
図8は、磁気対物レンズ138及び/又は磁気レンズ300などの磁気レンズを製造及び/又は使用する方法800の例を示すフローチャートである。
図8に示すように、方法800は、822において、試料(例えば、試料152及び/又は試料382)を磁気レンズに対して位置決めすることと、840において、荷電粒子ビーム(例えば、荷電粒子ビーム122)を焦点位置(例えば、焦点位置124及び/又は試料位置384)に集束させるように磁気レンズを動作させることと、を含み得る。
【0099】
いくつかの例では、822において試料を位置決めすることは、試料の少なくとも一部が焦点位置に位置決めされるように位置決めすることを含む。
【0100】
いくつかの例では、822において試料を位置決めすることは、試料と磁気レンズが作動距離だけ分離されるように位置決めすることを含み、840において磁気レンズを動作させることは、作動距離が一定に保持されている間に磁気レンズの倍率を調整することを含む。
【0101】
いくつかの例では、822において試料を位置決めすることは、試料を磁気レンズの完全に外部に位置決めすることを含む。
【0102】
いくつかの例では、840において磁気レンズを動作させることは、試料を磁場に界浸することなく荷電粒子ビームを集束させるための磁場を生成することを含む。例えば、822において試料を位置決めすることは、試料が磁場から少なくとも実質的に隔離されるように位置決めすることを含んでよい。このようにして、磁場から少なくとも実質的に隔離された(例えば、磁場から離間された、及び/又は磁場から離れて局在化された)試料は、磁場に界浸されていないと説明され得る。
【0103】
いくつかの例では、
図8に示すように、840において磁気レンズを動作させることは、842において磁気レンズの第1のコイルを用いて第1の磁場を生成することと、844において磁気レンズの第2のコイルを用いて第2の磁場を生成することとを含む。いくつかのそのような例では、842において第1の磁場を生成すること、及び844において第2の磁場を生成することは、第1の磁場及び第2の磁場が共通磁気回路を形成するように実行される。追加的に又は代替的に、842において第1の磁場を生成すること、及び844において第2の磁場を生成することは、共通磁気回路が磁気レンズの複数の磁極片の各々を通って延在するように実行され得る。
【0104】
いくつかの例では、
図3に示すように、磁気レンズを動作させることは、846において、第1の磁場及び第2の磁場の一方又は両方を調整して磁気レンズの倍率を変化させることを含む。いくつかのそのような例では、846において第1の磁場及び第2の磁場の一方又は両方を調整することは、第1の磁場の第1の場の大きさの、第2の磁場の第2の場の大きさに対する比を調整することを含む。
【0105】
いくつかの例では、荷電粒子ビームは複数の荷電粒子ビームレットを含む。そのような例では、840において磁気レンズを動作させることは、複数の荷電粒子ビームレットを焦点面内のそれぞれの焦点位置に集束させることを含んでよい。そのような例では、840において磁気レンズを動作させることはまた、846において第1の磁場及び第2の磁場の一方又は両方を調整して、焦点面の位置をシフトさせることなく焦点面における集束荷電粒子ビームレットのピッチを変化させることを含んでもよい。
【0106】
いくつかの例では、
図8に示すように、方法800は、磁気レンズを動作させる前に、820において、磁気レンズを含む荷電粒子顕微鏡システム(例えば、荷電粒子顕微鏡システム100)を組み立てることを更に含む。いくつかのそのような例では、荷電粒子顕微鏡システムは、光軸(例えば、光軸112)に沿って荷電粒子ビームを放出するように構成されている荷電粒子源(例えば、荷電粒子源120)を備え、820において荷電粒子顕微鏡システムを組み立てることは、光軸が磁気レンズの中心ボアを通って延在するように磁気レンズを位置決めすることを含む。
【0107】
いくつかの例では、
図8に示すように、方法800は、810において、少なくとも2つの軸方向間隙を画定する複数の磁極片と、少なくとも2つの軸方向間隙とそれぞれ連通する少なくとも2つの独立したコイルとを備える磁気レンズを製造することを含む。例えば、複数の磁極片は、第1の磁極片332、第2の磁極片336、及び第3の磁極片344を含んでよく、かつ/又はそれらであってよく、少なくとも2つの軸方向間隙は、第1の磁極片間隙350及び第2の磁極片間隙354を含んでよく、かつ/又はそれらであってよい。
【0108】
いくつかの例では、810において磁気レンズを製造することは、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの2つ以上を単一のユニットとして一体的に形成することを含む。
【0109】
追加的又は代替的に、いくつかの例では、810において磁気レンズを製造することは、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの2つ以上を別々に形成することと、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの2つ以上を互いに動作可能に結合することとを含んでよい。
【0110】
いくつかの例では、磁気レンズを製造することは、少なくとも2つの独立したコイルの各コイルが複数の磁極片のうちの対応する磁極片対の間に位置決めされるように、少なくとも2つの独立したコイルを位置決めすることを含む。
【0111】
一般的な考察
本出願及び特許請求の範囲において使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、その内容に別段の明確な指示がない限り、複数形を含む。更に、「含む(includes)」という用語は、「備える(comprises)」を意味する。更に、「結合された(coupled)」という用語は、結合されたアイテム間の中間要素の存在を除外しない。
【0112】
特に明記しない限り、本明細書で使用される場合、「実質的に(substantially)」という用語は、列挙された値及び/又は特性、並びに列挙された値及び/又は特性の少なくとも75%である任意の値及び/又は特性を意味する。同等に、「実質的に(substantially)」という用語は、列挙された値及び/又は特性、並びに列挙された値及び/又は特性と最大で25%だけ異なる、任意の値及び/又は特性を意味する。例えば、「実質的に等しい(substantially equal)」とは、完全に等しい量、並びに最大25%だけ互いに異なる量を指す。
【0113】
本明細書で説明されるシステム、装置、及び方法は、決して限定するものとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、様々な開示される実施例の全ての新規かつ非自明な特徴並びに態様を、単独で、並びに互いとの様々な組み合わせ及び部分的組み合わせで対象とする。開示されるシステム、方法、及び装置は、任意の特定の態様若しくは特徴又はそれらの組み合わせに限定されず、開示されるシステム、方法、及び装置は、任意の1つ以上の特定の利点が存在すること、又は問題が解決されることを必要としない。動作の任意の理論は、説明を容易にするためのものであるが、開示されるシステム、方法、及び装置は、このような動作の理論に限定されない。
【0114】
開示される方法のうちのいくつかの動作は、便宜的な提示のために特定の連続的な順序で説明されるが、この説明の様式は、特定の順序付けが以下に記載される特定の文言によって必要とされない限り、並べ替えを包含することを理解されたい。例えば、連続して説明される動作は、場合によっては、並べ替えられてもよいか、又は同時に行われてもよい。更に、簡略化のために、添付の図面は、開示されるシステム、方法、及び装置が、他のシステム、方法、及び装置と共に使用され得る様々な方法を示していない場合がある。更に、説明は、開示される方法を説明するために「生成する、発生させる(produce)」及び「提供する(provide)」のような用語を使用することがある。これらの用語は、行われる実際の動作の高レベルの抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装態様に応じて変化し、当業者によって容易に認識可能である。
【0115】
本技術革新は、プログラムモジュールに含まれる命令などのコンピュータ実行可能な命令が、コンピューティングシステムにおいて、標的の実プロセッサ又は仮想プロセッサ上で実行されるという、一般的な文脈で説明され得る。一般に、プログラムモジュール又はコンポーネントは、特定のタスクを行うか、又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、ライブラリ、オブジェクト、クラス、コンポーネント、データ構造などを含む。プログラムモジュールの機能は、様々な実施例において、所望されるように、プログラムモジュール間で組み合わされてもよいか、又は分割されてもよい。プログラムモジュールのためのコンピュータ実行可能な命令は、ローカルコンピューティングシステム又は分散コンピューティングシステム内で実行されてもよい。一般に、コンピューティングシステム又はコンピューティング素子は、ローカルとし得る、又は分散し得るが、専用ハードウェア及び/又は汎用ハードウェアと、本明細書で説明される機能を実装するソフトウェアと、の任意の組み合わせを含み得る。
【0116】
本明細書で説明される様々な実施例では、モジュール(例えば、コンポーネント又はエンジン)は、特定の動作を行うように、又は特定の機能を提供するように、「プログラム化」/「コード化」され得、モジュールのためのコンピュータ実行可能な命令が、このような動作を行うように、このような動作を行わせるように、又はそうでなければこのような機能を提供するように実行され得ることを示す。ソフトウェアコンポーネント、モジュール、又はエンジンに関して説明される機能は、個別のソフトウェアユニット(例えば、プログラム、関数、クラスメソッド)として実行され得るが、個別のユニットとして実装される必要はない。すなわち、機能は、より大きいプログラム又はより汎用のプログラム内の1つ以上のコード行などの、より大きいプログラム又はより汎用のプログラムに組み込まれ得る。
【0117】
説明されるアルゴリズムは、例えば、デジタルコンピュータによって実行されるソフトウェア又はファームウェア命令として具現化されてもよい。例えば、開示される方法のいずれも、顕微鏡検査ツールの一部である1つ以上のコンピュータ又はその他のコンピューティングハードウェアによって実行され得る。コンピュータは、1つ以上のプロセッサ(処理素子)及び有形の非一時的コンピュータ可読媒体(例えば、1つ以上の光媒体ディスク、揮発性メモリ素子(Dynamic Random Access Memory、DRAM、若しくはStatic Random Access Memory、SRAMなど)、又は不揮発性メモリ若しくはストレージ素子(ハードドライブ、NVRAM(Non-Volatile Random Access Memory)、及びソリッドステートドライブ(Solid State Drive、SSD)(例えば、フラッシュドライブ)など)を備えるコンピュータシステムであり得る。1つ以上のプロセッサは、有形の非一時的コンピュータ可読媒体のうちの1つ以上に記憶されたコンピュータ実行可能な命令を実行し得るが、それによって、開示される技術のいずれかを実行する。例えば、開示される実施例のいずれかを実行するためのソフトウェアは、コンピュータ実行可能な命令として1つ以上の揮発性の非一時的コンピュータ可読媒体上に記憶され得、コンピュータ実行可能な命令は、1つ以上のプロセッサによって実行された場合に、1つ以上のプロセッサに、開示される技術又は技術のサブセットのいずれかを実行させる。
【0118】
例示された実施例を参照して、開示される技術の原理を説明及び例解してきたが、例示された実施例は、このような原理から逸脱することなく、構成及び詳細において修正され得ることが、認識されるであろう。例えば、ソフトウェアで実行される実施例の素子は、ハードウェアで実装されてもよく、逆もまた同様である。また、任意の実施例からの技術は、その他の実施例のうちの任意の1つ以上において説明される技術と組み合わせられ得る。例解された実施例を参照して説明されたような手順及び機能は、単一のハードウェア若しくはソフトウェアモジュールにおいて実装され得るか、又は別個のモジュールが提供され得ることが、理解されよう。上記の特定の構成は、簡便な例解のために提供されており、その他の構成が使用され得る。
【0119】
開示される技術の追加の実施例
開示される主題の上述の実装形態を考慮して、本出願は、以下に列挙される追加の実施例を開示する。単独の項の1つの特徴、又はその項の2つ以上の特徴の組み合わせはまた、所望により、1つ以上の更なる実施例のうちの1つ以上の特徴との組み合わせにおいて、本出願の開示に含まれる更なる実施例であることに留意されたい。
【0120】
実施例1.装置であって、荷電粒子ビームを焦点面内の試料位置に方向付けるように構成されている磁気レンズを備え、磁気レンズは、少なくとも2つの軸方向間隙を画定する複数の磁極片と、少なくとも2つの軸方向間隙とそれぞれ連通し、磁気レンズが可変主対物面を有する単一の対物レンズとして動作するように磁場を生成するよう構成されている少なくとも2つの独立コイルと、を備え、可変主対物面は、磁気レンズのコイルによって生成される磁場に試料位置を界浸することなく、焦点面における荷電粒子ビームの倍率の選択的調整を可能にする、装置。
【0121】
実施例2.磁気レンズが中心ボアを備え、複数の磁極片は、中心ボアの周りに円周方向に延在する第1の磁極片と、中心ボアの周りに円周方向に延在し、第1の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている第2の磁極片と、中心ボアの周りに円周方向に延在し、第2の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている第3の磁極片と、を含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例1に記載の装置。
【0122】
実施例3.少なくとも2つの独立したコイルが、全磁場を生成するように構成されており、全磁場は、磁気レンズ内の全磁場の最大振幅を表す最大集束磁場振幅を有し、試料位置において測定される全磁場の大きさは、最大集束磁場振幅の最大5%である、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例1~2のいずれか1つに記載の装置。
【0123】
実施例4.磁気レンズであって、中心ボアを有するレンズ本体と、レンズ本体によって支持されており、第1の場の大きさを有する第1の磁場を生成するように構成されている第1のコイルと、レンズ本体によって支持されており、第2の場の大きさを有する第2の磁場を生成するように構成されている第2のコイルと、を備え、第1の磁場及び第2の磁場は、中心ボア内で少なくとも部分的に空間的に重なり合い、磁気レンズは、荷電粒子ビームをレンズ本体の外部の試料位置に方向付けるように構成されており、レンズ本体は、第1の磁場及び第2の磁場を試料位置から離れた領域に閉じ込める複数の磁極片を備える、磁気レンズ。
【0124】
実施例5.複数の磁極片が、中心ボアの周りに円周方向に延在する第1の磁極片と、中心ボアの周りに円周方向に延在し、第1の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている第2の磁極片と、中心ボアの周りに円周方向に延在し、第2の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている第3の磁極片と、を含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例4に記載の磁気レンズ。
【0125】
実施例6.磁気レンズは、第1の磁場と第2の磁場とが重なり合って、第1の磁場と第2の磁場との和である全磁場を形成するように構成されており、全磁場は、中心ボア内の全磁場の最大振幅を表す最大集束磁場振幅を有し、試料位置において測定される全磁場の大きさは、最大集束磁場振幅の最大5%、最大集束磁場振幅の最大2%、最大集束磁場振幅の最大1%、最大集束磁場振幅の最大0.5%、及び最大集束磁場振幅の最大0.1%のうちの1つ以上である、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例4~5のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0126】
実施例7.磁気レンズであって、中心ボアを有するレンズ本体と、レンズ本体によって支持されており、第1の場の大きさを有する第1の磁場を生成するように構成されている第1のコイルと、レンズ本体によって支持されており、第2の場の大きさを有する第2の磁場を生成するように構成されている第2のコイルと、を備え、磁気レンズは、第1の場の大きさと第2の場の大きさとの間の比を調整することが、中心ボアを通過する荷電粒子ビームの焦点位置の場所を調整するように動作するよう構成されており、焦点位置は、レンズ本体の外部に配置され、第1の磁場及び第2の磁場の各々は、焦点位置から離れた領域に局所化されている、磁気レンズ。
【0127】
実施例8.磁気レンズは、第1の磁場と第2の磁場とが重なり合って、第1の磁場と第2の磁場との和である全磁場を形成するように構成されており、全磁場は、中心ボア内の全磁場の最大振幅を表す最大集束磁場振幅を有し、焦点位置において測定される全磁場の大きさは、最大集束磁場振幅の最大5%、最大集束磁場振幅の最大2%、最大集束磁場振幅の最大1%、最大集束磁場振幅の最大0.5%、及び最大集束磁場振幅の最大0.1%のうちの1つ以上である、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例7に記載の磁気レンズ。
【0128】
実施例9.磁気レンズであって、レンズ本体と、レンズ本体によって支持されており、第1の磁場を生成するように構成されている第1のコイルと、レンズ本体によって支持されており、第2の磁場を生成するように構成されている第2のコイルと、を備え、レンズ本体は、磁気レンズを通過する荷電粒子ビームを受け取るように構成されている中心ボアと、中心ボアの周りに円周方向に延在している、第1の磁極片と、中心ボアの周りに円周方向に延在し、第1の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている第2の磁極片と、中心ボアの周りに円周方向に延在し、第2の磁極片の半径方向外側に少なくとも部分的に配置されている第3の磁極片と、を含む、磁気レンズ。
【0129】
実施例10.第1のコイルが、第1の磁極片と第2の磁極片との間に少なくとも部分的に配置されており、第2のコイルは、第2の磁極片と第3の磁極片との間に少なくとも部分的に配置されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9に記載の磁気レンズ。
【0130】
実施例11.第1の磁極片及び第2の磁極片は、第1の磁場を中心ボアに向かって誘導するように構成されており、第2の磁極片及び第3の磁極片は、第2の磁場を中心ボアに向かって誘導するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~10のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0131】
実施例12.磁気レンズは、第1のコイルが第1の磁場を生成し、第2のコイルが第2の磁場を生成するとき、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片が共通磁気回路の一部を集合的に形成するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~11のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0132】
実施例13.共通磁気回路が、中心ボア内に延在する、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例12に記載の磁気レンズ。
【0133】
実施例14.磁気レンズは、第1の磁場及び第2の磁場の一方又は両方を選択的に変化させることにより、(i)磁気レンズの主対物面の位置、(ii)磁気レンズの倍率、及び(iii)磁気レンズを出る荷電粒子ビームの収束角のうちの1つ以上を調整するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~13のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0134】
実施例15.磁気レンズが、焦点位置及び焦点面の一方又は両方において荷電粒子ビームを試料上に集束させるように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~15のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0135】
実施例16.磁気レンズは、第1の磁場及び第2の磁場の一方又は両方を選択的に変化させることにより、荷電粒子ビームの焦点面が不変のままであるように磁気レンズの主対物面の位置を調整するよう構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例15に記載の磁気レンズ。
【0136】
実施例17.磁気レンズは、磁気レンズの動作使用中に、試料が磁気レンズの完全に外部に配置可能であるように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例15~16のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0137】
実施例18.磁気レンズは、磁気レンズの動作使用中に、レンズ本体と試料とが、磁気レンズの中心軸に平行な方向に沿って測定するとき、少なくとも1ミリメートル(mm)、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、最大25mm、最大17mm、最大12mm、最大7mm、及び最大2mmのうちの1つ以上である作動距離だけ分離されるように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例15~17のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0138】
実施例19.磁気レンズは、磁気レンズの動作使用中に、レンズ本体と試料とが、磁気レンズの中心軸に平行な方向に沿って測定される作動距離だけ分離されるように構成されており、磁気レンズは、作動距離が一定のままでありながら、磁気レンズの倍率が調整可能であるように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例15~18のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0139】
実施例20.磁気レンズは、磁気レンズの動作使用中に、試料が第1の磁場及び第2の磁場から少なくとも実質的に隔離されるように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例15~18のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0140】
実施例21.磁気レンズは、第1の磁場と第2の磁場とが重なり合って、第1の磁場と第2の磁場との和である全磁場を形成するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例15~20のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0141】
実施例22.全磁場が、中心ボア内の全磁場の最大振幅を表す最大集束磁場振幅を有し、試料において測定される全磁場の大きさは、最大集束磁場振幅の最大40%、最大集束磁場振幅の最大30%、最大集束磁場振幅の最大20%、最大集束磁場振幅の最大10%、最大集束磁場振幅の最大5%、最大集束磁場振幅の最大2%、最大集束磁場振幅の最大1%、最大集束磁場振幅の最大0.5%、最大集束磁場振幅の最大0.1%、及び最大集束磁場振幅の最大0.01%のうちの1つ以上である、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例21に記載の磁気レンズ。
【0142】
実施例23.第1の磁場が第1の場の大きさで生成され、第2の磁場が第2の場の大きさで生成され、磁気レンズは、第1の場の大きさと第2の場の大きさとの間の比を調整することが、磁気レンズの主対物面、(ii)磁気レンズの倍率、及び(iii)磁気レンズを出る荷電粒子ビームの収束角のうちの1つ以上を調整するように動作するよう構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~22のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0143】
実施例24.荷電粒子ビームが、複数の荷電粒子ビームレットを含み、磁気レンズが、複数の荷電粒子ビームレットを焦点面内のそれぞれの焦点位置に集束させるように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~23のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0144】
実施例25.磁気レンズが、焦点面における集束荷電粒子ビームレットのピッチを変化させるように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例24に記載の磁気レンズ。
【0145】
実施例26.荷電粒子ビームが、中心ボアを通って延在する磁気レンズの中心軸に平行な光軸に沿って進む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~25のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0146】
実施例27.磁気レンズが中心軸を画定し、レンズ本体は、中心軸に対して少なくとも実質的に軸対称である、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~26のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0147】
実施例28.磁気レンズが中心軸を画定し、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片の各々は、中心軸の周りに完全に円周方向に延在する、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~27のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0148】
実施例29.第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの1つ以上が、中心ボアを少なくとも部分的に画定する、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~28のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0149】
実施例30.磁気レンズの中心軸に垂直な方向に沿って測定されるとき、中心ボアが、少なくとも0.1mm、少なくとも0.5mm、少なくとも1mm、少なくとも5mm、最大10mm、最大2mm、最大0.7mm、及び最大0.2mmのうちの1つ以上であるボア直径を有する、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例29に記載の磁気レンズ。
【0150】
実施例31.第2の磁極片が、第1の磁極片と第3の磁極片との間に配置されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~30のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0151】
実施例32.第1の磁極片が、第1の終端縁領域で終端し、第2の磁極片が、第2の終端縁領域で終端し、第3の磁極片が、第3の終端縁領域で終端する、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~31のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0152】
実施例33.第1の終端縁領域、第2の終端縁領域、及び第3の終端縁領域の各々が、実質的に環状の表面を含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例32に記載の磁気レンズ。
【0153】
実施例34.第1の終端縁領域、第2の終端縁領域、及び第3の終端縁領域の各々が、磁気レンズの中心軸に垂直な方向に沿って測定されるそれぞれの直径によって特徴付けられ、第1の終端縁領域、第2の終端縁領域、及び第3の終端縁領域のそれぞれの直径は、互いに最大20%異なる、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例32~33のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0154】
実施例35.第1の終端縁領域及び第2の終端縁領域が、第1の間隙幅を有する第1の磁極片間隙によって分離され、第2の終端縁領域及び第3の終端縁領域が、第2の間隙幅を有する第2の磁極片間隙によって分離される、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例32~34のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0155】
実施例36.第1の間隙幅と第2の間隙幅との比は、少なくとも1:10、少なくとも1:5、少なくとも1:2、少なくとも1:1、少なくとも2:1、少なくとも5:1、最大10:1、最大5:1、最大2:1、最大1:1、最大1:2、最大1:5、及び最大1:10のうちの1つ以上である、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例35に記載の磁気レンズ。
【0156】
実施例37.第1の磁極片間隙及び第2の磁極片間隙の一方又は両方が、磁気レンズの中心軸に面する、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例35~36のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0157】
実施例38.第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの2つ以上が、互いに一体的に形成される、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~37のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0158】
実施例39.第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの2つ以上が、別々に形成され、互いに動作可能に接続されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~38のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0159】
実施例40.レンズ本体が、磁極片接続基部を更に備え、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの2つ以上は、磁極片接続基部を介して互いに結合されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~39のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0160】
実施例41.磁気レンズの動作使用中に、第1の磁極片及び第2の磁極片の各々に対して第3の磁極片が試料に近接している、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~40のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0161】
実施例42.第3の磁極片が、中心ボアに近接する第3の磁極片の表面と磁気レンズの中心軸に垂直な方向との間で測定されるテーパ角によって特徴付けられ、テーパ角は、0度、少なくとも1度、少なくとも5度、少なくとも10度、少なくとも20度、少なくとも30度、最大45度、最大25度、最大15度、最大7度、及び最大3度のうちの1つ以上である、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~41のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0162】
実施例43.第2の磁極片が、複数の離間した磁極片セグメントを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~42のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0163】
実施例44.複数の離間した磁極片セグメントが、第1の中間磁極片セグメントと、第1の中間磁極片セグメントから少なくとも部分的に離間された第2の中間磁極片セグメントとを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例43に記載の磁気レンズ。
【0164】
実施例45.第1の磁極片及び第1の中間磁極片セグメントは、第1の磁場を中心ボアに向かって誘導するように構成されており、第2の中間磁極片セグメント及び第3の磁極片は、第2の磁場を中心ボアに向かって誘導するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例44に記載の磁気レンズ。
【0165】
実施例46.磁気レンズの動作使用中に、第1の中間磁極片セグメント及び第2の中間磁極片セグメントの各々が、第1の磁極片及び第3の磁極片の各々を追加的に含む共通磁気回路の一部を形成する、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例44~45のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0166】
実施例47.第2の磁極片がモノリシック磁極片である、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~46のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0167】
実施例48.第1の磁極片及び第2の磁極片は、第1の磁極片と第2の磁極片との間に第1の磁場領域を画定し、第2の磁極片及び第3の磁極片は、第2の磁極片と第3の磁極片との間に第1の磁場領域とは別個の第2の磁場領域を画定し、第2の磁極片は、第1の磁場領域と第2の磁場領域との間に連続的に延在する、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~47のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0168】
実施例49.第1の磁極片及び第2の磁極片は、第1の磁極片と第2の磁極片との間に第1の磁場領域を画定し、第2の磁極片及び第3の磁極片は、第2の磁極片と第3の磁極片との間に第1の磁場領域とは別個の第2の磁場領域を画定し、第1の磁場領域は、中心ボアに対して開いている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例9~48のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0169】
実施例50.第2の磁場領域が中心ボアに対して開いている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例49に記載の磁気レンズ。
【0170】
実施例51.磁気レンズは、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片が、第1の磁場領域及び第2の磁場領域の各々を通って延在する共通磁気回路の一部を集合的に形成するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例49~50のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0171】
実施例52.第1の磁場領域は、第1のコイルと中心ボアとの間に延在し、第2の磁場領域は、第2のコイルと中心ボアとの間に延在する、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例49~51のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0172】
実施例53.第1の磁極片及び第2の磁極片は、第1の磁場を第1の磁場領域を通って中心ボアに誘導するように構成されており、第2の磁極片及び第3の磁極片は、第2の磁場を第2の磁場領域を通って中心ボアに誘導するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例49~52のいずれか1つに記載の磁気レンズ。
【0173】
実施例54.荷電粒子顕微鏡システムであって、荷電粒子ビームを光軸に沿って試料に向けて放出するように構成されている荷電粒子源と、試料を支持するように構成されている試料ホルダと、荷電粒子ビームを試料の位置に対応する焦点位置に集束させるように構成されている磁気対物レンズと、を備え、磁気対物レンズは、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例1~52のいずれか1つに記載の磁気レンズを含む、荷電粒子顕微鏡システム。
【0174】
実施例55.荷電粒子ビームが電子ビームを含み、荷電粒子顕微鏡システムは、走査電子顕微鏡(SEM)として動作するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例54に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0175】
実施例56.試料から放出された電子を検出するように構成されている電子検出器を更に備える、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例55に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0176】
実施例57.電子検出器が、荷電粒子ビームと試料との間の相互作用を介して生成された二次電子を検出するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例56に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0177】
実施例58.試料にわたって荷電粒子ビームを走査するため荷電粒子ビームを偏向させるように構成されている1つ以上の走査コイルを更に備える、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例54~57のいずれか1つに記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0178】
実施例59.荷電粒子ビームを試料に向けて収束させるように構成されている集光レンズを更に備える、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例54~58のいずれか1つに記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0179】
実施例60.荷電粒子顕微鏡システムの動作を少なくとも部分的に制御するように構成されているコントローラを更に備える、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例54~59のいずれか1つに記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0180】
実施例61.コントローラが、磁気対物レンズの動作を少なくとも部分的に制御するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例60に記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0181】
実施例62.磁気対物レンズが、第1の磁場を生成するように構成されている第1のコイルと、第2の磁場を生成するように構成されている第2のコイルと、を備え、コントローラが、第1の磁場及び第2の磁場の一方又は両方を選択的かつ動的に変化させるように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例60~61のいずれか1つに記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0182】
実施例63.コントローラが、第1の電流を第1のコイルに伝達するように構成されている第1の電流源と、第2の電流を第2のコイルに伝達するように構成されている第2の電流源と、を備え、コントローラは、第1の電流及び第2の電流の一方又は両方を選択的に変化させて、磁気対物レンズの焦点面を調整するように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例60~62のいずれか1つに記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0183】
実施例64.コントローラが、荷電粒子顕微鏡システムの動作を少なくとも部分的に指示するために人間のユーザからの入力を受信するための1つ以上の入力デバイスを備える、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例60~63のいずれか1つに記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0184】
実施例65.コントローラが、人間のユーザに情報を伝達するための1つ以上の出力デバイスを備える、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例60~64のいずれか1つに記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0185】
実施例66.試料ホルダが、磁気対物レンズの完全に外部に配置されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例54~65のいずれか1つに記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0186】
実施例67.荷電粒子顕微鏡システムは、荷電粒子顕微鏡システムの動作使用中に、試料が磁気対物レンズの完全に外部に配置されるように構成されている、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例54~66のいずれか1つに記載の荷電粒子顕微鏡システム。
【0187】
実施例68.方法であって、試料を磁気レンズに対して位置決めすることと、荷電粒子ビームを焦点位置に集束させるように磁気レンズを動作させることと、を含み、磁気レンズは、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例1~53のいずれか1つに記載の磁気レンズである、方法。
【0188】
実施例69.試料を位置決めすることが、試料の少なくとも一部が焦点位置に位置決めされるように位置決めすることを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例68に記載の方法。
【0189】
実施例70.試料を位置決めすることが、試料と磁気レンズとが作動距離だけ分離されるように位置決めすることを含み、磁気レンズを動作させることが、作動距離が一定に保持されている間に磁気レンズの倍率を調整することを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例68~69のいずれか1つに記載の方法。
【0190】
実施例71.試料を位置決めすることは、作動距離が、少なくとも1ミリメートル(mm)、少なくとも5mm、少なくとも10mm、少なくとも15mm、少なくとも20mm、最大25mm、最大17mm、最大12mm、最大7mm、及び最大2mmのうちの1つ以上であるように位置決めすることを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例70に記載の方法。
【0191】
実施例72.試料を位置決めすることが、試料を完全に磁気レンズの外部に位置決めすることを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例68~71のいずれか1つに記載の方法。
【0192】
実施例73.磁気レンズを動作させることが、磁場を生成し、試料を磁場に界浸することなく荷電粒子ビームを集束させることを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例68~72のいずれか1つに記載の方法。
【0193】
実施例74.磁気レンズを動作させることが、磁場を生成して荷電粒子ビームを集束させることを含み、試料を位置決めすることは、試料が磁場から少なくとも実質的に隔離されるように位置決めすることを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例68~73のいずれか1つに記載の方法。
【0194】
実施例75.磁気レンズを動作させることが、磁気レンズの第1のコイルを用いて第1の磁場を生成することと、磁気レンズの第2のコイルを用いて第2の磁場を生成することと、を含み、第1の磁場を生成すること及び第2の磁場を生成することは、第1の磁場及び第2の磁場が共通磁気回路を形成するように実行される、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例68~74のいずれか1つに記載の方法。
【0195】
実施例76.第1の磁場を生成すること及び第2の磁場を生成することは、共通磁気回路が複数の磁極片の各々を通って延在するように実行される、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例75に記載の方法。
【0196】
実施例77.磁気レンズを動作させることが、第1の磁場及び第2の磁場の一方又は両方を調整して、磁気レンズの主対物面の位置をシフトさせることを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例75~76のいずれか1つに記載の方法。
【0197】
実施例78.第1の磁場及び第2の磁場の一方又は両方を調整することが、第1の磁場の第1の場の大きさの、第2の磁場の第2の場の大きさに対する比を調整することを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例77に記載の方法。
【0198】
実施例79.荷電粒子ビームが複数の荷電粒子ビームレットを含み、磁気レンズを動作させることは、複数の荷電粒子ビームレットを焦点面内のそれぞれの焦点位置に集束させることと、第1の磁場及び第2の磁場の一方又は両方を調整して、焦点面の位置をシフトさせることなく焦点面における集束荷電粒子ビームレットのピッチを変化させることと、を含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例75~78のいずれか1つに記載の方法。
【0199】
実施例80.磁気レンズを動作させる前に、磁気レンズを備える荷電粒子顕微鏡システムを組み立てることを更に含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例68~79のいずれか1つに記載の方法。
【0200】
実施例81.荷電粒子顕微鏡システムが、光軸に沿って荷電粒子ビームを放出するように構成されている荷電粒子源を備え、荷電粒子顕微鏡システムを組み立てることは、光軸が磁気レンズの中心ボアを通って延在するように磁気レンズを位置決めすることを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例80に記載の方法。
【0201】
実施例82.方法であって、少なくとも2つの軸方向間隙を画定する複数の磁極片と、少なくとも2つの軸方向間隙とそれぞれ連通する少なくとも2つの独立したコイルとを備える磁気レンズを製造することを含む、方法。
【0202】
実施例83.複数の磁極片が、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片を含み、磁気レンズを製造することは、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの2つ以上を単一ユニットとして一体的に形成することを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例82に記載の方法。
【0203】
実施例84.複数の磁極片が、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片を含み、磁気レンズを製造することは、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの2つ以上を別々に形成することと、第1の磁極片、第2の磁極片、及び第3の磁極片のうちの2つ以上を互いに動作可能に結合することと、を含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例82~83のいずれか1つに記載の方法。
【0204】
実施例85.磁気レンズを製造することは、少なくとも2つの独立したコイルの各コイルが、複数の磁極片のうちの対応する磁極片対の間に位置決めされるように、少なくとも2つの独立したコイルを位置決めすることを含む、本明細書のいずれかの実施例、特に実施例82~84のいずれか1つに記載の方法。
【0205】
任意の実施例に関して本明細書で説明される特徴は、別段の記載がない限り、他の実施例のうちの任意の1つ以上において説明される他の特徴と組み合わせることができる。例えば、1つの磁気レンズの任意の1つ以上の特徴は、別の磁気レンズの任意の1つ以上の特徴と組み合わせることができる。
【0206】
本開示の原理が適用され得る多数の可能な方法の観点では、例示された構成は開示される技術の例を示すものであり、本開示の範囲又は特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないと認識すべきである。むしろ、特許請求される主題の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその等価物によって定義される。
【外国語明細書】