(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005551
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム、および基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20250109BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20250109BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/318 C
C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105763
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】花島 建夫
(72)【発明者】
【氏名】中島 智志
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA06
4K030AA11
4K030AA13
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA18
4K030BA02
4K030BA09
4K030BA10
4K030BA12
4K030BA13
4K030BA17
4K030BA18
4K030BA20
4K030BA22
4K030BA29
4K030BA35
4K030CA12
4K030EA03
4K030EA04
4K030FA10
4K030GA02
4K030GA12
4K030HA01
4K030KA04
4K030KA39
4K030KA41
4K030LA02
4K030LA15
5F045AA06
5F045AB31
5F045AB34
5F045AC00
5F045AC02
5F045AC03
5F045AC04
5F045AC05
5F045AC07
5F045AC08
5F045AC09
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC14
5F045AC15
5F045AC16
5F045AC17
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AD12
5F045AE15
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045BB08
5F045BB14
5F045BB15
5F045BB17
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EB03
5F045EB10
5F045EC08
5F045EC09
5F045EE04
5F045EE12
5F045EE14
5F045EE19
5F045EF03
5F045EF09
5F045EF11
5F045EF20
5F045EG02
5F045EK06
5F045EK27
5F045EM09
5F045EM10
5F045EN05
5F045GB05
5F045GB06
5F045HA16
5F058BA20
5F058BC03
5F058BC04
5F058BC11
5F058BF04
5F058BF24
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF30
5F058BF36
5F058BF37
5F058BG01
5F058BG02
5F058BG03
5F058BG04
5F058BH03
5F058BH07
(57)【要約】
【課題】内表面が金属含有材料により構成された配管を通じて酸素を含むガスを供給する際、内表面と当該ガスとの反応による配管温度の上昇を抑制することが可能な技術を提供する。
【解決手段】(a)内表面が金属含有材料により構成され、処理容器に接続された第2配管を第1温度以上まで加熱した状態で、前記第2配管とは異なる第1配管を介して前記処理容器内に第1処理ガスを供給することで、前記処理容器内に収容された基板に対して第1処理を行う工程と、(b)前記第2配管の温度を前記第1温度よりも低い第2温度以下まで低下させた状態で、前記第2配管を介して前記処理容器内に酸素を含有する第2処理ガスを供給することで、前記基板に対して第2処理を行う工程と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)内表面が金属含有材料により構成され、処理容器に接続された第2配管を第1温度以上まで加熱した状態で、前記第2配管とは異なる第1配管を介して前記処理容器内に第1処理ガスを供給することで、前記処理容器内に収容された基板に対して第1処理を行う工程と、
(b)前記第2配管の温度を前記第1温度よりも低い第2温度以下まで低下させた状態で、前記第2配管を介して前記処理容器内に酸素を含有する第2処理ガスを供給することで、前記基板に対して第2処理を行う工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
(a)では、前記第2配管を介した前記処理容器内への前記第2処理ガスの供給を不実施とする、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
(b)では、前記処理容器内への前記第1処理ガスの供給を不実施とする、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
(b)では、前記処理容器内への、前記第2処理ガスおよび不活性ガスを除く他のガスの供給を不実施とする、
請求項1から3のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記第1配管の内表面は前記金属含有材料により構成され、
前記第1処理ガスは第1の酸素含有ガスを含み、
前記第1の酸素含有ガスの前記金属含有材料に対する反応性は、前記第2処理ガスの前記金属含有材料に対する反応性よりも小さい、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記第2処理ガスは過酸化水素ガス、オゾンガス、およびプラズマ励起された酸素含有ガスの少なくとも何れかを含むガスである、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(b)では、前記第1配管の温度を前記第1温度以上まで加熱した状態を維持する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記第2温度は、前記金属含有材料と前記第2処理ガスとの反応が生じない温度である、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記第1温度は、前記金属含有材料と前記第2処理ガスとの反応が生じる温度である、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(a)では、前記第1処理が実行されている間において、前記第2配管の温度を前記第1温度以上に維持する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(b)では、前記第2処理が実行されている間において、前記第2配管の温度を前記第2温度以下に維持する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項12】
(b)では、前記第2処理が実行されている間において、前記第1配管の温度を前記第1温度以上に維持する、
請求項1、10、および11のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項13】
(b)では、前記第2処理を実行中に前記第2配管の温度が前記第2温度よりも高い第4温度となった場合、前記第2処理の実行を停止する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項14】
(a)と(b)との間の期間において、
(c)前記第1処理及び前記第2処理を不実施とした状態で、前記第2配管の温度を前記第2温度まで降温させる工程、をさらに有する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項15】
(c)では、前記第2配管の温度が前記第2温度まで降下したタイミングで(b)を開始する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項16】
(c)において、前記第2配管を加熱するように設けられたヒータの制御温度には、前記第2温度よりも低い第3温度が設定される、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項17】
(a)および(b)では、前記第2配管を介した前記処理容器内への窒素含有ガスの供給を不実施とする、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項18】
(a)内表面が金属含有材料により構成され、処理容器に接続された第2配管を第1温度以上まで加熱した状態で、前記第2配管とは異なる第1配管を介して前記処理容器内に第1処理ガスを供給することで、前記処理容器内に収容された基板に対して第1処理を行う工程と、
(b)前記第2配管の温度を前記第1温度よりも低い第2温度以下まで低下させた状態で、前記第2配管を介して前記処理容器内に酸素を含有する第2処理ガスを供給することで、前記基板に対して第2処理を行う工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)内表面が金属含有材料により構成され、処理容器に接続された第2配管を第1温度以上まで加熱した状態で、前記第2配管とは異なる第1配管を介して前記処理容器内に第1処理ガスを供給することで、前記処理容器内に収容された基板に対して第1処理を行う手順と、
(b)前記第2配管の温度を前記第1温度よりも低い第2温度以下まで低下させた状態で、前記第2配管を介して前記処理容器内に酸素を含有する第2処理ガスを供給することで、前記基板に対して第2処理を行う手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
基板を処理する処理容器と、
前記処理容器に接続された第1配管を介して、前記処理容器内に第1処理ガスを供給する第1処理ガス供給系と、
内表面が金属含有材料により構成され、前記処理容器に接続された、前記第1配管とは異なる第2配管を介して、前記処理容器内に酸素を含有する第2処理ガスを供給する第2処理ガス供給系と、
前記第2配管を加熱するヒータと、
(a)前記第2配管を第1温度以上まで加熱した状態で、前記第1配管を介して前記処理容器内に前記第1処理ガスを供給することで、前記基板に対して第1処理を行う処理と、
(b)前記第2配管の温度を前記第1温度よりも低い第2温度以下まで低下させた状態で、前記第2配管を介して前記処理容器内に前記第2処理ガスを供給することで、前記基板に対して第2処理を行う処理と、
を実行するように、前記第1処理ガス供給系、前記第2処理ガス供給系、および前記ヒータを制御することが可能なよう構成される制御部と、
有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム、および基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、内表面が金属含有材料により構成された配管を通じて酸素を含むガスを供給する際、内表面と当該ガスとの反応による配管温度の上昇を抑制することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
(a)内表面が金属含有材料により構成され、処理容器に接続された第2配管を第1温度以上まで加熱した状態で、前記第2配管とは異なる第1配管を介して前記処理容器内に第1処理ガスを供給することで、前記処理容器内に収容された基板に対して第1処理を行う工程と、
(b)前記第2配管の温度を前記第1温度よりも低い第2温度以下まで低下させた状態で、前記第2配管を介して前記処理容器内に酸素を含有する第2処理ガスを供給することで、前記基板に対して第2処理を行う工程と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、内表面が金属含有材料により構成された配管を通じて酸素を含むガスを供給する際、内表面と当該ガスとの反応による配管温度の上昇を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を縦断面図で示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置の縦型処理炉の概略構成図であり、処理炉202部分を
図1のA-A線断面図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の一態様で好適に用いられる基板処理装置のコントローラ121の概略構成図であり、コントローラ121の制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の一態様における処理シーケンスを示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の一態様における基板処理工程の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、主に、
図1~
図5を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0009】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は温度調整部(加熱部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状であり、保持板に支持されることにより垂直に据え付けられている。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0010】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状にマニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス鋼(SUS)等の金属含有材料により構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成される。処理室201は、基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。この処理室201内でウエハ200に対する処理が行われる。
【0011】
処理室201内には、第1~第3供給部としてのノズル249a~249cが、マニホールド209の側壁を貫通するようにそれぞれ設けられている。ノズル249a~249cを、それぞれ第1ノズル~第3ノズルとも称する。ノズル249a~249cは、例えば石英またはSiC等の耐熱性材料により構成されている。ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ノズル249a~249cはそれぞれ異なるノズルであり、ノズル249b,249cのそれぞれは、ノズル249aに隣接して設けられている。
【0012】
ノズル249a~249cには、ガス供給管232a~232cがそれぞれ接続されている。ガス供給管232a~232cは、それぞれ、複数種のガスの供給に用いられる共用配管として構成されている。ガス供給管232a~232cには、ガス流の上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a~241cおよび開閉弁であるバルブ243a~243cがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232d,232eがそれぞれ接続されている。ガス供給管232d,232eには、ガス流の上流側から順に、MFC241d,241e、バルブ243d,243eがそれぞれ設けられている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232fが接続されている。ガス供給管232fには、ガス流の上流側から順に、MFC241f、バルブ243fが設けられている。ガス供給管232cのバルブ243cよりも下流側には、ガス供給管232gが接続されている。ガス供給管232gには、ガス流の上流側から順に、MFC241g、バルブ243gが設けられている。ガス供給管232a~232gは、例えばSUS等の金属含有材料により構成されており、これらの内表面も同じく例えばSUS等の金属含有材料により構成されている。本明細書では、ガス供給管232a,232b,232dのそれぞれを、またはこれらをまとめて第1配管と称し、ガス供給管232cを第2配管と称する場合がある。
【0013】
第1配管としてのガス供給管232a,232b,232dのMFC241a,241b,241dの上流側には、それぞれ、温度検出器である配管温度センサ234a,234b,234dが装着されている。第2配管としてのガス供給管232cのMFC241cの上流側には、配管温度センサ234cが装着されている。配管温度センサは、熱電対(thermocouple)などの既知の温度センサにより構成することができる。また、本態様では、第1配管としてのガス供給管232a,232b,232dの外周には、それぞれ、加熱部としての配管ヒータ233a,233b,233dが装着されている。第2配管としての232cの外周には、配管ヒータ233bが装着されている。
【0014】
図2に示すように、ノズル249a~249cは、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の配列方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。すなわち、ノズル249a~249cは、ウエハ200が配列されるウエハ配列領域の側方の、ウエハ配列領域を水平に取り囲む領域に、ウエハ配列領域に沿うようにそれぞれ設けられている。平面視において、ノズル249aは、処理室201内に搬入されるウエハ200の中心を挟んで後述する排気口231aと一直線上に対向するように配置されている。ノズル249b,249cは、ノズル249aと排気口231aの中心とを通る直線Lを、反応管203の内壁(ウエハ200の外周部)に沿って両側から挟み込むように配置されている。直線Lは、ノズル249aとウエハ200の中心とを通る直線でもある。すなわち、ノズル249cは、直線Lを挟んでノズル249bと反対側に設けられているということもできる。ノズル249b,249cは、直線Lを対称軸として線対称に配置されている。ノズル249a~249cの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a~250cがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a~250cは、それぞれが、平面視において排気口231aと対向(対面)するように開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a~250cは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、第1処理ガスとしての原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232bからは、第1処理ガスとしての第2反応ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232cからは、酸素(O)を含有する第2処理ガスが、MFC241c、バルブ243c、ノズル249cを介して処理室201内へ供給される。
【0018】
ガス供給管232dからは、第1処理ガスとしての第1反応ガスが、MFC241d、バルブ243d、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0019】
ガス供給管232e~232gからは、不活性ガスが、それぞれMFC241e~24g、バルブ243e~243g、ガス供給管232a~232c、ノズル249a~249cを介して処理室201内へ供給される。不活性ガスは、パージガス、キャリアガス、希釈ガス等として作用する。
【0020】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、第2反応ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第2処理ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、第1反応ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232e~232g、MFC241e~241g、バルブ243e~243gにより、不活性ガス供給系が構成される。本態様では、原料ガス供給系、第1反応ガス供給系、および第2反応ガス供給系をまとめて第1処理ガス供給系と称する。上述の各種供給系を構成するガス供給管に接続されるノズルを、その供給系にそれぞれ含めてもよい。
【0021】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243gやMFC241a~241g等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232gのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232g内への各種物質(各種ガス)の供給動作、すなわち、バルブ243a~243gの開閉動作やMFC241a~241gによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232g等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0022】
反応管203の側壁下方には、処理室201内の雰囲気を排気する排気口231aが設けられている。
図2に示すように、排気口231aは、平面視において、ウエハ200を挟んでノズル249a~249c(ガス供給孔250a~250c)と対向(対面)する位置に設けられている。排気口231aは、反応管203の側壁の下部より上部に沿って、すなわち、ウエハ配列領域に沿って設けられていてもよい。排気口231aには排気管231が接続されている。排気管231は、例えばSUS等の金属含有材料により構成されている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0023】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属含有材料により構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、例えばSUS等の金属含有材料により構成され、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ウエハ200を処理室201内外に搬入および搬出(搬送)する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0024】
マニホールド209の下方には、シールキャップ219を降下させボート217を処理室201内から搬出した状態で、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシャッタ219sが設けられている。シャッタ219sは、例えばSUS等の金属含有材料により構成され、円盤状に形成されている。シャッタ219sの上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220cが設けられている。シャッタ219sの開閉動作(昇降動作や回動動作等)は、シャッタ開閉機構115sにより制御される。
【0025】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料により構成される断熱板218が多段に支持されている。
【0026】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0027】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。また、コントローラ121には、外部記憶装置123を接続することが可能となっている。
【0028】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に記録され、格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121によって、基板処理装置に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0029】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241g、バルブ243a~243g、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、配管温度センサ234a~234d、ヒータ207、配管ヒータ233a~233d、回転機構267、ボートエレベータ115、シャッタ開閉機構115s等に接続されている。
【0030】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241gによる各種物質(各種ガス)の流量調整動作、バルブ243a~243gの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、シャッタ開閉機構115sによるシャッタ219sの開閉動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0031】
コントローラ121は、外部記憶装置123に記録され、格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。外部記憶装置123は、例えば、HDD等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやSSD等の半導体メモリ等を含む。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行うようにしてもよい。
【0032】
(2)基板処理工程
上述の基板処理装置を用い、半導体装置の製造工程の一工程として、基板を処理する方法、すなわち、基板としてのウエハ200上に膜を形成する成膜シーケンスを含む一連の処理シーケンス例について、主に、
図4、
図5を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0033】
本態様における処理シーケンスでは、
(a)処理容器に接続され、内表面が金属含有材料により構成された第2配管(ガス供給管232c)を第1温度以上まで加熱した状態で、第2配管とは異なる第1配管(ガス供給管232a,232b,232d)を介して処理容器内に第1処理ガスを供給することで、処理容器内に収容されたウエハ200に対して第1処理を行うステップAと、
(b)第2配管の温度を第1温度よりも低い第2温度以下まで低下させた状態で、第2配管を介して処理容器内に酸素を含有する第2処理ガスを供給することで、ウエハ200に対して第2処理を行うステップBと、
を有する。
【0034】
なお、本態様における処理シーケンスでは、ステップAにおいて、
ウエハ200に対して第1処理ガスとして、原料ガスを供給するステップa1と、
ウエハ200に対して第1処理ガスとして、第1反応ガスを供給するステップa2と、
ウエハ200に対して第1処理ガスとして、第2反応ガスを供給するステップa3と、
を含むサイクルを所定回数(n回、nは1または2以上の整数)実行することにより、ウエハ200上に膜を形成する例を示す。
本明細書では、原料ガス、第1反応ガス、第2反応ガスのそれぞれを、またはこれらをまとめて第1処理ガスと称する場合がある。
【0035】
なお、本態様における処理シーケンスでは、ステップBにおいて、
ウエハ200に対して、酸素(O)を含有する第2処理ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成された膜をトリートメントする例を示す。
【0036】
また、本態様における処理シーケンスでは、ステップAとステップBとの間の期間において、第2配管の温度を、第1温度以上の温度から第1温度よりも低い温度である第2温度に降温させるステップCをさらに有する例を示す。
【0037】
なお、以下では、膜として、シリコン酸窒化膜(SiON膜)をウエハ200上に形成する例について説明する。
【0038】
本明細書では、上述の処理シーケンスを、便宜上、以下のように示すこともある。以下の変形例や他の態様等の説明においても、同様の表記を用いる。
【0039】
(原料ガス→第1反応ガス→第2反応ガス)×n→第2配管温度降温→Oを含有する第2処理ガス
【0040】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0041】
本明細書において用いる「層」という用語は、連続層および不連続層のうち少なくともいずれかを含む。例えば、後述するSi含有層は、連続層を含んでいてもよく、不連続層を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0042】
本明細書において、第1処理ガスおよびOを含有する第2処理ガスそれぞれがウエハ200表面に対して吸着することや反応することについて述べる場合、それらが未分解のままウエハ表面に対して吸着や反応を起こす態様だけではなく、それらが分解することや、その配位子(リガンド)が脱離することにより生成される中間体がウエハ200表面に対して吸着や反応を起こす態様をも含むことがある。
【0043】
(ウエハチャージおよびボートロード)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、シャッタ開閉機構115sによりシャッタ219sが移動させられて、マニホールド209の下端開口が開放される(シャッタオープン)。その後、
図1に示すように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて処理室201内へ搬入(ボートロード)される。この状態で、シールキャップ219は、Oリング220bを介してマニホールド209の下端をシールした状態となる。このようにして、ウエハ200は、処理室201内に準備(提供)されることとなる。
【0044】
(圧力調整および温度調整)
ボートロードが終了した後、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ246によって真空排気(減圧排気)される。このとき、処理室201内の圧力は圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ244がフィードバック制御される。また、処理室201内のウエハ200が所望の処理温度となるように、ヒータ207によって加熱される。このとき、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構267によるウエハ200の回転を開始する。処理室201内の排気、ウエハ200の加熱および回転は、いずれも、少なくともウエハ200に対する処理が終了するまでの間は継続して行われる。
【0045】
(第2配管の温度設定)
その後、第2配管(ガス供給管232c)内の温度が第1温度またはそれ以上の温度となるように、配管ヒータ233cによって加熱される。このとき、第2配管内が所望の温度分布となるように、配管温度センサ234cが検出した温度情報に基づき配管ヒータ233cへの通電具合がフィードバック制御される。このとき、第1配管(ガス供給管232a,232b,232d)内の温度も、第1温度またはそれ以上の温度となるように、配管ヒータ233a,233b、233dによってそれぞれ加熱されることが好ましい。また、第2配管内の温度を第1温度となるように加熱する工程を行うタイミングは、圧力調整および温度調整の後に限定されるものではなく、ウエハチャージおよびボートロード、圧力調整および温度調整のいずれかと同時、またはこれらよりも前の時点から開始するようにしてもよい。
【0046】
(第1処理:ステップA)
その後、以下のステップa1,a2,a3を順次実行する。
【0047】
[ステップa1]
本ステップでは、処理室201内のウエハ200に対して原料ガスを供給する。
【0048】
具体的には、バルブ243aを開き、ガス供給管232a(第1配管)内へ原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して原料ガスが供給される(原料ガス供給)。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。ノズル249b,249cを介して供給される不活性ガスは、処理室内の原料ガス等がノズル249a,249b内へ侵入(逆流)することを抑制する侵入抑制ガスとしても作用する。
【0049】
本ステップにて原料ガスを供給する際における処理条件としては、
処理温度:350~900℃、好ましくは500~900℃、より好ましくは600~800℃
処理圧力:1~10000Pa、好ましくは10~1333Pa
第1配管温度:第1温度以上であって、例えば、160~250℃、好ましくは180~250℃
第2配管温度:第1温度以上であって、例えば、160~250℃、好ましくは180~250℃
原料ガス供給流量:0.01~3slm、好ましくは0.1~1slm
原料ガス供給時間:10~120秒、好ましくは20~60秒
不活性ガス供給流量(ガス供給管毎):0~10slm
が例示される。
【0050】
なお、本明細書における「350~900℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「350~900℃」とは「350℃以上900℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。また、本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力、換言すると、ウエハ200が存在する空間の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。また、配管温度とは配管内の温度を意味する。また、供給流量に0slmが含まれる場合、0slmとは、その物質(ガス)を供給しないケースを意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0051】
上述の条件下でウエハ200に対して原料ガスとして、例えば、クロロシラン系ガスを供給することにより、下地としてのウエハ200の最表面上に、塩素(Cl)を含むシリコン(Si)含有層が形成される。Clを含むSi含有層は、ウエハ200の最表面への、クロロシラン系ガスの分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の物理吸着や化学吸着、クロロシラン系ガスの熱分解によるSiの堆積等により形成される。Clを含むSi含有層は、クロロシラン系ガスの分子やクロロシラン系ガスの一部が分解した物質の分子の吸着層(物理吸着層や化学吸着層)であってもよく、Clを含むSiの堆積層であってもよい。本明細書では、Clを含むSi含有層を、単に、Si含有層とも称する。
【0052】
原料ガスとしては、例えば、ウエハ200上に形成される膜を構成する主元素としてのSiを含むシラン系ガスを用いることができる。シラン系ガスとしては、例えば、Siおよびハロゲンを含むガス、すなわち、ハロシラン系ガスを用いることができる。ハロゲンには、塩素(Cl)、フッ素(F)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等が含まれる。ハロシラン系ガスとしては、例えば、SiおよびClを含む上述のクロロシラン系ガスを用いることができる。
【0053】
原料ガスとしては、例えば、モノクロロシラン(SiH3Cl)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガス、トリクロロシラン(SiHCl3)ガス、テトラクロロシラン(SiCl4)ガス、ヘキサクロロジシランガス(Si2Cl6)ガス、オクタクロロトリシラン(Si3Cl8)ガス等のクロロシラン系ガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0054】
原料ガスとしては、クロロシラン系ガスの他、例えば、テトラフルオロシラン(SiF4)ガス、ジフルオロシラン(SiH2F2)ガス等のフルオロシラン系ガスや、テトラブロモシラン(SiBr4)ガス、ジブロモシラン(SiH2Br2)ガス等のブロモシラン系ガスや、テトラヨードシラン(SiI4)ガス、ジヨードシラン(SiH2I2)ガス等のヨードシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0055】
原料ガスとしては、これらの他、例えば、Siおよびアミノ基を含むガス、すなわち、アミノシラン系ガスを用いることもできる。アミノ基とは、アンモニア、第一級アミン又は第二級アミンから水素(H)を除去した1価の官能基のことであり、-NH2,-NHR,-NR2のように表すことができる。なお、Rはアルキル基を示し、-NR2の2つのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
原料ガスとしては、例えば、テトラキス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]4)ガス、トリス(ジメチルアミノ)シラン(Si[N(CH3)2]3H)ガス、ビス(ジエチルアミノ)シラン(Si[N(C2H5)2]2H2)ガス、ビス(ターシャリーブチルアミノ)シラン(SiH2[NH(C4H9)]2)ガス、(ジイソプロピルアミノ)シラン(SiH3[N(C3H7)2])ガス等のアミノシラン系ガスを用いることもできる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0057】
不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)ガスや、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。この点は、後述する各ステップにおいても同様である。
【0058】
Si含有層が形成された後、バルブ243aを閉じ、処理室201内への原料ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。このとき、バルブ243e~243gを開き、処理室201内へ不活性ガスを供給する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0059】
[ステップa2]
ステップa1が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSi含有層に対して第1反応ガスを供給する。
【0060】
具体的には、バルブ243dを開き、ガス供給管232d(第1配管)内へ第1反応ガスを流す。第1反応ガスは、MFC241dにより流量調整され、ノズル249aを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して第1反応ガスが供給される(第1反応ガス供給)。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0061】
本ステップにて第1反応ガスを供給する際における処理条件としては、
第1反応ガス供給流量:0.01~4slm、好ましくは0.3~1slm
第1反応ガス供給時間:1~60秒、好ましくは5~20秒
が例示される。他の処理条件は、ステップa1における処理条件と同様とすることができる。
【0062】
上述の条件下でウエハ200に対して第1反応ガスとして、例えば、O含有ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSi含有層の少なくとも一部が酸化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、SiおよびOを含む層として、シリコン酸化層(SiO層)が形成される。本態様では、第1反応ガスとして、例えばO含有ガスを用いるものとする。以下、第1反応ガスを第1のO含有ガスと称する場合がある。
【0063】
本ステップにおいて用いられる第1のO含有ガスの、ガス供給管232d(第1配管)の内表面を構成する金属含有材料に対する反応性は、後述するステップBで用いられるO含有する第2処理ガスの、ガス供給管232c(第2配管)の内表面を構成する金属含有材料に対する反応性よりも小さい。ここにおける反応性とは、主に酸化反応の生じ易さ(酸化力)を含む。これにより、ガス供給管232dの内表面が金属含有材料により構成されている場合であっても、本ステップにおける第1のO含有ガスと金属含有材料との反応によるガス供給管232dの温度の上昇を抑制することができる。
【0064】
第1反応ガスとしては、例えば、酸素(O2)ガス、亜酸化窒素(N2O)ガス、一酸化窒素(NO)ガス、二酸化窒素(NO2)ガス、一酸化炭素(CO)ガス、二酸化炭素(CO2)ガス等を用いることができる。第1反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0065】
また、第1反応ガスとしては、水蒸気(H2O)、H2ガス+O2ガス、H2Oガス+O2ガス、H2Oガス+N2Oガス、H2Oガス+NOガス等のOおよびH含有ガスを用いることもできる。この場合において、H含有ガスとして、H2ガスの代わりに重水素(2H2)ガスを用いることもできる。第1反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0066】
なお、第1反応ガスは例示したものに限定されず、ガス供給管232dの内表面を構成する金属含有材料に対する反応性が第2処理ガスよりも小さいO含有ガスの中から、適宜選択することができる。また、第2処理ガスよりも反応性が小さい第1反応ガスとして、第2処理ガスと同じ種類のガス(すなわち分子構造が同じガス)であって、第2処理ガスよりも濃度が低いガス(たとえば、希釈ガス等により希釈された第2処理ガス)を選択することもできる。
【0067】
また、本明細書において「H2ガス+O2ガス」というような2つのガスの併記記載は、H2ガスとO2ガスとの混合ガスを意味している。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後、処理室201内へ供給するようにしてもよいし、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給する場合、O含有ガスはガス供給管232d(第1配管)を介して処理室201内へ供給し、もう一方のガス(もう一方のガスもO含有ガスである場合を含む)は他のガス供給管を介して処理室201へ供給することが好ましい。
【0068】
SiO膜が形成された後、バルブ243dを閉じ、処理室201内への第1反応ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。そして、ステップa1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0069】
[ステップa3]
ステップa2が終了した後、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiO層に対して第2反応ガスを供給する。
【0070】
具体的には、バルブ243bを開き、ガス供給管232b(第1配管)内へ第2反応ガスを流す。第2反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して第2反応ガスが供給される(第2反応ガス供給)。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0071】
本ステップにて第2反応ガスを供給する際における処理条件としては、
第2反応ガス供給流量:0.1~20slm、好ましくは1~10slm
第2反応ガス供給時間:1~120秒、好ましくは3~15秒
が例示される。他の処理条件は、ステップa1における処理条件と同様とすることができる。
【0072】
上述の条件下でウエハ200に対して第2反応ガスとして、例えば、窒素(N)及びH含有ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSiO層の少なくとも一部が窒化(改質)される。結果として、下地としてのウエハ200の最表面上に、Si、O、およびNを含む層として、シリコン酸窒化層(SiON層)が形成される。
【0073】
第2反応ガスとしては、例えば、窒化ガスを用いることができる。窒化ガスとしては、例えば、上述のN及びH含有ガスを用いることができる。N及びH含有ガスは、N含有ガスでもあり、H含有ガスでもある。
【0074】
第2反応ガスとしては、例えば、アンモニア(NH3)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、N3H8ガス等の窒化水素系ガスを用いることができる。第2反応ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0075】
SiON膜が形成された後、バルブ243bを閉じ、処理室201内への第2反応ガスの供給を停止する。そして、処理室201内を真空排気し、処理室201内に残留するガス状物質等を処理室201内から排除する。そして、ステップa1におけるパージと同様の処理手順により、処理室201内に残留するガス等を処理室201内から排除する(パージ)。
【0076】
[所定回数実施]
上述のステップa1~a3を、非同時に、すなわち、同期させることなくこの順に行うサイクルをn回(nは1または2以上の整数)行うことにより、ウエハ200の表面を下地として、この下地上に、所定の厚さの膜として、例えば、所定の厚さのSiON膜を形成することができる。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。すなわち、1サイクルあたりに形成されるSiON層の厚さを所望の膜厚よりも薄くし、SiON層を積層することで形成されるSiON膜の厚さが所望の厚さになるまで、上述のサイクルを複数回繰り返すことが好ましい。
【0077】
前述の通り、ステップAでは、ノズル249cから侵入抑制ガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給する。しかし、侵入抑制ガスの供給だけでは、ノズル249cおよびガス供給管232c内へ、処理室201内で生じた副生成物などが侵入することを防ぐことができないことがある。さらに、ステップAでは、第2配管温度が第1温度未満、例えば160℃未満となると、処理室201内で生じた副生成物が処理室201内から第2配管内へ侵入(逆流)した際に、侵入した副生成物が第2配管内に付着(堆積)するのを抑制することが困難となる場合がある。このような課題に対して、第2配管温度を第1温度以上にすることにより、処理室201内から侵入した副生成物が第2配管内に付着するのを抑制することが可能となる。第2配管温度を第1温度よりも高い温度、例えば第1温度よりも20℃以上高い温度にすることにより、処理室201内から侵入した副生成物が第2配管内に付着(堆積)するのをより効果的に抑制できる。第1温度以上の温度とは、副生成物が第2配管内に付着するのを抑制できる温度ということができる。但し、第2配管温度が過剰に高いと、例えば、250℃以上にすると、樹脂などで構成された配管付帯部材、例えば封止部材が焼損することがある。そのため、第2配管温度を例えば250℃以下とすることが好ましい。なお、第2配管内に付着する副生成物は、処理室201から侵入した副生成物の他にも、第2配管内に侵入した第1処理ガスが第2配管内で熱分解等することにより生成される副生成物を含むこともある。
【0078】
(第2配管温度降温処理:ステップC)
ステップAの終了後であって後述のステップBの開始前に、第2配管の設定温度、すなわち、配管ヒータ233cの制御温度を、第1温度から第3温度に変更する。このとき、第2配管温度が所望の温度分布となるように、配管温度センサ234cが検出した温度情報に基づき配管ヒータ233cへの通電具合がフィードバック制御される。第3温度は、第1温度よりも低い第2温度よりもさらに低い温度である。第2配管温度が、第2温度に降下するまで待機する。
【0079】
(第2処理:ステップB)
第2配管温度が、第1温度から第2温度に降下したら、そのタイミングでステップBを開始する。本ステップでは、処理室201内のウエハ200、すなわち、ウエハ200上に形成されたSiON膜に対してOを含有する第2処理ガスを供給する。以下、Oを含有する第2処理ガスのことを、単に第2処理ガスと称する場合がある。
【0080】
具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232c(第2配管)内へ第2処理ガスを流す。第2処理ガスは、MFC241cにより流量調整され、ノズル249cを介して処理室201内へ供給され、排気口231aより排気される。このとき、ウエハ200に対して第2処理ガスが供給される(第2処理ガス供給)。このとき、バルブ243e~243gを開き、ノズル249a~249cのそれぞれを介して処理室201内へ不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0081】
ここで、内表面が金属含有材料で構成されたガス供給管232c(第2配管)内にO含有ガスである第2処理ガスが供給されることにより、内表面を構成するSUS等の金属含有材料と第2処理ガスとの間で酸化反応が生じることがある。酸化反応に伴う発熱は、第2配管温度を上昇させ、樹脂などで構成された配管付帯部材、例えば封止部材を焼損させ、また、焼損による汚染物質を発生させることがある。
【0082】
より具体的には、例えばSUS等に含まれるニッケル(Ni)は、Oを含有する第2処理ガスに対して触媒として作用し、第2処理ガスを分解してO原子(原子状酸素)を生成することがある。このようにして発生したO原子は反応性が高いことから、金属含有材料との間の酸化反応およびそれに伴う発熱を生じさせやすい。この発熱により第2配管の昇温が進行すると、上述の触媒反応およびO原子の生成がさらに加速度的に促進され、第2配管の温度上昇を抑制することが困難となる。
【0083】
本ステップでは、後述するように、第2配管温度を第2温度以下とした状態で第2処理ガスの供給を行うことにより、酸化反応が実質的に生じない状態を維持し、第2配管の温度上昇を抑制する。
【0084】
本ステップにて第2処理ガスを供給する際における処理条件としては、
第2配管温度:第2温度以下であって、例えば、0~155℃、好ましくは室温(25)~150℃、より好ましくは100~120℃
第2処理ガス供給濃度:100~300g/m3、好ましくは200~300g/m3
第2処理ガス供給時間:30~180分、好ましくは45~120分
が例示される。他の処理条件は、ステップa1における処理条件と同様とすることができる。
【0085】
上述の条件下でウエハ200に対して、第2処理ガスを供給することにより、ウエハ200上に形成されたSiON膜をトリートメント、例えば、SiON膜に含まれる不純物の除去や、欠陥の修復や、SiON膜の緻密化、硬質化を行うことができる。
【0086】
なお、第1配管温度が第1温度未満、例えば160℃未満となると、ステップAにおいて供給され、第1配管内に残留した第1処理ガスの副生成物が、第1配管内に付着(堆積)するのを抑制することが困難となる場合がある。ステップBにおいて第1配管温度を第1温度以上にすることにより、第1配管内に残留した第1処理ガスの副生成物が、第1配管内に付着するのを抑制することが可能となる。さらに、ステップBにおいて第1配管温度を第1温度よりも高い温度、例えば第1温度よりも20℃以上高い温度にすることにより、第1配管内に残留した第1処理ガスの副生成物が、第1配管内に付着するのをより効果的に抑制できる。第1温度以上の温度とは、第1処理ガスの副生成物が第1配管内に付着するのを抑制できる温度ということができる。但し、第1配管温度が過剰に高いと、例えば、250℃以上にすると、樹脂などで構成された配管付帯部材、例えば封止部材が焼損することがある。そのため、第1配管温度を例えば250℃以下とすることが好ましい。
【0087】
また、第1配管温度が第1温度未満、例えば160℃未満となると、ステップBにおいて処理室201内で発生した第2処理ガスの副生成物が、処理室201内から第1配管内に侵入(逆流)した際に、副生成物が第1配管内に付着するのを抑制することが困難となる場合がある。ステップBにおいて第1配管温度を第1温度以上にすることにより、第1配管内に侵入した第2処理ガスの副生成物が第1配管内に付着するのを抑制することが可能となる。さらに、ステップBにおいて第1配管温度を第1温度よりも高い温度、例えば第1温度よりも20℃以上高い温度にすることにより、第1配管内に侵入した第2処理ガスの副生成物が第1配管内に付着するのをより効果的に抑制できる。第1温度以上の温度とは、第2処理ガスの副生成物が第1配管内に付着するのを抑制できる温度ということができる。
【0088】
なお、第2配管温度が第2温度を超えると、例えば155℃を超えると、第2配管の内表面を構成する金属含有材料と、第2処理ガスとの酸化反応を回避することが困難となる場合がある。これにより、第2配管温度の上昇抑制が困難となるので、樹脂などで構成された配管付帯部材、例えば封止部材の焼損や汚染物質の発生を回避することが困難となる。第2配管温度を第2温度以下にすることにより、第2配管の内表面の構成材料である金属含有材料と、第2処理ガスとの酸化反応を抑制することが可能となる。第2配管温度を第2温度以下の温度、例えば150℃以下にすることにより、第2配管の内表面の構成材料である金属含有材料と、第2処理ガスとの酸化反応を効果的に抑制できる。第2配管温度を第2温度以下の温度、例えば120℃以下にすることにより、第2配管の内表面の構成材料である金属含有材料と、第2処理ガスとの酸化反応をさらに効果的に抑制できる。第2温度とは、金属含有材料と第2処理ガスとの実質的な反応が生じない温度ということができる。第1温度とは、金属含有材料と第2処理ガスとの実質的な反応が生じる温度ということができる。
【0089】
但し、第2配管温度が過剰に低いと、例えば0℃未満となると、第2処理ガスが処理室201内へ供給されたことにより生じた副生成物がわずかでも第2配管内に侵入(逆流)した際に、副生成物が第2配管内に付着するのを抑制することが困難となる場合がある。第2配管温度を例えば0℃以上にすることにより、処理室201内に生じた副生成物が第2配管内に侵入した場合において、副生成物が第2配管内に付着する量を低減することが可能となる。さらに、第2配管温度を25℃以上にすることにより、処理室201内に生じた副生成物が第2配管内に侵入した際に、副生成物が第2配管内に付着する量をより顕著に低減できる。さらに、第2配管温度を100℃以上にすることにより、処理室201内に生じた副生成物が第2配管内に侵入した際に副生成物が第2配管内に付着するのをより確実に低減できる。
【0090】
なお、第2処理ガス供給時間は、ステップa2で例示した第1のO含有ガスの1サイクルごとの供給時間よりも長くすることができる。また、第2処理ガス供給時間は、ステップAにおける第1処理ガスの1サイクルごとの供給時間(原料ガス、第1反応ガス、および第2反応ガスの合計供給時間)よりも長くすることができる。
【0091】
第2処理ガスとしては、例えば、O含有ガスを不図示のプラズマ励起部等によりプラズマ励起させたO含有ガスを用いることができる。プラズマ励起されたO含有ガスは、例えば、原子状酸素(O)や水酸基ラジカル(OHラジカル)などを含むことがある。プラズマ励起させるO含有ガスとしては、ステップa2で例示した第1のO含有ガスを用いることができる。
【0092】
また、第2処理ガスとしては、過酸化水素(H2O2)ガス、およびオゾン(O3)ガスの少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。
【0093】
第2処理ガスとしては、例示したものに限定されず、ガス供給管232c(第2配管)の内表面を構成する金属含有材料との間で実質的な発熱反応を生じさせるO含有ガスの中から、適宜選択することができる。
【0094】
また、第2処理ガスとしては、第1のO含有ガスよりも活性度の大きいO含有ガスを用いることができる。より具体的には、第2反応ガスは、ガス供給管232cの内表面を構成する金属含有材料に対する反応性が第1処理ガスよりも大きいO含有ガスの中から、適宜選択することができる。第2処理ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0095】
なお、本ステップの実行時間内において、第2配管温度が第2温度よりも高い第4温度(上限温度・臨界温度)となった場合は、第2処理ガス等の供給を中止し、本ステップの実行を停止する。そして、第2配管温度が第2温度に降下したら、本ステップの実行を再開する。
【0096】
本ステップの実行時間が所定時間に到達したら、本ステップの実行を終了する。
【0097】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ステップBが完了した後、ノズル249a~249cのそれぞれからパージガスとしての不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気口231aより排気する。これにより、処理室201内がパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物等が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0098】
(ボートアンロードおよびウエハディスチャージ)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降され、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済のウエハ200が、ボート217に支持された状態でマニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。ボートアンロードの後は、シャッタ219sが移動させられ、マニホールド209の下端開口がOリング220cを介してシャッタ219sによりシールされる(シャッタクローズ)。処理済のウエハ200は、反応管203の外部に搬出された後、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0099】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0100】
(a)ステップBでは、第2配管を介して第2処理ガスを供給する際に、第2配管の温度を第1温度よりも低い第2温度以下まで低下させることにより、第2配管の昇温を抑制することができる。具体的には、ステップBにおいて、第2配管を介して第2処理ガスを供給する際に、第2配管の温度を、第2配管の内表面を構成する金属含有材料と、第2処理ガスとの酸化反応が生じない第2温度以下まで低下させることにより、第2配管の昇温を抑制することができる。第2配管の昇温を抑制することにより、例えば、樹脂などで構成された配管付帯部材、例えば封止部材の焼損を防止でき、また、金属含有材料と第2処理ガスとの酸化反応に起因する汚染物質の発生を防止できる。
【0101】
ステップBでは、第2処理が実行されている間において、継続して、第2配管温度を第2温度以下に維持することにより、封止部材等の焼損や汚染物質の発生を確実に防止することができる。
【0102】
また、ステップAでは、第1配管を介して第1処理ガスを供給する際に、第2配管を第1温度以上まで加熱することにより、第1処理ガスが処理室201内へ供給されたことにより生じる副生成物が処理室201内から第2配管内に侵入したとしても、副生成物が第2配管内に付着することを抑制できる。詳しくは、ステップAでは、第1処理ガスを供給する際に、第2配管温度を、第1処理ガスの副生成物が第2配管内に付着しない温度である第1温度以上とすることにより、当該副生成物が第2配管内に付着することを抑制できる。
【0103】
さらに、ステップAでは、第1処理が実行されている間において、継続して、第2配管温度を第1温度以上に維持することにより、第1処理ガスの副生成物が第2配管内へ付着することを確実に抑制できる。
【0104】
(b)なお、配管温度の上昇は、配管の内表面を構成する金属含有材料との反応性の高い(活性度の大きい)ガスを用いる場合に、より顕著となる課題である。本態様では、ステップBにおいて、第2処理ガスとして、第1のO含有ガスよりも活性度の大きいO含有ガスを用いているので、本開示による配管昇温抑制効果を顕著に得ることができる。
【0105】
(c)ステップAからステップBまでの間、基板を処理室201から搬出することなく、同一の処理室内で第1処理と第2処理を行う。これにより、基板の搬入・搬出に伴って生じ得る基板の汚染やパーティクルの付着を防止することができる。また、基板の搬入・搬出を減らすことにより、生産性(スループット)を向上できる場合もある。
【0106】
(d)ステップAでは、第2配管を介した処理室201内への第2処理ガスの供給を不実施とすることにより、第2配管の昇温を抑制することができる。具体的には、第2配管温度が、第2配管の内表面を構成する金属含有材料と、第2処理ガスとの酸化反応が生じる温度である第1温度以上であるステップAでは、第2処理ガスの供給を不実施とすることにより、当該反応そのものを生じさせないようにする。これにより、第2配管の昇温を確実に抑制できる。第2配管の昇温を抑制することにより、例えば、樹脂などで構成された配管付帯部材、例えば封止部材の焼損を防止でき、また、金属含有材料と第2処理ガスとの酸化反応に起因する汚染物質の発生を防止できる。
【0107】
(e)ステップBでは、処理室201内への第1処理ガスの供給を不実施とすることにより、第1処理ガスの副生成物が第2配管内に付着することを抑制できる。具体的には、第2配管温度が、第1処理ガスの副生成物の付着の抑制が困難な温度である第2温度以下を維持するステップBでは、第1処理ガスの供給を不実施とすることにより、当該副生成物そのものを生じさせないようにする。これにより、第1処理ガスの副生成物が第2配管内に付着することを確実に回避できる。
【0108】
(f)ステップBでは、処理室201内への第2処理ガスおよび不活性ガスを除く他のガスの供給を不実施とすることにより、当該他のガスの副生成物が第2配管内に付着することを抑制できる。具体的には、第2配管温度が、当該他のガスの副生成物の付着が抑制困難な温度である第2温度以下を維持するステップBでは、当該他のガスの供給を不実施とすることにより、当該副生成物を生じさせないようにする。これにより、当該他のガスの副生成物が第2配管内へ付着することを確実に回避できる。
【0109】
(g)ステップBでは、ステップAで第1温度以上まで加熱された第1配管の温度をそのまま第1温度以上に維持することにより、ステップAにおいて供給され第1配管内に残留した第1処理ガスの副生成物が第1配管内に付着するのを抑制することができる。詳しくは、ステップBにおいても、第1配管温度を、第1処理ガスの副生成物が第1配管内に付着しない温度である第1温度以上に維持することにより、ステップAにおいて供給され、第1配管内に残留した第1処理ガスの副生成物が第1配管内に付着することを抑制できる。
さらに、ステップBでは、ステップAで第1温度以上まで加熱された第1配管の温度をそのまま第1温度以上に維持することにより、ステップBにおいて供給された第2処理ガスの副生成物が第1配管内に侵入したとしても、当該副生成物が第1配管内に付着することを抑制できる。詳しくは、ステップBにおいても、第1配管温度を、第2処理ガスの副生成物が第1配管内に付着しない温度である第1温度以上とすることにより、第2処理ガスの副生成物が第1配管内に付着することを抑制できる。
【0110】
ステップBでは、第2処理が実行されている間において、継続して、第1配管温度を第1温度以上に維持することにより、上記効果を確実に得ることができる。
【0111】
(h)ステップBでは、第2処理を実行中に第2配管の温度が第2温度よりも高い第4温度(上限温度・臨界温度)となった場合に、第2処理を停止することにより、第2配管温度が上限温度(第4温度)を超えてしまうことを防止することができる。
【0112】
(i)ステップAとステップBとの間の期間において、第1処理及び第2処理を不実施とした状態で、第2配管温度を第2温度まで降温させるステップCを実行することにより、第2処理を実施することで第2配管が昇温することを抑制することができる。
【0113】
(j)ステップCでは、第2配管温度が第2温度まで降下したタイミングで、ステップBを開始することにより、第2配管温度を降下させる時間を短縮し、スループットを向上させることができる。
【0114】
(k)ステップCでは、第2配管温度を、第2温度よりも低い第3温度に設定することにより、ステップBにおいて、例えば意図しない酸化反応により第2配管内に発熱が発生した場合でも、第2配管温度を第2温度以下の状態に維持し、急速な温度上昇を防止することができる。
【0115】
(l)ステップAおよびステップBでは、第2配管を介した処理室201内への窒素含有ガスの供給を不実施とすることにより、第2配管内において、Oを含有する第2処理ガスと窒素含有ガスが混合することにより、配管等を腐食させる可能性があるパーティクルや硝酸(HNO3)等の発生を防止することができる。
【0116】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0117】
例えば、上述の態様では、第1処理ガスの供給を停止した後(ステップAの実行を終了した後)、ステップCにおいて、第2配管の温度を、第1温度から第2温度に降温させる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、第1処理ガスの供給を継続しながら(すなわちステップAの実行中に)、第2配管の温度を第1温度から第2温度に降温させる工程を開始するようにしてもよい。この場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。さらに、ステップAの実行中に第2配管の温度の降下を開始させているので、サイクルタイムを短縮させてスループットをさらに向上させることができる。
【0118】
例えば、第2配管の内表面にフッ化処理を施すことにより、金属含有材料のフッ化層を形成してもよい。金属含有材料で構成された第2配管の内表面にフッ化層を予め形成しておくことにより、第2処理ガスと金属含有材料との酸化反応の発生をより確実に抑制し、上述の態様における第2配管の温度上昇抑制効果をさらに高めることができる。例えば、F2ガスなどのフッ素(F)含有ガスに対して第2配管の内表面を予め暴露する処理を施すことにより、第2配管の内表面にフッ化された金属含有材料の層(すなわちフッ化層)を形成することができる。また、第2配管の内表面にフッ化層を形成する手法として、公知のフッ化処理技術を用いることもできる。
【0119】
なお、第2配管に限らず、第1配管の内表面にも同様にフッ化層を形成してもよい。また、第1配管の内表面にはフッ化層を形成せず、第2配管の内表面のみにフッ化層を形成するようにしてもよい。
【0120】
例えば、第2配管の内表面に成膜処理を施すことにより、シリコン酸化膜(SiO膜)等の酸化膜を形成してもよい。金属含有材料で構成された第2配管の内表面に、内表面を被覆するように酸化膜を予め形成しておくことにより、第2処理ガスと金属含有材料との酸化反応の発生をより確実に抑制し、上述の態様における第2配管の温度上昇抑制効果をさらに高めることができる。例えば、第2配管の内表面に対して、シリコン(Si)を含有する原料ガスを供給する工程と、酸化剤としてのO含有ガスを供給する工程と、を含むサイクルを所定回数行うことより、第2配管の内表面にSi含有酸化膜を形成(堆積)することができる。また、第2配管の内表面に酸化膜を形成する手法として、公知の成膜処理技術を用いることもできる。
【0121】
なお、第2配管に限らず、第1配管の内表面にも同様に酸化膜を形成してもよい。また、第1配管の内表面には酸化膜を形成せず、第2配管の内表面のみに酸化膜を形成するようにしてもよい。
【0122】
例えば、ステップCでは、配管ヒータ233cの制御温度を、第1温度から第3温度に変更した後、少なくとも第2配管温度が第1温度から第3温度に降下するまで、配管ヒータ233cへの電力供給を停止してもよい。また、ステップCでは、配管ヒータ233cの制御温度を、第1温度から第3温度に変更する代わりに、単に配管ヒータ233cへの電力供給を停止してもよい。また、第2配管温度を降下させるときに、不図示の冷却装置を用いてもよい。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。さらに、冷却装置を用いた場合には、第2配管の降温に要する時間を短縮し、スループットを向上できる。冷却装置は、例えば、空冷装置や水冷装置、ペルチェ式冷却装置、などにより構成することができる。
【0123】
例えば、上述の態様では、第1配管および第2配管の内表面を構成する金属含有材料として、SUSを例に挙げて説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、第1配管および第2配管の内表面を構成する金属含有材料は、鉄(Fe)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、またはニッケル(Ni)等であってもよいし、NiにFe、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)等を添加したハステロイ(登録商標)、NiにFe、Cr、ニオブ(Nb)、Mo等を添加したインコネル(登録商標)等であってもよい。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0124】
例えば、上述の態様では、原料ガスに含まれる所定元素がSiである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、本開示はこのような態様に限定されない。例えば、所定元素は、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、Nb、Al、Mo、タングステン(W)、ゲルマニウム(Ge)等の金属元素であってもよい。これらの場合には、チタニウム酸窒化膜(TiON膜)、ジルコニウム酸窒化膜(ZrON膜)、ハフニウム酸窒化膜(HfON膜)、タンタル酸窒化膜(TaON膜)、ニオブ酸窒化膜(NbON膜)、アルミニウム酸窒化膜(AlON膜)、モリブデン酸窒化膜(MoON膜)、タングステン酸窒化膜(WON膜)、ゲルマニウム酸窒化膜(GeON膜)等の金属系酸化膜が形成される。これらの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0125】
各処理に用いられるレシピは、処理内容に応じて個別に用意し、電気通信回線や外部記憶装置123を介して記憶装置121c内に記録し、格納しておくことが好ましい。そして、各処理を開始する際、CPU121aが、記憶装置121c内に記録され、格納された複数のレシピの中から、処理内容に応じて適正なレシピを適宜選択することが好ましい。これにより、1台の基板処理装置で様々な膜種、組成比、膜質、膜厚の膜を、再現性よく形成することができるようになる。また、オペレータの負担を低減でき、操作ミスを回避しつつ、各処理を迅速に開始できるようになる。
【0126】
上述のレシピは、新たに作成する場合に限らず、例えば、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを変更することで用意するようにしてもよい。レシピを変更する場合は、変更後のレシピを、電気通信回線や当該レシピを記録した記録媒体を介して、基板処理装置にインストールするようにしてもよい。また、既存の基板処理装置が備える入出力装置122を操作し、基板処理装置に既にインストールされていた既存のレシピを直接変更するようにしてもよい。
【0127】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0128】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0129】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【符号の説明】
【0130】
200 ウエハ(基板)
232a,232b,232d 第1配管
232c 第2配管