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特開2025-5662推定装置、推定方法、推定プログラム、記録装置および記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005662
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】推定装置、推定方法、推定プログラム、記録装置および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   A01G 7/00 20060101AFI20250109BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250109BHJP
   G06V 10/58 20220101ALI20250109BHJP
【FI】
A01G7/00 603
G06T7/00 300G
G06V10/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105924
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴谷 一弘
(72)【発明者】
【氏名】大江 真道
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096CA02
5L096DA02
5L096FA32
5L096FA35
5L096FA59
5L096GA51
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】植生指標を、より広く活用することが可能な推定装置、推定方法、推定プログラム、記録装置および記録媒体を提供する。
【解決手段】情報処理装置20は、所定の領域に生育する植物を複数の波長帯域で撮影した画像に基づく植生指標と、植物の植被率とを取得する取得部211と、取得された植生指標および植被率に基づいて、植物の草丈を推定する草丈推定部212とを含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の領域に生育する植物を複数の波長帯域で撮影した画像に基づく植生指標と、前記植物の植被率とを取得する取得部と、
取得された前記植生指標および前記植被率に基づいて、前記植物の草丈を推定する草丈推定部と
を備える推定装置。
【請求項2】
推定された前記草丈に基づいて、前記植物の葉色を推定する葉色推定部をさらに含む請求項1に記載の推定装置。
【請求項3】
推定された前記草丈に関する情報を出力する出力部をさらに含む請求項1に記載の推定装置。
【請求項4】
前記草丈推定部は、予め記憶された前記植生指標、前記植被率および前記草丈の関係式に基づいて、前記草丈を推定する請求項1に記載の推定装置。
【請求項5】
前記画像に基づいて、前記植物の散乱状態を表す散乱指標を算出する算出部をさらに有し、
前記草丈推定部は、算出された前記散乱指標と、取得された前記植生指標および前記植被率とに基づいて前記草丈を推定する請求項1に記載の推定装置。
【請求項6】
取得された前記植生指標は、前記画像の単位画素毎の画素植生指標の平均であり、
前記算出部は、前記画素植生指標のヒストグラムを用いて前記散乱指標を算出する請求項5に記載の推定装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記ヒストグラムの平均値および最頻値を用いて前記散乱指標を算出する請求項6に記載の推定装置。
【請求項8】
前記ヒストグラムは、前記画像のうち、前記植物が存在する前記単位画素の前記画素植生指標を用いて作成される請求項6に記載の推定装置。
【請求項9】
複数の前記波長帯域は可視光域および赤外光域を含む請求項1に記載の推定装置。
【請求項10】
取得される前記植被率は、前記画像に基づいて算出されている請求項1に記載の推定装置。
【請求項11】
所定の領域に生育する植物を複数の波長帯域で撮影した画像に基づく植生指標と、前記植物の植被率とを取得するステップ(a)と、
取得された前記植生指標および前記植被率に基づいて、前記植物の草丈を推定するステップ(b)と
を含む推定方法。
【請求項12】
請求項11に記載の推定方法をコンピューターに実行させる推定プログラム。
【請求項13】
所定の領域に生育する植物が複数の波長帯域で撮影された画像に基づく植生指標と、前記植物の植被率と、前記植物の草丈とを取得する取得部と、
取得された前記植生指標、前記植被率および前記草丈の関係式を決定する決定部と、
決定された前記関係式に関する情報を記録媒体に記録する記録部と
を備える記録装置。
【請求項14】
請求項13に記載された記録装置によって、前記関係式に関する情報が記録された記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定装置、推定方法、推定プログラム、記録装置および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
農業では、高品質および安定多収穫な作物等の植物を育てるためには、追肥時期、追肥量および倒伏軽減措置等の適切な管理が必要となる。植物の生産者等は、植物の生育の度合いを確認しながら管理を行う。植物の生産者等は、たとえば、草丈を測定することにより生育の度合いを確認する。
【0003】
一方、カメラを用いて圃場の撮影を行うことにより、NDVI(Normalized Difference Vegetation Index)等の植生指標を求める方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-56236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような植生指標は、より広く活用されることが好ましい。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、植生指標を、より広く活用することが可能な推定装置、推定方法、推定プログラム、記録装置および記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記によって達成される。
【0008】
(1)所定の領域に生育する植物を複数の波長帯域で撮影した画像に基づく植生指標と、前記植物の植被率とを取得する取得部と、取得された前記植生指標および前記植被率に基づいて、前記植物の草丈を推定する草丈推定部とを備える推定装置。
【0009】
(2)推定された前記草丈に基づいて、前記植物の葉色を推定する葉色推定部をさらに含む上記(1)に記載の推定装置。
【0010】
(3)推定された前記草丈に関する情報を出力する出力部をさらに含む上記(1)または(2)に記載の推定装置。
【0011】
(4)前記草丈推定部は、予め記憶された前記植生指標、前記植被率および前記草丈の関係式に基づいて、前記草丈を推定する上記(1)~(3)のいずれかに記載の推定装置。
【0012】
(5)前記画像に基づいて、前記植物の散乱状態を表す散乱指標を算出する算出部をさらに有し、前記草丈推定部は、算出された前記散乱指標と、取得された前記植生指標および前記植被率とに基づいて前記草丈を推定する上記(1)~(4)のいずれかに記載の推定装置。
【0013】
(6)取得された前記植生指標は、前記画像の単位画素毎の画素植生指標の平均であり、前記算出部は、前記画素植生指標のヒストグラムを用いて前記散乱指標を算出する上記(5)に記載の推定装置。
【0014】
(7)前記算出部は、前記ヒストグラムの平均値および最頻値を用いて前記散乱指標を算出する上記(6)に記載の推定装置。
【0015】
(8)前記ヒストグラムは、前記画像のうち、前記植物が存在する前記単位画素の前記画素植生指標を用いて作成される上記(6)または(7)に記載の推定装置。
【0016】
(9)複数の前記波長帯域は可視光域および赤外光域を含む上記(1)~(8)のいずれかに記載の推定装置。
【0017】
(10)取得される前記植被率は、前記画像に基づいて算出されている上記(1)~(9)のいずれかに記載の推定装置。
【0018】
(11)所定の領域に生育する植物を複数の波長帯域で撮影した画像に基づく植生指標と、前記植物の植被率とを取得するステップ(a)と、取得された前記植生指標および前記植被率に基づいて、前記植物の草丈を推定するステップ(b)とを含む推定方法。
【0019】
(12)上記(11)に記載の推定方法をコンピューターに実行させる推定プログラム。
【0020】
(13)所定の領域に生育する植物が複数の波長帯域で撮影された画像に基づく植生指標と、前記植物の植被率と、前記植物の草丈とを取得する取得部と、取得された前記植生指標、前記植被率および前記草丈の関係式を決定する決定部と、決定された前記関係式に関する情報を記録媒体に記録する記録部とを備える記録装置。
【0021】
(14)上記(13)に記載された記録装置によって、前記関係式に関する情報が記録された記録媒体。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る推定装置、推定方法および推定プログラムによれば、植生指標とともに、植物の植被率が取得され、これら植生指標および植被率に基づいて、植物の草丈が推定される。換言すれば、植被率を用いて、植生指標が草丈に換算される。これにより、植物の生産者等が植生指標の取り扱いに不慣れな場合であっても、植生指標を活用して植物の生育の度合いを容易に把握することができる。よって、植生指標を、より広く活用することが可能となる。本発明に係る記録装置および記録媒体は、植生指標、植被率および草丈の関係式を記録するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係る草丈推定システムの構成の一例を表すブロック図である。
図2図1に示した光測定装置の使用状態の一例を表す図である。
図3図1に示した情報処理装置の構成の一例を表すブロック図である。
図4図1に示した情報処理装置の機能構成の一例を表すブロック図である。
図5】(A)~(D)は図1に示した光測定装置により撮影された画像の一例を表す図である。
図6図4に示した草丈推定部に使用される関係式の一例を表す図である。
図7図1に示した情報処理装置が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
図8】所定の圃場のNDVIと生育量との関係を表す図である。
図9図8に示した図の縦軸を草丈および植被率の積に変換した図である。
図10】変形例1に係る情報処理装置の機能構成の一例を表すブロック図である。
図11図10に示した葉色推定部に使用される関係式の一例を表す図である。
図12】所定の圃場のNDVIと、葉色、草丈および植被率の積との関係を表す図である。
図13図10に示した情報処理装置が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
図14】変形例2に係る情報処理装置の機能構成の一例を表すブロック図である。
図15】(A)(B)は各々、図9に示した点A、点Bの画素NDVIのヒストグラムである。
図16図14に示した算出部により算出される散乱指標の一例を表す図である。
図17図16に示した散乱指標と、植生指標との関係を表す図である。
図18図14に示した草丈推定部により使用される関係式の一例を表す図である。
図19図14に示した情報処理装置が実行する処理の一例を表すフローチャートである。
図20図19に示した処理の他の例を表すフローチャートである。
図21】第2実施形態に記録装置の構成の一例を表すブロック図である。
図22図21に示した記録装置の機能構成の一例を表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して本発明の推定装置、推定方法、推定プログラム、記録装置および記録媒体の実施形態を説明する。なお、図中、同一の部材には同一の符号を用いた。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0025】
[第1実施形態]
<草丈推定システム1の全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る草丈推定システム1の構成の一例を表している。草丈推定システム1は、いわゆるリモートセンシングにより植物(たとえば、後述の図2の植物P)の草丈を推定する。この草丈推定システム1は、たとえば、光測定装置10および情報処理装置20を含んでいる。光測定装置10および情報処理装置20は、たとえば、ネットワークを介して接続されている。ここでは、情報処理装置20が、本発明の推定装置の一具体例に対応する。
【0026】
光測定装置10は、たとえばマルチスペクトルカメラまたはハイパースペクトルカメラ等のカメラを含んでおり、情報処理装置20の制御にしたがって、複数の波長帯域で圃場の植物を撮影し、画像を生成する。光測定装置10は、たとえば、可視光測定部10Aおよび赤外光測定部10Bを含んでおり、可視光(たとえば、波長400nm~700nm)の画像および赤外光(たとえば、波長800nm~1mm)の画像を生成する。可視光測定部10Aは、たとえば、赤色波長域(610nm付近)、緑色波長域(550nm付近)および青色波長域(470nm付近)のいずれかの画像を生成する。赤外光測定部10Bは、たとえば、近赤外波長域(800nm~1300nm)の画像を生成する。光測定装置10により撮影された植物の画像データは、情報処理装置20に送られる。
【0027】
光測定装置10は、たとえば、バンドパスフィルタ、結像光学系、イメージセンサーおよびデジタルシグナルプロセッサ(DSP)等を含んでいる。バンドパスフィルタは、所定波長域(可視光域および赤外光域)の光を選択的に透過させる。結像光学系は、バンドパスフィルタを透過した光の光学像を所定の結像面上に結像する。イメージセンサーは、結像光学系の結像面と同じ位置に受光面を有しており、所定波長域の光学像を電気信号に変換する。デジタルシグナルプロセッサは、イメージセンサーから出力された電気信号に処理を施し、画像データを生成する。
【0028】
図2は、光測定装置10を用いた圃場の植物Pの撮影状況の一例を表している。光測定装置10は、たとえば、ドローン等の無人航空機に搭載されて、上空から圃場の植物Pを撮影する。このように、上空から圃場の植物Pを撮影することにより、圃場全体を短時間で簡便に撮影することが可能となる。植物Pは、たとえば、水稲等の作物である。太陽光Lが植物Pの群葉に照射されると、植物Pの群葉による太陽光Lの反射(反射光Lr)、散乱(散乱光Ls)および透過(透過光Lt)等が生じる。光測定装置10は、植物Pの群葉からの反射光Lrおよび散乱光Lsを受光するようにドローン等に搭載されている。光測定装置10により、植物Pの群葉の状態に応じた多重反射および多重散乱等の変化を検知することができる。
【0029】
情報処理装置20は、たとえばPC(Personal Computer)およびタブレット端末等のコンピューターである。この情報処理装置20は、たとえば、光測定装置10による植物Pの撮像を制御するとともに、光測定装置10によって撮影された植物Pの画像データに基づいて植物Pの草丈を推定する。
【0030】
図3は、情報処理装置20の概略構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置20は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、ストレージ24、通信インターフェース25および操作表示部26を有している。各構成は、バス27を介して相互に通信可能に接続されている。
【0031】
CPU21は、ROM22およびストレージ24に記録されているプログラムにしたがって、上記各構成の制御や各種の演算処理を行う。CPU21の具体的な機能については後述する。
【0032】
ROM22は、各種プログラムや各種データを格納する。
【0033】
RAM23は、作業領域として一時的にプログラムやデータを記憶する。
【0034】
ストレージ24は、オペレーティングシステムを含む各種プログラムや、各種データを格納する。ストレージ24には、後述の植物Pの植生指標および草丈の関係が記憶されていてもよく、あるいは、学習済みの識別器を用いて、植物Pの画像データから植物Pの草丈を推定するためのアプリケーションがインストールされていてもよい。また、ストレージ24には、光測定装置10により撮影された植物Pの画像に関する情報が記憶されてもよい。ストレージ24には、識別器として用いられる学習済みモデルおよび、機械学習に用いられる教師データが記憶されてもよい。
【0035】
通信インターフェース25は、他の装置と通信するためのインターフェースである。通信インターフェース25としては、有線または無線の各種規格による通信インターフェースが用いられる。通信インターフェース25は、たとえば、光測定装置10または外部の装置から植物Pの画像データを受信したり、撮影条件を光測定装置10に送信したりする際に用いられる。
【0036】
操作表示部26は、たとえば、LCD(液晶ディスプレイ)または有機ELディスプレイ等の表示部とタッチセンサーとを含むタッチパネルにより構成されている。各種情報を表示する表示部と、ユーザーの各種操作を受け付ける操作部とを別に設けるようにしてもよい。このとき表示部は、上記ディスプレイの他、ビューワーソフトまたはプリンター等により構成されていてもよく、操作部は、タッチセンサーおよびマウス等のポインティングデバイスまたはキーボード等により構成されていてもよい。
【0037】
<情報処理装置20の機能>
図4は、情報処理装置20の機能構成を示すブロック図である。情報処理装置20は、CPU21がストレージ24に記憶されたプログラムを読み込んで処理を実行することによって、取得部211、草丈推定部212、および出力部213として機能する。
【0038】
取得部211は、所定時点の植物Pの植生指標および植被率を取得する。植生指標は、植物Pによる光の反射の特徴を生かして衛星データなどを使って簡易な計算式で植生の状況を把握することを目的として考案された指標で、植物Pの量や活力を表す。この植生指標は、複数の波長帯域で撮影された植物Pの画像、具体的には、光測定装置10により撮影された画像に基づいて算出されている。植生指標としては、たとえば、NDVIまたはGNDVI等が挙げられる。NDVIは、たとえば以下の式(1)、GNDVIは、たとえば以下の式(2)によって各々表される。
【0039】
【数1】
【0040】
取得部211が取得する植生指標は、GNDVIであることが好ましい。緑色光は、赤色光に比べて植物Pの反射率が高いので、ノイズを抑えることができ、また、赤外光の反射率との差分(RIR-RGREEN)が飽和しにくい。したがって、GNDVIでは、NDVIに比べて、より高い精度で植生の活性度を検知することができる。
【0041】
取得部211は、NDVIおよびGNDVI以外の植生指標を取得してもよく、たとえば、mNDVI(modified NDVI)、SR(Simple Ratio)、SGR(Specific Growth Rate)、PRI(Photochemical Reflectance Index)、RGR(Relative Growth Rate)、NPCI(Normalized Pigment Chlorophyll Index)、SRPI(Simple Ratio Pigment Index)、NPQI(Normalized Phaeophytinization Index)、SIPI(Structure-Insensitive Pigment Index)、PI1、PI2、PI3およびPI4等であってもよい。
【0042】
情報処理装置20は、たとえば、光測定装置10により撮影された画像の単位画素毎に、植生指標(以下、画素植生指標という。)を算出する。取得部211により取得される植生指標は、たとえば、この画素植生指標の平均である。情報処理装置20は、たとえば、光測定装置10により撮影された画像のうち、植物Pが存在すると判断した単位画素の画素植生指標に基づいて、植生指標(画素植生指標の平均)を算出する。情報処理装置20は、たとえば、画素植生指標の閾値に基づいて、当該単位画素に植物Pが存在するか否かを判断する。この植生指標の閾値は、たとえば、任意に設定可能である。
【0043】
植物Pの植被率は、単位面積当たりにおいて植生が地表面を占める面積の割合である。植物Pの植被率は、光測定装置10により撮影された画像に基づいて算出されていることが好ましい。これにより、光測定装置10により撮影された画像に基づいて、植生指標および植被率の両方を算出することができる。また、画像を用いることにより、圃場全体での植物Pの植被率を容易に求めることができ、圃場全体の植物Pの草丈を推定しやすくなる。
【0044】
図5(A)~(D)は、光測定装置10により撮影された圃場の植物Pの群葉の画像の一例を表している。図5(A)は植物Pの移植後30日、図5(B)は植物Pの移植後35日、図5(C)は植物Pの移植後37日、図5(D)は植物Pの移植後43日の画像を各々表している。これらの画像に基づいて、たとえば情報処理装置20が移植後30日、35日、37日および43日各々のNDVIおよび植被率を算出する。たとえば、移植後30日のNDVIは0.30、植被率は0.44であり、移植後35日のNDVIは0.44、植被率は0.80であり、移植後37日のNDVIは0.55、植被率は0.89であり、移植後43日のNDVIは0.66、植被率は0.93である。取得部211は、たとえば、このような画像から算出されたNDVIおよび植被率の値を取得する。
【0045】
草丈推定部212は、取得部211により取得された所定時点の植物Pの植生指標および植被率に基づいて、植物Pの草丈を推定する。草丈は、植物の地上部の高さ、即ち、地際から先端までの高さである。植物Pの生産者等は、たとえば、この草丈に基づいて、植物Pの生育ステージを判断し、追肥時期、追肥量および倒伏軽減措置等の管理を行う。本実施形態では、この草丈推定部212が、所定時点の植物Pの植生指標および植被率に基づいて、植物Pの草丈を推定する。詳細は後述するが、これにより、植生指標をより広く活用することが可能となる。
【0046】
草丈推定部212は、たとえば、ストレージ24に記憶された植生指標、植被率および草丈の関係に基づいて、所定時点の植物Pの草丈を推定する。ストレージ24には、たとえば、予め求められた植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係式が記憶されている。植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係式は、たとえば、過去の植物Pのデータを用いて求められている。植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係式は、過去数年分のデータを用いて求められていてもよい。植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係式は、所定期間毎に更新されてもよい。このとき、植物Pの草丈は、ものさし等の測定器を用いて測定される。草丈は、ドローンにLiDAR(Light Detection and Ranging)等を搭載して測定してもよく、あるいは、オルソ画像から視差を用いて測定してもよい。オルソ画像は、たとえば、ドローンに搭載されたカメラにより撮影した植物Pの複数枚の画像から生成される。
【0047】
図6は、植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係の一例を表している。図6の縦軸は草丈および植被率の積(草丈×植被率)を表し、横軸は植生指標を表している。植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係式は、たとえば、以下の式(3)のような一次関数で表される。
【0048】
【数2】
【0049】
草丈推定部212は、たとえば、取得部211により取得された植生指標および植被率と式(3)とを用いて所定時点の植物Pの草丈を推定する。植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係式は、一次の相関に限定されない。
【0050】
草丈推定部212は、機械学習を利用して植物Pの草丈を推定してもよい。たとえば、草丈推定部212は、学習済みの識別器を用いて、取得部211により取得された植物Pの植生指標および植被率を入力とし、植物Pの草丈を推定する。学習済みの識別器は、たとえば、ストレージ24に記憶されている。この学習済みの識別器には、過去の画像から算出された植物Pの植生指標および植被率と、草丈の測定値とが、教師データとして予め学習されている。
【0051】
出力部213は、草丈推定部212により推定された所定時点の植物Pの草丈に関する情報を出力する。草丈に関する情報は、たとえば、草丈の値を示す情報、所定の草丈に対する過不足を示す情報、および所定の草丈に対する過不足量を示す情報等である。出力部213は、たとえば、この草丈の値を操作表示部26に表示することにより、草丈に情報を出力する。出力部213は、「生育不良です」、「生育順調です」および「生育過多です」等の情報を操作表示部26に表示してもよく、あるいは、音声により草丈に関する情報を出力してもよい。
【0052】
<情報処理装置20の処理概要>
情報処理装置20において実行される処理、即ち、情報処理装置20が実行する推定方法について、以下に詳述する。
【0053】
図7は、情報処理装置20において実行される推定処理の手順を示すフローチャートである。図7のフローチャートに示される情報処理装置20の処理は、情報処理装置20のストレージ24にプログラムとして記憶されており、CPU21が各部を制御することにより実行される。
【0054】
(ステップS101)
情報処理装置20は、まず、所定時点の植物Pの植生指標および植被率を取得する。情報処理装置20は、たとえば、光測定装置10により撮影された所定時点の圃場全体の植物Pの画像から算出されたGNDVIおよび植被率を取得する。
【0055】
(ステップS102)
情報処理装置20は、ステップS101の処理において取得された植生指標および植被率を、予めストレージ24に記憶された植生指標、植被率および草丈の関係式(たとえば、上記の式(3))に入力して、所定時点の植物Pの草丈を推定する。
【0056】
(ステップS103)
情報処理装置20は、ステップS102の処理において推定された所定時点の植物Pの草丈に関する情報を出力して処理を終了する。たとえば、情報処理装置20は、ステップS102の処理において推定された所定時点の植物Pの草丈の値を操作表示部26に表示することにより、草丈に関する情報を出力する。
【0057】
<情報処理装置20および草丈推定システム1の作用効果>
本実施形態の情報処理装置20および草丈推定システム1では、光測定装置10により撮影された画像に基づいて算出された植生指標とともに、植被率を用いることにより、所定時点の植物Pの草丈が推定される。換言すれば、植被率を用いて、植生指標が草丈に換算される。これにより、植物Pの生産者等が植生指標の取り扱いに不慣れな場合であっても、植生指標を活用して植物Pの生育の度合いを容易に把握することができる。以下、この作用効果について詳細に説明する。
【0058】
NDVIおよびGNDVI等の植生指標は、画像から算出できるため、非接触で、かつ、圃場の広い領域にわたって一度に計測することができる。このため、植物の生産者等は、植生指標から圃場全体の植生の活性度分布を容易に把握することが可能である。即ち、植生指標は、植生の活性度を表す有益な指標であると言える。
【0059】
一方、植物の生産者等は、長く、植物の生育の度合いを表す指標として草丈を使用しており、植生指標の取り扱いには不慣れな生産者等が多い。草丈は、ものさし等の測定器を用いて地上で測定されるので、測定に手間がかかり、また、圃場全体での草丈の分布を正確に把握することは困難である。ステレオ視またはレーザーレーダー等を用い、非接触での草丈の測定方法も検討されているが、未だ実用化には至っていない。これは、群落を形成する植物、たとえば、水稲では、圃場の内部にわたり非接触で草丈を測定することは困難であることに起因する。ここで、植生指標を草丈に紐づけることができれば、植物の生産者等は上記のように有益な植生指標を利用しやすくなる。
【0060】
図8は、稲の移植後の日数(移植後16日、23日、30日、35日、37日、43日、51日、58日)毎のNDVIと生育量との関係を表す。図8の横軸はNDVI、縦軸は生育量を表している。稲の生育量は、下記の式(4)を用いて決定されている。式(4)中、植物の葉色(SPAD値)、茎数および草丈は地上で測定されている。稲は、あきたこまち、ひとめぼれ、コシヒカリおよびキヌヒカリの4品種である。
【0061】
【数3】
【0062】
図8から、移植後の日数に応じて、換言すれば、生育ステージに応じてNDVIと生育量との関係がシフトしていることが分かる。即ち、生育ステージに応じてNDVIと生育量との関係がシフトしていることが分かる。詳細には、生育初期の段階では、NDVIと生育量との関係が一定に維持されるが、幼穂形成期に入る10日前頃からNDVIと生育量との関係が変化し始めている。たとえば、予め、植物の品種毎かつ生育ステージ毎に植生指標と生育量との関係を求めておくことにより、植生指標を生育量に換算することは可能であるが、これには膨大かつ煩雑な作業を要する。したがって、実用化は困難である。
【0063】
これに対し、草丈推定システム1および情報処理装置20では、NDVIなどの植生指標とともに、植被率を用いるようにしたので、容易に植生指標を草丈に換算することが可能となる。
【0064】
図9は、図8に示したデータを、植被率を用いてプロットし直したものである。図9の横軸はNDVI、縦軸は草丈および植被率の積(草丈×植被率)を表している。この図9では、決定係数Rの値が0.9655である。即ち、NDVI、植被率および草丈では、生育ステージ全体にわたって、一定の相関関係が維持されており、NDVI等の植生指標は、植物の体積情報(草丈×植被率)と相関を有することが分かる。したがって、生育ステージの段階に関わらず、一つの関係式を用いて植生指標を草丈に換算することができる。
【0065】
以上説明したように、草丈推定システム1および情報処理装置20では、植物Pの植生指標とともに、植物Pの植被率が取得されるので、容易に植生指標を草丈に換算することができる。これにより、植物の生産者等が植生指標の取り扱いに不慣れな場合であっても、植生指標を活用して植物の生育の度合いを容易に把握することができる。よって、植生指標を、より広く活用ことが可能となる。
【0066】
また、植生指標が草丈に紐づけられるので、植生指標が植物の生産者等に身近となり、農業に植生指標を普及させることが可能となる。これにより、たとえば、農業試験場などが作成する栽培指針に植生指標を取り込みやすくなる。したがって、農業分野でのリモートセンシングの活用が促進され、いわゆるスマート農業の実現を推進することができる。
【0067】
以下、上記実施形態で説明した情報処理装置20の変形例および他の実施形態について説明する。なお、以下では、説明の重複を避けるため、上記実施形態で説明した各構成と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0068】
[変形例1]
図10は、変形例1に係る情報処理装置20のCPU21の機能構成を表している。CPU21は、取得部211、草丈推定部212、および出力部213に加えて、葉色推定部214として機能してもよい。
【0069】
葉色推定部214は、草丈推定部212によって推定された所定時点の植物Pの草丈と、取得部211により取得された植生指標および植被率との関係に基づいて植物Pの葉色(たとえば、SPAD値)を推定する。葉色推定部214は、たとえば、ストレージ24に記憶されたNDVI、植被率、草丈および葉色の関係に基づいて、植物Pの葉色を推定する。
【0070】
図11は、植物Pの植生指標、植被率、草丈および葉色(SPAD値)の関係の一例を表している。図11の縦軸は葉色、草丈および植被率の積(SPAD値×草丈×植被率)を表し、横軸は植生指標を表している。植物Pの植生指標、植被率、草丈および葉色の関係式は、たとえば、以下の式(5)のような一次関数で表される。
【0071】
【数4】
【0072】
式(5)は、たとえば、過去の植物Pのデータを用いて求められている。植物Pの植生指標、植被率、草丈および葉色の関係式は、過去数年分のデータを用いて求められていてもよい。植物Pの植生指標、植被率、草丈および葉色の関係式は、所定期間毎に更新されてもよい。このとき、植物Pの草丈および葉色は測定器を用いて測定される。
【0073】
葉色推定部214は、たとえば、草丈推定部212によって推定された所定時点の植物Pの草丈と、取得部211により取得された植生指標および植被率と、式(5)とを用いて所定時点の植物Pの葉色を推定する。植物Pの植生指標、植被率、草丈および葉色の関係式は、一次の相関に限定されない。
【0074】
図12は、所定年度の稲の植生指標、植被率、草丈および葉色の関係を表したものである。植生指標および植被率は、リモートセンシングにより測定され、草丈および葉色は、地上で測定器を用いて測定されたものである。図12の横軸はNDVI、縦軸は葉色(SPAD値)、草丈および植被率の積(SPAD値×草丈×植被率)を表している。この図12では、決定係数Rの値が0.9159である。即ち、NDVI、植被率、草丈および葉色では、生育ステージ全体にわたって、一定の相関関係が維持されていることが分かる。したがって、生育ステージの段階に関わらず、一つの関係式を用いて植生指標を葉色に換算することができる。
【0075】
葉色推定部214は、機械学習を利用して植物Pの草丈を推定してもよい。たとえば、葉色推定部214は、学習済みの識別器を用いて、取得部211により取得された植物Pの植生指標および植被率と、草丈推定部212により推定された植物Pの草丈とを入力とし、植物Pの葉色を推定する。学習済みの識別器は、たとえば、ストレージ24に記憶されている。この学習済みの識別器には、過去の画像から算出された植物Pの植生指標および植被率と、草丈および葉色の測定値とが、教師データとして予め学習されている。
【0076】
出力部213は、たとえば、葉色推定部214により推定された植物Pの葉色に関する情報を出力する。出力部213は、葉色に関する情報とともに、草丈推定部212により推定された植物Pの草丈に関する情報を出力してもよい。
【0077】
図13は、この変形例1に係る情報処理装置20において実行される推定処理の手順を示すフローチャートである。
【0078】
(ステップS201、S202)
情報処理装置20は、まず、上述のステップS101、S102(図7)と同様にして、所定時点の植物Pの植生指標および植被率を取得した後、植物Pの草丈を推定する。
【0079】
(ステップS203、S204)
次いで、情報処理装置20は、ステップS202の処理において推定された植物Pの草丈に基づいて、植物Pの葉色を推定する。情報処理装置20は、たとえば、ステップS202の処理において推定された植物Pの草丈と、ステップS201の処理において取得された植物Pの植生指標および植被率とを上記の式(5)に入力することにより、植物Pの葉色を推定する。この後、情報処理装置20は、ステップS203の処理において推定された植物Pの葉色に関する情報を出力して処理を終了する。情報処理装置20は、植物Pの葉色に関する情報とともに、ステップS202で推定された草丈に関する情報を出力してもよい。
【0080】
このようなCPU21を有する情報処理装置20も、上記実施形態で説明したのと同様に、植物Pの植生指標とともに、植物Pの植被率が取得されるので、容易に植生指標を草丈に換算することができる。これにより、植物の生産者等が植生指標の取り扱いに不慣れな場合であっても、画像から算出された植生指標を活用して植物の生育度合いを容易に把握することができる。よって、植生指標を、より広く活用ことが可能となる。また、この情報処理装置20では、植物Pの葉色が推定されるので、植物Pの生産者等はさらに植物の生育に有用な情報を得ることができる。
【0081】
[変形例2]
図14は、変形例2に係る情報処理装置20のCPU21の機能構成を表している。CPU21は、取得部211、草丈推定部212、および出力部213に加えて、算出部215として機能してもよい。
【0082】
算出部215は、光測定装置10により撮影された植物Pの画像に基づいて、植物Pの散乱状態を表す散乱指標を算出する。算出部215は、たとえば、光測定装置10により撮影された植物Pの単位画素毎に算出される画素植生指標のヒストグラムを用いて、散乱指標を算出する。
【0083】
図15(A)は、図9に示した点A(NDVIが0.49)の画素植生指標のヒストグラムを表し、図15(B)は、図9に示した点B(NDVIが0.65)の画素植生指標のヒストグラムを表す。具体的には、図15(A)(B)の縦軸は画素数、横軸は各単位画素のNDVI(以下、画素NDVIという。)を表している。図9に示した点A、点BのNDVIの値である0.49、0.65は、各々の画素NDVIの平均値である。
【0084】
図15(A)に示した画素NDVIの最頻値は0.60付近にあり、これよりも小さい値の領域(左側)に裾が長くなっている。これは、点Aの状態の植物Pでは、比較的、葉の重なり具合が少なく、多重反射、即ち、散乱の程度が小さいことを表している。
【0085】
一方、図15(B)に示した画素NDVIの最頻値は0.70付近にあり、最頻値の左右の領域の対称性が、図15(A)に比べて高くなっている。これは、点Bの状態の植物Pは、一様な葉の重なりが存在する群葉に近づいており、点Aの状態の植物Pに比べて多重反射、即ち、散乱の程度が大きくなっていることを表す。
【0086】
図16は、このような散乱の程度を表す散乱指標の算出方法の一例を表している。図16は、植物Pの画素植生指標のヒストグラムであり、縦軸は画素数、横軸は画素NDVIを表す。算出部215は、たとえば、このヒストグラムの最頻値Moと平均値Meとの差ΔNDVI(ΔNDVI=|最頻値Mo-平均値Me|)を散乱指標として算出する。ΔNDVIが小さいとき、植物Pの散乱の程度が比較的大きいことを表し、ΔNDVIが大きいとき、植物Pの散乱の程度が比較的小さいことを表す。このようなヒストグラムは、光測定装置10により撮影された画像のうち、植物Pが存在する単位画素の画素植生指標を用いて作成されていることが好ましい。これにより、より高い精度で散乱指標を算出することが可能となる。
【0087】
図17は、植生指標と散乱指標との関係の一例を表している。図17の縦軸はΔNDVIであり、横軸はNDVI(画素NDVIの平均)である。たとえば、このように、NDVIの値が小さいときには植物Pの葉の重なりが小さいので、ΔNDVIが大きくな。ストレージ24には、たとえば、このような植物Pの植生指標および散乱指標の関係式が記憶されている。植物Pの植生指標および散乱指標の関係式は、たとえば、過去の植物Pのデータを用いて求められている。たとえば、上述の式(3)に示した植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係式を求めるのと同時に、植物Pの植生指標および散乱指標の関係式を求めることができる。
【0088】
草丈推定部212は、算出部215により算出された散乱指標と、取得部211により取得された植生指標および植被率とに基づいて、所定時点の植物Pの草丈を推定する。草丈推定部212は、たとえば、以下のようにして、所定時点の植物Pの草丈を推定する。
【0089】
まず、ストレージ24に記憶された植物Pの植生指標および散乱指標の関係式(たとえば、図17)を用いて、所定時点の植物Pの補正指数Isを求める。補正指数Isは、ストレージ24に記憶された関係式から求められる植物Pの散乱指標と、算出部215により算出された散乱指標との乖離の程度を表す指標である。たとえば、取得部211により取得されたNDVIの値が0.5であるとき、ストレージ24に記憶された関係式から求められる植物Pの散乱指標(点C)と、算出部215により算出された散乱指標(点D)との乖離の程度に応じて補正指数Is(Is2)を求めることができる。
【0090】
次に、草丈推定部212は、たとえば、ストレージ24に記憶された補正指数Is、植生指標、植被率および草丈の関係に基づいて、所定時点の植物Pの草丈を推定する。ストレージ24には、たとえば、予め求められた植物Pの補正指数Is、植生指標、植被率および草丈の関係式が記憶されている。植物Pの補正指数Is、植生指標、植被率および草丈の関係式は、たとえば、過去の植物Pのデータを用いて求められている。
【0091】
図18は、植物Pの補正指数Is、植生指標、植被率および草丈の関係の一例を表している。図18の縦軸は草丈および植被率の積(草丈×植被率)を表し、横軸は植生指標を表している。たとえば、ストレージ24には、補正指数Is(Is-1、Is-2、Is0、Is1、Is2)毎に、植生指標、植被率および草丈の関係式が記憶されている。
【0092】
草丈推定部212は、たとえば、図18に示す関係式と、先に求めた補正指数Is(Is2)と、取得部211により取得された植生指標および植被率とを用いて所定時点の植物Pの草丈を推定する。たとえば、補正指数Is2、NDVIが0.5、植被率が0.75であるとき(点D’)、草丈推定部212は、植物Pの草丈を約133cm(100/0.75)と推定する。なお、補正指数Is0であるときには、NDVIが0.5、植被率が0.75であっても(点C’)、草丈推定部212は、植物Pの草丈を約87cm(65/0.75)と推定する。出力部213は、草丈推定部212により推定された所定時点の植物Pの草丈に関する情報を出力する。
【0093】
図19は、変形例2に係る情報処理装置20において実行される推定処理の手順を示すフローチャートである。
【0094】
(ステップS301)
情報処理装置20は、まず、上述のステップS101(図7)と同様にして、所定時点の植物Pの植生指標および植被率を取得する。
【0095】
(ステップS302)
情報処理装置20は、光測定装置10により撮影された植物Pの画像に基づいて、所定時点の植物Pの散乱指標を算出する。
【0096】
(ステップS303)
情報処理装置20は、ステップS301の処理において取得された植生指標および植被率と、ステップS302の処理において算出された散乱指標とを、予めストレージ24に記憶された散乱指標、植生指標、植被率および草丈の関係式(たとえば、上述の図18)に入力して、所定時点の植物Pの草丈を推定する。
【0097】
(ステップS304)
情報処理装置20は、ステップS303の処理において推定された所定時点の植物Pの草丈に関する情報を出力して処理を終了する。
【0098】
図20は、情報処理装置20において実行される推定処理の手順の他の例を表している。情報処理装置20は、上記変形例1で説明したのと同様に、さらに、葉色を推定し(ステップS305)、葉色に関する情報を出力してもよい(ステップS306)。
【0099】
このようなCPU21を有する情報処理装置20も、上記実施形態で説明したのと同様に、植物Pの植生指標とともに、植物Pの植被率が取得されるので、容易に植生指標を草丈に換算することができる。これにより、植物の生産者等が植生指標の取り扱いに不慣れな場合であっても、画像から算出された植生指標を活用して植物の生育度合いを容易に把握することができる。よって、植生指標を、より広く活用ことが可能となる。また、この情報処理装置20では、散乱指標が算出されるので、より高い精度で植物Pの草丈および葉色を推定することが可能となる。以下、これについて説明する。
【0100】
取得部211により取得される植被率は、圃場全体にわたる植物Pの分布を表す重要な値であるが、この植被率には、植物Pの葉の重なり具合は反映されない。言い換えると、植物Pの葉の重なりが少ない状態であっても、より成長して植物Pの葉の重なりが多くなった状態であっても、植被率が大きく変化しないことがある。本変形例では、この植物Pの葉の重なりの程度を散乱指標として算出するので、より植物Pの成長の状態が多角的に反映され、より高い精度で草丈を推定することができる。
【0101】
[第2実施形態]
<記録装置30の構成>
図21は、本発明の第2実施形態に係る記録装置30の概略構成の一例を示すブロック図である。記録装置30は、たとえば、プリンターなどであり、CPU31、ROM32、RAM33、ストレージ34、通信インターフェース35、操作表示部36および記録部37を有している。各構成は、バス38を介して相互に通信可能に接続されている。CPU31、ROM32、RAM33、ストレージ34、通信インターフェース35および操作表示部36の各機能は、情報処理装置20のCPU21、ROM22、RAM23、ストレージ24、通信インターフェース25および操作表示部26の各機能と同様である。記録装置30は、上記第1実施形態等で説明した情報処理装置20の機能を備えていてもよい。
【0102】
記録部37は、たとえば、電子写真プロセス等の周知の作像プロセスを用いて、用紙等の記録媒体に画像を形成する。記録部37は、たとえば、植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係式に関する画像(たとえば、上述の図11に示すグラフ)を記録媒体に記録する。記録部37は、植物Pの補正指数Is、植生指標、植被率および草丈の関係式に関する画像(たとえば、上述の図18に示すグラフ)を記録媒体に記録してもよい。記録部37は、さらに、情報処理装置20が取得した植生指標および植被率に関する情報(たとえば、図18の点D’)を記録してもよい。
【0103】
図22は、記録装置30の機能構成を示すブロック図である。記録装置30は、CPU31がストレージ34に記憶されたプログラムを読み込んで処理を実行することによって、取得部311、決定部312、および出力部313として機能する。
【0104】
取得部311は、経時的に植物Pの植生指標、植被率および草丈を取得する。取得部311は、たとえば、光測定装置10により撮影された画像に基づいて求められた植生指標および植被率を取得し、ものさし等の測定器を用いて測定された草丈を取得する。
【0105】
決定部312は、取得部311により取得された植生指標、植被率および草丈の関係式(たとえば、上述の式(3))を決定する。
【0106】
出力部313は、決定部312により決定された関係式に関する情報を記録部37に出力する。これにより、記録部37は、この関係式に関する画像を記録媒体に記録する。
【0107】
この記録装置30および記録媒体では、植物Pの植生指標、植被率および草丈の関係式に関する画像等が記録される。これにより、植物の生産者等が植生指標の取り扱いに不慣れな場合であっても、植生指標を活用して植物の生育の度合いを容易に把握することができる。よって、植生指標を、より広く活用ことが可能となる。
【0108】
以上のように、実施形態および変形例において本発明の推定装置、推定方法、推定プログラム、記録装置および記録媒体について説明した。しかしながら、本発明は、その技術思想の範囲内において当業者が適宜に追加、変形、および省略することができることはいうまでもない。
【0109】
たとえば、上記実施形態では、植物Pが稲である例を説明したが、植物Pは大豆、小豆または麦等であってもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、草丈推定システム1が、光測定装置10および情報処理装置20を含む例を説明したが、草丈推定システム1は、さらに、植生指標の補正を行う植生指標補正部等を有していてもよい。植生指標補正部は、たとえば、太陽光の強度および高度等に応じて、画像から算出された植生指標を補正する。
【0111】
また、上記実施形態および変形例では、ストレージ24に関係式または学習済みの識別器が記憶されている例を説明したが、関係式および学習済みの識別器は、外部の記憶装置等に記憶されていてもよい。
【0112】
また、上記の実施形態におけるフローチャートの処理単位は、各処理の理解を容易にするために、主な処理内容に応じて分割したものである。処理ステップの分類の仕方によって、本願発明が制限されることはない。各処理は、さらに多くの処理ステップに分割することもできる。また、1つの処理ステップが、さらに多くの処理を実行してもよい。
【0113】
上述した実施形態に係るシステムにおける各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、たとえば、フレキシブルディスクおよびCD-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、システムの一機能としてその装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 草丈推定システム、
10 光測定装置、
10A 可視光測定部、
10B 赤外光測定部、
20 情報処理装置、
21,31 CPU、
211 取得部、
212 草丈推定部、
213 出力部、
214 葉色推定部、
215 算出部、
22,32 ROM、
23,33 RAM、
24,34 ストレージ、
25,35 通信インターフェース、
26,36 操作表示部、
30 記録装置、
37 記録部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22