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  • 特開-粘着剤組成物およびフィルムシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005745
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】粘着剤組成物およびフィルムシート
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20250109BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20250109BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20250109BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20250109BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20250109BHJP
   C09J 133/26 20060101ALI20250109BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20250109BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20250109BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J4/02
C09J11/06
C09J175/04
C09J133/14
C09J133/26
C09J7/25
C09J7/30
H01L21/78 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106068
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】ZACROS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
5F063
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004AA10
4J004AA17
4J004AB01
4J004CA03
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004CE01
4J004DA03
4J004DB02
4J004FA05
4J004FA08
4J040DF031
4J040DF041
4J040DF051
4J040DF061
4J040DF101
4J040EF181
4J040EF282
4J040EK061
4J040FA131
4J040FA231
4J040HC01
4J040HC21
4J040HD01
4J040HD13
4J040HD23
4J040HD32
4J040HD35
4J040HD36
4J040HD37
4J040HD39
4J040HD41
4J040JA09
4J040JB02
4J040JB07
4J040JB09
4J040KA13
4J040KA16
4J040KA30
4J040KA32
4J040LA08
4J040LA09
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA20
4J040PA33
4J040PA42
5F063AA18
5F063BA17
5F063EE22
5F063EE43
5F063EE44
(57)【要約】
【課題】半導体加工用のUV剥離粘着剤として好適に使用することができ、帯電防止性能とともに、耐熱性に優れた粘着剤組成物およびフィルムシートを提供する。
【解決手段】粘着剤層11を構成する粘着剤組成物が、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートと、カルボキシル基を含まない共重合可能なモノマーであって、(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマー、及び、(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーを含む、重量平均分子量100万~350万の(メタ)アクリル系ポリマーと、4官能以上の不飽和二重結合化合物として(D)分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートと、架橋剤として(E)3官能以上の芳香族系イソシアネート化合物と、(F)シランカップリング剤と、(G)帯電防止剤として融点25℃以上のイオン性化合物と、(H)光開始剤とを含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系ポリマーと、4官能以上の不飽和二重結合化合物と、架橋剤と、(F)シランカップリング剤と、(G)帯電防止剤と、(H)光開始剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの1種以上と、カルボキシル基を含まない共重合可能なモノマーであって、(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーの1種以上、及び、(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーの1種以上を含む、重量平均分子量100万~350万の共重合体であり、
前記不飽和二重結合化合物は、(D)分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートから選択された1種以上であり、
前記粘着剤組成物は、
前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートと前記(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーとの合計100重量部に対して、
前記架橋剤として(E)3官能以上の芳香族系イソシアネート化合物を0.1~10重量部と、
前記(F)シランカップリング剤を0.1~3重量部と、
前記(G)帯電防止剤が融点25℃以上のイオン性化合物の1種以上を0.5~30重量部と、
前記(H)光開始剤を0.1~5.0重量部の割合で含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記粘着剤組成物から加熱乾燥処理して形成された厚さ20μmの粘着剤層を厚さ27μmのPEEK基材上に積層した粘着フィルムの、PBO処理したシリコンウエハに対する90°剥離粘着力が1N/25mm以上であり、その後メタルハライドランプ、若しくは365nm波長のLED-UVランプで直径30.48cm(12インチ)の前記シリコンウエハに対して3000mJの割合でUV照射した後、240℃×5分加熱し、さらに165℃×2.5hr加熱して行う試験後の粘着力が0.5N/25mm以下であり、
前記シリコンウエハから剥離した後の粘着剤層の表面の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□以下であり、
前記シリコンウエハと同様に試験した際のステンレス(BA処理)に対する粘着力が0.5N/25mm以上であり、
剥離後の前記シリコンウエハの表面を汚染しないことを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレート40重量部以上を含む、少なくとも1種以上を70~95重量部と、前記(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーとして、ヒドロキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーを5~30重量部とを合計した100重量部と、前記(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーの1種以上とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートと、前記(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーとの合計100重量部に対して、前記(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーとして、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上を0.1~5重量部の割合で含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記(G)帯電防止剤である融点25℃以上のイオン性化合物が、
(G-1)フルオロ基含有アニオンを有するアンモニウム系イオン性化合物であり、フルオロ基含有アニオンがペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフラートからなる群から選択された1種、
(G-2)ペンタフルオロフェニル基(C基)を有するボレートアニオンとカチオンからなるイオン性化合物であり、カチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなるカチオン群から選択した1種、
(G-3)ノナフルオロブタンスルホナートアニオンとカチオンからなるイオン性化合物であり、カチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなる群から選択された1種、からなるイオン性化合物群から選択された1種以上を0.5~30重量部含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記粘着剤組成物は、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートと、前記(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーとの合計100重量部に対して、前記(D)分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートとして、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ポリペンタエリスリトールポリアクリレートからなる群から選択した少なくとも1種以上のアクリレート化合物を5~30重量部含んでなることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記(E)3官能以上の芳香族系イソシアネート化合物が、トリレンジイソシアネートのアダクト体、キシリレンジイソシアネートのアダクト体から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
前記(F)シランカップリング剤が、有機官能基として、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基、ポリエーテル基からなる群から選択された少なくとも1種以上を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とするフィルムシート。
【請求項11】
前記粘着剤層の基材が、厚さ25μm以上の耐熱基材であることを特徴とする請求項10に記載のフィルムシート。
【請求項12】
前記耐熱基材が、ポリイミド系フィルム、PEEK、PEN、ポリアミド系フィルム、ポリスチレン系フィルムから選ばれる厚さ25μm以上の耐熱基材であることを特徴とする請求項11に記載のフィルムシート。
【請求項13】
半導体加工工程で使用されることを特徴とする請求項10に記載のフィルムシート。
【請求項14】
前記半導体加工工程として、ウエハレベルパッケージ工程で使用されることを特徴とする請求項13に記載のフィルムシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物およびフィルムシートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体加工用テープに用いられる粘着剤としては、一般的に、ダイシングテープ用粘着剤を代表とする、いわゆるUV剥離粘着剤が知られている(例えば、特許文献1を参照)。UV剥離粘着剤は、UV照射後に粘着力が1N以下に低下して、剥離が容易になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6713864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今の半導体工程は複雑になっていて、半導体加工用テープに求められる要求条件も年々厳しくなっている。特に、ファンアウト型ウエハレベルパッケージ(FO-WLP)等の、ウエハに直接ICが乗せられる工程に用いられる半導体加工用テープの場合は、リフロー工程などの耐熱性も必要となっている。さらに、IC等の電子部品へのダメージを考慮して、工程テープを剥離した際の帯電防止機能も求められる場合がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、半導体加工用のUV剥離粘着剤として好適に使用することができ、帯電防止性能とともに、耐熱性に優れた粘着剤組成物およびフィルムシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、(メタ)アクリル系ポリマーと、4官能以上の不飽和二重結合化合物と、架橋剤と、(F)シランカップリング剤と、(G)帯電防止剤と、(H)光開始剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの1種以上と、カルボキシル基を含まない共重合可能なモノマーであって、(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーの1種以上、及び、(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーの1種以上を含む、重量平均分子量100万~350万の共重合体であり、前記不飽和二重結合化合物は、(D)分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートから選択された1種以上であり、前記粘着剤組成物は、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートと前記(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーとの合計100重量部に対して、前記架橋剤として(E)3官能以上の芳香族系イソシアネート化合物を0.1~10重量部と、前記(F)シランカップリング剤を0.1~3重量部と、前記(G)帯電防止剤が融点25℃以上のイオン性化合物の1種以上を0.5~30重量部と、前記(H)光開始剤を0.1~5.0重量部の割合で含有する。
【0007】
第2の態様は、第1の態様において、前記粘着剤組成物から加熱乾燥処理して形成された厚さ20μmの粘着剤層を厚さ27μmのPEEK基材上に積層した粘着フィルムの、PBO処理したシリコンウエハに対する90°剥離粘着力が1N/25mm以上であり、その後メタルハライドランプ、若しくは365nm波長のLED-UVランプで直径30.48cm(12インチ)の前記シリコンウエハに対して3000mJの割合でUV照射した後、240℃×5分加熱し、さらに165℃×2.5hr加熱して行う試験後の粘着力が0.5N/25mm以下であり、前記シリコンウエハから剥離した後の粘着剤層の表面の表面抵抗率が1.0×10+10Ω/□以下であり、前記シリコンウエハと同様に試験した際のステンレス(BA処理)に対する粘着力が0.5N/25mm以上であり、剥離後の前記シリコンウエハの表面を汚染しない。
【0008】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートとして、n-ブチルアクリレート40重量部以上を含む、少なくとも1種以上を70~95重量部と、前記(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーとして、ヒドロキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーを5~30重量部とを合計した100重量部と、前記(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーの1種以上とを含む。
【0009】
第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートと、前記(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーとの合計100重量部に対して、前記(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーとして、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミドから選ばれる1種以上を0.1~5重量部の割合で含む。
【0010】
第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記(G)帯電防止剤である融点25℃以上のイオン性化合物が、(G-1)フルオロ基含有アニオンを有するアンモニウム系イオン性化合物であり、フルオロ基含有アニオンがペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフラートからなる群から選択された1種、(G-2)ペンタフルオロフェニル基(C基)を有するボレートアニオンとカチオンからなるイオン性化合物であり、カチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなるカチオン群から選択した1種、(G-3)ノナフルオロブタンスルホナートアニオンとカチオンからなるイオン性化合物であり、カチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなる群から選択された1種、からなるイオン性化合物群から選択された1種以上を0.5~30重量部含む。
【0011】
第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、前記(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上である。
【0012】
第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様において、前記粘着剤組成物は、前記(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートと、前記(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーとの合計100重量部に対して、前記(D)分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートとして、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ポリペンタエリスリトールポリアクリレートからなる群から選択した少なくとも1種以上のアクリレート化合物を5~30重量部含んでなる。
【0013】
第8の態様は、第1~7のいずれか1の態様において、前記(E)3官能以上の芳香族系イソシアネート化合物が、トリレンジイソシアネートのアダクト体、キシリレンジイソシアネートのアダクト体から選ばれる1種以上である。
第9の態様は、第1~8のいずれか1の態様において、前記(F)シランカップリング剤が、有機官能基として、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基、ポリエーテル基からなる群から選択された少なくとも1種以上を有する。
【0014】
第10の態様は、第1~9のいずれか1の態様の粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とするフィルムシートである。
第11の態様は、第10の態様において、前記粘着剤層の基材が、厚さ25μm以上の耐熱基材であることを特徴とする。
第12の態様は、第11の態様において、前記耐熱基材が、ポリイミド系フィルム、PEEK、PEN、ポリアミド系フィルム、ポリスチレン系フィルムから選ばれる厚さ25μm以上の耐熱基材であることを特徴とする。
【0015】
第13の態様は、第10~12のいずれか1の態様において、半導体加工工程で使用されることを特徴とする。
第14の態様は、第13の態様において、前記半導体加工工程として、ウエハレベルパッケージ工程で使用されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半導体加工用のUV剥離粘着剤として好適に使用することができ、帯電防止性能とともに、耐熱性に優れた粘着剤組成物およびフィルムシートを提供することができる。
【0017】
本発明の粘着剤組成物は、従来のUV剥離粘着剤の性能を維持したまま、耐熱性も保持した粘着剤として用いることができ、耐熱性を要する工程の後にも容易に剥離することが可能になる。従来のUV剥離粘着剤では、UV照射後の加熱工程で大幅に粘着力が上昇して新しい製造工程に対応できなかったが、本発明では、特定の組成の(メタ)アクリル系ポリマーと、その他の化合物を含有した粘着剤組成物を使用することで、UV剥離性能と耐熱性能とを兼ね備えることを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】フィルムシートを被着体に貼合した例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0020】
実施形態の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系ポリマーと、4官能以上の不飽和二重結合化合物と、架橋剤と、(F)シランカップリング剤と、(G)帯電防止剤と、(H)光開始剤とを含有する粘着剤組成物であって、(メタ)アクリル系ポリマーが、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの1種以上と、カルボキシル基を含まない共重合可能なモノマーであって、(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーの1種以上、及び、(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーの1種以上を含む。
【0021】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの1種以上と、(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーの1種以上と、(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーの1種以上との共重合体であってもよく、さらにこれら以外のモノマーを含む共重合体であってもよい。(メタ)アクリル系ポリマーは、カルボキシル基を含まない共重合可能なモノマーのみを共重合させることが好ましい。
【0022】
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレート及び(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーは、ヒドロキシル基及びカルボキシル基を含まないモノマーである。以下の説明では、これらの合計の割合について「(A)と(B)との合計100重量部」という場合がある。
【0023】
(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないとしては、適宜選択することが可能である。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、イソノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ミリスチル、ステアリル、イソミリスチル、イソステアリル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0024】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートのいずれでもよい。例えばアルキル基がn-ブチルである場合は、n-ブチル(メタ)アクリレートがn-ブチルアクリレート及び/又はn-ブチルメタクリレートのいずれでもよい。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、非環状(直鎖状、分枝状)、環状のいずれでもよい。
【0025】
前記(メタ)アクリル系ポリマーに共重合される(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートは、1種でも2種以上でもよい。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、(A)と(B)との合計100重量部のうち、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートの少なくとも1種以上の合計を、70~95重量部の割合で含むことが好ましい。
【0026】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、(A)と(B)との合計100重量部のうち、n-ブチルアクリレートを40重量部以上含むことが好ましい。n-ブチルアクリレートの割合は、50重量部、60重量部、70重量部、80重量部、90重量部、95重量部などでもよい。前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、(A)アルキル基の炭素数がC1~C18のアルキル(メタ)アクリレートがn-ブチルアクリレート1種のみでもよく、n-ブチルアクリレートと他のアルキル(メタ)アクリレートとを併用してもよい。
【0027】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーは、カルボキシル基を含まない共重合可能なモノマーであって、なおかつ、(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーとも異なるモノマーである。(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーは、単官能の不飽和二重結合化合物であることが好ましい。
【0028】
(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーとしては、特に限定されないが、N-ビニル置換ラクタム類、N-ビニル置換環状アミン類、N-(メタ)アクリロイル置換環状アミン類、N,N-ジアルキル置換アミノ基を含有するアクリル系モノマー、N,N-ジアルキル置換アミド基を含有するアクリル系モノマーなどが挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリロイルは、アクリロイル及び/又はメタクリロイルのいずれでもよい。
【0029】
N-ビニル置換ラクタム類としては、N-ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
N-ビニル置換環状アミン類としては、N-ビニルピリジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペラジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルモルホリン等が挙げられる。
【0030】
N-(メタ)アクリロイル置換環状アミン類としては、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-(メタ)アクリロイルピペラジン、N-(メタ)アクリロイルアジリジン、N-(メタ)アクリロイルピロリジン、N-(メタ)アクリロイルピペリジン等が挙げられる。
【0031】
N,N-ジアルキル置換アミノ基を含有するアクリル系モノマーとしては、ジアルキルアミノ置換アルキル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノ置換アルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。N,N-ジアルキル置換アミド基を含有するアクリル系モノマーとしては、N,N-ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリルアミドは、アクリルアミド及び/又はメタクリルアミドのいずれでもよい。
【0032】
ジアルキルアミノ置換アルキル(メタ)アクリレートとしては、N-エチル-N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチル-N-イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
ジアルキルアミノ置換アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、N-エチル-N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。ジアルキルアミノ置換アルキル基が(メタ)アクリルアミド化合物のN-置換基であってもよい。
【0034】
N,N-ジアルキル置換(メタ)アクリルアミドとしては、N-エチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0035】
前記(メタ)アクリル系ポリマーに共重合される(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーは、1種でも2種以上でもよい。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、(A)と(B)との合計100重量部のうち、(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を、5~30重量部の割合で含むことが好ましい。
【0036】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて、(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーとしては、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーは、カルボキシル基を含まないモノマーである。(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーは、単官能の不飽和二重結合化合物であることが好ましい。
【0037】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミドとしては、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0038】
(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された、少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0039】
前記(メタ)アクリル系ポリマーに共重合される(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーは、1種でも2種以上でもよい。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、(A)と(B)との合計100重量部に対して、(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーの少なくとも1種以上の合計を、0.1~5重量部の割合で含むことが好ましい。
【0040】
(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーは、カルボキシル基を含有するモノマーと同様に、架橋剤のイソシアネート化合物と反応することができる。そのため、カルボキシル基を含有するモノマーを用いないで、(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーを用いることにより、粘着剤層の粘着力を向上させ、且つ、腐食性を低減させることに役立てることができる。前記(メタ)アクリル系ポリマーの酸価が0.1以下であってもよい。
【0041】
前記(メタ)アクリル系ポリマーとして用いられる共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。前記(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリレート系モノマーや(メタ)アクリルアミド系モノマー等のアクリル系モノマーを50~100重量%含むことが好ましい。
【0042】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、100万~350万であることが好ましく、150万以上であってもよい。
【0043】
実施形態の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーと共に、4官能以上の不飽和二重結合化合物を含有する。不飽和二重結合化合物に含まれる不飽和二重結合は、芳香族を構成しない炭素-炭素間の不飽和二重結合であることが好ましい。不飽和二重結合は、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリロイル基に含まれてもよく、ビニル基、アリル基等でもよい。
【0044】
前記不飽和二重結合化合物は、(D)分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートから選択された1種以上であることが好ましい。分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートとしては、分子内にヒドロキシル基を4つ以上もつポリオール化合物から誘導されるアクリレート化合物が挙げられる。
【0045】
前記ポリオール化合物としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパン、ポリトリメチロールプロパン等が挙げられる。(D)分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートは、前記ポリオール化合物に含まれるヒドロキシル基の全部または一部が、4つ以上アクリレートとなった化合物に相当する。
【0046】
前記粘着剤組成物は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、(D)分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートを1~50重量部含むことが好ましく、5~30重量部含むことがより好ましい。また、(D)分子内に不飽和二重結合を4つ以上持つアクリレートとして、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ポリペンタエリスリトールポリアクリレートからなる群から選択した少なくとも1種以上のアクリレート化合物を5~30重量部含むことが好ましい。
【0047】
前記粘着剤組成物は、架橋剤として、(E)3官能以上の芳香族系イソシアネート化合物を含有することが好ましい。芳香族系イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等から誘導される化合物が挙げられる。
【0048】
3官能以上のイソシアネート化合物としては、2官能イソシアネート化合物のアダクト体、ビュレット体、イソシアヌレート体などが挙げられる。前記アダクト体としては、トリメチロールプロパン(TMP)や、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体が挙げられる。
【0049】
(E)3官能以上の芳香族系イソシアネート化合物が、トリレンジイソシアネートのアダクト体、キシリレンジイソシアネートのアダクト体から選ばれる1種以上であることが好ましい。前記粘着剤組成物は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、(E)3官能以上の芳香族系イソシアネート化合物を0.1~10重量部の割合で含有することが好ましい。
【0050】
前記粘着剤組成物は、(F)シランカップリング剤を含有する。(F)シランカップリング剤が、有機官能基として、エポキシ基、(メタ)アクリロキシ基、メルカプト基、アミノ基、ポリエーテル基からなる群から選択された少なくとも1種以上を有することが好ましい。また、これらの有機官能基を含み、オリゴマー化したアルコキシオリゴマー(シリコーンアルコキシオリゴマー)等も、(F)シランカップリング剤として好適に用いることができる。
【0051】
エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
(メタ)アクリロキシ基を有するシランカップリング剤としては、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン等が挙げられる。
【0053】
メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0054】
アミノ基を有するシランカップリング剤としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(メチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(メチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0055】
ポリエーテル基を有するシランカップリング剤としては、例えば一般式:R-(OR-Si(ORで表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤である。ここで、RはC等のパーフルオロアルキル基である。n個のRは互いに同一でも異なってもよいが、CF、C、C等のパーフルオロアルキレン基またはCH、C、C等のアルキレン基である。Rはメチル基、エチル基等のアルキル基である。nは1以上の整数である。
【0056】
前記粘着剤組成物は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、(F)シランカップリング剤を0.1~3重量部の割合で含有することが好ましい。
【0057】
前記粘着剤組成物は、(G)帯電防止剤を含有する。前記粘着剤組成物は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、(G)帯電防止剤を0.5~30重量部の割合で含有することが好ましい。
【0058】
前記粘着剤組成物は、(G)帯電防止剤として、融点25℃以上のイオン性化合物の1種以上を含有することが好ましい。(G)帯電防止剤としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物のうち、カチオンおよび/またはアニオンの選択により、融点25℃以上のイオン性化合物を選択することができる。(G)帯電防止剤の融点が25℃以上であることにより、帯電防止剤の耐熱性を保持して、粘着剤層の表面へのブリードアウトおよび被着体の汚染を防止することができる。
【0059】
(G)帯電防止剤のカチオンとしては、ピリジニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなる群から選択された1種が挙げられる。これらのカチオンは、カチオンがリチウムである場合を除いて、1又は2以上の置換基を有してもよい。カチオンの置換基としては、アルキル基などの有機基が挙げられる。
【0060】
(G)帯電防止剤のアニオンとしては、無機又は有機のフルオロ基含有アニオンが挙げられる。ここで、フルオロ基とは、アニオンを構成する他の原子に結合したフッ素原子を意味する。無機のフルオロ基含有アニオンとしては、PF 、AsF 、SbF 、BF 、AlF 、(FSO、FSO 、等が挙げられる。有機のフルオロ基含有アニオンとしては、フルオロ基含有のスルホネートアニオン(RSO )、フルオロ基含有のカルボキシレートアニオン(RCOO)、フルオロ基含有のアルコキシド又はフェノキシドアニオン(RO)、フルオロ基含有の有機イミドアニオン(R)、フルオロ基含有のメチド(R)アニオン、フルオロ基含有の有機ボレート(R)アニオン等で、Rの少なくとも1以上として、フルオロ基含有の有機基を有するアニオンが挙げられる。
【0061】
(G)帯電防止剤のアニオンにおけるRの有機基としては、アルキル基、アルコキシ基、芳香族基(アリール基、アラルキル基等)、アルキルカルボニル基、芳香族カルボニル基、アルキルスルホニル基、芳香族スルホニル基等の1種以上が挙げられる。アニオンが2以上のRを有する場合は、2以上のRの間に結合を有して環状となってもよい。
【0062】
(G)帯電防止剤である融点25℃以上のイオン性化合物は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、次の(G-1)~(G-3)からなるイオン性化合物群から選択された1種以上を0.5~30重量部含むことが好ましい。
【0063】
(G-1)フルオロ基含有アニオンを有するアンモニウム系イオン性化合物としては、フルオロ基含有アニオンがペンタフルオロベンゼンスルホネート、ヘキサフルオロフォスフェート、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、ビス(フルオロスルホニル)イミド、トリフラートからなる群から選択された1種であるイオン性化合物が挙げられる。アンモニウム系イオン性化合物は、カチオンとして、アンモニウムを有する。アンモニウムの置換基は、フルオロ基を含有しない置換基でも、フルオロ基含有の置換基でもよい。
【0064】
(G-2)ペンタフルオロフェニル基(C基)を有するボレートアニオンとカチオンからなるイオン性化合物としては、カチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、スルホニウム、ホスホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなるカチオン群から選択した1種であるイオン性化合物が挙げられる。C基を有するボレートアニオンとしては、4つの有機基Rのうち、少なくとも1つがC基であればよく、具体例として、B(C が挙げられる。
【0065】
(G-3)ノナフルオロブタンスルホナートアニオンとカチオンからなるイオン性化合物としては、カチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなる群から選択された1種であるイオン性化合物が挙げられる。
【0066】
前記粘着剤組成物は、(H)光開始剤を含有する。(H)光開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光開始剤、ベンゾイン系光開始剤、ベンゾフェノン系光開始剤、チオキサントン系光開始剤などが挙げられる。
【0067】
アセトフェノン系光開始剤としては、アセトフェノン、p-(tert-ブチル)1’,1’,1’-トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’-ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシルアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2’-フェニルアセトフェノン、2-アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン等が挙げられる。
【0068】
ベンゾイン系光開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン等が挙げられる。
【0069】
ベンゾフェノン系光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル-o-ベンゾイルベンゾエート、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシルベンゾフェノン、ヒドロキシルプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0070】
チオキサントン系光開始剤としては、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
【0071】
その他の光開始剤としては、α-アシルオキシムエステル、ベンジル-(o-エトキシカルボニル)-α-モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、フェニルグリオキシル酸エステル、3-ケトクマリン、2-エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート等が挙げられる。
【0072】
前記粘着剤組成物は、(A)と(B)との合計100重量部に対して、(H)光開始剤を0.1~5.0重量部の割合で含有することが好ましい。
【0073】
実施形態の粘着剤組成物は、以上の例示以外にも、任意の成分として、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0074】
実施形態の粘着剤組成物から加熱乾燥処理して形成された粘着フィルムの、PBO処理したシリコンウエハに対する90°剥離粘着力が1N/25mm以上であることが好ましい。ここで、PEEKとは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂であり、PBO処理とは、ポリベンゾオキサゾールである。粘着力の試験用粘着フィルムは、例えば厚さ20μmの粘着剤層を厚さ27μmのPEEK基材上に積層してもよい。
【0075】
さらに前記加熱乾燥処理して形成された粘着フィルムは、加熱乾燥処理の後メタルハライドランプ、若しくは365nm波長のLED-UVランプで直径30.48cm(12インチ)の被着体(シリコンウエハ)に対して3000mJの割合でUV照射した後の(後述する240℃×5分加熱し、さらに165℃×2.5hr加熱して行う加熱処理前の)PBO処理したシリコンウエハに対する90°剥離粘着力が0.5N/25mm以下であることが好ましい。当該粘着力は、0.3N/25mm以下であることがより好ましい。
【0076】
さらに前記加熱乾燥処理して形成された粘着フィルムは、加熱乾燥処理の後メタルハライドランプ、若しくは365nm波長のLED-UVランプで直径30.48cm(12インチ)の被着体(シリコンウエハ)に対して3000mJの割合でUV照射した後、240℃×5分加熱し、さらに165℃×2.5hr加熱して行う試験後の、PBO処理したシリコンウエハに対する90°剥離粘着力が0.5N/25mm以下であることが好ましい。当該粘着力は、0.3N/25mm以下であることがより好ましい。
【0077】
また、同様に試験して、前記加熱乾燥処理して形成された粘着フィルムは、加熱乾燥処理の後メタルハライドランプ、若しくは365nm波長のLED-UVランプで直径30.48cm(12インチ)の被着体(BA処理されたステンレス)に対して3000mJの割合でUV照射した後、240℃×5分加熱し、さらに165℃×2.5hr加熱して行う試験後の、ステンレス(BA処理)に対する90°剥離粘着力が0.5N/25mm以上であることが好ましい。ここで、BA処理とは、ブライト・アニール処理である。
【0078】
シリコンウエハから剥離した後の粘着剤層の表面の表面抵抗率は、1.0×10+10Ω/□以下であることが好ましい。これにより、粘着フィルムおよび被着体の剥離帯電を抑制することができる。表面抵抗率の測定に用いるシリコンウエハは、粘着力の測定に用いる被着体(PBO処理したシリコンウエハ)と同一でもよい。
【0079】
粘着フィルムは、剥離後のシリコンウエハの表面を汚染しないことが好ましい。これにより、被着体となるシリコンウエハ等の表面汚染を防止することができる。
【0080】
実施形態の粘着剤組成物からなる粘着剤層は、フィルムシートに用いることができる。図1に、フィルムシート10の粘着剤層11を被着体20に貼合した例を示す。フィルムシート10は、粘着剤層11を基材12の一面上に有することが好ましい。
【0081】
基材12は、厚さ25μm以上の耐熱基材であることが好ましい。耐熱基材としては、ポリイミド系フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド系フィルム、ポリスチレン系フィルムから選ばれる厚さ25μm以上の耐熱基材であることが好ましい。
【0082】
基材12としては、半導体加工工程の要求に対応できるように、耐熱性の高い材料を選択することが好ましい。ポリアミド系およびポリスチレン系フィルムについては、汎用樹脂(ナイロンや一般用ポリスチレン)よりも耐熱性の高い、芳香族ポリアミド、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)等が挙げられる。
【0083】
フィルムシート10は、ウエハレベルパッケージ(WLP)工程などの半導体加工工程で使用することができる。粘着剤層11は、粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系ポリマーが、架橋剤として(E)3官能以上の芳香族系イソシアネート化合物を用いて架橋された状態で、被着体20に貼合されることが好ましい。
【0084】
さらにフィルムシート10は、紫外線(UV)照射により、シリコンウエハに対する粘着力が低下することが好ましい。また、紫外線(UV)照射後も、ステンレスに対する粘着力が所定の水準以上を維持することが好ましい。
【0085】
被着体20に貼合される前のフィルムシート10は、粘着剤層11の粘着面を保護するため、離型フィルム(セパレーター)を用いてもよい。離型フィルムとしては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。離型フィルムは、離型剤、コート剤、防汚処理、帯電防止処理を施したものでもよい。
【0086】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【実施例0087】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0088】
<アクリル系ポリマーの製造>
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、表1に示すモノマーを、(A)と(B)との合計が100重量部となるように加えるとともに、溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、アクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、表1に示す。
【0089】
【表1】
【0090】
表1で用いた略記号の意味(化合物名等)は、次のとおりである。また、表1でこれらの略記号に続く数値は、(A)と(B)との合計100重量部に対する重量部である。
【0091】
表1において、(A)群としては、n-ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)、メチルアクリレート(MA)、イソオクチルアクリレート(IOA)、イソブチルアクリレート(IBA)、n-ブチルメタクリレート(BMA)を用いた。
【0092】
また、(B)群としては、N-ビニルピロリドン(NVP)、N,N-ジエチルアクリルアミド(DEAA)、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N-ジイソプロピルアクリルアミド(DIPAA)、N-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド(DMAPMA)を用いた。
【0093】
また、(C)群としては、8-ヒドロキシオクチルアクリレート(8HOA)、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート(6HHA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、N-ヒドロキシメチルアクリルアミド(HMAA)、N-ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を用いた。
【0094】
また、(X)群は、カルボキシル基を含有するモノマーであり、比較例4にアクリル酸(AAc)を用いた。
【0095】
<粘着剤組成物及び粘着剤層の製造>
上述したアクリル系ポリマー溶液に対して、表2に示す添加剤を加えて撹拌混合し、粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる離型フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した後、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングすることにより、粘着剤層を得た。粘着力の試験用粘着フィルムは、厚さ20μmの粘着剤層を厚さ27μmのPEEK基材上に積層してもよい。
【0096】
【表2】
【0097】
表2で用いた略記号の意味(化合物名等)は、次のとおりである。また、表2でこれらの略記号に続く数値は、(A)と(B)との合計100重量部に対する重量部である。
【0098】
表2において、(D)群としては、4官能のペンタエリスリトールテトラアクリレート(D-1)、6官能以上のポリペンタエリスリトールポリアクリレート(D-2)、4官能のジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(D-3)、6官能のジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(D-4)、2官能の1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(D-5)、3官能のペンタエリスリトールトリアクリレート(D-6)を用いた。
【0099】
また、(E)群としては、タケネート(登録商標)D-101、タケネート(登録商標)D-110N、コロネート(登録商標)HLを用いた。「D-101」はトリレンジイソシアネート(TDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体であり、「D-110N」はキシリレンジイソシアネート(XDI)のトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体であり、「HL」はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のアダクト体である。
【0100】
また、(F)群としては、「F-1」としてエポキシ基を有するシランカップリング剤(商品名:X-24-9590)、「F-2」としてメルカプト基を有するシランカップリング剤(商品名:X-12-1154)、「F-3」としてアクリロキシ基を有するシランカップリング剤(商品名:KBM-503)を用いた。
【0101】
また、(G)群としては、「G-1-1」として、テトラブチルアンモニウム トリフラート(融点113℃)、「G-1-2」として、メチルトリ-n-ブチルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(融点27℃)、「G-1-3」として、トリメチルヘキシルアンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(融点27℃)、「G-1-4」として、4-メチル-1-ヘキシルピリジニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(融点25℃未満)、「G-2-1」として、トリフェニルメチリウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(融点183℃)、「G-2-2」として、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(融点149℃)、「G-2-3」として、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム テトラフルオロボレート(融点15℃)、「G-3-1」として、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム(融点370℃)、「G-3-2」として、4-メチル-1-オクチルピリジニウム ノナフルオロブタンスルホナート(融点62℃)、「G-3-3」として、3-メチル-1-オクチルピリジニウム ノナフルオロブタンスルホナート(融点41℃)を用いた。
【0102】
また、(H)群としては、「H-1」としてアルキルフェノン系のOMNIRAD(登録商標)184、「H-2」としてアルキルフェノン系のOMNIRAD(登録商標)369、「H-3」としてオキシムエステル系のIRGACURE(登録商標)OXE01、「H-4」としてアシルホスフィンオキサイド系のOMNIRAD(登録商標)TPOを用いた。
【0103】
<フィルムシートの製造>
離型フィルムの上に形成した粘着剤層を、表3に示す耐熱基材の上に転写して、フィルムシートを製造した。耐熱基材の材質は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)系フィルム、ポリスチレン(PS)系フィルムである。
【0104】
表3に示す初期粘着力は、PBO処理したウエハにフィルムシートの粘着剤層を貼合した後、90°剥離粘着力として測定した。表3の粘着力では「初期」と表示した。
【0105】
表3に示すUV照射後の粘着力は、PBO処理したウエハにフィルムシートの粘着剤層を貼合した後、メタルハライドランプ、若しくは365nm波長のLED-UVランプで直径30.48cm(12インチ)の被着体に対して3000mJの割合でUV照射してから、90°剥離粘着力として測定した。表3の粘着力では「UV」と表示した。
【0106】
表3に示すUV照射後かつ加熱後の粘着力は、PBO処理したウエハまたはBA処理したステンレス(SUS)から選択される被着体にフィルムシートの粘着剤層を貼合した後、メタルハライドランプ、若しくは365nm波長のLED-UVランプで直径30.48cm(12インチ)の被着体に対して3000mJの割合でUV照射し、さらに240℃×5分加熱し、さらに165℃×2.5hr加熱した後、90°剥離粘着力として測定した。表3の粘着力では「UV+加熱」と表示した。
【0107】
【表3】
【0108】
表3に示すリワーク性は、フィルムシートのUV照射後かつ加熱後の粘着力が、0.3N/25mm未満である場合を良(○)、0.3N/25mm以上3N/25mm未満である場合を可(△)、3N/25mm以上である場合を不可(×)とした。
【0109】
表3に示す表面抵抗率は、被着体(PBO処理したウエハ)から剥離した後の粘着剤層に抵抗率計を適用して測定した。測定結果は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、m,nは正の実数)で表記した。
【0110】
表3に示す耐汚染性は、フィルムシートのUV照射後かつ加熱後の粘着力を測定した後に、被着体(PBO処理したウエハ)の表面に粘着剤成分が移行して汚染していないか目視で確認した。被着体に全く汚染がない場合を良(○)、被着体の一部分もしくは全体に薄く汚染している場合を可(△)、全面に汚染がある場合を不可(×)とした。
【0111】
実施例1~9のフィルムシートでは、(1)PBO処理したウエハに対する初期粘着力が1N/25mm以上、(2)PBO処理したウエハに対するUV照射後の粘着力が0.3N/25mm以下、(3)PBO処理したウエハに対するUV照射後かつ加熱後の粘着力が0.5N/25mm以下、(4)BA処理したSUSに対するUV照射後かつ加熱後の粘着力が0.5N/25mm以上であった。さらに、実施例1~9のフィルムシートは、優れた帯電防止性能と耐汚染性を備えていた。
【0112】
比較例1~9のフィルムシートでは、上述した(1)、(3)及び(4)の要件を全て満たすものはなかった。さらに、比較例1~9のフィルムシートは、帯電防止性能または耐汚染性でも劣っていた。
【0113】
比較例1では、不飽和二重結合化合物が2官能アクリレートであり、粘着剤組成物が(G)帯電防止剤を含んでいない。
比較例2では、(メタ)アクリル系ポリマーのMwが48万であり、粘着剤組成物が(G)帯電防止剤を含んでいない。
比較例3では、(メタ)アクリル系ポリマーに(B)共重合可能な窒素含有ビニルモノマーを共重合させておらず、(G)帯電防止剤の融点が低い。
比較例4では、(メタ)アクリル系ポリマーに(C)ヒドロキシル基を含有する共重合性モノマーを共重合させておらず、粘着剤組成物が(G)帯電防止剤を含んでいない。
比較例5では、粘着剤組成物が(F)シランカップリング剤を含んでおらず、(G)帯電防止剤の融点が低い。
比較例6では、不飽和二重結合化合物が3官能アクリレートであり、粘着剤組成物が(G)帯電防止剤を含んでいない。
比較例7では、架橋剤が脂肪族イソシアネート化合物であり、(G)帯電防止剤の割合が過少である。
比較例8では、粘着剤組成物が(G)帯電防止剤および(H)光開始剤を含んでいない。
比較例9では、粘着剤組成物が(G)帯電防止剤を含んでいない。
【符号の説明】
【0114】
10…フィルムシート、11…粘着剤層、12…基材、20…被着体。
図1