(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005746
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】乾燥水電解水素ガス製造装置
(51)【国際特許分類】
C25B 9/00 20210101AFI20250109BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20250109BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20250109BHJP
C01B 3/02 20060101ALI20250109BHJP
C01B 3/52 20060101ALI20250109BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C25B9/00 A
B01D53/26 300
C25B1/04
C01B3/02 H
C01B3/52
C25B15/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106075
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】伊澤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 美祐
(72)【発明者】
【氏名】濱口 豪
(72)【発明者】
【氏名】岩田 隆一
(72)【発明者】
【氏名】井戸田 芳典
(72)【発明者】
【氏名】五舛目 清剛
(72)【発明者】
【氏名】古谷 博秀
(72)【発明者】
【氏名】前田 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】金久保 光央
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 万里子
【テーマコード(参考)】
4D052
4G140
4K021
【Fターム(参考)】
4D052AA02
4D052CF00
4D052DA03
4D052DB01
4D052GA01
4D052GA03
4D052GB01
4D052GB11
4D052HA49
4D052HB01
4G140FA02
4G140FB02
4G140FC04
4G140FE01
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA11
4K021CA12
4K021CA15
(57)【要約】
【課題】真空ポンプの故障を抑制可能な乾燥水電解水素ガス製造装置を提供する。
【解決手段】水を電解して、水素と水蒸気を含有する湿潤水電解水素ガスを生成する水電解装置と、湿潤水電解水素ガスを吸収液に接触させ、湿度が減少した乾燥水電解水素ガス及び水蒸気を選択的に吸収した湿潤吸収液を得る吸収器と、湿潤吸収液を再生用乾燥ガスに接触させ、水分含有量が減少した予備乾燥吸収液及び湿度が上昇した湿潤再生用ガスを得る第1再生器と、真空ポンプを使用して予備乾燥吸収液を減圧乾燥し、乾燥吸収液を得る第2再生器と、乾燥吸収液を吸収器に送液する送液ポンプと、を有する、乾燥水電解水素ガス製造装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を電解して、水素と水蒸気を含有する湿潤水電解水素ガスを生成する水電解装置と、
前記湿潤水電解水素ガスを吸収液に接触させ、湿度が減少した乾燥水電解水素ガス及び前記水蒸気を選択的に吸収した湿潤吸収液を得る吸収器と、
前記湿潤吸収液を再生用乾燥ガスに接触させ、水分含有量が減少した予備乾燥吸収液及び湿度が上昇した湿潤再生用ガスを得る第1再生器と、
真空ポンプを使用して前記予備乾燥吸収液を減圧乾燥し、乾燥吸収液を得る第2再生器と、
前記乾燥吸収液を前記吸収器に送液する送液ポンプと、を有する、
乾燥水電解水素ガス製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は乾燥水電解水素ガス製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~3には乾燥水電解水素ガス製造装置が開示されている。乾燥水電解水素ガス製造装置は、主に水電解装置、吸収器、及び再生器から構成される。水電解装置は水を電解して、水素と水蒸気を含有する湿潤水電解水素ガスを生成するものである。吸収器は湿潤水電解水素ガスを吸収液に接触させ、乾燥水電解水素ガスと湿潤吸収液を得るものである。再生器は、湿潤吸収液から水分を取り除き、吸収液を再生するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7116397号公報
【特許文献2】特開2018-51543号公報
【特許文献3】特開2021-7938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再生器において、真空ポンプを使用して湿潤吸収液を減圧することにより、湿潤吸収液の減圧乾燥を実施することがある。一般的な油回転真空ポンプでは、吸引ガス中に水蒸気のような凝縮性のある気体が含まれていると、圧縮時に液化して油と混ざり、ポンプ内に残ってしまう問題がある。このような液体がポンプ内に残ると、部品腐食や油の潤滑性低下等の要因になり、故障の原因となる。また、減圧時に油に混ざった水分が再度蒸発するので到達圧力も低下し難くなる。再生器では湿潤吸収液に含まれる水分量が多いため、その水分量が真空ポンプが許容できる水蒸気吸入量よりも多くなり、上記の問題が生じやすい。
【0005】
そこで、本開示の主な目的は、上記実情を鑑み、真空ポンプの故障を抑制することができる乾燥水電解水素ガス製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様は、水を電解して、水素と水蒸気を含有する湿潤水電解水素ガスを生成する水電解装置と、湿潤水電解水素ガスを吸収液に接触させ、湿度が減少した乾燥水電解水素ガス及び水蒸気を選択的に吸収した湿潤吸収液を得る吸収器と、湿潤吸収液を再生用乾燥ガスに接触させ、水分含有量が減少した予備乾燥吸収液及び湿度が上昇した湿潤再生用ガスを得る第1再生器と、真空ポンプを使用して予備乾燥吸収液を減圧乾燥し、乾燥吸収液を得る第2再生器と、乾燥吸収液を吸収器に送液する送液ポンプと、を有する、乾燥水電解水素ガス製造装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の乾燥水電解水素ガス製造装置では、第1再生器において湿潤吸収液を予備乾燥し、得られた予備乾燥湿潤吸収液を第2再生器において真空ポンプを用いてさらに乾燥させている。このように湿潤吸収液を予備乾燥しているため、第2再生器において真空ポンプに流入する水蒸気吸入量を低減することができる。従って、本開示の乾燥水電解水素ガス製造装置によれば、真空ポンプの故障を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】乾燥水電解水素ガス製造装置1のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[乾燥水電解水素ガス製造装置]
本開示の乾燥水電解水素ガス製造装置は連続的に乾燥水電解水素ガスを製造する装置である。本開示の乾燥水電解水素ガス製造装置について、一実施形態である乾燥水電解水素ガス製造装置1を用いて説明する。
【0010】
図1に乾燥水電解水素ガス製造装置1のブロック図を示した。
図1に示した通り、乾燥水電解水素ガス製造装置1は主に、水を電解して、水素と水蒸気を含有する湿潤水電解水素ガス20を生成する水電解装置10と、湿潤水電解水素ガス20を吸収液(乾燥吸収液38)に接触させ、湿度が減少した乾燥水電解水素ガス26及び水蒸気を選択的に吸収した湿潤吸収液37を得る吸収器30と、湿潤吸収液37を再生用乾燥ガス42に接触させ、水分含有量が減少した予備乾燥吸収液39及び湿度が上昇した湿潤再生用ガス48を得る第1再生器341と、真空ポンプ40を使用して予備乾燥吸収液39を減圧乾燥し、乾燥吸収液38を得る第2再生器342と、乾燥吸収液38を吸収器30に送液する送液ポンプ35と、を有する。その他の部材については必要に応じて後述する。
【0011】
<水電解装置10>
水電解装置10は水を電解して、水素と水蒸気を含有する湿潤水電解水素ガス20を生成するものである。なお、水電解装置10は湿潤水電解水素ガス20の他に酸素を生成する。水電解装置10の態様としては特に限定されないが、例えばアルカリ水電解装置、固体高分子型水電解装置、高温水蒸気電解装置などがある。
【0012】
水電解装置10において生成した湿潤水電解水素ガス20は熱交換器21において、冷却水22と熱交換し、所望の温度に調整される。そして、湿潤水電解水素ガス20は流量制御計23によりその流量が制御されて、吸収器30に送られる。
【0013】
<吸収器30>
吸収器30は、湿潤水電解水素ガス20を吸収液(乾燥吸収液38)に接触させ、湿度が減少した乾燥水電解水素ガス26及び水蒸気を選択的に吸収した湿潤吸収液37を得るものである。吸収器30は気液分離器としての機能を有しており、乾燥水電解水素ガス26及び湿潤吸収液37は気液分離される。
【0014】
吸収液は水を吸収・放出する特性を持つ液状の吸収媒体である。例えば、イオン液体及び無機塩の混合溶液が挙げられる。吸収液及び無機塩は、例えば特許文献1~3のいずれかに記載された吸収液及び無機塩を使用することができる。
【0015】
図1に示した通り、吸収液(乾燥吸収液38)は吸収器30の上部から導入され、湿潤水電解水素ガス20は吸収器30の下部から導入される。そして、吸収器30内でこれらは接触する。吸収器30内の吸収液は温度制御されていてもよい。例えば25℃などの一定温度とすることができる。吸収器30内の圧力は、圧力調整弁等を設けて制御してもよい。
【0016】
湿潤水電解水素ガス20中の水蒸気は、吸収液に吸収されて減少する。水分の減少した水素(乾燥水電解水素ガス26)は、吸収器30の上部からトラップ24に導入される。トラップ24は、水素に飛沫同伴された吸収液を除去することができる。トラップ24を通過した水素は、露点計25を通して露点が計測され、貯蔵装置27に送られる。吸収器30で水分を吸収した吸収液(湿潤吸収液37)は、吸収器30の下部から排出され、流量計31、熱交換器321、及びヒーター33を通って第1再生器341内に導入される。
【0017】
<第1再生器341>
第1再生器341は、湿潤吸収液37を再生用乾燥ガス42に接触させ、水分含有量が減少した予備乾燥吸収液39及び湿度が上昇した湿潤再生用ガス48を得るものである。
【0018】
湿潤吸収液37は上述の通り、ヒーター33で加熱されており、所定の温度に調整されている。例えば、100℃、80℃、60℃などの一定温度に調整してよい。再生用乾燥ガス42は特に限定されないが、例えば大気、窒素及び水素等が挙げられる。再生用乾燥ガス42として、吸収器30で得られた乾燥水電解水素ガス26を用いてもよい。再生用乾燥ガス42の流量は特に限定されないが、例えば、湿潤吸収液37:再生用乾燥ガス42(体積比(常圧))で、1:300~1:1が好ましく、1:200~1:1がより好ましい。再生用乾燥ガス42の量が少ないほど再生に要するエネルギーを低減でき好ましい。
【0019】
図1に示した通り、湿潤吸収液37は第1再生器341の上部から導入される。再生用乾燥ガス42は、再生用ガス供給源47から配管内に流通し、熱交換器43において冷却水44と熱交換し、所望の温度に調整される。そして、再生用乾燥ガス42は流量計45を通って、第1再生器341の下部から導入される。そして、第1再生器341内でこれらは接触する。
【0020】
湿潤吸収液37中の水分は、再生用乾燥ガス42に吸収されて減少する。湿潤吸収液37は第1再生器341に導入された再生用乾燥ガス42の蒸気圧程度まで乾燥される。
得られた予備乾燥吸収液39は、第1再生器341の下部から排出され、第2再生器342内に上部から導入される。湿度が上昇した湿潤再生用ガス48は第1再生器341の上部から排出され、例えば排気口412から排気される。
【0021】
<第2再生器342>
第2再生器342は、真空ポンプ40を使用して予備乾燥吸収液39を減圧乾燥し、乾燥吸収液38を得るものである。真空ポンプ40は第2再生器342内の空気を吸入し、トラップ46を介して、排気口411から排気する。減圧は、例えば、-50kPaG(ゲージ圧)などにすることができる。このように減圧乾燥することで、予備乾燥吸収液39に含まれる水分量がさらに低減し、吸収液(乾燥吸収液38)を再生することができる。
【0022】
図1に示した通り、再生した吸収液(乾燥吸収液38)は第2再生器342の下部から排出され、送液ポンプ35に送られる。
【0023】
<送液ポンプ35>
送液ポンプ35は乾燥吸収液38を吸収器30に送液するものである。これにより、吸収液を循環することができる。また、送液過程で、熱交換器321にて湿潤吸収液37と乾燥吸収液38とで熱交換を行うことで、ヒーター33での投入熱量及び熱交換器322での交換熱量を低減することができる。
【0024】
<効果>
乾燥水電解水素ガス製造装置1では、第1再生器341において湿潤吸収液37を予備乾燥し、得られた予備乾燥湿潤吸収液39を第2再生器342において真空ポンプ40を用いてさらに乾燥させて、乾燥吸収液38を得ている。このように乾燥水電解水素ガス製造装置1では、湿潤吸収液37を予備乾燥しているため、第2再生器342において真空ポンプ40に流入する水蒸気吸入量を低減することができる。従って、乾燥水電解水素ガス製造装置1によれば、真空ポンプの故障を抑制することができる。また、この結果として、真空ポンプ40の交換頻度や交換費用を軽減することができる。
【0025】
以上、一実施形態を用いて、本開示の乾燥水電解水素ガス製造装置について説明した。本開示の乾燥水電解水素ガス製造装置によれば、真空ポンプの故障を抑制しつつ、連続的に乾燥水電解水素ガスを製造することができる。
【0026】
[乾燥水電解水素ガス製造方法]
本開示の乾燥水電解水素ガス製造方法は次のとおりである。すなわち、水を電解して、水素と水蒸気を含有する湿潤水電解水素ガスを生成する水電解工程と、湿潤水電解水素ガスを吸収液(乾燥吸収液)に接触させ、湿度が減少した乾燥水電解水素ガス及び水蒸気を選択的に吸収した湿潤吸収液を得る吸収工程と、湿潤吸収液を再生用乾燥ガスに接触させ、水分含有量が減少した予備乾燥吸収液及び湿度が上昇した湿潤再生用ガスを得る第1再生工程と、真空ポンプを使用して予備乾燥吸収液を減圧乾燥し、乾燥吸収液を得る第2再生工程と、乾燥吸収液を吸収工程に送液する送液工程と、を有する、乾燥水電解水素ガス製造方法である。
【0027】
本開示の乾燥水電解水素ガス製造方法は上述の乾燥水電解水素ガス製造装置を用いて実施できる。本開示の乾燥水電解水素ガス製造方法によれば、真空ポンプの故障を抑制することができる。本開示の乾燥水電解水素ガス製造方法の詳しい内容は上述したため、ここでは説明を省略する。
【符号の説明】
【0028】
1 水電解水素ガス製造装置
10 水電解装置
20 湿潤水電解水素ガス
21 熱交換器
22 冷却水
23 流量制御計
24 トラップ
25 露点計
26 乾燥水電解水素ガス
27 貯蔵装置
30 吸収器
31 流量計
321 熱交換器
322 熱交換器
33 ヒーター
341 第1再生器
342 第2再生器
35 送液ポンプ
36 冷却水
37 湿潤吸収液
38 乾燥吸収液
39 予備乾燥吸収液
40 真空ポンプ
411 排気口
412 排気口
42 再生用乾燥ガス
43 熱交換器
44 冷却水
45 流量計
46 トラップ
47 再生用ガス供給源
48 湿潤再生用ガス