(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025057793
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】真空断熱材
(51)【国際特許分類】
F16L 59/065 20060101AFI20250402BHJP
C03C 13/00 20060101ALI20250402BHJP
【FI】
F16L59/065
C03C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167542
(22)【出願日】2023-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 謙太
【テーマコード(参考)】
3H036
4G062
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB23
3H036AB24
3H036AB28
3H036AC01
4G062AA05
4G062BB01
4G062DA06
4G062DA07
4G062DA08
4G062EB01
4G062EB02
4G062EB03
4G062EC01
4G062EC02
4G062EC03
4G062MM15
4G062MM40
4G062NN40
(57)【要約】
【課題】内部に浸入する水分による熱伝導率の悪化を抑制できる、長期信頼性に優れた真空断熱材を提供することを目的とする。
【解決手段】芯材と、前記芯材を覆うガスバリア性フィルムとを備え、前記芯材が前記ガスバリア性フィルムで形成された外袋内に減圧封入された真空断熱材であって、前記芯材が、ヒュームドシリカと、輻射抑制成分と、ガラス繊維とを含み、前記ガラス繊維に含まれるNa
2OとK
2Oの合計質量の前記ガラス繊維の総質量に対する割合が11質量%以下である、真空断熱材。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、前記芯材を覆うガスバリア性フィルムとを備え、前記芯材が前記ガスバリア性フィルムで形成された外袋内に減圧封入された真空断熱材であって、
前記芯材が、ヒュームドシリカと、輻射抑制成分と、ガラス繊維とを含み、
前記ガラス繊維に含まれるNa2OとK2Oの合計質量の前記ガラス繊維の総質量に対する割合が11質量%以下である、真空断熱材。
【請求項2】
前記ガラス繊維のアルカリ溶出量が1.9mL/g以下である、請求項1に記載の真空断熱材。
【請求項3】
前記ガラス繊維の熱膨張係数が90×10-7/℃以下である、請求項1または2に記載の真空断熱材。
【請求項4】
前記ガラス繊維のヤング率が50GPa以上である、請求項1または2に記載の真空断熱材。
【請求項5】
前記ガラス繊維を構成するガラスは、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスおよびアルミノケイ酸ガラスから選ばれる1種以上である、請求項1または2に記載の真空断熱材。
【請求項6】
前記芯材の総質量に対し、前記ヒュームドシリカの含有割合が50~90質量%、前記輻射抑制成分の含有割合が3~30質量%、前記ガラス繊維の含有割合が2~30質量%であり、
減圧封入された前記芯材の密度が0.30g/cm3以下であり、
前記ガラス繊維の繊維長の範囲は0.1~10mmであり、
前記ガラス繊維の重量平均繊維長Lwに対する数平均繊維長Lnの比で表される繊維長分布Lw/Lnが1.05以上である、請求項1または2に記載の真空断熱材。
【請求項7】
前記ガラス繊維の繊維長D10が2.4mm以下である、請求項6に記載の真空断熱材。
【請求項8】
前記ガラス繊維の繊維長D50に対する、繊維長D90と繊維長D10との差で表される、前記ガラス繊維の繊維長の広がり指標(D90-D10)/D50が0.21以上である、請求項6に記載の真空断熱材。
【請求項9】
前記輻射抑制成分が、グラファイト、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、およびチタン酸カリウムから選ばれる1種以上である、請求項6に記載の真空断熱材。
【請求項10】
平板状の真空断熱材を作製し、前記真空断熱材の厚み方向の平面に4400Paの圧力を1時間加えた際のひずみ量が0.25%以下である、請求項6に記載の真空断熱材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空断熱材に関する。
【背景技術】
【0002】
真空断熱材は、冷蔵庫、給湯器等の様々な分野で使用されている。真空断熱材としては、粉体とガラス繊維とを含む芯材が成形された成形体が外袋内に減圧封入された真空断熱材が知られている(特許文献1)。芯材に粉体を用いた真空断熱材は、芯材にガラス繊維等の繊維のみを用いた真空断熱材に比べ、初期の断熱性能が劣るものの、低真空でも充分な断熱性能を維持できるため耐久性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のような従来の真空断熱材においては、芯材を減圧封入している外袋の熱融着部分から湿気が少しずつ内部に浸入し、浸入した水分の影響で熱伝導率が悪化し、断熱性能が徐々に低下していく問題がある。
【0005】
本発明は、内部に浸入する水分による熱伝導率の悪化を抑制できる、長期信頼性に優れた真空断熱材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の構成を含む。
[1]芯材と、前記芯材を覆うガスバリア性フィルムとを備え、前記芯材が前記ガスバリア性フィルムで形成された外袋内に減圧封入された真空断熱材であって、
前記芯材が、ヒュームドシリカと、輻射抑制成分と、ガラス繊維とを含み、
前記ガラス繊維に含まれるNa2OとK2Oの合計質量の前記ガラス繊維の総質量に対する割合が11質量%以下である、真空断熱材。
[2]前記ガラス繊維のアルカリ溶出量が1.9mL/g以下である、[1]に記載の真空断熱材。
[3]前記ガラス繊維の熱膨張係数が90×10-7/℃以下である、[1]または[2]に記載の真空断熱材。
[4]前記ガラス繊維のヤング率が50GPa以上である、[1]~[3]のいずれかに記載の真空断熱材。
[5]前記ガラス繊維を構成するガラスは、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスおよびアルミノケイ酸ガラスから選ばれる1種以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の真空断熱材。
[6]前記芯材の総質量に対し、前記ヒュームドシリカの含有割合が50~90質量%、前記輻射抑制成分の含有割合が3~30質量%、前記ガラス繊維の含有割合が2~30質量%であり、
減圧封入された前記芯材の密度が0.30g/cm3以下であり、
前記ガラス繊維の繊維長の範囲は0.1~10mmであり、
前記ガラス繊維の重量平均繊維長Lwに対する数平均繊維長Lnの比で表される繊維長分布Lw/Lnが1.05以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の真空断熱材。
[7]前記ガラス繊維の繊維長D10が2.4mm以下である、[6]に記載の真空断熱材。
[8]前記ガラス繊維の繊維長D50に対する、繊維長D90と繊維長D10との差で表される、前記ガラス繊維の繊維長の広がり指標(D90-D10)/D50が0.21以上である、[6]または[7]に記載の真空断熱材。
[9]前記輻射抑制成分が、グラファイト、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、およびチタン酸カリウムから選ばれる1種以上である、[6]~[8]のいずれかに記載の真空断熱材。
[10]平板状の真空断熱材を作製し、前記真空断熱材の厚み方向の平面に4400Paの圧力を1時間加えた際のひずみ量が0.25%以下である、[6]~[9]のいずれかに記載の真空断熱材。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、内部に浸入する水分による熱伝導率の悪化を抑制できる、長期信頼性に優れた真空断熱材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の一例の真空断熱材の概略構成を示す断面図である。
【
図2】例6に用いた繊維6と、例8で用いた繊維8について、繊維長(mm)に対する繊維の個数基準の頻度分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の用語は、以下の意味を示す。
「芯材」とは、真空断熱材における原料混合物からなる成形体であって、成形によって所望の形とされたものを意味する。
「ヒュームドシリカ」とは、アモルファスかつ球状で、細孔のない一次粒子からなるシリカ微粒子を意味する。ヒュームドシリカは、例えば、四塩化ケイ素を気化し、高温の水素炎中で気相反応を行う方法により得られる。
「輻射抑制成分」とは、赤外光を反射もしくは散乱するか、または、赤外光を一旦吸収してその吸収による温度上昇分を再放射する際に等方的に放射して赤外光の方向性を乱すことで、輻射伝熱を抑える粒子を意味する。
「ヒュームドシリカの平均凝集粒子径D50」とは、レーザー回折散乱法により求められるヒュームドシリカの体積基準累積50%径である。すなわち、レーザー回折散乱法によるヒュームドシリカの体積基準頻度粒度分布において、粒子集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その累積カーブ上で累積体積が50%となる点の粒子径をD50とする。
「ガラス繊維の繊維長D10」とは、個数基準で求めた繊維長分布の全個数を100%とした累積個数分布曲線において、累積個数が10%となる点の繊維長を意味する。「繊維長D50」とは、個数基準で求めた繊維長分布の全個数を100%とした累積個数分布曲線において、累積個数が50%となる点の繊維長を意味する。「繊維長D90」とは、個数基準で求めた繊維長分布の全個数を100%とした累積個数分布曲線において、累積個数が90%となる点の繊維長を意味する。繊維長分布は、光学顕微鏡で観察した写真において無作為に50本以上の繊維の長さを測定して得られる頻度分布および累積個数分布曲線で求められる。
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の両側の数値をその数値範囲に含む。
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。なお、本発明は後述する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。
【0011】
[真空断熱材]
実施形態に係る真空断熱材は、芯材と、前記芯材を覆うガスバリア性フィルムと、を備え、前記芯材が前記ガスバリア性フィルムで形成された外袋内に減圧封入された真空断熱材であって、前記芯材が、ヒュームドシリカと、輻射抑制成分と、ガラス繊維とを含み、前記ガラス繊維に含まれるNa2OとK2Oの合計質量の前記ガラス繊維の総質量に対する割合(以下、「割合A」とも記す。)が11質量%以下である。
【0012】
図1は、実施形態の一例の真空断熱材1を示す断面図である。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
真空断熱材1は、芯材10と、外袋12とを備えており、芯材10が外袋12内に減圧封入されている。
例えばガスバリア性フィルムを袋状にした外袋12内に芯材10を収納し、減圧条件下で外袋12の開口部を封止することにより、真空断熱材1が得られる。
【0014】
(芯材)
実施形態に係る真空断熱材は、芯材に割合Aが11質量%以下のガラス繊維を用いているため、真空断熱材に浸入する水分によって熱伝導率が徐々に低下していくことが抑制され、長期信頼性が向上する。このような効果が得られるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、以下のように考えられる。
【0015】
芯材を外袋内に減圧封入する真空断熱材においては、外袋の熱融着部分から湿気が少しずつ浸入するが、割合Aが高いガラス繊維の場合、ガラス繊維と水との親和性が高く、芯材が水分を保持しやすくなるため、シラノール基が生成しやすくなる。特許文献1の真空断熱材では、より低温での成形を可能にするために、ガラス繊維としてナトリウム、カリウム成分を多く含む含アルカリガラスを用いているため、長期的な断熱性能の悪化が起きやすいと考えられる。
一方、割合Aが11質量%以下のガラス繊維を用いれば、芯材が水分を保持しにくくなり、水分の影響による断熱性能の低下が抑制されることで、真空断熱材の長期信頼性が向上すると考えられる。
【0016】
真空断熱材の長期信頼性が向上する点から、割合Aは、好ましくは11質量%以下、より好ましくは6質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。アルカリ成分の代わりにホウ酸等を添加することで溶融性を付与し、実質的にNa2OとK2Oを含まない無アルカリガラスも好適に用いることができる。
ガラス繊維に含まれるNa2OとK2Oの割合Aは、ガラス繊維に対する公知の組成分析から求められる。
【0017】
ガラス繊維のアルカリ溶出量は、好ましくは1.9mL/g以下、より好ましくは1mL/g以下、さらに好ましくは0.5mL/g以下である。アルカリ溶出量が前記上限値以下のガラス繊維を用いることにより、真空断熱材の内部に浸入した水分による熱伝導率の上昇が抑制されやすい。
ガラス繊維のアルカリ溶出量は、JIS R3503-1994に記載の方法にしたがって測定される。
【0018】
ガラス繊維の熱膨張係数は、好ましくは90×10-7/℃以下、より好ましくは80×10-7/℃以下、さらに好ましくは50×10-7/℃以下である。ガラス繊維の熱膨張係数が前記上限値以下であれば、初期の熱伝導率が低くなり、断熱性能に優れた真空断熱材となる。初期の熱伝導率が低くなるメカニズムは、必ずしも明らかではないが、ガラス繊維の熱膨張係数が前記上限値以下であると、芯材の成形後に乾燥する際にガラス繊維が膨らみにくく、ガラス繊維の周囲に空隙が生じにくいため、初期の熱伝導率の悪化が抑制されると考えられる。ガラス繊維の熱膨張係数の下限は、特に限定されず、例えば5×10-7/℃以上であり得る。
ガラス繊維の熱膨張係数は、実施例に記載の方法で測定される。
【0019】
ガラス繊維のヤング率は、好ましくは50GPa以上、より好ましくは60GPa以上、さらに好ましくは70GPa以上である。ガラス繊維のヤング率が前記下限値以上であれば、芯材の強度向上に寄与する。ガラス繊維のヤング率の上限は、特に限定されず、例えば80GPa以下であり得る。
ガラス繊維のヤング率は、引張試験法により測定される。
【0020】
ガラス繊維を構成するガラスとしては、割合Aが前記上限値以下となるものであればよく、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸ガラスを例示できる。ガラス繊維を構成するガラスとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。ガラス繊維を構成するガラスとしては、アルミノホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラスおよびアルミノケイ酸ガラスから選ばれる1種以上が好ましい。
ガラス繊維としては、Eガラス繊維が特に好ましい。
【0021】
芯材に含まれるガラス繊維は、繊維長の範囲が0.1~10mmであり、かつ繊維長分布Lw/Lnが1.05以上であることが好ましい。これにより、芯材の圧縮強度が高くなり、外袋内に減圧封入する際に芯材が潰れることが抑制される。その結果、減圧封入された芯材が低密度に維持され、熱伝導率が低くなることで、優れた断熱性能が得られやすくなる。
【0022】
Lnは、ガラス繊維の数平均繊維長であって、光学顕微鏡で観察した写真において無作為に50本以上のガラス繊維の長さを測定して得られる個数基準の頻度分布から、下式(3)により求められる。
Lwは、ガラス繊維の重量平均繊維長であって、光学顕微鏡で観察した写真において無作為に50本以上のガラス繊維の長さを測定して得られる重量基準の頻度分布から、下式(4)により求められる。
ただし、式(3)および(4)におけるNiは、平均長さLiの各ヒストグラムの繊維の本数である。
Lw/Lnが大きいほど、ガラス繊維の繊維長の分布が広いことを示す。
【0023】
【0024】
ガラス繊維の繊維長の範囲は、好ましくは0.1~10mmである。
Lw/Lnは、好ましくは1.05以上、より好ましくは1.10以上、さらに好ましくは1.2以上である。Lw/Lnの上限は、特に限定されず、例えば2.00以下とすることができる。
【0025】
ガラス繊維の繊維長の広がり指標(D90-D10)/D50は、好ましくは0.21以上、より好ましくは0.4以上、さらに好ましくは0.6以上である。(D90-D10)/D50が前記下限値以上であれば、芯材の圧縮強度が高くなりやすく、断熱性能に優れた真空断熱材が得られやすい。(D90-D10)/D50の上限は、特に限定されず、例えば2.0以下とすることができる。
(D90-D10)/D50が大きいほど、ガラス繊維の繊維長の分布が広いことを示す。
【0026】
ガラス繊維の繊維長D10は、好ましくは2.4mm以下、より好ましくは2.0mm以下、さらに好ましくは1.8mm以下である。
ガラス繊維の繊維長D50は、好ましくは2.0~5.0mmである。
ガラス繊維の繊維長D90は、好ましくは3.0~7.0mmである。
【0027】
芯材中のガラス繊維の含有割合は、芯材の総質量に対し、好ましくは2~30質量%、より好ましくは2~20質量%、さらに好ましくは2~15質量%である。ガラス繊維の割合が、前記下限値以上であれば、長期信頼性に優れ、圧縮強度が高い真空断熱材が得られやすい。ガラス繊維の割合が前記上限値以下であれば、繊維による固体伝熱の増大を抑制できるため、断熱性能の低下を抑制しやすい。
【0028】
芯材に用いるヒュームドシリカの平均凝集粒子径D50は、好ましくは5~50μm、より好ましくは5~30μm、さらに好ましくは5~20μmである。D50が前記下限値以上であれば、減圧封入工程時に飛散が抑制されやすい。D50が前記上限値以下であれば、固体伝熱が抑制され優れた断熱性能を得やすい。
【0029】
ヒュームドシリカの比表面積は、好ましくは50~400m2/g、より好ましくは100~350m2/g、さらに好ましくは200~300m2/gである。ヒュームドシリカの比表面積が前記下限値以上であれば、優れた断熱性能を得やすい。ヒュームドシリカの比表面積が前記上限値以下であれば、減圧封入工程時に飛散が抑制されやすい。
比表面積は、窒素吸着法(BET法)により測定される。
【0030】
ヒュームドシリカとしては、例えば、アエロジル200(比表面積200m2/g、日本アエロジル社製)、アエロジル300(比表面積300m2/g、日本アエロジル社製)、CAB-O-SIL M-5(比表面積200m2/g、キャボットジャパン社製)、CAB-O-SIL H-300(比表面積300m2/g、キャボットジャパン社製)、レオロシールQS30(比表面積300m2/g、トクヤマ社製)等の市販品を使用できる。
芯材に含まれるヒュームドシリカは、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0031】
芯材中のヒュームドシリカの含有割合は、芯材の総質量に対し、好ましくは50~90質量%、より好ましくは60~90質量%、さらに好ましくは70~90質量%である。ヒュームドシリカの含有割合が前記下限値以上であれば、強度の高い芯材が得られやすい。
【0032】
輻射抑制成分としては、アルミニウム粒子、銀粒子、金粒子等の金属粒子、グラファイト、カーボンブラック、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウムを例示できる。熱伝導率向上及び作業性の点から、輻射抑制成分としては、グラファイト、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、およびチタン酸カリウムから選ばれる1種以上であることが好ましい。芯材に含まれる輻射抑制成分は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0033】
芯材中の輻射抑制成分の含有割合は、芯材の総質量に対し、好ましくは3~30質量%、より好ましくは5~25質量%、さらに好ましくは10~20質量%である。輻射抑制成分の含有割合が前記下限値以上であれば、芯材内の輻射による真空断熱材の熱伝導率悪化が抑制できる。輻射抑制成分の含有割合が前記上限値以下であれば、輻射抑制成分による固体伝熱の増大効果が抑制できるため、優れた断熱性能が得られやすい。
【0034】
本発明の効果を損なわない範囲であれば、ヒュームドシリカ、輻射抑制成分およびガラス繊維以外の他の材料を芯材に配合してもよい。他の材料としては、例えば、バインダ、多孔質シリカが含まれる。芯材に含まれる他の材料は、1種でもよく、2種以上でもよい。
バインダの典型例は、ケイ酸ナトリウム、リン酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム等の無機バインダであるが、限定するものではなく、有機バインダであってもよい。
【0035】
芯材の形状は、典型的には平板状であるが、限定はされない。
芯材の厚み方向から見た形状は、用途に応じて適宜設計でき、例えば正方形、長方形、円形を例示できる。
【0036】
熱伝導率が低く、断熱性能に優れた真空断熱材を得やすい点では、減圧封入された芯材の密度は、好ましくは0.30g/cm3以下、より好ましくは0.20g/cm3以下、さらに好ましくは0.18g/cm3以下である。減圧封入された芯材の密度が前記上限値以下であれば、芯材のハンドリングが容易になり、また減圧封入の際に芯材からヒュームドシリカや輻射抑制成分が飛散しにくい点では、減圧封入された芯材の密度は、0.11g/cm3以上が好ましく、0.12g/cm3以上が好ましく、0.13g/cm3以上がより好ましい。減圧封入された芯材の密度の好ましい下限と上限は任意に組み合わせることができ、好ましくは0.11~0.30g/cm3、より好ましくは0.13~0.20g/cm3である。
【0037】
なお、「減圧封入された芯材の密度」とは、外袋内に減圧封入された状態の芯材全体の平均密度を意味し、以下の測定方法によって測定される値である。
芯材を外袋内に入れ、ヒートシール機能付きの真空チャンバ内に設置し、チャンバ内を5Paまで減圧した状態で外袋の開口部をヒートシールして密封し、外袋の外部を大気圧条件に戻して真空断熱材を得る。真空断熱材の重量および外装材重要から減圧封入された芯材重量を算出する。辺の長さと厚み5か所の平均値から体積を算出する。求めた芯材重量と体積から密度を算出する。
【0038】
優れた断熱性能を発現させやすい点では、真空断熱材の端部で発生する熱橋の影響などを考慮すれば、芯材の厚みは、好ましくは2mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは8mm以上である。
なお、「芯材の厚み」とは、芯材全体の平均厚みを意味する。芯材における任意の5箇所で厚みを測定し、それらを平均した値を芯材の厚みとする。
【0039】
(外袋)
外袋の大きさおよび形状は、特に限定されず、目的とする真空断熱材の大きさおよび形状に応じて設定できる。
外袋に用いるガスバリア性フィルムは、気密性を有するフィルムであり、典型例は、シーラント層とバリア層とを備える積層フィルムであるが、限定するものではない。ガスバリア性フィルムは、シーラント層およびバリア層以外に、接着層、保護層等の他の層を有してもよい。
【0040】
シーラント層は、ガスバリア性フィルムの最内層として設けられる。
シーラント層を形成する材料は、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂を例示できる。シーラント層を構成する材料は、1種でもよく、2種以上でもよい。
シーラント層は、単層構成であってもよく、複層構成であってもよい。
【0041】
バリア層としては、アルミニウム蒸着層、アルミニウム箔層、アルミナ、シリカ等からなる金属酸化物蒸着層を例示できる。アルミニウム蒸着層および金属酸化物蒸着層は、アルミニウムや金属酸化物を蒸着基材に蒸着することにより形成できる。蒸着基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)フィルム等の樹脂フィルムを使用できる。
ガスバリア性フィルムにおけるバリア層の数は、好ましくは2層以上であり、より好ましくは2~6層、さらに好ましくは2~4層である。
【0042】
接着層に用いる接着剤としては、2液硬化型ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤等のドライラミネートに適した接着剤が好ましく、2液硬化型ポリエステル系接着剤が特に好ましい。
【0043】
保護層は最外層に設けることが好ましいが、限定するものではなく、バリア層とシーラント層の間に設けてもよく、2つのバリア層間に設けてもよい。ガスバリア性フィルムが保護層を有する場合、保護層は、1層でもよく、2層以上でもよい。
【0044】
保護層を形成する材料としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン66とナイロン6との共重合体等のポリアミド樹脂、PET、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂を例示できる。
【0045】
ガスバリア性フィルムの厚みは、好ましくは40~65μm、より好ましくは45~65μm、さらに好ましくは47~62μmである。ガスバリア性フィルムの厚みが前記下限値以上であれば、フィルム強度に優れる。ガスバリア性フィルムの厚みが前記上限値以下であれば、真空断熱材を軽量化できる。
【0046】
平板状の真空断熱材を作製し、前記真空断熱材の厚み方向の平面に4400Paの圧力を1時間加えた際のひずみ量は、好ましくは0.25%以下であり、より好ましくは0.23%以下であり、さらに好ましくは0.20%以下である。前記ひずみ量が前記上限値以下であれば、熱伝導率の低下が抑制されることにより、断熱性能に優れている。
【0047】
真空断熱材の外袋内の真空度は、優れた断熱性能が得られ、また真空断熱材の寿命が長くなる点から、好ましくは1×103Pa以下、より好ましくは5×102Pa以下、さらに好ましくは3×102Pa以下である。また、外袋内の減圧が容易な点では、外袋内の真空度は、好ましくは1Pa以上、より好ましくは10Pa以上である。
【0048】
真空断熱材の総厚みは、好ましくは3mm以上、より好ましくは5mm以上、さらに好ましくは10mm以上である。また、真空断熱材の総厚みは、好ましくは40mm以下、より好ましくは30mm以下である。
なお、「真空断熱材の総厚み」とは、ガスバリア性フィルム端部の耳折部(折り返し部)を含まない部分の厚みを指す。
【0049】
[真空断熱材の製造方法]
実施形態に係る真空断熱材の製造方法は、割合Aが11質量%以下のガラス繊維を用いる以外は特に限定されず、公知の製造方法を利用できる。例えば、ヒュームドシリカと輻射抑制成分とガラス繊維とを含む原料混合物をプレス成形して芯材を得ること、および、前記芯材をガスバリア性フィルムで形成された外袋内に減圧封入すること、を含む方法が挙げられる。
【0050】
繊維長の範囲が0.1~10mmであり、かつ繊維長分布Lw/Lnが1.05以上であるガラス繊維を用いる場合は、例えば、繊維長が1.5~10mmのガラス繊維の一部をボールミル等の粉砕装置によって粉砕して繊維長分布を広くする方法、繊維長が0.1~10mmの範囲で異なっている2以上のガラス繊維を混合して繊維長分布の広い繊維混合物を得る方法、前記繊維混合物の一部を粉砕装置によって粉砕する方法が挙げられる。ガラス繊維を粉砕装置によって粉砕しつつ、同一の繊維長のガラス繊維を粉砕装置に逐次的に投入してもよい。
ボールミルを使用した場合の粉砕処理時間は、好ましくは1~10時間、より好ましくは2~5時間である。
【0051】
ヒュームドシリカと輻射抑制成分とガラス繊維とを含む原料混合物を得る方法は、特に限定されず、V型混合機、撹拌機付きのブレンダ等を用いる方法を例示できる。
【0052】
原料混合物のプレス成形には、例えば特開2016-102511号公報の段落0013~0028に記載の断熱板の製造装置を使用できる。当該製造装置は、内部に減圧室が形成された凸部を有する上型と、凹部を有する下型とを備え、前記凸部の前記凹部側の面に複数の排気孔が形成されている。下型の凹部内に原料混合物を投入した状態で、シリンダによって上型を降下させ、上型の凸部を下型の凹部に嵌め込み、真空ポンプによって上型の減圧室を減圧状態にすることにより、原料混合物中の空気を排気しつつプレス成形する。下型の凹部への原料混合物の投入量とプレス圧を調節することにより、芯材の厚みおよび密度をコントロールできる。
【0053】
プレス成形後は、芯材を熱処理して乾燥することが好ましい。これにより、原料中に含まれていた水分を充分に除去できるため、芯材の熱伝導率がさらに低くなる。
芯材を熱処理する方法としては、特に限定されず、定温乾燥機、電気炉等で加熱する方法を例示できる。
熱処理温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは100~200℃である。
熱処理時間は、好ましくは1~120時間、より好ましくは1~60時間である。
【0054】
芯材を外袋内に減圧封入する方法としては、特に限定されず、例えば芯材を外袋内に収納し、減圧条件下において外袋の開口部を封止して密封した後、外袋の外部を大気圧条件に戻す方法が挙げられる。
【0055】
一例では、2枚のガスバリア性フィルムを重ね合わせて3辺をシールした外袋内に芯材を収納し、ヒートシール機能が付いた真空チャンバ内に設置し、前記真空チャンバの内部を減圧する。真空チャンバ内が所定の圧力に減圧された後、外袋の開放された残りの1辺をヒートシールして密封し、真空チャンバ内を大気圧条件に戻す。
他の一例では、芯材を外袋内に収納した後、外袋内の空気を吸い出して外袋の内部を減圧しつつ、ヒートシール等で外袋を密封してもよい。
【0056】
通気性を有する内袋内に芯材を収納した状態で外袋内に減圧封入してもよい。
内袋としては、通気性を有し、芯材を減圧封入する際に原料が漏れ出ないようにできるものであればよく、例えば、紙材、不織布等からなる袋を例示できる。
【0057】
以上説明したように、実施形態に係る真空断熱材は、芯材に割合Aが11質量%以下のガラス繊維を用いることにより、真空断熱材の内部に浸入した水分によって芯材の熱伝導率が徐々に上昇することが抑制されるため、長期信頼性に優れる。
【実施例0058】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。以下の例において、例1、3~7は実施例であり、例2、8~9は比較例である。
【0059】
[繊維長D10、D30、D50、D90]
繊維を光学顕微鏡で観察した写真において、無作為に抽出した50本以上の繊維の長さを測定し、個数基準で求めた繊維長分布の全個数を100%とした累積個数分布曲線を得た後、累積個数が10%、30%、50%、90%となる点の繊維長をそれぞれD10、D50、D90とした。
【0060】
[平均繊維長]
繊維を光学顕微鏡で観察した写真において、無作為に抽出した50本以上の繊維の長さを測定し、それらを平均した値を繊維の平均繊維長とした。
【0061】
[LnおよびLw]
繊維を光学顕微鏡で観察した写真において、無作為に抽出した50本以上の繊維の長さを測定し、個数基準の頻度分布から、前記式(3)によりLnを求めた。また、重量基準の頻度分布から、前記式(4)によりLwを求めた。ただし、式(3)および(4)におけるNiは、平均長さLiの各ヒストグラムの繊維の本数である。
【0062】
【0063】
[減圧封入された芯材の密度]
真空断熱材の重量および外装材重要から減圧封入された芯材重量を算出した。辺の長さと厚み5か所の平均値から体積を算出した。求めた芯材重量と体積から密度を算出した。
【0064】
[アルカリ溶出量]
ガラス繊維のアルカリ溶出量は、JIS R3503-1994に記載の方法にしたがって測定した。
【0065】
[熱膨張係数]
ガラス繊維について、熱機械分析装置(TMA)を使用して、5℃/minの昇温速度で50~400℃の温度範囲の熱膨張係数を測定した。
【0066】
[圧縮強度(ひずみ量)]
各例の真空断熱材を水平な載置面上に置き、その上面の150mm×150mmの範囲に10kgの重りを載せ、約4400Paの圧力を1時間加えた。約4400Paの圧力を加えた後の厚みの変位を測定し、ひずみ量(%)を算出した。
【0067】
[芯材の水分量]
カールフィッシャー液定法により、芯材の水分量を測定した。
【0068】
[熱伝導率]
真空断熱材の熱伝導率は、熱伝導率測定装置HFM-436(NETZSCH)を用いて測定した。3個のサンプルを用意して測定を行い、その平均値を真空断熱材の熱伝導率とした。測定条件は中心温度25℃、温度差20℃で測定した。
後述の長期信頼試験を実施する前の真空断熱材について測定した熱伝導率を「初期の熱伝導率」とした。
【0069】
[長期信頼性]
各例で得た真空断熱材を70℃、90RH%の環境下に28日静置する長期信頼試験を行い、長期信頼試験前後の真空断熱材の熱伝導率、内圧、および質量を測定し、それぞれの増加分を算出した。
【0070】
[芯材の原料]
・ヒュームドシリカ1(平均凝集粒子径D50:13.5μm)
・繊維1:繊維長3mmのEガラス繊維(繊維径6.5mm)を撹拌機付きブレンダによって15分間粉砕した繊維(繊維長の範囲:0.2~3mm)。
・繊維2:繊維長3mmのグラスウール(ソーダライムガラス、繊維径6mm)を撹拌機付きブレンダによって15分間粉砕した繊維(繊維長の範囲:0.2~3mm)。
・繊維3:繊維長3mmのEガラス繊維を撹拌機付きブレンダによって10分時間粉砕した繊維(繊維長の範囲:0.3~3mm)。
・繊維4:繊維長6mmのEガラス繊維を撹拌機付きブレンダによって10分間粉砕した繊維(繊維長の範囲:0.5~6mm)。
・繊維5:繊維長3mmのEガラス繊維と繊維長6mmのEガラス繊維を質量比90:10で混合し、撹拌機付きブレンダによって10分間粉砕した繊維(繊維長の範囲:0.5~6mm)。
・繊維6:繊維長3mmのEガラス繊維と繊維長6mmのEガラス繊維を質量比50:50で混合し、撹拌機付きブレンダによって10分間粉砕した繊維(繊維長の範囲:0.3~6mm)。
・繊維7:繊維長3mmのEガラス繊維と繊維長6mmのEガラス繊維を質量比30:70で混合し、撹拌機付きブレンダによって10分間粉砕した繊維(繊維長の範囲:0.3~6mm)。
・繊維8:繊維長3mmのEガラス繊維を撹拌機付きブレンダによって1分間粉砕した繊維(繊維長の範囲:2.3~3mm)。
・繊維9:シリカ・マグネシア・カルシア繊維(商品名「スーパーウール(Superwool(登録商標)Plus)バルク、D30:227μm、D90:902μm、平均繊維径:3μm、新日本サーマルセラミックス社製)
・輻射抑制成分1:グラファイト
【0071】
[例1]
ヒュームドシリカ1の80質量部、輻射抑制成分1の16質量部、繊維1の4質量部を混合し、それらの原料混合物をプレス成形し、200℃で1時間熱処理し、縦200mm×横200mm×厚み15mmの平板状の芯材を作製した。繊維1の繊維径、繊維長、割合A、アルカリ溶出量、熱膨張係数、および芯材水分量を表1に示す。
300mm×300mmの2枚のガスバリア性フィルムの3辺をヒートシールして三方シールの外袋を作製し、前記外袋内に芯材を入れ、ヒートシール機能付きの真空チャンバ内に設置した。次いで、チャンバ内を5Paまで減圧し、その状態で外袋の開口部をヒートシールして密封し、外袋の外部を大気圧条件に戻して真空断熱材を得た。得られた真空断熱材についての圧縮強度、初期熱伝導率の測定結果、および長期信頼性の評価結果を表1に示す。
【0072】
[例2]
用いるガラス繊維を表1に示すとおりに変更した以外は、例1と同様にして真空断熱材を製造した。繊維2の繊維径、繊維長、割合A、アルカリ溶出量、熱膨張係数、および芯材水分量を表1に示す。また、得られた真空断熱材についての圧縮強度、初期熱伝導率の測定結果、および長期信頼性の評価結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
表1に示すように、割合Aが11質量%以下のガラス繊維を用いた例1の真空断熱材は、割合Aが11質量%超のガラス繊維を用いた例2の真空断熱材に比べ、長期信頼試験における熱伝導率、内圧および質量の増加分が少なく、長期信頼性に優れていた。
【0075】
[例3]
ヒュームドシリカ1の80質量部、輻射抑制成分1の16質量部、繊維3の4質量部を混合し、それらの原料混合物をプレス成形し、200℃で1時間熱処理し、縦200mm×横200mm×厚み15mmの平板状の芯材を作製した。繊維3のD10、D30、D50、D90、(D90-D10)/D50、平均繊維長、Ln、LwおよびLw/Lnの測定結果を表2に示す。
300mm×300mmの2枚のガスバリア性フィルムの3辺をヒートシールして三方シールの外袋を作製し、前記外袋内に芯材を入れ、ヒートシール機能付きの真空チャンバ内に設置した。次いで、チャンバ内を5Paまで減圧し、その状態で外袋の開口部をヒートシールして密封し、外袋の外部を大気圧条件に戻して真空断熱材を得た。
【0076】
[例4~9]
用いる繊維を表2に示すとおりに変更した以外は、例3と同様にして真空断熱材を製造した。
【0077】
【0078】
例3~9の真空断熱材について、減圧封入された芯材の密度、圧縮強度(ひずみ量)、および熱伝導率を測定した結果を表3に示す。また、例6に用いた繊維6と、例8で用いた繊維8について、繊維長(mm)に対する繊維の個数基準の頻度分布を
図2に示す。
【0079】
【0080】
表3に示すように、Lw/Lnが1.05以上である繊維3~7を用いた例3~7の真空断熱材は、Lw/Lnが1.05未満である繊維8~9を用いた例8~9の真空断熱材に比べ、ひずみ量が小さく、圧縮強度が高くなっており、また熱伝導率が低く、断熱性能に優れていた。
また、
図2に示すように、例6で用いたLw/Lnが1.05以上である繊維6は、例8で用いたLw/Lnが1.05未満である繊維8に比べ、繊維長分布が広かった。これらのことから、繊維長分布が広い繊維を用いたことで、圧縮強度が高まり、断熱性能が向上したと考えられる。