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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005782
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】芳香族複素環化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 277/66 20060101AFI20250109BHJP
   C07D 417/04 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C07D277/66
C07D417/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106139
(22)【出願日】2023-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古川 達也
(72)【発明者】
【氏名】森岡 公平
(72)【発明者】
【氏名】飛田 憲之
【テーマコード(参考)】
4C063
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC76
4C063DD62
4C063EE10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物の製造効率を向上させる。
【解決手段】式(A)で表されるフェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物(A)を製造する方法は、下記工程(1)~(4)を有する。工程(1):式(B)で表されるエーテル構造を有する芳香族複素環化合物(B)とルイス酸とチオール化合物と疎水性溶媒(C)とを混合することで、芳香族複素環化合物(A)を含有する反応液(P)を得る工程。工程(2):工程(1)で得られる反応液(P)と、親水性溶媒(D)と、を混合することで混合溶液(Q)を得る工程。工程(3):工程(2)で得られる混合溶液(Q)と、水(E)と、を混合することによって芳香族複素環化合物(A)を析出させ、芳香族複素環化合物(A)の析出物を含む懸濁液(R)を得る工程。工程(4):工程(3)で得られる懸濁液(R)を濾過することで芳香族複素環化合物(A)を単離する工程。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(A)で表されるフェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物(A)を製造する方法であって、下記工程(1)~(4)を有する芳香族複素環化合物の製造方法。
工程(1):式(B)で表されるエーテル構造を有する芳香族複素環化合物(B)とルイス酸とチオール化合物と疎水性溶媒(C)とを混合することで、前記芳香族複素環化合物(A)を含有する反応液(P)を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られる前記反応液(P)と、親水性溶媒(D)と、を混合することで混合溶液(Q)を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られる前記混合溶液(Q)と、水(E)と、を混合することによって前記芳香族複素環化合物(A)を析出させ、前記芳香族複素環化合物(A)の析出物を含む懸濁液(R)を得る工程
工程(4):前記工程(3)で得られる前記懸濁液(R)を濾過することで前記芳香族複素環化合物(A)を単離する工程
【化1】

[式(A)及び式(B)中、
は、-CR1112-、-S-、-NR11-、-CO-又は-O-を表す。
は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
及びZは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又はアルコキシ基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6~20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR1112又は-SR11を表し、Z及びZは、互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成してもよい。
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。]
【請求項2】
式(B)及び式(A)におけるQが-S-である
請求項1に記載の芳香族複素環化合物の製造方法。
【請求項3】
前記工程(3)は、前記混合溶液(Q)を前記水(E)に滴下することで前記懸濁液(R)を得る工程である
請求項1又は2に記載の芳香族複素環化合物の製造方法。
【請求項4】
前記親水性溶媒(D)がアルコールである
請求項1又は2に記載の芳香族複素環化合物の製造方法。
【請求項5】
前記親水性溶媒(D)の使用量と前記芳香族複素環化合物(B)の使用量との質量比(D/B)が3以上12以下である
請求項1又は2に記載の芳香族複素環化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族複素環化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エーテル構造を有する芳香族複素環化合物を反応させてフェノール性ヒドロキシ基を有する芳香族複素環化合物を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-193554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている製造方法では、反応後に得られる混合液を濾過する際に、濾過に要する時間が長くなることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の発明を含む。
[発明1]
式(A)で表されるフェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物(A)を製造する方法であって、下記工程(1)~(4)を有する芳香族複素環化合物の製造方法。
工程(1):式(B)で表されるエーテル構造を有する芳香族複素環化合物(B)とルイス酸とチオール化合物と疎水性溶媒(C)とを混合することで、前記芳香族複素環化合物(A)を含有する反応液(P)を得る工程
工程(2):前記工程(1)で得られる前記反応液(P)と、親水性溶媒(D)と、を混合することで混合溶液(Q)を得る工程
工程(3):前記工程(2)で得られる前記混合溶液(Q)と、水(E)と、を混合することによって前記芳香族複素環化合物(A)を析出させ、前記芳香族複素環化合物(A)の析出物を含む懸濁液(R)を得る工程
工程(4):前記工程(3)で得られる前記懸濁液(R)を濾過することで前記芳香族複素環化合物(A)を単離する工程
【0006】
【化1】
【0007】
[式(A)及び式(B)中、
は、-CR1112-、-S-、-NR11-、-CO-又は-O-を表す。
は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0008】
及びZは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又はアルコキシ基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6~20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR1112又は-SR11を表し、Z及びZは、互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成してもよい。
【0009】
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。]
[発明2]
式(B)及び式(A)におけるQが-S-である[発明1]に記載の芳香族複素環化合物の製造方法。
【0010】
[発明3]
前記工程(3)は、前記混合溶液(Q)を前記水(E)に滴下することで前記懸濁液(R)を得る工程である[発明1]又は[発明2]に記載の芳香族複素環化合物の製造方法。
【0011】
[発明4]
前記親水性溶媒(D)がアルコールである[発明1]~[発明3]のいずれか一つに記載の芳香族複素環化合物の製造方法。
【0012】
[発明5]
前記親水性溶媒(D)の使用量と前記芳香族複素環化合物(B)の使用量との質量比(D/B)が3以上12以下である[発明1]~[発明4]のいずれか一つに記載の芳香族複素環化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物を単離する際の、濾過に要する時間を短くできる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、芳香族複素環化合物の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の芳香族複素環化合物の製造方法は、工程(1)~(4)を有する。
工程(1)は、エーテル構造を有する芳香族複素環化合物とルイス酸とチオール化合物と疎水性溶媒(C)とを混合することで、フェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物を含有する反応液(P)を得る工程である。
【0015】
工程(2)は、工程(1)で得られる反応液(P)と、親水性溶媒(D)と、を混合することで混合溶液(Q)を得る工程である。
工程(3)は、工程(2)で得られる混合溶液(Q)と、水(E)と、を混合することによってフェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物の析出物を含む懸濁液(R)を得る工程である。
【0016】
工程(4)は、工程(3)で得られる懸濁液(R)を濾過することでフェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物を単離する工程である。
[工程(1)]
工程(1)の一例を説明する。
【0017】
工程(1)では、例えば、混合液(1A)と混合液(1B)とを混合することで反応液(P)を得る。混合液(1A)は、ルイス酸とチオール化合物とを含有している。混合液(1B)は、エーテル構造を有する芳香族複素環化合物と疎水性溶媒(C)とを含有している。
【0018】
混合液(1A)と混合液(1B)とを混合する方法は、特に制限されない。例えば、混合液(1A)と混合液(1B)とを一括して混合してもよいし、混合液(1B)に混合液(1A)を滴下してもよいし、混合液(1A)に混合液(1B)を滴下してもよい。混合液(1A)と混合液(1B)とを混合する方法としては、混合液(1A)に混合液(1B)を滴下によって加える方法が好ましい。
【0019】
混合液(1B)を加える速度は、通常、混合液(1B)全量の0.08~2質量%/分であり、好ましくは0.15~2質量%/分である。また、好ましい加える速度は、加えられたエーテル構造を有する芳香族複素環化合物の80モル%以上が、加えられた後1分以内にフェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物となる速度であり、より好ましくは10秒以内にフェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物となる速度である。
【0020】
加える時間は、混合液(1B)の量と加える速度から決定されるが、通常1~20時間であり、好ましくは1~8時間である。
混合する温度は、好ましくは-15~120℃であり、より好ましくは0~100℃であり、さらに好ましくは0~80℃である。
【0021】
混合液(1A)に、混合液(1B)を加えた後に、混合する時間は、好ましくは1~72時間であり、より好ましくは2~48時間である。
混合液(1A)と、混合液(1B)とを混合して反応させることで、フェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物が生成する。
【0022】
<ルイス酸>
ルイス酸の使用量は、芳香族複素環化合物が有するフェノール性水酸基1モルに対して1~10モルが好ましく、1~8モルがより好ましく、1~5モルがさらに好ましい。
【0023】
ルイス酸としては、塩化アルミニウム、三臭化ホウ素、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、三塩化ホウ素、四塩化チタン及び、四塩化スズ等が挙げられ、好ましくは塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体、四塩化チタン及び、四塩化スズであり、より好ましくは塩化アルミニウムである。
【0024】
<チオール化合物>
チオール化合物の使用量は、芳香族複素環化合物が有するフェノール性水酸基1モルに対して1~10モルが好ましく、1~8モルがより好ましく、1~5モルがさらに好ましい。また、ルイス酸1モルに対して1~10モルが好ましく、1~6モルがより好ましく、1~4モルがさらに好ましい。
【0025】
チオール化合物としては、ベンゼンチオール、ベンゼンジチオール及び、フェニルエタンチオール等の芳香族チオール類、エタンチオール、プロパンチオール、t-ブタンチオール、ペンタンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ノナンチオール、デカンチオール、ウンデカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、エイコサンチオール、ヘントリアコンタンチオール等のアルキルチオール類、並びに、エタンジチオール、プロパンジチオール及び、エタントリチオール等の多官能アルキルチオール類等が挙げられる。好ましくはアルキルチオール類であり、より好ましくは式(F)で表される化合物(以下「化合物(F)」という場合がある。)である。
【0026】
【化2】
【0027】
[式中、Rは炭素数1~31のアルキル基を表し、該アルキル基に含まれる炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい。]
は好ましくは炭素数6~31のアルキル基であり、より好ましくは炭素数8~22のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数10~16のアルキル基である。また、好ましくは酸素原子及び、硫黄原子を含まないアルキル基である。炭素数が10以上のアルキル基であると、臭気がなく取扱いが容易であるため好ましい。
【0028】
としては、エチル基、プロピル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、エイコシル基、ヘントリアコンチル基等が挙げられる。
【0029】
<化合物(B)>
エーテル構造を有する芳香族複素環化合物としては、芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-1級炭素原子、芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-2級炭素原子、芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-3級炭素原子、芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-4級炭素原子、又は、芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-芳香族炭素原子で表される構造を有する化合物が挙げられる。好ましくは芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-1級炭素原子、芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-2級炭素原子又は、芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-3級炭素原子で表される構造を有する化合物であり、より好ましくは芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-1級炭素原子又は、芳香族複素環が有する炭素原子-酸素原子-2級炭素原子で表される構造を有する化合物である。
【0030】
1級炭素を構成する基としては、メチル基が挙げられる。
2級炭素を構成する基としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基及び、オクチル基等が挙げられる。
【0031】
3級炭素を構成する基としては、イソプロピル基、sec-ブチル基等が挙げられる。
4級炭素を構成する基としては、tert-ブチル基等が挙げられる。
芳香族炭素を構成する基としては、フェニル基、ナフチル基及び、ピリジル基等が挙げられる。
【0032】
芳香族複素環は、好ましくは、少なくとも一つの-NH-、-N<、-N=、-P<、-O-又は、-S-で表される構造を有する化合物であり、より好ましくは、少なくとも一つの-NH-、-N<又は、-N=で表される構造を有する化合物であり、さらに好ましくは、少なくとも一つの-N=で表される構造を有する化合物である。
【0033】
エーテル基を有する芳香族複素環化合物は、特に好ましくは式(B)で表される化合物(以下「化合物(B)」又は芳香族複素環化合物(B)という場合がある。)である。
【0034】
【化3】
【0035】
[式中、
は、-CR1112-、-S-、-NR11-、-CO-又は-O-を表す。
は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表す。
【0036】
及びZは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~20の脂肪族炭化水素基又はアルコキシ基、炭素数3~20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6~20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR1112又は-SR11を表し、Z及びZは、互いに結合して芳香環又は芳香族複素環を形成してもよい。
【0037】
11及びR12は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
及びRは、それぞれ独立に、アルキル基を表す。]
は、好ましくは-O-又は、-S-であり、より好ましくは、-S-である。
【0038】
及びZは、好ましくは、水素原子である。
及びRは、それぞれ独立に、好ましくはエーテル結合に隣接する炭素原子が1級炭素であるアルキル基、及び、エーテル結合に隣接する炭素原子が2級炭素であるアルキル基である。より好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基及び、ヘキシル基であり、さらに好ましくはメチル基及び、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0039】
で表される、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び、置換基を有していてもよい芳香族複素環基が有する置換基としては、ハロゲン原子、-R、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、-SO、-SOR、-SR、-OR、カルボキシ基及び-NR11が挙げられる。R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表す。ハロアルキル基は、ハロゲン原子を有するアルキル基を表す。
【0040】
は好ましくは、式(Y-1)~式(Y-7)で表される基である。
【0041】
【化4】
【0042】
[式(Y-1)~式(Y-7)中、
は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、-R、ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、-SO、-SOR、-SR、-OR、カルボキシ基又は-NR11を表す。
【0043】
及びVは、それぞれ独立に-CO-、-NR11-、-SO-、又は16族元素を表す。
~Wは、それぞれ独立に、-CH=又は-N=を表す。
【0044】
11は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~6のアルキル基を表す。
aは、0~5の整数を表す。
【0045】
bは、0~3の整数を表す。
cは、0~2の整数を表す。
a又はbが2以上の整数である場合、複数のZは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0046】
*は結合部位を表す。]
、R、R、R、R、R11及びR12で表される炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。好ましくは、それぞれ独立に、炭素数1~4のアルキル基であり、より好ましくは、それぞれ独立に、炭素数1~2のアルキル基であり、さらに好ましくは、それぞれ独立に、メチル基である。
【0047】
は、化合物の安定性に優れ、合成が容易である点で式(Y-1)~式(Y-7)で表される基のいずれかであることがより好ましい。
【0048】
【化5】
【0049】
[式(Y-1)~式(Y-7)中、
、a、b、c及び*は、上記と同じ意味を表す。
及びJは、それぞれ独立に-CO-、-NR11-、又は16族元素を表す。
【0050】
は、それぞれ独立に、-CH=又は-N=を表す。]
は、好ましくは-CH=である。
は、より好ましくは、式(Y-1)~式(Y-4)で表される基である。
【0051】
【化6】
【0052】
[式(Y-1)~式(Y-4)中、Z、a、b、c、J、及び*は、上記と同じ意味を表す。]
における-SOとしては、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソブチルスルホニル基、sec-ブチルスルホニル基、tert-ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基及び、ヘキシルスルホニル基等が挙げられる。
【0053】
における-SORとしては、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、プロピルスルフィニル基、イソプロピルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、イソブチルスルフィニル基、sec-ブチルスルフィニル基、tert-ブチルスルフィニル基、ペンチルスルフィニル基及び、ヘキシル基スルフィニル等が挙げられる。
【0054】
における-SRとしては、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、プロピルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、ブチルスルファニル基、イソブチルスルファニル基、sec-ブチルスルファニル基、tert-ブチルスルファニル基、ペンチルスルファニル基及び、ヘキシルスルファニル基等が挙げられる。
【0055】
における-ORとしては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基及び、ヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0056】
における-NR11としては、N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N-プロピルアミノ基、N-イソプロピルアミノ基、N-ブチルアミノ基、N-イソブチルアミノ基、N-sec-ブチルアミノ基、N-tert-ブチルアミノ基、N-ペンチルアミノ基及び、N-ヘキシルアミノ基等のN-モノアルキルアミノ基;N,N-ジメチルアミノ基、N-メチル-N-エチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N,N-ジプロピルアミノ基、N,N-ジイソプロピルアミノ基、N,N-ジブチルアミノ基、N,N-ジイソブチルアミノ基、N,N-ジペンチルアミノ基及び、N,N-ジヘキシルアミノ基等のN,N-ジアルキルアミノ基が挙げられる。
【0057】
としては、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、メチルスルホニル基、カルボキシ基、トリフルオロメチル基、メトキシ基、メチルスルファニル基、N,N-ジメチルアミノ基又はN-メチルアミノ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基がより好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が特に好ましい。
【0058】
及びVで表される16族元素としては、S、O及び、Seが挙げられる。V及びVは好ましくは、それぞれ独立に、-S-、-NR11-又は-O-である。
化合物(B)としては、具体的には、以下の式(B-001)~式(B-076)で表される化合物(B-001)~化合物(B-076)が挙げられる。
【0059】
【化7】





【0060】
【化8】



【0061】
<疎水性溶媒(C)>
化合物(B)と混合される疎水性溶媒(C)は、ルイス酸に不活性なものであれば、特に制限されないが、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、フェノール、モノクロロベンゼン及び、ニトロベンゼン等の芳香族溶媒、並びに、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素及び、トリクロロエタン等の含ハロゲン溶媒が挙げられる。疎水性溶媒(C)は、好ましくは、化合物(B)の溶解性が高い溶媒である。好ましくは、トルエン、キシレン、モノクロロベンゼン及び、これらの混合溶媒であり、より好ましくは、モノクロロベンゼンである。溶媒には、これらの溶媒を単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。
【0062】
疎水性溶媒(C)の使用量は、化合物(B)の使用量に対する疎水性溶媒(C)の使用量の質量比(C/B)が、好ましくは1以上20以下であり、より好ましくは4以上8以下であり、さらに好ましくは6以上8以下である。
【0063】
<混合液(1A)>
混合する温度は、-20~120℃が好ましく、0~100℃がより好ましく、0~80℃がさらに好ましい。
【0064】
混合は、ルイス酸が溶解するまで行うことが好ましい。
ルイス酸と、チオール化合物とは、溶媒中で混合してもよい。
溶媒としては、ルイス酸に対して不活性なものであれば、特に制限されないが、疎水性溶媒(C)と同一であることが好ましい。具体例としては、上記疎水性溶媒(C)と同じものが挙げられる。溶媒には、これらの溶媒を単独で用いてもよいし、複数組み合わせて用いてもよい。これらの溶媒は、ルイス酸の溶解性が高く、取り扱いが容易なため好ましい。
【0065】
溶媒量は、ルイス酸1質量部に対して、好ましくは1~10質量部であり、より好ましくは2~8質量部である。また、ルイス酸が完溶する量であると好ましい。
<混合液(1B)>
混合する温度は、-20~120℃が好ましく、0~100℃がより好ましく、0~80℃がさらに好ましい。
【0066】
混合は、エーテル構造を有する芳香族複素環化合物が溶解するまで行うことが好ましい。
混合液(1A)及び混合液(1B)で使用する溶媒の含水率は、0.03重量%以下であると好ましい。含水率が0.03重量%以下であると、ルイス酸の活性が低下しないため好ましい。溶媒の含水率が0.03重量%よりも高い場合は、脱水還流等の手段を用いて脱水することが好ましい。
【0067】
<化合物(A)>
工程(1)によって化合物(B)とルイス酸とを反応させると、フェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物が得られる。フェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物としては、例えば、式(A)で表される化合物(以下「化合物(A)」又は「芳香族複素環化合物(A)」という場合がある。)が挙げられる。
【0068】
【化9】
【0069】
[式中、Q及び、Yは上記と同じ意味を表す。]
フェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物は、特開2010-31223号公報等に記載の液晶化合物等の原料として使用することができる。
【0070】
工程(1)において、副反応によって副生成物が生成されることがある。
エーテル構造を有する芳香族複素環化合物と、ルイス酸とを反応させると、エーテル構造を有する芳香族複素環化合物が有する、エーテル構造と、芳香族複素環構造との副反応によって副生成物を生じることがあり、かかる副反応によってフェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物の収率が低下することがある。
【0071】
例えば、化合物(B)とルイス酸との反応によって、化合物(A)と、副生成物として式(G)で表される化合物(以下「化合物(G)」という場合がある。)を生成することがある。
【0072】
【化10】
【0073】
[式中、Z、Z、Q及びYは上記と同じ意味を表す。]
化合物(G)は溶解性が低いため精製除去することが困難な場合がある。本実施形態の製造方法によれば、化合物(G)等の副生成物の生成を少なくすることができる。このため、化合物(A)等のフェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物を高い収率で得ることができる。
【0074】
[工程(2)]
工程(2)の一例を説明する。
工程(2)では、反応終了後の反応液(P)と親水性溶媒(D)とを混合することで、反応液(P)中の析出物を溶解させた混合溶液(Q)を得ることができる。
【0075】
工程(2)において反応液(P)と親水性溶媒(D)とを混合する方法は、特に制限されない。例えば、反応液(P)と親水性溶媒(D)とを一括して混合してもよいし、親水性溶媒(D)に反応液(P)を滴下してもよいし、反応液(P)に親水性溶媒(D)を滴下してもよい。反応液(P)と親水性溶媒(D)とを混合する方法として、好ましくは、反応液(P)に親水性溶媒(D)を滴下する方法である。
【0076】
<親水性溶媒(D)>
親水性溶媒(D)としては、非プロトン性極性溶媒、アルコール等が挙げられる。
非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
【0077】
アルコールとしては、例えば、炭素数が1個~4個の低級アルコールが挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等が挙げられる。
【0078】
これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて用いてもよい。
親水性溶媒(D)は、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリジノン、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。
【0079】
親水性溶媒(D)の使用量は、化合物(B)の使用量に対する親水性溶媒(D)の使用量の質量比(D/B)が、好ましくは1以上20以下であり、より好ましくは3以上12以下であり、さらに好ましくは8以上9以下である。
【0080】
[工程(3)]
工程(3)の一例を説明する。
工程(3)では、混合溶液(Q)と水(E)とを混合することで化合物(A)を析出させることができる。工程(3)では、化合物(A)の析出物を含む懸濁液(R)を得ることができる。
【0081】
工程(3)において混合溶液(Q)と水(E)とを混合する方法は、特に制限されない。例えば、混合溶液(Q)と水(E)とを一括して混合してもよいし、水(E)に混合溶液(Q)を滴下してもよいし、混合溶液(Q)に水(E)を滴下してもよい。混合溶液(Q)と水(E)とを混合する方法として、好ましくは、水(E)に混合溶液(Q)を滴下する方法である。
【0082】
工程(3)では、種晶を添加してもよい。すなわち、工程(3)では、予め用意した化合物(A)の結晶を添加した水(E)に混合溶液(Q)を滴下してもよい。
種晶の添加量は、特に制限されないが、例えば、化合物(B)に対して1wt%以上20wt%以下であり、好ましくは、5wt%以上15wt%以下である。
【0083】
<水(E)>
水(E)は、特に制限されないが、蒸留水、純水、超純水、精製水等を用いることができる。
【0084】
水(E)の使用量は、化合物(B)の使用量に対する水(E)の使用量の質量比(E/B)が、好ましくは1以上20以下であり、より好ましくは2以上10以下であり、さらに好ましくは4以上5以下である。
【0085】
水(E)の温度は、5℃以上70℃以下が好ましく、10℃以上55℃以下がより好ましく、40℃以上55℃以下がさらに好ましい。
[工程(4)]
工程(4)の一例を説明する。
【0086】
工程(4)では、工程(3)で得られる懸濁液(R)を濾過することで芳香族複素環化合物(A)を固形物として単離することができる。
濾過の方法は、特に制限されないが、例えば、吸引濾過を採用できる。
【0087】
工程(3)によって得られる懸濁液(R)は、工程(4)において濾過を行う前に冷却することが好ましい。例えば、懸濁液(R)は、室温まで冷却することが好ましい。室温の一例は、20℃以上30℃以下である。
【0088】
工程(4)では、濾過を複数回行ってもよい。例えば、懸濁液(R)を濾過することで得られる固形物を水と混合した後に、当該混合液を濾過してもよい。
工程(4)において濾過を行うことで得られる固形物は、濾過の後に、洗浄及び乾燥を行うことが好ましい。
【0089】
<本実施形態の効果>
本実施形態の製造方法によれば、芳香族複素環化合物(A)を高い収率で製造することができる。本実施形態の製造方法によれば、芳香族複素環化合物(A)を単離する際の、濾過性を向上させることができる。具体的には、濾過に要する時間を短くできる。これによって、芳香族複素環化合物(A)の製造効率を向上させることができる。
【実施例0090】
芳香族複素環化合物の製造方法について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、芳香族複素環化合物の製造方法は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
【0091】
表1の実施例1~実施例15、比較例1及び比較例2に示す芳香族複素環化合物(A)を製造した。
(実施例1)
芳香族複素環化合物(B)である化合物(B-055)から芳香族複素環化合物(A)である化合物(A-055)を、以下のスキームに従って合成した。
【0092】
【化11】
【0093】
具体的には、下記工程(1)~工程(4)に従って化合物(A-055)を得た。
<工程(1)>
ジムロート冷却管及び温度計を設置した1Lセパラブルフラスコ内を窒素雰囲気とし、塩化アルミニウム95g(B-055に対して5.0モル比)を70℃のドデカンチオール145g(B-055に対して5.0モル比)で溶解させた。塩化アルミニウムの溶解確認後、化合物(B-055)51gとモノクロロベンゼン306g(B-055に対して6.0質量比)の懸濁液を3時間以上かけて滴下した。滴下後、3時間以上保温することで反応を終了させた。
【0094】
<工程(2)>
反応終了後の懸濁液にメタノール408g(B-055に対して8.0質量比)を滴下し、析出物を溶解させた。
【0095】
<工程(3)>
ジムロート冷却管及び温度計を設置した2Lセパラブルフラスコ内を窒素雰囲気とし、純水を255g(B-055に対して5.0質量比)仕込み、10℃に保温した。続いてメタノールで溶解させた溶液を滴下することで、化合物(A-055)の結晶を析出させた。その後、25℃まで冷却した。
【0096】
<工程(4)>
ブフナー漏斗に濾紙(No.5A)を敷き、懸濁液を流し込み、吸引濾過した際に濾過にかかる時間を測定した。原濾過後、モノクロロベンゼン306g(B-055に対して6.0質量比)で浸漬、濾過を行い、続いてメタノール153g(B-055に対して3.0質量比)と純水153g(B-055に対して3.0質量比)の混合溶媒で浸漬、濾過を行った。得られた湿体は純水510g(B-055に対して10.0質量比)とともに1Lセパラブルフラスコに仕込み、60℃で0.5時間撹拌した。その後、上記と同様に濾紙(No.5A)を敷いたブフナー漏斗により懸濁液を濾過した。続いて純水102g(B-055に対して2.0質量比)で浸漬、濾過を行い、湿体を得た。その湿体は70℃で減圧乾燥することにより、目的の化合物(A-055)40.5gを得た。
【0097】
(実施例2)
実施例1の工程(3)における温度を10℃から20℃に変更した以外は、実施例1と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0098】
(実施例3)
実施例1の工程(3)において温度を10℃から40℃に変更した以外は、実施例1と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0099】
(実施例4)
実施例1の工程(3)において温度を10℃から55℃に変更した以外は、実施例1と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0100】
(実施例5)
実施例4の工程(3)において純水255gとともに2.6g(B-055に対して5wt%)の化合物(A-055)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0101】
(実施例6)
実施例4の工程(3)において純水255gとともに7.7g(B-055に対して15wt%)の化合物(A-055)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0102】
(実施例7)
実施例4の工程(1)においてモノクロロベンゼン306g(B-055に対して6.0質量比)に替えてモノクロロベンゼン204g(B-055に対して4.0質量比)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0103】
(実施例8)
実施例4の工程(1)においてモノクロロベンゼン306g(B-055に対して6.0質量比)に替えてモノクロロベンゼン408g(B-055に対して8.0質量比)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0104】
(実施例9)
実施例4の工程(2)においてメタノール408g(B-055に対して8.0質量比)に代えてメタノール153g(B-055に対して3.0質量比)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0105】
(実施例10)
実施例4の工程(2)においてメタノール408g(B-055に対して8.0質量比)に替えてメタノール459g(B-055に対して9.0質量比)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0106】
(実施例11)
実施例4の工程(3)において純水255g(B-055に対して5.0質量比)に替えて純水204g(B-055に対して4.0質量比)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0107】
(実施例12)
実施例4の工程(2)においてメタノール408g(B-055に対して8.0質量比)に替えてN-メチルピロリジノン408g(B-055に対して8.0質量比)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0108】
(実施例13)
実施例4の工程(2)においてメタノール408g(B-055に対して8.0質量比)に替えてN,N-ジメチルホルムアミド408g(B-055に対して8.0質量比)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0109】
(実施例14)
実施例4の工程(2)においてメタノール408g(B-055に対して8.0質量比)に替えてジメチルスルホキシド408g(B-055に対して8.0質量比)を添加した以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0110】
(実施例15)
芳香族複素環化合物(B)である化合物(B-036)から芳香族複素環化合物(A)である化合物(A-036)を、以下のスキームに従って合成した。具体的には、下記工程(1)~工程(4)に従って化合物(A-036)を得た。
【0111】
【化12】
【0112】
<工程(1)>
ジムロート冷却管及び温度計を設置した1Lセパラブルフラスコ内を窒素雰囲気とし、塩化アルミニウム95g(B-036に対して5.0モル比)を70℃のドデカンチオール145g(B-036に対して5.0モル比)で溶解させた。塩化アルミニウムの溶解確認後、化合物(B-036)45gとモノクロロベンゼン267g(B-036に対して6.0質量比)の懸濁液を3時間以上かけて滴下した。滴下後、3時間以上保温することで反応を終了させた。
【0113】
<工程(2)>
反応終了後の懸濁液にメタノール357g(B-036に対して8.0質量比)を滴下し、析出物を溶解させた。
【0114】
<工程(3)>
ジムロート冷却管及び温度計を設置した2Lセパラブルフラスコ内を窒素雰囲気とし、純水を178g(B-036に対して5.0質量比)仕込み、55℃に保温した。続いてメタノールで溶解させた溶液を滴下することで、化合物(A-036)の結晶を析出させた。その後、25℃まで冷却した。
【0115】
<工程(4)>
ブフナー漏斗に濾紙(No.5A)を敷き、懸濁液を流し込み、吸引濾過した際に濾過にかかる時間を測定した。原濾過後、モノクロロベンゼン267g(B-036に対して6.0質量比)で浸漬、濾過を行い、続いてメタノール134g(B-036に対して3.0質量比)と純水134g(B-036に対して3.0質量比)の混合溶媒で浸漬、濾過を行った。得られた湿体は純水446g(B-036に対して10.0質量比)とともに1Lセパラブルフラスコに仕込み、60℃で0.5時間撹拌した。その後、上記と同様に濾紙(No.5A)を敷いたブフナー漏斗により懸濁液を濾過した。続いて純水89g(B-036に対して2.0質量比)で浸漬、濾過を行い、湿体を得た。その湿体は70℃で減圧乾燥することにより、目的の化合物(A-036)38.5gを得た。
【0116】
(比較例1)
実施例4の工程(2)においてメタノール408g(B-055に対して8.0質量比)に替えてメタノールを添加しないこと以外は、実施例4と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0117】
(比較例2)
比較例1の工程(3)において純水255g(B-055に対して5.0質量比)に代えて純水を添加しないこと以外は、比較例1と同様にして化合物(A-055)を得た。
【0118】
【表1】
【0119】
<収率>
実施例1~15の全てにおいて、化合物(B)を基準として80%以上の収率で化合物(A)が得られることを確認した。
【0120】
<濾過性の評価>
実施例1~実施例15、比較例1及び比較例2における濾過性を、以下の評価基準に従って評価した。濾過性は、工程(4)における1回目のブフナー漏斗での濾過にかかる時間によって評価した。結果を表1に示す。
【0121】
・濾過性の評価基準
◎(優れる):濾過にかかる時間が15分未満である。
○(可):濾過にかかる時間が15分以上120分未満である。
×(不可):濾過にかかる時間が120分以上である。
【0122】
表1に示すように、実施例3~実施例11、及び実施例15では、優れた濾過性を確認した。すなわち、フェノール性水酸基を有する芳香族複素環化合物(A)の製造効率が特に向上していることを確認した。また、実施例1、実施例2、及び実施例12~実施例14では、濾過性の評価が可であることから、芳香族複素環化合物(A)の製造効率が向上していることを確認した。