(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025058846
(43)【公開日】2025-04-09
(54)【発明の名称】亜鉛及びニッケル含有排水用の処理剤及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/62 20230101AFI20250402BHJP
【FI】
C02F1/62 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031061
(22)【出願日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】P 2023167504
(32)【優先日】2023-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 正寛
(72)【発明者】
【氏名】羅 中力
(72)【発明者】
【氏名】山本 典正
【テーマコード(参考)】
4D038
【Fターム(参考)】
4D038AA08
4D038AB67
4D038AB69
4D038AB86
4D038BB17
4D038BB18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】亜鉛とニッケルを含む排水から亜鉛とニッケルの除去が可能な排水処理剤及び排水処理方法を提供する。
【解決手段】無機硫化物(A)と、一般式(1)及び/又は(2)で示される繰り返し単位が二つ以上繰り返すポリジアリルアミン(B)と、少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)とを含む排水処理剤であって、前記(A)100質量部に対し、前記(B)を0.1~300質量部、前記(C)を0.2~2.5質量部含むことを特徴とする排水処理剤、及び前記排水処理剤を用いる排水処理方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機硫化物(A)と、下記一般式(1)及び/又は(2)で示される繰り返し単位が少なくとも2つ以上繰り返すことを特徴とするポリジアリルアミン(B)と、少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)とを含む排水処理剤であって、前記(A) 100質量部に対し、前記(B)を0.1~300質量部含み、前記(C)を0.2~2.5質量部含むことを特徴とする、排水処理剤。
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。X
-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はエチル硫酸アニオンを表す。)
【請求項2】
さらに、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を含み、当該(D)の含有量が、前記(A) 100質量部に対し、1~200質量部である、請求項1に記載の排水処理剤。
【請求項3】
無機硫化物(A)が、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、又は多硫化カルシウムである、請求項1に記載の排水処理剤。
【請求項4】
ポリジアリルアミン(B)の平均分子量が、1,000~500,000である、請求項1に記載の排水処理剤。
【請求項5】
R1、R2、及びR3が、各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基である、請求項1に記載の排水処理剤。
【請求項6】
R1、及びR2が、共にメチル基、又は共にエチル基であり、R3が、水素原子である、請求項1に記載の排水処理剤。
【請求項7】
X-が、塩化物イオンである、請求項1に記載の排水処理剤。
【請求項8】
少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)が、ヒドロキシイミノジコハク酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、又はジアミノヒドロキシプロパン四酢酸である、請求項1に記載の排水処理剤。
【請求項9】
さらに、水を含み、当該水の含有量が、前記(A) 100質量部に対し、100~5000質量部であることを特徴とする、請求項1に記載の排水処理剤。
【請求項10】
カルボン酸化合物、亜鉛、及びニッケルを含有する排水に、請求項1~9のいずれかに記載の排水処理剤を添加して撹拌し、次いで高分子凝集剤を添加、撹拌してスラリーを形成させ、次いで、前記スラリーから固体成分を分離することを特徴とする、排水処理方法。
【請求項11】
前記カルボン酸化合物が、クエン酸、酒石酸、乳酸、又はエチレンジアミン四酢酸である、請求項10に記載の排水処理方法。
【請求項12】
カルボン酸化合物、亜鉛、及びニッケルを含有する排水に、無機硫化物(A)と、下記一般式(1)及び/又は(2)で示される繰り返し単位が少なくとも2つ以上繰り返すことを特徴とするポリジアリルアミン(B)と、少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)とを添加して撹拌し、次いで高分子凝集剤を添加、撹拌してスラリーを形成させ、次いで、前記スラリーから固体成分を分離する排水処理方法であって、前記(B)の添加量が、前記(A)の添加量 100質量部に対して、0.1~300質量部であり、前記(C)の添加量が、前記(A)の添加量 100質量部に対して、0.2~2.5質量部であることを特徴とする、排水処理方法。
【化2】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。X
-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はエチル硫酸アニオンを表す。)
【請求項13】
前記の(A)、(B)、及び(C)に加えて、さらにジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を添加する、請求項12に記載の排水処理方法。
【請求項14】
前記無機硫化物(A)の添加量が、前記排水中の亜鉛1モルに対し、0.1~20モルである、請求項12又は13に記載の排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛及びニッケルを含有する排水から、亜鉛及びニッケルを除去することを可能にする処理剤、及び排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
めっき工場などから排出される、亜鉛、及びニッケルを含有した排水は、その毒性に基づいて生態系に影響を与える懸念がある。このため、当該排水については、排水処理設備に送られ、亜鉛、及びニッケルが除去された後、放流される必要がある。
【0003】
排水中の亜鉛、及びニッケル濃度の放流基準は、金属ごとに水質汚濁防止法で定められている。ニッケルは、一律排水基準が設定されていないが、自治体に基準が設定されており、例えば京都府では、2mg/L、横浜市ではさらに厳しい基準として1mg/Lが設定されている。
【0004】
一方、亜鉛は、一律排出基準として2mg/Lが設定されている。従来、亜鉛基準は、5mg/Lと定められ、平成18年には2mg/Lに強化されたが、亜鉛を排出する工場・事業場のうち、直ちに一律排水基準を達成することが困難な3業種(金属鉱業、下水道業、電気めっき業)について、令和3年まで暫定排水基準が設定されていた。その3業種のうち2業種(金属鉱業、下水道業)は、令和3年に一律排水基準に移行したが、残る電気めっき業は、一律排水基準の達成が困難なため、令和6年まで暫定基準として4mg/Lが設定されている。このように電気めっき業での亜鉛排水処理は、非常に困難であることが分かる。
【0005】
亜鉛排水基準の達成困難な理由として、亜鉛ニッケルめっき工程で使用される、亜鉛と錯形成能力を持つ錯化剤(クエン酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、ニトリロ三酢酸(NTA)、若しくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)などの有機酸、エチレンジアミン、若しくはポリエチレンイミンなどのアミン化合物、シアン、アンモニア、又はポリ燐酸など)の排水中での混在が挙げられる。
【0006】
これに対し、亜鉛、又はニッケルを含む排水中から、薬剤を用いて亜鉛、又はニッケルを除去する方法として、硫化水素ナトリウムといった無機硫化物や、ジチオカルバミン酸塩等の有機キレートを用いる方法が報告されている(例えば、特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-69227号公報
【特許文献2】特開2017-154130号公報
【特許文献3】特開2022-94340号公報
【特許文献4】特開2019-69434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、無機硫化物の場合、錯化剤の濃度が高くなると、排水中から亜鉛を十分除去できない場合があった。また、ジチオカルバミン酸塩の場合、亜鉛とニッケルを両方含む排水から亜鉛を十分除去できない場合があった。
【0009】
このように、従来公知の処理剤では、カルボン酸化合物(錯化剤)、亜鉛、及びニッケルを含有する排水から亜鉛及びニッケルを同時に除去処理することが困難であるということが判明し、このような排水から亜鉛とニッケルの両方を除去することができる排水処理剤の開発が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の要旨を有するものである。
【0012】
[1]
無機硫化物(A)と、下記一般式(1)及び/又は(2)で示される繰り返し単位が少なくとも2つ以上繰り返すことを特徴とするポリジアリルアミン(B)と、少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)とを含む排水処理剤であって、前記(A) 100質量部に対し、前記(B)を0.1~300質量部含み、前記(C)を0.2~2.5質量部含むことを特徴とする、排水処理剤。
【0013】
【0014】
(式中、R1、R2、及びR3は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はエチル硫酸アニオンを表す。)
[2]
さらに、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を含み、当該(D)の含有量が、前記(A) 100質量部に対し、1~200質量部である、[1]に記載の排水処理剤。
【0015】
[3]
無機硫化物(A)が、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、又は多硫化カルシウムである、[1]又は[2]に記載の排水処理剤。
【0016】
[4]
ポリジアリルアミン(B)の平均分子量が、1,000~500,000である、[1]乃至[3]のいずれかに記載の排水処理剤。
【0017】
[5]
R1、R2、及びR3が、各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基である、[1]乃至[4]のいずれかに記載の排水処理剤。
【0018】
[6]
R1、及びR2が、共にメチル基、又は共にエチル基であり、R3が、水素原子である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の排水処理剤。
【0019】
[7]
X-が、塩化物イオンである、[1]乃至「6」のいずれかに記載の排水処理剤。
【0020】
[8]
少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)が、ヒドロキシイミノジコハク酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、又はジアミノヒドロキシプロパン四酢酸である、[1]乃至[7]のいずれかに記載の排水処理剤。
【0021】
[9]
さらに、水を含み、当該水の含有量が、前記(A) 100質量部に対し、100~5000質量部であることを特徴とする、[1]乃至[8]のいずれかに記載の排水処理剤。
【0022】
[10]
カルボン酸化合物、亜鉛、及びニッケルを含有する排水に、[1]乃至[9]のいずれかに記載の排水処理剤を添加して撹拌し、次いで高分子凝集剤を添加、撹拌してスラリーを形成させ、次いで、前記スラリーから固体成分を分離することを特徴とする、排水処理方法。
【0023】
[11]
前記カルボン酸化合物が、クエン酸、酒石酸、乳酸、又はエチレンジアミン四酢酸である、[10]に記載の排水処理方法。
【0024】
[12]
カルボン酸化合物、亜鉛、及びニッケルを含有する排水に、無機硫化物(A)と、下記一般式(1)及び/又は(2)で示される繰り返し単位が少なくとも2つ以上繰り返すことを特徴とするポリジアリルアミン(B)と、少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)とを添加して撹拌し、次いで高分子凝集剤を添加、撹拌してスラリーを形成させ、次いで、前記スラリーから固体成分を分離する排水処理方法であって、前記(B)の添加量が、前記(A)の添加量 100質量部に対して、0.1~300質量部であり、前記(C)の添加量が、前記(A)の添加量 100質量部に対して、0.2~2.5質量部であることを特徴とする、排水処理方法。
【0025】
【0026】
(式中、R1、R2、及びR3は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はエチル硫酸アニオンを表す。)
[13]
前記の(A)、(B)、及び(C)に加えて、さらにジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を添加する、[12]に記載の排水処理方法。
【0027】
[14]
前記無機硫化物(A)の添加量が、前記排水中の亜鉛1モルに対し、0.1~20モルである、[12]又は[13]に記載の排水処理方法。
【発明の効果】
【0028】
本発明の排水処理剤は、カルボン酸化合物、亜鉛、及びニッケルを含有する排水から、亜鉛及びニッケルを同時に、高度に除去することができるという顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本発明の一態様は、無機硫化物(A)と下記一般式(1)及び/又は(2)で示される繰り返し単位が少なくとも2つ以上繰り返すことを特徴とするポリジアリルアミン(B)と、少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)とを含む排水処理剤であって、前記(A) 100質量部に対し、前記(B)を0.1~300質量部含み、前記(C)を0.2~2.5質量部含むことを特徴とする、排水処理剤、に係る。
【0031】
【0032】
(式中、R1、R2、及びR3は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はエチル硫酸アニオンを表す。)
前記無機硫化物(A)としては、特に限定するものではないが、例えば、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、硫化カリウム、硫化水素カリウム、多硫化カリウム、硫化カルシウム、硫化水素カルシウム、多硫化カルシウム(石灰硫黄合剤)、硫化水素マグネシウム、又は硫化アンモニウム等が挙げられる。
【0033】
これらのうち、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、硫化水素ナトリウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、又は多硫化カルシウムが好ましく、硫化水素ナトリウムがより好ましい。
【0034】
前記一般式(1)、及び(2)において、R1、R2、及びR3は、各々独立して、水素原子、又は炭素数1~10のアルキル基を表す。
【0035】
前記炭素数1~10のアルキル基については、直鎖状、分岐鎖状、又は環状の炭素数1~10のアルキル基と言い換えることができ、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、炭素数3~10の直鎖状のアルキル基、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数3~10の環状アルキル基を挙げることができる。
【0036】
前記の炭素数3~10の直鎖状のアルキル基、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数3~10の環状のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、プロピル基、iso-プロピル基、ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、1-メチルブチル基、1-エチルプロピル基、1,1-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル、ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,1-ジメチル-ブチル基、1,2-ジメチル-ブチル基、1,3-ジメチル-ブチル基、2,2-ジメチル-ブチル基、2,3-ジメチル-ブチル基、1,1-ジメチル-2-メチル-プロピル基、1-ジメチル-2,2-ジメチル-プロピル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、又はデシル基等を挙げることができる。
【0037】
R1、R2、及びR3については、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、各々独立して、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましい。
【0038】
R1、及びR2については、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、ともに、メチル基、又はエチル基であることがより好ましい。
【0039】
R3については、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で水素原子であることがより好ましい。
【0040】
前記一般式(1)において、X-は、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又はエチル硫酸アニオンを表す。当該X-については、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、塩化物イオンであることが好ましい。
【0041】
上記の一般式(1)及び/又は(2)で示される繰り返し単位が少なくとも2つ以上繰り返すことを特徴とするポリジアリルアミン(B)については、特に限定するものではないが、例えば、ポリ(ジアリルアミン)、ポリ(メチルジアリルアミン)、ポリ(エチルジアリルアミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジアリルメチルエチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムブロマイド)、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムブロマイド)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムヨージド)、ポリ(ジアリルジエチルアンモニウムヨージド)、又はポリ(ジアリルジエチルアンモニウムエチルサルフェイト)、ポリ(プロピルジアリルアミン)、ポリ(iso-プロピルジアリルアミン)、ポリ(ブチルジアリルアミン)、ポリ(iso-ブチルジアリルアミン)、ポリ(tert-ブチルジアリルアミン)、ポリ(sec-ブチルジアリルアミン)、ポリ(ペンチルジアリルアミン)、ポリ(イソペンチルジアリルアミン)、ポリ(1-メチルブチルジアリルアミン)、ポリ(1,1-ジメチルプロピルジアリルアミン)、ポリ(2,2-ジメチルプロピルジアリルアミン)、ポリ(ヘキシルジアリルアミン)、ポリ(1-メチルペンチルジアリルアミン)、ポリ(2-メチルペンチルジアリルアミン)、ポリ(3-メチルペンチルジアリルアミン)、ポリ(4-メチルペンチルジアリルアミン)、ポリ(1,1-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(1,2-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(1,3-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(2,2-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(2,3-ジメチル-ブチルジアリルアミン)、ポリ(1,1-ジメチル-2-メチル-プロピルジアリルアミン)、ポリ(1-ジメチル-2,2-ジメチル-プロピルジアリルアミン)、ポリ(シクロヘキシルジアリルアミン)、ポリ(ヘプチルジアリルアミン)、ポリ(オクチルジアリルアミン)、ポリ(ノニルジアリルアミン)、ポリ(デシルジアリルアミン)、ポリ(ジプロピルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(iso-プロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジブチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(iso-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(tert-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(sec-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジペンチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(イソペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1-メチルブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,1-ジメチルプロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(2,2-ジメチルプロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジヘキシルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1-メチルペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(2-メチルペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(3-メチルペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(4-メチルペンチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,1-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,2-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,3-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(2,2-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(2,3-ジメチル-ブチル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1,1-ジメチル-2-メチル-プロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(bis(1-ジメチル-2,2-ジメチル-プロピル)ジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジシクロヘキシルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジヘプチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジオクチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジノニルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリ(ジデシルジアリルアンモニウムクロライド)、アリルアミンジアリルアミン共重合体、アリルアミンジアリルジメチルアンモニウムクロリド共重合体、ジアリルアミン塩酸塩二酸化硫黄共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムサルフェイト二酸化硫黄共重合体、メチルジアリルアミン二酸化硫黄共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド二酸化硫黄共重合体、ジアリルアミン塩酸塩アクリルアミド共重合体、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドアクリルアミド共重合体、メチルジアリルアミンジアリルジメチルアンモニウムクロリド共重合体、エピクロロヒドリン付加型3級アミン塩酸塩4級アンモニウム塩共重合体、ジアリルアミン塩酸塩マレイン酸共重合体、メチルジアリルアミンマレイン酸共重合体、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイトマレイン酸共重合体、又はジアリルメチルエチルアンモニウムクロライドマレイン酸共重合体等を挙げることができ、具体的製品として、例えば、ユニセンスFPA100L、PAS-21CL、PAS-21、PAS-M-1L、PAS-M-1、PAS-22SA-40,PAS-M-1A,PAS-H-1L、PAS-H-1LL、PAS-H-5L、PAS-H-10L、PAS-24、PAS-92、PAS-2401、PAS-92A、PAS-2201、PAS-2201CL、PAS-2201A、PAS-A-1、PAS-A-5、PAS-2141CL、PAS-J-81L、PAS-J-81、PAS-J-81LL、PAS-J-41、PAS-J-41H、PAS-2223、PAS-880、PAS-410C、PAS-411C、PAS-410L、PAS-410SA、PAS-2251、PAS-84、PAS-2451、又はPAS-2351等を挙げることができる。
【0042】
前記のポリジアリルアミン(B)については、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、その平均分子量が、1,000~500,000であることが好ましく、5,000~200,000であることがより好ましい。
【0043】
本発明の排水処理剤において、前記ポリジアリルアミン(B)の含有量は、前記無機硫化物(A) 100質量部に対して、0.1~300質量部であることを特徴とし、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、0.5~200質量部であることが好ましく、1~100質量部であることがより好ましい。
【0044】
前記の少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸(DPTA)、若しくはN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、又はそれらのアルカリ金属塩(例えば、ヒドロキシイミノジコハク酸四ナトリウム塩、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸四ナトリウム塩、又はN-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸三ナトリウム塩等)等が挙げられる。
【0045】
なお、前記のアルカリ金属塩のアルカリ金属としては、特に限定するものではないが、例えば、リチウム、ナトリウム、又はカリウムが挙げられる。
【0046】
前記の有機アミン化合物(C)としては、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、ヒドロキシイミノジコハク酸(HIDS)、ヒドロキシイミノジコハク酸四ナトリウム塩、ジアミノヒドロキシプロパン四酢酸、ジアミノヒドロキシプロパン四酢酸四ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、又はヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウムであることが好ましく、ヒドロキシイミノジコハク酸四ナトリウム塩、ジアミノヒドロキシプロパン四酢酸、又はヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸であることがより好ましい。
【0047】
本発明の排水処理剤において、少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)の含有量は、前記無機硫化物(A) 100質量部に対して、0.2~2.5質量部であることを特徴とし、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、0.5~1.5質量部であることが好ましい。
【0048】
本発明の排水処理剤は、さらにジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を含有していてもよく、当該(D)の含有量については、前記無機硫化物(A) 100質量部に対し、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。
【0049】
ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)としては、分子内にジチオカルバミル基を有する化合物であれば特に限定されない。
【0050】
ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)としては、例えば、1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を少なくとも1つ有するアミン化合物と、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物を反応させて得られる化合物が挙げられる。
【0051】
1級アミノ基及び2級アミノ基からなる群より選ばれるアミノ基を少なくとも1つ有するアミン化合物としては、具体的には、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジ(イソペンチル)アミン、ジ(1-メチルブチル)アミン、ジ(1-エチルプロピル)アミン、ジ(1,1-ジメチルプロピル)アミン、ジ(2,2-ジメチルプロピル)アミン、ジヘキシルアミン、ジ(1-メチルペンチル)アミン、ジ(2-メチルペンチル)アミン、ジ(3-メチルペンチル)アミン、ジ(4-メチルペンチル)アミン、ジ(1,1-ジメチル-ブチル)アミン、ジ(1,2-ジメチル-ブチル)アミン、ジ(1,3-ジメチル-ブチル)アミン、ジ(2,2-ジメチル-ブチル)アミン、ジ(2,3-ジメチル-ブチル)アミン、ジ(1,1-ジメチル-2-メチル-プロピル)アミン、ジ(1,1-ジメチル-2,2-ジメチル-プロピル)アミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ブチルメチルアミン、N-メチルヘキシルアミン、N-エチルイソアミルアミン、N-メチルエチルアミン、N-メチルイソプロピルアミン、N-エチルブチルアミン、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン、3,3’-イミノビス(プロピルアミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチレンジアミン、N-エチルフェニルアミン、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、2-メチルピペリジン、3-メチルピペリジン、4-メチルピペリジン、2,4-ジメチルピペリジン、2,6-ジメチルピペリジン、3,5-ジメチルピペリジン、3-ピペリジンメタノール、4-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンエタノール、4-ピペリジンエタノール、4-ヒドロキシピペリジン、2-(アミノメチル)ピペリジン、4-(アミノメチル)ピペリジン、4-(ジメチルアミノ)ピペリジン、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ピペリジノピペリジン、ジベンジルアミン、ヘキサメチレンイミン、ヘプタメチレンイミン、3-アミノピロリジン、ピロール、ピペラジン、N-メチルピペラジン、N-エチルピペラジン、N-イソブチルピペラジン、N-イソブチルピペラジン、1-シクロペンチルピペラジン、1-(2-ピリジル)ピペラジン、1-(4-ピリジル)ピペラジン、1-(2-ピリミジル)ピペラジン、2-メチルピペラジン、cis-2,6-ジメチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、2-アミノメチルピペラジン、ホモピペラジン、N-メチルホモピペラジン、N-エチルシクロヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘプタエチレンオクタミン、ポリエチレンイミン、又はポリエチレンイミンと水酸化ナトリウムと塩化ベンジルの縮合物等が例示される。
【0052】
前記のジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)としては、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、テトラエチレンペンタミン、ピロリジン、ピペリジンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物又はアルカリ土類金属水酸化物を反応させて得られる化合物が好ましく、ピペラジンと、二硫化炭素と、アルカリ金属水酸化物を反応させて得られる化合物がより好ましい。
【0053】
前記のアルカリ金属水酸化物としては、特に限定するものではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。前記のアルカリ土類金属水酸化物としては、特に限定するものではないが、例えば、水酸化マグネシウム、又は水酸化カルシウムが挙げられる。
【0054】
前記のジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)としては、ジチオカルバミン酸の塩の溶解度が優れる点で、アルカリ金属水酸化物を反応させて得られる化合物が好ましく、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムを反応させて得られる化合物がより好ましい。
【0055】
ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)としては、例えば、ジメチルジチオカルバミン酸リチウム、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸カリウム、ジエチルアミノジチオカルバミン酸リチウム、ジエチルアミノジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルアミノジチオカルバミン酸カリウム、ピペラジン-1,4-ビス(ジチオカルボン酸リチウム)、ピペラジン-1,4-ビス(ジチオカルボン酸ナトリウム)、又はピペラジン-1,4-ビス(ジチオカルボン酸カリウム)等が挙げられる。
【0056】
ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)については、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸カリウム、ピペラジン-1,4-ビス(ジチオカルボン酸ナトリウム)、及びピペラジン-1,4-ビス(ジチオカルボン酸カリウム)からなる群より選ばれる一つ又は二つ以上であることが好ましい。
【0057】
本発明の排水処理剤については、さらに水を含有していてもよく、水を含む場合の水の含有量については、水を含んだ排水処理剤を100質量%として、50~95質量%であることが好ましく、60~90質量%であることがより好ましい。
【0058】
また、当該水の含有量については、前記無機硫化物(A) 100質量部に対し、100~5,000質量部であることが好ましく、200~4,000質量部であることがより好ましい。
【0059】
本発明の排水処理剤については、上記に記載していない成分を含有していてもよい。
【0060】
本発明の別の態様として、カルボン酸化合物、亜鉛、及びニッケルを含有する排水に、前記の本発明の排水処理剤を添加して撹拌し、次いで高分子凝集剤を添加、撹拌してスラリーを形成させ、次いで、前記スラリーから固体成分を分離することを特徴とする、排水処理方法(排水処理方法A)が挙げられる。
【0061】
前記のカルボン酸化合物、亜鉛、及びニッケルを含有する排水(以下、「本排水」と称する)について説明する。
【0062】
本排水の一例として、プリント基板などのめっき排水処理施設で排出される排水が挙げられる。
【0063】
本排水については、特に限定するものではないが、亜鉛、及びニッケル以外の金属を含んでいてもよい。亜鉛、及びニッケル以外の金属としては、例えば、カドミウム、クロム、銅、鉄、水銀、鉛、パラジウム、金、銀、白金、コバルト、インジウム、モリブデン、アンチモン、スズ、チタン、ジルコニウム、マンガン、又はタングステン等を挙げることができる。
【0064】
なお、これらの金属については、金属イオン、金属錯体、又は金属塩等の様々な形態で本排水中に含まれるが、その形態は、pH、温度、金属の濃度、カルボン酸化合物の種類、又はカルボン酸化合物の濃度等の様々な要因によって容易に変化する。このため、全ての金属の全ての形態を具体的に詳細に確定させることは現実的ではない。
【0065】
本発明の排水処理剤については、このような亜鉛、及びニッケル以外の金属が含まれる本排水に対しても適用可能であり、効果的に、排水中の亜鉛及びニッケル濃度を低減させることができる。
【0066】
前記カルボン酸化合物としては、特に限定されず、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、シュウ酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸、アクリル酸、グルコン酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、リンゴ酸、グリコール酸、アスコルビン酸、ヒドロキシ酪酸、グルコヘプトン酸、シトラマル酸、エリソルビン酸、グルタミン酸、ジカルボキシメチルグルタミン酸、オルニチン、システイン、グリシン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン、(S、S)-エチレンジアミンコハク酸が挙げられる。特に亜鉛又はニッケルと強固な錯体を形成するカルボン酸化合物として、乳酸、酒石酸、クエン酸、EDTAが挙げられ、これらのカルボン酸化合物を含有する本排水の処理が好ましい。
【0067】
前記の本排水中の亜鉛濃度については、特に限定するものではないが、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、2~1,000mg/Lであることが好ましく、10~700mg/Lであることがより好ましく、20~500mg/Lであることがより好ましい。
【0068】
また、前記の本排水中のニッケル濃度については、特に限定するものではないが、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、2~1,000mg/Lであることが好ましく、10~700mg/Lであることがより好ましく、20~500mg/Lであることがより好ましい。
【0069】
なお、本排水における前記亜鉛と前記ニッケルの含有量の比については、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、亜鉛 1モルに対し、ニッケルが0.1モル以上(亜鉛 100質量部に対し、ニッケルを9質量部以上)、10モル以下であることが好ましい。
【0070】
前記の本排水において、前記カルボン酸化合物の濃度は、特に限定するものではないが、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、1~500mg/Lであることが好ましく、5~200mg/Lであることがより好ましい。
【0071】
前記の本排水において、前記カルボン酸化合物と亜鉛イオンの比率(カルボン酸化合物のモル数÷亜鉛イオンのモル数(mol/mol))は、特に限定するものではないが、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、0.1~2(mol/mol)であることが好ましく、0.2~1(mol/mol)であることがより好ましい。
【0072】
前記の本排水に、前記排水処理剤を添加する際、当該本排水のpHは、無機硫化物の分解に伴う硫化水素ガスの発生を抑制できる点、及び亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、前記の排水処理剤等の添加前後において、6~14であることが好ましく、8~11であることがより好ましい。
【0073】
前記の本排水のpHが上記の好ましい範囲を逸脱する場合は、酸又は塩基を用いて、そのpHを上記の好ましい範囲に調整することが好ましい。
【0074】
このとき用いる酸としては、特に限定するものではないが、塩酸、塩化アンモニウム、硫酸、重硫酸アンモニウム、硝酸、りん酸、ホウ酸、ポリリン酸、塩化鉄、又は硫酸鉄等が挙げられる。
【0075】
また、このとき用いる塩基としては、特に限定するものではないが、苛性ソーダ、苛性カリウム、重炭酸ソーダ、重炭酸カリウム、炭酸カルシウム、生石灰、又は消石灰等が挙げられる。
【0076】
前記の本排水に、前記排水処理剤を添加する際の添加量については、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、前記の本排水 1L当たり、10~5,000mgであることが好ましく、50~3,000mgであることがより好ましく、100~2,000mgであることがより好ましい。
【0077】
なお、前記排水処理剤の添加量については、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、前記の本排水に含まれる亜鉛イオン 1モルに対して、排水処理剤の無機硫化物が0.1~20モルとなるように調節することが好ましく、0.5~15モルとなるように調節することがより好ましく、1~10モルとなるように調節することがより好ましい。
【0078】
前記の本排水に、前記の排水処理剤を添加した後の排水は、撹拌することが好ましいが、当該撹拌時間は、通常、数分~2時間の範囲であることが好ましい。
【0079】
本発明の排水処理方法Aについては、前記の本排水に、前記排水処理剤を添加した後、さらに高分子凝集剤を添加することを特徴とするが、当該高分子凝集剤を添加することによって、ろ過しやすいスラリーを形成させることができる。当該スラリーは、前記亜鉛、前記ニッケル、前記無機硫化物(A)、前記ポリジアリルアミン(B)、前記有機アミン化合物(C)、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)、及び前記高分子凝集剤が反応して析出した固体を含む。
【0080】
以上の排水処理方法Aを実施することによって、本排水中に溶解していた亜鉛及びニッケルが不溶化するため、当該本排水中から亜鉛及びニッケルを除去することができる。
【0081】
前記高分子凝集剤としては、特に限定するものではないが、例えば、アクリル酸ポリマー、アクリルアミドポリマー、又はジメチルアミノエチルメタアクリレートポリマー等が挙げられる。これらのうち、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、アクリル酸ポリマーが好ましい。これらの高分子凝集剤については、市販品をそのまま用いることが好ましい。
【0082】
前記高分子凝集剤の添加量については、特に限定するものではないが、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、前記本排水に含まれる亜鉛 100質量部を基準として、0.1~10質量部であることが好ましく、0.1~5質量部であることがより好ましい。
【0083】
前記高分子凝集剤を添加した後の本排水は、撹拌することが好ましいが、当該撹拌時間は、通常、数分~2時間の範囲から選ばれる。
【0084】
前記の高分子凝集剤を添加することによって、ろ過しやすいスラリーを得ることができるが、ここでさらに、前記の高分子凝集剤とは別の凝集剤を加えることによって、前記スラリーが更にろ過しやすくなる。
【0085】
前記凝集剤としては、特に限定するものではないが、例えば、塩化第二鉄、若しくは硫酸第一鉄等の鉄化合物、又は硫酸アルミニウム、若しくはポリ塩化アルミニウム等のアルミニウム化合物等を挙げることができる。ただし、このような無機凝集剤の使用は、重金属含有スラッジの量が多くなり、スラッジを埋め立て処分場に運搬する際の運搬コストが上昇するため、使用量についてはできるだけ少ない方が好ましい。
【0086】
前記のスラリーから固体成分を分離する方法としては特に限定されないが、例えば、ろ過、遠心分離、又は前記固体成分を沈降させた後、上澄み液と分離する方法(沈降分離)等が挙げられる。
【0087】
本発明の排水処理方法Aについては、冷却条件下、室温条件下、外気温条件下、加温条件下のいずれの条件下で行ってもよく、本排水の温度、前記排水処理剤を添加する過程の排水の温度、又は高分子凝集剤の添加量を添加する過程の排水の温度が、各々独立に、-10℃~80℃の範囲であることが好ましく、4℃~40℃の範囲であることがより好ましい。
【0088】
本発明の排水処理方法Aは、連続式で実施してもよいし、単一式(バッチ式)で実施してもよい。
【0089】
また、本発明の別の態様として、前記の本排水に、前記の無機硫化物(A)と、前記のポリジアリルアミン(B)と、前記の有機アミン化合物(C)を添加して撹拌し、次いで高分子凝集剤を添加、撹拌してスラリーを形成させ、次いで、前記スラリーから固体成分を分離することを特徴とする、排水処理方法(排水処理方法B)が挙げられる。
【0090】
また、当該排水処理方法Bについては、前記の(A)、(B)、及び(C)に加えて、さらに、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を添加してもよい。
【0091】
当該排水処理方法Bにおいて使用する、本排水、無機硫化物(A)、ポリジアリルアミン(B)、有機アミン化合物(C)、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)、高分子凝集剤、又は凝集剤については、上記の通りである。
【0092】
また、当該排水処理方法Bにおける、添加方法、撹拌方法、分離方法、処理条件などについても上記の通りである(排水処理方法Aと同様である)。
【0093】
なお、当該排水処理方法Bにおいて、前記無機硫化物(A)の添加量は、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、前記の本排水に含まれる亜鉛イオン 1モルに対し、0.1~20モルであることが好ましく、0.5~15モルであることがより好ましく、1~10モルであることがより好ましい。
【0094】
当該排水処理方法Bにおいて、前記ポリジアリルアミン(B)の添加量は、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、前記無機硫化物(A)の添加量 100質量部に対し、0.1~300質量部であることが好ましく、0.5~200質量部であることがより好ましく、1~100質量部であることがより好ましい。
【0095】
当該排水処理方法Bにおいて、前記有機アミン化合物(C)の添加量は、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、前記無機硫化物(A)の添加量 100質量部に対し、0.2~2.5質量部であることが好ましく、0.5~1.5質量部であることがより好ましい。
【0096】
当該排水処理方法Bにおいて、前記ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を使用する場合、その添加量は、亜鉛及びニッケルの同時除去に優れる点で、前記無機硫化物(A)の添加量 100質量部に対し、1~200質量部であることが好ましく、5~100質量部であることがより好ましい。
【0097】
当該排水処理方法Bにおいて、前記の本排水に、前記無機硫化物(A)と前記ポリジアリルアミン(B)と前記有機アミン化合物(C)を添加する方法としては、例えば、前記の本排水にそれぞれの固体物質を別々に添加する方法、前記の本排水に前記無機硫化物(A)と前記ポリジアリルアミン(B)と前記有機アミン化合物(C)を混ぜ合わせた固形物を添加する方法、前記の本排水にそれぞれの水溶液を別々に添加する方法、前記の本排水に前記無機硫化物(A)と前記ポリジアリルアミン(B)と前記有機アミン化合物(C)の3種類を溶解させた水溶液を添加する方法、を挙げることができるが、操作性に優れる点で、前記の本排水に前記無機硫化物(A)と前記ポリジアリルアミン(B)と前記有機アミン化合物(C)の3種類を溶解させた水溶液を添加する方法が好ましい。
【0098】
また、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を使用する場合、当該排水処理方法Bにおいて、カルボン酸、亜鉛、及びニッケルを含有する排水(本排水)に、前記無機硫化物(A)と前記ポリジアリルアミン(B)と前記有機アミン化合物(C)と、前記ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を添加する方法としては、例えば、前記の本排水にそれぞれの固体物質を別々に添加する方法、前記の本排水に前記無機硫化物(A)と前記ポリジアリルアミン(B)と前記有機アミン化合物(C)と、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を混ぜ合わせた固形物を添加する方法、前記の本排水にそれぞれの水溶液を別々に添加する方法、前記の本排水に前記無機硫化物(A)と前記ポリジアリルアミン(B)と前記有機アミン化合物(C)と、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)の4種類を溶解させた水溶液を添加する方法、を挙げることができるが、操作性に優れる点で、前記の本排水に前記無機硫化物(A)と前記ポリジアリルアミン(B)と前記有機アミン化合物(C)と、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)の4種類を溶解させた水溶液を添加する方法が好ましい。
【0099】
前記の排水処理方法Bにおいて、スラリーから固体成分を分離する方法としては、特に限定するものではないが、例えば、ろ過、遠心分離、又は前記固体成分を沈降させた後、上澄み液と分離する方法(沈降分離)等が挙げられる。
【実施例0100】
以下に、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定して解釈されるものではない。
【0101】
(分析方法)
水溶液中の重金属イオン濃度は、ICP発光分光分析装置(ICPE-9800、島津製作所社製)で測定した。
【0102】
[無機硫化物(A)]
無機硫化物として、以下のものを使用した。
【0103】
硫化水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬社製、以下、NaSH)
硫化カリウム(富士フイルム和光純薬社製、以下、K2S)
多硫化カルシウム(さくら化興社製、石灰硫黄合剤、以下、多硫化Ca)
[ポリジアリルアミン(B)]
ポリジアリルアミン(B)(以下、PDAAと略す)として、以下のものを使用した。
【0104】
ジアリルアミン重合体(平均分子量5,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-21)(以下、PDAA-1と略す)。
【0105】
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(平均分子量8,500)(ニットーボーメディカル社製、PAS-H-1L)(以下、PDAA-2と略す)。
【0106】
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(平均分子量30,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-H-5L)(以下、PDAA-3と略す)。
【0107】
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(平均分子量200,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-H-10L)(以下、PDAA-4と略す)。
【0108】
ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト重合体(平均分子量37,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-24)(以下、PDAA-5と略す)。
【0109】
メチルジアリルアミン塩酸塩重合体(平均分子量5,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-M-1L)(以下、PDAA-6と略す)。
【0110】
メチルジアリルアミン塩酸塩重合体(平均分子量20,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-M-1)(以下、PDAA-7と略す)。
【0111】
メチルジアリルアミン酢酸塩重合体(平均分子量20,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-M-1A)(以下、PDAA-8と略す)。
【0112】
メチルジアリルアミンアミド硫酸塩重合体(平均分子量15,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-22SA-40)(以下、PDAA-9と略す)。
【0113】
メチルジアリルアミンジアリルジメチルアンモニウムクロリド重合体(平均分子量13,000)(ニットーボーメディカル社製、PAS-2223)(以下、PDAA-10と略す)。
【0114】
PDAA-1~10の構造を表1に示す。
【0115】
【0116】
また、比較例においては、上記の(B)類似物質として、以下のものを使用した。
【0117】
ポリエチレンイミン(平均分子量1800)(日本触媒社製、以下、PEI(1800)と略す)。
【0118】
ポリエチレンイミン(平均分子量75万)(BASF社製、以下、PEI(75万)と略す)。
【0119】
ジ-n-アルキルジメチルアンモニウムクロリド(混合物)(東京化成工業社製、以下、DADMeと略す)。
【0120】
アクリルアミド・アクリロニトリル・N(2)-ビニルアクリルアミジン-塩化水素(1/1)・N-ビニルアクリルアミド・ビニルアミン-塩化水素(1/1)・N-ビニルホルムアミド共重合物(分子量300万)(三菱ケミカル社製、ダイヤフロックKP7000、以下、AVVVと略す)。
【0121】
[少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)]
少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)(以下、HACAと略す)として、以下のものを使用した。また、上記(C)に該当しない(C)類似物質についても合わせて以下に例示した。
【0122】
ヒドロキシイミノジコハク酸四ナトリウム(ナガセケムテックス社製、以下、HIDS4Naと略す)。
【0123】
ジアミノヒドロキシプロパン四酢酸(東京化成工業社製、以下、DPTAと略す)
ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸三ナトリウム(東京化成工業社製、以下、HEDTAと略す)。
【0124】
また、比較例においては、上記の(C)類似物質として、下記のものを使用した。
【0125】
エチレンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸四ナトリウム塩(富士フイルム和光純薬工業社製、以下、EDTA4Naと略す)。
【0126】
グルタミン酸二酢酸四ナトリウム(東京化成工業社製、以下、GLDA4Naと略す)
ニトリロ三酢酸(東京化成工業社製、以下、NTAと略す)
ヒドロキシエチルイミノジ酢酸二ナトリウム(東京化成工業社製、以下、HIDA2Naと略す)
ジヒドロキシエチルグリシン(東京化成工業社製、以下、DHEGと略す)
以上に示した化合物の構造を表2に示す。
【0127】
【0128】
[ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)]
ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)として、以下のものを使用した。
【0129】
ピペラジンジチオカルバミン酸カリウム塩(以下、PIP-DTC)
テトラエチレンペンタミンのジチオカルバミン酸ナトリウム塩(以下、TEPA-DTC)
ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム二水和物(以下、DMe-DTC)
ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム塩(以下、DEt-DTC)
ピロリジンジチオカルバミン酸アンモニウム塩(以下、APDC)
ピペリジンジチオカルバミン酸ピペリジン塩(以下、PPDC)
PIP-DTCは、以下の方法に従って調製した。
【0130】
ピペラジン(東ソー社製) 112gと純水 386gを混合した後、25℃で、窒素気流中で攪拌しながら48重量%水酸化カリウム 306g(キシダ化学社製)と二硫化炭素 196g(キシダ化学社製)をそれぞれ4分割して交互に滴下した。1時間攪拌し、PIP-DTCを40質量%含む水溶液を得た。
【0131】
【0132】
TEPA-DTCは、以下の方法に従って調製した。
【0133】
テトラエチレンペンタミン(東ソー製) 159gと純水 331gを混合した後、25℃で、窒素気流中で攪拌しながら48重量%水酸化ナトリウム 281g(キシダ化学製)と二硫化炭素 230g(キシダ化学製)をそれぞれ4分割して交互に滴下した。1時間攪拌し、TEPA-DTCを40質量%含む水溶液を得た。
【0134】
【0135】
ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム二水和物(東京化成工業製) 25.0gと純水 25.0gを混合した後、25℃で10分撹拌して、DMe-DTCを40質量%含む水溶液を得た。
【0136】
【0137】
N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム三水和物(富士フイルム和光純薬製) 26.3gと純水 23.7gを混合した後、25℃で10分撹拌して、DEt-DTCを40質量%含む水溶液を得た。
【0138】
【0139】
1-ピロリジンカルボジチオ酸アンモニウム(富士フイルム和光純薬製) 20.0gと純水 30.0gを混合した後、25℃で10分撹拌して、APDCを40質量%含む水溶液を得た。
【0140】
【0141】
ピペリジニウムペンタメチレンジチオカルバマート(東京化成工業製) 20.0gと水30.0gを混合した後、25℃で10分撹拌して、PPDCを40質量%含む溶液を得た。
【0142】
【0143】
[高分子凝集剤]
高分子凝集剤として、OA-23(オルガノ社製、弱アニオンポリマー)を使用した。
【0144】
実施例1
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 50mg/L、ニッケルイオン 50mg/L、及びクエン酸(本排水のカルボン酸化合物に該当) 80mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、前記排水組成物をpH9に調整した。当該排水組成物において、カルボン酸化合物と亜鉛イオンのモル比(カルボン酸化合物のモル数÷亜鉛イオンのモル数)は、0.54(mol/mol)であった。
【0145】
次いで、前記排水組成物に、上記無機硫化物(A)としてNaSHを18mg(投入量60mg/L(排水組成物))添加し、上記ポリジアリルアミン(B)としてPDAA-1を11mg(投入量36mg/L(排水組成物))添加し、上記有機アミン化合物(C)としてHIDS4Naを0.18mg(投入量0.6mg/L(排水組成物))添加し、150rpmで5分間撹拌した。
【0146】
次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物))添加し、50rpmで5分間攪拌した。
【0147】
撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表3に示した。
【0148】
実施例2~17、比較例1~29
実施例1において、無機硫化物(A)の種類、及び添加量、ポリジアリルアミン(B)の種類、及び添加量、並びに少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)の種類、及び添加量を、表3の実施例2~17、比較例1~27に示したものに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った(本発明の排水処理方法を行った)。結果を表3、及び4に示した。
【0149】
なお、比較例10~17においては、無機硫化物(A)を使用せず、その代わりとして、表4に記載のジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を固形分として24mg(投入量60mg/L(排水組成物))(ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を40質量%含む水溶液として、150mg/L(排水組成物))使用した。
【0150】
【0151】
【0152】
実施例1~17は、本発明の排水処理方法を実施したものであるが、無機硫化物(A)、ポリジアリルアミン(B)、及び有機アミン化合物(C)の種類によらず、亜鉛及びニッケルを同時に処理できることを示している。
【0153】
比較例1~3は、ポリジアリルアミン(B)、及び有機アミン化合物(C)を欠く例であるが、亜鉛及びニッケルを低減できなかった。
【0154】
比較例4~6は、無機硫化物(A)、及び有機アミン化合物(C)を欠く例であるが、亜鉛及びニッケルの処理性能が不十分であった。
【0155】
比較例7~9は、無機硫化物(A)、及びポリジアリルアミン(B)を欠く例であるが、亜鉛及びニッケルを低減できなかった。
【0156】
比較例10~17は、無機硫化物(A)を欠き、その代わりに、ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を用いて処理した例であるが、亜鉛及びニッケルを低減できなかった。
【0157】
比較例18~21は、本発明のポリジアリルアミン(B)を欠き、当該ポリジアリルアミン(B)に該当しないポリアミンを用いた例であるが、亜鉛及びニッケルの処理性能が不十分であった。
【0158】
比較例22~26は、本発明の有機アミン化合物(C)を欠き、当該有機アミン化合物(C)に該当しないアミノカルボン酸を用いた例であるが、亜鉛及びニッケルの処理性能が不十分であった。
【0159】
比較例27は、有機アミン化合物(C)を欠く例であるが、亜鉛及びニッケルの処理性能が不十分であった。
【0160】
比較例28は、ポリジアリルアミン(B)を欠き、有機アミン化合物(C)に該当しないアミノカルボン酸を用いた例であるが、亜鉛及びニッケルを低減できなかった。
【0161】
比較例29は、無機硫化物(A)を欠き、有機アミン化合物(C)に該当しないアミノカルボン酸を用いた例であるが、亜鉛及びニッケルの処理性能が不十分であった。
【0162】
実施例18
200mLビーカーに、ポリジアリルアミン(B)として15質量%PDAA-1水溶液を40.0g、有機アミン化合物(C)として50質量%HIDS4Na水溶液を0.2g、及び水を32.6g加え、撹拌した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を5.0g加えた。次いで、無機硫化物(A)として45質量%NaSH水溶液を22.2g加えた後、30分間撹拌することで、本発明の排水処理剤に該当する排水処理剤Aを100g得た。
【0163】
当該排水処理剤Aの組成は、NaSH(無機硫化物(A)に該当)/PDAA-1(ポリジアリルアミン(B)に該当)/HIDS4Na(有機アミン化合物(C)に該当)/水酸化ナトリウム/水=9.99/6/0.1/1/82.91(以上、質量%)である。
【0164】
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 50mg/L、ニッケルイオン 50mg/L、及びクエン酸 80mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液で、前記排水組成物をpH9に調整した。
【0165】
次いで、前記の排水処理剤Aを、180mg(投入量600mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、150rpmで5分間撹拌した。次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、50rpmで5分間攪拌した。撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表6に示した。
【0166】
実施例19~23、26~30、及び33
実施例18において、PDAA-1、及びHIDS4Naを表4に示したものに変更した以外は、実施例18と同じ操作を行い、排水処理剤B~F、I~M、及びPを100g得た。当該排水処理剤B~F、I~M、及びPの組成を表4に示す。排水処理剤の評価結果を表6に示した。
【0167】
実施例24
200mLビーカーに、15質量%PDAA-3水溶液を20.0g、50質量%HIDS4Na水溶液を0.2g、及び水を52.6g加え、撹拌した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を5.0g加えた。次いで、45質量%NaSH水溶液を22.2g加えた後、30分間撹拌することで、本発明の排水処理剤に該当する排水処理剤Gを100g得た。当該排水処理剤Gの組成を表4に示す。
【0168】
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 50mg/L、ニッケルイオン 50mg/L、及びクエン酸 80mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液で、前記排水組成物をpH9に調整した。
【0169】
前記の排水処理剤Gを、90mg(投入量300mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、150rpmで5分間撹拌した。次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、50rpmで5分間攪拌した。撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表6に示した。
【0170】
実施例25
実施例24において、HIDS4NaをHEDTAに変更した以外は、実施例24と同じ操作を行い、排水処理剤Hを100g得た。当該排水処理剤Hの組成を表4に示す。排水処理剤の評価結果を表6に示した。
【0171】
実施例31
200mLビーカーに、15質量%PDAA-9水溶液を8.0g、50質量%HEDTA水溶液を0.04g、及び水を82.5g加え、撹拌した後、20質量%NaSH水溶液を5.0g加えた。次いで、45質量%硫化水素ナトリウム水溶液を4.4g加えた後、30分間撹拌することで、本発明の排水処理剤に該当する排水処理剤Nを100g得た。当該排水処理剤Nの組成を表4に示す。
【0172】
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 50mg/L、ニッケルイオン 50mg/L、及びクエン酸 80mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液で、前記排水組成物をpH9に調整した。
【0173】
前記の排水処理剤Nを、900mg(投入量3,000mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、150rpmで5分間撹拌した。次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、50rpmで5分間攪拌した。撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表6に示した。
【0174】
実施例32
300mLビーカーに、15質量%PDAA-10水溶液を140g、50質量%HIDS4Na水溶液を0.7g加え、撹拌した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を5.0g加えた。次いで、45質量%NaSH水溶液を77.8g加えた後、30分間撹拌した後、水を123.5g留去することで、本発明の排水処理剤に該当する排水処理剤Oを100g得た。当該排水処理剤Oの組成を表4に示す。
【0175】
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 50mg/L、ニッケルイオン 50mg/L、及びクエン酸 80mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液で、前記排水組成物をpH9に調整した。
【0176】
前記の排水処理剤Oを、51.3mg(投入量171mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、150rpmで5分間撹拌した。次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、50rpmで5分間攪拌した。撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表6に示した。
【0177】
実施例33
200mLビーカーに、15質量%PDAA-2水溶液を40.0g、50質量%HIDS4Na水溶液を0.2g加え、水を32.6g加え、撹拌した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を5.0g加えた。次いで、45質量%K2S水溶液を22.2g加えた後、30分間撹拌し、本発明の排水処理剤に該当する排水処理剤Pを100g得た。当該排水処理剤Pの組成を表4に示す。
【0178】
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 50mg/L、ニッケルイオン 50mg/L、及びクエン酸 80mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液で、前記排水組成物をpH9に調整した。
【0179】
次いで、前記の排水処理剤Pを、180mg(投入量600mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、150rpmで5分間撹拌した。次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、50rpmで5分間攪拌した。撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表6に示した。
【0180】
実施例34
200mLビーカーに、15質量%PDAA-3水溶液を20.0g、50質量%HEDTA水溶液を0.2g加え、水を52.6g加え、撹拌した後、20質量%水酸化ナトリウム水溶液を5.0g加えた。次いで、45質量%多硫化Ca水溶液を22.2g加えた後、30分間撹拌し、本発明の排水処理剤に該当する排水処理剤Qを100g得た。当該排水処理剤Qの組成を表4に示す。
【0181】
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 50mg/L、ニッケルイオン 50mg/L、及びクエン酸 80mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液で、前記排水組成物をpH9に調整した。
【0182】
次いで、前記の排水処理剤Qを、180mg(投入量600mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、150rpmで5分間撹拌した。次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、50rpmで5分間攪拌した。撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表6に示した。
【0183】
【0184】
【0185】
実施例18~34は、実施例1~17と同じ量の無機硫化物(A)、ポリジアリルアミン(B)、及び有機アミン化合物(C)を事前に混合した水溶液(本発明の排水処理剤に該当)を排水組成物に投入して本発明の排水処理方法を行った例である。実施例1~17と同様の処理結果が得られた。
【0186】
実施例35~41、比較例30~33
実施例1において、NaSHの添加量、ポリジアリルアミン(B)の種類、及び添加量、並びにHIDS4Naの添加量を、表7の実施例35~41、比較例30~33に示したものに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った(本発明の排水処理方法を行った)。結果を表7に示した。
【0187】
【0188】
実施例35~41は、無機硫化物(A)に対する有機アミン化合物(C)の添加量比を一定に保ったうえで、無機硫化物(A)に対するポリジアリルアミン(B)の添加量比を本発明の範囲で変量させた例であり、本発明の範囲内でニッケル及び亜鉛濃度を低減処理できた。
【0189】
比較例30~33は、本発明の範囲外で処理した例である。本発明の範囲外の条件では、亜鉛を排水基準値の2mg/L以下に処理することはできず、亜鉛の処理が不十分であった。
【0190】
実施例42~45、比較例34~36
実施例1において、NaSHの添加量、ポリジアリルアミン(B)の種類、及び添加量、並びに有機アミン化合物(C)の種類、及び添加量を、表8の実施例42~45、比較例34~36に示したものに変更した以外は実施例1と同様の操作を行った(本発明の排水処理方法を行った)。結果を表8に示した。
【0191】
【0192】
実施例42~45は、無機硫化物(A)に対するポリジアリルアミン(B)の添加量比を一定に保ったうえで、無機硫化物(A)に対する有機アミン化合物(C)の添加量比を本発明の範囲で変量させた例であり、本発明の範囲内でニッケル及び亜鉛濃度を低減処理できた。
【0193】
比較例34~37は、本発明の範囲外で処理した例である。比率が本発明の範囲外の条件では、亜鉛を排水基準値の2mg/L以下に処理することはできず、亜鉛の処理が不十分であった。
【0194】
実施例46
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 50mg/L、ニッケルイオン 50mg/L、及び酒石酸(本排水のカルボン酸化合物に該当) 100mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、前記排水組成物をpH9(アルカリ添加後のpH)に調整した。当該排水組成物において、カルボン酸化合物と亜鉛イオンのモル比(カルボン酸化合物のモル数÷亜鉛イオンのモル数)は、0.87(mol/mol)であった。
【0195】
次いで、前記排水組成物に、上記無機硫化物(A)としてNaSHを18mg(投入量60mg/L(排水組成物))添加し、上記ポリジアリルアミン(B)としてPDAA-1を11mg(投入量36mg/L(排水組成物))添加し、上記有機アミン化合物(C)としてHIDS4Naを0.18mg(投入量0.6mg/L(排水組成物))添加し、150rpmで5分間撹拌した。
【0196】
次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物))添加し、50rpmで5分間攪拌した。
【0197】
撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表9に示した。
【0198】
実施例47
実施例46において、酒石酸(濃度100mg/L)を用いる代わりに、乳酸(濃度100mg/L)を用いた以外は実施例46と同じ操作を行い、評価した。結果を表9に示した。なお、カルボン酸化合物と亜鉛イオンのモル比(カルボン酸化合物のモル数÷亜鉛イオンのモル数)は、1.45(mol/mol)であった。
【0199】
実施例48
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 20mg/L、ニッケルイオン 20mg/L、及びクエン酸(本排水のカルボン酸化合物に該当) 10mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化カルシウム水溶液を添加して、前記排水組成物をpH10(アルカリ添加後のpH)に調整した。当該排水組成物において、カルボン酸化合物と亜鉛イオンのモル比(カルボン酸化合物のモル数÷亜鉛イオンのモル数)は、0.17(mol/mol)であった。
【0200】
次いで、前記排水組成物に、上記無機硫化物(A)としてNaSHを、18mg(投入量60mg/L(排水組成物))添加し、上記ポリジアリルアミン(B)としてPDAA-3を11mg(投入量36mg/L(排水組成物))添加し、上記有機アミン化合物(C)としてDPTAを0.18mg(投入量0.6mg/L(排水組成物))添加し、150rpmで5分間撹拌した。
【0201】
次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物))添加し、50rpmで5分間攪拌した。
【0202】
撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表9に示した。
【0203】
実施例49
実施例48で10%水酸化カルシウム水溶液を添加した後のpHを、pH10からpH11に変更した以外は、実施例48と同じ操作を行い、評価した。結果を表9に示した。
【0204】
実施例50
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 500mg/L、ニッケルイオン 500mg/L、及び乳酸(本排水のカルボン酸化合物に該当) 200mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、前記排水組成物をpH10に調整した。当該排水組成物において、カルボン酸化合物と亜鉛イオンのモル比(カルボン酸化合物のモル数÷亜鉛イオンのモル数)は、0.29(mol/mol)であった。
【0205】
次いで、前記排水組成物に、上記無機硫化物(A)としてNaSHを18mg(投入量60mg/L(排水組成物))添加し、上記ポリジアリルアミン(B)としてPDAA-5を11mg(投入量36mg/L(排水組成物))添加し、上記有機アミン化合物(C)としてHEDTAを0.18mg(投入量0.6mg/L(排水組成物))添加し、150rpmで5分間撹拌した。
【0206】
次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物))添加し、50rpmで5分間攪拌した。
【0207】
撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表9に示した。
【0208】
実施例51
実施例50で10%水酸化ナトリウム水溶液を添加した後のpHを、pH10からpH11に変更した以外は、実施例50と同じ操作を行い、評価した。結果を表9に示した。
【0209】
実施例52
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 500mg/L、ニッケルイオン 500mg/L、及びエチレンジアミン四酢酸(本排水のカルボン酸化合物に該当) 20mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化カルシム水溶液を添加して、前記排水組成物をpH10に調整した。当該排水組成物において、カルボン酸化合物と亜鉛イオンのモル比(カルボン酸化合物のモル数÷亜鉛イオンのモル数)は、0.29(mol/mol)であった。
【0210】
次いで、前記排水組成物に、上記無機硫化物(A)としてNaSHを18mg(投入量60mg/L(排水組成物))添加し、上記ポリジアリルアミン(B)としてPDAA-5を11mg(投入量36mg/L(排水組成物))添加し、上記有機アミン化合物(C)としてHIDS4Naを0.18mg(投入量0.6mg/L(排水組成物))添加し、150rpmで5分間撹拌した。
【0211】
次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物))添加し、50rpmで5分間攪拌した。
【0212】
撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表9に示した。
【0213】
実施例53
実施例52で10%水酸化カルシウム水溶液を添加した後のpHを、pH10からpH11に変更した以外は、実施例52と同じ操作を行い、評価した。結果を表9に示した。
【0214】
【0215】
実施例46、及び47は、亜鉛、及びニッケルを含有する排水において種々のカルボン酸を含有する例であり、カルボン酸の種類によらず、ニッケル及び亜鉛濃度を低減処理できた。
【0216】
実施例48~53は、亜鉛、及びニッケルを含有する排水において種々のカルボン酸を用い、アルカリ添加後のpHを10、または11で処理した例であり、pHによらず、亜鉛濃度を低減できた。
実施例54
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン50mg/L、ニッケルイオン50mg/L、及びクエン酸80mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、前記排水組成物をpH9に調整した。当該排水組成物において、カルボン酸化合物と亜鉛イオンのモル比(カルボン酸化合物のモル数÷亜鉛イオンのモル数)は、0.54(mol/mol)であった。
【0217】
次いで、前記排水組成物に、硫化水素ナトリウムを18mg(投入量60mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、及びPDAA-1を11mg(投入量36mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、HIDS4Naを0.18mg(投入量0.6mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、PIP-DTCを固形分として4.5mg(投入量15mg/L(排水組成物))(PIP-DTCを40質量%含む水溶液として11.25mg(投入量37.5mg/L(排水組成物)))添加し、150rpmで5分間撹拌した。次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物)となるよう)添加し、50rpmで5分間攪拌した。撹拌を停止し、5分間静置した後、上澄みを分取し、排水組成物中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。結果を表10に示した。
実施例55~59
実施例54において、無機硫化物(A)の種類、及び添加量、ポリジアリルアミン(B)の種類、及び添加量、並びに少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)の種類、及び添加量を、並びにジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)の種類、及び添加量を表10の実施例55~59に示したものに変更した以外は実施例54と同様の操作を行った(本発明の排水処理方法を行った)。結果を表10に示した。
【0218】
【0219】
実施例54~59は、にさらにジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を用いて処理した例であり、亜鉛及びニッケル濃度をさらに低減することができた。
【0220】
実施例60
200mLビーカーに、15質量%PDAA-1水溶液を40.0g、50質量%HIDS4Na水溶液を0.2g、PIP-DTCを40質量%含む水溶液を6.3g、及び水を26.3g加え、撹拌した後、20重量%水酸化ナトリウム水溶液を5.0g加えた。次いで、45質量%NaSH水溶液を22.2g加えた後、30分間撹拌することで、本発明の排水処理剤に該当する排水処理剤Rを100g得た。
【0221】
当該排水処理剤Rの組成は、硫化水素ナトリウム(無機硫化物(A)に該当)/PDAA-1(ポリジアリルアミン(B)に該当)/HIDS4Na(有機アミン化合物(C)に該当)/PIP-DTC(ジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)に該当)/水酸化ナトリウム/水=10/6/0.1/2.5/1/83(以上、質量%)である。当該排水処理剤Rの組成を表11に示す。
【0222】
ジャーテスターに設置した500mLビーカーに、亜鉛イオン 50mg/L、ニッケルイオン 50mg/L、及びクエン酸 80mg/Lを含む水溶液(排水組成物)を300mL投入した。次いで、150rpmで攪拌しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液で、前記排水組成物をpH9に調整した。
【0223】
前記の排水処理剤Rを、180mg(投入量600mg/L(排水組成物))添加し、150rpmで5分間撹拌した。次いで高分子凝集剤としてOA-23を、0.6mg(投入量2mg/L(排水組成物))添加し、50rpmで5分間攪拌した。撹拌を停止し、5分間静置した後、生成したスラリーについて、固体成分と上澄み成分に分離することによって、本発明の排水処理方法を行った。前記の上澄み成分中に残存した亜鉛及びニッケル濃度を測定した。排水処理剤の評価結果を表12に示した。
実施例61~65
実施例60において、無機硫化物(A)の種類、及び添加量、ポリジアリルアミン(B)の種類、及び添加量、並びに少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)の種類、及び添加量を、並びにジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)の種類、及び添加量を表11の実施例61~65示したものに変更した以外は実施例60と同様の操作を行い、排水処理剤S~Wを100g得た。当該排水処理剤S~Wの組成を表11に示す。排水処理剤の評価結果を表12に示した。
【0224】
【0225】
【0226】
実施例60~65は、実施例54~59と同じ量の無機硫化物(A)、ポリジアリルアミン(B)、有機アミン化合物(C)、及びジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)を事前に混合した水溶液(本発明の排水処理剤に該当)を排水組成物に投入して本発明の排水処理方法を行った例である。実施例54~59と同様の処理結果が得られた。
【0227】
実施例66~68
実施例54において、無機硫化物(A)の種類、及び添加量、ポリジアリルアミン(B)の種類、及び添加量、並びに少なくとも三つのカルボキシ基と一つのヒドロキシ基を有する有機アミン化合物(C)の種類、及び添加量を、並びにジチオカルバミン酸基を有する化合物(D)の種類、及び添加量を表13の実施例66~68示したものに変更した以外は実施例54と同様の操作を行った(本発明の排水処理方法を行った)。結果を表13に示した。
【0228】