(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025005944
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】分離膜エレメントおよび分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 63/08 20060101AFI20250109BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20250109BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01D63/08
B01D53/22
B01D69/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106408
(22)【出願日】2023-06-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田▲崎▼ 努
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006GA06
4D006GA13
4D006GA14
4D006GA17
4D006GA35
4D006GA41
4D006HA43
4D006HA53
4D006JA05A
4D006JA05C
4D006JA06A
4D006JA06C
4D006JA08A
4D006JA08C
4D006JA13A
4D006JA13C
4D006JA14A
4D006JA18A
4D006JA22A
4D006JA22C
4D006JA25A
4D006JA25C
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA31
4D006MA40
4D006MB03
4D006MB04
4D006MC18
4D006MC22
4D006MC23
4D006MC29
4D006MC30
4D006MC33
4D006MC36
4D006MC39
4D006MC45
4D006MC46
4D006MC47
4D006MC54
4D006MC58
4D006MC62
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB19
4D006PB62
4D006PB64
4D006PB70
(57)【要約】
【課題】気体を供給した場合でも供給側の封止部が剥離し難い、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントを提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るプレートアンドフレーム型の分離膜エレメントは、供給側流路部材と透過側流路部材の間に封止部を有し、前記透過側流路部材の、JIS K 7181により測定される圧縮変形量が0.40mm以下であり、かつ前記封止部の、JIS K 6854により測定される接着力が1.0N以上である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、前記容器内に平膜状に配置された領域を有する分離膜とを含む、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントであって、
前記分離膜は、原料流体に含まれる特定の流体成分を選択的に分離する分離機能層を有し、
前記容器は、前記分離膜を透過した透過流体が流れる2つの透過側流路部材と、前記2つの透過側流路部材の間に配置される、前記分離膜、および前記原料流体が流れる供給側流路部材と、を少なくとも有する積層体を収容し、
前記分離膜エレメントは、前記供給側流路部材と前記分離膜との間に供給側封止部を有し、
前記透過側流路部材の、JIS K 7181により測定される圧縮変形量が0.40mm以下であり、かつ
前記封止部の、JIS K 6854により測定される剥離強度が1.0N以上である、
プレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
【請求項2】
前記透過側流路部材のメッシュ数が18メッシュ以上であり、
前記透過側流路部材が、2つ以上の層を有する多層構造である場合、各層のメッシュ数が同一である、請求項1に記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
【請求項3】
前記透過側流路部材のメッシュ数が50メッシュ以上である、請求項1に記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
【請求項4】
前記分離膜の厚みが、10~600μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
【請求項5】
前記原料流体は、ガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
【請求項6】
前記特定の流体成分は、酸性ガスである、請求項1~3のいずれか1項に記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメントと、前記供給側流路部材に連通する第1供給部および第1排出部と、前記透過側流路部材に連通する第2排出部と、を備える、分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は分離膜エレメントおよび分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または気体の原料流体から特定の流体成分を分離する分離膜として、平膜を積層したプレートアンドフレーム型の分離膜エレメントが知られている(例えば、特許文献1~3)。近年、分離膜の性能が向上し、より薄い分離膜の実現が可能となった。このように薄い分離膜は、排ガス等の気体に含まれる二酸化炭素等の除去に使用することができる。前記プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントは、スパイラル型の分離膜エレメントでは使用が困難な薄い分離膜を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-000965号公報
【特許文献2】特開2017-000964号公報
【特許文献3】米国出願2019/0065091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1~3に記載されているようなプレートアンドフレーム型の分離膜エレメントに気体を供給した場合、透過側に膜が押し込まれて、供給側の封止部が剥離する場合がある。
【0005】
本発明は前記課題を鑑みなされたものであり、気体を供給した場合でも供給側の封止部が剥離し難い(より好ましくは剥離しない)、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは前記課題を解決するために検討した結果、透過側流路部材の圧縮変形量が一定以下であり、かつ供給側封止部の剥離強度が一定以上である分離膜エレメントにより前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下の構成を含有する。
<1>容器と、前記容器内に平膜状に配置された領域を有する分離膜とを含む、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントであって、前記分離膜は、原料流体に含まれる特定の流体成分を選択的に分離する分離機能層を有し、前記容器は、前記分離膜を透過した透過流体が流れる2つの透過側流路部材と、前記2つの透過側流路部材の間に配置される、前記分離膜、および前記原料流体が流れる供給側流路部材と、を少なくとも有する積層体を収容し、前記分離膜エレメントは、前記供給側流路部材と前記分離膜との間に供給側封止部を有し、前記透過側流路部材の、JIS K 7181により測定される圧縮変形量が0.40mm以下であり、かつ前記封止部の、JIS K 6854により測定される剥離強度が1.0N以上である、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
<2>前記透過側流路部材のメッシュ数が18メッシュ以上であり、前記透過側流路部材が、2つ以上の層を有する多層構造である場合、各層のメッシュ数が同一である、<1>に記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
<3>前記透過側流路部材のメッシュ数が50メッシュ以上である、<1>に記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
<4>前記分離膜の厚みが、10~600μmである、<1>~<3>のいずれか1つに記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
<5>前記原料流体は、ガスである、<1>~<4>のいずれか1つに記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
<6>前記特定の流体成分は、酸性ガスである、<1>~<5>のいずれか1つに記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメント。
<7><1>~<6>のいずれか1つに記載のプレートアンドフレーム型の分離膜エレメントと、前記供給側流路部材に連通する第1供給部および第1排出部と、前記透過側流路部材に連通する第2排出部と、を備える、分離装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、気体を供給した場合でも供給側の封止部が剥離し難い(より好ましくは剥離しない)、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る分離膜エレメントを模式的に示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る分離膜エレメントが有する積層体を分解して示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る分離膜エレメントが有する積層体の断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る分離膜エレメントの製造工程を説明する斜視図である。
【
図5】
図4に示す製造工程の続きを説明する斜視図である。
【
図6】
図5に示す製造工程の続きを説明する斜視図である。
【
図7】実施例で行った気密試験の試験装置を説明する概略の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔1.分離膜エレメント〕
本発明の一実施形態に係る分離膜エレメント(以下、本分離膜エレメントとも称する。)は、容器と、前記容器内に平膜状に配置された領域を有する分離膜とを含む、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントであって、前記分離膜は、原料流体に含まれる特定の流体成分を選択的に分離する分離機能層を有し、前記容器は、前記分離膜を透過した透過流体が流れる2つの透過側流路部材と、前記透過側流路部材の間に配置される、前記分離膜、および前記原料流体が流れる供給側流路部材と、を少なくとも有する積層体を収容し、前記分離膜エレメントは、前記供給側流路部材と分離膜との間に供給側封止部を有し、前記透過側流路部材の、JIS K 7181により測定される圧縮変形量が0.40mm以下であり、かつ前記封止部の、JIS K 6854により測定される剥離強度が1.0N以上である。
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る分離膜エレメントを模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態に係る分離膜エレメントが有する積層体を分解して示す斜視図である。
図1中、Lは、容器の長さ方向を表し、Wは、容器の幅方向を表し、Hは、容器の高さ方向を表す。
【0013】
分離膜エレメント1は、容器40と、容器40内に平膜状に配置された領域を有する分離膜21(
図2)とを含む。容器40内で平膜状に配置された領域を有する分離膜とは、分離膜21がロール状または円筒形に巻回されることなく、平坦な状態で配置される領域を含むように容器40内に収容されていることをいう。容器40に収容される分離膜21は、容器40内で平膜状に配置された領域を有していれば折り曲げ部分を有していてもよく、後述するように、平膜状の領域が形成されるように二つ折りにした状態で容器40内に収容されていてもよい。分離膜エレメント1は、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントである。
【0014】
分離膜21は、原料流体に含まれる特定の流体成分を選択的に分離する分離機能層を有する。分離膜21は分離機能層のみによって構成されていてもよいが、分離機能層と多孔膜との積層構造を有していてもよい。多孔膜は、分離機能層の片面または両面に設けることができ、分離機能層を支持または保護することができる。
【0015】
容器40は、2つの透過側流路部材22と、この2つの透過側流路部材22の間に配置される分離膜21および供給側流路部材23と、を有する積層体10を収容している。
図1において、容器の高さ方向Hは、積層体10の積層方向に一致する。積層体10に含まれる分離膜21は、容器40内で平膜状に配置された領域を有するように積層される。積層体10に含まれる透過側流路部材22および供給側流路部材23も通常、容器40内で平膜状に配置された領域を有するように積層されている。
【0016】
積層体10は、透過側流路部材22、分離膜21、供給側流路部材23、および透過側流路部材22がこの順に積層された部分を少なくとも有していればよい。積層体10は例えば、
図2に示すように、分離膜21、供給側流路部材23、および分離膜21がこの順に積層されている膜積層部20を有していてもよい。積層体10は、2つの透過側流路部材22の間に膜積層部20が配置された構造を有していることが好ましい。分離膜21と供給側流路部材23とは、供給側封止材料によって接着されていてもよい。また、透過側流路部材22と分離膜21とは透過側封止材料によって接着されていてもよい。前記供給側封止材料および透過側封止材料としては、後述する封止材料を使用することができる。
【0017】
積層体10において、膜積層部20と、膜積層部20上に積層される透過側流路部材22とは、膜リーフを構成してもよい。膜リーフとは、透過側流路部材22、分離膜21、供給側流路部材23、および分離膜21がこの順に積層された層構造を有する積層体である。積層体10は、膜リーフを1つのみ備えていてもよいが、好ましくは膜リーフが複数積層された構造を有する。積層体10が、膜リーフが複数積層された構造を有する場合、
図2に示すように、膜積層部20の上に、さらに透過側流路部材22、分離膜21・・・となるように各部材および分離膜が繰り返し積層されていてもよい。積層体10に含まれる膜リーフの数は、特に制限されないが、例えば2以上100以下であってもよく、5以上50以下であってもよく、10以上30以下であってもよい。積層体10は、その最上面および最下面が透過側流路部材22であることが好ましく、この場合、最上面の透過側流路部材22は、膜リーフを構成する。
【0018】
図3は、本分離膜エレメントが有する積層体を、端部12と平行な方向に切断した場合の断面図である。積層体10は分離膜21に含まれる分離機能層53と、供給側流路部材23との間に供給側封止部31を有する(
図3)。分離機能層53は、多孔質基材52と共に分離膜を形成している。供給側封止部31では、分離機能層53と供給側流路部材23とが、供給側封止材料により、接着部51において接着されている。したがって、供給側封止部31の剥離強度は、接着部51の接着強度とも換言することができる。供給部側流路部材に原料流体が流れた場合、分離膜21の方向(すなわち、
図3に示されるブロック矢印の方向)に圧力が生じる。
【0019】
供給側封止部31は供給側流路部材23を流れる流体と、透過側流路部材22を流れる流体とが混合することを防止する機能も有する。供給側流路部材23を流れる流体とは、例えば原料流体、および分離膜21を透過しなかった非透過流体である。透過側流路部材22を流れる流体は、例えば分離膜21を透過した透過流体、および、透過側流路部材22に供給されて透過流体と同伴して排出されるスイープ流体である。スイープ流体は、分離膜の分離機能層に対して不活性な流体である。
【0020】
積層体は、必要に応じて積層体10の積層方向において透過側流路部材22の積層位置に対応する位置を含むように設けられた透過側封止部32を有することができる(
図2)。透過側流路部材22の積層位置に対応する位置とは、透過側流路部材22が占める位置のほか、積層体10の平面に沿う方向(
図2の透過側封止部32が存在する方向)に透過側流路部材22を延長した場合に、この延長部分が占める位置をいう。透過側封止部32は、
図2に示す透過側封止部32を形成するための透過側封止材料が透過側流路部材22に浸透し、この浸透部分を含むように透過側封止部32が形成されていてもよい。
【0021】
供給側流路部材23の端部には、後述する透過側封止部32を形成するための透過側封止材料が浸み込むことを防止するためのテープを設けることができる。テープは、供給側流路部材23の端部において、分離膜21に対向する側に設けることが好ましく、供給側流路部材23の両面に分離膜21が配置される場合、端部の両面に設けられてもよい。同様に、透過側流路部材22の端部には、供給側封止部31を形成するための供給側封止材料が浸み込むことを防止するためのテープを設けることができる。なお、封止材料が両面テープである場合は、浸み込み防止のためのテープを使用する必要はない。
【0022】
図示していないが、透過側封止部32は、積層体10の第2端部12に加えて、第1端部11に設けられていてもよい。第1端部11を構成する積層体10の平面視における一辺全体に沿って透過側封止部32が設けられることが好ましい。第1端部11に設けられた第2封止部32も、積層体10の積層方向において透過側流路部材22の積層位置に対応する位置に設けられ、封止材料が透過側流路部材22に浸透し、この浸透部分を含むように形成されていてもよい。第1端部11にも透過側封止部32が設けられる場合、透過側封止部32は、第2端部12に含まれる2つの端部と、第1端部11の1つの端部とに設けられ、第2端部及び第1端部11における透過側封止部32が平面視において繋がった状態(例えば、U字状)に形成されていてもよい。
【0023】
供給側封止部31と、透過側封止部32とは、平面視においてそれぞれの封止部が交差する位置(以下、「交差位置」ということがある。)で接着していることが好ましい。
図1および
図2に示す積層体10では、平面視において、積層体10の角部分に交差位置を設けることができる。
【0024】
容器40は、
図1に示すように、積層体10の供給側流路部材23に連通し、原料流体を供給するための第1供給口43、積層体10の供給側流路部材23に連通し、非透過流体を排出するための第1排出口44、および、積層体10の透過側流路部材22に連通し、透過流体を排出するための第2排出口46を有することができる。容器40は、さらに、積層体10の透過側流路部材22に連通する供給排出口45を有していてもよい。供給排出口45は、スイープ流体を供給するための第2供給口として、または、透過流体を排出するための第3排出口として、用いることができる。
【0025】
前記の分離膜エレメント1では、容器40の第1供給口43および第1排出口44が形成された側壁部49に対向するように積層体10の第2端部12を配置し、容器40の第2排出口46が形成された側壁部49に対向するように積層体10の第1端部11を配置する(
図1)。容器40の供給排出口45を使用しない場合または容器40が供給排出口45を有しない場合、積層体10の第1端部11において透過側封止部32を形成する。容器40が供給排出口45を有し、この供給排出口45を使用する場合、積層体10の第1端部11において透過側封止部32を形成しないことにより、供給排出口45から透過側流路部材22にスイープ流体を供給する、または、透過流体を排出することができる。
【0026】
前記の構造を有する分離膜エレメント1では、次のように特定の流体成分の分離を行うことができる。まず、容器40の第1供給口43から積層体10の第2端部12側に原料流体を供給することにより、供給側流路部材23内に原料流体を供給する。分離膜21の分離機能層は、供給側流路部材23を流れる原料流体に含まれる特定の流体成分を選択的に透過することができる。これにより、分離膜21を透過した透過流体は、原料流体に比較すると特定の流体成分の含有量が大きくなる。分離膜エレメント1には供給側封止部31が設けられているため、供給側流路部材23に供給された原料流体、および、分離膜21を透過しなかった非透過流体が、透過側流路部材22を流れる透過流体に混入することが抑制されている。一方、分離膜エレメント1には透過側封止部32が設けられているため、分離膜21を透過し、透過側流路部材22を流れる透過流体が、供給側流路部材23を流れる原料流体および非透過流体に混入することが抑制されている。そして、分離膜21を透過しなかった非透過流体は、供給側流路部材23内を流れ、容器40の第1排出口44側にある積層体10の第2端部12側から、第1排出口44を経て分離膜エレメント1の外部に排出される。分離膜21を透過した透過流体は、透過側流路部材22内を流れ、容器40の第2排出口46側にある積層体10の第1端部11側から、第2排出口46を経て分離膜エレメント1の外部に排出される。透過側流路部材22内を流れる透過流体は、第2排出口46に加えて、容器40の供給排出口45側にある積層体10の第1端部11側から、供給排出口を経て分離膜エレメント1の外部に排出されてもよい。これにより、原料流体を透過流体と非透過流体とに分離することができる。
【0027】
分離膜エレメント1にスイープ流体を供給する場合は、容器40の供給排出口45から積層体10の第1端部11側にスイープ流体を供給することにより、透過側流路部材22にスイープ流体を供給する。スイープ流体は、透過側流路部材22を流れ、容器40の第2排出口46側にある積層体10の第1端部11側から、第2排出口46を経て分離膜エレメント1の外部に排出される。
【0028】
原料流体を分離膜エレメント1に供給すると、原料流体が流れる供給側流路部材23によって形成される供給側空間(すなわち、
図3のブロック矢印の方向)に内圧が発生する。従来、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントは主に液体透過に使用されていたため、前記内圧による問題は認識されていなかった。例えば上述した特許文献1、2には、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントについて記載されているが、主として廃水、または海水等の液体透過に使用することが意図されている。また、特許文献3ではプレートアンドフレーム型の分離膜エレメントに対する気体の透過について記載されているが、透過側流路部材、および封止部については何ら検討されておらず、低コストのプレートアンドフレーム型の分離膜エレメントについて記載されているのみである。
【0029】
しかしながら、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントを用いて、通常の圧力で気体透過を行った場合、前記の内圧の影響を受けて封止部と分離膜とが剥離しやすい。封止部と分離膜との間で剥離が生じると、封止部の気密性が低下し、良好な流体分離を行いにくくなる。プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントを気体透過に供した場合に、供給側の封止部の剥離が生じ、分離膜エレメントの気密性が低下するということは、本願発明者らが見出した新規な課題である。前記構成を有する本分離膜エレメントによれば、気体を供給した場合でも供給側封止部を剥離させることなく、透過させることが可能となる。
【0030】
また、前記構成によれば、排気ガス等の有害ガスからCO2等を除去することができる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」、目標13「気候変動に具体的な対策を」等の達成にも貢献するものである。
【0031】
前記した第1端部11と第2端部12との交差位置で、供給側封止部31と透過側封止部32とが接着している場合、交差位置で供給側封止部31の密着性を向上することができるため、供給側封止部31の気密性をより一層向上しやすくなる。
【0032】
供給側封止部31および透過側封止部32は、封止材料を用いて形成することができる。供給側封止部31および透過側封止部32は、それぞれ独立して、封止材料として接着剤または両面テープを用いてもよく、接着剤を使用した場合、接着剤を乾燥または硬化させた接着剤層であってもよい。
【0033】
供給側封止部31は、例えば、第1端部11において、膜積層部20の端部よりも外側であって膜積層部20の両側に配置される透過側流路部材22の間に形成される空間を埋めるように封止材料を塗布し、これを乾燥または硬化させて形成することができる。封止材料を塗布する際に、第1端部11における膜積層部20の端部に封止材料が塗布されてもよく、膜積層部20の端部に位置する分離膜21または分離膜21が有する多孔膜と供給側流路部材23とに封止材料を浸透させ、この状態で封止材料の乾燥または硬化を行って供給側封止部31を形成してもよい。
【0034】
供給側封止部31は、JIS K 6854により測定される剥離強度が1.0N以上であり、好ましくは1.1N以上、より好ましくは1.2N以上である。剥離強度の上限は特に限定されないが、例えば4.0N以下であってもよい。剥離強度が1.0N以上であることにより、分離膜エレメントに気体を透過した場合でも、供給側封止部31の剥離が生じない。供給側封止部の剥離強度は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0035】
封止材料としては、両面テープ、接着剤等を使用することができる。前記接着剤に含まれる樹脂としては、前記剥離強度が1.0N以上となる接着剤であれば特に限定されず、例えばエポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂、塩化ビニル共重合体系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系樹脂、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体系樹脂、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体系樹脂、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース誘導体(ニトロセルロース等)系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体系樹脂、各種の合成ゴム系(エラストマー系)樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、フェノキシ系樹脂、尿素ホルムアミド系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、封止材料は、エポキシ系樹脂(エポキシ系接着剤用樹脂)の接着剤であることが好ましく、二液系混合型のエポキシ系接着剤であることがより好ましい。両面テープの場合は、アクリルフォームにアクリル粘着剤が塗布された構造用接合テープを使用することができる。両面テープを使用する場合、分離膜上に両面テープを貼合し、両面テープの剥離紙を剥離して、もう片方の分離膜をさらに貼合することができる。
【0036】
供給側封止部31と透過側封止部32とは、同じ封止材料で形成されてもよく、異なる封止材料で形成されてもよい。すなわち、例えば供給側封止部31の封止材料が両面テープであり、透過側封止部32の封止材料が接着剤であってもよいし、供給側封止部31の封止材料が接着剤であり、透過側封止部32の封止材料が両面テープであってもよい。また、供給側封止部31の封止材料、および透過側封止部32の封止材料の両方が両面テープ、または接着剤であってもよい。
【0037】
図1および
図2に示す積層体10では、第1端部11において、膜積層部20の両側に配置される2つの透過側流路部材22の端部が、膜積層部20の端部よりも外側に位置しているが、本発明の一実施形態に係る積層体はこれに限定されない。積層体10の平面視において、2つの透過側流路部材22の間に配置される分離機能層の第1端部11における端部が、分離機能層の端部よりも外側にあればよい。例えば、積層体10の平面視において、2つの透過側流路部材22の第1端部11における端部は、分離膜21(分離機能層および多孔膜)の端部よりも外側にあり、この2つの透過側流路部材22の間に配置される供給側流路部材23の端部と同じ位置にあってもよい。あるいは、積層体10の平面視において、2つの透過側流路部材22の第1端部11における端部は、この2つの透過側流路部材22の間に配置される供給側流路部材23の端部よりも外側にあり、分離膜21に含まれる多孔膜の端部と同じ位置にあってもよい。積層体10の平面視において、2つの透過側流路部材22の第1端部11における端部が、多孔膜および/または供給側流路部材23の端部と同じ位置にある場合、供給側封止部31は多孔膜および/または供給側流路部材23の一部(例えば、端部)を含んでいてもよい。
【0038】
分離膜エレメント1は、少なくとも特定の流体成分を含む原料流体から特定の流体成分を分離することができる。原料流体、特定の流体成分、透過流体、非透過流体、およびスイープ流体は、それぞれ独立して、ガスであってもよく、液体であってもよい。分離膜エレメント1は、好ましくはガス分離膜エレメントであり、原料ガスから特定のガス成分を選択的に透過させるものであることが好ましい。
【0039】
特定の流体成分は、酸性ガスであることが好ましい。酸性ガスとしては、二酸化炭素(CO2)、硫化水素(H2S)、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)等が挙げられる。特定のガス成分は、二酸化炭素または硫化水素であることが好ましく、二酸化炭素であることがより好ましい。原料ガスとしては、水素や尿素等を製造するプラントで合成される合成ガスの残余排ガス、天然ガス、バイオガス、発電所、廃棄物処理場、セメント工場等から排出される燃焼排ガス等の酸性ガスを含むガスが挙げられる。
【0040】
本分離膜エレメントは気密試験において、供給側の圧力を200kPGとした場合に、40GPU(1GPU=3.35×10-10mol・m-2・s-1・Pa-1)以下の性能を有していることが好ましい。本分離膜エレメントが前記性能を達成していれば、十分に実用に耐えると言える。なお、GPUの上限値は特に限定されないが、例えば200kPGで100GPU以下であってもよい。前記気密試験は、後述する実施例に記載した試験である。
【0041】
(分離膜エレメントの製造方法)
図4~
図6は、本発明の一実施形態に係る分離膜エレメントの製造工程を説明する斜視図である。
図4~
図6中、Lは、容器の長さ方向を表し、Wは、容器の幅方向を表し、Hは、容器の高さ方向を表す。
【0042】
分離膜エレメント1は、容器40、分離膜21、透過側流路部材22、および供給側流路部材23を用い、この容器40の収容空間内に、透過側流路部材22、分離膜21、および供給側流路部材23を積層して積層体10を形成することにより、製造することができる。以下、角柱状の容器40に、平面視形状が矩形の積層体10を収容した分離膜エレメント1の製造方法の一例を説明する。
【0043】
まず、容器40を用意する。
図4の(a)に示す容器40は、積層体10を構成する各部材を収容するための収容空間を有し、上面が開放された状態を示している。容器40は、収容空間内に収容される部材を位置決めするためのガイド部41を有することができる。容器40の収容空間が角柱状である場合、ガイド部41は容器40の角部に設けられることが好ましい(
図4の(a))。
【0044】
透過側流路部材22の、積層体10の第1端部11となる端部の両面に、封止材料の浸み込みを防止するための第1テープ25を貼合する。
図4に示す透過側流路部材22では、互いに対向する2つの辺に沿う端部に第1テープ25を取り付けている(
図4の(b))。第1テープ25を取り付けた辺が、幅方向Wに平行に延びる辺に平行となるように、第1テープ25を貼合した透過側流路部材22を容器40内に配置する。その後、積層体10の第2端部12となる端部(透過側流路部材22の第1テープ25を取り付けていない端部(長さ方向Lに平行に延びる端部))に沿って封止材料33aを塗布する(
図4の(b))。封止材料33aは、容器40の平面視において、透過側流路部材22の端部よりも外側に塗布してもよく、当該端部を覆うように塗布してもよい。
【0045】
続いて、透過側流路部材22上に分離膜21(以下、「第1分離膜21a」ということがある。)を積層する(
図4の(c))。このとき、積層体10の第1端部11となる端部(幅方向Wに平行に延びる端部)において、積層体10の平面視で、透過側流路部材22の端部が第1分離膜21aの端部よりも外側となるように第1分離膜21aを積層する(
図4の(c))。例えば、第1分離膜21aは、透過側流路部材22の第1テープ25を被覆しないように積層する。積層体10の第2端部12となる端部(長さ方向Lに平行に延びる端部)では、積層体10の平面視で、透過側流路部材22の端部が、第1分離膜21aの端部よりも外側にあってもよいが、第1分離膜21aの端部と同じ位置にあってもよい。
【0046】
その後、積層体10の第1端部11となる端部に封止材料33bを塗布する(
図5の(a))。例えば、封止材料33bは、積層体10の平面視で、第1分離膜21aの端部よりも外側にある透過側流路部材22の端部全体を覆うように塗布する。
図5の(a)では、透過側流路部材22の第1テープ25上に封止材料33bを塗布する場合を示している。封止材料33bは、塗布した封止材料33bの両端(幅方向Wの両端)が、封止材料33aの両端(長さ方向Lの両端)と重なるように塗布する。
【0047】
次に、供給側流路部材23の、積層体10の第2端部12となる端部の両面に、封止材料の浸み込みを防止するための第2テープ26を貼合する。第2テープ26を貼合した供給側流路部材23を、容器40内の第1分離膜21a上に積層する(
図5の(b))。供給側流路部材23は、第2テープ26を取り付けた辺が、長さ方向Lに平行に延びる辺に平行となるように、第1分離膜21a上に積層する。このとき、積層体10の第1端部11となる端部(幅方向Wに平行に延びる端部)において、積層体10の平面視で、透過側流路部材22の端部が供給側流路部材23の端部よりも外側となるように、供給側流路部材23を積層する(
図5の(b))。
図5の(b)では、透過側流路部材22上に塗布した封止材料33bに重ならないように供給側流路部材23を積層している。
【0048】
その後、容器40内の供給側流路部材23上にさらに分離膜21(以下、「第2分離膜21b」ということがある。)を積層する。このとき、積層体10の第1端部11となる端部(幅方向Wに平行に延びる端部)において、積層体10の平面視で、透過側流路部材22の端部が第2分離膜21bの端部よりも外側となるように第2分離膜21bを積層する(
図5の(c))。積層体10の第2端部12となる端部(長さ方向Lに平行に延びる端部)では、積層体10の平面視で、透過側流路部材22の端部が、第2分離膜21bの端部よりも外側にあってもよいが、第2分離膜21bの端部の位置と同じであってもよい。続いて、積層体10の第2端部12となる端部に封止材料を塗布する。封止材料は、供給側流路部材23を介して、先に塗布した封止材料33aに重なる位置に塗布することが好ましい。このようにして、透過側流路部材22上に積層された第1分離膜21a、供給側流路部材23、および第2分離膜21bは膜積層部20を構成する。
【0049】
次に、容器40内の第2分離膜21b上に、さらに透過側流路部材22を積層する。この透過側流路部材22は、積層体10の第1端部11となる端部(幅方向Wに平行に延びる端部)において、積層体10の平面視で、透過側流路部材22の端部が膜積層部20の端部よりも外側となるように、第2分離膜21b上に積層する。膜積層部20(第1分離膜21a、供給側流路部材23、および第2分離膜21b)、および、膜積層部20上に積層された透過側流路部材22は、膜リーフを構成する。前記で説明した手順で、膜リーフを積層する工程を繰り返すことにより、容器40内に積層体10を形成する(
図6の(a))。
【0050】
容器40内に積層体10を形成した後に、容器40のガイド部41と積層体10との間の隙間を、封止材料でシールする。続いて、積層体10の第2端部12において、積層体10の最上面の膜リーフに含まれる透過側流路部材22上に封止材料を塗布し、容器40の上面部47となる上蓋を設置し(
図6の(b))、上蓋と容器40の側壁部49との間の隙間に封止材料を塗布する。その後、封止材料を乾燥または硬化することにより、分離膜エレメント1を得ることができる(
図6の(b))。
【0051】
前記で説明した製造方法では、膜積層部20を構成するために、2枚の分離膜(第1分離膜21aおよび第2分離膜21b)を用いたが、1枚の分離膜を二つ折りし、二つ折りした分離膜の間に供給側流路部材23を挟み込んで膜積層部20を構成してもよい。二つ折りした分離膜を用いる場合、折り目部分は、積層体10の第1端部11となる端部に配置するとよい。
図6の(b)に示す分離膜エレメント1では、容器40の透過流体を排出するための第2排出口46側に連通するように配置することが好ましい。この場合、分離膜の折り目部分が配置される第1端部11には、供給側封止部を設ける必要はない。
【0052】
〔2.分離装置〕
分離装置は、本分離膜エレメントを1以上有することができる。分離装置に備えられる分離膜エレメントの配列および個数は、要求される処理量、特定の流体成分の回収率、分離装置を設置する場所の大きさ等に応じて選択することができる。
【0053】
分離装置は、分離膜エレメント1の供給側流路部材23に連通する第1供給部および第1排出部と、分離膜エレメント1の透過側流路部材22に連通する第2排出部とを備えることができる。分離装置は、さらに、分離膜エレメント1の透過側流路部材22に連通する供給排出部を備えていてもよい。
【0054】
第1供給部は、供給側流路部材に原料流体を供給するための入口であり、分離膜エレメント1の第1供給口43に連通することができる。第1排出部は、供給側流路部材を流れる非透過流体を排出するための出口であり、分離膜エレメント1の第1排出口44に連通することができる。第2排出部は、透過側流路部材を流れる透過流体を排出するための出口であり、分離膜エレメント1の第2排出口46に連通することができる。供給排出部は、透過側流路部材にスイープ流体を供給するための入口である第2供給部として、または、透過流体を排出するための第3排出部として、用いることができる。供給排出部は、分離膜エレメント1の供給排出口45に連通することができる。
【0055】
以下、分離膜エレメント1および分離装置を構成する各部材について、さらに詳細に説明する。
【0056】
(容器)
容器40は、積層体10を収容する。容器40は、
図1に示すように、上面部47、下面部48、上面部47と下面部48とを繋ぐ側壁部49とを有し、上面部47、下面部48、および側壁部49によって収容空間を区画することができる。上面部47および下面部48は、積層体10の積層方向に直交する方向に延在し、側壁部49は、積層体の積層方向に延在する。容器の形状は特に限定されず、上面部47および下面部48が矩形等の多角形であってもよく、円形であってもよい。側壁部49は、角柱形であってもよく、円筒形であってもよい。
【0057】
容器40は、
図5の(a)に示すように、積層体10を構成する各部材の位置決めを行うためのガイド部41を有していてもよい。容器40の側壁部49が角柱形である場合、ガイド部41は、側壁部49の角部に設けられることが好ましい。
【0058】
容器40が有する第1供給口43、供給排出口45、第1排出口44、および第2排出口46は、いずれも容器40の側壁部49に設けられていてもよく、上面部47または下面部48に設けられていてもよい。
【0059】
容器40を構成する前記の各部材は、樹脂、ガラス、金属、およびセラミックス等で形成することができる。樹脂としては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PSF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂、これらの樹脂にガラス等の繊維を混合した繊維強化樹脂が挙げられる。金属としては、SUS等のステンレス、アルミニウム、銅等が挙げられる。容器40を構成する前記の各部材は、同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。
【0060】
(分離膜)
分離膜21は、原料流体から特定の流体成分を選択的に透過させることができる公知のものであれば特に限定されない。分離膜21は、例えば、限外濾過膜、ナノ濾過膜、逆浸透膜、透析膜、正浸透膜、溶解拡散膜、促進輸送膜等であることができる。溶解拡散膜は、流体分子の溶解性および拡散性の差異を利用して分子を選択透過させる膜である。促進輸送膜は、流体分子の溶解性または/および拡散性を促進する物質を含む膜である。分離膜21は、溶解拡散膜であることが好ましい。
【0061】
分離膜21は、多孔膜および分離機能層を有することができる。分離膜21が有する多孔膜は、1層以上であればよく、2層以上であってもよく、3層以上であってもよい。多孔膜は、分離機能層の片面または両面に設けることができる。分離機能層の片面または両面に設けられる多孔膜は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。また、分離膜21は必要に応じて補強用の支持層を有していてもよい。
【0062】
分離膜が片面にのみ多孔膜を有する場合、前記した膜積層部20では、分離膜21の分離機能層側が供給側流路部材23側となるように、分離膜21および供給側流路部材23を積層することが好ましい。
【0063】
分離膜の厚みは、10~600μmが好ましく、10μm~550μmがより好ましく、10~510μmがさらに好ましい。分離膜の厚みが前記範囲であれば、膜厚が薄くなり、原料流体から二酸化炭素等の特定の流体成分を十分に分離することができる。また、分離膜の厚みが上記範囲であると、スパイラル型の分離膜エレメントへの使用が困難であるが、プレートアンドフレーム型の分離膜エレメントであれば使用可能である。
【0064】
(分離機能層)
分離機能層は、前記の膜の種類に応じて選択することができる。分離機能層は、樹脂を含む組成物を用いて形成された層であることが好ましい。当該樹脂としては、ポリアクリル酸、ポリアミド、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、フッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル-ポリアクリロニトリル共重合体、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリシロキサン、ポリエーテルブロックアミド共重合体、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。ポリアクリル酸は、架橋された架橋ポリアクリル酸であってもよく、架橋されていない非架橋ポリアクリル酸であってもよい。
【0065】
分離機能層は、ゲル層であってもよい。ゲル層は、ポリアクリル酸等の親水性樹脂を含み、さらに、アミノ酸、アミノスルホン酸、および/または、アミノホスホン酸等を含んでいてもよい。ゲル層は、多孔膜に対する濡れ性を調整するための界面活性剤を含んでいてもよい。特定の流体成分がガスである場合、ゲル層はさらに、アルカリ金属化合物、および/
または、特定のガス成分とアルカリ金属化合物との反応速度を向上させるための水和反応触媒を含んでいてもよい。
【0066】
分離機能層は、例えば、多孔膜上に、前記した樹脂および媒質を含む塗布液を塗布することによって製造することができる。多孔膜上に塗布液を塗布する方法としては、スロットダイ塗布、スピンコート法、バー塗布、ダイコート法、ブレード塗布、エアナイフ塗布、グラビアコート法、ロールコーティング塗布、スプレー塗布、ディップ塗布、コンマロール法、キスコート法、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられる。
【0067】
また、分離機能層の厚みは1~1000nmが好ましく、10~500nmがより好ましく、100~400nmがさらに好ましい。分離機能層の厚みが上記範囲であれば、原料流体から二酸化炭素等の特定の流体成分を十分に分離することができる。
【0068】
(多孔膜)
多孔膜は、分離機能層を支持するための支持層、または、分離機能層を保護するための保護層であることができる。多孔膜は分離機能層に直接接していることができる。多孔膜は、分離機能層に供給される原料流体または原料流体に含まれる特定の流体成分の拡散抵抗とならないように、流体透過性の高い多孔性を有することが好ましい。
【0069】
多孔膜は、樹脂材料または無機材料によって形成されていることが好ましい。多孔膜を構成する樹脂材料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素含有樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、高分子量ポリエステル、耐熱性ポリアミド、アラミド、ポリカーボネート、これらの樹脂材料のうちの2種以上の混合物等が挙げられる。これらの中でも、撥水性および耐熱性の点から、ポリオレフィン系樹脂およびフッ素含有樹脂のうちの少なくとも一方を含むことが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリテトラフルオロエチレンのうちの1種以上を含むことがより好ましい。多孔膜を構成する無機材料としては、金属、ガラス、セラミックス等が挙げられる。
【0070】
多孔膜は、多孔質体であれば特に限定されない。多孔膜は、多孔性の樹脂フィルム、不織布、織布、発泡体、メッシュ、ネット等のシート状の多孔質体であってもよい。また、これら多孔質体は補強用の支持層としても使用することができる。
【0071】
分離膜が有する多孔膜は、例えば、分離機能層の一方側に積層される1層または2層以上の多孔性の樹脂フィルムと、分離機能層の他方側に積層される1層または2層以上の不織布であってもよい。
【0072】
(供給側流路部材および透過側流路部材)
供給側流路部材23および透過側流路部材22は、原料流体および分離膜21を透過した透過流体の乱流(膜面の表面更新)を促進して、原料流体中の透過流体の膜透過速度を増加させる機能と、供給される原料流体および分離膜21を透過した透過流体の圧力損失をできるだけ小さくする機能とを有していることが好ましい。供給側流路部材23および透過側流路部材22は、原料流体および透過流体の流路を形成するスペーサとしての機能と、原料流体および透過流体に乱流を生じさせる機能とを備えていることが好ましいことから、網目状(ネット状、メッシュ状等)のものが好適に用いられる。網目の単位格子の形状は、網目の形状により流体の流路が変わることから、目的に応じて、例えば、正方形、長方形、菱形、平行四辺形等の形状から選択されることが好ましい。
【0073】
透過側流路部材は、JIS K 7181により測定される圧縮変形量が0.40mm以下であり、好ましくは0.35mm以下、より好ましくは0.30mm以下である。圧縮変形量の下限は特に限定されないが、例えば0.10mm以上であってもよい。圧縮変形量が0.40mm以下であることにより、本分離膜エレメントに気体を透過した場合でも、供給側封止部31の剥離が生じにくい。透過側流路部材の圧縮変形量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0074】
供給側流路部材23および透過側流路部材22の材質としては、特に限定されないが、分離膜エレメント1が設けられる分離装置の運転温度条件に耐え得る耐熱性を有する材料が好ましい。供給側流路部材23および透過側流路部材22は、それぞれ独立して、単層構造であってもよく多層構造であってもよい。多層構造を有する供給側流路部材23および透過側流路部材22は、1種類以上の網目状の層を積層した構造を有することが好ましく、積層される網目状の層は互いに異なる網目構造を有していてもよい。好ましくは、透過側流路部材22は、単層構造である。
【0075】
本明細書中、「透過側流路部材22が単層構造である」とは、透過側流路部材22が複数の層を有しないことを意味する。すなわち、透過側流路部材22が一枚のメッシュ、またはネット等からなることを意味しており、分離膜エレメント1において透過側流路部材22、分離膜21、および供給側流路部材23が積層されていないことを意図するものではない。また、「透過側流路部材22が多層構造である」とは、透過側流路部材22が複数枚のメッシュ、ネットにより構成されていることを意味する。
【0076】
本発明の一実施形態において、透過側流路部材はメッシュ状であることが好ましい。透過側流路部材がメッシュ状であり、2つ以上の層を有する多層構造である場合、透過側流路部材の各層のメッシュは同一であることが好ましい。各層のメッシュが同一であれば、一方の層がもう一方の層に入り込むことによる、透過側流路部材の変形が生じにくくなるため、透過側流路部材の圧縮強度が向上する。透過側流路部材が単層構造を有する場合、および透過側流路部材が多層構造を有し、かつ各層のメッシュが同一である場合、透過側流路部材のメッシュ数は、18メッシュ以上が好ましい。メッシュ数の上限は特に限定されないが、例えば150メッシュ以下であってもよい。
【0077】
本発明の別の実施形態において、透過側流路部材がメッシュ状であり、2つ以上の層を有する多層構造の場合、かつ透過側流路部材の各層のメッシュ数が異なっていてもよい。この場合、透過側流路部材のメッシュ数は、50メッシュ以上が好ましい。メッシュ数の上限は特に限定されないが、例えば150メッシュ以下であってもよい。透過側流路部材のメッシュ数が50メッシュ以上であれば、メッシュ同士の目が十分に小さいため、一方の層がもう一方の層に入り込むことによる、透過側流路部材の変形が生じにくくなる。
【0078】
(第1テープ、第2テープ)
第1テープ25および第2テープ26は、封止材料の浸み込みを防止するために用いられるテープである。第1テープ25および第2テープ26は、封止材料に対して非浸透性の材料によって形成することができる。当該材料としては、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ガラス繊維、ポリエステル等が挙げられる。第1テープ25および第2テープ26を形成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。第1テープおよび第2テープは、分離膜エレメントの製造時に用い、分離膜エレメントの使用時には除去されてもよく、残存していてもよい。
【0079】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0080】
〔実施例1〕
(分離膜の準備)
分離膜は複合膜であり、分離機能層(Pebax(ぺバックス)(登録商標)ポリエーテルブロックアミド共重合体)、多孔質基材(ポリアクリロニトリル)および補強用の支持層であるPET不織布がこの順で積層されて構成される。
【0081】
(分離膜エレメントの準備)
透過側流路部材は長さ119mm×幅119mmサイズ、繊維径263μm、厚み0.53mm、PET製のメッシュ(メッシュ数:18メッシュ)を用いた。容器は、ポリカーボネート製;外寸長さ150mm×幅150mm×高さ85mm、四隅ガイド部の内寸長さ120mm×幅120mmの格納容器を使用した。分離膜は長さ119mm×幅119mmサイズを用いた。供給流路部材は、幅119mm×長さ96mmサイズのポリプロピレンダイヤモンドネット(SWM(株)製;製品名NO.1716)を用いた。
【0082】
(分離膜エレメントの作製)
図4~6に示す方法により、以下の手順で分離膜エレメントを作製した。
1 まず、透過側流路部材を容器内に設置した後、透過側流路部材の両端部(長さ方向L側)に接着剤(ナガセケムテックス製:デナタイト2204)を塗布した(
図4(b))。
2 分離膜を分離機能層面が上面となるように設置し(
図4(c))、透過側流路部材に接着剤を塗布した反対側の両端部(すなわち、幅方向W側)である供給側封止部に封止材A(3M社製、両面テープ(Y-4930)幅10mm×長さ150mm)を貼り付けて(
図4(a))、供給側流路部材を設置した(
図4(b))。
3 分離膜を分離機能層面が下面となるように設置したのち(
図4(c))、供給側封止部とは反対側の分離膜の両端部(すなわち、長さ方向L側)に接着剤を塗布した。次に、透過側流路部材を設置した(
図5(a))。
4 透過側流路部材、分離膜、および供給側流路部材を積層する前記1~3の操作を、膜リーフが20枚になるまで繰り返した。膜リーフと容器内のガイド部の四隅は前記接着剤にてシールした。
5 膜リーフ最上段の透過側流路部材の面の両端部(すなわち、長さ方向L側)に接着剤を塗布し、容器の上蓋を設置後、上蓋と容器の隙間を接着剤で塗布した(
図5(b))。その後、室温で10時間、直径12cm、厚み15mmのフランジ7個(10.2kg)を上蓋に設置して、乾燥させることにより接着剤を硬化させて、分離膜エレメントを得た。得られた分離膜エレメントの有効膜面積は0.2m
2であった。
【0083】
〔実施例2〕
透過側流路部材のメッシュを、2枚重ねて使用したこと以外は実施例1と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0084】
〔実施例3〕
透過側流路部材のメッシュを、繊維径250μm、厚み0.50mm、ポリプロピレン製、メッシュ数25メッシュとしたこと以外は実施例1と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0085】
〔実施例4〕
透過側流路部材のメッシュを、2枚重ねて使用したこと以外は実施例3と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0086】
〔実施例5〕
透過側流路部材のメッシュを、繊維径70μm、厚み0.14mm、メッシュ数50メッシュとしたこと以外は実施例1と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0087】
〔実施例6〕
透過側流路部材のメッシュを、2枚重ねて使用したこと以外は実施例5と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0088】
〔実施例7〕
透過側流路部材のメッシュを、繊維径150μm、厚み0.30mm、メッシュ数50メッシュとしたこと以外は実施例1と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0089】
〔実施例8〕
透過側流路部材のメッシュを、2枚重ねて使用したこと以外は実施例7と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0090】
〔実施例9〕
透過側流路部材のメッシュを、繊維径70μm、厚み0.14mm、メッシュ数80メッシュとしたこと以外は実施例1と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0091】
〔実施例10〕
透過側流路部材のメッシュを、2枚重ねて使用したこと以外は実施例9と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0092】
〔実施例11〕
透過側流路部材のメッシュを、繊維径70μm、厚み0.14mm、メッシュ数100メッシュとしたこと以外は実施例1と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0093】
〔実施例12〕
実施例5で使用したメッシュ(繊維径70μm、メッシュ数50メッシュ)を、実施例11で使用したメッシュ(繊維径70μm、メッシュ数100メッシュ)で挟んだメッシュ(厚み0.21mm)を透過側流路部材としたこと以外は実施例1と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0094】
〔実施例13〕
封止材Aの代わりに封止材B(3M社製、両面テープ(Y-4920)幅10mm×長さ150mm)を使用したこと以外は実施例7と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0095】
〔比較例1〕
実施例1のメッシュ(繊維径263nm、メッシュ数18)を、実施例3のメッシュ(繊維径250nm、メッシュ数25)で挟んだメッシュ(厚さ0.76mm)を透過側流路部材としたこと以外は実施例1と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0096】
〔比較例2〕
実施例3のメッシュ(繊維径250nm、メッシュ数25)を、実施例5のメッシュ(繊維径70nm、メッシュ数50)で挟んだメッシュ(厚さ0.55mm)を透過側流路部材としたこと以外は実施例1と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0097】
〔比較例3〕
封止材Aの代わりに封止材Bを使用したこと以外は比較例2と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0098】
〔比較例4〕
封止材Aの代わりに封止材C(ヘンケル社製、2液エポキシ接着(90FL))を使用したこと以外は実施例7と同様にして分離膜エレメントを得た。
【0099】
〔測定方法〕
(封止部における剥離強度の決定)
【0100】
実施例および比較例で作成した分離膜エレメントの供給側封止部における平均剥離力(以下、剥離強度とも称する。)を次の手順で決定した。なお、以下に示す手順は、JIS K 6854-1に準ずる。
1. 分離膜エレメントから、容器蓋を取り外し、積層品を取り出した。
2. 取り出した積層品から、膜リーフの供給側封止部を含み、100mm長×25mm幅のサイズとなるように切り出すことにより試験片を得た。
3. 試験片の分離膜と供給側流路部材との間(剥離区間40mm~100mm)に存在する供給側封止部の平均剥離力[N]をT字剥離試験によって測定した。T字剥離試験は、試験機(島津製作所製「卓上小型試験機EZ-graph」)を用いて、温度25℃の条件下で行った。
【0101】
(圧縮試験)
実施例および比較例で作成した分離膜エレメントの透過側流路部材の圧縮変形量を次の手順で決定した。なお、以下に示す手順は、JIS K 7181に準ずる。
1. 分離膜エレメントから、容器蓋を取り外し、積層品を取り出した。
2. 取り出した積層品から膜リーフの透過側流路部材を80mm×80mmの長さになるように切り出すことにより試験片を得た。
3. 試験片の変形量は0.1mm/minの速度で900N荷重した時の透過側流路部材の圧縮変形量である。圧縮試験は、試験機(島津製作所製「卓上小型試験機EZ-graph」)を用いて、温度25℃の条件下で行った。
【0102】
(気密試験)
実施例および比較例で作成した分離膜エレメントの気密試験を次の手順で行った。
図6は、気密試験の試験装置を説明するための模式図である。
図6のうち、分離膜エレメント1の幅方向Wに平行な2つの端部をそれぞれ、第1供給口43(
図5の(b))に連通する供給部83、および第1排出口44(
図5の(b))に連通する排出部84とした。分離膜エレメント1の長さ方向Lに平行な2つの端部をそれぞれ、供給排出口45(
図6の(b))に連通する供給部85、および、第2排出口46(
図5の(b))に連通する排出部86とした。
1.
図6に示す装置を使用して、分離膜エレメント内に、室温(20℃)のN
2ガスを供給して分離膜エレメントの供給部83に200kPG(Gはゲージ圧を示す。)の圧力を加えた。当該圧力は圧力計で確認し、排出部84、86のバルブは閉じた。
2. 供給部85のバルブは閉にして、排出部86のバルブを開けて、透過したガス流量を高精度精密膜流量計(堀場製作所製「VP-Uシリーズ」)にて測定し、以下の基準で評価した。
A:膜流量計で示されるN
2透過量が40GPU以下である。
B:膜流量計で示されるN
2透過量が40GPUより大きい。
【0103】
実施例および比較例の分離膜エレメントに対する試験結果を表1に示す。
【0104】
【0105】
〔結果〕
表1より、透過側流路部材の圧縮変形量が0.40mm以下であり、かつ供給側封止部の剥離強度が1.0N以上である実施例1~13の分離膜エレメントは、いずれも優れた気密性を有しており、供給側封止部が剥離していないことが示された。また、実施例13より、圧縮変形量が0.40mm以下を満たし、剥離強度が十分であれば、封止材を変更したとしても、封止部が剥離しないことが示された。
【0106】
一方で、圧縮変形量が0.40mmより大きい比較例1~3は、例え供給側封止部の剥離強度が高かったとしても、いずれも気密性に劣っており、供給側封止部が剥離していることが示された。また、比較例4より、圧縮変形量が0.40mm以下であったとしても、剥離強度が1.0N未満であると、供給側封止部が剥離することが示された。
本発明の一態様は、水素または尿素等を製造する大規模プラントで合成される合成ガス、発電所、廃棄物処理場、セメント工場等から排出される燃焼排ガス、あるいは天然ガス、その他の排ガス等の、少なくとも酸性ガスおよび水蒸気を含む混合ガスから、CO2等の酸性ガスを分離するプロセスにおいて広範に利用することができる。
1 分離膜エレメント、10 積層体、11 第1端部、12 第2端部、20 膜積層部、21 分離膜、21a 第1分離膜(分離膜)、21b 第2分離膜(分離膜)、22 透過側流路部材、23 供給側流路部材、25 第1テープ、26 第2テープ、31 供給側封止部、32 透過側封止部、33a 封止材料、33b 封止材料、40 容器、41 ガイド部、43 第1供給口、44 第1排出口、45 供給排出口、46 第2排出口、47 上面部、48 下面部、49 側壁部、51 接着部、52 分離機能層、53 多孔質基材、81 圧力計、82 流量計、83 供給部、84 排出部、85 供給部、86 排出部。