(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025062503
(43)【公開日】2025-04-14
(54)【発明の名称】ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20250407BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20250407BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20250407BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20250407BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20250407BHJP
【FI】
C08L67/02
C08L69/00
C08K3/40
C08K3/04
C08K5/49
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171632
(22)【出願日】2023-10-02
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】牛島 隆二
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF04W
4J002CF07W
4J002CG01X
4J002CG02X
4J002CG04X
4J002DA037
4J002DH048
4J002DL006
4J002FA016
4J002FD016
4J002FD097
4J002FD208
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリカーボネート樹脂と、(C)ガラスフレークと、(D)カーボンブラックと、を含み、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が、(a1)5~30モル%のコモノマーユニットを含む変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、
(C)ガラスフレークの平均厚みが1μm以下、且つメジアン径が5~70μmであり、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、
(B)ポリカーボネート樹脂の含有量が60~100質量部であり、
(C)ガラスフレークの含有量が60~100質量部であり、
(D)カーボンブラックの含有量が0.8~15質量部である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリカーボネート樹脂と、(C)ガラスフレークと、(D)カーボンブラックと、を含み、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が、(a1)5~30モル%のコモノマーユニットを含む変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、
(C)ガラスフレークの平均厚みが1μm以下、且つメジアン径が5~70μmであり、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、
(B)ポリカーボネート樹脂の含有量が60~100質量部であり、
(C)ガラスフレークの含有量が60~100質量部であり、
(D)カーボンブラックの含有量が0.8~15質量部である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
(F)リン系化合物をさらに含む、請求項1に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載されるドライブレコーダー、バックカメラ、ADAS等の光学機器の部材や、ヘッドアップディスプレイ、液晶メーター、及びカーナビ等の表示機器の部材は、反射等による映り込みを低減するために、低光沢性であることが求められる。多くのプラスチック材料は、成形されると高光沢性の表面を形成するため、射出成形に用いる金型にシボを設けて成形品表面にシボ加工を施したり、成形品の表面につや消し剤を塗装したりして低光沢性にすることが行われている。材料自体の特性により低光沢性を実現する試みとしては、例えば、特許文献1、2等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008-540803号公報
【特許文献2】特開2018-144581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の態様を包含する。
[1](A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリカーボネート樹脂と、(C)ガラスフレークと、(D)カーボンブラックと、を含み、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が、(a1)5~30モル%のコモノマーユニットを含む変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、
(C)ガラスフレークの平均厚みが1μm以下、且つメジアン径が5~70μmであり、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、
(B)ポリカーボネート樹脂の含有量が60~100質量部であり、
(C)ガラスフレークの含有量が60~100質量部であり、
(D)カーボンブラックの含有量が0.8~15質量部である、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[2](F)リン系化合物をさらに含む、[1]に記載のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
[3][1]又は[2]に記載の樹脂組成物を含む、成形品。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示の一実施形態について詳細に説明するが、本開示の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。また、特定のパラメータについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。また、本開示に記載されている数値範囲の下限値及び/又は上限値は、その数値範囲内の数値であって、実施例で示されている数値に置き換えてもよい。数値範囲を示す「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。
各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0008】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物]
本開示のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ともいう)は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂と、(B)ポリカーボネート樹脂と、(C)ガラスフレークと、(D)カーボンブラックと、を含み、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂が、(a1)5~30モル%のコモノマーユニットを含む変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を含み、
(C)ガラスフレークの平均厚みが1μm以下、且つメジアン径が5~70μmであり、
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、
(B)ポリカーボネート樹脂の含有量が60~100質量部であり、
(C)ガラスフレークの含有量が60~100質量部であり、
(D)カーボンブラックの含有量が0.8~15質量部である。
【0009】
成形品の表面に光が入射すると、光の反射、透過、及び吸収現象が生じる。光の吸収を高めて成形品の表面における光の反射を少なくする観点から、樹脂組成物は漆黒性が優れていることが好ましい。従来、樹脂組成物にカーボンブラックを配合することにより黒着色することが行われているが、樹脂組成物の組成によっては、カーボンブラックを配合しても十分な漆黒性が得られない場合がある。また、成形品表面での反射光が多いと光沢性が高くなるため、反射光を少なくすることが好ましい。樹脂材料の光透過性を高めることにより光が成形品の内部に取り込まれ、反射光が少なくなると期待されるが、光透過性が高すぎると光沢性が高くなってしまったり、漆黒性が低下してしまったりすることがある。さらに、樹脂組成物を射出成形する際に射出速度に変化が生じると、得られる成形品の光沢性にムラが生じることがある。特に複雑な形状を有する成形品は、多段速度制御を行っても成形品の箇所によって樹脂の充填速度が異なるので、得られる成形品の光沢性にムラが生じることがある。
本開示の樹脂組成物は、上記の構成を有することにより、優れた漆黒性と低光沢性とを両立することができ、光沢ムラも少ない成形品を与えることができる。
【0010】
本開示において、「ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物」との用語は、ポリブチレンテレフタレート樹脂を含む樹脂組成物を意味する。ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量については後述する。
【0011】
<(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂>
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、(a1)5~30モル%のコモノマーユニットを含む変性ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、単に「(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂」ともいう)を含む。(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂を含むことにより、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にすることができる。加えて、カーボンブラックを配合することによる漆黒性をより高めることができる。
【0012】
(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、ジカルボン酸成分としてのテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)と、グリコール成分としての炭素数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)とを重縮合反応させて得られるポリブチレンテレフタレートを主成分とし、これに全ジカルボン酸成分100モル%に対して、他のコモノマー成分(第3成分)が5~30モル%(好ましくは7~25モル%、より好ましくは8~20モル%、さらに好ましくは10~15モル%、例えば10~13モル%)導入された共重合体である。他のコモノマー成分(第3成分)は、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体や1,4-ブタンジオール又はそのエステル形成性誘導体とは、異なる共重合性モノマー成分を意味する。(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂中のコモノマー成分(第3成分)の含有量の測定は、例えば、1H-NMRを用いて測定することができる。
【0013】
他のコモノマー成分(第3成分)として用いることができるジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0014】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0015】
他のコモノマー成分(第3成分)として用いることができるグリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0016】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2-6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0017】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に用いることができるコモノマー成分(第3成分)としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0018】
上記化合物をコモノマー成分として重縮合することにより生成するポリブチレンテレフタレート共重合体は、いずれも(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂として好適に使用できる。
一実施形態において、(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート共重合体、及び/又はアルキレン(1,4-ブタンジオールを除く)変性ポリブチレンテレフタレート共重合体を含むことが好ましく、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート共重合体を含むことがより好ましい。(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の総量(100質量%)中に、80~100質量%が好ましく、85~100質量%がより好ましく、90~100質量%がさらに好ましく、95~100質量%が特に好ましい。一実施形態において、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂のみからなるように構成されていてもよい。
【0020】
一実施形態において、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂は、(a1)変性ポリブチレンテレフタレート樹脂に加えて、(a2)ホモポリブチレンテレフタレート重合体(未変性のポリブチレンテレフタレート樹脂)を含んでいてもよい。(a2)ホモポリブチレンテレフタレート重合体の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の総量(100質量%)中に、0~20質量%であってもよく、0~10質量%であってもよく、0~5質量%であってもよい。
【0021】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、成形性を向上させる観点から、0.65~1.15dL/gであることが好ましく、0.67~1.00dL/gであることがより好ましい。異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、ウベローデ型粘度計を用いて、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定した値とする。
【0022】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量(CEG)は、本開示の目的を阻害しない限り特に限定されないが、5~30meq/kgが好ましく、10~25meq/kgがより好ましい。かかる範囲の末端カルボキシル基量のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることで、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の湿熱環境下での強度低下を抑制することができる。
【0023】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)中に、20~60質量%が好ましく、25~50質量%がより好ましく、30~40質量%がさらに好ましい。
【0024】
樹脂組成物は、後述するように、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂以外の熱可塑性樹脂を含んでいてもよいが、漆黒性に優れかつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られやすい観点から、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂の総含有量が、樹脂組成物を構成する熱可塑性樹脂の総量(100質量%)中に、80~100質量%が好ましく、85~100質量%がより好ましく、90~100質量%がさらに好ましく、95~100質量%が特に好ましい。一実施形態において、樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂のみからなるように構成されていてもよい。
【0025】
<(B)ポリカーボネート樹脂>
樹脂組成物は、(B)ポリカーボネート樹脂を含む。(B)ポリカーボネート樹脂を含むことにより、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にすることができる。
(B)ポリカーボネート樹脂としては、ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン又はジフェニルカーボネート等の炭酸エステルと、の反応により得られる重合体が挙げられる。ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。
【0026】
ジヒドロキシ化合物としては、例えば、脂環族化合物(例えば、脂環式ジオール)及びビスフェノール化合物が挙げられるが、ビスフェノール化合物であることが好ましい。
【0027】
ビスフェノール化合物としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジベンジルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン、2,2,2’,2’-テトラヒドロ3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビ-[1H-インデン]-6,6’-ジオール等のビス(ヒドロキシアリール)C1-10アルカン、好ましくはビス(ヒドロキシアリール)C1-6アルカン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)C4-10シクロアルカン;4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシアリールエーテル;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシアリールスルホン;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシアリールスルフィド;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフォキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフォキシド等のジヒドロキシアリールスルフォキシド;4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルケトン等のジヒドロキシアリールケトン等が挙げられる。
【0028】
好ましい(B)ポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネートが挙げられる。
【0029】
(B)ポリカーボネート樹脂は、ホモポリカーボネートであってもよいし、コポリカーボネートであってもよい。また、ポリカーボネート樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
(B)ポリカーボネート樹脂の溶融粘度は、流動性の観点から、ISO11443に準拠した、300℃、1000sec-1での溶融粘度として、0.40kPa・s以下が好ましく、0.35kPa・s以下がより好ましく、0.30kPa・s以下がさらに好ましい。溶融粘度は、東洋精機製作所製キャピログラフを用い、キャピラリーとして1mmφ×20mmL/フラットダイを使用し、バレル温度300℃、せん断速度1000sec-1で測定した値とする。
【0031】
(B)ポリカーボネート樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して60~100質量部であり、65~95質量部が好ましく、70~90質量部がより好ましく、75~85質量部がさらに好ましく、75~83質量部が特に好ましい。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に所定量の(B)ポリカーボネート樹脂を配合することにより、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にすることができる。非限定的なメカニズムとして、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に所定量の(B)ポリカーボネート樹脂を配合することにより、適度に透明性を高めることができ、漆黒性を低下させることなく、成形品の表面に入射した光を成形品の内部に透過させて(D)カーボンブラック等の光吸収材により透過光を吸収させることができ、成形品表面での反射光を低減できるためであると考えられる。
【0032】
一実施形態において、(B)ポリカーボネート樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、77質量部であってもよく、78質量部であってもよく、80質量部であってもよく、82質量部であってもよく、85質量部であってもよく、これらを上記数値範囲の上限値又は下限値とする範囲であってもよく、これらを組み合わせた範囲であってもよい。
【0033】
<(C)ガラスフレーク>
樹脂組成物は、(C)ガラスフレークを含む。ガラスフレークは、平均厚みが1μm以下である。また、樹脂組成物中に含まれる(C)ガラスフレークのメジアン径(D50)が、5~70μmである。平均厚みが1μm以下であり、且つメジアン径が5~70μmである(C)ガラスフレークを含むことにより、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にすることができる。
【0034】
(C)ガラスフレークの平均厚みは、0.9μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.7μm以下であってもよい。一実施形態において、(C)ガラスフレークの平均厚みは、0.01~1μmであってもよく、0.05~1μm(例えば、0.05~0.9μm、0.05~0.8μm、又は0.05~0.7μm)であってもよく、0.1~1(例えば、0.1~0.9μm、0.1~0.8μm、0.1~0.7μm、0.7~1μm、又は0.7~0.9μm)であってもよい。
(C)ガラスフレークの平均厚みは、原料メーカー値、もしくは測定して算出しても良い。例えば、株式会社セイシン企業製、動的画像解析法/粒子(状態)分析計PITA-3等により2-プロパノール溶媒を用いてCCDカメラで撮影した画像を解析し、加重平均により算出することができる。また、電子顕微鏡等を用いた直接観察により、その平均値を求めてもよい。実験データの(C)ガラスフレークの平均厚みは、樹脂組成物中の(C)ガラスフレークについて、上記の方法により測定した値である。
【0035】
樹脂組成物中に含まれる(C)ガラスフレークのメジアン径(D50)は、5~70μmであり、10~60μmが好ましく、20~50μmがより好ましい。一実施形態において、(C)ガラスフレークのメジアン径は、40μmであってもよく、41μmであってもよく、これらを上記数値範囲の上限値又は下限値とする範囲であってもよい。
本開示において、メジアン径は、樹脂組成物中の(C)ガラスフレークについて、レーザー回折・散乱法(例えば、堀場製作所製LA-960)により測定したメジアン径とする。樹脂組成物中の(C)ガラスフレークのメジアン径は、樹脂組成物又はその成形品を電気炉で600℃、4時間処理し、残った残渣についてレーザー回折・散乱法により測定することができる。
【0036】
(C)ガラスフレークの平均アスペクト比は、本開示の効果を阻害しない範囲で限定されず5~200が好ましく、20~150がより好ましく、30~100がさらに好ましい。平均アスペクト比とは、ここでは板形状の異方性を表す指標として用いるものであり、メジアン径と平均厚みの比(アスペクト比=メジアン径/平均厚み)である。メジアン径は、レーザー回折・散乱法(堀場製作所製LA-960)等により測定することができる。また、電子顕微鏡等を用いた直接観察により粒径と厚みの比を算出し、その平均値をそれぞれ求めてもよい。(C)ガラスフレークのメジアン径およびアスペクト比は、樹脂組成物からなる成形品を電気炉で600℃×4時間で処理し、残渣として残った(C)ガラスフレークについて、上記の方法により測定した値である。
【0037】
(C)ガラスフレークの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、60~100質量部であり、65~95質量部が好ましく、70~90質量部がより好ましく、75~85質量部がさらに好ましく、75~83質量部が特に好ましい。(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂に、所定の厚みを有し、且つ樹脂組成物中において所定のメジアン径を有する(C)ガラスフレークを、所定量で配合することにより、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にすることができる。非限定的なメカニズムとして、所定の厚み及びメジアン径を有する薄肉の(C)ガラスフレークは、成形時に無定形に割れて規則性のない表面を形成しやすいとともに、所定量で配合することにより成形品の表面を微細な凹凸を有する梨地状に粗化しやすいことにより、光がランダムに反射されるためであると考えられる。光がランダムに反射されると、反射された光が成形品の内部に取り込まれたり吸収されたりすることを繰り返して減衰され、それにより、漆黒性を低下させることなく光沢ムラが少ない低光沢性を実現できると考えられる。
【0038】
一実施形態において、(C)ガラスフレークの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、77質量部であってもよく、78質量部であってもよく、80質量部であってもよく、81質量部であってもよく、85質量部であってもよく、これらを上記数値範囲の上限値又は下限値とする範囲であってもよく、これらを組み合わせた範囲であってもよい。
【0039】
樹脂組成物は、後述するように、(C)ガラスフレーク以外の充填剤を含んでいてもよいが、漆黒性に優れかつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られやすい観点から、(C)ガラスフレークの含有量が、樹脂組成物に含まれる無機充填剤の総量(100質量%)中に、80~100質量%が好ましく、85~100質量%がより好ましく、90~100質量%がさらに好ましく、95~100質量%が特に好ましい。一実施形態において、樹脂組成物に含まれる無機充填剤は、(C)ガラスフレークのみからなるように構成されていてもよい。
【0040】
<(D)カーボンブラック>
樹脂組成物は、(D)カーボンブラックを含む。(D)カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等が挙げられる。(D)カーボンブラックは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。(D)カーボンブラックは、顔料(又は着色剤)として用いられるものであってもよい。
【0041】
(D)カーボンブラックのフタル酸ジブチル(DBP)吸油量は、黒色度と光の吸収性の観点からは、30~600cm3/100gが好ましく、40~550cm3/100gがより好ましく、50~500cm3/100gがさらに好ましい。一実施形態において、(D)カーボンブラックのDBP給油量は、40~100cm3/100g(例えば、50~80cm3/100g)であってもよく、100cm3/100gを超え500cm3/100g以下(例えば、100~495cm3/100g)であってもよい。フタル酸ジブチル吸油量は、JIS K6217-4:2008に準拠して測定した値とする。
【0042】
(D)カーボンブラックの平均粒子径は、5~100nmが好ましく、8~50nmがより好ましく、10~40nmがさらに好ましい。一実施形態において、(D)カーボンブラックの平均粒子径は、成形品の漆黒性をより高めて光の吸収性が高い成形品を与えやすい観点から、8~30nmが好ましく、10~30nmがより好ましい。一実施形態において、(D)カーボンブラックの平均粒子径は、13nmであってもよく、16nmであってもよく、22nmであってもよく、34nmであってもよく、これらを上記数値範囲の上限値又は下限値とする範囲であってもよく、これらを組み合わせた範囲であってもよい。
平均粒子径は、樹脂組成物中に配合される前のカーボンブラックについて、粒子1000個の電子顕微鏡観察により求めた算術平均粒子径である。
【0043】
(D)カーボンブラックの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.8~15質量部(例えば、0.9~15質量部、又は1~15質量部)であり、0.8~12質量部(例えば、0.9~12質量部、又は1~12質量部)が好ましい。(D)カーボンブラックを(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.8~15質量部の含有量で含むことにより、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にすることができる。漆黒性がより優れ、かつ光沢ムラがより少なく低光沢性がより優れるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が得られやすい観点からは、(D)カーボンブラックの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.8~11質量部(0.9~11質量部、1~11質量部)がより好ましく、0.8~10質量部がさらに好ましく、0.8~8質量部がよりさらに好ましく、1~6質量部であってもよい。一実施形態において、(D)カーボンブラックの含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、1.3質量部であってもよく、2.6質量部あってもよく、5.3質量部であってもよく、これらを上記数値範囲の上限値又は下限値とした範囲であってもよく、これらを組み合わせた範囲であってもよい。
【0044】
<(F)リン系化合物>
樹脂組成物は、必要に応じて、(F)リン系化合物を含んでいてもよい。(F)リン系化合物を含むことにより、射出成型時の離型性や成形品の耐熱性を高めることができる。
【0045】
リン系化合物としては、有機ホスファイト系化合物、有機ホスフォナイト系化合物、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩等が挙げられる。
有機ホスファイト化合物としては、例えば、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
有機ホスフォナイト系化合物としては、例えば、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスフォナイト等が挙げられる。
リン酸アルカリ金属塩としては、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム[リン酸一ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム)、リン酸二ナトリウム(リン酸水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)等]等のアルカリ金属塩が挙げられる。
リン酸アルカリ土類金属塩としては、リン酸カルシウム[第一リン酸カルシウム(リン酸二水素カルシウム、ビス(リン酸二水素)カルシウム一水和物等)、第二リン酸カルシウム(リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物等)等]、リン酸マグネシウム(リン酸水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム等)等のアルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩は、無水物又は含水物のいずれであってもよい。(F)リン系化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
これらのリン系化合物のうち、リン酸アルカリ金属塩、リン酸アルカリ土類金属塩、及び有機ホスファイトから選択される1以上が好ましい。
【0047】
(F)リン系化合物の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0.01~2.0質量部が好ましく、0.05~1.0質量部がより好ましい。
【0048】
(その他の樹脂成分)
樹脂組成物は、本開示の効果を阻害しない範囲で、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂及び(B)ポリカーボネート樹脂以外のその他の熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。その他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、アクリロニトリルスチレン樹脂等が挙げられる。その他の熱可塑性樹脂の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0~20質量部が好ましく、0~10質量部が好ましく、0~5質量部であってもよい。
【0049】
樹脂組成物は、一般に耐衝撃性を改善するために用いられるエラストマ(例えば、ABS、コアシェルエラストマ等)を含んでいてもよいが、ポリブチレンテレフタレートやポリカーボネートとの屈折率差が大きいと白化しやすいため、成形品の漆黒性をより高めるために、エラストマの屈折率は1.55~1.60程度が好ましい。例えば、粒径が1~10μm程度のコアシェルエラストマは光沢を低下させる効果があるが、シェル等に使用されているアクリル系樹脂の屈折率が低く、白化しやすいためその含有量は、樹脂組成物の総量(100質量%)中に、2質量%未満が好ましく、1質量%未満がより好ましい。
【0050】
(その他の充填剤)
樹脂組成物は、必要に応じて、(C)ガラスフレーク以外のその他の充填剤を含んでいてもよい。充填剤としては、目的に応じて、繊維状充填剤、粉粒状充填剤(カーボンブラックを除く)、及び板状充填剤(ガラスフレークを除く)を用いることができる。その他の充填剤の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、0~60質量部が好ましく、0~50質量部が好ましく、0~30質量部が好ましく、0~20質量部であってもよい。
【0051】
ガラス繊維は、射出成形による成形品において配向しやすく、乱反射しにくいため、光沢にムラを生じやすい。一実施形態において、低光沢性のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を容易に実現しやすい観点から、樹脂組成物中のガラス繊維の含有量は、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して、20質量部未満が好ましく、10質量部未満がより好ましく、5質量部未満であることがさらに好ましく、1質量部未満であることが特に好ましい。
【0052】
(添加剤)
樹脂組成物には、本開示の効果を害さない範囲で、上記各成分の他、一般に熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂に添加される公知の添加剤、即ち、バリ抑制剤、離型剤、滑剤(例えば、脂肪酸エステル等)、可塑剤、難燃剤、染料や顔料等の着色剤(カーボンブラックを除く)、結晶化促進剤、結晶核剤(例えば、窒化硼素等)、各種酸化防止剤、熱安定剤、耐候性安定剤、腐食防止剤等を配合してもよい。
【0053】
樹脂組成物の調整方法は、限定されず、例えば、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練して押出すことによりペレットとする方法や、組成の異なるペレット(マスターバッチ)を調製しそのペレットを所定量混合する方法等が挙げられる。ペレットは、例えば、脆性成分(ガラスフレーク等)を除く成分を溶融混合した後に、脆性成分を混合することにより調製してもよい。
【0054】
樹脂組成物は、低光沢性に優れると共に、光沢ムラが少ない。一実施形態において、樹脂組成物は、成形品のJIS-Z-8741に準拠した60°の光沢度が、27以下が好ましく、23以下がより好ましい。一実施形態において、樹脂組成物は、射出速度30mm/s、80mm/s、又は120mm/sで射出成形した成形品が、いずれも、JIS-Z-8741:1997に準拠した60°の光沢度が、27以下が好ましく、23以下がより好ましい。光沢度は、光沢計(例えば、日本電色工業(株)製、ハンディグロスメータPG-II)を用いて60°の角度について測定できる。
【0055】
一実施形態において、樹脂組成物は、漆黒性に優れている。一実施形態において、樹脂組成物は、成形品のJIS-Z-8781-4:2013に準拠したL*値が、14以下が好ましく、13以下がより好ましい。漆黒性に優れているので、光を吸収して反射を防ぐことができる。一実施形態において、樹脂組成物は、成形品の任意に選択した3箇所において上記方法で測定したL*値が、いずれも、14以下が好ましく、13以下がより好ましい。
【0056】
(用途)
本開示の樹脂組成物は、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少なく低光沢性であるので、各種光学機器用部材や表示機器用部材の製造に好ましく用いることができる。例えば、ドライブレコーダー、バックカメラ、ADAS、ヘッドアップディスプレイ、液晶メーター、カーナビ等に用いられる部材の製造に好ましく用いることができる。
【0057】
[成形品]
成形品は、上記したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を含む。上記のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を含むので、漆黒性及び低光沢性に優れており、かつ成形品の部位による光沢ムラが少ない。
【0058】
一実施形態において、成形品は、JIS-Z-8741に準拠した60°の光沢度が、27以下が好ましく、23以下がより好ましい。一実施形態において、成形品は、任意に選択した3箇所において上記方法で測定した60°の光沢度が、いずれも、27以下が好ましく、23以下がより好ましい。
【0059】
一実施形態において、成形品は、JIS-Z-8781-4に準拠したL*値が、14以下が好ましく、13以下がより好ましい。一実施形態において、成形品は、任意に選択した3箇所において上記方法で測定したL*値が、いずれも、14以下が好ましく、13以下がより好ましい。
【0060】
成形品は、より低光沢性を高めるために、表面にシボ加工が施されていてもよいが、上記樹脂組成物を含むことにより低光沢性に優れておりかつ光沢ムラが少ないので、表面にシボ加工が施されていなくてもよい。成形品は、より低光沢性を高めるために、表面につや消し剤が塗工されていてもよいが、上記樹脂組成物を含むことにより低光沢性に優れておりかつ光沢ムラが少ないので、表面につや消し剤が塗工されていなくてもよい。つや消し剤としては、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系塗料等があげられる。
【0061】
成形品の成形方法は、限定されず、押出成形、射出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、回転成形、ガスインジェクションモールディング等の慣用の方法で成形してもよいが、通常、射出成形により成形される。射出成形時の金型温度は、通常40~120℃、好ましくは50~80℃、さらに好ましくは60~80℃程度である。
【実施例0062】
以下に実施例を示して本開示を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本開示の解釈が限定されるものではない。
【0063】
<材料>
A-1:ポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリプラスチックス株式会社製、固有粘度(IV)0.69dL/g、末端カルボキシル基量(CEG)16meq/kg)
A-2:イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート樹脂(ポリプラスチックス株式会社製、イソフタル酸12.5mol%変性ポリブチレンテレフタレート樹脂)
B:ポリカーボネート樹脂(帝人株式会社製、パンライトL-1225L)、溶融粘度(300°、1000sec-1)0.27kPa・s
C-1:ガラスフレーク(日本板硝子株式会社製、ファインフレーク MEG160FY-M01)、平均厚み0.7μm、平均粒子径160μm(メーカーカタログ値)
C-2:ガラスフレーク(日本板硝子株式会社製 REFG-108)、平均厚み5μm、平均粒子径600μm(メーカーカタログ値)
C-3:チタン酸カリウム(大塚化学株式会社製、ティスモN102)
C-4:タルク(林化成株式会社製、ミクロンホワイトUpn HS-T0.8)、平均粒子径2.7μm
C-5:タルク(松村産業株式会社製、クラウンタルク ID)、平均粒子径19μm
D-1:ケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、EC600JD)、平均粒子径34nm、DBP吸収量495cm3/100g
D-2:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック♯750B)、平均粒子径22nm、DBP吸収量116cm3/100g
D-3:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック♯960B)、平均粒子径16nm、DBP吸収量69cm3/100g
D-4:カーボンブラック(三菱ケミカル株式会社製、カーボンブラック♯2600)、平均粒子径13nm、DBP吸収量77cm3/100g
E-1:コアシェルエラストマ(株式会社カネカ製、カネエースMP90)
E-2:コアシェルエラストマ(アイカ工業株式会社製、スタフィロイド PO-0935)
F:第一リン酸カルシウム(太平化学産業株式会社製、エステル交換抑制剤)
G:窒化硼素(水島合金鉄株式会社製、核剤)
H:脂肪酸エステル(理研ビタミン株式会社製、リケマールB-150、滑剤)
【0064】
[実施例1~10、比較例1~21]
表1、2に示す割合で原料を混合し、二軸押出機を用いて、シリンダー温度260℃、スクリュ回転150rpmで溶融混練して押出し、実施例1~10、比較例1~21のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を作製した。
得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いて、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、保圧60MPaで、射出速度を30mm/s、80mm/s、又は120mm/sとして、3つの平板状の成形品(寸法:70mm×50mm×厚み3mm)を成形した。
【0065】
[測定及び評価]
以下の方法により、得られた各成形品の60°光沢度、及び明度L*を測定した。結果を表1、2に示す。
【0066】
<60°光沢度>
日本電色工業株式会社製、ハンディグロスメータPG-II(60°)を用いて、JIS-Z-8741:1997に準拠して光沢度(%)を測定した。以下の基準に基づき、低光沢性、及び光沢ムラを評価した。
(低光沢性)
3:射出速度が異なる3つの成形品の全ての光沢度が23%以下(低光沢性が優れており光沢ムラが少ない)
2:射出速度が異なる3つの成形品の全ての光沢度が27%以下(低光沢性が良好)
1:射出速度が異なる3つの成形品のうちの1以上の光沢度が27%を超える(低光沢性が不良(光沢度が高い))
(光沢ムラ)
3:射出速度が異なる3つの成形品の光沢度の最大値と最小値の差が5以下
2:射出速度が異なる3つの成形品の光沢度の最大値と最小値の差が5を超え10以下
1:射出速度が異なる3つの成形品の光沢度の最大値と最小値の差が10を超える
【0067】
(明度L*)
スガ試験機株式会社製SM-P型カラーコンピューターを用いて、JIS-Z-8781-4:2013に準拠してL*値を測定した。以下の基準に基づき、漆黒性を評価した。
3:射出速度が異なる3つの成形品の全てのL*値が13以下(漆黒性が優れている)
2:射出速度が異なる3つの成形品の全てのL*値が13を超え14以下(漆黒性が良好)
1:射出速度が異なる3つの成形品のうちの1以上のL*値が14を超える
【0068】
(ガラスフレークのメジアン径)
ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品(上記成形品のうち、射出速度を80mm/sで成形した成形品)を電気炉で600℃、4時間処理し、残った残渣を堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置LA-960にて、ガラスフレークのメジアン径を算出した。
【0069】
【0070】
表1に示すように、実施例1~10の樹脂組成物は、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少ない低光沢性の成形品を与えることができる。
本開示の樹脂組成物は、漆黒性に優れ、かつ光沢ムラが少なく低光沢性であるので、各種光学機器用部材や表示機器用部材の製造に好ましく用いることができ、産業上の利用可能性を有している。