(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006262
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】インク、インクを印刷して形成された印刷層を有する印刷物およびインクを印刷して得られる印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/037 20140101AFI20250109BHJP
C09D 11/32 20140101ALI20250109BHJP
【FI】
C09D11/037
C09D11/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106944
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【弁理士】
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】李 丹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 厚美
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD03
4J039AD09
4J039AE04
4J039BA21
4J039BC50
4J039BE02
4J039BE12
4J039CA06
4J039DA02
4J039EA16
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA01
4J039GA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】本発明は、天然色素を用いたインクの提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも着色剤及び溶媒を含有し、前記着色剤が、フィコシアニンを含有することを特徴とするインク、当該インクを印刷して形成された印刷層を有する印刷物、およびインクを印刷して得られる印刷物の製造方法に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも着色剤及び溶媒を含有し、
前記着色剤が、フィコシアニンを含有することを特徴とするインク。
【請求項2】
前記フィコシアニンが、スピルリナ属の藍藻類由来のフィコシアニンである、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記フィコシアニンが、リナブルーG1(商品名、DICライフテック社製)である、請求項1又は2に記載のインク。
【請求項4】
前記着色剤が、水に不溶化(レーキ化)したフィコシアニンを含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク。
【請求項5】
前記着色剤が、フィコシアニンと、シリカ構造体とが複合化してなるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載のインク。
【請求項6】
前記シリカ構造体が、化学結合がQ4結合で構成されているシリカを主成分とする相と空気相とからなる2相連続型シリカ構造体である、請求項5に記載のインク。
【請求項7】
さらに分散樹脂を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のインク。
【請求項8】
さらにバインダーを含有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のインク。
【請求項9】
前記バインダーが、バイオマス資源由来の化合物を用いて製造された樹脂を含有する、請求項8に記載のインク。
【請求項10】
前記バイオマス資源由来の化合物が、ジオール化合物である、請求項9に記載のインク。
【請求項11】
前記溶媒が有機溶媒を含有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のインク。
【請求項12】
前記溶媒が水又は水性媒体を含有する、請求項1~11のいずれか一項に記載のインク。
【請求項13】
さらにpH調整剤を含有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のインク。
【請求項14】
インクジェット印刷用、フレキソ印刷用、又はグラビア印刷である、請求項1~13のいずれか一項に記載のインク。
【請求項15】
紙基材への印刷用である、請求項1~14のいずれか一項に記載のインク。
【請求項16】
プラスチック基材への印刷用である、請求項1~14のいずれか一項に記載のインク。
【請求項17】
脱墨用である、請求項1~16のいずれか一項に記載のインク。
【請求項18】
食品用、化粧品用、工業用又は医薬品用である、請求項1~17のいずれか一項に記載のインク。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか一項に記載のインクを印刷して形成された印刷層を有する印刷物。
【請求項20】
インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、又はグラビア印刷法によって、紙基材またはプラスチック基材上に、請求項1~19のいずれか一項に記載のインクを印刷して得られる印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、インクを印刷して形成された印刷層を有する印刷物およびインクを印刷して得られる印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インク、塗料、化粧料等種々の用途に色を付与するために、染料や顔料といった色材は広く使用されている。これらの中でも青色1号、黄色5号などの合成着色料は食品用途にも使用されてきた。
近年、その発がん性等の問題から、合成着色料を忌避する傾向が強く、より安全性が高いと思われる天然色素に対しての期待が大きくなっている。
昨今では、上記のような食品用途のみならず工業用途においても、天然由来素材への要求が高まっており、包装材や緩衝材の着色料として天然色素の使用が求められている。工業用染料で着色した包装紙や緩衝材を食品の容器として使用する場合、雨水等の水により染料成分の色流れや色落ちが原因で接触していた食品が汚染するなどの問題が起こっていた。
【0003】
例えば、青色を呈する天然色素として藻類色素のフィコシアニンがある。フィコシアニンは蛋白質結合色素であり、藍藻類のスピルリナ等から抽出することができることが知られている。フィコシアニンは鮮明な青色を呈する色素であり、サステナブル色素として市場の期待も大きい。
【0004】
特許文献1には、フィコシアニン(A)と、ヒドロキシ基を1つ以上含む多価カルボン酸(B)と、スクロースエステル及びポリグリセリンエステル群から選ばれる少なくとも一種のHLB15以上の非イオン性乳化剤(C)とを含有することを特徴とする、酸性色素材水溶液が記載されており、当該色素材水溶液を食品飲料類、錠剤等の医薬品や化粧品に用いることが開示されている。
【0005】
しかしながら、フィコシアニンを工業用顔料に配合した場合の研究は十分に行われているとはいえず、その有用性の解明・活用が十分に行われていないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/129745号公報
【特許文献2】特開平11 299450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明が解決しようとする課題は、フィコシアニンを用いたインク、当該インクを印刷して形成された印刷層を有する印刷物および当該インクを印刷して得られる印刷物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
インクは、少なくとも着色剤及び溶媒を含有し、着色剤が、フィコシアニンを含有する。
【0009】
インクは、フィコシアニンが、スピルリナ属の藍藻類由来のフィコシアニンである。
【0010】
インクは、フィコシアニンが、リナブルーG1(商品名、DICライフテック社製)である。
【0011】
インクは、着色剤が、水に不溶化(レーキ化)したフィコシアニンを含有する。
【0012】
インクは、着色剤が、フィコシアニンと、シリカ構造体とが複合化してなるものである。
【0013】
インクは、シリカ構造体が、化学結合がQ4結合で構成されているシリカを主成分とする相と空気相とからなる2相連続型シリカ構造体である。
【0014】
インクは、さらに分散樹脂を含有する。
【0015】
インクは、さらにバインダーを含有する。
【0016】
インクは、バインダーが、バイオマス資源由来の化合物を用いて製造された樹脂を含有する。
【0017】
インクは、バイオマス資源由来の化合物が、ジオール化合物である。
【0018】
インクは、溶媒が有機溶媒を含有する。
【0019】
インクは、溶媒が水又は水性媒体を含有する。
【0020】
インクは、さらにpH調整剤を含有する。
【0021】
インクは、インクジェット印刷用、フレキソ印刷用、又はグラビア印刷である。
【0022】
インクは、紙基材への印刷用である。
【0023】
インクは、プラスチック基材への印刷用である。
【0024】
インクは、脱墨用である。
【0025】
インクは、食品用、化粧品用、工業用又は医薬品用である。
【0026】
印刷物は、インクを印刷して形成された印刷層を有する。
【0027】
印刷物の製造方法は、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、又はグラビア印刷法によって、紙基材またはプラスチック基材上に、インクを印刷して得られる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、フィコシアニンを用いたインク、当該インクを印刷して形成された印刷層を有する印刷物および当該インクを印刷して得られる印刷物の製造方法を提供できるという格別顕著な技術的効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0030】
本発明は、少なくとも着色剤及び溶媒を含有し、前記着色剤が、フィコシアニンを含有することを特徴とするインクである。
【0031】
本発明で使用するフィコシアニン(phycocyanin)とは、蛋白質結合色素であり、発色団としてフィコシアノビリンを有する。フィコシアニンは、フィコシアノビリンとタンパクが結合した構造を有する。
【0032】
本発明に係るフィコシアニンとしては、例えば、藍藻類由来のフィコシアニン、紅藻類由来のフィコシアニン、クリプト藻由来のフィコシアニン等の藻類由来のフィコシアニン等が挙げられ、中でも、大量に採取できることから藍藻類由来のフィコシアニンが好ましい。
【0033】
藍藻類としては、例えば、スピルリナ(Spirulina)属、アルスロスピラ(Arthrospira)属、アファニゾメノン(Aphanizomenon)属、フィッシェレラ(Fisherella)属、アナベナ(Anabaena)属、ネンジュモ(Nostoc)属、シネコキスチス(Synechocystis)属、シネココッカス(Synechococcus)属、トリポスリクス(Tolypothrix)属、スイゼンジノリ(Aphanothece)属、マスティゴクラディス(Mastigoclaus)属、プルロカプサ(Pleurocapsa)属等の藍藻類が挙げられる。中でも、工業的規模で生産され、その安全性が確認されているスピルリナ属およびアルスロスピラ属の藍藻類が好ましく、スピルリナ属の藍藻類がより好ましい。
【0034】
フィコシアニンの原料は特に限定されるものではないが、スピルリナ、藍藻、紅藻、クリプト藻などフィコシアンを含有する藻類などの生物由来の材料から得られたものを用いることができ、好ましくは藍藻から得られたフィコシアニン、更に好ましくはスピルリナから得られたフィコシアニンを用いることができる。
【0035】
フィコシアニンの原料として用いるスピルリナは、藍藻綱ユレモ目の単細胞藻類であり例えば、スピルリナ・ゲイトレリ、スピルリナ・プラテンシス、スピルリナ・マキシマ、スピルリナ・メイヤー、スピルリナ・ラキシシマ、スピルリナ・アルダリア等が挙げられる。本発明でのスピルリナはその起源を特に限定されるものではなく、天然物および人工培養物を適宜用いることができる。
【0036】
本発明で用いるフィコシアニンは、前記スピルリナ、藍藻、紅藻、クリプト藻などを抽出して得ることができる。フィコシアニンを抽出するための方法としては、フィコシアニンが得られる方法であれば特に限定されるものではなく、破砕処理、抽出処理、圧搾処理、遠心分離処理、超臨界抽出処理など公知の方法を単独または組み合わせることができる。また、特開2003-342489号公報や特許4677250号公報に記載の方法など公知の抽出法を用いることができる。
【0037】
フィコシアニンを抽出するために用いる抽出溶媒としては、水または有機溶媒から選択される一種または二種以上を組み合わせて用いてよく、これらの抽出溶媒としては例えば水、エタノール、メタノール等のアルコール類等の有機溶媒を用いることができ、好ましくは水、エタノール及びこれらの混液が用いられる。また、これらの抽出溶媒で抽出する際には抽出効率をあげるために、各種添加物を本発明の効果を損なわない範囲で加えてもよい。
【0038】
フィコシアニンを抽出するために使用する抽出溶媒の量は、原料となるスピルリナなどの藻類に対して好ましくは1~1000倍量程度、さらに好ましくは5~200倍量程度である。尚、抽出方法は特に制限されるものではないが、通常、抽出温度は常圧下で10~50度までの範囲であれば良く、抽出操作は1回または複数回行ってもよい。フィコシアニンの抽出を複数回行う場合には、抽出後の残渣に再度新鮮な抽出溶媒を添加し、抽出操作を施すこともできるし、抽出溶媒を複数回抽出原料に接触させてもよい。必要ならば、更に遠心分離やろ過などの精製処理を加えても良く、エバポレーターのような減圧濃縮装置や加熱による溶媒除去等により、濃縮・乾燥することができる。
【0039】
本発明の実施例で用いているフィコシアニンは、安定化剤と混合した市販品であるリナブルーG1(DICライフテック株式会社製、トレハロース55%、スピルリナ色素40%、クエン酸三ナトリウム5%)である。これらは、特開平11-299450号公報に記載しているように、トレハロースは、熱安定性を上げるため、クエン酸は、pH調整剤として用いられている。
【0040】
前記着色剤が、水に不溶化(レーキ化)したフィコシアニンを含有してもよい。
【0041】
前記着色剤が、フィコシアニンと、シリカ構造体とが複合化してなるものであってもよい。
【0042】
前記シリカ構造体が、化学結合がQ4結合で構成されているシリカを主成分とする相と空気相とからなる2相連続型シリカ構造体であってもよい。
【0043】
シリカの化学結合がQ4結合で構成されているということは、実質的にシラノール基を有さないことを意味する。シラノール基は親水性であり、水への親和性が高い官能基である。このため、例えば、水溶性の色素とシラノール基を有するシリカ化合物とを併用した場合には、シリカ化合物が水を吸着あるいは吸収することによって当該色素がシリカから外れやすくなり、結果として滲みを起こす原因にもなりうると考えられる。一方、疎水性の強いQ4結合で構成されるシリカは、水溶性の色素を表面に吸着させることは難しい。このような中で、フィコシアニンの特異的な構造が、本願での2相共連続型シリカ構造体と相互作用を起こすことができ、結果として、フィコシアニンと2相共連続型シリカ構造体との複合体を簡便な方法で調整でき、これが非水溶性色素として用いることができることを見出したのが、本発明である。
【0044】
前記2相共連続型シリカ構造体としては、前述のようにシラノール基を実質的に有さないものであって、空気相とシリカ相とが共連続型であればよく、その他については特に限定されるものではない。
【0045】
このような2相共連続型シリカ構造体を得るための簡便な方法としては、既存のシリカ合成法で得るシリカそのものを前駆体原料とし、高温昇華性を示す金属酸化物とシリカとの親和性を利用し、シラノール基近傍に該金属酸化物の蒸気を浸透させ、そこでシリカを削り、シリカの化学結合をQ4結合にするとともにその構造体の外表面から内部全体までに空洞トンネルを貫通させ、シリカと空気の2相がお互いに連続相とする方法が挙げられる。
【0046】
本発明のインクは、さらに分散樹脂を含有していてもよい。
分散樹脂は、着色剤の周りに吸着することで、着色剤に溶媒中での分散安定性を付与するものである。ポリビニルアルコール類、ポリビニルピロリドン類、アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル酸-ポリウレタン共重合体、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体などのスチレン-アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合体(ハーフエステル化又はエステル化されたマレイン酸を原料とする樹脂も含む)、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン-アクリル酸共重合体、及び該水性樹脂の塩が挙げられる。これらの樹脂が有するカルボキシル基は、親水性基としてだけでなく、架橋性官能基としての機能も持つため、後述する架橋処理により光沢向上、耐擦性向上等が期待できる。
分散樹脂としては、例えばアニオン性基を有する樹脂を使用することができる。前記アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられる。
【0047】
本発明のインクは、さらにバインダーを含有していてもよい。
バインダー樹脂は、適切な顔料親和性と分散性を有し、印刷インキに要求されるレオロジー特性を有する樹脂全般をいう。例えば、非反応性の樹脂としては、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、セルロース誘導体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアマイド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体等を挙げられる。また、分子中に少なくとも1つ以上の重合性基を有する反応性の樹脂としては、エポキシアクリレート化合物、ウレタンアクリレート化合物、ポリエステルアクリレート化合物等が挙げられる。バインダー樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記バインダーが、バイオマス資源由来の化合物を用いて製造された樹脂を含有していてもよい。
前記バイオマス資源由来の化合物としては、ジオール化合物、プロピレン、エチレン、モノエチレングリコール、テレフタル酸、セバシン酸、ヘキサメチレンジアミン、イソソルバイド、ヒドロキシアルカン酸、乳酸、アスパラギン酸等のアミノ酸、スクシンイミド等が挙げられる。これら化合物を化学合成、発酵等することにより樹脂が得られる。
【0049】
本発明のインクにおいて、前記溶媒が有機溶媒を含有していてもよい。前記有機溶媒としては、特に限定されず、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブチレングリコール、チオジエチレングリコール、グリセリン等や、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0050】
前記溶媒が水又は水性媒体を含有していてもよい。水性インクの場合、水を主溶媒として用いるが、ノズル詰まりを防止する観点から、水中の硬水成分(多価金属塩類)を除いた水を用いることが好ましい。また、必要に応じてメチルエチルケトン、メタノール、エタノール等の低級アルコール、酢酸エステル等の低沸点有機溶媒を混合して用いることができる。
【0051】
本発明のインクは、さらにpH調整剤を含有していてもよい。pH調整剤としては無機系、有機系のアルカリまたは無機系、有機系の酸を用いることができ、具体的にはアルカリとして水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ジエタノールアミン、酸として燐酸、硫酸アンモニウム、グリコール酸等を挙げることができる。油性インクの場合は、特に、酢酸、有機アミンなどを好適に用いることができる。
【0052】
本発明のインクは、インクジェット印刷用、フレキソ印刷用、又はグラビア印刷用であってもよい。
【0053】
フィコシアニン組成物をインクの着色剤として使用する場合には、従来これらの用途に使用される着色剤あるいはフィラーと同様の使用方法が適用できる。この時、本発明のフィコシアニン組成物、特に複合体となっている非水溶性色素を、熱可塑性樹脂のみに分散させてもよいが、熱可塑性樹脂を必須成分として含有する印刷インキ用ビヒクル等に分散させることも出来る。
【0054】
インクジェット印刷用インクとして使用する場合に組み合わせる樹脂としては、従来公知の水溶性樹脂または油溶性樹脂を用いることができる。水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエステル系樹脂、水溶性シリコーン変性アルキッド樹脂、水溶性変性エポキシ樹脂、水溶性ナイロン樹脂、水溶性メラミン樹脂などが好適に用いられる。油溶性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メタアクリル系樹脂などが好適に用いられる。
【0055】
またグラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ用ビヒクルの場合は、たとえばロジン類、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース等から選ばれる一種以上の樹脂を10~50(質量)%、アルコール類、トルエン、n-ヘキサン、酢酸エチル、セロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ等の溶剤30~80(質量)%の原料等から製造される。
【0056】
本発明のインクは、紙基材への印刷用であってもよい。
【0057】
本発明のインクは、プラスチック基材への印刷用であってもよい。プラスチック基材への印刷に用いる場合には、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリ塩化ビニル樹脂等の、射出成形やプレス成形等の熱成形用の熱可塑性樹脂(プラスチック)が用いられるが、本発明のインクはこれらの樹脂に従来公知の方法で練り込んで使用することができる。
【0058】
本発明のインクは、脱墨用であってもよい。
【0059】
本発明のインクは、食品用、化粧品用、工業用又は医薬品用であってもよい。
【0060】
本発明は、上記インクを印刷して形成された印刷層を有する印刷物であってもよい。
【0061】
本発明は、インクジェット印刷法、フレキソ印刷法、又はグラビア印刷法によって、紙基材またはプラスチック基材上に、上記インクを印刷して得られる印刷物の製造方法であってもよい。
【0062】
以下に、配合例をもって本発明をより詳しく説明するが、本発明は、これらの配合例に限られるものではない。
【0063】
インク配合例1
リナブルーG1(DICライフテック株式会社製、トレハロース55%、スピルリナ色素40%、クエン酸三ナトリウム5%) 0.5~20質量%
アクリル系分散樹脂 0.1~10質量部
ポリ(メタ)アクリル酸エステルインダー樹脂 0.1~10質量%
防腐剤 0~5質量%
表面張力調整剤 0~5質量%
水性溶媒 残部
【0064】
インク配合例2
リナブルーG1(DICライフテック株式会社製、トレハロース55%、スピルリナ色素40%、クエン酸三ナトリウム5%) 0.5~20質量%
ポリウレタン樹脂分散樹脂 0.1~10質量部
ポリウレタン樹脂バインダー樹脂 0.1~10質量%
防腐剤 0~5質量%
表面張力調整剤 0~5質量%
水性溶媒 残部
【0065】
インク配合例3
リナブルーG1(DICライフテック株式会社製、トレハロース55%、スピルリナ色素40%、クエン酸三ナトリウム5%) 0.5~20質量%
スチレン-アクリル樹脂分散樹脂 0.1~10質量部
ポリエステルアクリレート化合物バインダー樹脂 0.1~10質量%
防腐剤 0~5質量%
表面張力調整剤 0~5質量%
水性溶媒 残部
【0066】
また、上記配合例においてリナブルーG1を、フィコシアニンとシリカ構造体とが複合化してなるフィコシアニン粉体に変更することができる。
シリカ構造体と複合化したフィコシアニン粉体は、たとえば、100mLのナスフラスコに、後述する製造例A1~A3の原料と撹拌子を加えた後、室温(20℃)で、溶液を10分間攪拌し混ぜ合わせ、遮光条件下、24時間静置する。混合物をろ紙で濾過し、イオン交換水200mLで洗浄液に色がつかなくなるまで洗浄し、濾過後の固体を真空乾燥機(740mmHg)で20℃、12時間乾燥することにより粉体を得た。
【0067】
製造例A1
シリカ構造体 500mg
リナブルーG1(DICライフテック株式会社製、トレハロース55%、スピルリナ色素40%、クエン酸三ナトリウム5%) 1250mg
イオン交換水 5mL
【0068】
製造例A2
シリカ構造体 500mg
リナブルーG1(DICライフテック株式会社製、トレハロース55%、スピルリナ色素40%、クエン酸三ナトリウム5%) 1250mg
エチレングリコール水溶液 5mL
【0069】
製造例A3
シリカ構造体 500mg
ブリリアントブルーFCF(青色染料、関東化学株式会社製) 500mg
イオン交換水 5mL