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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006294
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】乾燥畜糞の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05F 3/00 20060101AFI20250109BHJP
   C05G 5/10 20200101ALI20250109BHJP
   C05F 5/00 20060101ALI20250109BHJP
   C05F 15/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C05F3/00
C05G5/10
C05F5/00
C05F15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023106999
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小橋 一裕
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA02
4H061AA03
4H061CC36
4H061CC38
4H061CC42
4H061FF08
4H061GG19
4H061GG26
4H061GG27
4H061GG43
4H061GG48
4H061GG52
4H061LL02
4H061LL25
4H061LL26
(57)【要約】
【課題】畜糞(鶏糞、牛糞,豚糞等)の乾燥を最小限の設備で実施できる、より簡便な乾燥畜糞の製造方法を提供する。
【解決手段】畜糞と造粒剤とを含有する畜糞組成物を、乾燥及び造粒化することにより乾燥畜糞を得る、乾燥畜糞の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜糞と造粒剤とを含有する畜糞組成物を、乾燥及び造粒化することにより乾燥畜糞を得る、乾燥畜糞の製造方法。
【請求項2】
畜糞と造粒剤とを配合して畜糞組成物を得る配合工程と、
前記畜糞組成物を乾燥する乾燥工程と、
を含む、請求項1に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項3】
前記畜糞が、鶏糞、牛糞、及び豚糞からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項4】
前記鶏糞が、採卵鶏(レイヤー)由来の鶏糞である、請求項3に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項5】
前記造粒剤が、天然有機系造粒剤、合成有機系造粒剤、及び無機系造粒剤からなる群より選ばれる1種以上を含む造粒剤である、請求項1又は2に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項6】
前記造粒剤が廃糖蜜である、請求項5に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項7】
前記造粒剤が、前記畜糞100質量部に対して1~20質量部である、請求項1又は2に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項8】
前記乾燥工程において、30~120℃の温風を用いて前記畜糞組成物を乾燥する、請求項1又は2に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項9】
前記乾燥工程において、密閉条件下にて攪拌しながら、前記畜糞組成物を乾燥する、請求項8に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項10】
前記乾燥工程が、密閉型縦型発酵機によって実施される、請求項9に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項11】
前記乾燥畜糞の含水率が、15~50質量%である、請求項1又は2に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【請求項12】
前記乾燥畜糞の全重量に対する粒径1.40mm以下の乾燥畜糞の割合が、30~60質量%である、請求項1又は2に記載の乾燥畜糞の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥畜糞の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、農業分野及び園芸分野においては、肥料の主要な成分(窒素、リン酸、及びカリウム)の供給源である尿酸、リン酸アンモニウム、及び塩化カリウム等の価格高騰により、窒素、リン酸、カリウム等を含む乾燥畜糞が、肥料の原料として注目されている。
【0003】
乾燥畜糞は、畜糞(鶏糞、牛糞,豚糞等)を、乾燥処理(乾燥処理に発酵処理を含めることもある)を経て得るものであるが、当該乾燥処理中に臭気が発生するため乾燥場所が限られてしまう、という問題がある。特許文献1には、畜糞、コーヒー粕、及びその他添加物を発酵装置にて好気条件下で発酵した後、乾燥装置で乾燥することで臭気の発生を抑制した乾燥畜糞の製造方法が開示されている。
【0004】
また、乾燥畜糞は、粉末状の物質であるため田畑への散布時に飛散し、均一な散布が難しい、という問題がある。当該飛散の対策としては、造粒化及びペレット化することが挙げられる。特許文献2には、押出造粒装置を使用する乾燥畜糞の造粒方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/006285号
【特許文献2】国際公開第2019/038820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されている製造方法は、好気条件下での発酵工程及び乾燥工程を別々に行う必要があるため、乾燥畜糞の製造に時間がかかるとともに、乾燥設備だけでなく発酵設備も必要になるという問題がある。また、発酵工程を経て得られた発酵物質の保管場所の確保の必要が生じる、並びに当該発酵物質を乾燥設備内に搬入するための余分な工数が発生する、といった問題も生じうる。
【0007】
特許文献2に開示されている製造方法は、含水率を調整した乾燥鶏糞を押出造粒装置を用いて造粒化しているため、乾燥設備だけでなく造粒設備も必要になる、という問題がある。また、必要な設備が多いと、設備投資を要する、メンテナンス技術又はメンテナンス費用を要する、設備の設置場所が限られてしまう、といった問題も生じうるため、簡便な乾燥畜糞の造粒方法が望まれる。
【0008】
本発明は、上述した状況に鑑みてなされたものであり、畜糞(鶏糞、牛糞,豚糞等)の乾燥を最小限の設備で実施できる、より簡便な乾燥畜糞の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題に関して鋭意検討を重ねた結果、特定の手順を含む乾燥畜糞の製造方法によって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は下記[1]~[12]に関する。
[1]畜糞と造粒剤とを含有する畜糞組成物を、乾燥及び造粒化することにより乾燥畜糞を得る、乾燥畜糞の製造方法。
[2]畜糞と造粒剤とを配合して畜糞組成物を得る配合工程と、
前記畜糞組成物を乾燥する乾燥工程と、
を含む、上記[1]に記載の乾燥畜糞の製造方法。
[3]前記畜糞が、鶏糞、牛糞、及び豚糞からなる群より選ばれる1種以上を含む、
上記[1]又は[2]に記載の乾燥畜糞の製造方法。
[4]前記鶏糞が、採卵鶏(レイヤー)由来の鶏糞である、上記[3]に記載の乾燥畜糞の製造方法。
[5]前記造粒剤が、天然有機系造粒剤、合成有機系造粒剤、及び無機系造粒剤からなる群より選ばれる1種以上を含む造粒剤である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の乾燥畜糞の製造方法。
[6]前記造粒剤が廃糖蜜である、上記[5]に記載の乾燥畜糞の製造方法。
[7]前記造粒剤が、前記畜糞100質量部に対して1~20質量部である、
上記[1]~[6]のいずれかに記載の乾燥畜糞の製造方法。
[8]前記乾燥工程において、30~120℃の温風を用いて前記畜糞組成物を乾燥する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の乾燥畜糞の製造方法。
[9]前記乾燥工程において、密閉条件下にて攪拌しながら、前記畜糞組成物を乾燥する、上記[8]に記載の乾燥畜糞の製造方法。
[10]前記乾燥工程が、密閉型縦型発酵機によって実施される、上記[9]に記載の乾燥畜糞の製造方法。
[11]前記乾燥畜糞の含水率が、15~50質量%である、上記[1]~[10]のいずれかに記載の乾燥畜糞の製造方法。
[12]前記乾燥畜糞の全重量に対する粒径1.40mm以下の乾燥畜糞の割合が、30~60質量%である、上記[1]~[11]のいずれかに記載の乾燥畜糞の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、畜糞(鶏糞、牛糞,豚糞等)の乾燥を最小限の設備で実施できる、より簡便な乾燥畜糞の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳述するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値を実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値及び上限値と任意に組み合わせられる。さらに、例示したもの及び好ましいと説明する態様が選択肢の集合体であるとき、その集合体の中から任意の選択肢を任意の数だけ抽出することができ、且つ、抽出した選択肢を、他で説明する態様と任意に組み合わせることもできる。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
【0012】
本実施形態の乾燥畜糞の製造方法は、畜糞と造粒剤とを含有する畜糞組成物を、乾燥及び造粒化することにより乾燥畜糞を得る、乾燥畜糞の製造方法である。
当該製造方法は、畜糞と造粒剤とを配合して畜糞組成物を得る配合工程と、前記畜糞組成物を乾燥する乾燥工程と、を含むことが好ましい。
以下、本実施形態の製造方法が含む各工程について順に説明する。
【0013】
<配合工程>
本実施形態の製造方法が含み得る配合工程は、後述する乾燥工程前に畜糞と造粒剤とを配合して畜糞組成物を得る工程である。
上記配合工程により畜糞組成物は造粒剤を含むこととなるため、乾燥施設を用いた乾燥工程を実施することで、造粒施設を用いた造粒工程を経ることなく、粒状の乾燥畜糞を得ることができる。本実施形態の製造方法は、造粒施設を使用せずに粒状の乾燥畜糞を得ることができるため、より簡便な乾燥畜糞の造粒方法であるといえる。
【0014】
(畜糞)
畜糞としては、特に限定されるものではなく、例えば、鶏糞、牛糞,豚糞等の畜産動物の生糞(尿を含む)、発酵糞、などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、畜糞には、本発明の効果を阻害しない程度であれば、おが粉、藁材、木質チップ、畳くず、籾殻等の家畜厩舎の敷料となる材料;堆肥化した糞(尿を含む);体毛、羽根、羽毛等の畜産由来の糞以外のもの;などが含まれていてもよい。
【0015】
((鶏糞))
鶏糞としては、特に限定されるものではなく、例えば、育成鶏糞、食肉用鶏(ブロイヤー)糞、採卵用鶏(レイヤー)糞等の生糞(尿を含む)、発酵糞、などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
(造粒剤)
造粒剤としては、特に限定されるものではないが、肥料のバインダーとして通常用いられているものが好適に使用できる。造粒剤の具体例としては、例えば、廃糖蜜、リグリンスルホン酸塩、でん粉、コンニャク飛粉、アルギン酸ナトリウム、腐植酸ナトリウム等の天然有機系造粒剤;カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等の合成有機系造粒剤;ベントナイト、石膏等の無機系造粒剤;などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、生分解性の観点から、廃糖蜜、リグニンスルホン酸塩、でん粉、コンニャク飛粉、アルギン酸ナトリウム等の天然有機系造粒剤;カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド(PAM)等の合成有機系造粒剤;が好ましく、さらには、乾燥時の臭気抑制の観点から、香りを有する廃糖蜜がより好ましい。
【0017】
造粒剤の配合量は、畜糞100質量部に対し、1~20質量部であることが好ましい。前記配合量が1質量部以上であると、乾燥工程時における造粒の効果が期待できる。一方、前記配合量が20質量部以下であると経済的である。当該観点から、より好ましくは1~10質量部、さらに好ましくは5~10質量部である。
【0018】
造粒剤と畜糞の配合方法(添加順序、混合方法等)としては、乾燥時に畜糞と造粒剤とが配合されている限り、特に限定されるものではなく、例えば、あらかじめ畜糞に造粒剤を添加したものを攪拌し均一に混合してもよいし、畜糞を攪拌しつつ造粒剤を一挙に添加あるいは数回に分けて添加し混合してもよいし、造粒剤を攪拌しつつ畜糞を一挙に添加あるいは数回に分けて添加し混合してもよく、当該混合が、乾燥前あるいは乾燥中のいずれであってもよい。
これらの中でも、乾燥畜糞の造粒化の観点から、乾燥工程でも使用可能な密閉型縦型発酵機を使用するのが好ましい。
【0019】
(畜糞組成物)
畜糞組成物としては、少なくとも畜糞と造粒剤が配合されている限り、特に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない程度であれば、畜糞と造粒剤以外の添加物が含まれていてもよい。例えば、窒素及びリン酸の供給源となる、動物や魚の皮、肉、骨、内臓、アラ、卵の殻、貝殻、羽毛等の動物性残渣;野菜くず、茶殻、果実の皮、大豆かす、コーヒーかす、酒かす、油かす、発酵かす、醸造かす、薬草かす、あめかす、のりかす、ビールかす等の植物性残渣;などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
畜糞組成物中における前記畜糞の含有量は、好ましくは70~99質量%である。乾燥の観点から70質量%以上が好ましく、造粒の観点からは99質量%以下が好ましい。
畜糞組成物中における前記畜糞と前記造粒剤との合計含有量は、好ましくは80~100質量%である。乾燥の観点から80質量%以上が好ましく、造粒の観点からは100質量%以下が好ましい。
【0021】
畜糞と造粒剤を含む畜糞組成物を混合する方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、撹拌機、捏和機、密閉型縦型発酵機(撹拌しながら乾燥が可能)等の機械による撹拌方法;手作業による撹拌方法;などが挙げられる。これらのうち、造粒化された乾燥畜糞の製造の効率化の観点から、乾燥工程でも使用可能な密閉型縦型発酵機を使用するのが好ましい。
【0022】
<乾燥工程>
本実施形態の製造方法が含み得る乾燥工程は、前記配合工程で得られた畜糞組成物を乾燥させ、造粒施設を用いた造粒工程を経ることなく、造粒化された乾燥畜糞を得る工程である。なお、当該乾燥工程は、畜糞の乾燥処理と同時に発酵処理をも行うことも可能である。
本実施形態の製造方法が含み得る乾燥工程では、畜糞の乾燥時に発生する臭気の発生を抑制することができる。この原理は定かではないが、乾燥中の畜糞の表面を造粒剤が覆うことにより臭気が抑制されるものと推定される。
【0023】
(乾燥方法)
本実施形態の製造方法が含み得る乾燥工程における乾燥方法としては、特に限定されるものではなく、畜糞組成物に含まれる水分量等に応じて適宜決定すればよく、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、温風乾燥、真空乾燥、超音波乾燥、マイクロ波乾燥、などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、造粒効果の観点から、温風乾燥が好ましい。
【0024】
(乾燥温度及び期間)
温風乾燥させる場合の乾燥温度としては、特に限定されるものではないが、造粒効果の観点から、好ましくは30~120℃、より好ましくは35~90℃、さらに好ましくは40~70℃である。
また、温風乾燥させる場合の乾燥時間としては、特に限定されるものではないが、造粒効果の観点から、好ましくは2~12日であり、より好ましくは3~10日であり、さらに好ましくは4~8日である。
【0025】
(乾燥装置)
本実施形態の製造方法が含み得る乾燥工程では、密閉機能と攪拌機能を有する密閉型縦型発酵機を使用しているが、これに限定されるものではない。
温風乾燥させる際の乾燥装置としては、特に限定されるものではなく、バッチ式及び連続式のいずれであってもよいが、乾燥中に畜糞組成物を攪拌し、造粒剤を均質に行き渡らせることが可能なものが好ましく、また、臭気の拡散を防止する観点から密閉可能なものであることが好ましい。
【0026】
((密閉型縦型発酵機))
密閉型縦型発酵機は、密閉型攪拌方式を採用する装置の一つであり、攪拌機能及び温風送風機能を有し、密閉可能な、省スペースに設置できる装置である。
密閉型縦型発酵機の具体例としては、特に限定されるものではなく、例えば、断熱材で覆われ密閉された縦型円筒系の反応槽(乾燥及び発酵をする部分)と、反応槽の上部から投入された畜糞と造粒剤とを含有する畜糞組成物を攪拌できる攪拌羽根と、攪拌と同時に温風を送風できる送気孔と、を有する乾燥装置などが挙げられる。
【0027】
(乾燥畜糞)
本実施形態の製造方法により得られる乾燥畜糞は、前記畜糞組成物を乾燥することにより得ることができる。
また、本実施形態の製造方法により得られる乾燥畜糞は、造粒工程を経ずとも粒状化する。
【0028】
本実施形態の製造方法により得られる乾燥畜糞の含水率としては、特に限定されるものではないが、好ましくは15~50質量%、より好ましくは20~40質量%、さらに好ましくは25~35質量%である。前記含水率が15質量%以上であれば、乾燥労力(時間、温風に使用するエネルギー等)に見合う造粒の効果が得られて経済的である。一方、前記含水率が50質量%以下であれば、水分が多く乾燥畜糞スラリー状となるのを防止して、造粒化を効率的に行うことができる。
【0029】
本実施形態の製造方法により得られる乾燥畜糞の粒径としては、特に限定されるものではないが、散布時の飛散防止の観点から、粒径1.40mm以下の乾燥畜糞の割合(質量%)としては、好ましくは60質量%以下、より好ましくは30~60質量%、さらに好ましくは30~55質量%、特に好ましくは30~50質量%である。前記粒径1.40mm以下の乾燥畜糞の割合(質量%)が、30質量%以上であれば、乾燥条件の最適化(時間、温度等配合件等の最適化)及び畜糞組成物の配合の最適化(配合割合、混合条件、その他添加物の検討等の最適化)等に見合う造粒の効果が得られて経済的である。一方、粒径1.40mm以下の乾燥畜糞の割合(質量%)が、60質量%以下であれば、散布時の飛散を防止できる。
【実施例0030】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。下記実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変形及び改良が可能である。
【0031】
<乾燥畜糞の含水率の測定>
乾燥後に得られた乾燥畜糞の各試料10g程度を、含水率計(栗田工業株式会社製「クリガンスイ」)により水分を気化させ、乾燥前後の重量変化から、含水率を算出する。測定は、含水率計の加熱電熱線の温度が140℃である測定条件で行った。
【0032】
<粒径1.40mm未満の乾燥畜糞の割合の算出>
乾燥畜糞の各試料1000ccを、目開き1.40mmのふるいを用いてふるい分けを行い、粒径1.40mm未満の乾燥畜糞とそれ以外の乾燥畜糞に分離した。1000ccの重量をふるい掛け前に測定し、分離した粒径1.40mm未満の乾燥畜糞の重量を測定し割合を算出した。
【0033】
<乾燥畜糞の製造>
(実施例1)
畜糞としての鶏糞(レイヤー)100質量部と、造粒剤としての廃糖蜜10質量部と、を密閉型縦型発酵機に投入して畜糞組成物を得た後、撹拌混合した。
上記混合物を、攪拌しながら70℃で6日間乾燥させて、畜糞組成物が乾燥された乾燥畜糞を得た。
【0034】
(実施例2)
廃糖蜜の量を5質量部としたこと以外は、実施例1と同じ条件で乾燥畜糞を製造した。
【0035】
(実施例3)
畜糞としての鶏糞(レイヤー)100質量部と、造粒剤としての廃糖蜜5質量部と、コーヒーかす5質量部と、を密閉型縦型発酵機に投入して畜糞組成物を得た後、撹拌混合した。乾燥は実施例1と同じ条件で実施し、乾燥畜糞を得た。
【0036】
(実施例4)
実施例1において、廃糖蜜10質量部を用いる代わりに、カルボキシメチルセルロース(CMC)10質量部を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で乾燥畜糞を製造した。
【0037】
(実施例5)
実施例1において、鶏糞100質量部を用いる代わりに、牛糞100質量部を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で乾燥畜糞を製造した。
【0038】
(実施例6)
廃糖蜜の量を1質量部としたこと以外は、実施例1と同じ条件で乾燥畜糞を製造した。
【0039】
(実施例7)
実施例1の乾燥温度70℃を50℃としたこと以外は、実施例1と同じ条件で乾燥畜糞を製造した。
【0040】
(比較例1)
造粒剤を使用しないこと以外は、実施例1と同じ条件で乾燥畜糞を製造した。
【0041】
(比較例2)
畜糞としての鶏糞(レイヤー)100質量部と、コーヒーかす5質量部と、を密閉型縦型発酵機に投入して畜糞組成物を得た後、撹拌混合した。乾燥は実施例1と同じ条件で実施し、乾燥畜糞を得た。
【0042】
各例で得られた乾燥畜糞に対して、上記に示す方法により、水分含有率及び粒径を測定及び評価した。各種結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から、本実施形態の製造方法によって得られた実施例1~7の乾燥畜糞は、粒径1.40mm以下の乾燥畜糞の割合が少ないことが分かる。
実施例2及び3の結果から、畜糞組成物に、畜糞と造粒剤以外の添加物としてコーヒーかすを添加することにより、本発明の優れた効果(粒径1.40mm以下の乾燥畜糞の割合の減少)を向上させることが分かる。
実施例1及び4の結果から、廃糖蜜以外の造粒剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を使用した場合、本発明の優れた効果(粒径1.40mm以下の乾燥畜糞の割合の減少)を奏することが分かった。
実施例1及び5の結果から、鶏糞以外の畜糞として牛糞を使用しても、本発明の優れた効果(粒径1.40mm以下の乾燥畜糞の割合の減少)を奏することが分かる。