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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006334
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/06 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G03H1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107060
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(74)【代理人】
【識別番号】100185225
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 恭一
(72)【発明者】
【氏名】室井 哲彦
(72)【発明者】
【氏名】信川 輝吉
(72)【発明者】
【氏名】片野 祐太郎
【テーマコード(参考)】
2K008
【Fターム(参考)】
2K008AA00
2K008AA06
2K008EE01
2K008FF07
2K008HH01
2K008HH18
2K008HH28
(57)【要約】
【課題】偏光板と波長板を起因とする干渉縞に重畳するノイズを低減して、位相の異なる干渉縞を同時に取得することができる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、インコヒーレントな光波を複数に分岐する複数のビームスプリッタと、分岐したそれぞれの光波を自己干渉させる複数の干渉計と、前記干渉計で生成した干渉縞を取得する複数のカメラとを備え、それぞれの干渉計で互いに位相の異なる干渉縞を生成することで、位相の異なる複数の干渉縞を同時に取得することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インコヒーレントな光波を複数に分岐する複数のビームスプリッタと、分岐したそれぞれの光波を自己干渉させる複数の干渉計と、前記干渉計で生成した干渉縞を取得する複数のカメラとを備え、
それぞれの干渉計で互いに位相の異なる干渉縞を生成することで、位相の異なる複数の干渉縞を同時に取得することを特徴とする、撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記干渉計は、ビームスプリッタと、互いに曲率の異なる2つのミラーとを備えることを特徴とする、撮像装置。
【請求項3】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記干渉計は、マイケルソン干渉計であることを特徴とする、撮像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の撮像装置において、
入射光を1:1に分岐する3つのビームスプリッタを用いて物体光を4つに分岐し、位相の異なる4つの干渉縞を同時に取得することを特徴とする、撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像装置において、
入射光を2:1に分岐するビームスプリッタと入射光を1:1に分岐するビームスプリッタを用いて物体光を3つに分岐し、位相の異なる3つの干渉縞を同時に取得することを特徴とする、撮像装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の撮像装置において、
取得した複数の干渉縞から複素振幅分布を求め、被写体の3次元情報を取得することを特徴とする、撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関し、特に、インコヒーレントデジタルホログラフィに用いる撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インコヒーレントデジタルホログラフィは、太陽光や一般的な屋内の照明光、蛍光などの空間的なコヒーレンスが低い光源で物体のホログラムを撮像でき、自然光環境下での立体撮像を実現可能とする技術である。インコヒーレントデジタルホログラフィでは、次の手順で、物体の3次元情報を再構成することができる。まず、被写体からの光(物体光)を2つの光に分離して、一方の光路に凹面ミラーやレンズを設けてわずかに光路差を生じさせる。再度これらの光を合成して干渉させることで、被写体を干渉縞として撮影する。異なる位相の干渉縞画像を複数枚取得して、位相シフト法等を用いて計算することで、撮像素子面における被写体の複素振幅分布が得られる。この複素振幅分布から光の逆伝搬計算をすることにより、任意の奥行き距離の2次元画像(すなわち、3次元情報)を得ることができる。
【0003】
図5は、マイケルソン干渉計を用いた撮像装置の光学系の例である。被写体からの物体光は、レンズ1と波長フィルタ2を透過後、ビームスプリッタ(BS)3で2つの光に分岐される。一方の物体光は平面ミラー4で、他方の物体光は凹面ミラー5で反射され、それぞれの光が再度ビームスプリッタ3で合成されることで、干渉縞が生成される。これをカメラ20で撮影することにより干渉縞画像を取得することができる。異なる位相の干渉縞を取得する場合、ピエゾアクチュエータ6で平面ミラー4の位置を光軸方向に変える。この操作を複数回行うことにより、異なる位相の干渉縞画像が、複数枚取得できる。
【0004】
しかし、この光学系では、平面ミラー4の光軸方向位置を時間で変えるため、動画像を撮影することが困難である。動画像を撮影するためには、これらの異なる位相の干渉縞画像を同時に取得する必要がある。その方法として、偏光を用いて異なる位相の干渉縞を同時に生成して取得する方法が提案されている。
【0005】
図6は、複数の干渉縞画像を同時に取得する撮像装置の第1の例である。この撮像装置の光学系は、レンズ1、波長フィルタ2、偏光板7、複屈折レンズ8、1/4波長板9、及び偏光カメラ21を備えている。被写体からの物体光は、レンズ1と波長フィルタ2を通り、偏光板7で任意の方向の直線偏光成分のみとなる。直線偏光となった物体光は、この偏光方向から±45°となる偏光方向に対して異なる焦点距離を有する複屈折レンズ8に入射する。複屈折レンズ8を透過した物体光は、1/4波長板9を透過し、右回りと左回りの2つの円偏光になる。これを各画素に45°おきに偏光板が設けられた偏光カメラ21(4種類の偏光方向の画素を有する)で撮影する。同じ偏光方向の画素の信号を集めることで、各偏光方向(各位相)の画像を生成することができ、異なる位相の干渉縞画像を同時に取得することができる。これらの干渉縞画像から光の逆伝搬計算をすることにより、任意の奥行き距離の再構成画像が得られる。この光学系により、フレームレート25fpsの動画が取得できたことが報告されている(非特許文献1)。
【0006】
図7は、複数の干渉縞画像を同時に取得する撮像装置の第2の例である。この撮像装置の光学系は、図6の複屈折レンズ8の代わりにビームスプリッタ(BS)3と反射型液晶パネル10、偏光カメラ21の代わりに回折格子11、偏光板アレイ12、及びカメラ20が用いられる。被写体からの物体光は、レンズ1、波長フィルタ2、及び偏光板7を透過後、ビームスプリッタ3を介して反射型液晶パネル10に、例えば45°の偏光方向で入射する。反射型液晶パネル10は、入射した物体光の水平方向と垂直方向の偏光成分に対し、一方の偏光方向に平面の位相分布を、他方の偏光方向に球面の位相分布を付与する。反射型液晶パネル10とビームスプリッタ3で反射した物体光は、1/4波長板9を透過する。その後、物体光は回折格子11で4方向に分岐し、これを45°おきの偏光方向を有する4つの偏光板が設けられた偏光板アレイ12を通してカメラ20で撮影することにより、異なる位相の干渉縞画像が同時に取得できる。この光学系により、フレームレート1fpsで連続撮影が可能である(特許文献1)。
【0007】
図8は、複数の干渉縞画像を同時に取得する撮像装置の第3の例である。この撮像装置の光学系は、図6の複屈折レンズ8の代わりに、偏光ビームスプリッタ(PBS)13、1/4波長板9、平面ミラー4、及び凹面ミラー5を用いたマイケルソン干渉計が用いられる。被写体からの物体光は、レンズ1、波長フィルタ2、及び偏光板7を透過後、PBS13に入射する。物体光のp偏光成分はPBS13を透過し、1/4波長板9で円偏光になり、ミラー4で反射する。反射光は再度1/4波長板9を通ることでs偏光になり、PBS13で反射する。物体光のs偏光成分はPBS13で反射し、1/4波長板9で円偏光になり、凹面ミラー5で反射する。反射光は再度1/4波長板9を通ることでp偏光になり、PBS13を透過する。PBS13を出た物体光は、さらに1/4波長板9で右回り、左回りの円偏光になる。これを各画素に45°おきに偏光板が設けられた偏光カメラ21で撮影する。同じ偏光方向の画素の信号を集めることで、各偏光方向で画像を生成することができ、異なる位相の干渉縞画像を同時に取得することができる。この光学系により、フレームレート60fpsの動画が取得できる(特許文献2)。
【0008】
図9は、複数の干渉縞画像を同時に取得する撮像装置の第4の例である。この撮像装置の光学系は、図8の偏光カメラ21の代わりに、回折格子11、偏光板アレイ12、及びカメラ20が用いられる。被写体からの物体光は、レンズ1、波長フィルタ2、及び偏光板7を透過後、偏光ビームスプリッタ(PBS)13に入射する。物体光のp偏光成分はPBS13を透過し、1/4波長板9で円偏光になり、ミラー4で反射する。反射光は再度1/4波長板9を通ることでs偏光になり、PBS13で反射する。物体光のs偏光成分はPBS13で反射し、1/4波長板9で円偏光になり、凹面ミラー5で反射する。反射光は再度1/4波長板9を通ることでp偏光になり、PBS13を透過する。これらの物体光は、さらに1/4波長板9で右回り、左回りの円偏光になる。その後、回折格子11で4方向に分岐し、これを45°おきに偏光板が設けられた偏光板アレイ12を通してカメラ20で撮影することにより、異なる位相の干渉縞画像を同時に取得することができる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-131457号公報
【特許文献2】特開2023-77325号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】KiHong Choi, et al., “Compact self-interference incoherent digital holographic camera system with real-time operation,” Optics Express, (2019), Vol. 27, No. 4, pp. 4818-4833
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図6及び図8の光学系は、1台の偏光カメラ21で複数の干渉縞画像を同時に取得できるが、偏光カメラ21は同じ方向の偏光板を持つ画素が1画素おきに配置されているため、カメラ本来の画素密度と比較して、それぞれの干渉縞画像を取得するときの解像度が半分になる。
【0012】
一方、図7及び図9の光学系は、偏光カメラ21を用いないことから、図6及び図8の光学系と比較して取得した干渉縞画像の解像度は2倍になる。しかし、図7及び図9の光学系では、回折格子11を出射した4方向の光は、カメラ20に対して異なる角度で斜めに入射するため、干渉縞画像に異なる歪みが生じる。
【0013】
さらに、いずれの光学系においても、偏光板7と波長板9が使用されている。これらの光学素子の空間的な不均一性により、位相の変化量が不均一になる。この位相の不均一性は、再構成画像にノイズが生じる原因となる。
【0014】
したがって、上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、インコヒーレントデジタルホログラフィにおいて、偏光板と波長板を起因とする干渉縞に重畳するノイズを低減して、位相の異なる干渉縞を同時に取得することができる撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために本発明に係る撮像装置は、
(1)インコヒーレントな光波を複数に分岐する複数のビームスプリッタと、分岐したそれぞれの光波を自己干渉させる複数の干渉計と、前記干渉計で生成した干渉縞を取得する複数のカメラとを備え、それぞれの干渉計で互いに位相の異なる干渉縞を生成することで、位相の異なる複数の干渉縞を同時に取得することを特徴とする、撮像装置である。
【0016】
(2)上記(1)の撮像装置は、更に、前記干渉計が、ビームスプリッタと、互いに曲率の異なる2つのミラーとを備えることが好ましい。
【0017】
(3)上記(1)または(2)の撮像装置は、更に、前記干渉計が、マイケルソン干渉計であることが好ましい。
【0018】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの撮像装置は、更に、入射光を1:1に分岐する3つのビームスプリッタを用いて物体光を4つに分岐し、位相の異なる4つの干渉縞を同時に取得することが好ましい。
【0019】
(5)上記(1)~(3)のいずれかの撮像装置は、更に、入射光を2:1に分岐するビームスプリッタと入射光を1:1に分岐するビームスプリッタを用いて物体光を3つに分岐し、位相の異なる3つの干渉縞を同時に取得することが好ましい。
【0020】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの撮像装置は、更に、取得した複数の干渉縞から複素振幅分布を求め、被写体の3次元情報を取得することが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明における撮像装置によれば、インコヒーレントデジタルホログラフィにおいて、偏光板や波長板に起因するノイズを低減して、位相の異なる干渉縞を同時に取得することができる。また、この干渉縞より、高画質な動画像を再構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明のインコヒーレントデジタルホログラフィ光学系の原理図である。
図2】実施の形態1の撮像装置の光学系の例である。
図3】実施の形態1の撮像装置で取得された位相の異なる4つの干渉縞である。
図4】実施の形態2の撮像装置の光学系の例である。
図5】マイケルソン干渉計を用いた撮像装置の光学系の例である。
図6】複数の干渉縞画像を同時に取得する撮像装置の第1の例である。
図7】複数の干渉縞画像を同時に取得する撮像装置の第2の例である。
図8】複数の干渉縞画像を同時に取得する撮像装置の第3の例である。
図9】複数の干渉縞画像を同時に取得する撮像装置の第4の例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明のインコヒーレントデジタルホログラフィ光学系の原理図である。光学系は、光波を自己干渉させるためのn個の干渉計を備えている。
【0024】
被写体からの物体光は、反射光、透過光、或いは被写体から発せられた光であってもよく、インコヒーレントな光波である。物体光は、レンズ1及び波長フィルタ2を透過後、複数に分岐(n分岐、n≧3)される。
【0025】
分岐したそれぞれの物体光は、干渉計(例えば、マイケルソン干渉計)に入射する。マイケルソン干渉計は、図5と同様に、ビームスプリッタ(BS)3(3~3)、平面ミラー4(4~4)、及び凹面ミラー5(5~5)から構成される。干渉計を出射した物体光は干渉縞を生成し、これをカメラ20(20~20)で撮影する。このとき、それぞれの干渉計の平面ミラー4あるいは凹面ミラー5の光軸方向位置を調整し、それぞれのカメラ20で取得する干渉縞の位相が2π/nだけ異なるようにする。これによりn個のカメラ20で、位相が2π/n異なるn枚の干渉縞を同時に取得することができる。
【0026】
取得したn枚の干渉縞画像から、位相シフト法を用いて干渉縞の複素振幅分布が求められる。さらにこの複素振幅分布から、従来と同様に光の逆伝搬計算をすることにより、任意の奥行き距離における再構成画像を取得することができる。これを各フレームで行うことにより、動画像を取得することができる。
【0027】
なお、上記の光学系の説明においては、光学系を実装する際の効率性を考慮して、干渉計としてマイケルソン干渉計を用いたが、干渉計は他の構造の干渉計であってもよい。また、各干渉計は平面ミラー4と凹面ミラー5で構成したが、互いに曲率の異なるミラーで構成してもよい。なお、干渉縞の位相が2π/nだけ異なるようにしたのは、その後の複素振幅分布を求める計算を効率的に行うためであって、互いに位相の異なる複数の干渉縞が得られればよい。
【0028】
本発明の光学系では、図6図8で用いられた偏光カメラ21を使用しないため、干渉縞を取得する際の解像度は、偏光カメラ21を使用するときと比較して縦横それぞれ2倍になる。また、図7図9で用いられた回折格子11を用いておらず、カメラ20に対して物体光の光軸が斜めに入射することはない。そのため位相ごとによる干渉縞の歪みがなく、再構成画像の解像度の劣化が少ない。さらに、この光学系は、偏光板と波長板を使用しないため、これらの光学素子を起因とするノイズは生じず、従来の手法と比較して低ノイズの干渉縞を取得することができる。そして、高画質な動画像を再構成することができる。
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0030】
(実施の形態1)
実施の形態1として、分岐数nを4としたときのインコヒーレントデジタルホログラフィ撮像装置について説明する。図2は、実施の形態1の撮像装置の光学系の例である。この撮像装置の光学系は、レンズ1と、波長フィルタ2と、3つのビームスプリッタ(BS)310~312と、4つのマイケルソン干渉計と、カメラ20~20から構成される。
【0031】
レンズ1は、物体光を集光し、波長フィルタ2に入射させる。レンズ1は、通常のカメラのレンズと同様に、像の拡大・広角等の調整機能を有している。なお、被写体はレンズ1の焦点位置に無関係に任意の位置に配置することができる。
【0032】
波長フィルタ2は、所定の波長幅(例えば、3nm~20nm)の光波を透過させるバンドパスフィルタであり、光波の時間的コヒーレンスを向上させる。なお、波長幅を狭くすれば画質は向上するが画像の光量が減少するため、求める画像に応じて適切な波長フィルタ2が選択される。波長フィルタ2を透過した光波は、ビームスプリッタ310に入射する。
【0033】
なお、レンズ1及び波長フィルタ2は、撮像装置として必須の構成ではなく、必要に応じて設けることができる。
【0034】
ビームスプリッタ310~312は、入射光を透過光と反射光に1:1で分岐するビームスプリッタである。被写体からの物体光は、レンズ1と波長フィルタ2を透過後、ビームスプリッタ310で2分岐される。それぞれの物体光は、さらにビームスプリッタ311,312で2分岐され、物体光は均等に4分岐される。
【0035】
4分岐された物体光は、それぞれビームスプリッタ(BS)3(3~3)、平面ミラー4(4~4)、及び凹面ミラー5(5~5)から構成される4つのマイケルソン干渉計に入射する。平面ミラー4と凹面ミラー5のそれぞれで反射した物体光には若干の光路差が生じているため、干渉計を出射した物体光には干渉縞が生成される。そして、4つのカメラ20(20~20)が、各干渉計で生成された干渉縞を取得する。このとき、4台のカメラ20で取得する干渉縞の位相がπ/2ずつずれるように、それぞれの平面ミラー4あるいは凹面ミラー5の光軸方向位置を調整することが望ましい。
【0036】
図3は、本実施形態(図2)の撮像装置を用い、点光源を物体光としたときの位相の異なる4つの干渉縞を、シミュレーションで取得したものである。このように、本実施形態の撮像装置は、位相がπ/2ずつ異なる4つの位相の干渉縞を同時に取得することができる。得られた干渉縞に基づいて、従来と同様に位相シフト法と光の逆伝搬計算をすることにより、任意の奥行き距離の再構成画像が得られる。さらにフレームごとに干渉縞取得と再構成計算を行うことにより、動画像が得られる。
【0037】
(実施の形態2)
実施の形態2として、分岐数nを3としたときのインコヒーレントデジタルホログラフィ撮像装置について説明する。図4は、実施の形態2の撮像装置の光学系の例である。この撮像装置の光学系は、レンズ1と、波長フィルタ2と、2つのビームスプリッタ(BS)313,314と、3つのマイケルソン干渉計と、カメラ20~20から構成される。実施の形態1と重複する構成は、説明を省略する。
【0038】
ビームスプリッタ313は、入射光を透過光と反射光に2:1で分岐するビームスプリッタである。また、ビームスプリッタ314は、入射光を透過光と反射光に1:1で分岐するビームスプリッタである。被写体からの物体光は、レンズ1と波長フィルタ2を透過後、ビームスプリッタ313で2:1の光量に2分岐される。さらにビームスプリッタ313を透過した物体光は、ビームスプリッタ314で均等に2分岐される。これにより3分岐された物体光の光量は一致する。
【0039】
3分岐された物体光は、それぞれビームスプリッタ(BS)3(3~3)、平面ミラー4(4~4)、及び凹面ミラー5(5~5)から構成される3つのマイケルソン干渉計に入射する。平面ミラー4と凹面ミラー5のそれぞれで反射した物体光には若干の光路差が生じているため、干渉計を出射した物体光には干渉縞が生成される。そして、3つのカメラ20(20~20)が、各干渉計で生成された干渉縞を取得する。このとき、3台のカメラで取得する干渉縞の位相が2π/3ずつずれるようにそれぞれの平面ミラー4あるいは凹面ミラー5の光軸方向位置を調整することが望ましい。これにより位相が2π/3ずつ異なる3つの位相の干渉縞を同時に取得することができる。
【0040】
その後、得られた干渉縞に基づいて、従来と同様に位相シフト法と光の逆伝搬計算をすることにより、任意の奥行き距離の再構成画像が得られる。さらにフレームごとに干渉縞取得と再構成計算を行うことにより、動画像が得られる。
【0041】
本実施形態は分岐数が3であるため、実施の形態1と比較して、それぞれの干渉縞の光量が多く、干渉縞の信号対ノイズ比が向上する。なお、ここでは2:1で分岐するビームスプリッタ313を用いたが、1:1で分岐するビームスプリッタを用い、光強度が強い干渉縞に対してカメラ20の露光時間を半分にしてもよい。
【0042】
(他の実施形態)
本実施形態では分岐数nは4又は3であったが、5以上の分岐数としてもよい。また、各干渉計は平面ミラー4と凹面ミラー5で構成したが、互いに曲率の異なるミラーで構成することで、同様の効果が得られる。さらに、干渉計としてマイケルソン干渉計を用いたが、マッハツェンダー干渉計など、干渉縞を取得することができる他の干渉計を用いてもよい。マッハツェンダー干渉計の場合は、ビームスプリッタで物体光を2つに分けた後、この2つの物体光を互いに曲率の異なるミラーで反射させ、再び別のビームスプリッタを通した後、カメラにより干渉縞を撮像する。
【0043】
上記の実施形態では、撮像装置の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限らず、インコヒーレントデジタルホログラフィにおいて、複数の干渉縞を同時に取得する撮像方法として構成されてもよい。すなわち、図1図2および図4の撮像装置の物体光の処理の流れに従って、位相の異なるn個の干渉縞を同時に取得する撮像方法の発明としてとらえてもよい。
【0044】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態に記載の各ブロック、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成ブロック、ステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 レンズ
2 波長フィルタ
3 ビームスプリッタ(BS)
4 平面ミラー
5 凹面ミラー
6 ピエゾアクチュエータ
7 偏光板
8 複屈折レンズ
9 1/4波長板
10 反射型液晶パネル
11 回折格子
12 偏光板アレイ
13 偏光ビームスプリッタ(PBS)
20 カメラ
21 偏光カメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9