(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006544
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 16/34 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
C23C16/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107405
(22)【出願日】2023-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 有人
【テーマコード(参考)】
4K030
【Fターム(参考)】
4K030AA03
4K030AA13
4K030BA18
4K030BA38
4K030DA02
(57)【要約】
【課題】基板上に形成する膜の特性を向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】(a)基板に、有機リガンドを含む改質剤の吸着を促進する還元性で無い促進剤を供給する工程と、(b)前記基板に、前記改質剤を供給する工程と、(c)(a)と(b)とを行った後に、前記基板に膜を形成する工程と、を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)基板に、有機リガンドを含む改質剤の吸着を促進する還元性で無い促進剤を供給する工程と、
(b)前記基板に、前記改質剤を供給する工程と、
(c)(a)と(b)とを行った後に、前記基板に膜を形成する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
前記改質剤は、金属元素を含まない請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記改質剤は、金属元素を含む請求項1記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記改質剤は、炭化水素基を含む請求項1記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記改質剤は、アミンを含む請求項1記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記促進剤は、酸化性である請求項1記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記促進剤は、水素元素を含まないガスである請求項6記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記促進剤は、有機系のガスである請求項1記載の基板処理方法。
【請求項9】
前記促進剤は、アルカンを含むガスである請求項8記載の基板処理方法。
【請求項10】
(c)では、ハロゲン元素を含むガスを用いる請求項1記載の基板処理方法。
【請求項11】
前記ハロゲン元素を含むガスは、金属元素を含む請求項10記載の基板処理方法。
【請求項12】
(c)では、金属元素とハロゲン元素を含むガスを用い、前記改質剤は、金属元素を含まない請求項1記載の基板処理方法。
【請求項13】
(a)を複数回行う、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項14】
(d) 前記促進剤の除去工程を有し、
(a)と(d)とをこの順で所定回数行う、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項15】
(e)(a)と(b)とをこの順で所定回数行う、請求項1又は13記載の基板処理方法。
【請求項16】
(e)と(c)を所定回数行う、請求項15記載の基板処理方法。
【請求項17】
(c)では、水素元素を含む反応ガスを供給する、請求項10記載の基板処理方法。
【請求項18】
(a)基板に、有機リガンドを含む改質剤の吸着を促進する還元性で無い促進剤を供給する工程と、
(b)前記基板に、前記改質剤を供給する工程と、
(c)(a)と(b)とを行った後に、前記基板に膜を形成する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項19】
(a)基板に、有機リガンドを含む改質剤の吸着を促進する還元性で無い促進剤を供給させる手順と、
(b)前記基板に、前記改質剤を供給させる手順と、
(c)(a)と(b)とを行った後に、前記基板に膜を形成させる手順と、
をコンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項20】
基板に対して、有機リガンドを含み、改質剤の吸着を促進する還元性で無い促進剤を供給可能な第1ガス供給系と、
前記基板に対して前記改質剤を供給可能な第2ガス供給系と、
(a)前記基板に、前記促進剤を供給する処理と、
(b)前記基板に、前記改質剤を供給する処理と、
(c)(a)と(b)とを行った後に、前記基板に膜を形成する処理とを行うように前記第1ガス供給系と前記第2ガス供給系とを制御することが可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、プログラム及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に金属含有膜を形成する処理が行われることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板上に膜を形成する際に、膜の連続性が低減してしまい、基板上に形成する膜の特性が劣化することがある。
【0005】
本開示は、基板上に形成する膜の特性を向上させることが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
(a)基板に、有機リガンドを含む改質剤の吸着を促進する還元性で無い促進剤を供給する工程と、
(b)前記基板に、前記改質剤を供給する工程と、
(c)(a)と(b)とを行った後に、前記基板に膜を形成する工程と、
を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板上に形成する膜の特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一態様における基板処理装置の縦型処理炉の概略を示す縦断面図である。
【
図3】本開示の一態様における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図4】本開示の一態様における基板処理シーケンスを示す図である。
【
図5】本開示の一態様における基板処理装置の変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一態様について、主に
図1~
図4を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
図1に示すように、処理炉202は加熱系(温度調整部)としてのヒータ207を有する。ヒータ207は円筒形状である。ヒータ207は、ガスを熱で活性化(励起)させる活性化機構(励起部)としても機能する。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応管203が配設されている。反応管203は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管203の下方には、反応管203と同心円状に、マニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)等の金属で構成され、上端および下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部は、反応管203の下端部に係合しており、反応管203を支持するように構成されている。マニホールド209と反応管203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。反応管203はヒータ207と同様に垂直に据え付けられている。主に、反応管203とマニホールド209とにより処理容器(反応容器)が構成される。処理容器の筒中空部には処理室201が形成されている。処理室201は、複数枚の基板としてのウエハ200を収容可能に構成されている。
【0012】
処理室201内には、ノズル249a,249bが、マニホールド209の側壁を貫通するように設けられている。ノズル249a,249bには、ガス供給管(配管)232a,232bが、それぞれ接続されている。
【0013】
ガス供給管232a,232bには、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241a,241bおよび開閉弁であるバルブ243a,243bがそれぞれ設けられている。ガス供給管232aのバルブ243aよりも下流側には、ガス供給管232c,232eが接続されている。ガス供給管232c,232eには、上流側から順に、MFC241c,241eおよびバルブ243c,243eがそれぞれ設けられている。ガス供給管232bのバルブ243bよりも下流側には、ガス供給管232d,232fが接続されている。ガス供給管232d,232fには、上流側から順に、MFC241d,241fおよびバルブ243d,243fがそれぞれ設けられている。
【0014】
ノズル249a,249bは、
図2に示すように、反応管203の内壁とウエハ200との間における平面視において円環状の空間に、反応管203の内壁の下部より上部に沿って、ウエハ200の積載方向上方に向かって立ち上がるようにそれぞれ設けられている。ノズル249a,249bの側面には、ガスを供給するガス供給孔250a,250bがそれぞれ設けられている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の中心を向くようにそれぞれ開口しており、ウエハ200に向けてガスを供給することが可能となっている。ガス供給孔250a,250bは、反応管203の下部から上部にわたって複数設けられている。
【0015】
ガス供給管232aからは、ハロゲン元素を含む原料ガスが、MFC241a、バルブ243a、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。
【0016】
ガス供給管232bからは、水素元素を含む反応ガスが、MFC241b、バルブ243b、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0017】
ガス供給管232cからは、改質剤の吸着を促進する促進剤が、MFC241c、バルブ243c、ノズル249aを介して処理室201内へ供給される。促進剤としては、還元性の無い促進剤を用いる。
【0018】
なお、本明細書において用いる「剤」という用語は、ガス状物質および液体状物質のうち少なくともいずれかを含む。液体状物質はミスト状物質を含む。すなわち、改質剤、促進剤は、ガス状物質を含んでいてもよく、ミスト状物質等の液体状物質を含んでいてもよく、それらの両方を含んでいてもよい。
【0019】
ガス供給管232dからは、有機リガンドを含む改質剤が、MFC241d、バルブ243d、ノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0020】
ガス供給管232e,232fからは、不活性ガスが、それぞれMFC241e,241f、バルブ243e,243f、ガス供給管232a及びガス供給管232b、ノズル249a及びノズル249bを介して処理室201内へ供給される。
【0021】
主に、ガス供給管232a、MFC241a、バルブ243aにより、原料ガス供給系が構成される。主に、ガス供給管232b、MFC241b、バルブ243bにより、反応ガス供給系が構成される。原料ガス供給系、反応ガス供給系を合わせてガス供給系と称することもできる。また、主に、ガス供給管232c、MFC241c、バルブ243cにより、第1ガス供給系としての促進剤供給系が構成される。主に、ガス供給管232d、MFC241d、バルブ243dにより、第2ガス供給系としての改質剤供給系が構成される。また、主に、ガス供給管232e,232f、MFC241e,241f、バルブ243e,243fにより、不活性ガス供給系が構成される。促進剤供給系、改質剤供給系及び不活性ガス供給系をガス供給系に含めて考えてもよい。
【0022】
上述の各種供給系のうち、いずれか、或いは、全ての供給系は、バルブ243a~243fやMFC241a~241f等が集積されてなる集積型供給システム248として構成されていてもよい。集積型供給システム248は、ガス供給管232a~232fのそれぞれに対して接続され、ガス供給管232a~232f内への各種ガスの供給動作、すなわち、バルブ243a~243fの開閉動作やMFC241a~241fによる流量調整動作等が、後述するコントローラ121によって制御されるように構成されている。集積型供給システム248は、一体型、或いは、分割型の集積ユニットとして構成されており、ガス供給管232a~232f等に対して集積ユニット単位で着脱を行うことができ、集積型供給システム248のメンテナンス、交換、増設等を、集積ユニット単位で行うことが可能なように構成されている。
【0023】
反応管203には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245および圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ244を介して、真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ244は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気および真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができるように構成されている。主に、排気管231、APCバルブ244、圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0024】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219の下方には、後述するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、反応管203の外部に設置された昇降機構としてのボートエレベータ115によって垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入および搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217すなわちウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送機構)として構成されている。
【0025】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持するように、すなわち、間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が多段に支持されている。なお、本明細書における「25~200枚」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「25~200枚」とは「25枚以上200枚以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0026】
反応管203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電具合を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ263はL字型に構成されており、反応管203の内壁に沿って設けられている。
【0027】
図3に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。なお、基板処理装置は、制御部を1つ備えるように構成されていてもよく、制御部を複数備えるように構成されていてもよい。すなわち、後述する処理シーケンスを行うための制御を、1つの制御部を用いて行うようにしてもよく、複数の制御部を用いて行うようにしてもよい。また、複数の制御部は、有線または無線の通信ネットワークにより互いに接続された制御系として構成されていてもよく、後述する処理シーケンスを行うための制御を制御系全体により行うようにしてもよい。本明細書において制御部という言葉を用いた場合は、1つの制御部を含む場合の他、複数の制御部を含む場合や、複数の制御部によって構成される制御系を含む場合がある。
【0028】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置100の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、プロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単に、レシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0029】
I/Oポート121dは、上述のMFC241a~241f、バルブ243a~243f、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0030】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241a~241fによる各種ガスの流量調整動作、バルブ243a~243fの開閉動作、APCバルブ244の開閉動作および圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、回転機構267によるボート217の回転および回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0031】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0032】
(2)基板処理工程
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、ウエハ200上に、薄膜を形成する工程の一例について、
図4を用いて説明する。以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0033】
本明細書において用いる「ウエハ」という用語は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面上に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において用いる「ウエハの表面」という言葉は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0034】
(ウエハ搬入)
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて、処理室201内に搬入(ボートロード)され、処理容器に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220bを介してマニホールド209の下端開口を閉塞した状態となる。
【0035】
(圧力調整および温度調整)
処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ244がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。また、処理室201内が所望の温度となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整)。ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0036】
[前工程]
(促進剤時分割供給、第1ステップ)
先ず本ステップでは、促進剤を時分割で供給する。言い換えれば、促進剤の供給を所定回数(1回以上、好ましくは複数回)行う。具体的には、バルブ243cを開き、ガス供給管232c内に促進剤を供給する促進剤の供給工程と、バルブ243cを閉じ、促進剤の供給を停止して処理室201内の促進剤を除去する促進剤の除去工程と、をこの順で所定回数(p回、pは1または2以上の整数)行う。すなわち、促進剤の供給と停止(排気、パージともいう)とが時分割で交互に行われる。
【0037】
促進剤の供給工程では、促進剤は、MFC241cにより流量調整され、ノズル249aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ243eを開きガス供給管232e内に不活性ガスを流してもよい。また、ノズル249b内への促進剤の侵入を防止するために、バルブ243fを開き、ガス供給管243b内に不活性ガスを流してもよい。また、促進剤の除去工程では、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から促進剤を除去して、処理室201内に残留する未反応の促進剤や反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開いたままとして、パージガスとしての不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。
【0038】
なお、本明細書において「時分割」とは時間的に分割(セパレート)されていることを意味している。例えば、本明細書において、促進剤を時分割して供給するとは、促進剤を連続して供給しないことを意味している。言い換えると、促進剤をパルス的に供給することを意味している。なお、促進剤を間欠的に供給することもできる。
【0039】
このとき処理室201内に時分割して供給される主なガスは、促進剤である。このようにして、ウエハ200に対して促進剤を複数回供給することにより、ウエハ200上に促進剤を隙間なく吸着させることができる。
【0040】
促進剤としては、還元性でない、酸化性のガスが用いられる。酸化性のガスとしては、例えば酸素(O2)ガス、オゾン(O3)ガス、水蒸気(H2Oガス)、過酸化水素(H2O2)ガス、水素(H2)ガス+O2ガス等を用いることができる。促進剤としては、これらのうち1以上を、活性化したガスを用いることができる。活性化したガスとは、プラズマにより、又は熱的に活性化したものを含む。以下において、同様である。
【0041】
なお、本明細書において「H2ガス+O2ガス」のような2つのガスの併記記載は、H2ガスとO2ガスとの混合ガスを意味する。混合ガスを供給する場合は、2つのガスを供給管内で混合(プリミックス)させた後に、処理室201内へ供給するようにしてもよく、2つのガスを異なる供給管より別々に処理室201内へ供給し、処理室201内で混合(ポストミックス)させるようにしてもよい。
【0042】
また、促進剤としては、水素元素(H)を含まない酸化性のガスを用いることができる。Hを含まない酸化性のガスとしては、例えばO2ガス、O3ガス等を用いることができる。促進剤としては、これらのうち1以上を、活性化したガスを用いることができる。
【0043】
不活性ガスとしては、例えば窒素(N2)ガスの他、アルゴン(Ar)ガス、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスを用いることができる。不活性ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0044】
促進剤を供給することにより、ウエハ200(表面の下地膜)上に、有機リガンドを含む改質剤の吸着を促進する原子や分子が吸着する。具体的には、促進剤として例えば酸化性ガスを供給することにより、ウエハ200上に、酸素基(以下、O-と記す)、O2が吸着する。すなわち、ウエハ200の表面は、O-、O2で終端されることとなる。なお、本開示において、「終端」や「吸着」とは、ウエハ200表面の全てが覆われていない状態も含み得る。ガスの供給条件や、ウエハ200の表面状態により、ウエハ200の表面の全てが覆われない場合がある。また、自己制限的に、反応が停止することにより、全てが覆われない場合がある。本開示では、促進剤を複数回供給することにより、ウエハ200上に吸着する促進剤の量を増加させることができる。言い換えると、促進剤が吸着可能な吸着サイトの全てに促進剤が吸着することに近付けることができる。
【0045】
第1ステップでは、ウエハ200上の空間(処理室201)の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC241cで制御する促進剤の供給流量は、例えば0.01~5.0slmの範囲内の流量とする。以下において、ヒータ207の温度は、ウエハ200の温度が、例えば300~550℃の範囲内の温度となるような温度に設定して行う。なお、本開示における「1~3990Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~3990Pa」とは「1Pa以上3990Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0046】
(パージ、第2ステップ)
促進剤の時分割供給を開始してから所定時間経過後にバルブ243cを閉じ、促進剤の供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の促進剤や反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開いたままとして、パージガスとしての不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。不活性ガスはパージガスとして作用し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の促進剤や反応副生成物を処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0047】
第2ステップでは、MFC241e,241fで制御する不活性ガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~10slmとする。
【0048】
(改質剤供給、第3ステップ)
バルブ243dを開き、ガス供給管232d内に改質剤を流す。改質剤は、MFC241dにより流量調整され、ノズル249bのガス供給孔250bから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ243fを開き、ガス供給管232f内に不活性ガスを流してもよい。また、ノズル249a内への改質剤の侵入を防止するために、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内に不活性ガスを流してもよい。
【0049】
このとき処理室201内に流している主なガスは、改質剤である。すなわち、ウエハ200に対して改質剤が供給される。
【0050】
改質剤としては、有機リガンドを含むガスであって、有機化合物を含むガスが用いられる。有機化合物を含むガスとしては、例えば炭化水素基(CH-)やアミン基(NH-)等を含むガスが用いられる。
【0051】
有機化合物を含むガスとしては、金属元素を含まないガスが用いられる。金属元素を含まないガスとしては、エーテル化合物、ケトン化合物、アミンを含むアミン化合物、有機ヒドラジン化合物から構成される群より選択される少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。エーテル化合物を含むガスとしては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、プロピルエーテル、イソプロピルエーテル、フラン、テトラヒドロフラン、ピラン、テロラヒドロピラン等のうち少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。ケトン化合物を含むガスとしては、ジメチルケトン、ジエチルケトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン等のうち少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。アミン化合物を含むガスとしては、モノメチルアミン(CH3NH2、メチルアミンともいう)、ジメチルアミン、トリメチルアミン等のメチルアミン化合物、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のエチルアミン化合物、ジメチルエチルアミン、メチルジエチルアミン等のメチルエチルアミン化合物のうち少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。有機ヒドラジン化合物を含むガスとしては、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、トリメチルヒドラジン、等のメチルヒドラジン系ガスのうち少なくともいずれかを含むガスを用いることができる。改質剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0052】
また、有機化合物を含むガスとしては、金属元素を含むガスが用いられる。金属元素を含むガスとしては、トリメチルアルミニウム((CH3)3Al)ガス、トリメチルガリウム((CH3)3Ga)ガス、トリメチルインジウム((CH3)3In)ガス等を用いることができる。改質剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0053】
改質剤の供給により、ウエハ200上のO-、O2等と、改質剤の一部が反応して、H2O等の反応副生成物が生成され、メチル基(CH3-)、エチル基(C2H5-)、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基等の炭化水素基やアミン基が吸着する。改質剤の供給により、ウエハ200上の炭化水素基やアミン基の吸着量を増加させることができる。そして、後述する成膜工程において、炭化水素基やアミン基が吸着したウエハ200に対して原料ガスが供給されることにより、原料ガスに含まれるハロゲン元素と、ウエハ200上に存在する炭化水素基やアミン基が反応して、ウエハ200上に原料ガスより分子数が少なく立体障害が少ない分子がウエハ200上に吸着され、原料元素の吸着量の多く連続した膜が形成される。
【0054】
具体的には、促進剤として例えば酸化性ガスであるO2ガスを、改質剤として例えばCH3NH2ガスを用いた場合、CH3NH2ガスの供給により、ウエハ200上に吸着したO、O2と、CH3NH2とが反応し、ウエハ200上からO、O2が脱離して、H2Oが生成されて排出される。そして、ウエハ200上には、(CH3)-、(CH3)N-、(CH3)NH-等の炭化水素基やアミン基が吸着して残留する。このとき、ウエハ200上にO、O2は一部残留する場合があるが、下地の酸化膜と、後述する成膜工程において形成される膜との界面に存在することになるため、デバイス特性への影響は少ないと考える。そして、原料ガスとして例えば四塩化チタン(TiCl4)ガスを用いた場合、後述する成膜工程において、TiCl4ガスに含まれるClと、ウエハ200上の(CH3)-、(CH3)N-、(CH3)NH-等とが反応して、(CH3)Cl、(CH3)NCl、(CH3)NHClとしてウエハ200上から脱離して排出される。すなわち、原料元素の吸着を阻害する塩化水素(HCl)等の反応副生成物の生成が抑制される。
【0055】
第3ステップでは、処理室201の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC241dで制御する改質剤の供給流量は、例えば0.01~5.0slmの範囲内の流量とする。
【0056】
(パージ、第4ステップ)
改質剤の供給を開始してから所定時間経過後にバルブ243dを閉じ、改質剤の供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の改質剤や反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開いたままとして、パージガスとしての不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。第4ステップで供給する不活性ガスの供給量は、第2ステップと同様とすることができる。また、処理室201内に残留するガスに応じて、パージ量(不活性ガスの供給量)を適宜調整することができる。ここで供給量とは、MFCで設定される供給流量、供給時間のいずれか又は両方を意味する。
【0057】
(所定回数実施、第5ステップ)
上記した第1ステップ~第4ステップをこの順に行うサイクルを所定回数(m回、mは1または2以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、炭化水素基やアミン基等を吸着させる。ここでは、ウエハ200上に、例えば(CH3)-、(CH3)N-、(CH3)NH-等の炭化水素基やアミン基が吸着する。これにより、後述する成膜工程において、原料ガスと反応ガスの供給により原料元素の吸着を阻害するHCl等の反応副生成物の生成が抑制される。
【0058】
以上の前工程における処理を、便宜上、以下のように示すこともある。以下の他の実施形態等の説明においても同様の表記を用いる。ここで「→」は順番に流すことを意味する。
【0059】
((促進剤供給→パージ)×p→パージ→改質剤→パージ)×m
(m、pは、それぞれ1または2以上の整数)
【0060】
なお、改質剤は、1回だけ供給する例を示したが、これに限るものでは無く、改質剤の供給についても(改質剤供給→パージ)×o(ここで、oは1または2以上の整数)として供給しても良い。oを2以上として行うことで、改質剤が、ウエハ200表面に吸着する量を増加させることができる。また、パージを行うことにより、改質剤を供給した際に生じる副生成物をウエハ200が存在する空間から除去することができ、ウエハ200の表面に到達する改質剤の量を増加させることができる。
【0061】
[成膜工程]
上述した前工程を行った後に、以下のウエハ200上に膜を形成する成膜工程を行う。
【0062】
(原料ガス供給、第6ステップ)
バルブ243aを開き、ガス供給管232a内に原料ガスを流す。原料ガスは、MFC241aにより流量調整され、ノズル249aのガス供給孔250aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき同時にバルブ243eを開き、ガス供給管232e内に不活性ガスを流してもよい。このとき、ノズル249b内への原料ガスの侵入を防止するために、バルブ243fを開き、ガス供給管232fに不活性ガスを流してもよい。
【0063】
このとき処理室201内に流している主なガスは、原料ガスである。すなわち、ウエハ200に対して原料ガスが供給される。
【0064】
原料ガスとしては、ハロゲン元素を含むガスを用いることができる。ハロゲン元素を含むガスとしては、例えばフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のうち少なくともいずれか1つを含むガスを用いることができる。原料ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0065】
また、原料ガスとしては、ハロゲン元素と金属元素を含むガスを用いることができる。ここでは、金属元素は、第3族から第12族元素の遷移金属の他、第13族元素(例えば、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In))や、シリコン元素(Si)等のうち少なくともいずれか1つを含むものとする。
【0066】
ハロゲン元素と第13族元素を含むガスとしては、例えば塩化アルミニウム(AlCl3)ガス等を用いることができる。ハロゲン元素とSiを含むガスとしては、例えば四塩化ケイ素(SiCl4)ガス、ジクロロシラン(SiH2Cl2)ガス、ヘキサクロロジシラン(Si2Cl6)ガス等を用いることができる。
【0067】
ハロゲン元素と遷移金属を含むガスとしては、ハロゲン元素と、例えばイットリウム(Y)、ランタン(La)等の第3族元素、例えばセリウム(Ce)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等の第4族元素、第5族元素、例えばクロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)等の第6族元素のうち少なくともいずれか1つを含むガス等を用いることができる。ハロゲン元素と遷移金属を含むガスとしては、例えば、TiCl4ガス、塩化ハフニウム(HfCl4)ガス、塩化ジルコニウム(ZrCl4)ガス、六フッ化タングステン(WF6)ガス、六塩化タングステン(WCl6)ガス、五塩化モリブデン(MoCl5)ガス、二塩化二酸化モリブデン(MoO2Cl2)ガス、四塩化酸化モリブデン(MoOCl4)ガス、六フッ化モリブデン(MoF6)ガス、二フッ化二酸化モリブデン(MoO2F2)ガス、四フッ化酸化モリブデン(MoOF4)ガス等を用いることができる。ハロゲン元素と遷移金属を含むガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0068】
このとき、有機リガンド含有ガス由来の炭化水素基やアミン基等が吸着したウエハ200、すなわち、表面が炭化水素基やアミン基により終端されたウエハ200に対してハロゲン元素を含む原料ガスが供給されることとなる。ここで、成膜工程が開始される前の前工程において、ウエハ200上に炭化水素基やアミン基が吸着されている。
【0069】
原料ガスの供給により、有機リガンドである炭化水素基やアミン基等が露出したウエハ200に対して原料ガスが供給される。これにより、原料ガスに含まれるハロゲン元素と、ウエハ200上に存在する炭化水素基やアミン基が反応して、ウエハ200上に原料ガスよりも分子サイズが小さい原料元素が吸着する。このため、原料ガスが吸着する場合に比べて、立体障害が少なくなる。すなわち、分子サイズの小さい原料元素がウエハ200(表面の下地膜)上に吸着され、ウエハ200上の原料元素の吸着密度を増加させることができ、原料元素の含有率の高い原料含有層を形成することができる。なお、この時、副生成物として、(CH3)Cl、(CH3)NCl、(CH3)NHClが生じる。この副生成物の大部分は、ウエハ200上から脱離して排出される。すなわち、原料元素の吸着を阻害する塩化水素(HCl)等の反応副生成物の生成が抑制される。
【0070】
具体的には、上述したように、本ステップにおいて、原料ガスとして例えばTiCl4ガスを用いた場合、TiCl4ガス中のClと、ウエハ上の(CH3)-、(CH3)NH-と、が反応し、(CH3)Cl、(CH3)NCl、(CH3)NHCl等としてウエハ200上から脱離する。そして、TiClx(xは4より小さい)がウエハ200上に吸着する。つまりTiCl4が吸着する場合に比べて立体障害が少ないTiClxがウエハ200上に吸着され、ウエハ200上のTi元素の吸着密度を増加させることができ、Ti元素の含有率の高いTi含有層を形成することができる。
【0071】
第6ステップでは、APCバルブ244を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC241aで制御する原料ガスの供給流量は、例えば0.1~2.0slmの範囲内の流量とする。原料ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。
【0072】
(パージ、第7ステップ)
原料ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ243aを閉じ、原料ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応の原料ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開いたままとして、パージガスとしての不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。第7ステップは、他のパージステップと同様の条件で行うことができる。
【0073】
(反応ガス供給、第8ステップ)
パージを開始してから所定時間経過後にバルブ243bを開き、ガス供給管232b内に、反応ガスを流す。反応ガスは、MFC241bにより流量調整され、ノズル249bのガス供給孔250bから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。なお、このとき同時にバルブ243fを開き、ガス供給管232f内に不活性ガスを流してもよい。また、ノズル249a内への反応ガスの侵入を防止するために、バルブ243eを開き、ガス供給管232e内に不活性ガスを流してもよい。
【0074】
このとき処理室201内に流している主なガスは、反応ガスである。すなわち、ウエハ200に対して反応ガスが供給される。
【0075】
反応ガスとしては、例えば水素元素(H)を含むH含有ガスを用いることができる。H含有ガスとしては、例えばH2ガス、アンモニア(NH3)ガス、ヒドラジン(N2H4)ガス、ジアゼン(N2H2)ガス、H2Oガス、H2O2ガス、H2+O2の混合ガス、重水素(D2)ガス、重アンモニア(ND3)ガス、モノシラン(SiH4)ガス、ジシラン(Si2H6)ガス、トリシラン(Si3H8)ガス、モノボラン(BH3)ガス、ジボラン(B2H6)ガス、B3H8ガス、ホスフィン(PH3)ガス等を含むガスを用いることができる。反応ガスとしては、これらのうち1以上を活性化したガス用いることができる。
【0076】
反応ガスの供給により、反応ガスは、ウエハ200上に形成された第1層の少なくとも一部と置換反応して、第2層が形成される。具体的には、反応ガスとして例えばNH3ガスを用いた場合、NH3ガスの供給により、NH3ガスは、ウエハ200上に形成されたTi含有層の少なくとも一部と置換反応する。置換反応の際には、Ti含有層に含まれるTiとNH3ガスに含まれるNとが結合して、ウエハ200上にTiN層が形成される。また、置換反応の際には、前工程において、ハロゲン元素の吸着量が低減されて、成膜工程においてTiの吸着量が増えているため、HCl等の反応副生成物の生成が抑制される。
【0077】
第8ステップは、APCバルブ244を調整して、処理室201内の圧力を、例えば1~3990Paの範囲内の圧力とする。MFC241bで制御する反応ガスの供給流量は、例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。反応ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~30秒の範囲内の時間とする。
【0078】
(パージ、第9ステップ)
反応ガスの供給を開始してから所定時間経過後にバルブ243bを閉じて、反応ガスの供給を停止する。このとき、排気管231のAPCバルブ244は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気し、ウエハ200上から残留ガスを除去して、処理室201内に残留する未反応もしくは第2層の形成に寄与した後の反応ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。このとき、バルブ243e,243fを開いたままとして、パージガスとしての不活性ガスの処理室201内への供給を維持する。
【0079】
すなわち、処理室201内に残留する未反応もしくは第2層の形成に寄与した後の反応ガスや上述の反応副生成物を処理室201内から排除する。不活性ガスはパージガスとして作用する。
【0080】
第9ステップは、他のパージステップと同様の条件で行うことができる。
【0081】
(所定回数実施、第10ステップ)
上記した第6ステップ~第9ステップを順に行うサイクルを所定回数(n回、nは1または2以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さの、所定の膜を形成する。ここでは、所定の膜として、金属含有膜である例えば窒化チタン(TiN)膜が形成される。
【0082】
以上の成膜工程における処理は、以下のように示すことができる。
【0083】
(原料ガス→パージ→反応ガス→パージ)×n
(nは1または2以上の整数)
【0084】
(所定回数実施、第11ステップ)
上記した第10ステップを行ったら、第1ステップに戻る。そして、上記した第5ステップと、上記した第10ステップと、をこの順に行うサイクルを所定回数(q回、qは1または2以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さの、所定の膜を形成する。ここでは、所定の膜として、金属含有膜である例えば窒化チタン(TiN)膜が形成される。
【0085】
したがって、以上の基板処理工程における処理は、以下のように示すことができる。
【0086】
[((促進剤供給→パージ1)×p→パージ2→改質剤→パージ3)×m→(原料ガス→パージ4→反応ガス→パージ5)×n]×q
(p、m、n、qは、1または2以上の整数であり、それぞれ異なる数であっても良く、適宜調整される。)なお、ここで、パージ1、パージ2、パージ3は行わなくても良い。
【0087】
(アフターパージおよび大気圧復帰)
ガス供給管243e,243fのそれぞれから不活性ガスを処理室201内へ供給し、排気管231から排気する。不活性ガスはパージガスとして作用し、これにより処理室201内が不活性ガスでパージされ、処理室201内に残留するガスや反応副生成物が処理室201内から除去される(アフターパージ)。その後、処理室201内の雰囲気が不活性ガスに置換され(不活性ガス置換)、処理室201内の圧力が常圧に復帰される(大気圧復帰)。
【0088】
(ウエハ搬出)
その後、ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、マニホールド209の下端が開口される。そして、処理済ウエハ200がボート217に支持された状態で、マニホールド209の下端から反応管203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0089】
ここで、前工程を行わない基板処理シーケンスを用いてウエハ200上に形成された膜は、連続膜にならずに島状に成長してしまう場合がある。すなわち、ウエハ200上への原料元素の吸着が不十分となり、被覆率が悪くなる。これに対して、上述した基板処理シーケンスを用いてウエハ200上に形成された膜は、結晶粒が小さく高密度で連続して形成され、被覆率が高くなる。
【0090】
つまり、成膜工程前に、前工程を行うことにより、ウエハ200上への原料元素の吸着を促進させることができ、原料元素の吸着密度を高めることができ、原料元素の含有率の高い膜を形成することができる。
【0091】
すなわち、膜を形成する前に、促進剤と改質剤を供給することにより、ウエハ表面上への原料元素の吸着を促進させることが可能となり、薄膜で被覆率の高い膜を形成することができる。
【0092】
(3)本態様による効果
本態様によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
(a)基板上に形成される膜の特性を向上させることができる。
(b)基板上に形成される膜を連続的に成長させることができる。ここで連続的とは、膜の材料の結晶が連なっていること、結晶の間隔が小さいこと等を意味する。
(c)原料元素の吸着密度を増加させ、被覆率を向上させることが可能となる。
(d)成膜工程において、HCl等の原料元素の吸着を阻害する反応副生成物の生成を抑制することができる。
【0093】
(4)他の態様
以上、本開示の一態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0094】
(変形例1)
本変形例では、上記の前工程において用いる促進剤として、有機系のガスを用いる。有機系のガスとしては、例えばアルカンを含むガスを用いる。アルカンを含むガスとしては、CnH2n+2で構成されるガスであって、例えばメタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)等を含むガス用いることができる。促進剤としては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0095】
促進剤として有機系のガスを供給することにより、ウエハ200上に、炭化水素基が吸着する。すなわち、有機系ガスを供給することにより、ウエハ200の表面は、CH-で終端される。これにより、改質剤の吸着が促進される。なお、有機系のガスを用いた場合には、ウエハ200の表面に露出している膜の状態を過度に変質させる可能性を低減することができる。例えば、ウエハ200の表面が金属元素を含む膜の際に、本開示の酸化性ガスを用いた場合、金属元素を含む酸化膜が形成される場合がある。酸化膜が形成されることにより、半導体デバイスの特性に影響を与える可能性がある。一方で、有機系のガスを用いた場合には、このような課題を生じることを抑制することができる。なお、ウエハ200の表面に露出している膜に酸素が含まれている場合には、本開示の酸化性ガスを用いてもこのような課題が生じる可能性は低い。
【0096】
この場合であっても、上述した
図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0097】
(変形例2)
本変形例では、上記の成膜工程における処理を、以下に示すように行う。「+」は同時に流すタイミングがあることを意味する。「( )」は省いてもよいことを意味する。
【0098】
(原料ガス→原料ガス+還元ガス→(還元ガス)→パージ→反応ガス→パージ)×n
(nは1または2以上の整数)
【0099】
この場合であっても、上述した
図4に示す基板処理シーケンスと同様の効果が得られる。
【0100】
具体的には、例えば原料ガスとしてTiCl4ガス、反応ガスとしてNH3ガス、還元ガスとしてSiH4ガスを用いることができ、上記のシーケンスによりTiN膜等を形成する場合にも、好適に適用できる。
【0101】
(変形例3)
上述の態様では、上述の基板処理シーケンスを、同一の処理室(処理容器)内にて連続して(in-situで)行う場合を用いて説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、
図5に示されているように、複数の処理炉202a~202dを有し、例えば基板搬送装置112が設置された真空搬送室103に対して複数の処理室201a~201dがそれぞれ接続されたクラスタ型の基板処理装置10を用いて行ってもよい。すなわち、上述の基板処理シーケンスのうち少なくともいずれかの処理と他のいずれかの処理とを、それぞれ異なる処理室(処理容器)内にて(ex-situで)行うようにしてもよい。
【0102】
本変形例では、コントローラ121により、例えば上述の前工程と上述の成膜工程とを異なる処理炉の異なる処理室で別々に実行する。この場合、前工程を行う処理炉において前処理を実行するコントローラ121Aと、成膜工程を行う処理炉において成膜処理を実行するコントローラ121Bと、をホストコンピュータまたは群管理制御装置としてのコントローラ121により制御する。すなわち、基板処理装置10により、促進剤と改質剤を供給する前処理と、原料ガスと反応ガスを供給する成膜処理と、を異なる処理室で別々に実行する。いずれの場合においても、上述の態様と同様の効果が得られる。なお、これらの処理をin-situで行う場合は、処理間に行われる基板の処理室外への搬出、または処理室外からの搬入によって生じ得る基板の汚染や、基板の表面状態の変化などを抑制することができる。また、これらの処理をin-situで行う場合は、処理間の遷移時間を短縮させることができる。一方で、これらの処理をex-situで行う場合は、異なる処理室内にて各処理を並行して行うことができ、その分、生産性を高めることができる。
【0103】
これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様及び変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様及び変形例と同様の効果が得られる。
【0104】
上記態様では、前工程として促進剤を時分割供給する例について説明したが、これに限らず、促進剤を連続的に供給する場合にも適用できる。
【0105】
また上記態様では、基板処理工程において、不活性ガスを連続的に供給する場合を例にして説明したが、これに限らず、パージ工程時においてのみ、不活性ガスを供給するようにしてもよい。
【0106】
また、上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。
【0107】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【0108】
以上、本開示の態様及び変形例を具体的に説明した。しかしながら、本開示の態様及び変形例は上述の態様及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0109】
200 ウエハ(基板)