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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025066894
(43)【公開日】2025-04-24
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフ用流路切替バルブ
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/26 20060101AFI20250417BHJP
【FI】
G01N30/26 M
G01N30/26 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023176430
(22)【出願日】2023-10-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀賀 雅史
(57)【要約】
【課題】
本発明は、液体クロマトグラフにおいて送液ポンプのパージ時の脱気ユニットの脱気膜破壊防止、並びに、液体クロマトグラフ非稼働時の脱気ユニットのチャンバーの減圧部における移動相凝縮を防止する流路切替バルブを提供するものである。
【解決手段】
少なくとも3つの切替ポジションを有し、また少なくとも5つの流路接続部を有した液体クロマトグラフ用流路切替バルブであって、前記流路接続部のうち2つは、脱気ユニットの入口への接続部と、脱気ユニットの出口への接続部となっていることを特徴とする液体クロマトグラフ用流路切替バルブ。

【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステーターとローターを有する液体クロマトグラフ用流路切替バルブであって、
脱気ユニットに接続する以外、前記ローターの回転により、少なくとも移動相供給流路、パージポンプ、送液ポンプのいずれか2つを連通するように切り替えることを特徴とする、
液体クロマトグラフ用流路切替バルブ。
【請求項2】
前記ステーターには等間隔で少なくとも均等5つの貫通孔が設けられ、
前記ローターには自身の回転により貫通孔と切り替えて連通する溝が設けられることを特徴とする、
請求項1の液体クロマトグラフ用流路切替バルブ。
【請求項3】
前記ローターはその貫通孔の数nにより、360°/nの角度で時計回り/反時計回り回転して切り替えることを特徴とする、請求項2の液体クロマトグラフ用流路切替バルブ。
【請求項4】
前記少なくとも5つの貫通孔は、少なくとも移動相供給流路、脱気ユニットの入口流路、脱気ユニットの出口流路、移動相送液ポンプへ接続するポンプ流路、パージポンプへ接続するパージポンプ流路へ接続される、
請求項2の液体クロマトグラフ用流路切替バルブ。
【請求項5】
さらに、洗浄液を供給する流路が接続されていることを特徴とする請求項1記載の液体クロマトグラフ用流路切替バルブ。
【請求項6】
さらに、廃液流路を接続することを特徴とする請求項1記載の液体クロマトグラフ用流路切替バルブ。
【請求項7】
ステーターとローターを有する液体クロマトグラフ用流路切替バルブが、脱気ユニットに接続する以外、前記ローターの回転により、少なくとも移動相供給流路、パージポンプ、送液ポンプのいずれか2つを連通するように切り替えて接続することで、液体クロマトグラフの流路切替として使用する方法。
【請求項8】
前記ステーターには等間隔で少なくとも均等5つの貫通孔が設けられ、
前記ローターには自身の回転により貫通孔と切り替えて連通する溝が設けられ、
前記ローターはその貫通孔の数nにより、360°/nの角度で時計回り/反時計回り回転して切り替えることを特徴とする、
請求項7の流路切替として使用する方法。
【請求項9】
ステーターとローターを有する液体クロマトグラフ用流路切替バルブが、脱気ユニットに接続する以外、前記ローターの回転により、少なくとも移動相供給流路、パージポンプ、送液ポンプのいずれか2つを連通するように切り替えて接続することで、液体クロマトグラフにおけるパージする方法。
【請求項10】
前記ステーターには等間隔で少なくとも均等5つの貫通孔が設けられ、
前記ローターには自身の回転により貫通孔と切り替えて連通する溝が設けられ、
前記ローターはその貫通孔の数nにより、360°/nの角度で時計回り/反時計回り回転して切り替えることを特徴とする、
請求項9のパージする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフ用の流路切替バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフィーは、送液ポンプによって加圧送液された移動相中の流体場に試料を注入し、分析カラムで分離した後、検出器において試料中の成分の定量や定性を行う方法である。
【0003】
液体クロマトグラフィーでは100MPaを超過する送液圧が必要とされることもあるため、液体クロマトグラフにおける送液ポンプは、高圧送液に適しているプランジャー式の送液ポンプが好適に用いられる。
【0004】
プランジャー式の送液ポンプは、主に電力駆動式のモーターなどを用いて往復動作させるプランジャーと、チェック弁と呼ばれる逆止弁を用いて構成される。
【0005】
液体クロマトグラフにおけるプランジャー式の送液ポンプの欠点として、流路中の移動相に気相が入り込み、それがプランジャー式の送液ポンプに到達した際に、チェック弁が正常に動作しなくなる、エア噛みと呼ばれる送液送液不良を起こすことが、よく知られている。
【0006】
このエア噛みを防止するため、分析実施の前に手動、あるいは自動で流路を移動相で満たすパージ、あるいは呼び水、あるいはプライミングなどと呼ばれる工程の実施は、液体クロマトグラフにおいて好適に実施される。
【0007】
また、液体クロマトグラフには、エア噛みを防止することや、検出器における信号の安定性を向上させる目的で、流路中の移動相に溶け込んだ溶存ガスを取り除くユニットである脱気ユニットを、送液ポンプよりも上流に配置することがある。
【0008】
液体クロマトグラフにおける脱気ユニットは、主にチャンバーと呼ばれる減圧容器と、チャンバー内に設置したガス透過性のある脱気膜から構成され、脱気膜を移動相の流路の一部として配置し、その脱気膜の外側にあるチャンバーを大気圧よりも減圧制御することにより、移動相に含まれる溶存ガス成分を流路から除外する形態が一般的である。別の脱気ユニットの実施形態としては、前述の構成とは真逆に、脱気膜の外側に移動相を通し、脱気膜の内側を真空ポンプなどを用いて減圧することにより、移動相に含まれるガス成分を除外する形態がある。脱気ユニットの実施形態は、移動相の流量や、移動相の種類によって選択することが一般的である。
【0009】
脱気ユニットの脱気膜としては、ガス透過性が高く、かつ液体クロマトグラフィーに用いる移動相に浸食されないポリテトラフルオロエチレンや、ペルフルオロアルコキシアルカンや、アモルファスフロロポリマーなどのフッ素樹脂材料が好適に用いられる。
【0010】
液体クロマトグラフにおいて、パージを実施する際には、送液ポンプだけではなく脱気ユニットも同時にパージを実施することで、流路中から気相が除去され、送液ポンプのエア噛み防止や、検出器における信号の安定性を確保することができる。
【0011】
一方で、脱気膜に用いられるガス透過性が高いフッ素樹脂材料は、一般的に液体クロマトグラフの流路として採用されているステンレススチール材や、ポリエーテルエーテルケトン材料と比較すると耐圧が低く、パージの際に脱気膜に過大な圧力が印加された場合は脱気膜が破壊されるため、パージ時に溶離液を脱気膜に通過させる際には吸引経路となるようにするなどし、流路詰まりなどが発生した場合でもパージを実施する際には脱気膜に過大な圧力がかからないようにするなどの留意が必要である(図1ab、図2参照)。
【0012】
一方で、脱気膜の破壊を防止するために、パージ時に溶離液を脱気膜に通過させる際に吸引経路となるように流路構成をした場合は、脱気ユニットと移動相を保管している容器が流体連結されている状態で液体クロマトグラフが非稼働状態で放置され、また移動相に有機溶剤を使用しているなど、移動相の揮発性が高い場合、脱気膜のガス透過性が高いことにより、脱気ユニットの脱気膜をガス化して通過した移動相が、脱気ユニットのチャンバーの減圧部に蒸気として満たされる場合がある。この状態でチャンバーの温度が室温変動などにより上下することなどにより、チャンバーに満ちた移動相の蒸気が凝縮することがある。移動相の蒸気がチャンバーに凝縮した状態で液体クロマトグラフが再稼働し、減圧部の減圧制御が開始された場合、凝縮した移動相は減圧に用いる真空ポンプに流れ込む。真空ポンプは、液体クロマトグラフィーに用いられる移動相によって浸食される場合があり、凝縮した移動相が真空ポンプに流れ込むことが原因となり真空ポンプが故障する場合がある(図3ab参照)。有機溶剤のガスを含む空間を真空にする際には、一般的に真空トラップやコールドトラップと呼ばれる、減圧操作において気体を液体に濃縮することにより、真空ポンプに達するのを防ぎ、真空ポンプの故障を防止するための機構を用いることがある。しかしながら、液体クロマトグラフ自体のサイズが大きくなることや、構成要素が増えることによる価格の上昇、頻繁なメンテナンスが必要になることなどの理由により、液体クロマトグラフで使用する脱気ユニットにおいては、一般的に真空トラップやコールドトラップは用いない。
そのため、液体クロマトグラフが非稼働時には、流路切替バルブや電磁弁などを、移動相を保管している容器と脱気ユニットの間の流路中に設けることにより移動相と脱気膜の流体連結を断つ必要がある。(図4参照)。
【0013】
このように、液体クロマトグラフにおいて送液ポンプのパージ時の脱気ユニットの脱気膜破壊防止、並びに、液体クロマトグラフ非稼働時の脱気ユニットのチャンバーの減圧部における移動相凝縮を防止することを同時に達成しようとすると、脱気ユニットよりも前段に流路切替バルブや電磁弁が、脱気ユニットよりも後段に流路切替バルブが必要となり、液体クロマトグラフのコスト上昇や装置大型化などの課題があった。また、電磁弁を用いる場合は、用いる移動相の種類によっては耐薬品性などから使用できない課題があった。
【0014】
特許文献1では従来の液体クロマトグラフにおける送液ポンプのパージ方法が開示されている。脱気ユニットについては特に開示されていないが、脱気ユニットを用いる場合は送液ポンプの上流となる移動相供給流路中に配置されることが当業者にとっては一般的である。この場合は脱気ユニットと移動相保管容器の流体接続が維持され続けるため、液体クロマトグラフが非稼働状態ではチャンバーの減圧部に移動相が凝縮するという課題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】再表2020/179001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、液体クロマトグラフにおいて送液ポンプのパージ時の脱気ユニットの脱気膜破壊防止、並びに、液体クロマトグラフ非稼働時の脱気ユニットのチャンバーの減圧部における移動相凝縮を防止する流路切替バルブを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明を見出した。
すなわち、本発明は、
少なくとも3つの切替ポジションを有し、また少なくとも5つの流路接続部を有した液体クロマトグラフ用流路切替バルブであって、前記流路接続部のうち2つは、脱気ユニットの入口への接続部と、脱気ユニットの出口への接続部となっていることを特徴とする液体クロマトグラフ用流路切替バルブである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の液体クロマトグラフ用流路切替バルブは、少なくとも5つの貫通孔が設けられたステーターと、貫通孔を連通するための溝が設けられたローターを有し、
前記少なくとも5つの貫通孔はそれぞれ移動相供給流路、脱気ユニットの入口流路、脱気ユニットの出口流路、移動相送液ポンプへ接続するポンプ流路、パージポンプへ接続するパージポンプ流路へ接続可能であり、前記溝が設けられたローターを回転することにより、連通する貫通孔を切り替えることが可能であることを特徴とする。
前記溝が設けられたローターは少なくとも3つの回転位置へ制御可能であり、ローターを回転させることにより、流路切替バルブを少なくとも3つの切替ポジションに切り替えが可能である。
流路切替バルブの第一の切替ポジションは、移動相供給流路と脱気ユニットの入口流路が流体接続され、また脱気ユニットの出口流路とポンプ流路が流体接続され、パージポンプ流路は他の流路とは流体接続されない。
流路切替バルブの第二の切替ポジションは、脱気ユニットの入口流路と脱気ユニットの出口流路が流体接続され、またパージポンプ流路とポンプ流路が流体接続され、移動相供給流路は他の流路とは流体接続されない。
流路切替バルブの第三の切替ポジションは、移動相供給流路と脱気ユニットの入口流路が流体接続され、また脱気ユニットの出口流路とパージポンプ流路が流体接続される。ポンプ流路については他の流路との流体接続は特に制限はないが、実施形態としては他の流路とは流体接続しないことが好ましい。
流路切替バルブは主に、回転せずに流路と接続するための2以上の貫通孔を持つか、あるいは2以上貫通孔と連結されるステーターと、前記貫通孔と流体接続するための1以上の溝が設けられており、回転することにより、流体接続する貫通孔を切り替えるローターにより構成され、ステーターとローターは面接触しており、ローターが回転することで摺動する。流路切替バルブからの流体の漏れを防止するために、ステーターあるいはローターあるいはステーターとローターの両方に対して、バネなどを用いてステーターとローターの接触面に対して垂直に働く力を印加し、耐圧を上げることにより流体の漏れを防止する手段が一般的である。
ステーターと流体接続された貫通孔には、配管接続手段を設けることが一般的である。配管接続手段としては、フィッティングと呼ばれる部品を用いることが一般的である。フィッティングは配管に対して極僅かに噛み込むことにより配管を貫通孔に固定し流体をシールするフェラルと呼ばれる部品と、フェラルを貫通孔に押し付ける押しネジと呼ばれる部品により構成されることが一般的である。フェラルと押しネジが一体化した形態や、貫通孔と配管との間のデッドボリュームを軽減するために配管の先に樹脂材を設け、フェラルを用いずに押しネジと樹脂材を用いて流体をシールする方式などが当業者にはよく知られている。
ローターを回転させる手段としては、電気を用いて回転運動を出力するモーターを用いて回転させることが一般的である。
ローターの回転位置の制御の方法は、位置センサを用いて回転位置を検知することによりローターの回転位置を制御する方法や、ステッピングモーターに印加するパルス数を用いて回転位置を制御する方法が好適に用いられる。
ステーターとローターの材質には特に制限はなく、液体クロマトグラフの実施形態によって適宜選択される。接液部については、例えばイオンクロマトグラフの場合は金属材料からのコンタミネーションを避けるためにポリエーテルエーテルケトンやポリイミドなどの樹脂材や、アルミナやジルコニアなどのセラミック材が好適に用いられ、例えばサイズ排除クロマトグラフのうち、有機溶媒を用いる場合は、有機溶媒により侵されにくいステンレス材やチタン材などの金属材や、アルミナやジルコニアなどのセラミック材が好適に用いられる。
パージポンプは、一般的にシリンジポンプと呼ばれる、圧力の作用を用いて流体を移動することが可能であるポンプが好適に用いられるが、移動相の吸引と吐出動作が可能であればパージポンプの実施形態には特に制限はない。
パージポンプを用いて送液ポンプのパージを実施する際には、送液ポンプよりも下流の流路に、送液ポンプを分析カラム流路か廃液流路に切り替えることが可能なドレインバルブを設け、ドレインバルブを廃液流路側に切り替えることでパージを実施する方法を例示することができる。廃液流路へ流れた移動相の処理は、廃液容器などの液体クロマトグラフの系外に排出することや、移動相容器に戻すことにより移動相として再利用することを例示することができるが、特に制限はない。
ドレインバルブには、手動で流路を切り替える手段や、流路切替バルブを用いて自動で流路を切り替える手段が好適に用いられる。図5には2つの送液ポンプと1つの廃液流路を接続したドレインバルブを例示する。3以上の送液ポンプを接続したい場合は1-6方のロータリー型バルブを用い、バルブの中心に廃液流路を、周辺6方のうち5つまで送液ポンプ接続することができ、中心と送液ポンプを接続することにより各送液ポンプを廃液流路に切替可能であり、周辺6方のうち送液ポンプを接続していない箇所に切り替えることにより、各送液ポンプを分析カラム流路に切り替えることが可能であることを例示することができる。このように、本発明の流路切替バルブを用いる際のドレインバルブは、各送液ポンプについて分析カラム流路か廃液流路に切替可能であればよく、実施形態には特に制限はない。
ドレインバルブを用いたパージを実施中はパージポンプと分析カラムとの流体接続は切断されないが、一般的には分析カラムは非常に圧力損失が高いため、パージポンプから送液された流体はほぼ全てパージバルブを通って廃液流路側に移動する。(図6a、b参照)
また、複数の併設されたポンプを1つのドレインバルブに接続し、廃液流路に接続する送液ポンプを順次切り替えながらパージすることにより、すべての送液ポンプがパージ可能であることは当業者にはよく知られる従来技術である。図7に例示した2つの送液ポンプが併設された流路の場合、パージを実施中はパージポンプと分析カラムA、および分析カラムBとの流体接続は切断されないが、一般的には分析カラムは非常に圧力損失が高いため、パージポンプから送液された流体はほぼ全てパージバルブを通って廃液流路側に移動する。(図7a、b参照)
【発明の効果】
【0018】
本発明により、液体クロマトグラフにおいて送液ポンプのパージ時の脱気ユニットの脱気膜破壊防止、並びに、液体クロマトグラフ非稼働時の脱気ユニットのチャンバーの減圧部における移動相凝縮を防止する流路切替バルブを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a.)パージ時に移動相を脱気膜に通過させる際に吐出経路となっている場合の正常パージ時の図である。(b.)パージ時に移動相を脱気膜に通過させる際に吐出経路となっている場合に、流路詰まりが発生することにより脱気膜に過大な圧力がかかり、脱気膜が破壊したことにより真空ポンプに移動相が流れ込む様子を示す異常パージ時の図である。
図2】パージ時に移動相を脱気膜に通過させる際に吸引経路となっている場合のパージ時の図である。
図3】(a.)液体クロマトグラフが非稼働時に、移動相容器と流体連結された脱気ユニット内部で脱気膜を透過した移動相がチャンバー内で凝縮する様子を示す図である。(b.)チャンバー内に凝集した移動相が、真空制御ユニットを稼働させた際に真空制御ユニットに流れ込む様子を示す図である。
図4】液体クロマトグラフが非稼働時に、移動相容器と脱気ユニットの流体連結を断つために電磁弁を流路に追加したことを示す図である。
図5】(a.)ドレインバルブの切替位置のうち、送液ポンプA、Bともに廃液流路に接続しないように切り替えた位置を示す図である。(b.)ドレインバルブの切替位置のうち、送液ポンプAについて廃液流路に切り替えた位置を示す図である。(c.)ドレインバルブの切替位置のうち、送液ポンプBについて廃液流路に切り替えた位置を示す図である。
図6】(a.)本発明の流路切替バルブを用いた送液ポンプのパージのうち、移動相の吸引工程を示す図である。(b.)本発明の流路切替バルブを用いた送液ポンプパージのうち、移動相の吐出工程を示す図である。
図7】(a.)本発明の流路切替バルブを用いて、併設された送液ポンプのうち送液ポンプAのパージにおける吐出工程を示す図である。(b.)本発明の流路切替バルブを用いて、併設された送液ポンプのうち送液ポンプBのパージにおける吐出工程を示す図である。
図8】本発明である流路切替バルブの3つの切替ポジションを示す図である。
図9】本発明である流路切替バルブを用いた液体クロマトグラフの流路図の一部を示す図である。
図10】本発明である流路切替バルブの第一の切替ポジションの液の流れを示す図である。
図11】本発明である流路切替バルブの第二の切替ポジションの液の流れを示す図である。
図12】本発明である流路切替バルブの第三の切替ポジションの液の流れを示す図である。
図13】本発明である流路切替バルブの第四の切替ポジションと、洗浄液接続と廃液配管接続を付加した別様態を示す図である。
図14】本発明である流路切替バルブを用いた液体クロマトグラフにおいて、洗浄液接続と廃液配管接続を付加した別様態における4つの切替ポジションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
【実施例0021】
以下、図8に示す流路切替バルブと、図9に示す液体クロマトグラフの構成を用いた実施例にて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
流路切替バルブは少なくとも3つの切替ポジションを有しており、少なくとも5つの流路が接続されている。
少なくとも5つの流路は、移動相を保管している容器から流路切替バルブに流体接続する移動相供給流路と、流路切替バルブから脱気ユニットのチャンバーの入口に流体接続される脱気ユニットの入口流路と、脱気ユニットのチャンバーの出口から流路切替バルブに流体接続される脱気ユニットの出口流路と、流路切替バルブと移動相送液ポンプを流体接続するポンプ流路と、流路切替バルブとパージポンプユニットを流体接続するパージポンプ流路である。
また流路切替バルブのローターには少なくとも3本の溝が設置されている。3本の溝の長さや太さに関しては特に制限がなく、また3本の溝が同一の長さや太さである必要はない。
流路切替バルブの第一の切替ポジションは、移動相供給流路と脱気ユニットの入口流路が流体接続され、また脱気ユニットの出口流路とポンプ流路が流体接続され、パージポンプ流路は他の流路とは流体接続されない。これにより、第一の切替ポジションでは脱気ユニットで溶存ガス成分を除去した移動相を送液ポンプにて送液することが可能となる。(図10参照)
流路切替バルブの第二の切替ポジションは、脱気ユニットの入口流路と脱気ユニットの出口流路が流体接続され、またパージポンプ流路とポンプ流路が流体接続され、移動相供給流路は他の流路とは流体接続されない。これにより、第二の切替ポジションでは、移動相を保管している容器を脱気ユニットと流体接続させないことにより脱気ユニットのチャンバー内部での移動相の凝縮を防止することと、脱気ユニットの入口と出口を閉ループとし脱気ユニットのチャンバーの減圧部に蒸発する液体の量を制限することにより脱気ユニットのチャンバー内部での移動相の凝縮を防止することと、シリンジで吸引した移動相を送液ポンプに送液するパージが可能となることと、送液ポンプへの移動相供給を断つことにより流路切替バルブ以降で液漏れが発生した際に移動相が液体クロマトグラフ内部に漏れ続けることを防止することが可能となる。(図11参照)
流路切替バルブの第三の切替ポジションは、移動相供給流路と脱気ユニットの入口流路が流体接続され、また脱気ユニットの出口流路とパージポンプ流路が流体接続される。ポンプ流路については他の流路との流体接続は特に制限はないが、他の流路とは流体接続されない。これにより、第三の切替ポジションでは、脱気ユニットで溶存ガス成分を除去した移動相をパージポンプで吸引することが可能となる。(図12参照)
本発明の流路切替バルブを用いた液体クロマトグラフの運用形態例について表1に示す。
【0022】
【表1】
【0023】
まず、液体クロマトグラフの電源が投入されていない非稼働時の流路切替バルブは第二の切替ポジションとする。
電源投入時には、流路切替バルブの動作確認のため、ポジションの切替を実施しても良いが、動作確認が完了した際には第二の切替ポジションとする。
液体クロマトグラフの操作者による指示、あるいはウォームアップと呼ばれる液体クロマトグラフ立ち上げ時の自動処理にて送液ポンプのパージを実施する場合は、まず流路切替バルブを第三の切替ポジションとする。この状態でパージポンプを吸引方向に動作させることにより、移動相をパージポンプに吸引する。続いて流路切替バルブを第二の切替ポジションとする。この状態でパージポンプを吐出方向に動作させることにより、パージポンプ内部の移動相を送液ポンプに吐出する。この際、送液ポンプ以降の流路に分離カラムが接続されている場合、パージポンプのみの駆動では加圧が足らず、送液ポンプのパージができない場合がある。そのような場合は、送液ポンプと分離カラムの間に、パージ用のバルブを設けることにより送液ポンプのパージを実施する方法や、パージポンプと送液ポンプを同時に駆動することにより送液ポンプのパージを実施する方法を用いれば良い。このパージポンプの吸引と吐出動作をセットとして1以上の回数を実施することにより、送液ポンプのパージを実施する。送液ポンプのパージの実施回数は操作者が指定したパージ回数やパージ容量などによって決定すればよく、特に制限はない。送液ポンプのパージが完了した際には、流路切替バルブは第二の切替ポジションとなる。パージポンプの動作において、吸引時は脱気ユニットを通過するが、吐出時は脱気ユニットを通過しない流路となるため、送液ポンプのパージにおいて脱気ユニットの脱気膜の破壊を防止することが可能となった。
続いて、液体クロマトグラフの操作者による指示、あるいはウォームアップにて送液ポンプの送液を開始する場合は、流路切替バルブを第一の切替ポジションとする。送液ポンプのパージから送液ポンプの送液開始は、ウォームアップなどによる自動処理において連続した動作として実施しても特に問題はない。
その後、分析開始から分析終了までは流路切替バルブは第一の切替ポジションで実施する。
分析終了後は、シャットダウンとして当業者にはよく知られている液体クロマトグラフの停止処理を手動、または自動処理にて実行する。シャットダウンは一般的に液体クロマトグラフの温調部を停止し、送液ポンプの流量を低下させ、規定時間経過や温調部が規定温度となった場合などに送液ポンプを停止し、装置の電源を切る動作である。シャットダウンにおいても送液ポンプが駆動している状態では流路切替バルブは第一の切替ポジションとする、送液ポンプを停止した際には流路切替バルブは第二の切替ポジションとする。その後、液体クロマトグラフの電源が切られた状態では流路切替バルブは第二の切替ポジションで維持される。
分析の途中で、試料の準備などにより分析しない状態がある場合、スタンバイ機能などとして当業者にはよく知られている液体クロマトグラフの稼働状態は維持しつつ、移動相の消費を抑えるために送液ポンプの流量を落とすことがある。その際には流路切替バルブは第一の切替ポジションにすることで、移動相の送液ポンプへの供給を続けることが可能となる。
本実施例においては、流路切替バルブの円周上に等間隔で6つの流路接続が可能であり、また流路切替バルブの中心に1つの流路接続が可能である流路切替バルブを図示している。本発明で使用する5つの流路接続部以外の流路接続部はストッププラグなどを用いて封止することが望ましいが、本発明で使用する5つの流路接続以外にも流路接続しても特に問題はなく、本発明の流路切替バルブを用いて、3つの切替ポジション以外の切替ポジションを有しても問題はない。
例えば、本発明の流路切替バルブに洗浄液を保管する容器を接続することにより、洗浄液を送液ポンプ以降に流すことで分析カラムを含めた流路洗浄が可能となる。洗浄液を用いた流路洗浄実施前に必要に応じて洗浄液の呼び水を実施する。洗浄液の呼び水は流路切替バルブを第一の切替ポジションとした状態でパージポンプを用いて洗浄液を吸引した後、流路切替バルブを第四の切替ポジションとした状態でパージポンプを吐出することにより可能となる。洗浄液の呼び水を実施する場合、パージポンプの吸引と吐出動作をセットとして1以上の回数を実施することにより、洗浄液の呼び水を実施する。洗浄液の呼び水の実施回数は操作者が指定した回数や容量などによって決定すれば良く、特に制限はない。洗浄液を用いた流路洗浄は、流路切替バルブを第四の切替ポジションとした状態で送液ポンプを用いて送液することにより実施可能であることが例示できる。
また例えば廃液流路を接続しパージポンプのプライミングを可能とすることにより、液体クロマトグラフにて使用する移動相を切り替える場合や、長期使用していなかった液体クロマトグラフを再度使用する場合や、新規に液体クロマトグラフを立ち上げる場合などに、移動相切替途中のパージポンプ内部にある液体や、流路中の気体を送液ポンプに送ることなく液体クロマトグラフ外に排出することなどが可能となる。パージポンプのプライミングは、流路切替バルブを第三の切替ポジションとした状態でパージポンプを用いて移動相を吸引した後、流路切替バルブを第四の切替ポジションとした状態でパージポンプを吐出することにより可能となる。パージポンプのプライミングを実施する場合、パージポンプの吸引と吐出動作をセットとして1以上の回数を実施することにより、パージポンプのプライミングを実施する。パージポンプのプライミング実施回数は操作者が指定したプライミング回数やプライミング容量などによって決定すればよく、特に制限はない。廃液流路へ流れた移動相や洗浄液の処理は、廃液容器などの液体クロマトグラフの系外に排出することを例示することができるが、特に制限はない。
このように本発明で使用する3つの切替ポジションの以外の切替ポジションを有することや、5つの流路接続部以外にも流路接続することが可能であり、実施形態については実施者が適宜選択することが可能である。(図13参照)
本発明の流路切替バルブを用いて、3つの切替ポジション以外の切替ポジションを有し、また5つの流路接続部以外にも流路接続した液体クロマトグラフの運用形態例について表2に、4つの切替ポジションを有する流路切替バルブを図14に示す。
【0024】
【表2】
【0025】

これにより、液体クロマトグラフにおいて送液ポンプのパージ時の脱気ユニットの脱気膜破壊防止、並びに、液体クロマトグラフ非稼働時の脱気ユニットのチャンバーの減圧部における移動相凝縮を防止する流路切替バルブを提供することが可能となった。
【符号の説明】
【0026】
1.一般的な流路切替バルブ
2.ローター溝
3.ストッププラグ
4.移動相容器
5.移動相供給流路
6.脱気ユニットの入口流路
7.脱気ユニットの出口流路
8、8A、8B.ポンプ流路
9.パージポンプ流路
10.脱気ユニット
11.脱気膜
12.真空ポンプ
13.パージポンプ
14、14A、14B.送液ポンプ
15.本発明の流路切替バルブ
16、16A、16B.分離カラム
17.洗浄液
18、18A、18B.廃液流路
19.破れた脱気膜
20.閉塞箇所
21.チャンバー内で凝縮した移動相
22.電磁弁
23.ドレインバルブ
図1
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