IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大陽日酸株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ガス精製方法及びガス精製装置 図1
  • 特開-ガス精製方法及びガス精製装置 図2
  • 特開-ガス精製方法及びガス精製装置 図3
  • 特開-ガス精製方法及びガス精製装置 図4
  • 特開-ガス精製方法及びガス精製装置 図5
  • 特開-ガス精製方法及びガス精製装置 図6
  • 特開-ガス精製方法及びガス精製装置 図7
  • 特開-ガス精製方法及びガス精製装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025006829
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】ガス精製方法及びガス精製装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20250109BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B01D53/04 110
B01D53/04 230
B01D53/26 231
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023107840
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 正也
(72)【発明者】
【氏名】富田 優志
【テーマコード(参考)】
4D012
4D052
【Fターム(参考)】
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CA01
4D012CA03
4D012CA04
4D012CA05
4D012CA20
4D012CB16
4D012CD01
4D012CD04
4D012CD05
4D012CD10
4D012CE01
4D012CE03
4D012CF02
4D012CF04
4D012CF10
4D012CH05
4D012CJ03
4D012CJ05
4D052CD00
4D052DA02
4D052DA06
4D052DA08
4D052DB01
4D052GA01
4D052GB01
4D052GB08
4D052HA01
4D052HA02
4D052HA03
4D052HA21
(57)【要約】
【課題】圧縮機等を必要とすることなく再生ガスを効率的に利用することができ、再生ガスの排ガス量を削減して製品ガスの回収率を高めることが可能なガス精製方法及びガス精製装置を提供する。
【解決手段】3つの吸着塔2A,2B,2Cを用いて原料ガスG1の不純物を吸着除去する吸着工程と、吸着塔2A,2B,2Cを加熱して不純物を吸着塔2A,2B,2Cから離脱させる再生工程とを繰り返して実施し、且つ、吸着塔2A,2B,2Cのうちの少なくとも1つが吸着工程を実施し、吸着工程で吸着塔から排出される、原料ガスG1中から不純物を除去して得られた精製ガスG2の一部を再生工程において吸着塔2A,2B,2Cをパージする再生ガスG3として使用する方法であり、3つの吸着塔2A,2B,2Cのうち少なくとも2つの吸着塔2B,2Cが再生工程を実施するときに、再生ガスG3を、再生工程を実施する各々の吸着塔2B,2Cに順次流通させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスの不純物を吸着する吸着剤が充填された少なくとも3つの吸着塔を用い、TSA(Thermal Swing Adsorption)方式により、前記吸着塔で前記原料ガスの前記不純物を吸着除去する吸着工程と、前記吸着塔を加熱することにより、前記吸着塔で吸着した前記不純物を前記吸着塔から離脱させる再生工程とを繰り返して実施し、且つ、3つの前記吸着塔のうち、少なくとも1つの前記吸着塔が前記吸着工程を実施し、前記吸着工程で前記吸着塔から排出される、前記原料ガス中から前記不純物を除去して得られた精製ガスの一部を、前記再生工程において前記吸着塔をパージする再生ガスとして使用しながらガス精製を行うガス精製方法であって、
3つの前記吸着塔のうち、少なくとも2つの前記吸着塔が前記再生工程を実施するときに、前記再生ガスを、前記再生工程を実施する各々の前記吸着塔に順次流通させることを特徴とするガス精製方法。
【請求項2】
前記再生工程は、少なくとも、前記吸着塔を加熱する加熱工程と、該加熱工程後の前記吸着塔を前記吸着工程が実施可能な温度まで冷却する冷却工程とを含み、
3つの前記吸着塔のうち、少なくとも1つの前記吸着塔が前記加熱工程を実施し、且つ、少なくとも1つの前記吸着塔が前記冷却工程を実施するときに、前記冷却工程を実施している前記吸着塔に前記再生ガスを導入するとともに、前記冷却工程を実施している前記吸着塔から排出される前記再生ガスを、前記加熱工程を実施している前記吸着塔に導入することを特徴とする請求項1に記載のガス精製方法。
【請求項3】
前記冷却工程を実施している前記吸着塔から排出される前記再生ガスを、前記加熱工程を実施している前記吸着塔に導入する前に、前記再生ガスの温度を150℃以下に冷却することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス精製方法。
【請求項4】
前記吸着剤で吸着除去する前記不純物に含まれる成分が、少なくとも、HO、CO、O、CO、及び炭化水素のうちの何れか1種であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス精製方法。
【請求項5】
原料ガスの不純物を吸着除去して精製ガスを生成するガス精製装置であって、
前記原料ガスから前記不純物を吸着除去するための吸着剤が充填された、少なくとも3つの吸着塔と、
前記吸着塔の一端にそれぞれ接続される、前記原料ガスを前記吸着塔に導入する原料ガス導入配管、及び、前記吸着塔に導入された再生ガスを前記吸着塔から排出する再生ガス排出配管と、
前記吸着塔の他端にそれぞれ接続される、前記精製ガスを前記吸着塔から排出する製品ガス導出配管、及び、前記再生ガスを前記吸着塔に導入する再生ガス導入配管と、
前記原料ガス導入配管、前記再生ガス排出配管、前記製品ガス導出配管、及び、前記再生ガス導入配管において、前記吸着塔の一端側又は他端側にそれぞれ設けられる開閉バルブと、
前記吸着塔に設けられ、前記吸着剤又は前記再生ガスを加熱するための加熱部と、を備え、
3つの前記吸着塔の各々の間には、前記吸着塔において前記再生ガス排出配管が接続される前記一端と、前記再生ガス導入配管が接続される前記他端との間を接続する吸着塔連結配管が設けられており、且つ、前記吸着塔連結配管に切換バルブが設けられていることを特徴とするガス精製装置。
【請求項6】
前記吸着塔連結配管は、3つの前記吸着塔の全てが環状に接続されるように設けられていることを特徴とする請求項5に記載のガス精製装置。
【請求項7】
前記吸着塔連結配管に設けられた前記切換バルブの耐熱温度が、少なくとも前記吸着塔の加熱温度以上であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガス精製装置。
【請求項8】
前記吸着塔連結配管に設けられた前記切換バルブの一次側に、前記吸着塔連結配管を流通する前記再生ガスを冷却するための熱交換器が設けられていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガス精製装置。
【請求項9】
前記吸着塔と、前記再生ガス排出配管に設けられた開閉バルブとの間に、前記再生ガス排出配管を流通するガスを冷却するための熱交換器が設けられていることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガス精製装置。
【請求項10】
前記再生ガス排出配管に設けられた前記熱交換器の内部、又は、該熱交換器の出口側の前記再生ガス排出配管に、ドレントラップが設けられていることを特徴とする請求項9に記載のガス精製装置。
【請求項11】
前記吸着剤で吸着除去する前記不純物に含まれる成分が、少なくとも、HO、CO、O、CO、及び炭化水素のうちの何れか1種であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のガス精製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス精製方法及びガス精製装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、工業ガスの製造プロセスにおいて、除去対象物を含むガスを精製して製品ガス(精製ガス)を得る手段として、例えば、温度変動吸着法(TSA:Thermal Swing Adsorption)を採用したガス精製装置(TSA装置)が知られている。一般的に、TSA法が適用されたガス精製装置では、製品ガスを連続供給するため、不純物を吸着するための2つの吸着塔を備え、それぞれ、精製工程(不純物吸着)、及び、再生工程(不純物脱離)の各工程を交互に切り替えて運用する、2塔切替式の構成が広く採用されている。
【0003】
一般的な、2塔切替式の構成を有する、TSA法が適用されたガス精製装置では、ガス精製を実施した後の吸着塔内の吸着剤を再生する際に、製品ガスの一部又は吸着剤に対して非吸着性を有するガスの何れかを再生ガスとして吸着塔内に供給し、吸着塔内の吸着剤を加熱しながら除去対象物を脱離させる。この際、吸着剤の加熱は、例えば、ガス加熱ヒータによって加熱された再生ガスや、吸着塔に設けられたジャケットヒータ等からの入熱によって行われる。ここで、吸着剤として一般的に使用される活性炭やゼオライトは、熱伝導率が低いため、ジャケットヒータ等の外部加熱のみによって均一に加熱することは困難であることから、再生ガスを媒体とした伝熱は非常に重要であり、このような傾向は、吸着塔が大型化するほど顕著となる。また、吸着剤の再生に必要な再生ガス流量、つまり単位時間あたりにガスが伝熱する必要のある熱量は、再生工程時の再生ガスの比熱や温度、再生時間の他、吸着した除去対象物の量や脱離に必要となる熱量、吸着塔や吸着剤の熱容量等から決定される。
【0004】
上記のように、再生ガスに製品ガスの一部を使用する場合、再生ガスは製品ガスのロスに直結する。また、別途、吸着剤に対して非吸着性を有するガスを用意し、再生ガスとして使用した場合においても、ユーティリティ費用の増加を招く他、非吸着性ガスが吸着塔に残留すると、この非吸着性ガスが製品ガスの不純物成分となり、製品ガス純度が低下するという問題が生じる。このため、再生ガスに由来する排ガスを低減することによる製品ガスの回収率の向上や、吸着剤を効率的に加熱及び冷却することは、TSA法を適用したガス精製装置の経済性を向上させるための重要な要素である。
【0005】
一方、上記のような2塔切替式のガス精製装置(TSA装置)の場合、再生工程に割り当てることが可能な時間は、吸着塔に充填された吸着剤の量、つまり吸着工程の時間に依存する。このため、例えば、再生ガスの流量を減らした場合には、再生ガスが単位時間あたりに伝熱できる熱量が減少してしまう他、冷却時において単位時間あたりに除去できる熱量も低下する。仮に、再生時の再生ガス温度を上昇させたとしても、冷却時に除去すべき熱量が増加してしまうため、吸着剤が冷却不足となる可能性がある。このことから、2塔切替式の構成を有したガス精製装置(TSA装置)において、再生ガスの流量を低減させることによる回収率の改善には限界がある。
【0006】
ここで、ガス精製装置における製品ガスの回収率を向上させるための手段として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載の再生式脱硫装置は、2つの再生式ガス精製装置(以下、説明の都合上、それぞれ装置A、装置Bとする)を直列に接続し、装置Aの再生側の吸着塔を通気した再生ガスの排ガスを、装置Bの再生側の吸着塔に再生ガスとして通気させる装置である。特許文献1に記載の技術によれば、装置全体で使用する再生ガスの量を削減できる。
【0007】
また、ガス精製装置における製品ガスの回収率を向上させるための他の手段として、例えば、特許文献2に記載の技術が知られている。
特許文献2に記載のヘリウム精製装置によれば、再生ガスの排ガスを原料ガスラインに合流させ、原料ガスとしてリサイクルすることにより、再生ガスの排ガスの再利用によって製品ガスの回収率向上を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5074116号公報
【特許文献2】特許第4058278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術では、装置単体(例えば、装置A単体又は装置B単体)での再生ガスの排ガス量を削減し、製品ガスの回収率を向上させることはできない。
【0010】
また、特許文献2に記載の技術では、再生ガスの排ガスを再利用するためには、この排ガスを昇圧するための圧縮機等のような、排ガスを原料ガス以上の圧力とする手段が必要となる。このため、装置のコストアップを招く等の事情から、適用可能なプロセスが限られるおそれがあった。
【0011】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、圧縮機等を必要とすることなく再生ガスを効率的に利用することができ、再生ガスの排ガス量を削減して製品ガスの回収率を高めることが可能なガス精製方法及びガス精製装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、上記問題を解決するために鋭意検討を重ねた。この結果、3つ以上の吸着塔を備える多塔切替式の構成とされたTSA装置を適用し、それぞれの吸着塔を連結する配管を設けることで、圧縮機等を必要とすることなく再生ガスを効率的に利用できることを知見した。即ち、3つの吸着塔のうち、少なくとも2つの吸着塔が再生工程を実施するときに、再生ガスを、再生工程を実施する各々の吸着塔に順次流通させる方法を採用することで、再生ガスの排ガス量を削減して製品ガスの回収率を高めることが可能となることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下の態様を有する。
【0013】
[1] 原料ガスの不純物を吸着する吸着剤が充填された少なくとも3つの吸着塔を用い、TSA(Thermal Swing Adsorption)方式により、前記吸着塔で前記原料ガスの前記不純物を吸着除去する吸着工程と、前記吸着塔を加熱することにより、前記吸着塔で吸着した前記不純物を前記吸着塔から離脱させる再生工程とを繰り返して実施し、且つ、3つの前記吸着塔のうち、少なくとも1つの前記吸着塔が前記吸着工程を実施し、前記吸着工程で前記吸着塔から排出される、前記原料ガス中から前記不純物を除去して得られた精製ガスの一部を、前記再生工程において前記吸着塔をパージする再生ガスとして使用しながらガス精製を行うガス精製方法であって、3つの前記吸着塔のうち、少なくとも2つの前記吸着塔が前記再生工程を実施するときに、前記再生ガスを、前記再生工程を実施する各々の前記吸着塔に順次流通させることを特徴とするガス精製方法。
[2] 前記再生工程は、少なくとも、前記吸着塔を加熱する加熱工程と、該加熱工程後の前記吸着塔を前記吸着工程が実施可能な温度まで冷却する冷却工程とを含み、3つの前記吸着塔のうち、少なくとも1つの前記吸着塔が前記加熱工程を実施し、且つ、少なくとも1つの前記吸着塔が前記冷却工程を実施するときに、前記冷却工程を実施している前記吸着塔に前記再生ガスを導入するとともに、前記冷却工程を実施している前記吸着塔から排出される前記再生ガスを、前記加熱工程を実施している前記吸着塔に導入することを特徴とする上記[1]に記載のガス精製方法。
[3] 前記冷却工程を実施している前記吸着塔から排出される前記再生ガスを、前記加熱工程を実施している前記吸着塔に導入する前に、前記再生ガスの温度を150℃以下に冷却することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のガス精製方法。
[4] 前記吸着剤で吸着除去する前記不純物に含まれる成分が、少なくとも、HO、CO、O、CO、及び炭化水素のうちの何れか1種であることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載のガス精製方法。
[5] 原料ガスの不純物を吸着除去して精製ガスを生成するガス精製装置であって、前記原料ガスから前記不純物を吸着除去するための吸着剤が充填された、少なくとも3つの吸着塔と、前記吸着塔の一端にそれぞれ接続される、前記原料ガスを前記吸着塔に導入する原料ガス導入配管、及び、前記吸着塔に導入された再生ガスを前記吸着塔から排出する再生ガス排出配管と、前記吸着塔の他端にそれぞれ接続される、前記精製ガスを前記吸着塔から排出する製品ガス導出配管、及び、前記再生ガスを前記吸着塔に導入する再生ガス導入配管と、前記原料ガス導入配管、前記再生ガス排出配管、前記製品ガス導出配管、及び、前記再生ガス導入配管において、前記吸着塔の一端側又は他端側にそれぞれ設けられる開閉バルブと、前記吸着塔に設けられ、前記吸着剤又は前記再生ガスを加熱するための加熱部と、を備え、3つの前記吸着塔の各々の間には、前記吸着塔において前記再生ガス排出配管が接続される前記一端と、前記再生ガス導入配管が接続される前記他端との間を接続する吸着塔連結配管が設けられており、且つ、前記吸着塔連結配管に切換バルブが設けられていることを特徴とするガス精製装置。
[6] 前記吸着塔連結配管は、3つの前記吸着塔の全てが環状に接続されるように設けられていることを特徴とする[5]に記載のガス精製装置。
[7] 前記吸着塔連結配管に設けられた前記切換バルブの耐熱温度が、少なくとも前記吸着塔の加熱温度以上であることを特徴とする上記[5]又は[6]に記載のガス精製装置。
[8] 前記吸着塔連結配管に設けられた前記切換バルブの一次側に、前記吸着塔連結配管を流通する前記再生ガスを冷却するための熱交換器が設けられていることを特徴とする上記[5]又は[6]に記載のガス精製装置。
[9] 前記吸着塔と、前記再生ガス排出配管に設けられた開閉バルブとの間に、前記再生ガス排出配管を流通するガスを冷却するための熱交換器が設けられていることを特徴とする上記[5]又は[6]に記載のガス精製装置。
[10] 前記再生ガス排出配管に設けられた前記熱交換器の内部、又は、該熱交換器の出口側の前記再生ガス排出配管に、ドレントラップが設けられていることを特徴とする上記[9]に記載のガス精製装置。
[11] 前記吸着剤で吸着除去する前記不純物に含まれる成分が、少なくとも、HO、CO、O、CO、及び炭化水素のうちの何れか1種であることを特徴とする上記[5]又は[6]に記載のガス精製装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るガス精製方法によれば、上記のように、3つの吸着塔のうち、少なくとも2つの吸着塔が再生工程を実施するときに、再生ガスを、再生工程を実施する各々の吸着塔に順次流通させる方法を採用している。
本発明によれば、上記方法を採用することで、吸着塔の加熱・冷却に必要な再生ガスの流量を低減でき、再生工程において吸着塔から排出される再生ガスの排ガスの流量も低減できる。これにより、精製ガスに含まれる再生ガスの排ガス量が削減され、製品ガスとして回収率を高めることが可能となる。
【0015】
また、本発明に係るガス精製装置によれば、3つの吸着塔の各々の間に、吸着塔において再生ガス排出配管が接続される一端と、再生ガス導入配管が接続される他端との間を接続する吸着塔連結配管が設けられており、且つ、吸着塔連結配管に切換バルブが設けられた構成を採用している。
本発明によれば、上記構成を採用することで、上記同様、吸着塔の加熱・冷却に必要な再生ガスの流量を低減でき、吸着塔から排出される再生ガスの排ガスの流量も低減できる。また、圧縮機等を必要とすることなく再生ガスを効率的に利用できる。これにより、精製ガスに含まれる再生ガスの排ガス量が削減され、製品ガスとして回収率を高めることが可能なガス精製装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について模式的に説明する図であり、ガス精製装置の全体構成を示す系統図である。
図2】本発明の第1の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について模式的に説明する図であり、図1に示したガス精製装置における、バルブタイムチャートに基づく原料ガス、精製ガス及び再生ガスの流れの一例を示す系統図である。
図3】本発明の第1の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について模式的に説明する図であり、図1に示したガス精製装置における原料ガス、精製ガス及び再生ガスの流れの他の例を示す系統図である。
図4】本発明の第1の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について模式的に説明する図であり、図2及び図3に示した原料ガス、精製ガス及び再生ガスの流れを制御するための各バルブの開閉動作を示すバルブタイムチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について模式的に説明する図であり、ガス精製装置の全体構成を示す系統図である。
図6】本発明の第3の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について模式的に説明する図であり、ガス精製装置の全体構成を示す系統図である。
図7】本発明の第2~第4の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について模式的に説明する図であり、図5及び図6に示した原料ガス、精製ガス及び再生ガスの流れを制御するための各バルブの開閉動作を示すバルブタイムチャートである。
図8】本発明の第4の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について模式的に説明する図であり、ガス精製装置の全体構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した第1~第4の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について、図1図8を適宜参照しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするため、便宜上、特徴となる部分を拡大あるいは簡略化して示している場合がある。また、以下の説明において例示される材料等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0018】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について以下に説明する。
【0019】
[ガス精製装置]
以下、まず、本実施形態のガス精製方法による操業に用いることが可能なガス精製装置について詳述する。
図1は、第1の実施形態のガス精製装置1の全体概略構成を示す系統図である。
図2及び図3は、図1に示したガス精製装置1における、バルブタイムチャートに基づく原料ガス、精製ガス及び再生ガスの流れを示す系統図である。
図4は、図1に示したガス精製装置1の動作において、図2及び図3に示した原料ガス、精製ガス及び再生ガスの流れを制御するための各バルブの開閉動作を示すバルブタイムチャートである。
【0020】
本実施形態のガス精製装置1は、TSA法により、原料ガスG1中の不純物を除去し、精製ガスG2を得る、所謂TSA装置と呼ばれるものである。具体的には、本実施形態のガス精製装置1は、図1に示すように、吸着塔2A,2B,2Cと、原料ガス導入経路(原料ガス導入配管)L1と、製品ガス導出経路(製品ガス導出配管)L2と、再生ガス導入経路(再生ガス導入配管)L3と、再生ガス導出経路(再生ガス排出配管)L4と、を備えて概略構成されている。
【0021】
より詳細には、ガス精製装置1は、原料ガスG1から不純物を吸着除去するための吸着剤6が充填された、3つの吸着塔2A,2B,2Cを備える。これら吸着塔2A,2B,2Cには、それぞれ、吸着剤6又は再生ガスG3を加熱するための加熱部9が設けられている。
また、ガス精製装置1は、吸着塔2A,2B,2Cの一端2aにそれぞれ接続される、原料ガスG1を吸着塔2A,2B,2Cに導入する原料ガス導入経路L1、及び、再生ガスG3を吸着塔2A,2B,2Cから排出する再生ガス導出経路L4を備える。
また、ガス精製装置1は、吸着塔2A,2B,2Cの他端2bにそれぞれ接続される、精製ガスG2を吸着塔2A,2B,2Cから排出する製品ガス導出経路L2、及び、再生ガスを吸着塔2A,2B,2Cに導入する再生ガス導入経路L3を備える。
また、ガス精製装置1は、原料ガス導入経路L1、製品ガス導出経路L2、再生ガス導入経路L3、及び、再生ガス導出経路L4において、吸着塔2A,2B,2Cの一端2a側又は他端2b側にそれぞれ設けられる開閉バルブV1a,V1b,V1c,V2a,V2b,V2c,V3a,V3b,V3c,V4a,V4b,V4cが備えられている。
【0022】
そして、本実施形態のガス精製装置1は、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の間に、吸着塔2A,2B,2Cにおいて再生ガス導出経路L4が接続される一端2aと、再生ガス導入経路L3が接続される他端2bとの間を接続する吸着塔連結経路(吸着塔連結配管)L5が設けられている。また、吸着塔連結経路L5には、吸着塔2A,2B,2Cの近傍における経路中に、それぞれ、切換バルブV5a,V5b,V5c,V5d,V5e,V5fが設けられている。
【0023】
なお、図示例のガス精製装置1には、原料ガス導入経路L1と再生ガス導出経路L4との合流点と、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の一端2aとを接続する接続配管L6a,L6b,L6c、及び、製品ガス導出経路L2と再生ガス導入経路L3との合流点と、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の他端2bとを接続する接続配管L7a,L7b,L7cが設けられている。
さらに、図示例のガス精製装置1には、再生ガス導入経路L3において、製品ガス導出経路L2からの分岐点近傍に設けられる再生ガス流量調整用バルブNV1が備えられている。
【0024】
本実施形態のガス精製装置1は、上記のような吸着塔連結経路L5を有することにより、3つの吸着塔2A,2B,2Cが、それぞれ環状の経路で接続されるように構成されている。
【0025】
原料ガス導入経路L1は、精製が行われる原料ガスG1をガス精製装置1の吸着塔2A,2B,2Cに導入するための経路である。図示例の原料ガス導入経路L1は、一端側が図示略の原料ガス貯留手段に接続されるとともに、他端側が3つに分岐することにより、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の一端2aと接続された接続配管L6a,L6b,L6cにそれぞれ接続されている。また、原料ガス導入経路L1と接続配管L6a,L6b,L6cとの接続点は、原料ガス導入経路L1、再生ガス導出経路L4、及び、吸着塔連結経路L5の合流点となる。
【0026】
原料ガス導入経路L1の他端側における分岐経路には、それぞれ、開閉バルブV1a,V1b,V1cが設けられており、原料ガスG1の流通の開始、停止を行うことが可能な構成とされている。
【0027】
製品ガス導出経路L2は、吸着塔2A,2B,2Cで精製された精製ガスG2を、製品ガス(精製ガスG2)として取り出すための経路である。図示例の製品ガス導出経路L2は、一端側が3つに分岐することにより、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の他端2bと接続された接続配管L7a,L7b,L7cにそれぞれ接続されており、他端側が図示略の製品ガス貯留手段に接続される。また、製品ガス導出経路L2には、他端寄りの位置に再生ガス導入経路L3への分岐点が設けられている。
【0028】
製品ガス導出経路L2の一端側においては、3つに分岐して接続配管L7a,L7b,L7cにされる直前の経路に、それぞれ、開閉バルブV2a,V2b,V2cが設けられており、製品ガスとなる精製ガスG2の流通の開始、停止を行うことが可能な構成とされている。
【0029】
再生ガス導入経路L3は、製品ガス導出経路L2から精製ガスG2の一部を再生ガスG3として取り出すための経路である。再生ガス導入経路L3は、一端側が製品ガス導出経路L2に接続され、製品ガス導出経路L2における接続配管L7a,L7b,L7cに向けた分岐点よりも他端寄りの位置から分岐している。
【0030】
図示例の再生ガス導入経路L3は、他端側が3つに分岐することにより、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の他端2bと接続された接続配管L7a,L7b,L7cにそれぞれ接続されている。
また、再生ガス導入経路L3の他端側においては、3つに分岐して接続配管L7a,L7b,L7cにされる直前の経路に、それぞれ、開閉バルブV3a,V3b,V3cが設けられており、再生ガスG3の流通の開始、停止を行うことが可能な構成とされている。
【0031】
また、再生ガス導入経路L3には、上述したように、製品ガス導出経路L2からの分岐点近傍の経路に、再生ガス流量調整用バルブNV1が設けられている。この再生ガス流量調整用バルブNV1は、吸着塔2A,2B,2C充填された吸着剤6を再生するための再生工程において、再生ガスG3の流量を制御し、所定の流量の再生ガスG3を吸着塔2A,2B,2Cに供給する。
再生ガス流量調整用バルブNV1としては、特に限定されず、例えば、一般的なフローメータや、MFC(Mass Flow Controller)等の流量制御機器を用いることができる。
【0032】
再生ガス導出経路L4は、再生工程で使用した再生ガスG3を、排ガスとして吸着塔2A,2B,2Cから導出するための経路である。再生ガス導出経路L4は、一端側が3つに分岐することにより、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の一端2aと接続された接続配管L6a,L6b,L6cにそれぞれ接続されており、他端側が、図示略の排ガス処理手段に接続されている。
【0033】
また、再生ガス導出経路L4の一端側においては、3つに分岐して接続配管L6a,L6b,L6cにされる直前の経路に、それぞれ、開閉バルブV4a,V4b,V4cが設けられており、吸着塔2A,2B,2Cから排ガスとして排出される再生ガスG3の流通の開始、停止を行うことが可能な構成とされている。
【0034】
吸着塔連結経路L5は、上述したように、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の間に、吸着塔2A,2B,2Cにおいて再生ガス導出経路L4が接続される一端2aと、再生ガス導入経路L3が接続される他端2bとの間を接続する吸着塔連結経路L5が設けられている。また、吸着塔連結経路L5には、吸着塔2A,2B,2Cの近傍における経路中に、それぞれ、切換バルブV5a,V5b,V5c,V5d,V5e,V5fが設けられている。
【0035】
吸着塔連結経路L5は、図示例においては、一端側が3つに分岐することにより、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の一端2aと接続された接続配管L6a,L6b,L6cにそれぞれ接続されている。
また、吸着塔連結経路L5は、一端側と同様、他端側も3つに分岐することにより、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の他端2bと接続された接続配管L7a,L7b,L7cにそれぞれ接続されている。
【0036】
吸着塔連結経路L5の一端側における接続配管L6a,L6b,L6cとの接続部近傍の経路には、それぞれ、切換バルブV5a,V5b,V5cの何れかが配置されている。
また、吸着塔連結経路L5の他端側における接続配管L7a,L7b,L7cとの接続部近傍の経路には、それぞれ、切換バルブV5d,V5e,V5fの何れかが配置されている。
【0037】
吸着塔2A,2B,2Cは、原料ガスG1中に含まれる不純物を吸着剤6で吸着除去することで、精製ガスG2を得るための分離装置である。具体的には、吸着塔2A、2B,2Cは、筒状とされた筐体5の内部に配置された吸着剤6と、筐体5の外周面を覆うように配置される加熱部9とを備える。
【0038】
筐体5には、耐熱性、耐圧性及び耐腐食性のある材質のものを用いることが好ましい。このような筐体5の材質は、例えば、内部の温度条件、圧力条件、吸着剤、使用する原料ガスG1、原料ガスG1中に含まれる不純物等を勘案しながら適宜選択することができるが、これらの条件下で繰り返しガス精製を行うことが可能な材質が好ましい。例えば、詳細を後述するような、再生工程に含まれる加熱工程を300℃以上で実施し、吸着剤6として合成ゼオライトを用い、原料ガスG1として水素を用い、原料ガスG1中の不純物が一酸化炭素である場合には、筐体5の材質としてステンレス等の金属を採用することが好ましい。
【0039】
筐体5の形態としては、原料ガスG1及び再生ガスG3の導入が可能であって、精製ガスG2及び再生に利用された再生ガスG3の排出が可能であり、さらに、内部に吸着剤6を充填することが可能な容器であればよい。このような筐体5の形態の例としては、例えば、一端2a及び他端2bの両側が開口された円筒状のもの等が挙げられる。
【0040】
吸着剤6は、原料ガスG1から不純物を取り除くためのものである。吸着剤6は、筐体5の内側の空間に充填されている。吸着剤6としては、原料ガスG1中の不純物を選択的に吸着することができる1種類以上の吸着剤を用いることができる。
【0041】
吸着剤6としては、例えば、シリカゲル、ゼオライト、活性アルミナ、活性炭等を用いることができるが、これらに限定されるものではなく、精製対象となる原料ガスG1及び不純物となるガス成分に応じて適宜選択することができる。また、筐体5の内部における吸着剤6の形状や寸法としても、適宜決定することが可能である。
さらに、筐体5の内部には、吸着剤6に加えて、吸着工程や再生工程を促進させるための図示略の触媒を配置することができる。このような触媒としては、例えば、パラジウム、銅、ルテニウム等が挙げられる。
【0042】
加熱部9は、吸着剤6を再生する際に、筐体5を外側から加熱することで、吸着剤6及び再生ガスG3を加熱する。
加熱部9は、筐体5の外周面を覆うように配置されていればよく、好ましくは、図示例のように、筐体5の軸方向に対して螺旋状に巻き付けられるものを用いることが好ましい。
【0043】
加熱部9は、筐体5の外周面と接触した状態で設けられていてもよい。これにより、加熱部9で発生させた熱を効率的に筐体5へと伝達させることができる。一方、加熱部9は、筐体5に接触した状態で設けられた構成には限定されず、筐体5に非接触の状態で設けられた構成であってもよい。
また、図1中に示す例のような、筐体5の周囲に螺旋状に設けられた加熱部9には、筐体5の軸方向において隣接する加熱部9同士が接触しないように間隔が設けられているが、例えば、加熱部9同士が接触していてもよい。
【0044】
加熱部9としては、特に限定されないが、例えば、シースヒータ、熱流体を内部に流す加熱管、絶縁処理がされたニクロム線の発熱線等が挙げられる。また、加熱部9の数は、1つ以上であればよい。また、加熱部9の発熱温度としても、特に限定されず、吸着剤6又は再生ガスG3を任意の温度まで加熱できる仕様のものであればよい。
【0045】
図1等においては図示を省略しているが、吸着塔2A,2B,2Cには、筐体5の内部に配置された吸着剤6を冷却するための冷却手段が設けられてもよい。このような冷却手段としては、例えば、管内に冷媒を流通させる構成の冷却管等が挙げられる。
【0046】
本実施形態においては、冷却管による冷熱、及び加熱部9による温熱の筐体5への伝達を補助するための、図示略の伝熱材料を配置することができる。このような伝熱材料としては、例えば、筐体5及び加熱部9の全体と、図示略の冷却管の外周面の一部とを覆うように、筐体5の周方向において厚みが均一となるように充填された構成のものを採用できる。このような伝熱材料は、冷却管及び加熱部9と、筐体5との伝熱面積を大きくすることができるので、冷却管及び加熱部9の筐体5に対する伝熱効率を高めることが可能となる。
【0047】
上記のような伝熱材料の材質としては、熱伝導率が1以上のものであればよく、例えば、日本ヒータ株式会社の「熱伝セメントHTC(登録商標)」や、坂口電熱株式会社の「サーモンT-99(登録商標)」等の伝熱セメントが挙げられる。
【0048】
図示略の断熱材は、吸着塔2A,2B,2Cの外部との熱のやり取りを防ぐためのものである。図示略の断熱材を設けることにより、吸着塔2A,2B,2Cに設けられる吸着剤6を再生する加熱工程(再生工程)において、吸着塔2A,2B,2Cから外部へと熱が流出するのを防止できるとともに、冷却工程(再生工程)において、吸着塔2A,2B,2Cに外部から熱が流入するのを防止できる。これにより、吸着塔2A,2B,2Cの吸着剤6を再生する再生工程において、熱伝導効率を高めることが可能となる。
【0049】
上記のような断熱材は、例えば、筐体5の外周面を覆うように設けることができる。また、筐体5の外周面と断熱材との間には、図示略の冷却管、並びに加熱部9を設置するための空間を設けることができる。これにより、断熱材は、筐体5、冷却管及び加熱部9を覆うように配置されることとなり、吸着塔2A,2B,2Cの吸着剤6を再生する加熱工程(再生工程)において、吸着塔2A,2B,2Cから外部に熱が流出したり、冷却工程(再生工程)において、吸着塔2A,2B,2Cに外部から熱が流入したりするのを防止することが可能となる。
【0050】
上記のような断熱材としては、熱伝導率が1未満のものであればよく、より熱伝導率の値が小さいものが好ましい。断熱材としては、例えば、ガラスウール、ロックウール等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0051】
本実施形態のガス精製装置1に備えられる吸着塔2A,2B,2Cにおいて、吸着剤6で吸着除去する不純物に含まれる成分としては、例えば、HO、CO、O、CO、及び炭化水素のうちの、少なくとも何れかを例示できる。
【0052】
本実施形態のガス精製装置1によれば、上記構成の吸着塔連結経路L5を備えることにより、例えば、3つの吸着塔2A,2B,2Cのうち、少なくとも2つの吸着塔が吸着剤6の再生工程を実施するときに、再生ガスG3を、再生工程を実施する各々の吸着塔に順次流通させることができる。これにより、圧縮機等を必要とすることなく、再生ガスG3を再生工程で効率的に利用できる。また、吸着塔2A,2B,2Cの加熱・冷却に必要な再生ガスG3の流量を低減できるので、吸着塔2A,2B,2Cから排出される再生ガスG3の排ガスの流量も低減できる。従って、製品ガスである精製ガスG2に含まれる再生ガスG3の排ガス量が削減され、製品ガスとして回収率を高めることが可能となる。
【0053】
なお、本実施形態のガス精製装置1が精製対象とする原料ガスG1のガス種や流量、圧力、温度は、特に限定されず、例えば、空気、He,Ar,Xe,Kr,Neといった希ガス、水素やメタン、炭化水素類等が挙げられる。本実施形態のガス精製装置1は、特に、高額である希ガスの精製用途や、ガス発生量(原料ガス量)に制限があり、且つ、製品ガス量(使用可能なガス量)を多めにすることが要望される水素発生装置といった、ガス発生装置向けの用途において好適である。
【0054】
また、本実施形態のガス精製装置1においては、吸着塔連結経路L5に設けられた切換バルブV5a,V5b,V5c,V5d,V5e,V5fの耐熱温度が、少なくとも吸着塔2A,2B,2Cの加熱温度以上であることが好ましい。これにより、吸着塔2A,2B,2Cの吸着剤6を再生する加熱工程(再生工程)において、高温によって切換バルブが損傷するのを防止できる。
【0055】
また、本実施形態においては、仮に、加熱部としてガス加熱ヒータを使用する場合には、この加熱部を、吸着塔2A,2B,2Cに接続される吸着塔連結経路L5に設けた構成とすることで、必要となる加熱部の数量を少なくすることができる。ここで、吸着塔連結経路L5に加熱部を設ける場合には、吸着塔2A,2B,2Cの他端2b側に接続される切換バルブV5d、V5e、V5fとして、加熱部による加熱温度で使用可能な耐熱バルブを使用する必要がある。なお、吸着塔連結経路L5に加熱部を設けなくても、吸着塔2A,2B,2Cから排出される再生ガスG3は高温であるため、上述したように、高温の再生ガスG3が流通する切換バルブV5a,V5b,V5c、並びに、開閉バルブV4a,V4b,V4cは、吸着塔2A,2B,2Cの加熱温度で使用可能な耐熱バルブを使用する必要がある。
【0056】
また、本実施形態のガス精製装置1を用いた操業にあたり、運転プロセスに充圧工程を組み込む場合には、終点判断のため、各吸着塔2A,2B,2Cに図示略の圧力計を取り付けてもよい。なお、充圧工程とは、各吸着塔の圧力を再生圧力から吸着圧力まで昇圧する際の工程をいう。
【0057】
また、本実施形態のガス精製装置1に備えられる吸着塔の本数としても、3つ以上であれば、特に制限されず、各吸着塔を直列に接続可能とする吸着塔連結経路(図1中の吸着塔連結経路L5を参照)を設けることで、上記同様の効果が得られる。
【0058】
次に、図2図4を参照しながら、ガス精製装置1の動作形態の一例について説明する。
図4に示したバルブタイムチャートに基づいてガス精製装置1を操業する場合、例えば、図2中に示す原料ガスG1、精製ガスG2及び再生ガスG3の流れで、操業開始から11hrの間、運転プロセスを継続する。この際、図2中に示すように、原料ガスG1は、原料ガス導入経路L1から吸着塔2Aのみに供給され、この吸着塔2Aが原料ガスG1に対して吸着工程を実施することで、製品ガス導出経路L2を介して製品である精製ガスG2が導出される。
【0059】
一方、吸着塔2Aにおける吸着工程と同時に、吸着塔2B,2Cにおいて再生工程が実施される。具体的には、吸着塔2Bでは、吸着剤6を冷却する冷却工程(再生工程)が実施され、吸着塔2Cでは、吸着剤6を加熱する加熱工程(再生工程)が実施される。
【0060】
図2中に示す運転プロセスにおいては、開閉バルブV1a,V2a,V3b,V4c、及び、切換バルブV5b,V5fが開状態とされ、他の各バルブは閉状態とされる。即ち、図2中に示す運転プロセスでは、再生ガス導入経路L3により、吸着塔2Bの他端2b側から再生ガスG3の一部が導入されるとともに、この吸着塔2Bの一端2a側から導出される再生ガスG3の排ガスが、吸着塔連結経路L5を介して、他端2b側から吸着塔3Cに導入される。そして、吸着塔3Cの一端2a側から導出される再生ガスG3の排ガスは、再生ガス導出経路L4を介して、吸着塔3Cの外部に導出される。
【0061】
また、図2中に示す運転プロセスにおいては、加熱工程(再生工程)を実施している吸着塔2Cの加熱部9のみがオンとされている。
【0062】
次に、操業開始から11hrを超え、12hrまでの間は、図3中に示す原料ガスG1、精製ガスG2及び再生ガスG3の流れで運転プロセスを実施する。この際、図3中に示すように、原料ガスG1は、引き続き、原料ガス導入経路L1から吸着塔2Aのみに供給され、この吸着塔2Aが原料ガスG1に対して吸着工程を実施することで、製品ガス導出経路L2を介して製品である精製ガスG2が導出される。
【0063】
一方、吸着塔2B,2Cにおいても、引き続き、再生工程が実施されるが、図3中に示す運転プロセスにおいては、図2中に示した運転プロセスとは異なり、吸着塔2Bにおいては待機状態となり、吸着塔2Cにおいては充圧工程が実施される。
【0064】
図3中に示す運転プロセスにおいては、開閉バルブV1a,V2a,V3bが開状態とされ、他の各バルブは閉じた状態とされる。また、図3中に示す運転プロセスにおいては、吸着塔2Cに備えられる加熱部9も、他の吸着塔2A,2Bと同様、オフとされる。
【0065】
本実施形態のガス精製装置1を用いた操業を実施する際には、例えば、図4に示したバルブタイムチャートに基づいたうえで、3つの吸着塔2A,2B,2Cに対して、上記の運転プロセスをローテーションで実施することができる。
【0066】
[ガス精製方法]
次に、本実施形態のガス精製方法について、上述した本実施形態のガス精製装置1を用いた操業を例に挙げ、同じ図面を参照して詳述する。
【0067】
本実施形態のガス精製方法は、原料ガスG1の不純物を吸着する吸着剤6が充填された少なくとも3つの吸着塔2A,2B,2Cを用い、TSA方式により、原料ガスG1から不純物を吸着・除去して、製品となる精製ガスG2を得る方法である。
即ち、本実施形態のガス精製方法は、吸着塔2A,2B,2Cで原料ガスG1の不純物を吸着除去する吸着工程(1)と、吸着塔2A,2B,2Cを加熱することにより、吸着塔2A,2B,2Cで吸着した不純物を吸着塔2A,2B,2Cから離脱させる再生工程(2)とを繰り返して実施する。これとともに、本実施形態では、3つの吸着塔2A,2B,2Cのうち、少なくとも1つの吸着塔2Aが吸着工程(1)を実施し、吸着工程(1)で吸着塔2Aから排出される、原料ガスG1中から不純物を除去して得られた精製ガスG2の一部を、再生工程(2)において吸着塔2B,2Cをパージする再生ガスG3として使用しながらガス精製を行う。
【0068】
そして、本実施形態のガス精製方法は、3つの吸着塔2A,2B,2Cのうち、少なくとも2つの吸着塔2B,2Cが再生工程(2)を実施するときに、再生ガスG3を、再生工程(2)を実施する各々の吸着塔2B,2Cに順次流通させる方法である。
即ち、本実施形態においては、1つの吸着塔2Aにおいて吸着工程(1)を行い、これと同時に、2つの吸着塔2B,2Cにおいて再生工程(2)を実施する場合を例に挙げて説明する。
【0069】
(吸着工程(1))
まず、吸着工程(1)においては、本実施形態のガス精製装置1の説明でも述べたように、開閉バルブV1a,V2a,V3b,V4c、及び、切換バルブV5b,V5fを開状態とし、他の各バルブは閉状態とする。即ち、図2中に示した運転プロセスのように、原料ガス導入経路L1から供給された原料ガスG1を、接続配管L6aを介して吸着塔2Aに供給する。
【0070】
そして、吸着塔2A内に設けられた吸着剤6により、原料ガスG1から不純物を吸着除去し、精製ガス(製品ガス)G2を生成する。その後、生成した精製ガスG2を、製品ガスとして、接続配管L7a及び製品ガス導出経路L2を介して外部へ導出する。
【0071】
吸着工程(1)において、吸着剤で吸着除去する不純物に含まれる成分、即ち、本実施形態のガス精製方法における除去対象は、特に限定されないが、例えば、少なくとも、HO、CO、O、CO、及び炭化水素のうちの何れか1種である。
【0072】
なお、他の吸着塔2B,2Cも、吸着塔2Aと同様の構成を有することから、吸着工程(1)において、吸着塔2Aと同様の効果を得ることが可能である。
【0073】
(再生工程(2))
再生工程(2)においては、上記のように、開閉バルブV1a,V2a,V3b,V4c、及び、切換バルブV5b,V5fを開状態とし、他の各バルブは閉状態とすることで、吸着塔2Aにおいて実施する吸着工程(1)と同時に、吸着塔2B,2Cにおいて再生工程(2)を実施する。
【0074】
本実施形態で説明する例の再生工程(2)は、少なくとも、吸着塔2Cを加熱する加熱工程(2-1)と、この加熱工程(2-1)後の吸着塔2Cを、吸着工程(1)が実施可能な温度まで冷却する冷却工程(2-2)とを含む。より詳細には、3つの吸着塔2A,2B,2Cのうち、1つの吸着塔2Cが加熱工程(2-1)を実施し、且つ、1つの吸着塔2Bが冷却工程(2-2)を行うときに、冷却工程(2-2)を実施している吸着塔2Bに再生ガスG3を導入する。これとともに、冷却工程(2-2)を実施している吸着塔2Bから排出される再生ガスG3を、加熱工程(2-1)を実施している吸着塔2Cに導入する。
【0075】
即ち、再生工程(2)においては、製品ガス導出経路L2から精製ガスG2を外部へ導出している間、再生ガス導入経路L3及び接続配管L7bを介して、精製ガスG2の一部を再生ガスG3として吸着塔2Bに導入するとともに、再生ガス導入経路L3及び接続配管L7cを介して、精製ガスG2の一部を再生ガスG3として吸着塔2Cに導入する。
【0076】
このとき、吸着塔2Cにおいては、加熱部9を起動させて筐体5を加熱することにより、筐体5内の再生ガスG3及び吸着剤6を間接的(補助的)に加熱する。一方、吸着塔2Bにおいては、再生ガス導入経路L3から取り出した再生ガスG3を吸着塔2Bに導入することによって、筐体5内の吸着剤6を冷却する。
【0077】
そして、本実施形態では、再生工程(2)において、吸着塔2Bの一端2a側から排出される再生ガスG3の排ガスを、接続配管L6b、吸着塔連結経路L5及び接続配管L7Cを介して、他端2b側から吸着塔2C内に導入する。
【0078】
上記のように、再生ガスG3及び加熱部9を用いて吸着塔2C(筐体5)内の吸着剤6を、概ね100~400℃で加熱することにより、吸着剤6から不純物を脱離させる。このとき、吸着剤6から脱離した不純物は、再生ガスG3に混ざった状態となり、接続配管L6c及び再生ガス導出経路L4を介して外部へと導出される。
【0079】
加熱工程(2-1)にて、吸着剤6に吸着された不純物を十分に取り除いた後、加熱部9の運転を停止し、開閉バルブV1a,V2a,V3bを開状態とし、他の各バルブを閉じた状態とする。
これにより、図3中に示した運転プロセスのように、原料ガスG1は、引き続き、原料ガス導入経路L1から吸着塔2Aのみに供給され、この吸着塔2Aが原料ガスG1に対して吸着工程(1)を実施することで、製品ガス導出経路L2を介して製品である精製ガスG2が引き続き導出される。
【0080】
一方、吸着塔2B,2Cにおいても、引き続き、再生工程(2)が実施されるが、図2中に示した運転プロセスとは異なり、吸着塔2Bは待機状態となり、吸着塔2Cにおいては充圧工程が実施される。
【0081】
本実施形態のガス精製方法においては、例えば、3つの吸着塔2A,2B,2Cに対して、上記の運転プロセスをローテーションで実施することができる。
【0082】
本実施形態のガス精製方法によれば、少なくとも2つの吸着塔2B,2Cが再生工程(2)を実施するとき、吸着塔2B,2Cの」各々に再生ガスG3を順次流通させることで、吸着塔2B,2Cの加熱・冷却に必要な再生ガスG3の流量を低減でき、再生工程(2)において吸着塔2B,2Cから排出される再生ガスG3の排ガスの流量も低減できる。これにより、精製ガスG2に含まれる再生ガスG3の排ガス量が削減され、製品ガスとして回収率を高めることが可能となる。
【0083】
なお、本実施形態のガス精製方法においては、上記の冷却工程(2-2)を実施している吸着塔2Bから排出される再生ガスG3を、加熱工程(2-1)を実施している吸着塔Cに導入する前に、再生ガスG3の温度を150℃以下に冷却することが好ましい。
【0084】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について以下に説明する。
なお、以下の説明においては、上述した第1の実施形態のガス精製装置1と同様の構成(又は類似した構成)については、同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。また、以下の説明では、第1の実施形態のガス精製方法と同様の手順及び条件についても、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0085】
図5は、第2の実施形態のガス精製装置1Aの全体概略構成を示す系統図である。
図7は、図5に示したガス精製装置1Aにおける原料ガスG1、精製ガスG2及び再生ガスG3の流れを制御するための各バルブの開閉動作を示すバルブタイムチャートである。
【0086】
図5に示す第2の実施形態のガス精製装置1Aは、吸着塔2A,2B,2Cと、原料ガス導入経路L1と、製品ガス導出経路L2と、再生ガス導入経路L3と、再生ガス導出経路L4とを備えている点で、図1に示した第1の実施形態のガス精製装置1と同様である。
一方、第2の実施形態のガス精製装置1Aは、吸着塔2A,2B,2Cの何れかの一端2aと、他の吸着塔の他端2bとを、接続配管L6a,L6b,L6c又は接続配管L7a,L7b,L7cを介して連結する吸着塔連結経路(吸着塔連結配管)L5A1,L5A2,L5A3が、それぞれ個別に設けられている点で、3つの吸着塔2A,2B,2Cの全てを環状に接続する吸着塔連結経路L5が設けられた第1の実施形態のガス精製装置1とは異なる。
【0087】
即ち、図5に示すガス精製装置1Aは、吸着塔2Cの一端2a側と吸着塔2Aの他端2bとが、それぞれ接続配管L6c,L7aを介して吸着塔連結経路L5A1で接続されている。
また、吸着塔2Aの一端2a側と吸着塔2Bの他端2bとが、それぞれ接続配管L6a,L7bを介して吸着塔連結経路L5A2で接続されている。
また、吸着塔2Bの一端2a側と吸着塔2cの他端2bとが、それぞれ接続配管L6b,L7cを介して吸着塔連結経路L5A3で接続されている。
【0088】
図5中に示すような吸着塔連結経路L5A1,L5A2,L5A3を有するガス精製装置1Aの操業にあたっては、例えば、図7に示したバルブタイミングチャートに基づいて各運転プロセスを実施することができる。即ち、第2の実施形態のガス精製装置1Aにおいても、第1の実施形態のガス精製装置1の場合と同様、吸着塔連結経路L5A1,L5A2,L5A3に設けられた切換バルブV5a,V5b,V5cを所定のタイミングで開閉させることができる。これにより、ガス精製装置1Aにおいても、3つの吸着塔2A,2B,2Cのうち、少なくとも2つの吸着塔2B,2Cが再生工程(2)を実施するときに、再生ガスG3を、再生工程(2)を実施する各々の吸着塔2B,2Cに順次流通させる運転プロセスを実施することが可能となる。
【0089】
なお、本実施形態のガス精製装置1Aを用いたガス精製方法による操業においては、再生工程(2)に備えられる加熱工程(2-1)の完了後、冷却工程(2-2)の開始直後は、吸着塔2A,2B,2Cの出口側から高温の再生ガスG3(吸着塔における加熱温度に対応した温度のガス)が排出される。このため、本実施形態のガス精製装置1Aにおいては、図5中に示した開閉バルブV4a,V4a,V4b、並びに、切換バルブV5a,V5b,V5cは、吸着塔2A,2B,2Cの加熱温度で使用可能な耐熱バルブを使用する必要がある。
【0090】
本実施形態のガス精製装置1Aによれば、上記構成の吸着塔連結経路L5A1,L5A2,L5A3を備えることにより、第1の実施形態のガス精製装置1の場合と同様、3つの吸着塔2A,2B,2Cのうち、少なくとも2つの吸着塔が吸着剤6の再生工程(2)を実施するときに、再生ガスG3を、再生工程(2)を実施する各々の吸着塔に順次流通させることができる。これにより、圧縮機等を必要とすることなく、再生ガスG3を再生工程(2)で効率的に利用できる。また、上記同様、吸着塔2A,2B,2Cの加熱・冷却に必要な再生ガスG3の流量を低減できるので、吸着塔2A,2B,2Cから排出される再生ガスG3の排ガスの流量も低減できる。従って、製品ガスである精製ガスG2に含まれる再生ガスG3の排ガス量が削減され、製品ガスとして回収率を高めることが可能となる。
【0091】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について以下に説明する。
なお、以下の説明においては、上述した第1,2の実施形態のガス精製装置1,1Aと同様の構成(又は類似した構成)については、同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。また、以下の説明では、第1,2の実施形態のガス精製方法と同様の手順及び条件についても、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0092】
図6は、第3の実施形態のガス精製装置1Bの全体概略構成を示す系統図である。
図7は、図6に示したガス精製装置1Bにおける原料ガスG1、精製ガスG2及び再生ガスG3の流れを制御するための各バルブの開閉動作を示すバルブタイムチャートである。
【0093】
図6に示す第3の実施形態のガス精製装置1Bは、吸着塔2A,2B,2Cと、原料ガス導入経路L1と、製品ガス導出経路L2と、再生ガス導入経路L3と、再生ガス導出経路L4とを備え、さらに、吸着塔2A,2B,2Cの何れかの一端2aと、他の吸着塔の他端2bとを連結する吸着塔連結経路L5A1,L5A2,L5A3を備えている点で、図5に示した第2の実施形態のガス精製装置1Aと同様である。また、図6に示す第3の実施形態のガス精製装置1Bは、例えば、図7に示したバルブタイミングチャートに基づいて各運転プロセスを実施することができる点でも、図5に示した第2の実施形態のガス精製装置1Aと同様である。
一方、第3の実施形態のガス精製装置1Bは、吸着塔連結経路L5A1,L5A2,L5A3にそれぞれ設けられた切換バルブV5a,V5b,V5cの一次側に、吸着塔連結経路L5A1,L5A2,L5A3を流通する再生ガスG3を冷却するための熱交換器7a,7b,7cが設けられている点で、第2の実施形態のガス精製装置1Aとは異なる。
【0094】
図3中に示す熱交換器7a,7b,7cとしては、例えば、フィンチューブ、タビレントチューブ、又はプレートフィン型等の熱交換器を使用することができるが、熱交換器の種類や冷却方法(空冷又は水冷)等は、特に限定されない。
【0095】
本実施形態のガス精製装置1Bを用いたガス精製方法による操業においては、再生工程(2)における加熱工程(2-1)が完了した後、冷却工程(2-2)の開始直後に吸着塔2A,2B,2Cの出口側から排出される高温の再生ガスG3の温度を、熱交換器7a,7b,7cによって150℃以下まで低下させることが好ましく、80℃以下まで低下させることがより好ましい。これは、熱交換器7a,7b,7cの出口温度が150℃を超える場合、熱交換器7a,7b,7cの出口側に配置される切換バルブV5a,V5b,V5cに、高価なオールメタルダイアフラムバルブ(例えば、株式会社フジキン製:FWB-71シリーズ等)を使用する必要があるためである。
【0096】
一方、吸着塔2A,2B,2Cから排出される再生ガスG3を、熱交換器7a,7b,7cによって150℃以下の温度まで冷却することで、シート材質にポリイミドやPFAを用いたメタルダイアフラムバルブ(例えば、株式会社フジキン製:FPR-ND-71-6.35-PI)等のような、安価なバルブを使用できる。
【0097】
さらに、吸着塔2A,2B,2Cから排出される再生ガスG3を、熱交換器7a,7b,7cで80℃以下の温度まで冷却した場合には、汎用のメタルダイアフラムバルブ(例えば、株式会社フジキン製:FPR-ND-71-6.35)等のような、より安価なバルブを使用できる。
【0098】
なお、上記のオールメタルダイアフラムは、高価であることのみならず、その構造上の特性により、わずかな塵埃の流入により、バルブ閉止時であってもガスが流れる内部リークが発生しやすく、ガス精製装置の不具合に繋がることから、採用を避けることが望ましい。
【0099】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態であるガス精製方法及びガス精製装置について以下に説明する。
なお、以下の説明においては、上述した第1~3の実施形態のガス精製装置1,1A,1Bと同様の構成(又は類似した構成)については、同じ符号を付与して説明するとともに、その詳細な説明を省略する場合がある。また、以下の説明では、第1~3の実施形態のガス精製方法と同様の手順及び条件についても、その詳細な説明を省略する場合がある。
【0100】
図8は、第4の実施形態のガス精製装置1Cの全体概略構成を示す系統図である。
【0101】
図8に示す第4の実施形態のガス精製装置1Cは、吸着塔2A,2B,2Cと、原料ガス導入経路L1と、製品ガス導出経路L2と、再生ガス導入経路L3と、再生ガス導出経路L4とを備え、さらに、吸着塔2A,2B,2Cの何れかの一端2aと、他の吸着塔の他端2bとを連結する吸着塔連結経路L5A1,L5A2,L5A3を備えている点で、図5に示した第2の実施形態のガス精製装置1Aと同様である。また、図8に示す第4の実施形態のガス精製装置1Cは、例えば、図7に示したバルブタイミングチャートに基づいて各運転プロセスを実施することができる点でも、図5に示した第2の実施形態のガス精製装置1Aと同様である。
【0102】
一方、第4の実施形態のガス精製装置1Cは、吸着塔2A,2B,2Cと、再生ガス導出経路L4に設けられた開閉バルブV4a,V4b,V4cとの間に、再生ガス導出経路L4を流通する再生ガスG3を冷却するための熱交換器71a,71b,71cが設けられている点で、第2の実施形態のガス精製装置1Aとは異なる。
さらに、第4の実施形態のガス精製装置1Cは、再生ガス導出経路L4に設けられた熱交換器71a,71b,71cの内部、又は、これら熱交換器71a,71b,71cの出口側における再生ガス導出経路L4に、ドレントラップ8a,8b,8cが設けられる点で、第2の実施形態のガス精製装置1Aとは異なる。図8においては、再生ガス導出経路L4からの引き込み管である3本のドレン管L41の終端にドレントラップ8a,8b,8cが設けられている例を示している。
【0103】
本実施形態のガス精製装置1Cによれば、まず、吸着塔2A,2B,2Cと開閉バルブV4a,V4b,V4cとの間の再生ガス導出経路L4に、それぞれ、熱交換器71a,71b,71cが設けられていることにより、上記同様、開閉バルブV4a,V4b,V4cに高価な耐熱バルブを採用する必要が無い。即ち、吸着塔2A,2B,2Cから高温で排出される再生ガスG3が熱交換器71a,71b,71cで冷却されることで、開閉バルブV4a,V4b,V4cに安価な汎用品を使用することが可能になるので、装置コストを低減することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態のガス精製装置1Cによれば、上記構成のドレントラップ8a,8b,8cが設けられていることにより、以下のような効果が得られる。即ち、加熱工程(2-1)を実施した吸着塔から排出される再生ガスG3には、吸着剤6から脱離した水分が含まれるため、熱交換器71a,71b,71cで冷却されることで多量のドレンが発生する。このようなドレンが多量に発生した場合、再生ガス導出経路L4がドレンによって閉塞するおそれもある。一方、本実施形態のガス精製装置1Cのように、ドレントラップ8a,8b,8cが設けられた構成を採用することで、上記のような、再生ガス導出経路L4の閉塞が生じるのを防止することが可能となる。
【0105】
<作用効果>
以上説明したように、本実施形態のガス精製装置1,1A,1B,1Cを用いたガス精製方法によれば、上記のように、3つの吸着塔2A,2B,2Cのうち、少なくとも2つの吸着塔が再生工程(2)を実施するときに、再生ガスG3を、再生工程(2)を実施する各々の吸着塔2B,2Cに順次流通させる方法を採用している。このような方法を採用することで、吸着塔2A,2B,2Cの加熱・冷却に必要な再生ガスG3の流量を低減でき、再生工程(2)において吸着塔2A,2B,2Cから排出される再生ガスG3の排ガスの流量も低減できる。これにより、精製ガスG2に含まれる再生ガスG3の排ガス量が削減され、製品ガスとして回収率を高めることが可能となる。
【0106】
また、本発明に係るガス精製装置によれば、3つの吸着塔2A,2B,2Cの各々の間に、吸着塔2A,2B,2Cにおいて再生ガス導出経路L4が接続される一端2aと、再生ガス導入経路L3が接続される他端2bとの間を接続する吸着塔連結経路L5が設けられており、且つ、吸着塔連結経路L5に切換バルブV5a,V5b,V5cが設けられた構成を採用している。このような構成を採用することで、上記同様、吸着塔2A,2B,2Cの加熱・冷却に必要な再生ガスG3の流量を低減でき、吸着塔2A,2B,2Cから排出される再生ガスG3の排ガスの流量も低減できる。また、圧縮機(昇圧器)等を必要とすることなく再生ガスG3を効率的に利用できる。これにより、精製ガスにG2含まれる再生ガスG3の排ガス量が削減され、製品ガスとして回収率を高めることが可能なガス精製装置1,1A,1B,1Cが実現できる。
【0107】
また、再生工程(2)に含まれる冷却工程(2-2)を実施中の吸着塔を通気し、吸着剤6から熱量を奪って加熱された再生ガスG3が、加熱工程(2-1)を実施中の吸着塔を通気するので、加熱工程(2-1)における加熱部9の負荷を低減できるとともに、加熱工程(2-1)における加熱時間を短縮することも可能となる。
【0108】
<その他の形態>
以上、実施形態により本発明に係るガス精製方法及びガス精製装置の一例を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0109】
例えば、上記の各実施形態においては、3つの吸着塔2A,2B,2Cを有するガス精製装置1,1A,1B,1Cを例示しているが、吸着塔の設置数はこれには限定されず、例えば、4つ以上の吸着塔を備えた装置構成並びに方法を採用することも可能である。
【実施例0110】
以下、本発明のガス精製方法及びガス精製装置について、実施例を示してより詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0111】
<精製条件及び再生条件、並びにガス精製装置の構成>
本実施例では、図1に示したような、3塔切替式のTSA法を採用し、且つ、吸着塔連結経路L5を有した、本発明に係る構成を備えるガス精製装置1を用いて水素を精製することで、本発明の効果の検証を行った(実施例)。
また、本例では、図1に示した3塔切替式のガス精製装置1に対する比較例として、特開2020-65984号公報に開示されたような2塔切替式とされた、吸着塔連結経路を有していない従来の構成のガス精製装置を準備し、同様の条件で評価を行った(比較例)。
【0112】
本実施例では、精製された水素を得るために、主に水素ガスからなり、不純物として水分を約2800ppm含む原料ガスを用い、精製ガス中に含まれる再生ガスの量について、実施例と比較例との比較を実施した。
【0113】
[ガス精製/再生条件]
以下に、実施例及び比較例における原料ガス組成、及び、ガス精製/再生条件の一覧を記す。
(1)原料ガス組成 :H+H
(2)HO濃度 :2800ppm(除去対象成分)
(3)流量 :100Nm/h
(4)圧力 :800kPaG
(5)温度 :25℃
(6)吸着剤 :ゼオライト(合成)
(7)再生温度 :300℃
(8)再生圧力 :大気圧
【0114】
実施例及び比較例の何れにおいても、吸着塔として、内筒(筐体)がSUS304(サイズ:80AのSch10S)で、高さが1330mmのものを用いた。
また、吸着剤には、上記のように、合成ゼオライトを用い、その充填高さ(吸着剤層の高さ)は1240mmとした。
【0115】
[運転手順]
(実施例)
実施例においては、3塔切替式とされた実施例のガス精製装置を用い、以下の手順で原料ガスから不純物である水分等を吸着し、精製ガスとして水素を得た。
まず、図4に示したバルブタイムチャートに基づき、図2中に示す運転プロセスで、原料ガスG1を原料ガス導入経路L1から吸着塔2Aに供給して吸着工程を実施させ、製品ガス導出経路L2を介して精製ガスG2を導出させた。
【0116】
また、吸着塔2Aにおける吸着工程と同時に、吸着塔2B,2Cにおいて再生工程を実施した。この際、吸着塔2Bでは、吸着剤6を冷却する冷却工程(再生工程)を実施し、吸着塔2Cでは、吸着剤6を加熱する加熱工程(再生工程)を実施した。即ち、再生ガス導入経路L3により、吸着塔2Bの他端2b側から再生ガスG3の一部を導入するとともに、吸着塔2Bの一端2a側から導出される再生ガスG3の排ガスを、吸着塔連結経路L5を介して、他端2b側から吸着塔3Cに導入した。また、吸着塔3Cの一端2a側から導出される再生ガスG3の排ガスは、再生ガス導出経路L4を介して吸着塔3Cの外部に導出させた。また、この運転プロセスにおいては、加熱工程(再生工程)を実施している吸着塔2Cの加熱部9のみをオンとした。
【0117】
次いで、図3中に示す運転プロセスで、引き続き、吸着塔2Aにおいて吸着工程を実施するとともに、吸着塔2Bを待機状態とし、吸着塔2Cにおいて充圧工程を実施した。
実施例においては、図4に示したバルブタイムチャートに基づき、3つの吸着塔2A,2B,2Cに対して、上記の運転プロセスをローテーションで実施した。
【0118】
(比較例)
2塔切替式とされた比較例のガス精製装置を用い、以下の手順で原料ガスから不純物である水分等を吸着し、精製ガスとして水素を得た。
まず、原料ガスを一方の吸着塔内に送り続け、原料ガスを精製ガスとするとともに、他方の吸着塔において、一方の吸着塔から得られた精製ガスの一部を再生ガスとして、他方の吸着塔内に流通させた。また、このとき、加熱部によって他方の吸着塔を加熱した。
【0119】
次いで、一方の吸着塔において、上記同様の条件で、一方の吸着塔内で原料ガスの精製を行うとともに、他方の吸着塔において、一方の吸着塔で得られた精製ガスの一部を再生ガスとして、他方の吸着塔内に流通させることで、他方の吸着塔を冷却した。
【0120】
次いで、上記の各工程を、一方の吸着塔と他方の吸着塔とで置き換え、ローテーションで実施した。
【0121】
<評価結果>
下記表1に、2塔切替式(比較例)及び3塔切替式(実施例)の運転プロセスと、これら実施例及び比較例における、精製ガス(製品ガス)中に含まれる再生ガスの量の比較結果を示す。
なお、下記表1中に示す回収率とは、次式{(1サイクルあたりの原料ガスの供給量)-(1サイクルあたりの再生ガスの排ガス量)/(1サイクルあたりの原料ガス供給量)}で表される値である。
【0122】
【表1】
【0123】
表1に示したように、従来の構成を有する2塔切換式のガス精製装置を用いた比較例においては、精製後のガスから再生ガスを差し引いた精製ガスの回収率が96.7%であった。
これに対し、本発明に係る構成、即ち、3塔切替式のTSA法を採用し、且つ、吸着塔連結経路L5を有したガス精製装置1を用いた実施例においては、精製後のガスから再生ガスを差し引いた精製ガスの回収率が98.2%と、比較例に比べて回収率が向上していることが確認できた。
【0124】
上記のような本実施例の結果より、本発明を適用することで、吸着塔の加熱・冷却に必要な再生ガスの流量を低減でき、再生工程において吸着塔から排出される再生ガスの排ガスの流量も低減できるので、精製ガスに含まれる再生ガスの排ガス量が削減され、製品となる精製ガスの回収率が高められることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明のガス精製方法及びガス精製装置は、圧縮機等を必要とすることなく再生ガスを効率的に利用することができ、再生ガスの排ガス量を削減して製品ガスの回収率を高めることが可能なものである。従って、本発明は、例えば、特に、高額である希ガスの精製用途や、ガス発生量(原料ガス量)に制限があり、且つ、製品ガス量(使用可能なガス量)を多めにすることが要望される水素発生装置といった、ガス発生装置向けの用途において極めて好適である。
【符号の説明】
【0126】
1,1A,1B,1C…ガス精製装置
2A,2B,2C…吸着塔
2a…一端
2b…他端
5…筐体
6…吸着剤
9…加熱部
L1…原料ガス導入経路(原料ガス導入配管)
L2…製品ガス導出経路(製品ガス導出配管)
L3…再生ガス導入経路(再生ガス導入配管)
L4…再生ガス導出経路(再生ガス排出配管)
L5,L5A1,L5A2,L5A3…吸着塔連結経路(吸着塔連結配管)
L41…ドレン管
L6a,L6b,L6c,L7a,L7b,L7c…接続配管
V1a,V1b,V1c,V2a,V2b,V2c,V3a,V3b,V3c,V4a,V4b,V4c…開閉バルブ
V5a,V5b,V5c,V5d,V5e,V5f…切換バルブ
7a,7b,7c,71a,71b,71c…熱交換器
8a,8b,8c…ドレントラップ
NV1…再生ガス流量調整用バルブ
G1…原料ガス
G2…精製ガス
G3…再生ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8