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特開2025-7008(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
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  • 特開-(メタ)アクリル酸エステルの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007008
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】(メタ)アクリル酸エステルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/03 20060101AFI20250109BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20250109BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20250109BHJP
【FI】
C07C67/03
C07C69/54 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108120
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直正
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 孝志
(72)【発明者】
【氏名】松田 康義
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 優
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC48
4H006BA07
4H006BA94
4H006BB11
4H006BC34
4H006BD20
4H006BD35
4H006BD52
4H006KA03
4H039CA66
4H039CL60
(57)【要約】
【課題】原料エステルを大過剰としなくても、高収率で(メタ)アクリル酸エステルを製造できる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法の提供。
【解決手段】亜鉛触媒の存在下に、下記一般式(1)で表される化合物とアルコールとをエステル交換反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、前記エステル交換反応により副生するアルコールを吸着剤に吸着させて除去しながら、目的の(メタ)アクリル酸エステルを製造する、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
CH=CR-COOR ・・・(1)
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはメチル基又はエチル基である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛触媒の存在下に、下記一般式(1)で表される化合物とアルコールとをエステル交換反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、
前記エステル交換反応により副生するアルコールを吸着剤に吸着させて除去しながら、目的の(メタ)アクリル酸エステルを製造する、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
CH=CR-COOR ・・・(1)
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはメチル基又はエチル基である。)
【請求項2】
前記吸着剤が合成ゼオライトである、請求項1に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項3】
前記エステル交換反応をヘキサンの存在下で行う、請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項4】
前記エステル交換反応を重合禁止剤の存在下で行う、請求項1又は2に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項5】
前記重合禁止剤が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、請求項4に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【請求項6】
前記2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの使用量が、前記アルコール1モルに対して0.05~0.5モルである、請求項5に記載の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル酸エステルは、炭素-炭素二重結合を有する(メタ)アクリル酸部分と、(メタ)アクリル酸エステルに機能を付与するアルコール部分とからなり、幅広い用途で使用されている。(メタ)アクリル酸部分は、熱、光、過酸化物等で重合してポリマー主鎖を構築する。これに対して機能性を有するアルコールを用いることで、重合後のポリマーに耐水性、可撓性、耐熱性、耐候性、低収縮性、高屈折率、水溶性、硬化性、密着性、低表面張力、撥水撥油性等の性能や、高硬度の特徴を持たせることができる。そのため、(メタ)アクリル酸部分とアルコール部分とを結合させる、すなわち(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法は非常に重要である。
【0003】
(メタ)アクリル酸エステルの製造方法として、有機金属化合物等の触媒の存在下に、アクリル酸メチルと、目的の(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコール(以下、「原料アルコール」ともいう。)とをエステル交換反応させ、副生するメタノールを除去する方法が知られている(例えば非特許文献1参照)。
エステル交換反応は平衡反応であり、副生するアルコール(以下、「副生アルコール」ともいう。)を反応系外に留去することで反応を生成系に偏らせ、収率を高めることができる。そのため、副生アルコールの沸点に応じてエステル交換反応の温度を設定し、副生アルコールを気化させて除去しつつエステル交換反応を行う。例えば、メタノールが副生する場合、80℃程度の温度でエステル交換反応を行うことができる。エステル交換反応の温度が低いほど、目的の(メタ)アクリル酸エステルの色調は良好となる傾向にある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Xue Zhao,外4名、 “Chemical Science”、2023年、第14巻、p.566-572
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エステル交換反応では、反応を生成系に偏らせるために、副生アルコールを留去することに加えて、原料として用いるアクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル(以下、「原料エステル」ともいう。)を必要量よりも多く、大過剰に用いるため、生産効率は必ずしも高くない。
また、原料エステルとしてアクリル酸メチルを用いる場合、副生するメタノールとアクリル酸メチルの沸点が近く、また、互いの相溶性も非常に高い。そのため、アクリル酸メチルを大過剰に用いるとメタノールが分離しにくく、メタノールを十分に除去できなくなり、その結果、エステル交換反応が生成系に偏りにくくなり、必ずしも十分な収率が得られない。
さらに、原料エステルを大過剰に用いると、未反応の原料エステルも多く残ってしまうため、未反応の原料エステルの除去に手間がかかる。
【0006】
本発明は、原料エステルを大過剰としなくても、高収率で(メタ)アクリル酸エステルを製造できる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記の態様を有する。
[1] 亜鉛触媒の存在下に、下記一般式(1)で表される化合物とアルコールとをエステル交換反応させて(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法であって、
前記エステル交換反応により副生するアルコールを吸着剤に吸着させて除去しながら、目的の(メタ)アクリル酸エステルを製造する、(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
CH=CR-COOR ・・・(1)
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはメチル基又はエチル基である。)
[2] 前記吸着剤が合成ゼオライトである、前記[1]の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[3] 前記エステル交換反応をヘキサンの存在下で行う、前記[1]又は[2]の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[4] 前記エステル交換反応を重合禁止剤の存在下で行う、前記[1]~[3]のいずれかの(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[5] 前記重合禁止剤が2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである、前記[4]の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
[6] 前記2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルの使用量が、前記アルコール1モルに対して0.05~0.5モルである、前記[5]の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、原料エステルを大過剰としなくても、高収率で(メタ)アクリル酸エステルを製造できる(メタ)アクリル酸エステルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(メタ)アクリル酸エステルの製造装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明は後述する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
また、本発明において、「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。例えばA~BはA以上B以下と同義である。
また、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なる場合がある。
【0011】
本発明の一実施形態に係る(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、亜鉛触媒の存在下に、以下に示す原料エステルと原料アルコールとをエステル交換反応させて、目的生成物(反応生成物)である(メタ)アクリル酸エステルを製造する方法である。
本実施形態では、エステル交換反応により副生するアルコール(以下、「副生アルコール」ともいう。)と共沸組成を形成する共沸溶媒、及び重合禁止剤の少なくとも一方の存在下でエステル交換反応を行うことが好ましい。すなわち、反応系中に、亜鉛触媒、原料エステル及び原料アルコールに加えて、共沸溶媒及び重合禁止剤の少なくとも一方が存在する状態でエステル交換反応を行うことが好ましく、共沸溶媒及び重合禁止剤の両方が存在する状態でエステル交換反応を行うことがより好ましい。
また、触媒活性剤の存在下でエステル交換反応を行ってもよい。
ここで、「反応系」とは、エステル交換反応に関与する一連の化学物質(成分)を一括したものを指す。
【0012】
<亜鉛触媒>
亜鉛触媒としては、亜鉛を含み、触媒機能を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば下記一般式(2)で表される亜鉛化合物(以下、単に「化合物(2)」)ともいう。が挙げられる。
Zn(OCOR ・・・(2)
(一般式(2)中、Rはアルキル基、アルケニル基、アリール基又はシクロアルキル基であり、Mは酸素原子、硫黄原子又はセレン原子であり、pは1又は4の数であり、qは2又は6の数であり、rは0又は1の数である。ただし、pが1のときは、qが2であり、rが0であり、pが4のときは、qが6であり、rが1である。)
【0013】
におけるアルキル基の炭素数は1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。
におけるアルケニル基の炭素数は2~20が好ましく、2~10がより好ましく、1~6がさらに好ましい。
におけるアリール基の炭素数は6~24が好ましく、6~12がより好ましい。
におけるシクロアルキル基の炭素数は5~20が好ましく、5~16がより好ましく、5~12がさらに好ましい。
におけるアルキル基及びアルケニル基はそれぞれ、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよい。
におけるアルキル基、アルケニル基、アリール基およびシクロアルキル基はそれぞれ、炭素原子に結合する水素原子の1つ以上が、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。これらの中でも、フッ素原子が好ましい。
としては、アルキル基、アリール基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピルプ基等の無置換のアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオルエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基等のパーフルオロアルキル基などが挙げられる。これらの中でも、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
qが2の場合、2つのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
qが6の場合、6つのRは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0014】
化合物(2)の具体例としては、酢酸亜鉛、酢酸亜鉛二水和物、プロピオン酸亜鉛等のビス(アルキレート)亜鉛;トリフルオロ酢酸亜鉛、トリフルオロ酢酸亜鉛水和物、ビス(ペンタフルオロプロピオネート)亜鉛、ビス(ヘプタフルオロブタネート)亜鉛、ビス(ヘプタフルオロイソブチレート)亜鉛等のビス(パーフルオロアルキル酸)亜鉛;オキソ(ヘキサ(アセテート))四亜鉛、オキソ(ヘキサ(プロピオネート))四亜鉛等のオキソ(ヘキサ(アルキル酸))四核亜鉛;オキソ(ヘキサ(トリフルオロアセテート))四亜鉛、オキソ(ヘキサ(ペンタフルオロプロピオネート))四亜鉛、オキソ(ヘキサ(ヘプタフルオロブタネート))四亜鉛、オキソ(ヘキサ(ヘプタフルオロイソブチレート))四亜鉛等のオキソ(ヘキサ(パーフルオロアルキル酸))四核亜鉛などが挙げられる。これらの中でも、トリフルオロ酢酸亜鉛、ビス(ペンタフルオロプロピオネート)亜鉛、ビス(ヘプタフルオロブタネート)亜鉛等のビス(パーフルオロアルキル酸)亜鉛;オキソ(ヘキサ(アセテート))四亜鉛、オキソ(ヘキサ(プロピオネート))四亜鉛等のオキソ(ヘキサ(アルキル酸))四核亜鉛;オキソ(ヘキサ(トリフルオロアセテート))四亜鉛、オキソ(ヘキサ(ペンタフルオロプロピオネート))四亜鉛等のオキソ(ヘキサ(パーフルオロアルキル酸))四核亜鉛が好ましい。
亜鉛触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
<原料エステル>
原料エステルは、目的の(メタ)アクリル酸エステルの原料となる(メタ)アクリル酸エステルである。
本実施形態では、原料エステルとして、下記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物(1)」ともいう。)を用いる。
CH=CR-COOR ・・・(1)
(一般式(1)中、Rは水素原子又はメチル基であり、Rはメチル基又はエチル基である。)
【0016】
化合物(1)は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルであり、(メタ)アクリル酸メチルが好ましく、アクリル酸メチルがより好ましい。
【0017】
<原料アルコール>
原料アルコールは、目的の(メタ)アクリル酸エステルの原料となるアルコールである。
原料アルコールとしては、目的の(メタ)アクリル酸エステルに対応するアルコールであれば特に限定されないが、例えば炭素数3~20のアルコールが挙げられる。アルコールの炭素数はエステル交換反応の活性の観点から、3~16が好ましく、3~12がより好ましい。
原料アルコールは、1価アルコール、2価アルコール、3価以上のアルコールのいずれでもよいが、エステル交換反応の活性の観点から、1価アルコールが好ましい。
原料アルコールは、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールのいずれでもよいが、エステル交換反応の活性の観点から、第一級アルコールが好ましい。
原料アルコールは、分子内にエーテル結合を有していてもよい。
【0018】
原料アルコールとしては、具体的には、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、トリデカノール、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N-ジエチルアミノエタノール、シクロヘキサノール、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール、4-t-ブチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、1-フェニルエチルアルコール、2-フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、メトキシエタノール、エトキシエタノール、ブトキシエタノール、アリルアルコール、メタリルアルコール、2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-オールなどが挙げられる。
原料アルコールは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
<共沸溶媒>
共沸溶媒は、副生アルコールと共沸組成を形成する溶媒である。
エステル交換反応を共沸溶媒の存在下で行うことで、副生アルコールをその沸点よりも低い温度で気化させることができ、共沸溶媒を併用しない場合に比べてエステル交換反応の温度を低く設定できる。
共沸溶媒としては、副生アルコールと共沸組成を形成できる溶媒であれば特に限定されないが、例えば沸点が40~120℃である有機溶剤が挙げられる。共沸溶媒の沸点は、40~100℃がより好ましく、40~90℃がさらに好ましく、45~80℃が特に好ましい。なお、これらの沸点は大気圧下(1013hPa)における値である。
【0020】
共沸溶媒としては、具体的には、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素溶媒などが挙げられる。これらの中でも沸点が低く、エステル交換反応の温度をより低く設定できる観点から、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンが好ましく、ヘキサンがより好ましい。
共沸溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
<重合禁止剤>
エステル交換反応を重合禁止剤の存在下で行うことで、原料エステルや目的の(メタ)アクリル酸エステルの重合を抑制できる。
重合禁止剤としては、例えば2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル(TEMPO)、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)などが挙げられる。これらの中でも、原料エステルの濃度が高くなっても重合をより効果的に抑制できる点から、TEMPOが好ましい。
重合禁止剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
<触媒活性剤>
エステル交換反応を触媒活性剤の存在下で行うことで、亜鉛触媒の活性が高まる。
触媒活性剤としては、例えば4-ジメチルアミノピリジン、N-メチルイミダゾール、1,3-ビス(イミダゾール-1-イル)メチル)-5-(ペントキシ)ベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、4-ジメチルアミノピリジンが好ましい。
触媒活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
<エステル交換反応>
エステル交換反応は、亜鉛触媒の存在下に、原料エステルである化合物(1)と原料アルコールとを反応させることで行われる。
エステル交換反応における、化合物(1)と原料アルコールの比率は特に限定されないが、例えば、原料アルコール1モルに対して、化合物(1)が1~5モルであることが好ましく、1.1~4モルがより好ましく、1.2~3モルがさらに好ましい。化合物(1)の割合が上記下限値以上であれば、エステル交換反応が十分に進行する。化合物(1)の割合が上記上限値以下であれば、化合物(1)が大過剰となりにくく、高い生産効率が得られる。また、未反応の化合物(1)の割合を軽減できる。
【0024】
エステル交換反応における、亜鉛触媒の使用量は特に限定されないが、化合物(1)1モルに対して、亜鉛換算で0.001~0.5モルが好ましく、0.005~0.2モルがより好ましく、0.01~0.1モルがさらに好ましい。亜鉛触媒の使用量が上記下限値以上であれば、エステル交換反応が十分に進行する。亜鉛触媒の使用量が上記上限値以下であれば、触媒の分離が容易であり、また、経済的にも有利である。
【0025】
反応系中に共沸溶媒を存在させる場合、反応系中における化合物(1)/共沸溶媒で表される体積比は、0.1~5.0が好ましく、0.3~3.0がより好ましく、0.5~2.0がさらに好ましく、0.7~1.5がよりさらに好ましく、0.8~1.2が特に好ましく、1.0が最も好ましい。体積比が上記下限値以上であれば、共沸溶媒と原料アルコールとが分離しにくく、反応系が2層系となりにくく、エステル交換反応が進行しやすくなる。体積比が上記上限値以下であれば、副生アルコールとの共沸効率の低下を抑制でき、より高収率で目的の(メタ)アクリル酸エステルを製造できる。加えて、化合物(1)の重合の進行を抑制できる。
【0026】
反応系中にTEMPOを存在させる場合、TEMPOの使用量は、原料アルコール1モルに対して0.05~0.5モルが好ましく、0.07~0.4モルがより好ましく、0.09~0.3モルがさらに好ましい。TEMPOの使用量が上記下限値以上であれば、原料エステルや目的の(メタ)アクリル酸エステルの重合を十分に抑制できる。TEMPOの使用量が上記上限値以下であれば、反応を阻害することなく、かつ、経済的にも有利である。
【0027】
反応系中に触媒活性剤を存在させる場合、触媒活性剤の使用量は、亜鉛触媒の亜鉛換算での1モルに対して1.5~2.5モルが好ましく、1.7~2.3モルがより好ましく、1.8~2.2モルがさらに好ましい。触媒活性剤の使用量が上記下限値以上であれば、亜鉛触媒を十分に活性化できる。触媒活性剤の使用量が上記上限値以下であれば、反応を阻害することなく、かつ、経済的にも有利である。
【0028】
原料エステルと原料アルコールとのエステル交換反応により、目的の(メタ)アクリル酸エステルが生成する。また、アルコールが副生する。
エステル交換反応により副生するアルコール(副生アルコール)は、原料エステルとして(メタ)アクリル酸メチルを用いる場合はメタノールであり、(メタ)アクリル酸エチルを用いる場合はエタノールである。
エステル交換反応における反応温度は、反応選択性、原料エステル及び目的の(メタ)アクリル酸エステルの重合安定性、副生アルコールの沸点等に応じて決定すればよいが、例えば60~95℃が好ましく、65~90℃がより好ましい。
エステル交換反応における反応時間は特に限定されないが、例えば0.1~15時間が好ましく、0.2~10時間がより好ましい。
エステル交換反応における反応圧力は、減圧、常圧、加圧のいずれでもよい。
エステル交換反応における反応形式は特に限定されず、例えば回分式、半回分式、連続式等の形式を採用できる。
【0029】
本実施形態では、副生アルコールを吸着剤に吸着させて反応系中から除去しながら、エステル交換反応を行い、目的の(メタ)アクリル酸エステルを製造する。
吸着剤としては、副生アルコールを吸着し、原料エステル、原料アルコール及び共沸溶媒を吸着しにくいものであれば特に限定されないが、例えば合成ゼオライト、天然ゼオライト、人工ゼオライト、金属有機構造体(MOF)、多孔性配位高分子(PCP)、活性炭、シリカなどが挙げられる。これらの中でも、合成ゼオライトが好ましい。
吸着剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
合成ゼオライトとしては、合成ゼオライト3A、合成ゼオライト4A、合成ゼオライト5Aが好ましく、合成ゼオライト3A、合成ゼオライト4Aがより好ましく、合成ゼオライト4Aがさらに好ましい。
本明細書において、合成ゼオライト3Aとは、細孔径が0.30nmの細孔を有する合成ゼオライトである。合成ゼオライト3Aは有効直径0.3nmまでの分子を通過させることができる。
本明細書において、合成ゼオライト4Aとは、細孔径が0.40nmの細孔を有する合成ゼオライトである。合成ゼオライト4Aは有効直径0.4nmまでの分子を通過させることができる。
本明細書において、合成ゼオライト5Aとは、細孔径が0.50nmの細孔を有する合成ゼオライトである。合成ゼオライト4Aは有効直径0.5nmまでの分子を通過させることができる。
合成ゼオライトとしては、A型合成ゼオライトのうちで3A、4A又は5Aと表記されるものが挙げられる。市販品としては、モレキュラーシーブ3A、モレキュラーシーブ4A、モレキュラーシーブ5A(以上、ナカライテスク株式会社製、商品名)などが挙げられる。
【0031】
副生アルコールを吸着剤に吸着させる方法としては特に制限されず、反応系中で吸着剤に副生アルコールを吸着させてもよいし、反応系外で吸着剤に副生アルコールを吸着させてもよいが、吸着効率等の点から反応系外で吸着剤に副生アルコールを吸着させことが好ましい。
反応系外で吸着剤に副生アルコールを吸着させる方法としては、気化により反応系中から放出された副生アルコールを冷却した後に、吸着剤に吸着させる方法が挙げられる。具体的には、ディーンスターク装置を用いて、気化した副生アルコールを冷却し、液化した副生アルコールを吸着剤に吸着させる方法が挙げられる。
ここで、図1を参照しながら、副生アルコールを吸着剤に吸着させる方法の一実施形態を説明する。
【0032】
図1は、(メタ)アクリル酸エステルの製造装置の一例を示す概略構成図である。
図1に示す(メタ)アクリル酸エステルの製造装置1は、反応器10と、ディーンスターク装置20と、冷却管30と、温度計40とを備える。
【0033】
ディーンスターク装置20としては、公知のものを使用できる。この例のディーンスターク装置20は、H型の形状であり、分留管21と、液溜め部である直管22と、直管22に取り付けられたコック23とを有する。
分留管21と直管22は連結管24で連結されている。連結管24は直管22側が分留管21側よりも高くなるように傾斜している。
分留管21の下部には反応器10が装着され、上部には温度計40が装着されている。
直管22の上部には冷却管30が装着されている。
また、直管22には、吸着剤Aが充填されている。吸着剤Aの充填量は特に限定されないが、直管22の連結管24と合流する部分まで、かつ、吸着剤Aが連結管24に流出しないように、吸着剤Aを直管22に充填することが好ましい。また、例えば、副生アルコールの理論上の生成量(副生量)の10倍量程度の充填量となるように、吸着剤Aを充填してもよい。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステルの製造装置1を用いた(メタ)アクリル酸エステルの製造方法では、反応器10に亜鉛触媒を投入し、ディーンスターク装置20の直管22のコック23を閉じた状態で、直管22に吸着剤Aを充填し、必要に応じて装置内をアルゴンガス等の不活性ガスで置換した後に、反応器10に原料エステル及び原料アルコールと、必要に応じて共沸溶媒、重合禁止剤及び触媒活性剤の少なくとも1つとを投入する。また、直管22内の吸着剤Aを充填した部分を共沸溶媒で満たしておくことが好ましい。反応器10に投入する共沸溶媒と、直管22に投入する共沸溶媒は、同じ種類であってもよいし、異なる種類であってもよいが、同じ種類であることが好ましく、ヘキサンであることがより好ましい。
【0035】
次いで、反応器10を加熱して、エステル交換反応を開始する。エステル交換反応が開始すると、目的の(メタ)アクリル酸エステルと副生アルコールが生成する。副生アルコールは加熱により気化し、分留管21、連結管24及び直管22を通過して冷却管30まで到達する。冷却管30に到達した気体の副生アルコールは、冷却管30にて冷却されて凝縮し、液体となって直管22に落下する。
このとき、反応温度よりも原料エステルの沸点の方が低い場合は、未反応の原料エステルの一部も気化し、冷却管30にて冷却されて凝縮し、液体となって直管22に落下する。
また、反応温度よりも原料アルコールの沸点の方が低い場合は、未反応の原料アルコールの一部も気化し、冷却管30にて冷却されて凝縮し、液体となって直管22に落下する。
さらに、共沸溶媒の存在下でエステル交換反応を行う場合は、共沸溶媒の一部も気化し、冷却管30にて冷却されて凝縮し、液体となって直管22に落下する。
【0036】
直管22に落下した液体の副生アルコールは、直管22に充填された吸着剤Aに吸着される。
一方、原料エステル、原料アルコール及び共沸溶媒は、直管22に落下しても吸着剤Aに吸着されにくく、連結管24を通過して反応器10に返送される。
こうして、副生アルコールを効率よく反応系中から除去することができる。
【0037】
なお、反応系中で吸着剤に副生アルコールを吸着させる場合は、予め反応器10内に吸着剤を投入しておき、吸着剤の存在下でエステル交換反応を行えばよい。
【0038】
<作用効果>
以上説明した本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法によれば、副生アルコールを吸着剤に吸着させることで反応系中から除去するので、副生アルコールの除去が容易であり、原料エステルを大過剰としなくても、エステル交換反応が生成系に偏りやすい。よって、原料エステルを大過剰とする必要がなく、生産効率に優れる。また、高収率かつ短時間で(メタ)アクリル酸エステルを製造できる。すなわち、本発明の(メタ)アクリル酸エステルの製造方法は、高活性な(メタ)アクリル酸エステルの製造方法であると言える。
また、原料エステルを大過剰とする必要がないため、未反応の原料エステルの除去も容易である。
【実施例0039】
以下では実施例によって本発明をより具体的に説明する。しかし、本発明は後述する実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変形が可能である。
【0040】
[原材料]
・合成ゼオライト4A:ナカライテスク株式会社製、商品名「モレキュラーシーブ4A」。
・アクリル酸メチル:東京化成工業株式会社製。
・4-ジメチルアミノピリジン:Angene International社製。
・2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-オール:Angene International社製。
・ヘキサン:関東化学株式会社製。
・TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル):Oakwood Chemical社製。
・酸化亜鉛:ナカライテスク株式会社製。
・トリフルオロ酢酸:Oakwood Chemical社製。
・ノナデカン:東京化成工業株式会製。
・ZnTAC24(登録商標)(オキソ(ヘキサ(トリフルオロアセタト))四亜鉛とそのトリフルオロ酢酸付加物(≦7質量%トルエン含む)):高砂香料工業株式会社製。
【0041】
[合成例]
<トリフルオロ酢酸亜鉛の合成>
50mLナスフラスコに撹拌子とトリフルオロ酢酸9.12g(4当量)を入れた。フラスコを氷水バスで冷却して、そこに攪拌しながら酸化亜鉛1.63g(20ミリモル)を少しずつ添加した。添加終了後、氷バスを取り外して25℃に徐々に昇温して、25℃で8時間攪拌した。反応混合物を真空乾燥することで、トリフルオロ酢酸亜鉛5.80g(収率99.7%)を得た。
【0042】
[実施例1]
図1に示す(メタ)アクリル酸エステルの製造装置1を用い、以下のようにして(メタ)アクリル酸エステルを製造した。
反応器10として50mLフラスコに、亜鉛触媒としてトリフルオロ酢酸亜鉛255mg(亜鉛換算で5モル%)を投入した。また、冷却管30及び温度計40を取り付けたディーンスターク装置20の直管22のコック23を閉じた状態で、直管22に吸着剤Aとして8.7gの合成ゼオライト4Aを、直管22の連結管24と合流する部分まで、かつ、吸着剤Aが連結管24に流出しないように充填した。
(メタ)アクリル酸エステルの製造装置1内を真空ポンプで減圧にした後、亜鉛触媒を十分に乾燥させるために、ヒートガンを用いて反応器10を2分程度加熱した。
次いで、反応器10を冷却し、(メタ)アクリル酸エステルの製造装置1内をアルゴンガスで置換した後に、反応器10に4-ジメチルアミノピリジン428mg(20モル%)と、重合禁止剤としてTEMPOを5.47mg(0.2モル%)と、原料エステルとしてアクリル酸メチル3.01g(35ミリモル)と、原料アルコールとして2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-オール3.64g(17.5ミリモル)と、共沸溶媒としてヘキサン3.2mL(アクリル酸メチル/共沸溶媒で表される体積比=1.0に相当)を投入した。また、直管22内の吸着剤Aを充填した部分をヘキサンで満たした。
次いで、反応器10を80℃のオイルバスを用いて加熱しながら6時間、撹拌してエステル交換反応を行い、目的生成物である2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-オールのアクリル酸エステルを得た。
なお、エステル交換反応により副生した副生アルコールであるメタノールと、ヘキサンと、未反応のアクリル酸メチルの一部は気化し、冷却管30にて冷却されて凝縮し、液体となって直管22へ落下した。直管22に落下したメタノールは、直管22に充填された吸着剤Aに吸着された。一方、直管22に落下したアクリル酸メチル及びヘキサンは、連結管24を通過して反応器10に返送された。
【0043】
目的生成物について、Bruker社製の500MHzAvanceIIIのH-NMRの面積比と、下記の条件でガスクロマトグラフィー(GC)測定(ノナデカンを内部標準物質として用いて内部標準法)とによって収率を算出したところ、収率は94%であった。
【0044】
<GC測定の条件>
・ガスクロマトグラフ:株式会社島津製作所製、型式「GC-2014」。
・カラム:Agilent J&W社製、製品名「GC Column DB-5」(30.0m、内径0.25mmID)。
・カラムオーブン温度:60℃で3分保持した後、250℃まで20℃/分で昇温し、250℃2分保持した。インジェクション温度(270℃)、検出器温度(270℃)。
・カラム流量:ヘリウム(1.99mL/分)。
・分析時間:14.5分。
・検出:FID検出器。
・試料の注入量:1μL。
【0045】
[実施例2]
図1に示す(メタ)アクリル酸エステルの製造装置1を用い、以下のようにして(メタ)アクリル酸エステルを製造した。
反応器10として50mLフラスコに、ZnTAC24(登録商標)344mg(亜鉛換算で5モル%)を投入した。また、冷却管30及び温度計40を取り付けたディーンスターク装置20の直管22のコック23を閉じた状態で、直管22に吸着剤Aとして8.7gの合成ゼオライト4Aを、直管22の連結管24と合流する部分まで、かつ、吸着剤Aが連結管24に流出しないように充填した。
(メタ)アクリル酸エステルの製造装置1内を真空ポンプで減圧にした後、亜鉛触媒を十分に乾燥させるために、ヒートガンを用いてで2分程度加熱した。
次いで、反応器10を冷却し、(メタ)アクリル酸エステルの製造装置1内をアルゴンガスで置換した後に、反応器10に4-ジメチルアミノピリジン611mg(20モル%)と、重合禁止剤としてTEMPOを7.8mg(0.2モル%)と、原料エステルとしてアクリル酸メチル4.30g(50ミリモル)と、原料アルコールとして2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-オール5.21g(25.0ミリモル)と、共沸溶媒としてヘキサン4.5mL(アクリル酸メチル/共沸溶媒で表される体積比=1.0に相当)を投入した。また、直管22内の吸着剤Aを充填した部分をヘキサンで満たした。
次いで、反応器10を80℃のオイルバスを用いて加熱しながら3時間、撹拌してエステル交換反応を行い、目的生成物である2,5,8,11-テトラオキサトリデカン-13-オールのアクリル酸エステルを得た。
なお、エステル交換反応により副生した副生アルコールであるメタノールと、ヘキサンと、未反応のアクリル酸メチルの一部は気化し、冷却管30にて冷却されて凝縮し、液体となって直管22へ落下した。直管22に落下したメタノールは、直管22に充填された吸着剤Aに吸着された。一方、直管22に落下したアクリル酸メチル及びヘキサンは、連結管24を通過して反応器10に返送された。
【0046】
目的生成物について、実施例1と同様にして収率を測定したところ、収率は96%であった。
【0047】
[比較例1]
直管22に吸着剤Aを充填せず、直管22の連結管24と合流する部分まで、かつ、ヘキサンが連結管24に流出しないように、直管22をヘキサンで満たした以外は、実施例1と同様にしてエステル交換反応を行い、目的生成物を得た。
目的生成物について、実施例1と同様にして収率を測定したところ、収率は71%であった。
【0048】
これらの結果より、副生アルコールであるメタノールを吸着剤に吸着させて反応系中から除去しながらエステル交換反応を行うことで、原料エステルであるアクリル酸メチルを大過剰としなくても、高収率で目的生成物である(メタ)アクリル酸エステルを製造できた。
【0049】
一方、メタノールを吸着剤に吸着させずにエステル交換反応を行った場合は、目的生成物の収率が低かった。収率が低かった理由は以下のように考えられる。
副生アルコールであるメタノールと共沸溶媒であるヘキサンは分離しやすいため、メタノールとヘキサンのみが共沸するのであれば、直管22に吸着剤Aを充填しなくても、直管22をヘキサンで満たしておけば、直管22にてメタノールとヘキサンは2層に分離し、比重の軽いヘキサンのみを反応器10に返送できる。しかし、アクリル酸メチルも気化すると、冷却管30で冷却されたメタノールとヘキサンとアクリル酸メチルとが、直管22にて混ざりやすくなり、メタノールが分離しにくくなる。その結果、メタノールの一部も反応器10に返送されてしまい、エステル交換反応が生成系に偏りにくく、目的生成物の収率が低下してものと考えられる。
【符号の説明】
【0050】
1 (メタ)アクリル酸エステルの製造装置
10 反応器
20 ディーンスターク装置
21 分留管
22 直管
23 コック
24 連結管
30 冷却管
40 温度計
A 吸着剤
図1