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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007125
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】屠体の拘束装置及び枝肉切断システム
(51)【国際特許分類】
   A22C 17/02 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
A22C17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108317
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】日野 和睦
(72)【発明者】
【氏名】豊嶋 勝美
(72)【発明者】
【氏名】小山 佑亮
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
(57)【要約】
【課題】枝肉を良好な品質で切断できる屠体の拘束装置及び枝肉切断システムを提供する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係る屠体の拘束装置は、屠体を吊り下げて支持するためのギャンブレルと、ギャンブレルで吊り下げられた屠体を第1高さ位置において挟み込んで拘束するための第1静止部及び第1可動部を含む第1拘束ユニットと、ギャンブレルで吊り下げられた屠体を第1高さ位置の下方の第2高さ位置において挟み込んで拘束するための第2静止部及び第2可動部を含む第2拘束ユニットと、第1可動部を第2可動部よりも先に駆動して第1拘束ユニットで屠体を拘束した状態で、第2可動部を駆動して第2高さ位置で屠体を拘束するように第1可動部及び第2可動部を制御するためのコントローラと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屠体を吊り下げて支持するためのギャンブレルと、
前記ギャンブレルで吊り下げられた前記屠体を第1高さ位置において挟み込んで拘束するための第1静止部及び第1可動部を含む第1拘束ユニットと、
前記ギャンブレルで吊り下げられた前記屠体を前記第1高さ位置の下方の第2高さ位置において挟み込んで拘束するための第2静止部及び第2可動部を含む第2拘束ユニットと、
前記第1可動部を前記第2可動部よりも先に駆動して前記第1拘束ユニットで前記屠体を拘束した状態で、前記第2可動部を駆動して前記第2高さ位置で前記屠体を拘束するように前記第1可動部及び前記第2可動部を制御するためのコントローラと、
を備える、
屠体の拘束装置。
【請求項2】
前記第1拘束ユニット、及び、前記第2拘束ユニットは、前記屠体を搬送する搬送装置によって搬送された前記ギャンブレルで吊り下げられた前記屠体を拘束可能であり、
前記屠体は、脊椎の位置で左右に半割りされた一対の枝肉であり、
前記ギャンブレルで吊り下げられた前記屠体の前記半割にされた切断面は、平面視において前記搬送装置による搬送方向と直交する方向の一方側を向いている、
請求項1に記載の屠体の拘束装置。
【請求項3】
前記第1静止部、及び、前記第2静止部は、前記屠体に対して前記一方側に配置され、
前記第1可動部、及び、前記第2可動部は、前記搬送方向と直交する方向の他方側に配置されている、
請求項2に記載の屠体の拘束装置。
【請求項4】
前記ギャンブレルで吊り下げられた前記屠体を前記第2高さ位置の下方の第3高さ位置において挟み込んで拘束するための一対の第3可動部を含む第3拘束ユニット、を備え、
前記コントローラは、前記第2可動部を駆動した後に前記第3拘束ユニットで前記屠体を拘束するように前記第2可動部及び前記一対の第3可動部を制御する
請求項1乃至3の何れか一項に記載の屠体の拘束装置。
【請求項5】
前記ギャンブレルで吊り下げられた前記屠体を前記第2高さ位置の下方の第3高さ位置において挟み込んで拘束するための一対の第3可動部を含む第3拘束ユニット、を備え、
前記一対の第3可動部は、前記屠体に対して前記一方側に配置された一方側第3可動部と、前記屠体に対して前記搬送方向と直交する方向の他方側に配置された他方側第3可動部とを含み、
前記コントローラは、前記一方側第3可動部を駆動した後に前記第1可動部を駆動するとともに、前記第2可動部を駆動した後に前記他方側第3可動部を駆動するように前記第1可動部、前記第2可動部、及び前記一対の第3可動部を制御する、
請求項2又は3に記載の屠体の拘束装置。
【請求項6】
前記第3拘束ユニットは、前記一対の第3可動部を上下方向に移動させるための昇降機構、を有する、
請求項5に記載の屠体の拘束装置。
【請求項7】
前記切断面を撮像するための撮像装置と、
前記撮像装置によって撮像された画像において、前記一対の第3可動部による前記屠体の把持位置の基準となる基準位置を特定するための基準位置特定装置と、
を備え、
前記コントローラは、前記基準位置特定装置で特定した前記基準位置に基づいて算出される前記第3高さ位置で前記屠体を挟み込んで拘束するように、前記一対の第3可動部を上下方向に移動させるように前記昇降機構を制御する、
請求項6に記載の屠体の拘束装置。
【請求項8】
前記基準位置特定装置は、過去に取得した前記画像を教師データとして学習した学習モデルを用いて、前記画像に基づいて前記基準位置を特定する、
請求項7に記載の屠体の拘束装置。
【請求項9】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の拘束装置と、
前記屠体を搬送する搬送装置と、
を備える、
枝肉切断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、屠体の拘束装置及び枝肉切断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば豚や牛のような比較的大型な家畜の食肉屠体を対象とする食肉加工では、下処理した食肉屠体を脊椎(背骨)の位置で左右に半割りすることで一対の枝肉に切り分け、更に、各枝肉が前躯及び後躯に切り分けられる。このような切断工程は、従来、作業員が刃物を用いて人手で行っていたが、品質の均一性や作業員の安全性の確保、及び、処理効率の向上の観点から、食肉加工機械を利用した自動化が望まれている。例えば特許文献1には、枝肉の大分割工程における切断装置及び方法に関する技術が開示されている。この文献では、切断される一対の枝肉が吊り下げ支持されるとともに、前後から略水平方向に沿って延びる支持バーによって支持されることで、切断時の枝肉の姿勢が固定されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-31916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のように、自動化された切断工程において枝肉を良好な品質で切断するためには、切断時の枝肉の姿勢を安定化することが有効である。
しかし、上述した特許文献に記載の切断装置のように、上方から吊り下げられて搬送路に沿って搬送されてきた枝肉をクランプ装置で拘束する際に搬送を停止すると枝肉が揺れてしまう。そのため、クランプ装置で拘束された枝肉の姿勢が安定しないおそれがあり、切断後の枝肉の品質が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、枝肉を良好な品質で切断できる屠体の拘束装置及び枝肉切断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る屠体の拘束装置は、
屠体を吊り下げて支持するためのギャンブレルと、
前記ギャンブレルで吊り下げられた前記屠体を第1高さ位置において挟み込んで拘束するための第1静止部及び第1可動部を含む第1拘束ユニットと、
前記ギャンブレルで吊り下げられた前記屠体を前記第1高さ位置の下方の第2高さ位置において挟み込んで拘束するための第2静止部及び第2可動部を含む第2拘束ユニットと、
前記第1可動部を前記第2可動部よりも先に駆動して前記第1拘束ユニットで前記屠体を拘束した状態で、前記第2可動部を駆動して前記第2高さ位置で前記屠体を拘束するように前記第1可動部及び前記第2可動部を制御するためのコントローラと、
を備える。
【0007】
(2)本開示の少なくとも一実施形態に係る枝肉切断システムは、
上記(1)の構成の拘束装置と、
前記屠体を搬送する搬送装置と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、枝肉を良好な品質で切断できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る枝肉分割装置の全体構成図である。
図2】左右一対の枝肉を正面から示す模式図である。
図3】一実施形態に係る屠体の拘束装置の構成を説明するための図である。
図4】一実施形態に係る把持位置特定システムを周辺構成とともに示す構成図である。
図5図4の撮像装置の配置レイアウトを上方から示す模式図である。
図6】左右一対の枝肉で特定され得る特徴点の幾つかの態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0011】
本発明を食肉屠体(以下単に屠体とも称する)の大分割に適用した実施形態を図1図6に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る枝肉分割装置10の全体構成図である。図2は左右一対の枝肉W及びWを正面から示す模式図である。図3は、一実施形態に係る屠体の拘束装置100の構成を説明するための図である。
枝肉分割装置10は、前中躯体分割部A及び中後躯体分割部Bが、枝肉の搬送路を形成するレール12に対して、直列に配置されている。レール12は、水平方向に配置され、前中躯体分割部A及び中後躯体分割部Bの区画内上部領域を貫通するように配置されている。
左右一対の枝肉W及びWは、例えば豚や牛のような比較的大型である家畜の食肉屠体(以下単に屠体と称する)を脊椎7(背骨)の位置で左右に半割りされたものである。左右一対の枝肉W及びWは、両もも側足首を介して1個のギャンブレル14に懸垂される。
左右一対の枝肉W及びWの各々は、前躯体C側を下方(後躯体E側を上方)、内側に背側(外側に胸側)にし、且つ、脊椎7及び肋骨8が見える切断面4を手前側になる姿勢で、中心軸AXに対して左右対称に配置される。
【0012】
ギャンブレル14の上端には、レール12上を滑動するトロリ16が取り付けられている。ギャンブレル14は、一定時間停止した後、プッシャ15によって一定距離ずつ矢印a方向(搬送方向)に押されることで、ギャンブレル14が断続歩進する。これによって、左右一対の枝肉W、Wは、まず、前中躯体分割部Aに搬送され、前中躯体分割部Aで一定時間停止して前躯体Cが分離される。分離された前躯体Cはコンベア51上に落下し搬出される。前躯体Cが分離された枝肉W、Wは、中後躯体分割部Bに搬送され、中後躯体分割部Bで中躯体Dが分離される。分離された中躯体Dは、コンベア52上に落下し搬出される。残った後躯体Eは、そのまま後工程に搬送される。
【0013】
(切断装置300)
本実施形態に係る枝肉分割装置10は、左右一対の枝肉W及びWを切断するための切断装置300を備えている。本実施形態に係る枝肉分割装置10では、切断装置300は、正面側前中躯体切断装置310と、背面側前中躯体切断装置320と、正面側中後躯体切断装置330と、背面側中後躯体切断装置340とを含む。
正面側前中躯体切断装置310は、前中躯体分割部Aの正面、すなわち、前中躯体分割部Aにおいて搬送方向と直交する水平方向の内、左右一対の枝肉W及びWの切断面4が向いている方向に位置する領域に配置された切断装置である。正面側前中躯体切断装置310は、例えば刃面が水平方向に配置された回転丸刃を鉛直方向及び水平方向に移動可能に構成された切断装置である。
背面側前中躯体切断装置320は、前中躯体分割部Aの背面、すなわち、前中躯体分割部Aにおいて搬送方向と直交する水平方向の内、左右一対の枝肉W及びWの切断面4が向いている方向とは反対の方向に位置する領域に配置された切断装置である。背面側前中躯体切断装置320は、例えばロボットアームの先端に取り付けられた刃物を有する垂直多関節ロボットである。
【0014】
正面側中後躯体切断装置330は、中後躯体分割部Bの正面に配置された切断装置である。正面側中後躯体切断装置330は、例えば刃面が水平方向に配置された回転丸刃を鉛直方向及び水平方向に移動可能に構成された切断装置である。
背面側中後躯体切断装置340は、中後躯体分割部Bの背面に配置された切断装置である。背面側中後躯体切断装置340は、例えばロボットアームの先端に取り付けられた刃物を有する垂直多関節ロボットである。
【0015】
(拘束装置100)
本実施形態に係る枝肉分割装置10は、切断装置300による左右一対の枝肉W及びWの切断に際し、左右一対の枝肉W及びWを拘束するための拘束装置100を備えている。本実施形態に係る枝肉分割装置10では、拘束装置100は、第1拘束ユニット110と、第2拘束ユニット120と、を含む。本実施形態に係る枝肉分割装置10では、拘束装置100は、前中躯体分割部Aに設けられた第3拘束ユニット130を含む。
第1拘束ユニット110は、前中躯体分割部Aに設けられた第1拘束ユニット110Aと、中後躯体分割部Bに設けられた第1拘束ユニット110Bとを含む。
第2拘束ユニット120は、前中躯体分割部Aに設けられた第2拘束ユニット120Aと、中後躯体分割部Bに設けられた第2拘束ユニット120Bとを含む。
【0016】
なお、前中躯体分割部Aに設けられた第1拘束ユニット110Aと、中後躯体分割部Bに設けられた第1拘束ユニット110Bとは同様の構成を有する。以下の説明では、前中躯体分割部Aに設けられた第1拘束ユニット110Aと、中後躯体分割部Bに設けられた第1拘束ユニット110Bとを特に区別する必要がない場合や、前中躯体分割部Aに設けられた第1拘束ユニット110Aと、中後躯体分割部Bに設けられた第1拘束ユニット110Bとを総称する場合、符号の末尾のアルファベットを省略して単に第1拘束ユニット110と称する。
同様に、前中躯体分割部Aに設けられた第2拘束ユニット120Aと、中後躯体分割部Bに設けられた第2拘束ユニット120Bは同様の構成を有する。以下の説明では、前中躯体分割部Aに設けられた第2拘束ユニット120Aと、中後躯体分割部Bに設けられた第2拘束ユニット120Bを特に区別する必要がない場合や、前中躯体分割部Aに設けられた第2拘束ユニット120Aと、中後躯体分割部Bに設けられた第2拘束ユニット120Bを総称する場合、符号の末尾のアルファベットを省略して単に第2拘束ユニット120と称する。
【0017】
(第1拘束ユニット110)
第1拘束ユニット110は、ギャンブレル14で吊り下げられた左右一対の枝肉W及びWを第1高さ位置h1において挟み込んで拘束するための第1静止部111及び第1可動部113を含む。第1拘束ユニット110は、左右一対の枝肉W及びWの内、後躯体Eを挟み込んで拘束するように構成されている。第1拘束ユニット110は、後述する第1静止部111と後躯後ろ押さえ116とによって後躯体Eを平面視において搬送方向に直交する方向に挟み込んで拘束するように構成されている。
【0018】
第1静止部111の内、第1拘束ユニット110Aにおける第1静止部111Aは、前中躯体分割部Aの正面に設けられていて、搬送方向に延在する棒状の部材であり、第1高さ位置h1aで前中躯体分割部Aのフレーム56に固定されている。
第1静止部111の内、第1拘束ユニット110Bにおける第1静止部111Bは、中後躯体分割部Bの正面に設けられていて、搬送方向に延在する棒状の部材であり、第1高さ位置h1bで中後躯体分割部Bのフレーム57に固定されている。
第1静止部111A、111Bは、搬送方向と直交する方向における断面が例えば円柱または円筒形状を有していてもよい。
【0019】
なお、第1拘束ユニット110Aにおける第1静止部111Aの第1高さ位置h1aと第1拘束ユニット110Bにおける第1静止部111Bの第1高さ位置h1bとは同じであってもよく、異なっていてもよい。
以下の説明では、第1静止部111Aと第1静止部111Bとを特に区別する必要がない場合や、第1静止部111Aと第1静止部111Bとを総称する場合、第1高さ位置h1aと第1高さ位置h1bとを特に区別する必要がない場合や、第1高さ位置h1aと第1高さ位置h1bとを総称する場合、符号の末尾のアルファベットを省略して単に第1静止部111、第1高さ位置h1と称する。
【0020】
第1可動部113は、アクチュエータ114と、アクチュエータ114によって駆動されるリンク機構115と、リンク機構115に取り付けられた後躯後ろ押さえ116と有する。
アクチュエータ114は、例えばエアシリンダであり、後述するコントローラ40によって制御される。
リンク機構115は、アクチュエータ114のロッドが伸縮されると図3の矢印bで示すように後躯後ろ押さえ116を搬送方向と直交する方向に揺動させるように構成されている。
【0021】
アクチュエータ114のロッドが伸長されると、後躯後ろ押さえ116は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで後躯後ろ押さえ116で後躯体Eを正面に向かって押圧して後躯体Eを第1静止部111に押し付けて、後躯体Eを拘束する。なお、後躯体Eの拘束時における後躯後ろ押さえ116の高さ位置は、第1高さ位置h1と同じとなるが、厳密に同じである必要はなく、後躯体Eの拘束に関して支障がない範囲であればずれが許容されるため、実質的に同じ高さ位置であればよい。
アクチュエータ114のロッドが縮退されると、後躯後ろ押さえ116は背面に向かいつつ下方に移動するように揺動する。
【0022】
後躯後ろ押さえ116は、搬送方向に延在する棒状の部材であり、リンク機構115に取り付けられている。後躯後ろ押さえ116は、搬送方向と直交する方向における断面が例えば角柱または角筒形状を有していてもよく、円柱又は円筒形状を有していてもよい。
【0023】
前中躯体分割部Aにおける第1可動部113Aは、前中躯体分割部Aの背面に設けられていて、図3では図示を省略しているが前中躯体分割部Aのフレーム56に固定されている。
中後躯体分割部Bにおける第1可動部113Bは、中後躯体分割部Bの背面に設けられていて、図3では図示を省略しているが中後躯体分割部Bのフレーム57に固定されている。
以下の説明では、第1可動部113Aと第1可動部113Bとを特に区別する必要がない場合や、第1可動部113Aと第1可動部113Bとを総称する場合、符号の末尾のアルファベットを省略して単に第1可動部113と称する。
【0024】
(第2拘束ユニット120)
第2拘束ユニット120は、ギャンブレル14で吊り下げられた左右一対の枝肉W及びWを第1高さ位置h1の下方の第2高さ位置h2において挟み込んで拘束するための第2静止部121及び第2可動部123を含む。第2拘束ユニット120は、左右一対の枝肉W及びWの内、中躯体Dを挟み込んで拘束するように構成されている。第2拘束ユニット120は、後述する第2静止部121と中躯後ろ押さえ126の湾曲部126bとによって中躯体Dを平面視において搬送方向に直交する方向に挟み込んで拘束するように構成されている。
【0025】
第2静止部121の内、第2拘束ユニット120Aにおける第2静止部121Aは、前中躯体分割部Aの正面に設けられていて、搬送方向に延在する棒状の部材であり、第2高さ位置h2aで前中躯体分割部Aのフレーム56に固定されている。
第2静止部121の内、第2拘束ユニット120Bにおける第2静止部121Bは、中後躯体分割部Bの正面に設けられていて、搬送方向に延在する棒状の部材であり、第2高さ位置h2bで中後躯体分割部Bのフレーム57に固定されている。
第2静止部121A、121Bは、搬送方向と直交する方向における断面が例えば円柱または円筒形状を有していてもよい。
【0026】
なお、第2拘束ユニット120Aにおける第2静止部121Aの第2高さ位置h2aと第2拘束ユニット120Bにおける第2静止部121Bの第1高さ位置h2bとは同じであってもよく、異なっていてもよい。
以下の説明では、第2静止部121Aと第2静止部121Bとを特に区別する必要がない場合や、第2静止部121Aと第2静止部121Bとを総称する場合、第2高さ位置h2aと第2高さ位置h2bとを特に区別する必要がない場合や、第2高さ位置h2aと第2高さ位置h2bとを総称する場合、符号の末尾のアルファベットを省略して単に第2静止部121、第2高さ位置h2と称する。
【0027】
第2可動部123は、アクチュエータ124と、アクチュエータ124によって駆動されるリンク機構125と、リンク機構125に取り付けられた中躯後ろ押さえ126と有する。
アクチュエータ124は、例えばエアシリンダであり、後述するコントローラ40によって制御される。
リンク機構125は、アクチュエータ124のロッドが伸縮されると図3の矢印cで示すように中躯後ろ押さえ126を搬送方向と直交する方向に揺動させるように構成されている。
【0028】
アクチュエータ124のロッドが伸長されると、中躯後ろ押さえ126は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで中躯後ろ押さえ126の後述する湾曲部126bで中躯体Dを正面に向かって押圧して中躯体Dを第2静止部121に押し付けて、中躯体Dを拘束する。なお、中躯体Dの拘束時における湾曲部126bの高さ位置は、第2高さ位置h2と同じとなるが、厳密に同じである必要はなく、中躯体Dの拘束に関して支障がない範囲であればずれが許容されるため、実質的に同じ高さ位置であればよい。
アクチュエータ124のロッドが縮退されると、中躯後ろ押さえ126は背面に向かいつつ下方に移動するように揺動する。
【0029】
中躯後ろ押さえ126は、搬送方向に延在する棒状の部材126aと、この部材126aの正面側に取り付けられていて、上方から見たときに背面側向かって凹むように湾曲した湾曲部126bとを有する。
中躯後ろ押さえ126は、リンク機構125に取り付けられている。部材126aは、搬送方向と直交する方向における断面が例えば角柱または角筒形状を有していてもよく、円柱又は円筒形状を有していてもよい。
【0030】
前中躯体分割部Aにおける第2可動部123Aは、前中躯体分割部Aの背面に設けられていて、図3では図示を省略しているが前中躯体分割部Aのフレーム56に固定されている。
中後躯体分割部Bにおける第2可動部123Bは、中後躯体分割部Bの背面に設けられていて、図3では図示を省略しているが中後躯体分割部Bのフレーム57に固定されている。
以下の説明では、第2可動部123Aと第2可動部123Bとを特に区別する必要がない場合や、第2可動部123Aと第2可動部123Bとを総称する場合、符号の末尾のアルファベットを省略して単に第2可動部123と称する。
【0031】
(第3拘束ユニット130)
第3拘束ユニット130は、ギャンブレル14で吊り下げられた左右一対の枝肉W及びWを第2高さ位置h2の下方の第3高さ位置h3において挟み込んで拘束するための一方側第3可動部131及び他方側第3可動部136を含む。第3拘束ユニット130は、左右一対の枝肉W及びWの内、前躯体Cを挟み込んで拘束するように構成されている。第3拘束ユニット130は、後述する前躯前押さえ134と前躯後ろ押さえ139の湾曲部139bとによって前躯体Cを平面視において搬送方向に直交する方向に挟み込んで拘束するように構成されている。
【0032】
一方側第3可動部131は、前中躯体分割部Aの正面に設けられている。一方側第3可動部131は、アクチュエータ132と、アクチュエータ132によって揺動されるアーム133と、アーム133に取り付けられた前躯前押さえ134と、昇降装置135を有する。
【0033】
アクチュエータ132は、例えばエアシリンダであり、後述するコントローラ40によって制御される。
アーム133は、アクチュエータ132のロッドが伸縮されると図3の矢印dで示すように前躯前押さえ134を搬送方向と直交する方向に揺動させるように構成されている。
アクチュエータ132のロッドが伸長されると、前躯前押さえ134は背面に向かいつつ下方に移動するように揺動することで前躯前押さえ134で前躯体Cを背面向かって押圧する。
アクチュエータ132のロッドが縮退されると、前躯前押さえ134は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動する。
なお、図3に示す例では、アクチュエータ132のロッドが伸長されていて、前躯前押さえ134が第3高さ位置h3に位置している状態を示している。
【0034】
前躯前押さえ134は、アーム133の先端に取り付けられている。前躯前押さえ134は、搬送方向と直交する方向における断面が例えば円柱又は円筒形状を有していてもよく、角柱または角筒形状を有していてもよい。
【0035】
昇降装置135は、前躯前押さえ134によって前躯体Cを拘束する高さ位置を調節するための装置である。昇降装置135は、後述するコントローラ40によって制御される。昇降装置135により、アクチュエータ132とアーム133と前躯前押さえ134とが図3の矢印fで示すように上下方向に移動可能となる。
【0036】
他方側第3可動部136は、アクチュエータ137と、アクチュエータ137によって駆動されるリンク機構138と、リンク機構138に取り付けられた前躯後ろ押さえ139と、昇降装置140を有する。
アクチュエータ137は、例えばエアシリンダであり、後述するコントローラ40によって制御される。
リンク機構138は、アクチュエータ137のロッドが伸縮されると図3の矢印eで示すように前躯後ろ押さえ139を搬送方向と直交する方向に揺動させるように構成されている。
アクチュエータ137のロッドが伸長されると、前躯後ろ押さえ139は正面に向かいつつ下方に移動するように揺動することで前躯後ろ押さえ139の後述する湾曲部139bで前躯体Cを正面に向かって押圧して前躯体Cを前躯前押さえ134に押し付けて、前躯体Cを拘束する。なお、前躯体Cの拘束時における湾曲部139bの高さ位置は、前躯体Cの拘束時における前躯前押さえ134の高さ位置と同じとなるが、厳密に同じである必要はなく、前躯体Cの拘束に関して支障がない範囲であればずれが許容されるため、実質的に前躯前押さえ134の高さ位置と同じ高さ位置であればよい。
アクチュエータ137のロッドが縮退されると、前躯後ろ押さえ139は背面に向かいつつ上方に移動するように揺動する。
【0037】
前躯後ろ押さえ139は、搬送方向に延在する棒状の部材139aと、この部材139aの正面側に取り付けられていて、上方から見たときに背面側向かって凹むように湾曲した湾曲部139bとを有する。
前躯後ろ押さえ139は、リンク機構138に取り付けられている。部材139aは、搬送方向と直交する方向における断面が例えば角柱または角筒形状を有していてもよく、円柱又は円筒形状を有していてもよい。
【0038】
昇降装置140は、前躯後ろ押さえ139によって前躯体Cを拘束する高さ位置を調節するための装置である。昇降装置140は、後述するコントローラ40によって制御される。昇降装置140により、アクチュエータ137とリンク機構138と前躯後ろ押さえ139とが図3の矢印gで示すように上下方向に移動可能となる。
【0039】
(コントローラ40)
コントローラ40は、本実施形態に係る枝肉分割装置10を制御するための制御装置である。コントローラ40は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0040】
(把持位置Pの特定)
続いて上記構成を有する枝肉分割装置10において第3拘束ユニット130による前躯体Cの把持位置P、すなわち第3高さ位置h3の特定について説明する。図4は一実施形態に係る把持位置特定システム20を周辺構成とともに示す構成図であり、図5図4の撮像装置22の配置レイアウトを上方から示す模式図である。
【0041】
図4に示すように、把持位置特定システム20は、左右一対の枝肉W及びWの把持位置Pを特定するためのシステムであり、撮像装置22と、把持位置特定装置24とを備える。尚、図4では、把持位置特定システム20とともに、前述の第3拘束ユニット130、及び、把持位置特定システム20で特定された把持位置Pを取得して第3拘束ユニット130を制御可能なコントローラ40とが示されている。
【0042】
撮像装置22は、図5に示すように、左右一対の枝肉W及びWの切断面4に対向するように配置されることで、左右一対の枝肉W及びWを撮像可能なカメラ等の装置である。撮像装置22によって取得される画像は、静止画であってもよいし、動画であってもよい。また撮像装置22の数は、単体でもよいし、複数でもよい。
なお、撮像装置22による左右一対の枝肉W及びWの撮像は、前中躯体分割部Aよりも搬送方向の上流側(図1における図示左側)の領域に左右一対の枝肉W及びWが存在する期間中に行われるとよい。
【0043】
把持位置特定装置24は、撮像装置22で撮像された画像を用いて、左右一対の枝肉W及びWの把持位置Pを特定するための装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0044】
図4では把持位置特定システム20が備える把持位置特定装置24の機能的構成として、画像取得部28と、記憶部30と、特徴点特定部32と、把持位置算出部34とを備える。
【0045】
画像取得部28は、撮像装置22で撮像された画像を取得するための構成である。
【0046】
記憶部30は、把持位置特定装置24の演算処理に必要な各種データを記憶するための構成であり、例えば特徴点特定部32における特徴点Pcの予測に用いられる学習モデル36を記憶する。学習モデル36は、画像取得部28で取得された画像を入力して、当該画像に基づいて特徴点Pcを予測するための予測モデルであり、過去に画像取得部28で取得された画像を教師データとして学習される。
【0047】
特徴点特定部32は、画像取得部28で取得された画像における特徴点Pcを特定するための構成である。特徴点Pcは、把持位置算出部34において把持位置Pを算出する際の基準となる特徴的な点、すなわち基準位置Psとして特定される。
図4に示す把持位置特定システム20では、把持位置特定装置24の内の、画像取得部28と、記憶部30と、特徴点特定部32とは、基準位置Psを特定するための基準位置特定装置38に含まれる。
【0048】
ここで特徴点Pcに関する幾つかの態様について説明する。図6は左右一対の枝肉W及びWで特定され得る特徴点Pcの幾つかの態様を示す模式図である。
【0049】
まず図6では、比較例に係る特徴点Pc1´及びPc2´として、左右一対の枝肉W及びWの首部が示されている。但し、特徴点Pc1´及びPc2´に示されるように、枝肉W及びWの首部は、一般的に作業員の人手による頭部の切除作業によって形成されるため、個体差が生じやすい(図6では、左枝肉1Aと右枝肉1Bに残存している首部の長さが異なることで、特徴点Pc1´及びPc2´の高さ方向位置が異なっている)。そのため、特徴点Pc1´及びPc2´を基準として把持位置Pを算出すると、個体差の影響を受けやすくなってしまう。このような課題は、以下に説明する各態様に係る特徴点Pcを採用することで好適に解決できる。
【0050】
図6には、特徴点Pcの幾つかの態様として特徴点Pc1~Pc3が示されている。これらの特徴点Pc1~Pc3は、各枝肉W及びWの切断面4の輪郭Rの内側領域Arから特定される。切断面4の輪郭Rの内側領域Arは枝肉の個体差の影響を受けにくいため、当該内側領域Arから特徴点Pcを特定することで、把持位置Pの算出に適した適切な特徴点Pcが得られる。
【0051】
まず特徴点Pc1は、切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる第一肋骨と接続される脊椎を、特徴点Pcとして選択した態様である。また特徴点Pc2は、切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる胸腔の下端(いわゆるスペアリブの下端)を、特徴点Pcとして選択した態様である。また特徴点Pc3は、切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる第一肋骨を、特徴点Pcとして選択した態様である。このように切断面4の輪郭Rの内側領域Arに含まれる特徴点Pc1~Pc3を選択することにより、把持位置Pを好適に算出するための特徴点Pcを得ることができる。
【0052】
尚、内側領域Arのうち第一肋骨が胸腔に露出していない場合には、第一肋骨に関する特徴点Pc1及びPc3を特定できないことがあるため、特徴点Pc1及びPc3に比べて特徴点Pc2を採用することで精度を向上できる。また特徴点Pc2は、算出される把持位置Pに対して比較的近い位置であるため、特徴点Pc2を用いて把持位置Pを算出することで精度向上が期待できる。一方で、内臓や脂肪・肉片がスペアリブ下端に付着している場合には特徴点Pc2に比べて、特徴点Pc1及びPc3を用いることで、精度のよい把持位置Pの算出が期待できる。
また把持位置Pを算出するための特徴点Pcは、前述の特徴点Pc1~Pc3のいずれか1つを採用してもよいし、これらの組み合わせを採用してもよい。
【0053】
本実施形態では、特徴点特定部32は、記憶部30に記憶された学習モデル36に対して、画像取得部28で取得された画像を入力することにより、特徴点Pcの予測結果を求める。学習モデル36は、前述したように、過去に画像取得部28で取得された画像について特徴点Pcを指定することで作成した教師データを用いて予め学習されることで構築される。一般的に、枝肉W及びWの切断面4の輪郭Rの内側領域Ar内にある特徴点Pcは、単純な画像処理では高精度に特定することは難しいが、画像を教師データとして構築された学習モデル36を用いることで、精度のよい特徴点Pcの特定が可能となる。
【0054】
把持位置算出部34は、特徴点特定部32で予測された特徴点Pcを基準として把持位置Pを算出するための構成である。このとき把持位置算出部34は、特徴点特定部32によって特定された特徴点Pcを基準として、枝肉1のうち予め設定された切断位置とは反対側にオフセットするように、把持位置Pを算出する。このオフセット量は、適宜設定可能であるが、好ましくは、把持位置Pが特徴点Pcから離れすぎない位置(ある程度近い位置)になるように設定されるとよい。
なお、把持位置算出部34の機能をコントローラ40に担わせてもよい。
【0055】
このように把持位置算出部34で算出された把持位置Pは、把持位置特定装置24の特定結果としてコントローラ40に出力される。コントローラ40は、第3拘束ユニット130における第3高さ位置h3を取得した把持位置Pにするための制御信号を生成する。この生成された制御信号は、第3拘束ユニット130の昇降装置135に送信されることで、昇降装置135が駆動することによって第3拘束ユニット130における第3高さ位置h3が把持位置Pになる。
【0056】
このように構成される枝肉分割装置10では、拘束装置100は次のように動作する。
まず、左右一対の枝肉W及びWがプッシャ15によって前中躯体分割部Aよりも搬送方向の上流側まで搬送されると、把持位置特定装置24は、撮像装置22に左右一対の枝肉W及びW撮像させて、取得された画像に基づき、上述のようにして特徴点Pcを算出し、算出した特徴点Pcに基づいて把持位置P、すなわち第3高さ位置h3の目標位置を算出する。
【0057】
その後、左右一対の枝肉W及びWがプッシャ15によって前中躯体分割部Aに搬入されると、コントローラ40は、第3拘束ユニット130における第3高さ位置h3を取得した把持位置Pにするための制御信号を出力して昇降装置135を駆動させる。
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して一方側第3可動部131のアクチュエータ132のロッドを伸長させる。これにより、前躯前押さえ134は背面に向かいつつ下方に移動するように揺動することで前躯前押さえ134で前躯体Cを背面に向かって押圧する。
【0058】
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して第1拘束ユニット110Aの第1可動部113のアクチュエータ114のロッドを伸長させる。これにより、後躯後ろ押さえ116は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで後躯後ろ押さえ116で後躯体Eを正面に向かって押圧して後躯体Eを第1静止部111Aに押し付けて、後躯体Eを拘束する。
【0059】
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して第2拘束ユニット120Aの第2可動部123のアクチュエータ124のロッドを伸長させる。これにより、中躯後ろ押さえ126は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで湾曲部126bで中躯体Dを正面に向かって押圧して中躯体Dを第2静止部121Aに押し付けて、中躯体Dを拘束する。
【0060】
次いで、コントローラ40は、第3拘束ユニット130における第3高さ位置h3を取得した把持位置Pにするための制御信号を出力して昇降装置140を駆動させる。そしてコントローラ40は、制御信号を出力して他方側第3可動部136のアクチュエータ137のロッドを伸長させる。これにより、アクチュエータ137とリンク機構138と前躯後ろ押さえ139とは、上下方向に移動する。そして、前躯後ろ押さえ139は正面に向かいつつ下方に移動するように揺動することで湾曲部139bで前躯体Cを正面に向かって押圧して前躯体Cを前躯前押さえ134に押し付けて、前躯体Cを第3高さ位置h3で拘束する。
枝肉分割装置10では、このようにして左右一対の枝肉W及びWを拘束装置100によって上から順に拘束することができる。
【0061】
その後、コントローラ40は、制御信号を出力して正面側前中躯体切断装置310と、背面側前中躯体切断装置320とを駆動することで、中躯体Dから前躯体Cを分割する。
【0062】
次いで、コントローラ40は、プッシャ15を駆動させて左右一対の枝肉W及びWを中後躯体分割部Bに搬入させる。
左右一対の枝肉W及びWがプッシャ15によって中後躯体分割部Bに搬入されると、コントローラ40は、制御信号を出力して第1拘束ユニット110Bの第1可動部113のアクチュエータ114のロッドを伸長させる。これにより、後躯後ろ押さえ116は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで後躯後ろ押さえ116で後躯体Eを正面に向かって押圧して後躯体Eを第1静止部111Bに押し付けて、後躯体Eを拘束する。
【0063】
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して第2拘束ユニット120Bの第2可動部123のアクチュエータ124のロッドを伸長させる。これにより、中躯後ろ押さえ126は正面に向かいつつ上方に移動するように揺動することで湾曲部126bで中躯体Dを正面に向かって押圧して中躯体Dを第2静止部121Bに押し付けて、中躯体Dを拘束する。
【0064】
次いで、コントローラ40は、制御信号を出力して正面側中後躯体切断装置330と、背面側中後躯体切断装置340とを駆動することで、後躯体Eから中躯体Dを分割する。
【0065】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態の枝肉分割装置10では、前中躯体分割部Aで中躯体Dから前躯体Cを分割し、中後躯体分割部Bで後躯体Eから中躯体Dを分割した。しかし、枝肉分割装置10において中後躯体分割部Bを設けず、前中躯体分割部Aで中躯体Dから前躯体Cを分割し、その後、前中躯体分割部Aで後躯体Eから中躯体Dを分割するようにしてもよい。
【0066】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る屠体の拘束装置100は、屠体(左右一対の枝肉W及びW)を吊り下げて支持するためのギャンブレル14と、ギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)を第1高さ位置h1において挟み込んで拘束するための第1静止部111及び第1可動部113を含む第1拘束ユニット110と、ギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)を第1高さ位置h1の下方の第2高さ位置h2において挟み込んで拘束するための第2静止部121及び第2可動部123を含む第2拘束ユニット120と、第1可動部113を第2可動部123よりも先に駆動して第1拘束ユニット110で屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束した状態で、第2可動部123を駆動して第2高さ位置h2で屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束するように第1可動部113及び第2可動部123を制御するためのコントローラ40と、を備える。
【0067】
上記(1)の構成によれば、第1拘束ユニット110及び第2拘束ユニット120によってギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)を上から順に拘束するようにした。これにより、第1拘束ユニット110及び第2拘束ユニット120によってギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)を下から順に拘束した場合や第1拘束ユニット110及び第2拘束ユニット120を同時に駆動して屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束した場合と比べて、屠体(左右一対の枝肉W及びW)の拘束の際に屠体(左右一対の枝肉W及びW)が揺れていても拘束後の屠体(左右一対の枝肉W及びW)の姿勢が安定する。よって、上記(1)の構成によれば、枝肉(左右一対の枝肉W及びW)を良好な品質で切断できる。
【0068】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、第1拘束ユニット110、及び、第2拘束ユニット120は、屠体(左右一対の枝肉W及びW)を搬送する搬送装置(レール12、プッシャ15、及びトロリ16)によって搬送されたギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束可能であるとよい。屠体(左右一対の枝肉W及びW)は、脊椎7の位置で左右に半割りされた一対の枝肉(左右一対の枝肉W及びW)であるとよい。ギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)の半割にされた切断面4は、平面視において搬送装置(レール12、プッシャ15、及びトロリ16)による搬送方向と直交する方向の一方側を向いているとよい。
【0069】
上記(2)の構成によれば、第1拘束ユニット110及び第2拘束ユニット120によって拘束されている屠体(左右一対の枝肉W及びW)を上記一方側から見ることで、屠体(左右一対の枝肉W及びW)の切断位置の決定が容易となる。
【0070】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、第1静止部111、及び、第2静止部121は、屠体(左右一対の枝肉W及びW)に対して一方側に配置されているとよい。第1可動部113、及び、第2可動部123は、搬送方向と直交する方向の他方側に配置されているとよい。
【0071】
上記(3)の構成によれば、ギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)の半割にされた切断面4が第1静止部111、及び、第2静止部121に当接することとなるので、搬送装置(レール12、プッシャ15、及びトロリ16)による搬送方向と直交する方向における切断面4の位置が安定する。
【0072】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、ギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)を第2高さ位置h2の下方の第3高さ位置h3において挟み込んで拘束するための一対の第3可動部(一方側第3可動部131、他方側第3可動部136)を含む第3拘束ユニット130、を備えていてもよい。コントローラ40は、第2可動部123を駆動した後に第3拘束ユニットで屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束するように第2可動部123及び一対の第3可動部(一方側第3可動部131、他方側第3可動部136)を制御するとよい。
【0073】
上記(4)の構成によれば、第1拘束ユニット110、第2拘束ユニット120、及び第3拘束ユニット130によってギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)を上から順に拘束するようにした。これにより、第1拘束ユニット110、第2拘束ユニット120、及び第3拘束ユニット130によってギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)を下から順に拘束した場合や第1拘束ユニット110、第2拘束ユニット120、及び第3拘束ユニット130を同時に駆動して屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束した場合と比べて、屠体(左右一対の枝肉W及びW)の拘束の際に屠体(左右一対の枝肉W及びW)が揺れていても拘束後の屠体(左右一対の枝肉W及びW)の姿勢が安定する。よって、上記(4)の構成によれば、枝肉(左右一対の枝肉W及びW)を良好な品質で切断できる。
【0074】
(5)幾つかの実施形態では、上記(2)又は(3)の構成において、ギャンブレル14で吊り下げられた屠体(左右一対の枝肉W及びW)を第2高さ位置h2の下方の第3高さ位置h3において挟み込んで拘束するための一対の第3可動部(一方側第3可動部131、他方側第3可動部136)を含む第3拘束ユニット130、を備えていてもよい。一対の第3可動部(一方側第3可動部131、他方側第3可動部136)は、屠体(左右一対の枝肉W及びW)に対して上記一方側に配置された一方側第3可動部131と、屠体に対して搬送方向と直交する方向の他方側に配置された他方側第3可動部136とを含んでいてもよい。コントローラ40は、一方側第3可動部131を駆動した後に第1可動部113を駆動するとともに、第2可動部123を駆動した後に他方側第3可動部136を駆動するように第1可動部113、第2可動部123、及び一対の第3可動部(一方側第3可動部131、他方側第3可動部136)を制御するとよい。
【0075】
上記(5)の構成によれば、第1拘束ユニット110、第2拘束ユニット120、及び第3拘束ユニット130によって屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束することに先立って一方側第3可動部131を屠体(左右一対の枝肉W及びW)に当接させることで、第1拘束ユニット110、第2拘束ユニット120、及び第3拘束ユニット130によって屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束することに先立って屠体(左右一対の枝肉W及びW)の揺れを抑制できる。これにより拘束後の屠体(左右一対の枝肉W及びW)の姿勢が安定する。
【0076】
(6)幾つかの実施形態では、上記(4)又は(5)の構成において、第3拘束ユニット130は、一対の第3可動部(一方側第3可動部131、他方側第3可動部136)を上下方向に移動させるための昇降機構(昇降装置135、140)、を有していてもよい。
【0077】
上記(6)の構成によれば、第3拘束ユニット130で屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束する位置の高さ変更することによって第3拘束ユニット130で屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束する位置を適切化できる。これにより、拘束後の屠体(左右一対の枝肉W及びW)の姿勢が安定する。
【0078】
(7)幾つかの実施形態では、上記(6)の構成において、切断面4を撮像するための撮像装置22と、撮像装置22によって撮像された画像において、一対の第3可動部(一方側第3可動部131、他方側第3可動部136)による屠体(左右一対の枝肉W及びW)の把持位置Pの基準となる基準位置Psを特定するための基準位置特定装置38と、を備えていてもよい。コントローラ40は、基準位置特定装置38で特定した上記基準位置Psに基づいて算出される第3高さ位置h3で屠体(左右一対の枝肉W及びW)を挟み込んで拘束するように、一対の第3可動部(一方側第3可動部131、他方側第3可動部136)を上下方向に移動させるように昇降機構(昇降装置135、140)を制御するとよい。
【0079】
上記(7)の構成によれば、第3拘束ユニット130で屠体(左右一対の枝肉W及びW)を拘束する位置の高さ(第3高さ位置h3)を適切化できるので、拘束後の屠体(左右一対の枝肉W及びW)の姿勢が安定する。
【0080】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、基準位置特定装置38は、過去に取得した上記画像を教師データとして学習した学習モデル36を用いて、上記画像に基づいて上記基準位置Psを特定するようにしてもよい。
【0081】
上記(8)の構成によれば、学習モデル36を用いた画像解析により、上記基準位置Psを精度よく特定できる。
【0082】
(9)本開示の少なくとも一実施形態に係る枝肉切断システム(枝肉分割装置10)は、上記(1)乃至(8)の何れかの構成の拘束装置100と、屠体(左右一対の枝肉W及びW)を搬送する搬送装置(レール12、プッシャ15、及びトロリ16)と、を備える。
【0083】
上記(9)の構成によれば、枝肉(左右一対の枝肉W及びW)を良好な品質で切断できる。
【符号の説明】
【0084】
4 切断面
7 脊椎(背骨)
8 肋骨
10 枝肉分割装置
12 レール
14 ギャンブレル
15 プッシャ
16 トロリ
22 撮像装置
36 学習モデル
38 基準位置特定装置
40 コントローラ
100 拘束装置
110、110A、110B 第1拘束ユニット
111、111A、111B 第1静止部
113 第1可動部
116 後躯後ろ押さえ
120、120A、120B 第2拘束ユニット
121、121A、121B 第2静止部
123 第2可動部
126 中躯後ろ押さえ
130 第3拘束ユニット
131 一方側第3可動部
134 前躯前押さえ
135 昇降装置
136 他方側第3可動部
139 前躯後ろ押さえ
140 昇降装置
300 切断装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6