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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025071570
(43)【公開日】2025-05-08
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/06 20060101AFI20250428BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20250428BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20250428BHJP
   B29C 48/10 20190101ALI20250428BHJP
   B29C 48/15 20190101ALI20250428BHJP
【FI】
C08L25/06
C08L21/00
B29C48/08
B29C48/10
B29C48/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023181849
(22)【出願日】2023-10-23
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯島 康介
(72)【発明者】
【氏名】西本 豊
【テーマコード(参考)】
4F207
4J002
【Fターム(参考)】
4F207AA13
4F207AA45
4F207AG01
4F207KA01
4F207KA17
4F207KA19
4F207KB13
4F207KL84
4J002AC083
4J002BB053
4J002BC031
4J002BC032
4J002BC043
4J002BP013
4J002GA01
4J002GF00
4J002GG01
4J002GG02
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】高い透明性を有する成形体を実現可能であり、かつ、優れた成形加工性を有するシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(A)を主成分とし、角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)が7.7以下であり、80質量%超がスチレン系樹脂である、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(A)を主成分とし、
角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)が7.7以下であり、
80質量%超がスチレン系樹脂である、
樹脂組成物。
【請求項2】
角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)が7.7以下であるポリスチレン(B)を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリスチレン(B)が多分岐ポリスチレンである、請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
ゴム状弾性体(C)を含む、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエチレンの含有量が20質量%未満である、請求項1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
押出成形用である、請求項1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項7】
インフレーション成形用又は押出ラミネート用である、請求項1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の樹脂組成物から得られた押出成形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び押出成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
シンジオタクチック構造を有するポリスチレンは高い結晶化度を実現可能であることから、それから得られたシートは耐熱性や耐薬品性に優れ、容器等の各種成形体として使用される。例えば、特許文献1には、シンジオタクチックポリスチレンを主成分とする樹脂組成物(以下、「シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物」とも言う)を用いて得られたフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-268117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物は各種特性に優れるものの、さらなる改良が期待されていた。
本発明の目的は、高い透明性を有する成形体を実現可能であり、かつ、優れた成形加工性を有するシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の樹脂組成物等が提供される。
1.シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(A)を主成分とし、
角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)が7.7以下であり、
80質量%超がスチレン系樹脂である、
樹脂組成物。
2.角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)が7.7以下であるポリスチレン(B)を含む、1に記載の樹脂組成物。
3.前記ポリスチレン(B)が多分岐ポリスチレンである、2に記載の樹脂組成物。
4.ゴム状弾性体(C)を含む、1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
5.ポリエチレンの含有量が20質量%未満である、1~4のいずれかに記載の樹脂組成物。
6.押出成形用である、1~5のいずれかに記載の樹脂組成物。
7.インフレーション成形用又は押出ラミネート用である、1~6のいずれかに記載の樹脂組成物。
8.1~7のいずれかに記載の樹脂組成物から得られた押出成形物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い透明性を有する成形体を実現可能であり、かつ、優れた成形加工性を有するシンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の樹脂組成物及び押出成形物について詳述する。
本明細書において、「x~y」は「x以上、y以下」の数値範囲を表すものとする。数値範囲に関して記載された上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。また、以下に記載される本発明の個々の形態を2つ以上組み合わせた形態もまた、本発明の形態である。また、「x以上」との数値範囲は「x超」を含意し、「y以下」との数値範囲は「y未満」を含意する。
【0008】
[樹脂組成物]
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(A)を主成分とするものであり、角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)が7.7以下である。また、当該樹脂組成物は、80質量%超がスチレン系樹脂である。
【0009】
(溶融粘弾性(tanδ))
多くの樹脂材料は弾性と粘性の両方の性質(粘弾性)を有し、その性質の割合は材料ごとに異なる。これら性質のうちどちらが強く表れるかを示す指標として、粘性の度合い(動的損失弾性率)を弾性の度合い(動的貯蔵弾性率)で除した「溶融粘弾性」(損失正接:tanδ)が用いられ、溶融粘弾性が大きいほど粘性が大きいことを意味する。溶融粘弾性は樹脂材料を変形させる速度に依存するが、本発明者らは、角周波数1rad/sという比較的遅い変形速度における溶融粘弾性に注目し、当該溶融粘弾性が特定範囲である場合に、シンジオタクチックポリスチレン系樹脂組成物が優れた成形加工性を発揮することを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)が7.7以下であることから、優れた成形加工性を示す。具体的に、各種押出成形法(特に、インフレーション成形法や押出ラミネート法)に供した場合に、当該樹脂組成物が理想的な延伸態様を発揮し、均一なシート(フィルム)を得ることができる。
角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)は、好ましくは7.7以下、より好ましくは7.4以下、さらに好ましくは7.1以下、よりさらに好ましくは6.8以下である。溶融粘弾性(tanδ)の下限は特に限定されないが、例えば0.1以上又は1.0以上であってもよい。
【0011】
上記樹脂組成物の溶融粘弾性は、[当該樹脂組成物の融点の1の位を四捨五入した温度+20]℃で測定した、角周波数1rad/sにおける値である。溶融粘弾性と融点の具体的な測定方法は実施例に記載の通りである。
【0012】
以下、上記樹脂組成物の各成分等について説明する
【0013】
(シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(A))
シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(以下、単に「シンジオタクチックポリスチレン」、「SPS(A)」又は「成分(A)」とも言う)は、高度なシンジオタクチック構造を有する結晶性のスチレン系樹脂である。「シンジオタクチック」とは、隣り合うスチレン単位におけるフェニル環が、重合体ブロックの主鎖によって形成される平面に対して交互に配置(以下において、シンジオタクティシティと記載する)されている割合が高いことを意味する。
【0014】
タクティシティは、同位体炭素による核磁気共鳴法(13C-NMR法)により定量同定できる。13C-NMR法により、連続する複数の構成単位、例えば連続した2つのモノマーユニットをダイアッド、3つのモノマーユニットをトリアッド、5つのモノマーユニットをペンタッドとしてその存在割合を定量することができる。
【0015】
「高度なシンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂」とは、ラセミダイアッド(r)で通常75モル%以上、好ましくは85モル%以上、又はラセミペンタッド(rrrr)で通常30モル%以上、好ましくは50モル%以上のシンジオタクティシティを有するポリスチレン、ポリ(炭化水素置換スチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)等のスチレン系重合体、これらの水素化重合体もしくは混合物、又はこれらを主成分とする共重合体を意味する。
【0016】
ポリ(炭化水素置換スチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(tert-ブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)及びポリ(ビニルスチレン)等を挙げることができる。ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)及びポリ(フルオロスチレン)等を、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)等を挙げることができる。ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)及びポリ(エトキシスチレン)等が挙げられる。
【0017】
上記の構成単位を含む共重合体のコモノマー成分としては、上記のスチレン系重合体のモノマーの他、エチレン、プロピレン、ブテン、ヘキセン及びオクテン等のオレフィンモノマー;ブタジエン、イソプレン等のジエンモノマー;環状オレフィンモノマー、環状ジエンモノマー、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸及びアクリロニトリル等の極性ビニルモノマーが挙げられる。
好適に用いられる共重合体としては、スチレンとp-メチルスチレンとの共重合体、スチレンとp-tert-ブチルスチレンとの共重合体、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体等が挙げられ、スチレンとp-メチルスチレンとの共重合体が好ましい。
【0018】
シンジオタクチックポリスチレンの中では、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(m-メチルスチレン)、ポリ(p-tert-ブチルスチレン)、ポリ(p-クロロスチレン)、ポリ(m-クロロスチレン)、ポリ(p-フルオロスチレン)、スチレンとp-メチルスチレンとの共重合体から選ばれる1種以上が好ましく、ポリスチレン、ポリ(p-メチルスチレン)、ポリ(m-メチルスチレン)、スチレンとp-メチルスチレンとの共重合体から選ばれる1種以上がより好ましく、ポリスチレン、スチレンとp-メチルスチレンとの共重合体が更に好ましく、ポリスチレンが最も好ましい。
【0019】
シンジオタクチックポリスチレンのメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1g/10分以上、より好ましくは2g/10分以上、さらに好ましくは3g/10分以上又は4g/10分以上である。また、好ましくは40g/10分以下、より好ましくは25g/10分以下、さらに好ましくは18g/10分以下である。MFRが1g/10分以上であれば、押出成形時の樹脂の流動性に問題がなく、また、40g/10分以下、好ましくは20g/10分以下であれば十分な強度を有する成形品を得ることができる。
シンジオタクチックポリスチレンのMFR測定は、温度300℃、荷重1.2kgの条件下で行う。
【0020】
シンジオタクチックポリスチレンの重量平均分子量は、好ましくは100,000以上であり、より好ましくは110,000以上であり、さらに好ましくは130,000以上、又は150,000以上である。このような範囲であると製膜性及び強度に優れる。また、シンジオタクチックポリスチレンの重量平均分子量は、好ましくは500,000以下であり、より好ましくは350,000以下、さらに好ましくは300,000以下である。このような範囲であると押出成形時の樹脂の流動性を確保できる。
シンジオタクチックポリスチレンの重量平均分子量は、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒とし、145℃でゲル浸透クロマトグラフィー測定法により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算した値である。
【0021】
シンジオタクチックポリスチレンは公知の方法で製造でき、例えば、不活性炭化水素溶媒中または溶媒の不存在下に、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体を重合することで製造できる。
【0022】
「シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(A)を主成分とする」とは、上記の樹脂組成物の50質量%超がシンジオタクチックポリスチレンであることを言う。シンジオタクチックポリスチレンを主成分とすることで、成形体としたときに優れた耐熱性と耐薬品性を実現することができる。
本発明の一態様に係る樹脂組成物における成分(A)の含有量は、例えば、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、又は80質量%以上である。上限値は特に制限はないが、例えば、99質量%以下、95質量%以下、又は90質量%以下である。
本発明の一態様に係る樹脂組成物における成分(A)の含有量は、例えば、50質量%超99質量%以下、50質量%超95質量%以下、又は50質量%超90質量%以下である。
【0023】
(特定の溶融粘弾性(tanδ)を示すポリスチレン(B))
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、好ましくは、角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)が7.7以下であるポリスチレン(B)(以下、単に「ポリスチレン(B)」又は「成分(B)」とも言う)を含む。
【0024】
ポリスチレン(B)は、通常のポリスチレンと比較して、角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)が低い材料であり、このような成分を含めることで、上記樹脂組成物の角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性も特定範囲に制御しやすくなる。このような効果は、成分(A)と成分(B)との間に高度な分子の絡み合い状態が生じることに起因するものと考えられる。
また、成分(B)は成分(A)と同じスチレン系の樹脂であることから多様な効果が得られる。まず、成分間の屈折率の差が小さくなるため、高い透明性を有する成形体が実現可能となる。次に、成分(A)は他の熱可塑性樹脂(例えばポリエチレン)との相溶性が高くなく、相溶化剤を用いないと混合が困難になる場合があるが、成分(B)は成分(A)と相溶性が高いため、相溶化剤は不要であるか又は極めて少量で済む。さらに、同理由により、成分(B)は少量添加でも上記の効果が十分に得られる。
【0025】
ポリスチレン(B)は、結晶性樹脂であってもよいし非晶性樹脂であってもよい。
【0026】
成分(B)の角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ)は、好ましくは2.0~7.7である。溶融粘弾性が2.0以上であると成分(A)との相溶性が得られ易く、溶融粘弾性が7.7以下であると押出加工適性を付与し易くなり、具体的に、インフレーション成形時のバブル安定性や膜厚精度を向上でき、また、押出ラミネート成形におけるネックインの安定性に優れる。
【0027】
成分(B)の溶融粘弾性(tanδ)は、成分(B)が結晶性樹脂である場合は[当該樹脂の融点の1の位を四捨五入した温度+20]℃で測定した値であり、成分(B)が非晶性樹脂である場合は270℃で測定した値である。
結晶性樹脂とは、明確な融点を有する樹脂を指し、具体的には実施例記載の「樹脂組成物の融点」の測定方法で測定したときに明確な吸熱ピークが観測されることを言う。非晶性樹脂とは明確な融点を有さない樹脂を指し、具体的には実施例記載の「樹脂組成物の融点」の測定方法で測定したときに明確な吸熱ピークが観測されないことを言う。
成分(B)の溶融粘弾性(tanδ)のその他の測定条件は、上述した樹脂組成物と同じであり、測定温度以外の具体的な測定条件(融点含む)は実施例に記載の通りである。
【0028】
ポリスチレン(B)としては、例えば、多分岐ポリスチレン(B1)を用いることができる。
【0029】
多分岐ポリスチレン(B1)(以下、単に「成分(B1)」とも言う)としては、複数の重合性二重結合を有するマクロモノマーと、スチレン系モノマーとを共重合して得られるポリマー等が挙げられる。
【0030】
当該マクロモノマーとしては、例えば、複数の分子末端に重合性二重結合を有する多官能ポリエステル(メタ)アクリレート、複数の分子末端にそれぞれ重合性二重結合を有する多官能ポリエーテル(メタ)アクリレート、又は複数の分子末端にそれぞれ重合性二重結合を有する多官能ポリウレタン(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0031】
スチレン系モノマーとしてはスチレン及びその誘導体が挙げられ、例えば、スチレン、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレン、オクチルスチレン等のアルキルスチレン、フロロスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン等のハロゲン化スチレン、その他にニトロスチレン、アセチルスチレン、メトキシスチレン等があり、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
多分岐ポリスチレンとしては、シンジオタクチック、アイソタクチック、又はアタクチック構造を有していてもよい。
【0032】
また、多分岐ポリスチレン(B1)としては、過酸化物を用いた反応押出や電子線照射等によって、架橋構造が導入された架橋ポリスチレンも使用可能である。
【0033】
成分(B)の分子量については特に制限はないが、重量平均分子量は、例えば、100,000~40,000であり、好ましくは12,000~300,000である。これにより、押出成形性に優れる。成分(B)の重量平均分子量の測定は、1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒とし、145℃でゲル浸透クロマトグラフィー測定法により測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算する。
【0034】
成分(B)のメルトフローレート(MFR)は格別限定されない。
一実施形態において、多分岐ポリスチレンのMFRは、0.5~15.0g/10分であり、好ましくは0.7~8.0g/10分である。これにより、押出加工適性を付与し易くなり、具体的に、インフレーション成形時のバブル安定性や膜厚精度を向上でき、また、押出ラミネート成形におけるネックインの安定性に優れる。
成分(B)のMFR測定は、JIS K7210に従い温度200℃、荷重5kgの条件下で行う。
【0035】
なお、定義上、成分(B2)は上述した成分(A)と重複する場合があるが、これらは別成分であり、成分(A)に該当するものについては、成分(A)として扱う。
【0036】
本発明の一態様に係る樹脂組成物が成分(B)を含む場合、その含有量は、例えば、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上である。また、例えば、7質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上としてもよい。上限値は特に制限はないが、例えば、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下である。また、例えば、25質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下としてもよい。
なお、成分(B)は上記のものを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができ、上述した含有量は成分(B)の総量である。
【0037】
(ゴム状弾性体(C))
本発明の一態様に係る樹脂組成物はゴム状弾性体(以下、単に「成分(C)」とも言う)を含んでもよいし含まなくてもよい。ゴム状弾性体(C)を含有すると靭性を向上させることができる。
ゴム状弾性体としては様々なものが使用可能であるが、好ましくは、スチレンに由来する構成単位を含むエラストマーであり、例えば、スチレン-ジエンブロック共重合体、水素添加スチレン-ジエンブロック共重合体、スチレン-ジエンランダム共重合体、水素添加スチレン-ジエンランダム共重合体、及びスチレン-オレフィンランダム共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種である。スチレンと共重合されるジエンとしては、ブタジエン及びイソプレンが挙げられ、スチレンと共重合されるオレフィンとしては、エチレン、プロピレン及びブチレンが挙げられる。
【0038】
ゴム状弾性体(C)は、より好ましくはスチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-ブタジエンランダム共重合体、水素添加スチレン-ブタジエンランダム共重合体、スチレン-エチレン-プロピレンランダム共重合体、及びスチレン-エチレン-ブチレンランダム共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、更に好ましくはスチレン-ブタジエンブロック共重合体(SBR)、水素添加スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SEB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレンブロック共重合体(SIR)、水素添加スチレン-イソプレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及び水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくはスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及び水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくは水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、及び水素添加スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、より更に好ましくは水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)である。ゴム状弾性体は上記のものを単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ゴム弾性体はマレイン酸変性等の化学変性が行われたものも用いることができる。
【0039】
ゴム状弾性体(C)を構成する、スチレンに由来する構成単位と、ジエン、水素添加ジエン及びオレフィンに由来する構成単位の合計との質量比[(スチレン)/(ジエン、水素添加ジエン、オレフィン)]は、好ましくは20/80~70/30であり、25/75~60/40、又は25/75~45/55であってもよい。ゴム状弾性体(C)のスチレン含有量として25~60質量%の範囲であることが好ましく、25~45%であってもよい。このような質量比とすることで、SPS(A)との相溶性をさらに高め、耐熱性及び高温下における寸法安定性を維持しつつ、靭性を向上させることができる。
【0040】
ゴム状弾性体(C)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは0.0g/10分以上であり、また、好ましくは30g/10分以下である。このような範囲であれば、靭性改良効果に優れる。
ゴム状弾性体(C)のMFR測定は、温度230℃、荷重2.16kgの条件下で行う。
【0041】
本発明の一態様に係る樹脂組成物が成分(C)を含む場合、その含有量は、例えば、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、又は7質量%以上である。上限値は特に制限はないが、例えば、30質量%以下、又は20質量%以下、又は15質量%以下である。
【0042】
(他の樹脂(D)等)
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、上述した成分(A)~(C)以外の樹脂成分(以下、単に「成分(D)」とも言う)や、各種添加剤等を含んでもよいし含まなくてもよい。
成分(A)~(C)以外の樹脂としては、アタクチック構造を有するポリスチレン(aPS)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、ポリフェニレンエーテル、及びその他の熱可塑性樹脂等が挙げられる。なお、定義上、上述した成分(A)~(C)のいずれかに該当するものについては、成分(A)~(C)のいずれかとして扱う。
aPSとしては、例えば、通常のポリスチレンよりも重量平均分子量が大きいポリスチレン(重量平均分子量は例えば100,000~100万)を用いてもよい。
【0043】
本発明の一態様に係る樹脂組成物が成分(D)を含む場合、その含有量は、例えば、1質量%以上、3質量%以上、又は5質量%以上である。上限値は特に制限はないが、例えば、40質量%以下、又は20質量%以下である。
一実施形態において、上記樹脂組成物は成分(D)を含まない。
【0044】
添加剤としては、例えば、安定剤(熱安定剤、酸化防止剤)、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、滑剤、着色剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0045】
本発明の一態様に係る樹脂組成物が上記添加剤を含む場合、その含有量は、例えば、0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上である。上限値は特に制限はないが、例えば、5質量%以下、又は3質量%以下である。
【0046】
(樹脂組成物)
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、80質量%超がスチレン系樹脂である。このようにすることで、高い透明性を有する成形体が実現可能となる。
スチレン系樹脂とは、スチレン由来部位をモノマー単位として含む樹脂を言い、アタクチック構造を有するポリスチレン、アイソタクチック構造を有するポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、多分岐ポリスチレン、スチレンに由来する構成単位を含むエラストマー、及び耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)等を包含する。
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、例えば、82質量%超、85質量%以上、87質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.9質量%以上、又100質量%がスチレン系樹脂である。
【0047】
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、例えば、80質量%以上、85質量%以上、87質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、99質量%以上、99.9質量%以上、又100質量%が
成分(A)、及び成分(B)、
成分(A)、成分(B)、及び添加剤、
成分(A)、成分(B)、及び成分(C)、
成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び添加剤、
成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)、又は
成分(A)、成分(B)、成分(C)、成分(D)、及び添加剤
であってもよい。
【0048】
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、例えば、ポリスチレン以外の熱可塑性樹脂の割合が20質量%以下、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、3質量%以下、1質量%以下、0.1質量%以下、又は0質量%である。
「ポリスチレン以外の熱可塑性樹脂」とは、ポリスチレン及びゴム状弾性体以外の熱可塑性樹脂を示し、例えばポリエチレンが挙げられる。
【0049】
[用途]
本発明の一態様に係る樹脂組成物は、各種押出成形法に用いることができ、例えば、インフレーション成形用、押出ラミネート用、中空成形(ダイレクトブロー)、又は押出発泡等の発泡成形として好適に利用可能である。これら方法としては公知のものを採用できる。
各種押出成形法に供する場合、予め各成分を混合して樹脂組成物とした後に押出成形機に投入してもよいし、一部又は全部の成分を例えばペレット状で押出成形機に投入して成形を行ってもよい。
【0050】
[押出成形物等]
本発明の一態様に係る押出成形物は、上述した本発明の一態様に係る樹脂組成物を溶融押出して得られた成形物である。
当該押出成形物の形状は特に制限されないが、例えば、シート形状、フィルム形状又は繊維形状である。また、当該樹脂組成物から得られる層と他の層との積層体であってもよい。他の層としては、例えば、積層体のベースとなる基材層、層間接着のための接着層、加飾用の印刷層、離型層等が挙げられ、用途に合わせて適切な構成を採用できる。
【0051】
上記の樹脂組成物から得られたシート(フィルム)、又は上述した積層体は、例えば、野菜包装,ひねり包装,医薬品包材、試薬容器(包材、フレキシブル容器)、食品容器,食品容器表基材、食品容器ふた,耐熱調理フィルム,カップ麺容器表材,粘着ラベル,簡易粘着テープ等の包装資材;及び、マスキングフィルム,ラベル,マガジンテープ,離型用フィルム,絶縁フィルム,耐薬フィルム,紙ラミネート,プリント回路基板基材,フィルムコンデンサ用フィルム,部品トレイ,不織布、ハウスホールディングス用包材、農業用資材、電池関連資材等の産業資材等として使用することができる。
また、上記の樹脂組成物から得られたシート(フィルム)、又は上述した積層体を熱成形することで、容器等の各種成形体を製造することができる。
熱成形の方法は格別限定されず、例えば、真空成形、熱板圧空成形等が挙げられる。
【実施例0052】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0053】
[用いた原料]
以下の実施例及び比較例で用いた材料は以下の通りである。
(シンジオタクチック構造を有するポリスチレン(A))
・SPS1:シンジオタクチックポリスチレン、出光興産株式会社製、MFR:14.0g/10分(300℃、荷重1.2Kg)、重量平均分子量:17万(1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒とし、145℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定)、融点:246℃(DSC測定)
・SPS2:シンジオタクチックポリスチレン、出光興産株式会社製、MFR:9.0g/10分(300℃、荷重1.2Kg)、重量平均分子量:20万(1,2,4-トリクロロベンゼンを溶媒とし、145℃でゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて測定)、融点:271℃(DSC測定)
13C-NMRの測定にて、SPS1及びSPS2はシンジオタクチック構造のポリスチレンであることを確認した。
【0054】
(特定の溶融粘弾性(tanδ)を示すポリスチレン(B))
・B-PS1:多分岐ポリスチレン、DIC株式会社製「HP-780AN」、角周波数1rad/sにおける溶融粘弾性(tanδ):4.8(270℃で測定)、MFR:1.2g/10分(温度200℃、荷重5kg)
【0055】
(ゴム状弾性体(C))
・SEBS1:水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、旭化成株式会社製「タフテックH1041」、スチレン含有量30質量%、MFR:5.0g/10分(温度230℃、荷重2.16kg)
・SEBS2:水素添加スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、クラレ株式会社製「セプトン2104」、スチレン含有量65質量%、MFR:0.4g/10分(温度230℃、荷重2.16kg)
【0056】
(他の樹脂(D))
・HIPS1:耐衝撃性ポリスチレン、PSジャパン株式会社製「HT478」、MFR:3.0g/10分(温度200℃、荷重5kg)
・aPS1:アタクチック構造を有するポリスチレン、PSジャパン株式会社製「680」、MFR:7.0g/10分(温度200℃、荷重5kg)
・LDPE1:低密度ポリエチレン、日本ポリエチレン株式会社製「LF405H」
【0057】
実施例1
(1)樹脂組成物の製造と評価
表1に示す成分を表1に示す組成(質量%)でドライブレンドした後、直径40mmの単軸押出機にて280℃で溶融混練してペレット(樹脂組成物)を得た。得られた樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
(溶融粘弾性(tanδ))
得られた樹脂組成物のペレットを、120mm四方、厚さ1.0mmのSUS枠の中央部に配置し、真空プレス機を使用して、280℃で0.1kNの荷重で5分間予熱した後、280℃で20kNの荷重で3分間プレスした後、冷却固化させることで120mm四方、厚さ1.0mmのシートを作製した。得られたシートを、カッターナイフを使用して30mm四方に切出し、測定用試料を得た。当該試料を用い、下記条件で溶融粘弾性(tanδ)を測定した。
・測定装置:Anton Paar社製「MCR 302」
・固定治具:直径20mmのパラレルプレート
・プレート間ギャップ:0.500mm
・せん断歪み:8.0%
・角周波数:1rad/s
・測定温度:(樹脂組成物の融点の1の位を四捨五入した温度+20℃、実施例1では270℃(融点246℃の1の位を四捨五入した250℃+20℃)
・樹脂組成物の融点:示差走査熱量(DSC)測定装置(PerkinElmer社製「DSC 8500」を用い、20℃/分の速度で30℃から300℃まで昇温した後、20℃/分で30℃まで降温した後、再度20℃/分で300℃まで昇温した際の吸熱ピークの極大点となる温度を融点とした。吸熱ピークが2つ以上存在する場合は、最も高温側であり、かつピーク面積が0.3J/g以上であるピークの極大点となる温度を融点とした。
【0059】
(2)成形体の製造(インフレーション成形)と評価
(1)で得られたペレットを用いて、直径40mm単軸(フルフライトタイプスクリュー)押出機に、直径50mm、ギャップ2mmの円環ダイを取り付け、押出量7kg/時間にて、(樹脂組成物の融点の1の位を四捨五入した温度+20)℃(実施例1では270℃(融点246℃の1の位を四捨五入した250℃+20℃))で樹脂を鉛直方向(上向き)に溶融押出し、円環状に押出された樹脂の内側にブロー比3.3となるように空気を送り込み、バブル状になった樹脂フィルムを引取速度10.0m/分(バブル安定性評価では10.0~35.0m/分の範囲で変動させた)でフィルムの引取を行い、インフレーションフィルム(成形体)を得た。なお、インフレーション成形時はエアーリングを用い、安定板には保温材を取り付け、バブルを安定化させた。各評価は10.0m/分の速度で引取ったフィルムを対象とした。
【0060】
得られたインフレーションフィルム(成形体)について以下の評価を行った。
【0061】
(最大引取速度:バブル安定性)
インフレーション成形では、引取速度を大きくするほど溶融樹脂の変形速度が大きくなるため、バブル形状が不安定化する現象が起きやすくなる。鉛直方向のバブル径がほぼ同じである円筒状のバブルが得られていれば安定状態であるが、例えば、一定のバブル径を保てず一部がバブルのしぼんだ状態や、バブルの膨張開始点が上下に変動する状態、バブルにヨレやネジレが生じた状態等が不安定化の例として挙げられる。
押出量7kg/時間、ブロー比3.3を維持した状態でフィルム引取速度を10.0m/分から徐々に大きくし(最大35.0m/分)、バブルの安定状態を保てる最大引取速度を記録してバブル安定性とした。すなわち、最大引取速度の値が大きいほどバブル安定性が高いことを示す。
【0062】
(引張破断強度(Mpa))
JISK7127に準拠する方法で実施した。具体的に、樹脂流動方向が長辺となるようにフィルムを長さ150mm、幅10mmの短冊形状に切出して試験片を作製し、チャック間距離100mm、引張速度50mm/分で試験した。得られた応力―歪曲線からフィルムが破断した際の応力を引張強度とした。
【0063】
(引張破断伸度(%))
JIS7127に準拠する方法で実施した。具体的に、樹脂流動方向が長辺となるようにフィルムを長さ150mm、幅10mmの短冊形状に切出して試験片を作製し、チャック間距離100mm、引張速度50mm/分で試験した。得られた応力―歪曲線からフィルムが破断した際の歪を引張伸度とした。
【0064】
(ヘイズ(%))
測定装置(日本電色工業社製「HAZE METER NDH5000」)を用い、JIS K7136に準拠してフィルム厚さ25μmである箇所のヘイズを測定した。
【0065】
実施例2~5、比較例1~6
組成を表1のように変更した他は実施例1と同じ方法でペレット(樹脂組成物)を製造し、評価した。結果を表1に示す。
また、得られたペレットを用い、実施例2~4及び比較例1~5は実施例1と同じ方法(インフレーション成形(表では「inf.」と表記する))で成形体を製造し、評価した。実施例5及び比較例6では、インフレーション成形法ではなく、下記の押出ラミネート評価法(表では「E/L」と表記する))によりフィルム(成形体)を製造し、実施例1と同じ方法で評価した。結果を表1に示す。表中、「-」は当該評価を行っていないことを示す。実施例5では、下記の押出ラミネート評価法で得たフィルムを用いて、実施例1と同じ方法でヘイズの測定を行った。
なお、比較例5の引張破断強度「36」は、降伏点の方が強度が高かったため、降伏点強度を記載した。
【0066】
(押出ラミネート評価法:ネックインの大きさとバラつき)
ギアポンプを有する直径50mm単軸押出機にリップ幅500mmのTダイを取り付け、表1に示す成分を表1に示す組成(質量%)でドライブレンドした樹脂混合物をホッパーに投入し、280℃で吐出5.2kg/時にて溶融押出しし、温度95℃のキャスティングロールにキャストし、6.5m/分の引取速度でフィルムを製膜した。得られたフィルムの1.5mの長さについてフィルム幅を測定し、リップ幅とフィルム幅の差をネックインの大きさとした。また、フィルム幅の最大値と最小値の差をネックインのバラつきとした。
【0067】
【表1】