(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025071845
(43)【公開日】2025-05-09
(54)【発明の名称】シート状磁性部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 1/16 20060101AFI20250430BHJP
H01F 1/153 20060101ALI20250430BHJP
【FI】
H01F1/16
H01F1/153 133
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023182215
(22)【出願日】2023-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】栗山 安男
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄一
(72)【発明者】
【氏名】宮野 興平
【テーマコード(参考)】
5E041
【Fターム(参考)】
5E041BB03
5E041BD03
5E041CA10
(57)【要約】
【課題】厚さ及び面積において、大型の磁性シートを構成する場合に、反りの課題を解決するシート状磁性部材を提供する。
【解決手段】磁性薄帯が3層以上積層された積層基体を複数個備え、複数の積層基体が、長辺が隣り合って短辺が延びる方向に板形状に並んで配置され、かつ、積層基体が積層方向に複数個積み重ねて配置されているパネル基体を複数個備え、パネル基体を複数個積み重ねて配置したシート状磁性部材であり、第1のパネル基体と、第1のパネル基体に積層された第2のパネル基体と、において、第1のパネル基体の積層向きと第2のパネル基体の積層向きとが反転している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短辺と長辺とを有する帯状に形成された磁性薄帯が3層以上積層された積層基体を複数個備え、
複数の前記積層基体が、前記長辺が隣り合って前記短辺が延びる方向に板形状に並んで配置され、かつ、前記積層基体が積層方向に複数個積み重ねて配置されているパネル基体を複数個備え、
前記パネル基体を複数個積み重ねて配置したシート状磁性部材であり、
前記パネル基体は前記磁性薄帯が15層以上積層され、
前記シート状磁性部材は前記磁性薄帯が40層以上積層され、
第1のパネル基体と、前記第1のパネル基体に積層された第2のパネル基体と、において、前記第1のパネル基体の積層向きと前記第2のパネル基体の積層向きとが反転しているシート状磁性部材。
【請求項2】
前記第1のパネル基体の積層向き、及び前記第2のパネル基体の積層向き、とは、パネル基体の反りの向きである請求項1に記載のシート状磁性部材。
【請求項3】
前記第1のパネル基体の積層向き、及び前記第2のパネル基体の積層向き、とは、前記磁性薄帯の自由凝固面とロール接触面との向きである請求項1に記載のシート状磁性部材。
【請求項4】
前記磁性薄帯がナノ結晶合金薄帯であり、
前記ナノ結晶合金薄帯は、複数の小片に分割されている請求項1に記載のシート状磁性部材。
【請求項5】
前記パネル基体は板形状に並んで配置されている請求項1に記載のシート状磁性部材。
【請求項6】
前記積層基体における隣接する前記磁性薄帯の間には、帯状に形成された支持体、及び、前記支持体における第1面および第2面に設けられた粘着剤を有する粘着層が設けられている請求項1に記載のシート状磁性部材。
【請求項7】
前記積層基体が積層された方向において、隣接する前記積層基体の間には、帯状に形成された支持体、及び、前記支持体における第1面および第2面に設けられた粘着剤を有する粘着層が2層配置されている請求項1に記載のシート状磁性部材。
【請求項8】
前記パネル基体が積層された方向において、隣接する前記パネル基体の間には、帯状に形成された支持体、及び、前記支持体における第1面および第2面に設けられた粘着剤を有する粘着層が2層配置されている請求項1に記載のシート状磁性部材。
【請求項9】
前記シート状磁性部材における最上層及び最下層に樹脂シートが設けられている請求項1に記載のシート状磁性部材。
【請求項10】
短辺と長辺とを有する帯状に形成された磁性薄帯を3層以上積層して積層基体を構成し、
複数の前記積層基体を前記長辺が隣り合って前記短辺が延びる方向に板形状に並んで配置し、かつ、前記積層基体を積層方向に複数個積み重ねて配置してパネル基体を構成し、
前記パネル基体を複数個積み重ねてシート状磁性部材を構成するシート状磁性部材の製造方法であって、
前記パネル基体は前記磁性薄帯が15層以上積層され、
前記シート状磁性部材は前記磁性薄帯が40層以上積層され、
第1のパネル基体に、第2のパネル基体を積み重ねるとき、前記第1のパネル基体の積層向きと前記第2のパネル基体の積層向きとを反転させて積み重ねるシート状磁性部材の製造方法。
【請求項11】
前記第1のパネル基体の積層向き、及び前記第2のパネル基体の積層向き、とは、パネル基体の反りの向きである請求項10に記載のシート状磁性部材の製造方法。
【請求項12】
前記第1のパネル基体の積層向き、及び前記第2のパネル基体の積層向き、とは、前記磁性薄帯の自由凝固面とロール接触面との向きである請求項10に記載のシート状磁性部材の製造方法。
【請求項13】
前記磁性薄帯がナノ結晶合金薄帯であり、
前記ナノ結晶合金薄帯は、複数の小片に分割されている請求項10に記載のシート状磁性部材の製造方法。
【請求項14】
複数の前記パネル基体を板形状に並んで配置する請求項10に記載のシート状磁性部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁心やインダクタや磁気シールド等に用いられるシート状磁性部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、給電側と受電側の両方に伝送コイルを設け、電磁誘導を利用した電力伝送によって充電する非接触充電が注目されている。非接触充電において、給電装置の一次伝送コイルに発生した磁束は給電装置と受電装置の筐体を介して受電装置の二次伝送コイルに起電力を発生させることで給電が行われる。
【0003】
非接触充電は、例えば、タブレット型情報端末や、ミュージックプレイヤーや、スマートフォンや、携帯電話等の電子機器に対して普及し始めている。また、非接触充電は、上述以外の電子機器や、電気自動車や、ドローンに適用可能な技術である。また、フォークリフト、AGV(Automated Guided Vehicle)等の運搬車、鉄道、路面電車等にも適用可能な技術である。
【0004】
非接触充電において、上述の伝送コイル(給電側及び受電側)に磁性シートを組み合わせることがある。この磁性シートは、主に、非接触充電の伝送効率を向上させるため、及び非接触充電回路から他の回路への磁束の漏洩を防ぐ(磁気シールド)ために用いられる。上述の磁性シートを製造する方法として、種々の方法が提案されている(例えば、特許文献1から3参照。)。特許文献1から3には、Q値の向上または渦電流損の低減を目的とした、磁性シートに含まれる薄板状磁性体や、非晶質合金またはナノ結晶合金のリボン等(以下「合金薄帯」とも表記する。)を複数に分割する工程を含む製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献1には、シート基材上に設けられた接着層に合金薄帯を接着して磁性シートを形成する工程と、合金薄帯をシート基材に接着された状態を維持しつつ、外力により合金薄帯を複数に分割する工程を有する製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、合金薄帯を熱処理した後、フレーク処理して合金薄帯を多数の細片に分離したり、合金薄帯にクラックを形成したりする磁性シートの製造方法が開示されている。磁性シートには複数の合金薄帯が積層され、複数の合金薄帯の間には接着層または両面テープが配置された構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-112830号公報
【特許文献2】特表2015-505166号公報
【特許文献3】特表2019-522355号公報
【特許文献4】中国実用新案公告第209087527号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非接触充電は種々の用途が検討されている。例えば、その一つとして、電気自動車用途がある。電気自動車に搭載する部品は、軽量であることが好ましい。ナノ結晶合金薄帯は、他の磁性材料、例えばフェライト材料に比べ、薄型化が可能な材料である。そのため、電気自動車に搭載される磁性シートは、ナノ結晶合金薄帯を用いた磁性シートが好ましい。
また、電気自動車用の非接触充電においては、携帯電話等の電子機器に比較し、伝送する電力が大きく、伝送コイルも大きくなる。このような用途の磁性シートには、扱う磁束密度を上げるためにナノ結晶合金薄帯を多層に積層して、ナノ結晶合金薄帯の全体の厚さを厚くすることや、対応させるコイルの大きさに合わせて広い面積の磁性シートが求められる。
【0009】
特許文献3には、ナノ結晶合金薄帯を板形状に並べ、積層する技術が記載されている。また、特許文献4には、非晶質ナノ結晶モノマーを並べた非晶質ナノ結晶モノマー板を積層した構造が記載されている。
このように、ナノ結晶合金薄帯を用いた磁性シートにおいて、厚さ及び面積において、大型化する試みは行われている。しかしながら、実際に、厚さ及び面積において大型の磁性シートを構成する場合、反りの課題が生じることが分かった。
【0010】
本開示は、厚さ及び面積において大型の磁性シートを構成する場合に、反りの課題を解決するシート状磁性部材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示は、短辺と長辺とを有する帯状に形成された磁性薄帯が3層以上 積層された積層基体を複数個備え、複数の前記積層基体が、前記長辺が隣り合って前記短辺が延びる方向に板形状に並んで配置され、かつ、前記積層基体が積層方向に複数個積み重ねて配置されているパネル基体を複数個備え、前記パネル基体を複数個積み重ねて配置したシート状磁性部材であり、
前記パネル基体は前記磁性薄帯が15層以上積層され、
前記シート状磁性部材は前記磁性薄帯が40層以上積層され、
第1のパネル基体と、前記第1のパネル基体に積層された第2のパネル基体と、において、前記第1のパネル基体の積層向きと前記第2のパネル基体の積層向きとが反転しているシート状磁性部材である。
また本開示は、短辺と長辺とを有する帯状に形成された磁性薄帯を3層以上積層して積層基体を構成し、複数の前記積層基体を前記長辺が隣り合って前記短辺が延びる方向に板形状に並んで配置し、かつ、前記積層基体を積層方向に複数個積み重ねて配置してパネル基体を構成し、前記パネル基体を複数個積み重ねてシート状磁性部材を構成するシート状磁性部材の製造方法であって、
前記パネル基体は前記磁性薄帯が15層以上積層され、
前記シート状磁性部材は前記磁性薄帯が40層以上積層され、
第1のパネル基体に、第2のパネル基体を積み重ねるとき、前記第1のパネル基体の積層向きと前記第2のパネル基体の積層向きとを反転させて積み重ねるシート状磁性部材の製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、厚さ及び面積において大型の磁性シートを構成する場合に、反りの課題を解決するシート状磁性部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示のシート状磁性部材の第1実施形態の概念図である。
【
図2】本開示のシート状磁性部材の第2実施形態の概念図である。
【
図3】本開示のシート状磁性部材の第3実施形態の概念図である。
【
図4】本開示のシート状磁性部材の第3実施形態を得る途中の概念図である。
【
図5】本開示のシート状磁性部材の第4実施形態の概念図である。
【
図6】本開示のパネル基体の構成を説明する概念図である。
【
図7】本開示のパネル基体の構成を説明する概念図である。
【
図8】本開示の積層基体の一実施形態の断面視図である。
【
図9】本開示の磁性薄帯と粘着層とを備えるシート材の断面視図である。
【
図10】本開示のパネル基体の一実施例の平面図である。
【
図11】本開示のパネル基体の一実施例の側面図である。
【
図12】本開示のシート状磁性部材の一実施例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示の実施形態について、以下に図面を用いて説明する。なお、図面に記載されたものは、例示したものであり、図面における寸法の比率は、必ずしも実際の寸法の比率を表すものではない。また、本開示は、図示するものに限られず、適宜変更が可能である。
【0015】
〔磁性薄帯:ナノ結晶合金薄帯〕
本開示の磁性薄帯は、ナノ結晶合金薄帯を用いることが好ましい。以下、磁性薄帯としてナノ結晶合金薄帯を用いた場合で説明する。なお、単に磁性薄帯と記す場合、ナノ結晶合金薄帯と同意である。
【0016】
ナノ結晶合金薄帯は、合金溶湯を急冷して、ナノ結晶化が可能なアモルファス合金薄帯を得る工程と、このアモルファス合金薄帯を結晶化開始温度以上で熱処理して微細な結晶粒を形成させる熱処理工程と、を含む製造方法によって製造することができる。
【0017】
上述の熱処理の温度は、合金組成により設定される。微細な結晶粒は、例えば、Siなどが固溶した体心立方格子構造のFeである。この微細な結晶粒の分析は、X線回折及び透過電子顕微鏡を用いて行うことができる。
【0018】
ナノ結晶合金薄帯において、ナノ結晶合金薄帯の少なくとも50体積%が、最大寸法で測定した粒径の平均が100nm以下の微細な結晶粒で占められる。また、ナノ結晶合金のうちで微細結晶粒以外の部分は主に非晶質である。微細結晶粒の割合は実質的に100体積%であってもよい。
【0019】
上述の急冷は、回転する冷却ロール上に合金溶湯を吐出して急冷凝固させる単ロール法を用いることができる。冷却ロールの回転方向に沿った方向がナノ結晶合金薄帯の鋳造方向となる。例えば、単ロール法により製造されたナノ結晶合金薄帯では、鋳造方向は、ナノ結晶合金薄帯の長手方向でもあり、長さは、例えば、20,000mを挙げることができる。
このとき、ナノ結晶合金薄帯において、冷却ロールに接していた面をロール接触面とし、冷却ロールに接しない面を自由凝固面とする。
【0020】
ナノ結晶化が可能なアモルファス合金薄帯の合金組成として、例えば、次の一般式で示される組成が挙げられる。例えば、次の一般式で示される組成を有するアモルファス合金薄帯を熱処理することで、次の一般式で示される組成を有するナノ結晶合金薄帯を得ることができる。ナノ結晶合金薄帯は、次の一般式により表される組成を有することが好ましい。
一般式:(Fe1-aMa)100-x-y-z-α-β-γCuxSiyBzM’αM”βXγ(原子%)
【0021】
上記の一般式中で、MはCo及び/又はNiであり、M’はNb、Mo、Ta、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mn及びWからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、M”はAl、白金族元素、Sc、希土類元素、Zn、Sn、及びReからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、XはC、Ge、P、Ga、Sb、In、Be、及びAsからなる群から選ばれた少なくとも1種の元素であり、a、x、y、z、α、β及びγはそれぞれ0≦a≦0.5、0.1≦x≦3、0≦y≦30、0≦z≦25、5≦y+z≦30、0≦α≦20、0≦β≦20及び0≦γ≦20を満たす。
好ましくは、上記一般式において、a、x、y、z、α、β及びγは、それぞれ0≦a≦0.1、0.7≦x≦1.3、12≦y≦17、5≦z≦10、1.5≦α≦5、0≦β≦1及び0≦γ≦1である。
【0022】
本開示ではナノ結晶合金薄帯が、Fe-Cu-Nb-Si-B系のナノ結晶合金である薄帯(株式会社プロテリアル製FT-3)の例に適用して説明する。
【0023】
また、本開示のナノ結晶合金薄帯として、ナノ結晶化が可能なアモルファス合金薄帯に張力を付与した状態でナノ結晶化の熱処理を行って得られたナノ結晶合金薄帯を用いることが好ましい。
【0024】
ナノ結晶化が可能なアモルファス合金薄帯に張力を付与した状態で、ナノ結晶化の熱処理を行うことで、ナノ結晶合金薄帯の交流比透磁率μrを調整することが可能である。そして、この工程により、周波数128kHzで測定した交流比透磁率μrが100以上2000以下のナノ結晶合金薄帯を得ることが好ましい。
【0025】
本開示において、アモルファス合金薄帯の鋳造方向に付与する張力としては、1.0N~50.0Nが好ましく、2.0N~40.0Nがより好ましく、3.0N~35.0Nが特に好ましい。張力が1.0N以上であると、透磁率を十分に低下することができる。張力が50.0N以下であると、非晶質合金薄帯又はナノ結晶合金薄帯の破断をより抑制できる。
【0026】
また、本実施形態のナノ結晶化の熱処理では、アモルファス合金薄帯を結晶化温度Tc1以上(例えば430℃以上)の到達温度まで昇温させる。これにより、合金薄帯の組織において、ナノ結晶化が進行する。到達温度は、430℃~640℃が好ましい。
到達温度が640℃以下である場合(特に、Bの含有量が10原子%以上20原子%以下である場合)には、例えば、ナノ結晶合金薄帯の軟磁気特性(Hc、Bs等)を劣化させ得るFe-B化合物の析出頻度をより低減できる。
【0027】
本実施形態のナノ結晶化が可能なアモルファス合金薄帯の厚さは、10μm~50μmの範囲が好ましい。10μm未満では、合金薄帯自体の機械的強度が低いため、安定して長尺の合金薄帯を鋳造することが困難である。また、50μmを超えると合金の一部が結晶化しやすくなり、特性が劣化する場合がある。アモルファス合金薄帯の厚さは、より好ましくは11μm~30μmであり、さらに好ましくは12μm~27μmである。ここで、アモルファス合金薄帯の厚さは、ナノ結晶合金薄帯の厚さと同等である。
【0028】
本開示のナノ結晶合金薄帯は、クラックされて小片に分割されていることが好ましい。
ナノ結晶合金薄帯は、アモルファス合金薄帯に比べ脆い性質を備える。このため、ナノ結晶合金薄帯は、直接外力を付与してクラックを形成する際に、小さな外力でクラックを形成することができる。また、表面に凹凸を実質的に形成することなくクラックを形成できる。そのため、ナノ結晶合金薄帯の平面状態を良好な状態とすることができる。
【0029】
〔磁性薄帯(ナノ結晶合金薄帯)が1層のシート材〕
図9は、本開示の磁性薄帯の一実施形態の断面視図である。
図9は、ナノ結晶合金薄帯20が1層のシート材100であり、ナノ結晶合金薄帯20の幅方向の断面に相当し、図中の寸法Bがナノ結晶合金薄帯20の短辺に相当する。
【0030】
図9のシート材100は、ナノ結晶合金薄帯20と、ナノ結晶合金薄帯20の一面に貼り付けられた粘着層10と、粘着層10に貼り付けられた樹脂シート15と、を示している。ナノ結晶合金薄帯20にはクラック21が形成され、ナノ結晶合金薄帯20は小片22に分割されている。粘着層10は、支持体11の両面に粘着剤12を備え、一方の粘着材12にナノ結晶合金薄帯20が貼り付けられ、他方の粘着剤12に樹脂シート15が貼り付けられている。
【0031】
支持体11は、長尺状に形成された帯状の膜部材、例えば長方形状に形成された膜部材である。支持体11は、可撓性を有する樹脂材料を用いて形成されている。樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethyleneterephthalate)を用いることができる。
【0032】
粘着剤12は、例えば、感圧性接着剤を用いることができる。例えば、アクリル系の接着剤、シリコーン系の接着剤、ウレタン系の接着剤、合成ゴム、天然ゴム等の、公知の接着剤を粘着剤12として用いることができる。アクリル系の接着剤は、耐熱性、耐湿性に優れ、かつ、接着可能な材質も幅広いため、粘着剤12として好ましい。
【0033】
ナノ結晶合金薄帯20と粘着層10とは次式の関係を満たす形状を有していることが好ましい。
0.2mm≦(幅A-幅B)≦3mm
幅Aは、粘着層10に関する寸法であって、より好ましくは粘着層10におけるナノ結晶合金薄帯20が接着される粘着剤12が設けられた領域に関する寸法である。幅Bは、ナノ結晶合金薄帯20に関する寸法である。なお、粘着剤12が粘着層10の支持体11の全面に設けられている場合には、幅Aは、粘着層10または支持体11に関する寸法である。
【0034】
ここで、(幅A-幅B)の下限は、0.5mmであることが好ましく、更に1.0mmであることが好ましい。また、(幅A-幅B)の上限は、2.5mmであることが好ましく、更に2.0mmであることが好ましい。
【0035】
また、ナノ結晶合金薄帯20と粘着層10とは、別の次式の関係を満たすように配置されていることが好ましい。
0mm<隙間a、および、0mm<隙間b
【0036】
隙間aおよび隙間bは、粘着層10の端部からナノ結晶合金薄帯20の端部までの距離である。具体的には隙間aは、粘着層10の第1粘着層端部10Xから、ナノ結晶合金薄帯20の第1薄帯端部20Xまでの距離である。隙間bは、粘着層10の第2粘着層端部10Yから、ナノ結晶合金薄帯20の第2薄帯端部20Yまでの距離である。
【0037】
第1薄帯端部20Xは、ナノ結晶合金薄帯20における第1粘着層端部10Xと同じ側の端部である。第2粘着層端部10Yは、粘着層10の第1粘着層端部10Xと反対側の端部である。第2薄帯端部20Yは、ナノ結晶合金薄帯20における第2粘着層端部10Yと同じ側の端部である。
【0038】
幅A、幅B、隙間a、および隙間bは、ナノ結晶合金薄帯20の鋳造方向と交差する方向、より好ましくは直交する方向の寸法である。ナノ結晶合金薄帯20の鋳造方向と、粘着層10が延びる方向は同じ方向である。また、ナノ結晶合金薄帯20の鋳造方向と、ナノ結晶合金薄帯20の長手方向は同じ方向である。
【0039】
ナノ結晶合金薄帯20にクラックを形成する方法として、ナノ結晶合金薄帯にクラッキングロールを押し付けて、ナノ結晶合金薄帯にクラックを形成する方法が知られている。例えば、特開2023-144882号公報に開示の方法を用いることができる。
【0040】
〔積層基体〕
図8は、本開示の積層基体の一実施形態の構成を説明する断面視図である。
図8に示す積層基体300は、5層のナノ結晶合金薄帯20と、6層の粘着層10と、2層の樹脂シート15と、が積層された多層構造を有している。樹脂シート15はリリースフィルムであってもよいし、保護フィルムであってもよい。この積層基体300を用いてパネル基体を組み立てるとき、樹脂シート15が剥がされ、粘着層10を露出させて、他の積層基体300と接合させる。なお、本開示では、磁性薄帯が3層以上積層されたものを積層基体としている。
【0041】
積層基体300は、少なくともナノ結晶合金薄帯20と粘着層10とが交互に積層された構造を有している。また、積層基体300における積層方向の両端部である第1積層端部301および第2積層端部302には、樹脂シート15が配置されている。
【0042】
具体的には、
図8の下側から上に向かって、樹脂シート15、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、磁性薄帯20、粘着層10、樹脂シート15が順に積層された構造を有している。
【0043】
積層基体300は、長手方向の長さが、例えば20,000mの長尺状に作製することができる。また、幅は製造できるアモルファス合金薄帯の幅を用いれば良い。幅が広いと、生産性は向上するが、製造上の課題もあり、総合的な生産性を考慮して、幅を設定することができる。そして、パネル基体を作製するにあたり、製造した積層基体300を適宜必要な長さや幅に切断して用いることができる。
【0044】
積層基体300は、ナノ結晶合金薄帯20が1層のシート材100(
図9参照。)を積み重ねて、作製することができる。
例えば、樹脂シート15の一面に粘着層10を形成し、その粘着層10に第1のシート材100のナノ結晶合金薄帯20を張り合わせる。次いで、貼り合わせた第1のシート材100の樹脂シート15を剥がし、粘着層10を露出させる。そして、その粘着層10に、第2のシート材100のナノ結晶合金薄帯20を張り合わせる。これを繰り返して、ナノ結晶合金薄帯20が5層の積層基体300を作製することができる。
【0045】
また、第1のシート材100を下層とし、その上に、第2のシート材100の樹脂シート15を剥がして粘着層10を露出させて、第2のシート材100を貼り付ける。これを繰り返して、ナノ結晶合金薄帯20が5層の積層基体300を作製することができる。最上層に、保護用の樹脂シート15を貼り付ければ、
図8に示す積層基体300が構成できる。
【0046】
本開示の積層基体300は、ナノ結晶合金薄帯20の数が3層以上である。好ましくは4層以上であり、さらに好ましくは5層以上である。層数の上限は、特に制限はない。層数は、適宜決定すればよい。ただし、ナノ結晶合金薄帯20を積層したシート状磁性部材300を巻き取る場合、層数が多いと、巻き取ることが困難になったり、巻き取るときに形状不良が生じたりすることがある。そのため、ナノ結晶合金薄帯20を積層したシート状磁性部材300を巻き取る場合、層数は30層以下が好ましい。より好ましくは25層以下であり、より好ましくは20層以下である、より好ましくは15層以下であり、より好ましくは10層以下である。
【0047】
〔パネル基体〕
図6は、本開示のパネル基体の構成を説明する概念図である。
図6で、積層基体300をLAと記載する。LAの横の矢印は、積層基体300において、ナノ結晶合金薄帯20の向きを示している。ナノ結晶合金薄帯20の向きとは、ナノ結晶合金薄帯20の自由凝固面からロール接触面に向かう向きとし、積層基体300の5層のナノ結晶合金薄帯20が同じ向きとなっている。なお、ナノ結晶合金薄帯20の向きは、ナノ結晶合金薄帯20のロール接触面から自由凝固面に向かう向きとしても良い。
また、パネル基体PBの矢印は、ナノ結晶合金薄帯20の向きを示しており、このパネル基体PBは、同じ積層向きの積層基体を組み合わせて構成されている。
【0048】
図6は、積層基体LAの短辺(磁性薄帯の短辺)に相当する辺が積層された面を見た概念図である。
図6に示すパネル基体PBは、積層基体LAを短辺方向に複数個並べて板形状に配置し、さらに積層基体LAを積層している。このとき、積層基体LAは、幅の異なる複数種の積層基体LAを組み合わせている。
そして、積層基体LAを積層方向に積み上げるとき、積層基体LAの位置を短辺方向にずらして積み上げている。これにより、隣り合う積層基体LA間に生じる磁気ギャップが積層方向に連続しない構成としている。
【0049】
図7は、パネル基体PBを作製する別の例を示す模式図である。この
図7に示す例は、同じ大きさの積層基体LA1を幅方向にずらしながら積み重ねたものである。このとき、端部で積層基体の端部が揃わない。その後、端部を切断して、
図6に示すパネル基体PBとすることもできる。
【0050】
本開示のパネル基体PBのナノ結晶合金薄帯20の積層数は15層以上が好ましい。より好ましくは20層以上である。層数の上限は、特に制限はない。層数は、適宜決定すればよい。例えば、シート状磁性部材を構成する上で、都合の良い層数とすればよい。例えば、100層としても良いし、100層以下としても良いし、100層以上でも良い。また、パネル基体の作製工数や取り扱い性から考えると、50層以下とすることもよく、さらに40層以下や、30層以下や、25層以下とすることも好ましい。
【0051】
また、パネル基体PBの寸法は、パネル基体PBを組み合わせて作製するシート状磁性部材の寸法により、適宜設定することができる。つまり、使用するシート状磁性部材が組み立てやすい寸法に設定すれば良い。例えば、幅は100~500mm、長さは100~1000mm程度が、取り扱い上、好ましい。
【0052】
〔シート状磁性部材〕
図1は、本開示の第1実施形態のシート状磁性部材を示す概念図である。
第1実施形態のシート状磁性部材は、2つのパネル基体PBを積み重ねて構成されている。そして、2つのパネル基体PBの積層向きを反転させて積み重ねている。
ここで、パネル基体PBの矢印は、パネル基体PBの積層向きを示している。ここでは、ナノ結晶合金薄帯20の自由凝固面からロール接触面に向かう向きを積層向きとしている。また、ロール接触面から自由凝固面に向かう向きを積層向きとしても良い。
【0053】
パネル基体PBを作製したとき、パネル基体PBに反りが生じることがある。特に端部や、角部において反りが生じることがある。
パネル基体PBの反りは、ナノ結晶合金薄帯20に起因すると推察される。ナノ結晶合金薄帯は、非常に薄い薄帯であることに合わせ、単ロール法で製造され、ロール接触面と自由凝固面とで差が生じることや、熱処理されることなどにより、反りを生じることがある。また、ナノ結晶合金薄帯の一面に設けた粘着層の支持体や、粘着層の一面に設けた樹脂シートの影響が考えられる。これらの支持体や樹脂シートは、搬送時に張力がかかる。したがって、搬送時には、僅かに伸びた状態となっている。そして、ナノ結晶合金薄帯をクラッキングした後、支持体や樹脂シートがナノ結晶合金薄帯側に反りやすい。これらにより、ナノ結晶合金薄帯及びその積層体に反りが生じることがある。一つのナノ結晶合金薄帯においては、僅かな反りであっても、例えば100層など、多層に積層することにより、無視できない反りとなる場合がある。例えば、反ったパネル基体を用いると、シート状磁性部材に凹凸が生じることとなる。シート状磁性部材に凹凸が形成されると、シート状磁性部材の平坦性が損なわれる。
【0054】
このため、パネル基体PBを積み重ねるとき、パネル基体PBの積層向きを反転して積み重ねることにより、反りを相殺し、反りによるシート状磁性部材の凹凸を低減することができる。
そのため、パネル基体PBの積層向きは、パネル基体PBの反りの向きとして扱うことができる。
【0055】
図2は、本開示の第2実施形態のシート状磁性部材を示す概念図である。
第2実施形態のシート状磁性部材は、4つのパネル基体PBを組み合わせて構成されている。2つのパネル基体PBを並べ、その上に、2つのパネル基体PBを積み重ねている。そして、上下のパネル基体PBの積層向きを反転させて積み重ねている。
【0056】
図3は、本開示の第3実施形態のシート状磁性部材を示す概念図である。
第3実施形態のシート状磁性部材は、12個のパネル基体PBを組み合わせて構成されている。3つのパネル基体PBを並べ、その上に、3つのパネル基体PBを積み重ねて、4層に構成している。そして、上下のパネル基体PBの積層向きを反転させて積み重ねている。また、上下のパネル基体PBにおいて、互いにパネル基体PBの位置を短辺方向にずらして積み上げている。これにより、隣り合うパネル基体PB間に生じる磁気ギャップが積層方向に連続しない構成としている。このため、パネル基体PBの幅方向の寸法が異なるパネル基体PBを組み合わせている。
【0057】
図4は、本開示の第3実施形態のシート状磁性部材を作製する別の構成を示す概念図である。
図4に示す構成では、同じ幅のパネル基体PBを用いて、上下でパネル基体PBの位置を幅方向にずらして積層し、幅方向に突き出た部分を切断して、
図3に示す第3実施形態のシート状磁性部材を作製することもできる。
【0058】
図5は、本開示の第4実施形態のシート状磁性部材を示す概念図である。
第4実施形態のシート状磁性部材は、12のパネル基体PBを組み合わせて構成されている。3つのパネル基体PBを並べ、その上に、3つのパネル基体PBを積み重ねて、4層に構成している。そして、上下のパネル基体PBの積層向きを反転させて積み重ねている。また、上下のパネル基体PBにおいて、互いにパネル基体PBの位置を短辺方向にずらして積み上げている。このとき、パネル基体PBのずれ寸法を少なくし、端部でのずれを小さくしている。端部でのずれをそのままとして使用することもできる。これにより、隣り合うパネル基体PB間に生じる磁気ギャップが積層方向に連続しない構成としている。
このとき、パネル基体PBの幅方向のずれ寸法は0.5mm以上であると良い。また、1mm以上であることが好ましく、3mm以上がより好ましい。また、パネル基体PBの幅方向のずれ寸法の上限は特に設定しないが、10mm以下であると、端部でのずれをそのままとして使用する場合に、端部でのずれ幅が目立ちにくい。また、好ましくは5mm以下である。
【0059】
上記では、パネル基体PBの積層向きをナノ結晶合金薄帯20の向きで説明したが、ナノ結晶合金薄帯20の向きとはせず、パネル基体PBを作製したときのパネル基体PBの反りの向きとし、その反りを吸収するように反転して積み重ねる構成とすることもできる。
【0060】
本開示のシート状磁性部材は、必要とする厚さ及び面積に合わせて、パネル基体PBを組み合わせて、作製することができる。また、パネル基体PBを組み合わせる際、パネル基体PBの積層向きを反転して積むことにより、パネル基体PBの反りに起因するシート状磁性部材の凹凸を抑制することができる。
本開示によれば、厚さ及び面積において大型のシート状磁性部材を簡便に作製でき、反りを抑制できる。例えば、自動車用途など、厚さ及び面積において大型のシート状磁性部材が必要な用途に有益な構造である。
【0061】
本開示のシート状磁性部材は、最下層または最上層に、樹脂シート、他の磁性材、アルミ等の金属箔、樹脂シート等を貼付けしてもよい。
【0062】
〔実施例1〕
[ナノ結晶合金薄帯の製造]
アモルファス合金薄帯(Fe-Cu-Nb-Si-B系合金)に張力を付与した状態で熱処理を行い、ナノ結晶合金薄帯(Fe-Cu-Nb-Si-B系合金)を製造した。アモルファス金薄帯に付与した張力は、40MPaであった。熱処理におけるアモルファス合金薄帯の到達温度は、640℃であった。ナノ結晶合金薄帯の厚さは16μmであり、幅は30mmであった。実施例のナノ結晶合金薄帯は株式会社プロテリアル製FT-3相当である。幅は50mmとしても良い。例えば、幅は15mm~100mmが好ましい。
【0063】
[ナノ結晶合金薄帯が1層のシート材の製造]
上記したナノ結晶合金薄帯を巻き回したロール体からナノ結晶合金薄帯を巻き出し、ナノ結晶合金薄帯の一面に粘着層を貼り付け、次いで、ナノ結晶合金薄帯の粘着層を貼り付けていない面に、クラッキングロールを直接当てて、ナノ結晶合金薄帯にクラックを形成した。この様子は
図9に示すとおりである。その後、シート材を巻き回して、ロール状とした。ここでは、ナノ結晶合金薄帯のロール接触面に粘着層を貼り付け、ナノ結晶合金薄帯の自由凝固面にクラッキングロールを押し付けた。クラックの形成しやすさから、クラッキングロールを押し付ける面は、自由凝固面であることが好ましい。
【0064】
〔積層基体の製造〕
シート材100を5個用い、ナノ結晶合金薄帯20が5層の積層基体を作製した。
ここでは、ロール状のシート材100を5個用意し、ロール状のシート材100をそれぞれ巻き出し、積層した。このとき、ナノ結晶合金薄帯の自由凝固面とロール接触面との向きは、5層の磁性薄帯において、同一方向に積層されている。
なお、シート材の製造及び積層基体の製造は、例えば、特開2023-144882号公報に記載のものを適用できる。
【0065】
上記により、長尺状の積層基体を作製した。その長尺状の積層基体を切断して、以下の積層基体を所要数作製した。第1の積層基体LA1は、幅30mm、長さ120mmとした。第2の積層基体LA2は、幅15mm、長さ120mmとした。第2の積層基体LA2は第1の積層基体LA1を切断して作製した。ここで、積層基体の寸法はナノ結晶合金薄帯の寸法である。なお、この積層体は、ナノ結晶合金薄帯が5層となっている。
【0066】
〔パネル基体〕
作製したパネル基体PB1の平面図を
図10に、側面図を
図11に示す。積層基体LA1を18個、積層基体LA2を4個用い、
図11に示すように、積層基体を並べ、積み重ねた。
具体的には、ベース材を用意し、そのベース材に1層目の積層基体を並べて、貼り付けていき、その上に第2層の積層基体を並べて、貼り付けていき、同じように、第3層、第4層、第5層を貼り付けて作製した。
このパネル基体PB1は、幅120mm、長さ120mmである。また、このパネル基体PB1は、ナノ結晶合金薄帯が25層である。
また、同じ積層基体LA1、LA2を用いて、積層基体LA1を23個、積層基体LA2を4個用い、パネル基体PB1と同様に、1層目に積層基体LA1を5個並べ、2層目に積層基体LA1を4個と、積層基体LA2を2個並べ、計5層のパネル基体PB2を作製した。このパネル基体PB2は、幅150mm、長さ120mmである。また、このパネル基体PB1は、ナノ結晶合金薄帯が25層である。
【0067】
〔シート状磁性部材の製造〕
パネル基体PB1を4つ積層し、このとき、パネル基体の積層向きを反転させて積み重ねた。このパネル基体PB1が4層のパネル基体PB11を作製した。また、パネル基体PB2を4つ積層し、このとき、パネル基体の積層向きを反転させて積み重ねた。このパネル基体PB2が4層のパネル基体PB21を作製した。そして、パネル基体PB11とパネル基体PB21を並べて、また長辺方向を変えて、
図12に示すシート状磁性部材を作製した。このシート材状磁性部材は840mm×390mmであり、ナノ結晶合金薄帯が100層となっている。また、このシート状磁性部材の最下層および最上層には樹脂シートが設けられている。ここで、パネル基体PB11は14個、パネル基体PB21は7個組み合わされている。
このシート材磁性部材において、外観上での反りは抑制されていた。
また、寸法の異なるパネル基体を複数種作製しておき、そのパネル基体を組み合わせて作製することもできる。
【0068】
本開示のシート状磁性部材によれば、積層基体を作製し、それを基にパネル基体を作製し、パネル基体を組み合わせて、シート状磁性部材を作製するものであり、厚さ及び面積において大型の磁性シートを自在に構成できる。また、反りを抑制しながら構成できる。