(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007282
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 75/58 20060101AFI20250109BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
B65D75/58
B65D33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108569
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸本 壮悟
(72)【発明者】
【氏名】平野 祐哉
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA26
3E064BA30
3E064BA40
3E064BA55
3E064BC18
3E064EA12
3E064GA04
3E064HM03
3E064HP01
3E064HP05
3E067AA11
3E067AB01
3E067AB41
3E067AB81
3E067AB83
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB18A
3E067BB25A
3E067CA11
3E067CA17
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB07
3E067EB20
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
(57)【要約】
【課題】使用者が手で包装袋を引き裂いて開封したときに、開封方向及び開封口の大きさを制御しやすい包装袋を提供する。
【解決手段】重合体を含む延伸フィルムで構成され物品を収納する収納部と、前記収納部の端部に設けられ、前記収納部を封止する封止部と、前記封止部に設けられた切り口部とを備える包装袋であって、前記収納部は、前記延伸フィルムとしての第一フィルムを有し、前記収納部の底部及び天部までの高さ方向に対し、前記第一フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向が斜め方向である、包装袋。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体を含む延伸フィルムで構成され物品を収納する収納部と、
前記収納部の端部に設けられ、前記収納部を封止する封止部と、
前記封止部に設けられた切り口部とを備える包装袋であって、
前記収納部は、前記延伸フィルムとしての第一フィルムを有し、
前記収納部の底部及び天部までの高さ方向に対し、前記第一フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向が斜め方向である、包装袋。
【請求項2】
前記切り口部が、前記収納部の前記天部側端部または側方端部に位置する前記封止部に設けられている、請求項1に記載の包装袋。
【請求項3】
前記収納部は、前記第一フィルムと対向し、延伸フィルムである第二フィルムを有し、
前記第一フィルム及び前記第二フィルムが前記封止部において積層された構造を有する、請求項1に記載の包装袋。
【請求項4】
前記包装袋は、平袋である、請求項3に記載の包装袋。
【請求項5】
前記第一フィルムの主面に対して垂直方向から見た前記収納部の形状が、矩形状である、請求項3に記載の包装袋。
【請求項6】
前記第一フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向が、前記収納部の前記高さ方向に対してなす角θ1が、0°より大きく75°以下であるか、115°以上180°未満である、請求項3に記載の包装袋。
【請求項7】
前記第一フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向と、前記第二フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向とが異なる、請求項3に記載の包装袋。
【請求項8】
前記収納部は、前記第一フィルムが折り畳まれた構造を有する、請求項1に記載の包装袋。
【請求項9】
前記包装袋は、前記収納部において前記第一フィルムが筒状に配置された構造を有する、請求項1に記載の包装袋。
【請求項10】
前記収納部の側方端部に位置する前記封止部に、複数の切り口部が設けられている、請求項9に記載の包装袋。
【請求項11】
前記包装袋が、前記延伸フィルムを含む多層フィルムで構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、精密部品、医療器具等を包装する包装袋において、手指の力で開封を容易に行うことが求められており、様々な検討がなされている(特許文献1~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-78673号公報
【特許文献2】特開2013-233934号公報
【特許文献3】特開2015-150842号公報
【特許文献4】特開2015-58953号公報
【特許文献5】特開2000-7016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
市場に流通している包装袋は、例えば、包装袋の縦方向または横方向に引き裂くことで開封されるように設計されている。このような包装袋は、例えば、液体の調味料を包装する用途においては、開封口が大きすぎて調味料が袋から溢れる場合や、袋を構成するフィルム表面に付着しやすい場合がある。また、子供用の粉薬を包装する用途においては、包装袋の開封口が大きいと、子供の口からこぼれてしまい、飲みこぼしが生じる場合がある。
一方で、医療用の機器や精密部品は、使用者が確実に機器や部品を取り上げる必要があることから、包装袋の開封口を広くすることが望まれる。
また、別の例としては、棒状の食品等は包装を簡単に開封できない場合がある。
【0005】
前述のように、市場に流通している包装袋は用途に応じてより適した開封方法で開封を行うことが求められている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされた発明であり、包装袋の開封方向及び開封口の大きさを制御しやすい包装袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するべく、鋭意検討したところ、包装袋を構成する延伸フィルムに含まれる重合体の分子の配向方向を、包装袋の高さ方向に対して斜め方向になるような方向とすることで、開封方向及び開封口の大きさの制御を良好に行うことができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0008】
〔1〕 重合体を含む延伸フィルムで構成され物品を収納する収納部と、
前記収納部の端部に設けられ、前記収納部を封止する封止部と、
前記封止部に設けられた切り口部とを備える包装袋であって、
前記収納部は、前記延伸フィルムとしての第一フィルムを有し、
前記収納部の底部及び天部までの高さ方向に対し、前記第一フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向が斜め方向である、包装袋。
〔2〕 前記切り口部が、前記収納部の前記天部側端部または側方端部に位置する前記封止部に設けられている、〔1〕に記載の包装袋。
〔3〕 前記収納部は、前記第一フィルムと対向し、延伸フィルムである第二フィルムを有し、前記第一フィルム及び前記第二フィルムが前記封止部において積層された構造を有する、〔1〕または〔2〕に記載の包装袋。
〔4〕 前記包装袋は、平袋である、〔3〕に記載の包装袋。
〔5〕 前記第一フィルムの主面に対して垂直方向から見た前記収納部の形状が、矩形状である、〔3〕~〔4〕のいずれか一項に記載の包装袋。
〔6〕 前記第一フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向が、前記収納部の前記高さ方向に対してなす角θ1が、0°より大きく75°以下であるか、115°以上180°未満である、〔3〕~〔5〕のいずれか一項に記載の包装袋。
〔7〕 前記第一フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向と、前記第二フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向とが異なる、〔3〕~〔6〕のいずれか一項に記載の包装袋。
〔8〕 前記収納部は、前記第一フィルムが折り畳まれた構造を有する、〔1〕に記載の包装袋。
〔9〕 前記包装袋は、前記収納部において前記第一フィルムが筒状に配置された構造を有する、〔1〕に記載の包装袋。
〔10〕 前記収納部の側方端部に位置する前記封止部に、複数の切り口部が設けられている、〔9〕に記載の包装袋。
〔11〕 前記包装袋が、前記延伸フィルムを含む多層フィルムで構成される、〔1〕~〔10〕のいずれか一項に記載の包装袋。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、包装袋の開封方向及び開封口の大きさを制御しやすい包装袋を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1(a)は、本発明の第一実施形態に係る包装袋の一例を模式的示す平面図であり、
図1(b)は
図1(a)に示す包装袋のA-A線での断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す包装袋を構成する延伸フィルムの配向方向を説明する図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す包装袋の開封後の形態を模式的に示す平面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一実施形態に係る包装袋の他の例を模式的示す平面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す包装袋を構成する延伸フィルムの配向方向を説明する図である。
【
図6】
図6は、
図4に示す包装袋の開封後の形態を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第二実施形態に係る包装袋の他の例を模式的示す平面図及びA-A線での断面図である。
【
図8】
図8は、
図7に示す包装袋を構成する延伸フィルムの展開図である。
【
図9】
図9は、
図7に示す包装袋の開封後の形態を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第二実施形態に係る包装袋の他の例を模式的示す平面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第三実施形態に係る包装袋の一例を模式的示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。また、図面についての既出の符号についてはこれを省略する場合がある。
【0012】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0013】
以下の説明において、フィルムに含まれる重合体の分子の配向方向とは、延伸フィルムを構成する樹脂に含まれる重合体の分子の配向方向を指す。延伸フィルムを構成する樹脂が正の固有複屈折の樹脂である場合、分子の配向方向は遅相軸方向(延伸方向)である。延伸フィルムを構成する樹脂が負の固有複屈折の樹脂である場合、分子の配向方向は進相軸方向である。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
【0014】
<1.包装袋の概要>
本発明の一実施形態に係る包装袋は、重合体を含む延伸フィルムで構成され物品を収納する収納部と、収納部の端部に設けられ、収納部を封止する封止部と、封止部に設けられた切り口部とを備える。この包装袋において、収納部は、延伸フィルムとしての第一フィルムを有し、収納部の底部及び天部までの高さ方向に対し、第一フィルムに含まれる重合体の分子の配向方向が斜め方向である。この包装袋においては、切り口部は、収納部の天部側端部または側方端部に位置する封止部に設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明において、包装袋における収納部の「底部」及び「天部」は、典型的には、包装袋の開封時において、収納部の第一フィルムの面方向を地面に対して垂直方向に向けて配置した際に、包装袋の底に位置する部分が「底部」に該当し、底部の上方において、底部と対向する部分が「天部」に該当する。このような包装袋の「底部」及び「天部」は、例えば、包装袋の外側表面に印刷、ラベル等により、包装袋の「底部」及び「天部」を識別しうる情報が示されている場合は、その情報を基に判断しうる。また、包装袋が透明性を有し、収納部に収納された物品が包装袋の外側から観察しうる場合は、物品の上下の向きによって、「底部」及び「天部」を判断しうる。また、包装袋の開封時において、包装袋の第一フィルムの主面を地面に対して垂直方向に向けて配置した状態で開封を行う場合、通常、切り口部は、収納部の天部側端部または側方端部に位置する前記封止部に設けられることから、切り口部の位置により、「底部」及び「天部」を判断しうる。
【0016】
包装袋の用途により、例えば、包装袋の第一フィルムの面方向が、地面に対して平行方向になるように、台に置いて開封する場合は、包装袋における収納部の「底部」及び「天部」は、例えば、前述した情報や、収納される物品の向きから判断しうるが、これらの情報がない場合や、収納される物品の形状から物品の上下の向きを判別することが困難である場合は、以下のように、包装袋における収納部の「底部」及び「天部」を定めることとする。包装袋における収納部が長手方向及び短手方向を有する場合は、長手方向における一方の端部を「底部」とし、他方の端部を「天部」として定めることとする。このとき、前記長手方向の一方の端部側に切り口部が設けられている場合は、切り口部が設けられている側の端部を「天部」とし、反対側の端部を「底部」とする。また、切り口部が収納部の側方端部に設けられている場合、長手方向における切り口部からの距離が近い方の端部を「天部」とし、反対側の端部を「底部」とする。
【0017】
収納部の高さ方向に対する斜め方向とは、収納部の面を構成する延伸フィルムの面内方向であって、収納部の高さ方向に平行でもなく、垂直でもない方向を指す。
【0018】
以下の説明において、第一フィルムに含まれる重合体の分子の配向方向を第一フィルムの配向方向と称して説明する場合がある。
【0019】
本発明によれば、包装袋における収納部の高さ方向に対し、第一フィルムの配向方向が斜め方向であることにより、包装袋を切り口部から手で引き裂いたときに、収納部の第一フィルムは、その分子の配向方向に沿って開封されうる。そのため、第一フィルムの配向方向、および包装袋における切り口部の位置を調整することにより、包装袋の開封方向及び開封口の大きさが制御された包装袋とすることができる。
【0020】
<2.延伸フィルム>
本発明の一実施形態に係る包装袋において、収納部は、重合体を含む延伸フィルムで構成される。延伸フィルムは、通常、重合体を含む樹脂で構成され、必要に応じて任意の成分を含みうる。延伸フィルムを構成する樹脂は、正の固有複屈折値を有する樹脂であってもよく、負の固有複屈折値を有する樹脂であってもよい。
【0021】
延伸フィルムに含まれうる重合体としては、通常、熱可塑性を有する重合体を用いうる。このような重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリフェニレンサルファイド等のポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;セルロースエステル重合体、ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリルサルホン;ポリ塩化ビニル;ノルボルネン系重合体等の、脂環式構造を含有する重合体;棒状液晶ポリマーなどが挙げられる。重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、重合体は、単独重合体でもよく、共重合体でもよい。これらの中でも、機械特性、耐熱性、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性に優れることから、脂環式構造を含有する重合体が好ましい。脂環式構造を含有する重合体を、以下、適宜「脂環式構造含有重合体」ということがある。
【0022】
脂環式構造含有重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を含有する。脂環式構造含有重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0023】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0024】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。脂環式構造を構成する炭素原子数が前記の数である場合、当該脂環式構造含有重合体を含む固有の機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0025】
脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択してもよく、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にある場合、樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0026】
脂環式構造含有重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素添加物等を挙げることができる。これらの中で、ノルボルネン系重合体は、透明性と成形性が良好なため、好適である。
【0027】
ノルボルネン系重合体及びその水素化物の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素化物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素化物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの重合体としては、例えば、特開2002-321302号公報等に開示されている重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素化物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、特に好適である。
【0028】
ノルボルネン系重合体及びこれらの水素化物の具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア」;JSR社製「アートン」;TOPAS ADVANCED POLYMERS社製「TOPAS」が挙げられる。
【0029】
延伸フィルムは、延伸対象のフィルムを延伸して得られうる。延伸フィルムを得る延伸方法は、特に限定されない。延伸方法の例としては、フィルムを長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸法)、フィルムを幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸法)等の、一軸延伸法;フィルムを長手方向に延伸すると同時に幅方向に延伸する同時二軸延伸法、フィルムを長手方向及び幅方向の一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸法等の、二軸延伸法;及び、フィルムを斜め方向に延伸する方法(斜め延伸法);これらの組み合わせが挙げられる。延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは3倍以下、より好ましくは2.5倍以下である。
【0030】
本実施形態の延伸フィルムは、斜め延伸フィルムであることが好ましい。斜め延伸フィルムは、斜め延伸法を含む延伸工程により延伸されたフィルムである。
【0031】
延伸フィルムの遅相軸の方向は、延伸フィルムの幅方向に対して平行でも垂直でもない斜め方向にあることが好ましい。延伸フィルムの遅相軸の方向は、包装袋の形態及び用途に応じて適宜決定しうる。
【0032】
包装袋に用いられる延伸フィルムは、延伸フィルムのみを有する単層のフィルムであってもよく、延伸フィルムに機能層が設けられた多層フィルムであってもよい。機能層としては、例えば、ガスバリア層、印刷層などを挙げることができる。機能層の厚みは、特に限定されず、所望の機能を発揮でき、かつ、包装袋の開封時に延伸フィルムの引き裂き性を阻害しない程度であれば特に限定されない。
【0033】
<3.包装袋の形態>
本発明の一実施形態に係る包装袋は、延伸フィルムで構成された収納部、封止部及び切り口部を備える。本発明の一実施形態に係る包装袋においては、収納部を構成するフィルムの少なくとも一部が、延伸フィルムとしての第一フィルムを有する。このような包装袋においては、通常、包装袋の収納部の内壁が、物品を収納するための内部空間を規定する。
【0034】
本発明の一実施形態に係る包装袋の形態としては、前述の収納部、封止部及び切り口部といった構成を含む、あらゆる形態をとりうるが、好ましい例の一つとして、収納部が延伸フィルムとしての第一フィルム、及び第一フィルムと対向し、延伸フィルムである第二フィルムを有し、第一フィルム及び第二フィルムが封止部において積層された構造を有する形態が挙げられる(第一実施形態)。また、包装袋の形態の好ましい他の例の一つとして、収納部が、第一フィルムが折り畳まれた構造を有する形態が挙げられる(第二実施形態)。さらにまた、包装袋の形態の好ましい他の例の一つとして、収納部において第一フィルムが筒状に配置された構造を有する形態が挙げられる(第三実施形態)。以下、第一実施形態~第三実施形態について説明する。
【0035】
<3.1.第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る包装袋は、収納部、封止部及び切り口部を備え、収納部は延伸フィルムとしての第一フィルムと、第一フィルムと対向し、延伸フィルムである第二フィルムとを有し、第一フィルム及び第二フィルムが封止部において積層された構造を有する。
【0036】
第一実施形態によれば、第一フィルムに含まれる重合体の分子の配向方向と、第二フィルムに含まれる重合体の分子の配向方向とを調整することにより、包装袋の開封方向及び開封口の大きさを、包装袋の用途に応じて効果的に制御できる包装袋としうる。以下、第二フィルムに含まれる重合体の分子の配向方向を、第二フィルムの配向方向と称して説明する場合がある。
【0037】
第一実施形態に係る包装袋について、図を用いて説明する。以下の説明においては、別に断らない限り、平面図は、包装袋の第一フィルム側を、第一フィルムの外部側表面に対して垂直方向から見た図を指す。
【0038】
図1(a)は、第一実施形態に係る包装袋を模式的に示す平面図であり、
図1(b)は
図1(a)の包装袋のA-A線での断面図である。
図2は
図1の包装袋を構成する延伸フィルムの配向方向を説明する図である。
図3は、
図1に示す包装袋の開封後の形態を模式的に示す平面図である。
【0039】
図1(a)及び(b)に示すように、包装袋10(10A)は、第一フィルム1a及び第二フィルム1bで構成され、物品を収納する収納部11と、収納部11の端部に設けられ、収納部11を封止する封止部12と、封止部12に設けられた切り口部13とを備える。
図1(a)において、切り口部13は、収納部11の側方端部11sに位置する封止部12に設けられている。第一フィルム1a及び第二フィルム1bは延伸フィルムである。包装袋10Aは、収納部11が第一フィルム1a、及び第一フィルム1aと対向する第二フィルム1bを有し、第1フィルム1a及び第2フィルム1bが封止部12において積層された構造を有する。包装袋10Aにおいて、収納部11の底部11b及び天部11tまでの高さ方向hに対し、第一フィルム1aの配向方向x1が斜め方向である。包装袋10Aは、第一フィルムの主面f1に対して垂直方向から見た収納部11の形状が矩形状であり、矩形状の収納部11の四辺を封止するように、封止部12が設けられている。包装袋10Aにおいては、第一フィルムの面f1及びi1のうち、包装袋の外部側に配置される面を主面とする。同様に第二フィルムの面f2及びi2のうち、外部側に配置される面を主面とする。各フィルムの面i1及び面i2は、収納部の内壁面を構成する。包装袋10Aにおいては、収納部11の内壁が、物品を収納するための内部空間Sを規定する。
【0040】
また、
図1(a)及び
図2に示すように、包装袋10Aにおいては、第一フィルム1aの配向方向x1と、第二フィルム1bの配向方向x2とが同一である。このような包装袋10Aを、切り口部13から手で引き裂いて開封した場合、
図3に示すように、収納部11の第一フィルム1aは、配向方向x1に沿って引き裂かれうる。一方、収納部11の第二フィルム1bは、配向方向x1と同一方向である、配向方向x2に沿って引き裂かれうる。そのため、開封口は、切り口部13から、収納部11の天部11tに向かって、第一フィルムの配向方向x1に形成されうる。その結果、包装袋10Aを、収納部11の高さ方向hに引き裂いた場合や、収納部の幅方向wに引き裂いた場合に比べて開封口を小さくすることができる。
【0041】
図4は、第一実施形態に係る包装袋を模式的に示す平面図である。
図5は
図4の包装袋を構成する延伸フィルムの配向方向を説明する図である。
図6は、
図4に示す包装袋の開封後の形態を模式的に示す平面図である。
図4~
図6に示す包装袋10(10B)は、第一フィルム1aの配向方向x1と、第二フィルム1bの配向方向x2とが異なる点以外は、
図1~3で説明した包装袋10Aと同様の構成を備える。
【0042】
図4及び
図5に示すように、包装袋10Bにおいては、第一フィルム1aの配向方向x1と、第二フィルム1bの配向方向x2とが異なる。
図4及び
図5においては、第一フィルム1aの配向方向x1は、収納部11の高さ方向hに対して斜め方向であり、第二フィルム1bの配向方向x2は収納部11の高さ方向hに対して垂直方向(幅方向wと平行方向)である。このような包装袋10Bを切り口部13から手で引き裂いて開封した場合、
図6に示すように、収納部11の第一フィルム1aは、配向方向x1に沿って引き裂かれうる。一方、収納部11の第二フィルム1bは、収納部11の高さ方向hと垂直方向である、配向方向x2に沿って引き裂かれうる。そのため、開封口の形状は、収納部11の第一フィルム1a側が、幅方向wよりも広く開き、収納部11の第二フィルム1b側が、幅方向wに開いた、三角形状となりうる。その結果、包装袋の第一フィルム側を幅方向に引き裂いた場合に比べて開封口を大きくすることができ、第一フィルム側から物品を取り出しやすくすることができる。また、開封口が底部に達しないようにしうることから、包装袋に収納された物品を収納部内で保持することができる。
【0043】
図1~
図6に示した例に限らず、第一実施形態によれば、第一フィルムの配向方向と、第二フィルムの配向方向とを調整することにより、包装袋の開封方向及び開封口の大きさを調整することができるため、包装袋の用途に応じて開封方向及び開封口の大きさが制御された包装袋とすることができる。
【0044】
(包装袋の構造)
包装袋は、収納部に配置された第一フィルム及び第一フィルムと対向する第二フィルムを有し、第一フィルム及び第二フィルムが封止部において積層された構造を有する。ここで、封止部において第一フィルム及び第二フィルムは、接着剤や粘着剤を介して貼り合わされることにより積層されている場合だけでなく、熱溶着処理により、第一フィルム及び第二フィルムが融着されて積層されている場合も含む。
【0045】
包装袋は、収納部が、第一フィルム及び第二フィルムを有する構造であれば、底部側及び天部側の少なくとも一方に底面を有していてもよく、底面を有していなくてもよいが、底面を有していないことが好ましい。すなわち、包装袋は、平袋であることが好ましい。包装袋の製造が容易であり、汎用性を高くすることができるからである。
【0046】
(収納部)
第一実施形態に係る収納部は、延伸フィルムである第一フィルムと、延伸フィルムである第二フィルムとを有する。
【0047】
第一実施形態において、収納部に配置された第一フィルムは、収納部の底部及び天部までの高さ方向に対し、第一フィルムに含まれる重合体の分子の配向方向が斜め方向である。
収納部の高さ方向hに対し、第一フィルムの配向方向x1のなす角を角度θ
1とすると、角度θ
1は、例えば、0°よりも大きく、10°以上であることが好ましく、20°以上であることがより好ましく、25°以上であることがさらに好ましい。また、角度θ
1は、例えば、75°以下であることが好ましく、60°以下であってもよく、45°以下であってもよい。
さらにまた、角度θ
1は、例えば、115°以上であることが好ましく、120°以上であってもよく、135°以上であってもよい。また、角度θ
1は、例えば、180°未満であり、170°以下であることが好ましく、160°以下であることがより好ましく、165°以下であることがさらに好ましい。
角度θ
1を前記範囲とすることにより、包装袋を切り口部から手で引き裂いて開封したときに、第一フィルムを分子の配向方向に沿って引き裂いて開封することができるため、第一フィルム側の開封口を包装袋の高さ方向に対して斜め方向に設けて開封することができる。角度θ
1は、高さ方向hの底部を0°、天部を180°として表される角度である。また、角度θ
1は、例えば、
図1(a)中、θ
1で表される角度である。
【0048】
収納部における第二フィルムの配向方向は、特に限定されず、包装袋の用途に応じて適宜選択しうる。第二フィルムの配向方向は、例えば、
図1に示すように、収納部の高さ方向に対して、斜め方向であってもよく、
図4に示すように、収納部の高さ方向に対して、垂直方向であってもよく、収納部の高さ方向に対して、平行方向であってもよい。言い換えると、収納部の高さ方向hに対し、第二フィルムの配向方向x2のなす角を角度θ
2とすると、角度θ
2は、0°以上180°以下の任意の角度をとりうる。角度θ
2は、例えば、
図4中、θ
2で表される角度である。
【0049】
また、第一実施形態においては、収納部における第一フィルムの配向方向と、第二フィルムの配向方向とは、包装袋の用途、収納される物品に応じて適宜選択されうる。例えば、第一フィルムの配向方向と、第二フィルムの配向方向とが、同一である場合、包装袋の高さ方向に対して、斜め方向に開封口を設けやすく、引き裂いたフィルムを分離しやすくすることができる。また、包装袋に設けられる切り口部の形成位置を、包装袋の幅方向または高さ方向の末端から近いほど開封口を小さくすることができるため、特に、包装袋の開封口を、包装袋の幅方向よりも小さくしたい用途において、好適に用いることができる。
【0050】
ここで、第一フィルムの配向方向と第二フィルムの配向方向とが同一であるとは、第一フィルムの配向方向と第二フィルムの配向方向とが完全に一致する場合だけでなく、前記の効果を妨げない程度の誤差を有する場合も含む。具体的には、第一フィルムの配向方向と第二フィルムの配向方向とのなす角が、0°±10°以内、0°±5°以内、0°±3°以内でありえる。
【0051】
例えば、第一フィルムの配向方向と、第二フィルムの配向方向とが異なる場合、包装袋を切り口部から引き裂いた際に、第一フィルムの引き裂き方向と第フィルム面の引き裂き方向とを異なる方向とすることができるため、例えば、包装袋の開封口を、大きくとることができる。そのため、例えば、第二フィルム側を物品と接触させた状態で、第一フィルム側を大きく開いて物品を取り出すことができる。
【0052】
第一フィルムの配向方向と第二フィルムの配向方向とが異なる場合、第一フィルムの配向方向と第二フィルムの配向方向とのなす角を角度θ
3とすると、角度θ
3は、例えば、10°より大きく、30°以上であることが好ましく、45°以上であることがより好ましい。また、角度θ
3は、例えば、180°未満であり、160°以下であることが好ましく、150°以下であることがより好ましい。角度θ
3は、例えば、
図4中、θ
3で表される角度である。
【0053】
包装袋において、収納部の高さ方向に対し、第一フィルムの配向方向が斜め方向であることは、例えば、角度θ1を測定することにより確認しうる。
角度θ1は、第一フィルムの遅相軸から測定できる。具体的には、下記の通りである。通常、正の固有複屈折を有する樹脂で形成されたフィルムが含む重合体分子の配向方向は、そのフィルムの遅相軸と平行である。よって、第一フィルムが、正の固有複屈折を有する樹脂で形成されたフィルムで構成されている場合、収納部の高さ方向に対して、第一フィルムの配向方向がなす角度θ1は、収納部の高さ方向に対して、第一フィルムを構成する延伸フィルムの遅相軸がなす角度として測定しうる。他方、通常、負の固有複屈折を有する樹脂で形成されたフィルムが含む重合体分子の配向方向は、そのフィルムの遅相軸と垂直である。よって、第一フィルムが、負の固有複屈折を有する樹脂で形成されたフィルムで構成されている場合、収納部の高さ方向に対して、第一フィルムの配向方向がなす角度θ1は、収納部の高さ方向に対して、第一フィルムを構成する延伸フィルムの遅相軸に対して垂直な方向が幅方向に対してなす角度として測定しうる。遅相軸方向は、偏光顕微鏡(例えば、オリンパス社製「BX51」)を用いて測定できる。
前述の角度θ2についても、角度θ1と同様の方法により測定しうる。また、前述の角度θ3は、角度θ1及び角度θ2をそれぞれ測定し、測定された値を基に、算出しうる。
【0054】
収納部の形状は、包装袋の用途に応じて適宜選択され、特定の形状に限定されるものではない。包装袋を第一フィルムの主面に対して垂直方向から見たときの収納部の形状は、例えば、直線で囲まれた形状であってもよく、円弧や波線などの曲線で囲まれた形状であってもよく、前述の複数種類の線で囲まれた形状であってもよい。より具体的な形状としては、円形状、楕円形状、半円形状、半楕円形状、三角形状、矩形状、五角形以上の多角形状、及び多角形状の角を丸めた形状、並びにこれらを組み合わせた形状などの図形状が挙げられる。さらにまた、前述した図形をジグザグ線や波線で表した形状もとりうる。包装袋を第一フィルムに対して垂直方向から見たときの収納部の形状は、通常、封止部により囲まれた収納部の形状でありえる。
【0055】
本実施形態においては、包装袋を第一フィルムに対して垂直方向から見たときの収納部の形状は、矩形状であることが好ましい。開封方向及び開封口の設計が容易であるとともに、包装袋を容易に製造することができるからである。
【0056】
(封止部)
封止部は収納部の端部に設けられ、収納部を封止する。封止部は、通常、2枚の延伸フィルムが貼り合わされて構成される。封止部は、2枚の延伸フィルムを熱溶着によって貼り合わせてもよく、2枚の延伸フィルムの間に接着層を設けて貼り合わされていてもよい。
【0057】
包装袋における封止部の位置は、包装袋の形態に応じて適宜選択しうる。例えば、第一フィルムの垂直方向から見た収納部の形状が矩形状である場合、収納部の周囲の4辺に封止部が設けられうる。
【0058】
封止部に用いられる接着剤及び粘着剤については、一般的な包装袋に用いられる接着剤及び粘着剤と同様としうる。
【0059】
(切り口部)
切り口部は、封止部に設けられる。切り口部は、「ノッチ」とも称される。切り口部は、包装袋において、閉じられた収納部を開封しうる位置に設けられるが、収納部の天部側端部または側方端部に位置する封止部に設けられていることが好ましい。また、切り口部は、収納部の底部側端部に位置する封止部に設けられていてもよいが、設けられていないことが好ましい。
【0060】
切り口部は、包装袋に少なくとも一つ設けられていればよく、一つだけ設けられていてもよく、複数設けられていてもよい。切り口部の形状としては、例えば、I字形状、V字形状、U字形状が挙げられる。
【0061】
<3.2.第二実施形態>
本発明の第二実施形態に係る包装袋は、収納部、封止部及び切り口部を備え、収納部は、第一フィルムが折り畳まれて構成された構造を有する。この包装袋は、例えば、一枚の延伸フィルムである第一フィルムが折れ線部で折り畳まれ、前記第一フィルムは折れ線部を境界として第一領域及び第二領域を有する。
【0062】
第二実施形態によれば、収納部の高さ方向に対して、その分子の配向方向が斜め方向となる第一フィルムが折りたたまれた構造を有することから、第一フィルムの配向方向及び切り口部の位置により、開封方向及び開封口の大きさが制御された包装袋とすることができる。
【0063】
また、第二実施形態に係る包装袋は、1枚の第一フィルムが折り畳まれて構成された構造を有することから、例えば、連続体である斜め延伸フィルムを包装袋の製造装置で流れ方向に沿って折り曲げて加工することで効率的に製造しうる。また、この包装袋は、1枚の第一フィルムを折り畳むことにより、包装袋の表裏に配置されるフィルム(第一領域及び第二領域)の配向方向の違いを作り出すことができる。
【0064】
第二実施形態に係る包装袋について図を用いて説明する。
図7(a)は、本発明の第一実施形態に係る包装袋の他の例を模式的示す平面図であり、
図7(b)は
図1(a)の包装袋のA-A線での断面図である。
図8は、
図7に示す包装袋を構成する延伸フィルムの展開図である。
図9は、
図7に示す包装袋の開封後の形態を模式的に示す平面図である。
図7~
図9に示す包装袋20(20A)は、以下に説明する点以外は、
図1~
図3で説明した包装袋10Aと同様の構成を備える。
【0065】
図7(a)及び
図7(b)に示す包装袋20Aは、1枚の延伸フィルムである第一フィルム2aが折り畳まれて構成されている。具体的には、
図8に示すように、第一フィルム2aが包装袋20Aの幅方向wとなる方向に、半分に折り畳まれており、折り曲げた折れ線部24の両側端部及び折れ線部24に対向する端部に封止部22を設けた構造を有する。より具体的に、包装袋20Aは、第一フィルム2aに対して垂直方向から見た収納部21の形状が矩形状であり、矩形状の収納部21の三辺を封止するように、封止部22が設けられている。
【0066】
図7(a)、
図7(b)及び
図8に示すように、包装袋20Aは、一枚の延伸フィルムである第一フィルム2aが折れ線部24で折り畳まれていることから、折れ線部24を境界として一方を第一領域e1、他方を第二領域e2としたとき、第一領域e1の配向方向x1と、第二領域e2の配向方向x2とは、逆方向となる。具体的には、
図8に示すように、包装袋20Aを構成する第一フィルム2aを折り畳む前においては、第一領域e1の配向方向x1と、第二領域e2の配向方向x12は同一の方向である。このような第一フィルム2aを包装袋20Aの幅方向wとなる方向に折り畳むことで、第二領域e2の配向方向x12のベクトルが逆方向となることから、折れ線部24を境界にして、第一領域e1の配向方向x1と、第二領域e2の配向方向x3とは、逆方向となる。このような包装袋20Aを切り口部から手で引き裂いて開封した場合、
図9に示すように、収納部21の第一領域e1は、配向方向x1に沿って引き裂かれる。一方、収納部21の第二領域e2は配向方向x1と逆方向に配向方向x3に沿って引き裂かれる。そのため、開封口の形状は、例えば、収納部の21の幅方向wに対称軸を有する二等辺三角形状となる。包装袋20Aにおいては、収納部21の第1領域e1側または第二領域e2側に開かれた開封口を形成することができるため、包装袋20Aに収納された物品を第一領域e1側または第二領域e2側から取り出しやすい包装袋とすることができる。
【0067】
図10は、本発明の第一実施形態に係る包装袋の他の例を模式的示す平面図である。
図11は、
図11に示す包装袋を構成する延伸フィルムの展開図である。
図12は、
図11に示す包装袋の開封口を模式的に示す平面図である。
図10~
図12に示す包装袋20(20B)は、以下に説明する点以外は、
図7~
図9で説明した包装袋20Aと同様の構成を備える。
【0068】
図10に示す包装袋20Bは、1枚の延伸フィルムである第一フィルム2aが折り畳まれて構成されており、収納部21の高さ方向hの距離が長い構造を有する。また、折れ線部24に対向する封止部22であって、収納部11の側方端部に設けられた封止部22に複数の切り口部23a、23b及び23cが設けられた構造を有する。各切り口部23a、23b及び23cの間隔Iは、例えば、以下のように調整されている。
図11に示すように、第一領域e1の配向方向x1と、収納部21の高さ方向とのなす角を角度θ
1とし、収納部21の幅の長さをWとした場合、切り口部の間隔Iは、下記式(1)で求められる。
I=2W×tanθ
1
このような包装袋20Bを切り口部23aから手で引き裂いて開封した場合、
図12に示すように、切り口部23bの位置まで、第一領域e1及び第二領域e2を連続して開封することができる。また、切り口部23bを手で引き裂くことにより、さらに切り口部23cの位置まで、第一領域e1及び第二領域e2を連続して開封することができる。さらにまた、切り口部23cを手で引き裂くことにより、底部の近傍まで、第一領域e1及び第二領域e2を連続して開封することができる。その結果、包装袋20Bにおいては、段階的に、収納部21の第一領域e1及び第二領域e2を構成する第一フィルム2aをらせん状に取り外して物品を取り出すことができる。
【0069】
以下、第二実施形態に係る包装袋の詳細を説明するが、記載していない事項については、第一実施形態に係る包装袋で説明した事項と同様である。
【0070】
第二実施形態において、第一フィルムの配向方向としては、収納部の高さ方向に対して斜め方向であり、第一実施形態に係る包装袋の第一フィルムと同様の配向方向ととりうる。言い換えると、収納部の高さ方向に対して斜め方向に対する、第一フィルムの配向方向のなす角をθ1とすると、角度θ1は、第一実施形態おける角度θ1と同様としうる。中でも、第二実施形態においては、角度θ1は、例えば、15°以上であることが好ましく、20°以上であることがより好ましく、30°以上であることが特に好ましい。また、角度θは、例えば、75°以下であることが好ましく、60°以下であることがより好ましく、45°以下であることが特に好ましい。第二実施形態に係る角度θ1を前記の範囲とすることにより、包装袋を手で引き裂いたときに、包装袋の開封方向及び開封口の大きさを制御しやすくしうるからである。また、角度θ1が前記下限値以上であることによりフィルムの引き裂き性を良好なものとしうる。また、角度θ1が前記上限値以下であることにより、包装袋の引き裂き後においても、内包される物品を保持しやすく、内包物の破損等を効果的に抑制しうる。
【0071】
包装袋における封止部の位置は、包装袋の形態に応じて適宜選択しうる。例えば、第二実施形態においては、1枚の延伸フィルムで包装袋が構成されることから、例えば、第一フィルムの垂直方向から見た収納部の形状が矩形状である場合、収納部の周囲の3辺に封止部が設けられうる。
【0072】
<3.3.第三実施形態>
本発明の第三実施形態に係る包装袋は、収納部、封止部及び切り口部を備え、収納部において第一フィルムが筒状に配置された構造を有する。
【0073】
第三実施形態によれば、収納部の高さ方向に対して、筒状に配置された第一フィルムの配向方向が斜め方向であることから、例えば、包装袋を切り口部から手で引き裂いたときに、筒状袋の側面に配置された延伸フィルムをらせん状に取り外しうる包装袋とすることができる。
【0074】
第三実施形態に係る包装袋について図を用いて説明する。
図13は、第三実施形態に係る包装袋の一例を模式的に示す斜視図であり、
図14は、
図13の包装袋の開封方向及び開封口を説明する図である。包装袋30は、重合体を含む延伸フィルム3aで構成され、収納部31と、収納部31の端部に設けられ、収納部31を封止する封止部32と、封止部32に設けられた複数の切り口部33a、33b、及び33cとを備える。包装袋30は、収納部31において第一フィルム3aが筒状に配置された構造を有する。具体的には、底部31b及び天部31tを2つの底面とし、側面に第一フィルム3aが配置された構造を有する。包装袋30は、収納部31の底部31b及び天部31tまでの高さ方向hに対して、第一フィルム3aに含まれる重合体の分子の配向方向が斜め方向x1である。
【0075】
このような包装袋30を切り口部33aから手で引き裂いて開封した場合、
図14に示すように、切り口部33bの位置まで、第一フィルム3aを引き裂いて開封することができる。また、切り口部33bを手で引き裂くことにより、さらに切り口部33cの位置まで、第一フィルム3aを引き裂いて開封することができる。さらにまた、切り口部33cを手で引き裂くことにより、底部31bの近傍まで、第一フィルム3aを引き裂いて開封することができる。その結果、包装袋30においては、段階的に、収納部31に筒状に配置された第一フィルム3aをらせん状に取り外して物品を取り出すことができる。
【0076】
以下、第三実施形態に係る包装袋の詳細を説明するが、記載していない事項については、第一実施形態に係る包装袋で説明した事項と同様である。
【0077】
収納部は、通常、その底部及び天部にそれぞれ底面を有し、収納部の側面に、第一フィルムが筒状に配置された構造をとりうる。収納部の底部及び天部の底面の形状は、典型的には円形状であるが、楕円形状、多角形状も含みうる。収納部の底部及び天部は、第一フィルムを構成するフィルムで構成されていてもよく、第一フィルムを構成する延伸フィルムとは、異なるフィルムで構成されていてもよい。
【0078】
第三実施形態においては、例えば、1枚の延伸フィルムの対向する辺同士を熱溶着等により貼り合わせて封止部を設けることで筒状としうる。
【0079】
<4.変形例>
上述した例においては、収納部、封止部及び切り口部を有する例について説明したが、本発明においては、例えば、以下の構成を備える包装袋も含みうる。すなわち、
重合体を含む延伸フィルムで構成され、物品を収納する収納部と、前記収納部の端部に設けられ、前記収納部を封止する封止部と、前記収納部の端部に設けられ収納空間に通じる開口部とを備える包装袋であって、
前記収納部は、前記延伸フィルムとしての第一フィルムを有し、
前記収納部の底部及び天部までの高さ方向に対し、前記第一フィルムに含まれる前記重合体の分子の配向方向が斜め方向である、包装袋。
【0080】
前記の変形例においては、必ずしも、切り口部を有していなくともよいが、通常、開口部から物品を収納した後、開口部を封止し、その後、切り口部が設けられる。
【0081】
開口部の位置は、包装袋の用途に応じて適宜選択しうるが、包装袋の天部または側方に設けられることが好ましい。
【0082】
変形例の包装袋としては、例えば、前述の第一実施形態~第三実施形態に係る包装袋の一部の封止部に代えて、開口部が設けられた形態としうる。
【0083】
変形例について、説明していない事項については、前述の第一実施形態及び第二実施形態に係る包装袋の形態として説明した事項と同様の内容としうる。
【0084】
<5.製造方法>
本発明の一実施形態の包装袋の製造方法は、特に限定されず、既知の包装袋の製造方法により製造しうる。例えば、延伸フィルムを準備し、所望の袋の形状に合わせて、延伸フィルムを重ね合わせ、熱溶着または接着剤等で端部を貼り合わせて封止部を形成し、封止部に切り口部を設ける方法を挙げることができる。
【0085】
包装袋の製造方法に用いられる延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよく、斜め延伸フィルムであってもよい。中でも、斜め延伸フィルムであることが好ましい。斜め延伸フィルムを用いることで、フィルムのロスを少なくすることができるからである。また、斜め延伸フィルムを連続的に加工を行う際に、2種類のフィルムを融着加工するのではなく、一辺を折り曲げて重ねることによって引き裂き角度を表裏で異なる角度に設定できる。そのため、第二実施形態に係る包装袋を製造するに際しては、特に斜め延伸フィルムを用いることが好ましい。
【0086】
また、包装袋の製造方法に用いられる延伸フィルムは、長尺のフィルムであることが好ましい。ここで、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0087】
封止部の形成時における熱溶着の条件等については、延伸フィルムに含まれる重合体の種類に応じて適宜設定しうる。また、本発明の一実施形態に係る包装袋は、既知の包袋加工機を用いて製造しうる。
【0088】
<6.包装袋の用途>
本発明の一実施形態の包装袋は、あらゆる分野の物品の包装として用いることができる。例えば、食品、医薬品、精密部品、日用品等の包装袋としうる。
【実施例0089】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0090】
[製造例1]
ノルボルネン重合体を含む脂環式オレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR」;ガラス転移温度126℃)のペレットを100℃で5時間乾燥し、押出機に供給した。ペレットを押出機内で溶融樹脂温度270℃で溶融させ、溶融樹脂をTダイからキャスティングドラムへシート状に押し出し、冷却して、厚み70μmの延伸前基材フィルムを得た。
【0091】
得られた延伸基材前フィルムを斜め延伸装置に供給し、延伸温度143℃、延伸倍率は1.5倍に設定して斜め方向45°に厚みが47μmとなるように延伸加工を行い、斜め延伸フィルムを得た。
【0092】
[製造例2]
製造例1と同様に作成した延伸基材前フィルムを斜め横延伸装置に供給し、延伸温度143℃、延伸倍率は1.5倍に設定して厚みが47μmとなるように延伸加工を行い、横延伸フィルムを得た。
【0093】
[実施例1]
前述した斜め延伸フィルムを300mm×200mmの大きさとなるように裁断した加工前フィルムを2枚用意した。この時、斜め延伸フィルムの搬送方向を300mmの辺となるように裁断した。
図1(a)及び
図2に示すように、第一フィルムの配向方向と第二フィルムの配向方向が同じになるように、得られた加工前フィルムを重ね合わせた。その後、シール温度220℃、圧力0.3MPa、シール時間1秒の条件で重ね合わせた加工フィルムの4辺に対してヒートシールを行い封止部を設けた。次に、
図1(a)に示すように、収納部の側方端部に設けられた封止部に切り口を設けて包装袋を得た。得られた包装袋を切り口部から手で引き裂くことにより、
図3に示すように、分子の配向方向に沿って包装袋が開封される事を確認した。
【0094】
[実施例2]
前述した斜め延伸フィルムと横延伸フィルムをそれぞれ300mm×200mmの大きさとなるように裁断した加工前フィルムを用意した。この時、各延伸フィルムの搬送方向を300mmの辺となるように裁断した。
図4及び
図5に示すように、第一フィルムの配向方向が包装袋の高さ方向に対して斜め方向となり、第二フィルムの配向方向が包装袋の高さ方向に対して垂直方向となるように、得られた加工前フィルムを重ね合わせた。その後、実施例1と同様の条件で重ね合わせた加工フィルムの4辺に対してヒートシールを行い封止部を設けた。次に、
図4に示すように収納部の側方端部に設けられた封止部に切り口部を設けて、包装袋を得た。得られた包装袋を切り口部から手で引き裂くことにより、
図6に示すように、分子の配向方向に沿って包装袋が開封される事を確認した。