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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025073914
(43)【公開日】2025-05-13
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/31 20060101AFI20250502BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20250502BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20250502BHJP
   A61K 47/18 20170101ALI20250502BHJP
【FI】
A61K8/31
A61K8/41
A61K47/06
A61K47/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023185100
(22)【出願日】2023-10-27
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】堀合 眞知
(72)【発明者】
【氏名】岡 幸歩
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
【Fターム(参考)】
4C076BB31
4C076CC18
4C076DD34A
4C076DD49
4C076FF36
4C083AA082
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC182
4C083AC262
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC482
4C083AC551
4C083AC552
4C083AD132
4C083AD242
4C083AD532
4C083AD662
4C083CC02
4C083EE01
(57)【要約】
【課題】本発明は、ワセリンを50重量%以上含有する外用組成物において、ワセリンの経時的離漿を抑制できる新たな処方を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)50重量%以上のワセリンと、(B)ジフェンヒドラミンとを含有する外用組成物は、ワセリンの経時的離漿を抑制できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)50重量%以上のワセリンと、(B)ジフェンヒドラミンとを含有する外用組成物。
【請求項2】
さらに(C)HLB5.0以下の非イオン性界面活性剤を含む、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
前記(A)成分100重量部に対する前記(B)成分の含有量が、0.1重量部以上である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記(A)成分100重量部に対する前記(C)成分の含有量が、0.2重量部以上である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項5】
前記(A)成分100重量部当たりの液状油の含有量が10重量部以下である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項6】
油中水型乳化組成物である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項7】
非ステロイド製剤である、請求項1に記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、50重量%以上のワセリンを含み、優れた離漿抑制性を有する外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
外用剤に使用される油性基剤の中でも、ワセリンは、低刺激性、皮膚の被覆効果による保護効果又は薬物の皮膚透過性等に優れているため、特に汎用が高い。ワセリンの被覆効果を十分に発現させるには、外用組成物におけるワセリンの配合量を高めることが有効である。一方で、ワセリンは、経時的に離漿が生じることも知られている。ワセリンを含む外用剤に離漿が生じると、外用剤の品質に対する安心感が損なわれる原因となる。
【0003】
ワセリンを含む外用剤の離漿を抑制する方法として、特許文献1に、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーンで液状油をゲル化したペースト状オイル組成物をワセリン等の半固形状の油脂と混合する技術が開示されており、特許文献2に、ワセリンなどの油脂にゴムエラストマーを加熱溶融又は膨潤混和する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-015407号公報
【特許文献2】特開2006-335734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ワセリンの経時的離漿によりもたらされる外用剤の品質に対する安心感の毀損は、ワセリン含有量が50重量%以上となる配合において特に顕著となる。
【0006】
特許文献1の技術では、離漿を抑制するために配合するペースト状オイル組成物を大量に配合することが必要であり、50重量%以上という高濃度でワセリンを配合する処方へ適用することができない。また、特許文献2の技術では、ゴムエラストマーの配合に、加熱溶融又は膨潤混和といった工程が必要となり、製造が煩雑である。
【0007】
そこで、本発明の目的は、ワセリンを50重量%以上含有する外用組成物において、ワセリンの経時的離漿を抑制できる新たな処方を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、予想外なことに、ワセリンを50重量%以上含有する外用組成物にジフェンヒドラミンを配合することによって、ワセリンの経時的離承を抑制できることを見出した。さらに予想外なことに、ワセリンを50重量%以上含有する外用組成物にジフェンヒドラミンとHLB5.0以下の非イオン性界面活性剤とを組み合わせて配合することによって、ワセリンの経時的離承をより一層抑制できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)50重量%以上のワセリンと、(B)ジフェンヒドラミンとを含有する外用組成物。
項2. さらに(C)HLB5.0以下の非イオン性界面活性剤を含む、項1に記載の外用組成物。
項3. 前記(A)成分100重量部に対する前記(B)成分の含有量が、0.1重量部以上である、項1又は2に記載の外用組成物。
項4. 前記(A)成分100重量部に対する前記(C)成分の含有量が、0.2重量部以上である、項1~3のいずれかに記載の外用組成物。
項5. 前記(A)成分100重量部当たりの液状油の含有量が10重量部以下である、項1~4のいずれかに記載の外用組成物。
項6. 油中水型乳化組成物である、項1~5のいずれかに記載の外用組成物。
項7. 非ステロイド製剤である、項1~6のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、ワセリンを50重量%以上含有する外用組成物において、ワセリンの経時的離漿を抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の外用組成物は、(A)50重量%以上のワセリン(以下において、「(A)成分」とも記載する。)と、(B)ジフェンヒドラミン(以下において、「(B)成分」とも記載する。)とを含有することを特徴とする。以下、本開示の外用組成物について詳述する。なお、本明細書において、2つの数値と「~」とにより示される数値範囲は、当該2つの数値を下限値及び上限値として含むものとする。例えば、2~15重量%との表記は、2重量%以上15重量%以下を意味する。
【0012】
(A)ワセリン
本開示の外用組成物は、(A)成分としてワセリンを含む。ワセリンは、炭化水素類の混合物を精製して得られる半固形状の物質であり、化粧品、外用医薬部外品、又は外用医薬品等に配合できるものを特に制限なく用いることができる。ワセリンの種類については、黄色ワセリン及び白色ワセリンのいずれを用いてもよいが好ましくは白色ワセリンが用いられる。
【0013】
白色ワセリンとしては、日本薬局方に適合するものであればよい。本開示の外用組成物で使用できる白色ワセリンとしては、市販品を用いることもでき、例えば、サンホワイトP-150、サンホワイトP-200、サンホワイトS-200(以上、日興リカ社製)、ノムコートW(日清オイリオ社製)、CROLATUM V(クローダジャパン社製)、ペレンスノー、スノーV、ウルティマホワイト、ワセリンベースNo.4(以上、ペンレコ社製)、PROTOPET Super White、SONNECONE DM1、SONNECONE CM、MINERAL GELLY#10、MINERAL GELLY#14、MINERAL GELLY#17、SONOJELL#4、SONOJELL#9(以上Sonneborn社製)等が挙げられる。
【0014】
本開示の外用組成物における(A)成分の含有量は、50重量%以上である。ワセリン含有量が50重量%以上である外用組成物は、ワセリンの経時的離漿によりもたらされる外用剤の品質に対する安心感が特に顕著に損なわれるが、本開示の外用組成物は、ワセリンの経時的離漿の抑制性に優れている。
【0015】
本開示の外用組成物はワセリンの経時的離漿の抑制性に優れているため、(A)成分をより多量に含む場合であっても、効果的に経時的離漿を抑制できる。このような観点から、本開示の外用組成物における(A)成分の含有量の好適な例としては、好ましくは53重量%以上、より好ましくは56重量%以上、さらに好ましくは59重量%以上、一層好ましくは62重量%以上、65重量%以上、68重量%以上、又は71重量%以上が挙げられる。
【0016】
本開示の外用組成物における(A)成分の含有量は、その上限において特に限定されないが、例えば99重量%以下、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは85重量%以下、一層好ましくは80重量%以下、特に好ましくは75重量%以下、70重量%以下、又は65重量%以下が挙げられる。
【0017】
本開示の外用組成物における(A)成分の含有量は、油性基剤の総量((A)成分、後述の固形油、後述の他の半固形油、及び後述の液状油の合計)100重量部に対する含有量として、例えば65~90重量部、好ましくは70~85重量部、72~80重量部、又は74~78重量部が挙げられる。なお、本開示の外用組成物における油性基剤の総量としては、60~95重量%、好ましくは70~90重量%、より好ましくは75~85重量%が挙げられる。
【0018】
(B)ジフェンヒドラミン
本開示の外用組成物は、(B)成分としてジフェンヒドラミンを含有する。50重量%以上の(A)成分を含む外用組成物はワセリンが経時的に離漿するが、当該外用組成物に(B)成分を配合することで、ワセリンの経時的離漿を抑制できる。
【0019】
ジフェンヒドラミンは脂溶性化合物であり、抗ヒスタミン作用を有することが知られている公知の薬剤である。
【0020】
本開示の外用組成物における(B)成分の含有量については特に制限されず、付与すべきワセリンの経時的離漿の抑制効果の程度に応じて適宜設定すればよいが、(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量として、例えば0.1重量部以上が挙げられ、ワセリンの経時的離漿の抑制効果を高める観点から、好ましくは0.25重量部以上、より好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上、一層好ましくは1.2重量部以上、さらに一層好ましくは1.5重量部以上が挙げられる。(A)成分100重量部に対する(B)成分の含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば5重量部以下、好ましくは3重量部以下、より好ましくは2.5重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下又は1.7重量部以下が挙げられる。
【0021】
本開示の外用組成物における(B)成分の具体的な含有量については、上記の(A)成分の含有量と(B)成分の含有比率とに応じて定まるが、例えば0.1重量%以上が挙げられ、ワセリンの経時的離漿の抑制効果を高める観点から、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、一層好ましくは0.7重量%以上、さらに一層好ましくは0.9重量%以上が挙げられる。本開示の外用組成物における(B)成分の具体的な含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2.5重量%以下、さらに好ましくは2重量%以下、一層好ましくは1.7重量%以下、1.5重量%以下、又は1.3重量%以下が挙げられる。
【0022】
(C)所定の非イオン性界面活性剤
本開示の外用組成物は、(C)成分としてHLB5.0以下の非イオン性界面活性剤を更に含むことができる。50重量%以上の(A)成分と(B)成分とを含む外用組成物に(C)成分がさらに配合することにより、ワセリンの経時的離漿をより一層抑制することができる。
【0023】
HLB(親水性-親油性バランス;Hydrophile-Lypophile Balance)値は、一般に非イオン性界面活性剤の水及び油への親和性を示す値であり、「ハンドブック -化粧品・製剤原料- 改定版」、日光ケミカルズ株式会社、昭和52年2月1日改訂版発行、854-855頁に記載の乳化法によるHLB値の実測に準拠した測定法により求める。具体的には、(C)成分と、乳化剤の標準物質としてのモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(NIKKOL TS-10、HLB14.9)とを組み合わせ、これらの2種の乳化剤の全量を一定にし、割合のみを変えて被乳化物である流動パラフィン(HLB10.1)を乳化し、一昼夜放置後、クリーミング量、白濁度、下層の水分離などから安定性のあるところの最適な乳化剤の割合を求め、前記(C)成分のHLB値xを下記式(1)により算出する。
y=(x×使用量(質量%)+z×使用量(質量%))/100・・・式(1)
前記式(1)において、xは(C)成分のHLB値を表し、yは流動パラフィンのHLB値を表し、zはモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(NIKKOL TS-10)のHLB値を示す。なお、前記流動パラフィンのHLB値は、モノステアリン酸ソルビタン(NIKKOL SS-10、HLB4.7)と、モノステアリン酸POEソルビタン(NIKKOL TS-10、HLB14.9)との組合せにより、同様の方法で求めることができる。
【0024】
(C)成分のHLBは、5.0以下であることを限度として特に限定されないが、好ましく4.6以下、より好ましくは4.2以下が挙げられる。(C)成分のHLBは、その下限において特に限定されないが、例えば1.5以上、好ましくは2以上、より好ましくは3以上、さらに好ましくは3.5以上が挙げられる。
【0025】
本開示の外用組成物において用いられる(C)成分としては、例えばグリセリン脂肪酸エステル及び/又はソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。
【0026】
HLB5.0以下のグリセリン脂肪酸エステルは、モノグリセリン脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルを包含する。HLB5.0以下のグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ミリスチン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン等が挙げられる。HLB5.0以下のポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、ポリグリセリンステアリン酸エステル(例えば、デカステアリン酸デカグリセリン、ペンタステアリン酸ヘキサグリセリン、トリステアリン酸テトラグリセリン、ペンタステアリン酸デカグリセリン、ペンタステアリン酸テトラグリセリン、ヘキサステアリン酸ペンタグリセリン、モノステアリン酸ジグリセリン、ジステアリン酸ジグリセリン、トリステアリン酸ヘキサグリセリン等)、ポリグリセリンオレイン酸エステル(例えば、デカオレイン酸デカグリセリン、ペンタオレイン酸デカグリセリン、ペンタオレイン酸ヘキサグリセリン、ペンタオレイン酸テトラグリセリン等)、ポリグリセリンベヘン酸エステル(例えば、ヘプタベヘン酸デカグリセリン、ドデカベヘン酸デカグリセリン、テトラベヘン酸ヘキサグリセリン等)、ポリグリセリンエルカ酸エステル(例えば、オクタエルカ酸デカグリセリン等)が挙げられる。
【0027】
HLB5.0以下のソルビタン脂肪酸エステルとしては、モノステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0028】
上記のHLB5.0以下の非イオン性界面活性剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本開示の外用組成物における(C)成分の含有量については特に制限されず、付与すべきワセリンの経時的離漿の抑制効果の程度に応じて適宜設定すればよいが、(A)成分100重量部に対する(C)成分の含有量として、例えば0.2重量部以上が挙げられ、ワセリンの経時的離漿の抑制効果を高める観点から、好ましくは1重量部以上、より好ましくは1.5重量部以上、さらに好ましくは2重量部以上、一層好ましくは2.5重量部以上、2.8重量部以上又は3重量部以上が挙げられる。(A)成分100重量部に対する(C)成分の含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば10重量部以下、好ましくは6重量部以下、より好ましくは5重量部以下、さらに好ましくは4重量部以下又は3.5重量部以下が挙げられる。
【0030】
本開示の外用組成物における(C)成分の具体的な含有量については、上記の(A)成分の含有量と(C)成分の含有比率とに応じて定まるが、例えば0.2重量%以上が挙げられ、ワセリンの経時的離漿の抑制効果を高める観点から、好ましくは0.6重量%以上、より好ましくは1重量%以上、さらに好ましくは1.4重量%以上、一層好ましくは1.8重量%以上が挙げられる。本開示の外用組成物における(C)成分の具体的な含有量は、その上限においても特に限定されないが、例えば10重量%以下、好ましくは6重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは4重量%以下、一層好ましくは3.5重量%以下、3重量%以下、又は2.5重量%以下が挙げられる。
【0031】
本開示の外用組成物における(B)成分と(C)成分との比率については、(B)成分及び(C)成分の各含有量に応じて定まるが、(B)成分1重量部に対する(C)成分の含有量として、例えば0.1~10重量部、好ましくは0.5~5重量部、より好ましくは0.8~3.2重量部、さらに好ましくは1.2~2.8重量部、一層好ましくは1.5~2.5重量部、特に好ましくは1.8~2.2重量部が挙げられる。
【0032】
他の油性基剤
本開示の外用組成物は、上記(A)成分以外の他の油性基剤を含むことができる。他の油性基剤には、固形油、(A)成分以外の他の半固形油、及び液状油が包含される。他の油性基剤としては、固形油、(A)成分以外の他の半固形油、及び液状油のうちいずれか1種を用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
固形油は、25℃で固体の油である。本開示の外用組成物で使用される固形油としては、化粧品、外用医薬部外品、又は外用医薬品等に用いられるものであればよく、例えば固体油脂、ロウ類、合成エステルワックス、固形炭化水素油、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーンワックス等が挙げられる。固体油脂としては、カカオ脂、ラノリン、オゾケライト、水素添加ホホバ油、硬化ヒマシ油等が挙げられる。固形ロウ類としては、キャンデリラロウ、コメヌカロウ、ミツロウ、サラシミツロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、セラックロウ、モクロウ、ホホバロウ等が挙げられる。合成エステルワックスとしては、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸セチル、ステアリン酸ステアリル、ステアリン酸セチル、パルミチン酸セチル、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、パルミチン酸デキストリン、ステアリン酸イヌリン等が挙げられる。固形炭化水素油としては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、セレシンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。高級アルコールとしては、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸等が挙げられる。これらの固形油は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの固形油の中でも、好ましくは、固形ロウ類(より好ましくはサラシミツロウ)、及び固形炭化水素油(より好ましくはマイクロクリスタリンワックス)が挙げられる。
【0034】
本開示の外用組成物が固形油を含む場合、固形油の含有量としては、(A)成分100重量部に対して、例えば1~45重量部、好ましくは5~35重量部、より好ましくは10~30重量部、さらに好ましくは13~27重量部、一層好ましくは15~25重量部が挙げられる。
【0035】
本開示の外用組成物が固形油を含む場合、固形油の具体的な含有量としては、例えば3~30重量%、好ましくは5~25重量%、より好ましくは10~20重量%、さらに好ましくは13~18重量%が挙げられる。
【0036】
他の半固形油は、25℃で半固形状(応力に対して非可逆的に変形するが、流動性を有しない性状)の油である。本開示の外用組成物で使用される他の半固形油としては、化粧品、外用医薬部外品、又は外用医薬品等に用いられるものであればよく、例えば半固形炭化水素油、半固形ロウ類が挙げられる。半固形炭化水素油としては、ゲル化炭化水素等が挙げられる。半固形ロウ類としては、ラノリン、精製ラノリン等が挙げられる。これらの他の半固形油は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの他の半固形油の中でも、好ましくは、半固形炭化水素油(より好ましくはゲル化炭化水素)が挙げられる。
【0037】
本開示の外用組成物が半固形油を含む場合、半固形油の含有量としては、(A)成分100重量部に対して、例えば1~15重量部、好ましくは2~13重量部、より好ましくは4~11重量部、さらに層好ましくは6~9重量部が挙げられる。
【0038】
本開示の外用組成物が半固形油を含む場合、半固形油の具体的な含有量としては、例えば1~13重量%、好ましくは2~10重量%、より好ましくは3~8重量%、さらに好ましくは4~6重量%が挙げられる。
【0039】
液状油は、25℃で液状の油である。本開示の外用組成物で使用される液状油としては、化粧品、外用医薬部外品、又は外用医薬品等に用いられるものであればよく、例えば植物油、脂肪酸、エステル油、液状シリコーン油、液状炭化水素油等が挙げられる。植物油としては、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ホホバ油等が挙げられる。脂肪酸としては、オレイン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。エステル油としては、エチルヘキサン酸セチル、パルミチン酸エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ2-エチルへキサン酸グリセリル、オレイン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジバラメトキシケイヒ酸-モノエチルへキサン酸グリセリル等が挙げられる。液状シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。液状炭化水素油としては、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン等が挙げられる。これらの液状油は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの液状油の中でも、好ましくは、脂肪酸(より好ましくはイソステアリン酸)、及び液状炭化水素油(より好ましくは流動パラフィン)が挙げられる。
【0040】
本開示の外用組成物における液状油の含有量としては、(A)成分100重量部に対して、例えば10重量部以下(つまり、0~10重量部)が挙げられ、離漿抑制性を高める観点から、好ましくは9重量部以下、より好ましくは8重量部以下、さらに好ましくは7重量部以下が挙げられる。本開示の外用組成物は離漿抑制性に優れるため、液状油を含んでいても効果的に離漿を抑制できる。このような観点から、本開示の外用組成物における液状油の含有量の好適な例としては、(A)成分100重量部に対して、好ましくは2~10重量部、好ましくは4~10重量部、より好ましくは5~10重量部が挙げられる。
【0041】
本開示の外用組成物における液状油の具体的な含有量としては、例えば8重量%以下(つまり、0~8重量%)が挙げられ、離漿抑制性を高める観点から、好ましくは7重量%以下、より好ましくは6.5重量%以下、さらに好ましくは5.5重量%以下が挙げられる。本開示の外用組成物は離漿抑制性に優れるため、液状油を含んでいても効果的に離漿を抑制できる。このような観点から、本開示の外用組成物における液状油の含有量の好適な例としては、好ましくは1~8重量%、好ましくは2~8重量%、より好ましくは3~8重量%、が挙げられる。
【0042】
油性ゲル化剤
本開示の外用組成物は、さらに油性ゲル化剤(油溶性の増粘剤)を含むことができる。油性ゲル化剤としては、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトールのベンジリデン誘導体等が挙げられる。デキストリン脂肪酸エステルとしては、パルミチン酸デキストリン、オレイン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリンパルミチン酸デキストリン、(パルミチン酸/エチルヘキサン酸)デキストリン等が挙げられる。ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖の8個の水酸基のうち3個以下が高級脂肪酸でエステル化され、高級脂肪酸がステアリン酸及び/又はパルミチン酸であるショ糖脂肪酸エステルが挙げられ、ソルビトールのベンジリデン誘導体としては、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等が挙げられる。これらの油性ゲル化剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの油性ゲル化剤の中でも、好ましくは、デキストリン脂肪酸エステルが挙げられ、より好ましくはパルミチン酸デキストリンが挙げられる。
【0043】
本開示の外用組成物が油性ゲル化剤を含む場合、その含有量については特に限定されないが、油性基剤の総量((A)成分、固形油、他の半固形油、及び液状油の合計)100重量部当たり、例えば0.1~3重量部、好ましくは0.3~2重量部、より好ましくは0.6~1.5重量部、さらに好ましくは0.8~1.2重量部が挙げられる。
【0044】
その他の成分
本開示の外用組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分以外に、必要に応じて、他の添加剤を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。このような含有の有無を問わない添加剤としては、例えば、水、炭素数1~5の1価低級アルコール、多価アルコール(2価アルコール、3価アルコール等)、(C)成分以外の他の界面活性剤(アニオン性界面活性剤、(C)成分以外の非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、好ましくは、(C)成分以外の非イオン性界面活性剤が挙げられる。)、多価アルコール、水性増粘剤、pH調節剤、緩衝剤、可溶化剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、香料、着色料等が挙げられる。これらの他の添加剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本開示の外用組成物においてこれらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する添加剤の種類及び外用組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよい。
【0045】
本開示の外用組成物が水を含む場合、水の含有量としては、例えば0.5~10重量%、好ましくは1~6重量%、より好ましくは2~4重量%が挙げられる。本開示の外用組成物が他の界面活性剤を含む場合、他の界面活性剤の含有量としては、例えば0.2~10重量%、好ましくは0.6~6重量%、より好ましくは1~3重量%が挙げられる。
【0046】
本開示の外用組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分以外に、必要に応じて、他の薬効成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。このような含有の有無を問わない薬効成分としては、例えば、(B)成分以外の抗ヒスタミン剤、抗炎症剤(アラントイン、グリチルレチン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインジヒドロキシアルミニウム、アズレン、グアイアズレン、及びこれらの塩、その他の非ステロイド性抗炎症薬、及びステロイド性抗炎症薬)、局所麻酔剤(リドカイン、メピバカイン、ブピバカイン等)、老化防止剤、収斂剤、抗酸化剤、保湿剤(ヘパリン類似物質、ヒアルロン酸、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体(ポリクオタニウム-51))、血行促進剤、抗菌剤、殺菌剤(イソプロピルメチルフェノール等)、冷感剤、温感剤、ビタミン類(ビタミンA、B、C、E等)、アミノ酸、創傷治癒促進剤、刺激緩和剤、鎮痛剤、細胞賦活剤、酵素成分、生薬成分等が挙げられる。これらの他の薬効成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、本開示の外用組成物においてこれらの薬効成分を含有させる場合、その含有量については、使用する薬効成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。好ましくは、本開示の外用組成物は、ステロイド性抗炎症薬を含まない非ステロイド製剤である。
【0047】
製剤形態
本発明の外用組成物の製剤形態については特に制限されず、例えば、軟膏剤、クリーム剤(具体的には油中水型乳化組成物)、ゲル剤が挙げられる。
【0048】
本発明の外用組成物の製品分類としては、医薬品、医薬部外品、化粧品のいずれであってもよいが、好ましくは、医薬品、医薬部外品が挙げられる。
【実施例0049】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
試験例1
表1に示す外用組成物を調製した。具体的には、油性成分(I)からなる油相及び水性成分(III)からなる水相を80℃で加熱混合して調製した。得られた外用組成物を、遠心分離器を用い、回転速度4000rpm、温度40℃、4時間の条件で遠心に供した。その後に生じるワセリンの離漿について、専門パネリスト3名により、外用組成物の品質に対する安心感の度合いを、「4点:安心感がある、3点:どちらかといえば安心できる、2点:どちらかといえば安心感は損なわれる、1点:安心感は損なわれる」の4段階の評点により評価した。
【0051】
【表1】
【0052】
参考例1の外用組成物については、1点の評点を付けたパネリストは0人であったが、参考例2の外用組成物については、全員が1点の評点を付けた。つまり、ワセリンの経時的離漿によりもたらされる外用剤の品質に対する安心感の毀損は、ワセリン含有量が50重量%以上となる配合において顕著であった。
【0053】
試験例2
表2及び3に示す外用組成物を調製した。具体的には、油性成分(I)及び界面活性剤(II)からなる油相と、水性成分(III)からなる水相とを、それぞれ80℃で加熱混合した後、油相へ水相を徐添しながら混合することで各外用組成物を調製した。なお、以下の表において、「ポリクオタニウム-51含有液」は、リピジュア(R)-PMB(日油株式会社)であり、ポリクオタニウム-51を5重量%含み、残部が水である。得られた各外用組成物10mLを15mL容量の遠沈管に入れ、遠心分離器を用い、回転速度4000rpm、温度40℃、4時間の条件で遠心に供した。その後に生じるワセリンの離漿の量について、表2については、比較例1による離漿量(遠沈管中で生じるワセリン離漿相の高さの相対値で表す)を5とした場合の各実施例及び比較例の離漿量を導出し、表3については、比較例4による離漿量を5とした場合の実施例8の離漿量を導出した。離漿量が小さいほど、離漿抑制性が高いことを示す。
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
比較例1~4と実施例1~8との対比に示される通り、(A)成分を50重量%以上含有する外用組成物に(B)成分を配合することによって、離漿量が抑制された。また、実施例1~4と実施例5~7との対比に示される通り、さらに(C)成分であるHLB5.0以下の非イオン性界面活性剤を配合することで、離漿量がより顕著に抑制された。比較例3に示すように(C)成分が単独で(A)成分の離漿を抑制できないことに鑑みると、実施例5~7、及び実施例8による離漿量の顕著な抑制は、(B)成分と(C)成分とが組み合わせられたことによる特有の効果であることが分かった。
【0057】
試験例3
表4に示す外用組成物を調製した。具体的には、油性成分(I)及び界面活性剤(II)からなる油相と、水性成分(III)からなる水相とをそれぞれ80℃で加熱混合した後、油相へ水相を徐添しながら混合することで各外用組成物を調製した。得られた外用組成物について、試験例2と同様の条件で遠心に供し、離漿量を確認した。処方例1~3については、処方例1の(B)成分のみを欠く配合変更を行った処方の外用組成物による離漿量を5とした場合の各処方例の離漿量を確認し、処方例4~11については、試験例2の比較例1の外用組成物による離漿量(比較例2の外用組成物による離漿量と同じであった。)を5とした場合の各処方例の離漿量を確認した。その結果、処方例1~11はいずれも離漿量が抑制され、さらに、処方例1~3の対比において、処方例1よりも処方例2,3の方がより顕著に離漿量が抑制された。
【0058】
【表4】