(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007431
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】熱可塑性バイオプラスチックの成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 25/04 20060101AFI20250109BHJP
C08L 1/08 20060101ALI20250109BHJP
C08L 3/04 20060101ALI20250109BHJP
C08L 5/00 20060101ALI20250109BHJP
C08L 101/16 20060101ALI20250109BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
C08L25/04
C08L1/08 ZBP
C08L3/04
C08L5/00
C08L101/16
C08J5/18 CEP
C08J5/18 CET
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108820
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】510043560
【氏名又は名称】株式会社ヘミセルロース
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】茄子川 仁
(72)【発明者】
【氏名】加茂 陽子
(72)【発明者】
【氏名】安藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】内田 慶一
(72)【発明者】
【氏名】大屋 哲
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F071AA09
4F071AA22
4F071AA78
4F071AA81
4F071AA82
4F071AA88
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4F071BC01
4F071BC04
4F071BC12
4J002AB02X
4J002AB03X
4J002AB04X
4J002AB05X
4J002BC03W
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4J002GG00
4J200AA04
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4J200BA36
4J200BA37
4J200BA38
4J200DA17
4J200EA21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、植物に由来する特定な化合物とスチレン系樹脂と含む熱可塑性バイオプラスチックを用い、様々な成形方法で得られる多様な成形品を提供する。
【解決手段】本発明の成形品は、熱可塑性バイオプラスチックの成形品である。前記熱可塑性バイオプラスチックが、一般式(1)に表す化合物(A)と、スチレン系樹脂と、を含む。前記化合物(A)と前記スチレン系樹脂との総量に対して、前記化合物(A)の含有量が0.1~70質量%である。
(式中、R
3は、構造式:R
6-O-で表される置換基、R
4は水素もしくは構造式:R
7-O-CH
2-で表される置換基、R
1、R
2、R
5、R
6、R
7は、それぞれ独立してベンゼン環を含む置換基である。また、nは1~7の整数である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性バイオプラスチックの成形品であって、
前記熱可塑性バイオプラスチックが、一般式(1)に表す化合物(A)と、スチレン系樹脂と、を含み、
前記化合物(A)と前記スチレン系樹脂との総量に対して、前記化合物(A)の含有量が0.1~70質量%である、成形品。
【化1】
(式中、R
1はベンゼン環を含む置換基、R
2はベンゼン環を含む置換基、R
3は、構造式:R
6-O-で表される置換基、R
4は水素もしくは構造式:R
7-O-CH
2-で表される置換基、R
5はベンゼン環を含む置換基、R
6はベンゼン環を含む置換基、R
7はベンゼン環を含む置換基である。また、nは1~7の整数である。)
【請求項2】
前記化合物(A)の分子量が9000以下である、請求項1に記載の成形品。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R1、R2、R3、及びR5は、それぞれ独立して、ベンジル基又はベンゾイル基であり、R4は水素である、請求項1又は2に記載の成形品。
【請求項4】
シート状成形品である、請求項1又は2に記載の成形品。
【請求項5】
前記熱可塑性バイオプラスチックを二軸延伸したシート状成形品である、請求項4に記載の成形品。
【請求項6】
厚さが0.5~6.0mmであり、かさ密度が0.02~0.25g/cm3である発泡シートである、請求項4に記載の成形品。
【請求項7】
前記発泡シートを熱成形法によって成形してなるものである、請求項6に記載の成形品。
【請求項8】
容器である、請求項1又は2に記載の成形品。
【請求項9】
食品包装用途である、請求項1又は2に記載の成形品。
【請求項10】
前記一般式(1)に表す化合物(A)と、前記スチレン系樹脂を溶融混練して成形する工程を含む、請求項1又は2に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性バイオプラスチックの成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、広く利用されている熱可塑性プラスチックの成形品は、廃棄されると自然界中で分解することが難しく、通常、分解には200~400年が必要とされる。また焼却処分する場合には、ダイオキシンなどの有毒ガスを発生し、大気や土壌汚染の原因ともなっている。これに対し、自然界中で生物により分解可能(生分解性)である、従来の熱可塑性プラスチックの成形品に代わる成形品が切望されている。
プラスチックは一般に熱を加えると塑性する熱可塑性と熱を加えると硬化する熱硬化性とに二分される。そしてバイオプラスチックは、原料が植物、微生物もしくは動物に由来するプラスチック又は生分解性のプラスチックに対する総称である。
【0003】
植物、微生物もしくは動物に由来するプラスチックの場合、物理的性質及び/又は化学的性質が十分ではない。このため特許文献1は、植物に由来する樹脂に非バイオプラスチックを混ぜ込んで本実施形態のバイオプラスチックとして、生分解性の熱可塑性バイオプラスチックを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1において、植物に由来する樹脂としてヘミセルロース誘導体(重量平均分子量Mw:100,000)を用い、非バイオプラスチックとしてPMMA、PC、PE、PP、またはPETを用いて調製した本実施形態のバイオプラスチックの射出成形品が開示されていたが、植物に由来する樹脂として重量平均分子量が9,000以下である化合物と、非バイオプラスチックとしてスチレン系樹脂と、を含む熱可塑性バイオプラスチックを用いた成形品に関する開示がない。また、射出成形方法以外の成形方法を用いた成形品について、開示がない。
本発明は、植物に由来する特定な化合物とスチレン系樹脂と含む熱可塑性バイオプラスチックを用い、様々な加工方法で得られる多様な成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの課題を解決するべく、本発明者は、植物に由来する特定な化合物とスチレン系樹脂とを含むバイオプラスチックを用いて、様々な成形方法で得られる多様な成形品を提供する。その実施態様は以下である。
[1] 熱可塑性バイオプラスチックの成形品であって、
前記熱可塑性バイオプラスチックが、一般式(1)に表す化合物(A)と、スチレン系樹脂と、を含み、
前記化合物(A)と前記スチレン系樹脂との総量に対して、前化合物(A)の含有量が0.1~70質量%である、成形品。
【化1】
(式中、R
1はベンゼン環を含む置換基、R
2はベンゼン環を含む置換基、R
3は、構造式:R
6-O-で表される置換基、R
4は水素もしくは構造式:R
7-O-CH
2-で表される置換基、R
5はベンゼン環を含む置換基、R
6はベンゼン環を含む置換基、R
7はベンゼン環を含む置換基である。また、nは1~7の整数である。)
[2] 前記化合物(A)の分子量が9000以下である、[1]に記載の成形品。
[3] 前記一般式(1)において、R
1、R
2、R
3、及びR
5は、それぞれ独立して、ベンジル基又はベンゾイル基であり、R
4は水素である、[1]又は[2]に記載の成形品。
[4] シート状成形品である、[1]~[3]の何れかに記載の成形品。
[5] 前記熱可塑性バイオプラスチックを二軸延伸したシート状成形品である、[4]に記載の成形品。
[6] 厚さが0.5~6.0mmであり、かさ密度が0.02~0.25g/cm
3である発泡シートである、[4]又は[5]に記載の成形品。
[7] 前記発泡シートを熱成形法によって成形してなるものである、[6]に記載の成形品。
[8] 容器である、[1]~[7]の何れかに記載の成形品。
[9] 食品包装用途である、[1]~[8]の何れかに記載の成形品。
[10] 前記一般式(1)に表す化合物(A)と、前記スチレン系樹脂を溶融混練して成形する工程を含む、[1]~[9]の何れかに記載の成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、植物に由来する特定な化合物とスチレン系樹脂と含む熱可塑性バイオプラスチックを用い、様々な成形方法で得られる多様な成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態の熱可塑性バイオプラスチックの成形品(以後、「本実施形態の成形品」ということがある)は、一般式(1)に表す化合物(A)とスチレン系樹脂とを含む熱可塑性バイオプラスチックを用いて作製する成形品である。本発明に使用されるスチレン系樹脂は、GPCにより求められる重量平均分子量は、100,000~500,000の範囲であることが好ましく、250,000~350,000であることがより好ましい。
スチレン系樹脂は、単独のものであっても、複数の共重合体の混合物であってもよい。混合物の場合は、その混合物としての分子量が前述の範囲のものであることが好ましい。また、混合物の場合は、スチレン系モノマーとメタクリル酸やブチルアクリレート等の(メタ)アクリル系単量類等を共重合させることができる。さらに、スチレン系樹脂は、ブタジエンゴム等との共重合させたゴム強化スチレン系樹脂も使用することができる。
【0009】
前記化合物(A)と前記スチレン系樹脂との総量100質量%に対して、前記化合物(A)の含有量が0.1~70質量%である。
前記化合物(A)の含有量は、スチレン系樹脂100質量%に対して、0.1~70質量%であることが好ましく、1~50質量%がなお好ましく、3~25質量%であることが更に好ましい。
【0010】
また、前記熱可塑性バイオプラスチックの成形品において、前記化合物(A)の含有量が0.1~70質量%である。化合物(A)が0.1質量%より低いと、バイオマス度(植物度)が低くなり「バイオプラスチック」と呼び難くなり、逆に70重量%以上であるとバイオプラスチックの諸物性(特に機械的物性)がポリスチレンより劣ることになるので好ましくない。前記化合物(A)の含有量は、スチレン系樹脂100質量%に対して、1~50質量%であることが好ましく、3~25質量%であることがより好ましい。
【0011】
【0012】
前記式(1)において、R1はベンゼン環を含む置換基、R2はベンゼン環を含む置換基、R3は、構造式:R6-O-で表される置換基、R4は水素もしくは構造式:R7-O-CH2-で表される置換基、R5はベンゼン環を含む置換基、R6はベンゼン環を含む置換基、R7はベンゼン環を含む置換基である。また、nは1~7の整数である。
【0013】
(熱可塑性バイオプラスチック)
本実施形態の成形品に用いる熱可塑性バイオプラスチック(「本実施形態にかかるバイオプラスチック」ということがある)は、上記一般式(1)に表す化合物(A)とスチレン系樹脂とを含む。
【0014】
[化合物(A)]
本実施形態にかかるバイオプラスチックに含まれる、上記一般式(1)に表す化合物(A)(「化合物(A)」とも言う)の分子量は、9000以下であっても良く、7000以下であってもよく、5000以下であっても良く、4000以下であっても良く、2000以下であっても良い。この範囲であると、スチレン系樹脂と混合した際に極度の高粘度となりにくく、成形に必要な溶融粘度を保ちやすいため好ましい。また化合物(A)の分子量は、400以上が好ましく、500以上がより好ましい。
化合物(A)において、R1はベンゼン環を含む置換基である。R2はベンゼン環を含む置換基である。R3は構造式:R6-O-で表される置換基である。R4は水素もしくは構造式:R7-O-CH2-で表される置換基である。R5はベンゼン環を含む置換基である。R6はベンゼン環を含む置換基である、R7はベンゼン環を含む置換基である。
【0015】
また、nは1~7の整数であり、1~5の整数であっても良い。なお、一般式(1)に表す化合物(A)が複数ある場合には、異なる整数の化合物を混合して使用しても良い。一般式(1)に表す化合物(A)の混合物の場合は平均化して整数ではなく小数となる。例えば、n=1の化合物とn=2の化合物とを等量混合したものは、(1+2)/2=1.5と考えることができる。
なお、例えば、n=2の構造式は、以下式(2)に表す化合物(以後、「化合物(2)」ともいう)の通りである。
【0016】
【0017】
式(1)及び式(2)において、R1、R2、R5、R6及びR7は、同一でも異なっていても良い。ベンゼン環を含む置換基は、例えば、フェニル基、ベンジル基、パラ-メトキシフェニルベンジル基、ベンゾイル基、インダニル基、スチリル基、アニリノ基、トリチル基、置換基としてフェニル基を有するアルキル基、更にこれらのベンゼン環上の水素原子がアルキル基やハロゲン原子などで懺換されているものなどが挙げられる。これらの中でも、ベンジル基及びベンゾイル基が好ましい。特にベンズアルデヒドや安息香酸を使った場合に置換しやすい点、一般式(1)に表す化合物(A)同士がカルボニル基を介して互いに結合しやすく強度や耐熱性が向上する点から、ベンゾイル基が好ましい。ベンゾイル基は下記構造式(3)を有する。ベンゾイル基の分子量は105である。
【0018】
【0019】
R1、R2、R5、R6及びR7が全てベンゾイル基である樹脂式(1)は、ベンゾイル基を「Bz」で表すと、n=1の場合、下記構造式(4)又は下記構造式(5)で表される(それぞれ、「化合物(4)」、「化合物(5)」とも言う)。化合物(4)の場合には分子量は566である。化合物(5)の場合には分子量は668である。
【0020】
【0021】
【0022】
なお、これまでの説明では、上記化合物(A)、化合物(2)、化合物(4)及び化合物(5)の立体異性体については説明されていない。ここで本発明者は立体異性体について説明する。既に知られている通り、環状構造を取ることで発生する立体異性体にα型、β型があり、自然界ではα型、β型の両方が存在する。強いて言うと、α型は糊状もしくは粘着質ゲル状であることが多く、スチレン系樹脂との混錬がやや難しく使い勝手が悪い。一方、β型は粉体になり易く、粉体はスチレン系樹脂との混練がし易いので使い勝手が良い。しかしながら、α型をβ型に混ぜれば、それらの混合物は粉体になり易いので、α型も使い勝手が良くなる。なお、一般式(1)に表す化合物(A)を製造する原料としては、α型とβ型とが混ざった状態の市販品があるので、それを利用してもよい。
【0023】
また鏡像関係にある立体異性体(光学異性体)をD体、L体と呼ぶことがある。自然界にはD体だけが存在し、L体は化学反応により人工的に得られる。本実施形態の一般式(1)に表す化合物(A)は、実施例で説明するトウモロコシの芯等の植物由来、生分解性を特徴の一つとしているので、D体である。このため、化合物(A)の原料としては、/β-D-キシロース系、β-D-グルコースが好ましく、またα-D-キシロース系、α-D-グルコース系も使用することができる。即ち、β-D-キシロース系とα-D-キシロース系を混合したもの、β-D-グルコース系とα-D-グルコース系を混合したものを使用することも可能である。また人工的に得られたL体を使ったβ-L-キシロース系を使用しても良い。
【0024】
<化合物(A)の製造方法>
本実施形態にかかる上記化合物(A)は、植物由来の原料から製造することができ、大きく分けて2つに分類される。一つは、下記構造式(6)の繰り返し単位(以下、キシロース(n=1)と呼ぶことがある)をもつヘミセルロース(nは2以上)の一種である。nは1~7の整数である。
【0025】
【0026】
ヘミセルロースとは、植物中に約20~50%程度存在する多糖類の総称である。ヘミセルロースは、植物例えば樹木又は木材、穀物、草類、シダ、裸子植物など植物の細胞壁
構成成分である。ヘミセルロースを多量に含んでいる植物としては、広葉樹、トウモロコシの芯、竹、綿実の殻などがある。それらの植物から常法により抽出・分離することにより式(6)のヘミセルロースを得ることができる。ヘミセルロースは生分解性が良好である。ヘミセルロースはセルロース及びリグニンよりも生分解速度が早く、また、低温(例えば5℃)から高温まで生分解性が良好である。常温においてもヘミセルロースは微生物により分解されて3ヶ月後には水と炭酸ガスになる。土の中に埋められた場合、ヘミセルロースは土壌中の微生物によって分解される。海水中においてもヘミセルロースは微生物
によって分解される。ヘミセルロースは環境に調和した材料である。
【0027】
もう一つは、下記構造式(7)の繰り返し単位(以下、グルコース(n=1)と呼ぶことがある)をもつセルロース(nは2以上)又はデンプン(nは2以上)の一種である。nは1~7の整数である。
【0028】
【0029】
セルロース又はデンプンは、植物例えば樹木又は木材、トウモロコシ、サトウキビ、穀物、草類、シダ、裸子植物、果物など植物の細胞及び細胞壁の主要構成成分である。それらの植物から常法により抽出・分離することにより式(7)のセルロース又はデンプンを得ることができる。
【0030】
式(6)又は式(7)であって繰り返し数nが所定のものが用意できたならば、その水酸基(-OH)を例えば塩化ベンゾイル、ベンズアルデヒド又は安息香酸などと反応させベンゾイル基に置換する(ベンゾイル化する)。この反応は容易に進行し、これにより容易に化合物(A)が得られる。
【0031】
塩化ベンゾイルは、一般にベンズアルデヒド又は安息香酸から製造される。ベンズアルデヒドは、代表的な芳香族アルデヒドで、苦扁桃油(へんとうゆ)とも呼ばれる。モモ又はアンズの芯(しん)の精油の主成分として植物界に分布し、ネロリ油など一部の精油中に含まれている。サトウキビ、トウモロコシ又は一部の樹木にも含まれている。このベンズアルデヒドと塩素とを常法により反応させると塩化ベンゾイルが得られる。同様に安息香酸も植物由来成分であり、安息香酸と塩素化合物との常法による反応によって塩化ベン
ゾイルが得られる。
【0032】
R1、R2、R5、R6及びR7が全てベンゾイル基である化合物(4)又は化合物(5)は、植物由来と言うことができる。特に詳述しないが、水酸基(-OH)をクロロベンゼンなどと反応させ水素をフェニル基に置換したり、塩化ベンジルなどと反応させ水素をベンジル基に置換したりすることもできる。
【0033】
[スチレン系樹脂]
本実施形態にかかるバイオプラスチックに含まれるスチレン系樹脂は、熱可塑性プラスチックである。
本発明において、スチレン系樹脂とは、市場に流通するスチレン系樹脂全般を指す。具体的には、不要となったスチレン系樹脂製品や使用済みスチレン系樹脂製品(廃棄スチレン系樹脂、廃スチレン系樹脂と称する場合がある)である。
スチレン系樹脂に使用されるスチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。また、前記スチレンと共重合可能なコモノマーを、スチレンと共重合することにより得られる共重合体であってもよい。スチレンと共重合可能なコモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類や、α-メチルスチレン、o-,m-,p-メチルスチレン等のスチレン以外の芳香族ビニル単量体類や、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪酸類や、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジ脂肪酸無水物類、あるいは、N-フェニルマレイミド等の不飽和ジ脂肪酸イミド類等があげられる。これらのコモノマーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されていることが多い。
前記スチレン系樹脂は、GPCにより求められる重量平均分子量が、100,000~500,000の範囲であることが好ましく、250,000~350,000であることがより好ましい。
そのようなスチレン系樹脂としては、例えば、DIC株式会社製ディックスチレン XC-515が挙げられる。市販品として容易に入手することができる。
【0034】
[その他の成分]
本実施形態にかかる熱可塑性バイオプラスチックは、本発明の主旨を損なうことがない限り、その他の樹脂含んでもよい。
【0035】
その他の成分は、例えば、他の樹脂や添加剤等である。他の樹脂として、強度や耐熱性を向上させるため、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、又はスチレン系樹脂・アクリル系樹脂の共重合体などの樹脂が加えられても良い。また添加剤は、可塑剤、分散剤、抗菌剤、相溶化剤、滑剤、流れ助剤(flowauxiliaries)、離型剤、安定剤、難燃剤、透明性向上剤、黄色化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防偽剤、顔料、染料、蛍光染料などである。添加剤は、従前のプラスチックに関して用いられているもので良いし、バイオマス度を上げるため、可塑剤等としてクエン酸系誘溝体などのバイオマス化合物を用いてもよい。
【0036】
[可塑性バイオプラスチックの製造方法]
本実施形態にかかる可塑性バイオプラスチックは、化合物(A)、スチレン系樹脂及び任意でその他の成分を加熱下で混練することにより製造される。混練する前に、樹脂(1)、スチレン系樹脂及び任意でその他の成分を予め予備混合しておくことが好ましい。
【0037】
予備混合は、例えば、粉末状の化合物(A)を袋詰めされたペレット状のスチレン系樹脂に入れて、作業者が袋を振ることで簡単に2つを混合することができる。もちろん、混合器もしくは撹拌機などの装置を使って、粉末状の化合物(A)とペレット状のスチレン系樹脂とを混合することもできる。混合器もしくは撹拌機は、リボンブレンダー、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどがあげられる。
【0038】
次いで、予備混合された化合物(A)とスチレン系樹脂及び任意の第3成分とが混練される。例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、及び多軸混練押出機などを用いる方法で混錬することができる。混練の際の加熱温度は、通常、100~300℃の範囲、好ましくは150~250℃の範囲、より好ましくは180~230℃の範囲で適宜選択される。
【0039】
混練は重要であり、混練により化合物(A)とスチレン系樹脂とが分子レベルで均一に分散されていることが好ましい。分子レベルで均一に分散されることで、生来、生分解性の化合物(A)が微生物などによって生分解すると、スチレン系樹脂も分子レベルで分解することになる。これにより本実施形態のバイオプラスチック全体の生分解が進行する。即ち、化合物(A)がスチレン系樹脂に分子レベルで均一に分散されていると、石油由来のスチレン系樹脂に生分解性を持たせる役割を果たす。スチレン系樹脂の分子の間に化合物(A)の分子が入り込むことによって、化合物(A)が生分解した際にスチレン系樹脂も分子レベルでバラバラになり水や土に溶けた状態になるものと推測される。
【0040】
化合物(A)がスチレン系樹脂に分子レベルで均一に分散されているか否かは、本実施形態のバイオプラスチックの光学的均一性、全光線透過率、ヘーズ、複屈折位相差を評価することで判明することができる。また電子顕微鏡や原子間力顕微鏡で評価することもできる。
【0041】
本実施形態のバイオプラスチックは、形態としては、塊状、板状、フィルム状、糸状、紐状、円筒形のペレット状、粉状、粒子状などがある。保存、流通などの観点から粒子状もしくは円筒形のペレット状が好ましい。円筒形のペレットは、例えば、直径0.2~3mm、長さ0.2~5mmが好ましい。
【0042】
(成形品)
本実施形態のバイオプラスチックは、従来公知の方法、例えば、押出成形、射出成形、二色射出成形、サンドイッチ成形、中空成形、圧縮成形、真空成形、回転成形、パウダースラッシュ成形、発泡成形、積層成形、カレンダー成形、ブロー成形等によって、実用上有用な成形品に加工することができる。また、必要に応じて、発泡、粉末、延伸、接着、印刷、塗装、メッキ等の加工をしてもよい。かかる成形方法により、シート、フィルム、各種形状の射出成形品、中空成形品、圧空成形品、真空成形品、押出成形品、発泡成形品等多種多様の成形品として活用でき、これらの成形品は、工業用、食品用、家電用、自動車用、建材用、スポーツ用、レジャー用等の各種包装材料や、各種容器に利用できる。
【0043】
[シート状成形品]
<無延伸シート>
無延伸シートは、上記で得られた本実施形態のバイオプラスチックのペレットを押出機で溶融押出後、T-ダイによりシート状に溶融押出した後、冷却ロール等により冷却し作製できる。冷却温度としては、70~90℃が好ましい。
【0044】
<二軸延伸シート>
二軸延伸シートは、押出機での溶融押出後、延伸機で縦横二軸に延伸することで得られる。例えば、まず、押出機に本実施形態のバイオプラスチックを供給し、T-ダイよりシート状に溶融押出する。その際、延伸前のシートが所定厚みになるようにキャスティングする。その後、二軸延伸可能な温度、例えば110~150℃にシートを冷却して、縦方向(流れ方向)及び横方向(流れ方向に対するクロス方向)に延伸することで得られる。
【0045】
延伸方法は、上記本実施形態のバイオプラスチックを溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸を行うことができる。逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。特に二軸延伸スチレン系シートでは、ロールを用いた縦延伸後、テンターを用いた横延伸を行なわれる。テンター法は広幅な製品がとれ、生産性が高いことがメリットである。
【0046】
ロールを用いた縦延伸方法としては、低速ロールと高速ロールを同方向に回転させて樹脂をフラットに通紙し、延伸する方法と、低速ロールと高速ロールを逆回転させて樹脂をクロスに通紙し、延伸する方法とがあり、1段あるいは多段、フラットあるいはクロスの任意の組み合わせとすることができる。
【0047】
具体的な延伸条件として、延伸倍率は目的に応じ異なるが、通常面倍率で1.5~15倍、より好ましくは4~10倍である。逐次延伸の場合の流れ方向の延伸倍率は1.2~5倍で、好ましくは1.5~3.0倍であり、流れ方向に対しそのクロス方向の延伸倍率は1.2~5倍で、好ましくは1.5~3.0倍である。同時二軸延伸の各方向の延伸倍率は1.5~5倍である。また、この際の温度条件は、ASTMD-1504に準拠し測定される配向緩和応力が0.2~2.0MPa、より好ましくは0.4~1.0MPaとなるように行うのが良い。配向緩和応力が0.2MPa未満では、シートの耐衝撃性が不十分なものとなりやすく、2.0MPaを超える場合、シートが延伸切れを起こし易く、また二次成形性の悪いものとなる可能性があるためである。一方、0.4~1.0MPaの範囲であると、得られたシートの折り割れ性が良好であるばかりでなく、シートの成形性自体も極めて良好となるのでより好ましい。
【0048】
また、この際の、例えば、延伸前の原反シートを延伸温度110~150℃で縦方向に上記の倍率で延伸し、次いで、延伸温度110~150℃で上記縦方向に対してクロスする横方向に上記倍率で延伸が行われる。
【0049】
本実施形態のバイオプラスチックからなる二軸延伸シートの厚さは、0.1~0.5mmであることが好ましい。なお、前記二軸延伸シートは、必要により、共押出やドライラミネートなどによって、同種または異種の熱可塑性樹脂を積層しても良い。また、前記二軸延伸シートには、必要に応じて防曇剤等を塗布しても良い。
【0050】
得られた二軸延伸シートは、従来の二軸延伸スチレン系樹脂シートと同様な条件で、所定の形状の金型で圧空成形すれば所望の容器、蓋材等を容易に得ることができる。
【0051】
[発泡させた成形品]
発泡シートを成形する場合には、本実施形態のバイオプラスチックに発泡剤を含浸させて押出機に供給し、加熱溶融させて混練した後、サーキュラーダイ、Tダイなどから押し出すとともに発泡させることによる通常の発泡成形法により、押出発泡シートを製造することが可能である。
【0052】
発泡剤としては、一般的な汎用発泡材料を使用することができる。例えば、プロパン、ブタン、ペンタン、へキサンなどの低級炭化水素や塩化メチル、ジクロロメタン、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタンなどのハロゲン炭化水素、二酸化炭素などが挙げられる。通常の押出機でのハンドリング操作や低発泡倍率の場合は、加熱で二酸化炭素を発生させる重曹系発泡剤を使用する化学発泡であることが好ましい。
【0053】
さらに、発泡セル量や大きさをコントロールするために、造核剤として無機化合物を使用することができる。好ましい無機化合物としては、タルクが挙げられる。
【0054】
また、本実施形態のバイオプラスチックと発泡剤の混合順序についても特に制限はなく、例えば、本実施形態のバイオプラスチックに発泡剤を加えて溶融混練機に供する方法や、予め本実施形態のバイオプラスチックの一部に高濃度で発泡剤を混練したマスターバッチを作製した後、このマスターバッチと残りの本実施形態のバイオプラスチックを混練した後、発泡成形する方法等が挙げられる。
【0055】
また、必要に応じて、その他の添加剤を同時に溶融混練する方法や、予め本実施形態のバイオプラスチックとその他の樹脂や添加剤を溶融混練したマスターバッチを作製した後、このマスターバッチと本実施形態のバイオプラスチックと発泡剤を溶融混練し発泡成形する方法を用いても良い。
【0056】
また、溶融混練する時の温度は180~260℃の範囲であることが好ましく、本実施形態のバイオプラスチックの熱劣化を防ぎ、また重曹系発泡剤を使用する場合の二酸化炭素発生効率の観点から180~230℃であることが好ましい。
【0057】
サーキュラーダイ、Tダイなどのダイ温度は安定な発泡成形を行う上で120~150℃の範囲であることが好ましい。
【0058】
発泡シートを製造する際の倍率は、特に限定されないが、機械的強度の維持と、発泡による軽量化、成形性のバランスの観点より、4~50倍であることが好ましい。
発泡シートの厚さが0.5~6.0mmであり、かさ密度が0.02~0.25g/cm3であることが好ましい。
【0059】
上記で得られた本実施形態のバイオプラスチック発泡シートは、熱成形により二次加工して成形品とすることができる。熱成形方法としては、熱板接触加熱成形法、真空成形法、真空圧空成形法、プラグアシスト成形法等が好ましく用いられる。
【0060】
成形品の形状は、各種パック、ケース等、特に制限されないが、本発明のスチレン系発泡シート及びその成形品の特徴である成形性、耐熱性の観点から、食品包装用であることが好ましく、特に容器トレーや容器としての使用が好ましい。
【0061】
得られた発泡シートあるいはこれを二次成形した成形品の表裏に、機械強度や耐薬性の向上付与などのためにフィルムを張り合わせることも可能である。具体的は、本実施形態のバイオプラスチックインフレーションフィルムを熱ラミネーションしたり、オレフィン系フィルム(CPP)を、接着剤を用いて張り合わせたりすることも可能である。
【0062】
[射出成形させた成形品]
また、本実施形態のバイオプラスチックをキャスト押出、押出成形、射出成形等によって加工することで目的とする形状の成形品を作製することができるが、加工方法については、歩留まりが良好な点で射出成形法が好ましい。
【0063】
〔射出成形方法〕
前記射出成形方法としては、なんら制限されるものではないが、溶融した本実施形態のバイオプラスチックを均一に流動させ、バランスよく成形できる点で多点のピンゲート、サイドゲート等を有する金型を用いることが好ましい。また、寸法精度が良好でガスによる曇りの無い成形品を得るために、溶融した本実施形態のバイオプラスチックの射出時に、金型キャビティを減圧にできるよう真空引き孔を設けた金型が好ましい。さらには、端材が発生せず生産時のロスが少ないことからホットランナーを有する金型が好ましい。ホットランナーを用いる場合は、ゲート跡を発生させないよう、溶融した本実施形態のバイオプラスチックの金型キャビティへの流入終了後にゲートを閉鎖するニードルバルブも好適に用いられる。
【0064】
[インフレーションフィルム]
<フィルムの製造方法>
本実施形態のバイオプラスチックをインフレーション成形でフィルム、シート等容易に成形加工するか、又は本実施形態のバイオプラスチックを一旦シート状に成形し、このシートを再加熱して縦方向及び横方向に二軸延伸することによって、本実施形態のフィルムが得られる。
本実施形態において、本実施形態のバイオプラスチックを製造する際の条件は、特に限定されないが、例えば、インフレーション加工機を用いて、160~230℃に予熱した押出機に上記のフィルム用本実施形態のバイオプラスチックを通し、円形のダイスからチューブ状に押し出した溶融樹脂を垂直方向に引取りながら空気圧で膨らませ、巻き取ることで、ダイ口径より大きな径を持つ円筒状のフィルムを連続製造することができる。フィルムの厚さ及び延伸度は、スクリュー回転数、引取速度、及び空気圧によって調節する。インフレーション加工した後のフィルムを100~150℃で更に延伸をかけて二軸廷伸フィルムとすることもできる。
【0065】
例えば、本実施形態のバイオプラスチックを、ナカタニ機械製20mm押出機の先端にリング状の2重円筒を取り付け、2重円筒から出てくる樹脂をインフレーションして冷却し、引取機で巻取り、各例の厚さ25μmのインフレーションフィルムを得ることができる。
【0066】
[成形品の用途]
本実施形態の成形品の用途としては、なんら制限されるものではなく、家電製品部品、電気・電子部品、自動車部品、機械・機構部品、化粧品容器、食品包装容器などの種々の成形品を成形する材料として有用である。例えば、ホース、チューブなどのパイプ材;人工芝、マット、トンネルシート、止水シート、ルーフィングなどの土木材料;家具、床材、発泡シートなどの建材;カーペットの裏打ち材、ドアパネル防水シート、泥よけ、モールなどの自動車内外装部品;パッキン、制振シートなどの家電製品;ブレーカー部品、スイッチ部品、モーター部品、イグニッションコイルケース、電源プラグ、電源コンセント、コイルボビン、コネクター、リレーケース、ヒューズケース、フライバクトランス部品、フォーカスブロック部品、ディストリビューターキャップ、ハーネスコネクター;美顔クリーム、ハンドクリームなどを入れるための化粧品容器;プリンやゼリーなどを入れるための食品包装容器などに好適に用いることができる。さらに、薄肉化の進むハウジング、ケーシングまたはシャーシ、例えば、電子・電気製品(例えば電話機、パソコン、プリンター、ファックス、コピー機、テレビ、ビデオデッキ、オーディオ機器などの家電・OA機器またはそれらの部品など)のハウジング、ケーシングまたはシャーシに有用である。特に優れた耐熱性、難燃性が要求されるプリンターの筐体、定着ユニット部品、ファックスなど家電・OA製品の機械・機構部品などとしても有用である。
【実施例0067】
以下、実施例により本実施形態を更に説明する。
まず、製造例1~15で本実施形態にかかる種々の化合物(A)を製造した。
(製造例1)
<化合物(4)製造:ベンゾイル化キシロース系>
原料としてD-キシロース(n=1)が用意された。このD-キシロースは、β-D-キシロースとα-D-キシロースとが混合されているものである。このD-キシロースは、トウモロコシの芯から抽出・精製後に酵素を使って分解したものであり市販品として入手できる。
【0068】
このD-キシロースの粉体60gがピリジン400ml中に入れられて攪拌され、D-キシロースがピリジンに溶解されることでキシロース溶液が得られた。なお、ピリジンは
ガラスビーカーに入れてあり、ビーカーは周囲に冷却のための保冷剤を置いて氷浴状態と
している。
【0069】
別途、ヤニタケを培義して取得したベンズアルデヒドを酸化して安息香酸が生成された。さらに安息香酸と塩化チオニルとが反応させられて塩化ベンゾイル(液体)が取得された。ヤニタケ以外にも他の植物からベンズアルデヒド又は安息香酸を抽出し取得することが可能である。
【0070】
この塩化ベンゾイル(液体)は、塩素以外の元素が天然物由来となっているのでバイオマス度を向上させる上で好ましい。天然物由来の塩化ベンゾイル及び石油由来の塩化ベンゾイルが市販されている。天然物由来の塩化ベンゾイルは天然物由来のベンズアルデヒドや安息香酸から製造されている。石油由来の塩化ベンゾイルにおいても一部を天然物由来の安息香酸やベンズアルデヒドから製造しているものが大半である。その場合、製造時に発生する二酸化炭素も少なく、バイオマス度は70%~95%であり、バイオマス度が天
然物由来の塩化ベンゾイルより若干落ちる程度である。
【0071】
天然物由来の塩化ベンゾイル220mlがキシロース溶液にゆっくりと滴下された。その後、塩化ベンゾイル220mlが滴下されたキシロース溶液が12時間攪拌された。これにより塩化ベンゾイルとキシロースとが反応した反応溶液が得られる。反応は、キシロースのOH基(全4個)の水素原子Hと塩化ベンゾイルの塩素原子Clが反応する化学反応である。これにより、キシロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化キシロース(式(4))が得られる。なお、その際に生じたHClはピリジンにトラップされる。
【0072】
次に、3リットルの純水に上記反応溶液が入れられた。すると、水に不溶の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。その後、純水が3回入れられて、濾過された沈殿物が洗浄された。洗浄された沈殿物は酢酸エチル200mlを加えられて溶かされ、溶液を得た。そして、この溶液にメチルアルコール2.5リットルが加えられた。すると、白色の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。次いで、濾過された沈殿物がメタノールで洗浄された。このようにして得られた沈殿物の白色固体は真空乾燥機に入れて乾燥された。こうしてベンゾイル化キシロース(化合物(4))の白色粉体150gが得られた。
【0073】
このベンゾイル化キシロースは、R1,R2,R5,R6がベンゾイル基であり、R4は水素である。
【0074】
(製造例2)
<化合物(5)製造:ベンゾイル化グルコース系>
原料としてD-グルコース(n=1)が用意された。このD-グルコースは、{β-D-グルコースとα-D-グルコースが混合されているものである。このグルコースは、トウモロコシやサトウキビから抽出・精製後に酵素を使って分解したものであり市販品として入手できる。
【0075】
このグルコースの粉体60gがピリジン400ml中に入れられて攪拌され、グルコースがピリジンに溶解されることでグルコース溶液が得られた。なお、ピリジンはガラスビーカーに入れてあり、ビーカーは周囲に冷却のための保冷剤を置いて氷浴状態としている。
【0076】
別途、ヤニタケを培簑して取得したベンズアルデヒドを酸化して安息香酸が生成された。さらに安息香酸と塩化チオニルとが反応させられて塩化ベンゾイル(液体)が取得された。ヤニタケ以外にも他の植物からベンズアルデヒド又は安息香酸を抽出し取得することが可能である。取得された塩化ベンゾイルは実施例1と同様にバイオマス度が高い。
【0077】
この塩化ベンゾイル220mlを前記グルコース溶液にゆっくりと滴下した。その後、12時間攪拌を行った。これにより塩化ベンゾイルとグルコースが反応した反応溶液が得られる。反応は、グルコースのOH甚(全5個)の水素原子Hと塩化ベンゾイルの塩素原子Clが反応する化学反応である。これにより、グルコースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化グルコースが得られる。なお、その際に生じたHClはピリジンにトラップされる。
【0078】
次に、3リットルの純水に上記反応溶液が入れられた。すると、水に不溶の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。その後、純水が3回入れられて、濾過された沈殿物が洗浄された。洗浄された沈殿物は酢酸エチル200mlを加えられ
て溶かされ、溶液を得た。そして、この溶液にメチルアルコール2.5リットルが加えられた。すると、白色の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。次いで、濾過された沈殿物がメタノールで洗浄された。このようにして得られた沈殿物の白色固体は真空乾燥機に入れて乾燥された。こうしてベンゾイル化グルコース(化合物(5))の白色粉体150gが得られた。
【0079】
このベンゾイル化グルコース(化合物(5))は、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。R3がベンゾイル基-O-になり、R4がベンゾイル基-O-CH2-になる。
【0080】
(製造例3)
<化合物(A)製造:ベンジル化キシロース系>
キシロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化キシロースが製造される。このベンジル化キシロースは例えば以下のようにして製造された。
【0081】
原料としてD-キシロース(n=1)が用意された。このD-キシロース60gが50質量%水酸化ナトリウム水溶液300mlに溶解させられる。さらにテトラメチルアンモニウムヨージドが触媒量だけ加えられる。これらの混合溶液がオイルバス40℃で2時間撹拌され、キシロースのOH基のH部(水素)がNaに置換えられる。オイルバスを停止し混合溶液が室温まで放冷され、その後、放冷された混合溶液に塩化ベンジルが6.5当量加えられる。なお、塩化ベンジルは、植物由来のベンズアルデヒドを還元することでベンジルアルコールが得られ、さらに塩素化合物との常法の反応によって得ることができる。
【0082】
塩化ベンジルの反応性を上げるためヨウ化ナトリウムが触媒量だけ混合溶液に加えられる。窒素ガスで置換しながら徐々に混合溶液の温度が上げられて110℃まで上げられる。そして混合溶液が110℃で5時間撹拌される。反応終了後、混合溶液が放冷した後氷浴で冷却される。その後混合溶液にジエチルエーテルが加えられ撹拌される。撹拌が止められてしばらく静置されると、混合溶液は上澄み液と沈殿物との2層に分かれる。そして上澄み液がデカンテーションされ、残った混合溶液が吸引濾過された。濾過された沈殿物は、再度ジエチルエーテルが加えられて洗浄される。ジエチルエーテルが加えられた溶液が透明になるまで洗浄とデカンテーションと吸引濾過とが繰り返される。溶液が透明になった後、さらに吸引濾過された沈殿物がメタノールで洗浄される。メタノール溶液が透明になるまで洗浄され、メタノール溶液が吸引濾過された。その沈殿物がアセトンに溶解されて、水で沈殿させて沈殿物が回収される。沈殿物は真空乾燥機にて45℃で24時間乾燥させることでベンジル化キシロースが150g得られた。
【0083】
(製造例4)
<化合物(A)製造:ベンジル化グルコース系>
グルコースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化グルコースが製造される。このベンジル化グルコースは例えば以下のようにして製造された。
【0084】
原料としてD-グルコース(n=1)が用意された。D-グルコース60gが50質量%水酸化ナトリウム水溶液300mlに溶解される。テトラメチルアンモニウムヨージドが触媒量加えられる。この混合溶液がオイルバス40℃で2時間撹拌され、グルコースの水酸基OHにおける水素がNaに置き換えられる。オイルバスを停止し混合溶液が室温まで放冷され、その後、放冷された混合溶液に、塩化ベンジルが6.5当量加えられる。なお、塩化ベンジルは、植物由来のベンズアルデヒドを還元することでベンジルアルコールが得られ、さらに塩素化合物との常法の反応によって得ることができる。
【0085】
塩化ベンジルの反応性を上げるためヨウ化ナトリウムが触媒量だけ混合溶液に加えられる。窒素ガスで置換しながら徐々に混合溶液の温度が上げられて110℃まで上げられる。そして混合溶液が110℃で5時間撹拌される。反応終了後、混合溶液が放冷した後氷浴で冷却される。その後混合溶液にジエチルエーテルが加えられ撹拌される。撹拌が止められてしばらく静置されると、混合溶液は上澄み液と沈殿物との2層に分かれる。そして上澄み液がデカンテーションされ、残った混合溶液が吸引濾過された。濾過された沈殿物は、再度ジエチルエーテルが加えられて洗浄される。ジエチルエーテルが加えられた溶液が透明になるまで洗浄とデカンテーションと吸引濾過とが繰り返される。溶液が透明になった後、さらに吸引濾過された沈殿物がメタノールで洗浄される。メタノール溶液が透明になるまで洗浄され、メタノール溶液が吸引濾過された。その沈殿物がアセトンに溶解されて、水で沈殿させて沈殿物が回収される。沈殿物は真空乾燥機にて45℃で24時間乾燥させることでベンジル化グルコースが150g得られた。
【0086】
(製造例5)
<化合物(A)の製造:ベンゾイル化ヘミセルロース系(n=3)>
上記製造例1では原料としてD-キシロース(n=1)が用意された。それに対し、製造例5では、原料としてD-キシロース(n=1)、ヘミセルロース(n=2)及びヘミセルロース(n=3)が混合された市販品(以下、n=3のヘミセルロースと呼ぶ。)が用意された。
トウモロコシの芯から抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整するとn=3のヘミセルロース(市販品)が得られる。
【0087】
このn=3のヘミセルロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化ヘミセルロース(n=3)が製造された。このベンゾイル化ヘミセルロース(n=3)は、製造例1で説明したペンゾイル化キシロースと同様の方法によって製造された。
【0088】
(製造例6)
<化合物(A)の製造:ベンゾイル化セルロース系(n=3)>
上記製造例2では原料としてD-グルコース(n=1)が用意された。それに対し、製造例6では、原料としてD-グルコース(n=1)、セルロース(n=2)及びセルロース(n=3)が混合された市販品(以下、n=3のセルロースと呼ぶ。)が用意された。樹木から抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整することによりn=3のセルロース(市販品)が得られる。
【0089】
このn=3のセルロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化セルロース(n=3)が製造される。このベンゾイル化セルロースは製造例2で説明したベンゾイル化グルコースと同様の方法によって製造された。
【0090】
(製造例7)
<化合物(A)の製造:ベンゾイル化デンプン系(n=3)>
デンプンとセルロースの違いは、一般的に知られているように、構成単位は同じD-グルコース(ブドウ糖)であるが、α-D-グルコースがα-1,4結合を繰り返しらせん状に多分子結合したものがデンプンであり、光学異性体の{β-D-グルコースが{β-1,4結合を繰り返し直線状に多分子結合したものがセルロースである。
【0091】
原料としてD-グルコース(n=1)、デンプン(n=2)及びデンプン(n=3)が混合された市販品(以下、n=3のデンプンと呼ぶ。)が用意される。トウモロコシから抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整するとn=3のデンプン(市販品)が得られる。
このn=3のデンプンのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化デンプン(n=3)が製造される。ベンゾイル化デンプン(n=3)は製造例2で説明したベンゾイル化グルコースと同様の方法によって製造された。
【0092】
このベンゾイル化デンプン(n=3)は、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。
【0093】
(製造例8)
<化合物(A)の製造:ベンジル化ヘミセルロース系(n=3)>
n=3のヘミセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化ヘミセルロース(n=3)が製造される。このベンジル化ヘミセルロース(n=3)は(製造例3)で説明されたベンジル化キシロースと同様の方法によって製造作成された。
【0094】
なお、このベンジル化ヘミセルロース(n=3)は、R1,R2,R5,R6がベンジル基であり、R4は水素である。
【0095】
(製造例9)
<化合物(A)の製造:ベンジル化セルロース系(n=3)>
n=3のセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化セルロース(n=3)が製造される。このベンジル化セルロース(n=3)は製造例4で説明されたベンジル化グルコースと同様の方法によって製造された。
【0096】
(製造例10)
<化合物(A)の製造:ベンジル化デンプン系(n=3)>
n=3のデンプンのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化デンプンを使って、バイオマス度5~70%のバイオプラスチックペレットが製造可能である。このベンジル化デンプンは、R1,R2,RS,R6及びR7がベンジル基である。
【0097】
(製造例11)
<化合物(A)の製造:ベンゾイル化ヘミセルロース系(n=7)>
原料としてキシロース(n=1)、ヘミセルロース(n=2)、ヘミセルロース(n=3)、ヘミセルロース(n=4)、ヘミセルロース(n=5)、ヘミセルロース(n=6)及びヘミセルロース(n=7)が混合された市販品(以下、n=7のヘミセルロースと呼ぶ。)が用意された。
トウモロコシの芯から抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整するとn=7のヘミセルロース(市販品)が得られる。
【0098】
n=7のヘミセルロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化ヘミセルロース(n=7)が製造される。このベンゾイル化ヘミセルロース(n=7)は、製造例1で説明したベンゾイル化キシロースと同様の方法によって製造された。
【0099】
(製造例12)
<化合物(A)の製造:ベンゾイル化セルロース系(n=7)>
原料としてグルコース(n=1)、セルロース(n=2)、セルロース(n=3)、セルロース(n=4)、セルロース(n=5)、セルロース(n=6)及びセルロース(n=7)が混合された市販品(以下、n=7のセルロースと呼ぶ。)が用意された。
樹木から抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整することによりn=7のセルロース(市販品)が得られる。
【0100】
このn=7のセルロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化セルロース(n=7)が製造される。このベンゾイル化セルロース(n=7)は製造例2で説明したベンゾイル化グルコースと同様の方法によって製造された。
【0101】
(製造例13)
<化合物(A)の製造:ベンゾイル化デンプン系(n=7)>
原料としてグルコース(n=1)、デンプン(n=2)、デンプン(n=3)、デンプン(n=4)、デンプン(n=5)、デンプン(n=6)及びデンプン(n=7)が混合された市販品(以下、n=7のデンプンと呼ぶ。)が使用されてもよい。トウモロコシから抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整するとn=7のデンプン(市販品)が得られる。
【0102】
n=7のデンプンのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化デンプン(n=7)が製造される。このベンゾイル化デンプン(n=7)は製造例2で説明したベンゾイル化グルコースと同様の方法によって製造される。
【0103】
n=7のデンプンのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化デンプン(n=7)を使って、製造例12と同様に、バイオマス度5~70%のバイオプラスチックペレットが製造可能である。このベンゾイル化デンプンは、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。
【0104】
(製造例14)
<化合物(A)の製造:ベンジル化ヘミセルロース系(n=7)>
n=7のヘミセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化ヘミセルロース(n=7)が製造される。このベンジル化ヘミセルロース(n=7)は製造例3で説明されたベンジル化キシロースと同様の方法によって製造された。
【0105】
なお、このベンジル化ヘミセルロース(n=7)は、R1,R2,R5,R6がベンジル基であり、R4は水素である。
【0106】
(製造例15)
<化合物(A)の製造:ベンジル化セルロース系(n=7)>
n=7のセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化セルロース(n=7)が製造される。このベンジル化セルロース(n=7)は製造例4で説明されたベンジル化グルコースと同様の方法によって製造された。
【0107】
なお、このベンジル化セルロース(n=7)は、R1,R2,R5,R6及びR7がベンジル基である。
【0108】
以上、製造例1~15の化合物(A)の分子量を表1に示す。
【0109】
【0110】
(実施例1)
<バイオプラスチックの製造>
化合物(A)として製造例1で合成したベンゾイル化キシロース150g(5.0質量%と、表2に示した樹脂1の2850g(95質量%)とを、タンブラーを使用し予備混合した。予備混合された化合物(A)と樹脂1とを、二軸混練押出機(加熱温度200℃)に投入し、円筒状(φ3mm)のペレットを得た。このペレットを用いて各種評価を行った。
【0111】
実施例2~31及び参考例1、2は、表3に示すように配合量を変更したこと以外は実施例1と同様にして、測定及び評価を行った。
【0112】
樹脂1~樹脂9の内容を表2に、実施例1~31及び参考例1、2の配合、測定及び評価結果を表3及び表4に示す。
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
(測定及び評価の方法)
測定及び評価は、以下の方法に基づいて行った。
【0117】
<重量平均分子量測定>
高速GPC HLC-8220(東ソー株式会社製)、カラム(TSK-GELGMHXL×2)を使用し、サンプル5mgを10gのTHFに溶解した溶液を装置に注入(200μL)し、流量:1ml/分(THF)、恒温槽温度:40℃、RI検出器にて測定した。
【0118】
<射出加工性>
100トン射出成形機によりJIS K 7161ダンベルを成形し、下記評価基準に基づき評価した。
容器成形が容易で偏肉がない:◎
容器成形は比較的容易であり、偏肉がない:○
容器成形は比較的容易であるが、偏肉がある:△
容器成形が困難で偏肉がある:×
【0119】
<シート製膜性>
40mmシート押出機を用い250μmの厚さのシートを製膜した。ダイスは幅40cmのものを使用し、温度は200~230℃とした。製膜時の厚み制御性と得られたシートの外観を確認し、下記評価基準に基づき評価した。
厚み制御性・外観良好:◎
外観良好:〇
ロール転写有:△
シートからロールが垂れて巻き取れない:×
【0120】
<二軸延伸性>
単発延伸機にて横方向1.5倍、縦方向1.5倍の同時二軸延伸を行い、110μmの延伸シートを得た後、シートの厚みムラや偏肉を確認した。延伸温度は110℃~145℃、延伸速度は120mm/min.とし、下記評価基準に基づき評価した。
厚みムラ無く均一なシート:◎
偏肉の無いシート:〇
僅かに偏肉が見られる:△
偏肉 or 穴あきが見られる:×
【0121】
<圧空成形性>
圧空成形機を使用して容器状の成形体を製造した。容器形状は、深さ29mm、開口部80mm×80mm、絞り比0.36とした。成形は熱板温度を変え、各シートの最適条件である、レインドロップ不良を起こさず、良好な型再現性となる条件を見つけて実施した。その後、下記評価基準に基づき評価した。
容器の型が完全に再現している:〇
型が再現されず:×
【0122】
<真空成形性>
スチレン系樹脂組成物を用いた押出シート作製後、容器形状へと二次成形を行った。容器は、深さ(H)と開口部(W)との比(H/W)が、0.3となるよう成形した。成形条件は、シートの予備加熱時間を10~30秒、加熱ヒーターの温度を、上部/下部=250~300℃/250~300℃とした。その後、下記評価基準に基づき評価した。
容器の型が完全に再現している:〇
容器の型が再現されず:×
【0123】
<インフレーションフィルム>
スチレン系樹脂組成物とゴム強化スチレン系樹脂(HIPS)とを98/2質量%の混合割合で、東芝機械(株)製二軸押出機(TEM26SS-12-2V)を用いて200℃、150rpmで混練し、スチレン系樹脂(I)を得た。次に、得られた組成物(I)を、ナカタニ機械製20mm押出機の先端にリング状の2重円筒を取り付け、2重円筒から出てくる樹脂をインフレーションして冷却し、引取機で巻取り、各例の厚さ25μmのインフレーションフィルムを得た。作製したスチレン系フィルムの中心から、一辺10cmの正方形を切り出し、流れ方向の中心部から1cm内側の位置から流れ方向と垂直に2cm間隔で5箇所の厚みを測定し、平均の厚みを算出し、下記評価基準に基づき評価した。
平均の厚みを±20%超える測定点が、全測定点の10%未満であった:◎
平均の厚みを±20%超える測定点が、全測定点の10~20%であった:○
平均の厚みを±20%超える測定点が、全測定点の20%以上であった:×
【0124】
<発泡性>
スチレン系樹脂組成物を用いた押出発泡シート作成後、容器形状へと二次成形を行った。容器は、深さ(H)と開口部(W)との比(H/W)が、0.2となるよう成形した。成形条件は、発泡シートの予備加熱時間を5秒、加熱ヒーターの温度を、上部/下部=280~300℃/320~340℃とし、得られた容器を下記評価基準に基づき評価した。
容器の型が完全に再現している:◎
一部型が不再現:○
容器底面の縁に小さな穴が発生:△
容器底に大きな穴が発生:×
【0125】
<HDT>
実施例及び比較例で得られたスチレン系樹脂組成物から射出成形体(80mm×10mm×4mmT)を作製し、JIS K 7191に準拠し、荷重たわみ温度(℃)(フラットワイズ、A法、荷重1.80MPa)を測定した。
【0126】
<ヘーズ>
実施例及び比較例で得られたスチレン系樹脂組成物から1mm厚の射出成形プレートを作製し、JIS K 7136に準拠しヘーズを測定した。
【0127】
<MFR>
実施例及び比較例で得られたスチレン系樹脂組成物のMFRを、JIS K7210に準拠し測定した。測定条件は、200℃、5.0kgである。