(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007517
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】目盛板姿勢検査方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/26 20060101AFI20250109BHJP
【FI】
G01B11/26 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108962
(22)【出願日】2023-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100143720
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 耕一郎
(72)【発明者】
【氏名】清水 政明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 花純
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA12
2F065AA17
2F065AA31
2F065BB02
2F065BB27
2F065FF04
2F065FF44
2F065JJ19
2F065JJ26
2F065NN00
2F065NN01
2F065NN11
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】カメラと目盛板との相対姿勢を検査する目盛板姿勢検査方法を提供する。
【解決手段】 カメラから目盛板の画像データを取得する画像データ取得工程と、画像データ中で第一対比領域と第二対比領域とを抽出する領域算出工程と、第一対比領域と第二対比領域とを明るさまたは色に基づいて対比する対比処理工程と、を備える。対比処理工程による対比結果に基づいてカメラと目盛板の相対姿勢を検査する。第一対比領域と第二対比領域との位置は、目盛板の中心または目盛板の中心を通る仮想的直線を間にして互いに反対側にある。対比処理工程は、第一対比領域と第二対比領域とに対して隣接画素の画素値または輝度値の差分を求め、第一対比領域と第二対比領域とで前記差分の大きさを対比する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カメラと目盛板の相対姿勢を検査する目盛板姿勢検査方法であって、
カメラから前記目盛板の画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データ中で第一対比領域と第二対比領域とを抽出する領域算出工程と、
第一対比領域と第二対比領域とを明るさまたは色に基づいて対比する対比処理工程と、を備え、
前記対比処理工程による対比結果に基づいてカメラと目盛板の相対姿勢を検査する
ことを特徴とする目盛板姿勢検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載の目盛板姿勢検査方法において、
第一対比領域と第二対比領域との位置は、当該目盛板の中心または当該目盛板の中心を通る仮想的直線を間にして互いに反対側にある
ことを特徴とする目盛板姿勢検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載の目盛板姿勢検査方法において、
第一対比領域と第二対比領域とは、それぞれの領域のなかに、当該目盛板の背景色の部分と、印刷または刻印されたマークと、を含む
ことを特徴とする目盛板姿勢検査方法。
【請求項4】
請求項1に記載の目盛板姿勢検査方法において、
前記対比処理工程は、前記第一対比領域と前記第二対比領域とに対して隣接画素の画素値または輝度値の差分を求め、前記第一対比領域と前記第二対比領域とで前記差分の大きさを対比する
ことを特徴とする目盛板姿勢検査方法。
【請求項5】
請求項1に記載の目盛板姿勢検査方法において、
前記対比領域抽出工程を実行する前に、
画像データ中の画素の輝度が飽和しない範囲で前記カメラの露出時間が最も長く、かつ、所定閾値以上の明るさの画素数が予め設定された一定数以上のカウント値になるように照明とカメラの露出を調整する明るさ調整工程を備える
ことを特徴とする目盛板姿勢検査方法。
【請求項6】
請求項1に記載の目盛板姿勢検査方法において、
前記領域算出工程は、目盛板の中心を求める中心算出工程を有し、
前記中心算出工程は、
中心を間にして点対称の位置にある第一の目盛線の組を結ぶ線と、
中心を間にして点対称の位置にある第二の目盛線の組を結ぶ線と、を求め、
第一の目盛線の組を結ぶ線と第二の目盛線の組を結ぶ線との交点を目盛板の中心とする
ことを特徴とする目盛板姿勢検査方法。
【請求項7】
請求項6に記載の目盛板姿勢検査方法において、
目盛線の幅方向の一方から所定アルゴリズムで一方側のエッジ座標を探索し、目盛線の幅方向の他方から前記所定アルゴリズムの向きを変えた同じアルゴリズムで他方側のエッジ座標を探索し、
前記一方側のエッジ座標と前記他方側のエッジ座標との中点を目盛線の幅の中央座標として、目盛線の中央座標同士を結ぶことで、目盛線の組を結ぶ線を求める
ことを特徴とする目盛板姿勢検査方法。
【請求項8】
コンピュータに、
カメラから目盛板の画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データ中で第一対比領域と第二対比領域とを抽出する領域算出工程と、
第一対比領域と第二対比領域とを明るさまたは色に基づいて対比する対比処理工程と、を実行させ、
前記対比処理工程による対比結果に基づいてカメラと目盛板の相対姿勢を検査する
ことを特徴とする目盛板姿勢検査プログラム。
【請求項9】
カメラと目盛板の相対姿勢を検査する目盛板姿勢検査装置であって、
カメラから前記目盛板の画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ中で第一対比領域と第二対比領域とを抽出する領域算出部と、
第一対比領域と第二対比領域とを明るさまたは色に基づいて対比する対比処理部と、を備え、
前記対比処理部による対比結果に基づいてカメラと目盛板の相対姿勢を検査する
ことを特徴とする目盛板姿勢検査装置。
【請求項10】
請求項9に記載の目盛板姿勢検査装置において、
検査対象の目盛板を有する検査対象測定器を保持するスタンド部から台座板が延在して設けられ、前記カメラは前記台座板に設置される
ことを特徴とする目盛板姿勢検査装置。
【請求項11】
請求項10に記載の目盛板姿勢検査装置において、
前記スタンド部はマスターゲージに設置され、前記検査対象測定器と前記マスターゲージと前記カメラとの相対位置および姿勢が固定できる
ことを特徴とする目盛板姿勢検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目盛板姿勢検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定値をアナログ表示する測定器として例えばダイヤルゲージがある。ダイヤルゲージなどの精密測定器は、測定精度の保証や精密校正のために、製品出荷前、あるいは定期的に、測定器メーカや検査機関によって検査が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイヤルゲージの検査というのは、ゲージ検査器(マスター測定器)によって検査対象のダイヤルゲージのスピンドルを所定量変位させ、そのときの検査対象のダイヤルゲージとマスター測定器とで指示値を対比し、指示誤差を計測するというものである。しかしながら、この検査方法でダイヤルゲージに指示誤差不良が見つかったとしても、その原因がダイヤルゲージ自体に起因するのか、検査方法になにか問題があるのか、切り分けることができなかった。仮に検査方法になにか問題があるとなると、本来は合格品である測定器であっても目盛板の欠陥検査や測定器の精度検査で不合格になり、その原因の追及あるいは本来必要が無い部品交換作業をしたりといったことに手間とコストが掛かるなどの問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、カメラと目盛板との相対姿勢を検査する目盛板姿勢検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目盛板姿勢検査方法は、
カメラと目盛板の相対姿勢を検査する目盛板姿勢検査方法であって、
カメラから前記目盛板の画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データ中で第一対比領域と第二対比領域とを抽出する領域算出工程と、
第一対比領域と第二対比領域とを明るさまたは色に基づいて対比する対比処理工程と、を備え、
前記対比処理工程による対比結果に基づいてカメラと目盛板の相対姿勢を検査する
ことを特徴とする。
【0007】
本発明の一実施形態では、
第一対比領域と第二対比領域との位置は、当該目盛板の中心または当該目盛板の中心を通る仮想的直線を間にして互いに反対側にある
ことが好ましい。
【0008】
本発明の一実施形態では、
第一対比領域と第二対比領域とは、それぞれの領域のなかに、当該目盛板の背景色の部分と、印刷または刻印されたマークと、を含む
ことが好ましい。
【0009】
本発明の一実施形態では、
前記対比処理工程は、前記第一対比領域と前記第二対比領域とに対して隣接画素の画素値または輝度値の差分を求め、前記第一対比領域と前記第二対比領域とで前記差分の大きさを対比する
ことが好ましい。
【0010】
本発明の一実施形態では、
前記対比領域抽出工程を実行する前に、
画像データ中の画素の輝度が飽和しない範囲で前記カメラの露出時間が最も長く、かつ、所定閾値以上の明るさの画素数が予め設定された一定数以上のカウント値になるように照明とカメラの露出を調整する明るさ調整工程を備える
ことが好ましい。
【0011】
本発明の一実施形態では、
前記領域算出工程は、目盛板の中心を求める中心算出工程を有し、
前記中心算出工程は、
中心を間にして点対称の位置にある第一の目盛線の組を結ぶ線と、
中心を間にして点対称の位置にある第二の目盛線の組を結ぶ線と、を求め、
第一の目盛線の組を結ぶ線と第二の目盛線の組を結ぶ線との交点を目盛板の中心とする
ことが好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態では、
目盛線の幅方向の一方から所定アルゴリズムで一方側のエッジ座標を探索し、目盛線の幅方向の他方から前記所定アルゴリズムの向きを変えた同じアルゴリズムで他方側のエッジ座標を探索し、
前記一方側のエッジ座標と前記他方側のエッジ座標との中点を目盛線の幅の中央座標として、目盛線の中央座標同士を結ぶことで、目盛線の組を結ぶ線を求める
ことが好ましい。
【0013】
本発明の目盛板姿勢検査プログラムは、
コンピュータに、
カメラから目盛板の画像データを取得する画像データ取得工程と、
前記画像データ中で第一対比領域と第二対比領域とを抽出する領域算出工程と、
第一対比領域と第二対比領域とを明るさまたは色に基づいて対比する対比処理工程と、を実行させ、
前記対比処理工程による対比結果に基づいてカメラと目盛板の相対姿勢を検査する
ことを特徴とする。
【0014】
本発明の目盛板姿勢検査装置は、
カメラと目盛板の相対姿勢を検査する目盛板姿勢検査装置であって、
カメラから前記目盛板の画像データを取得する画像データ取得部と、
前記画像データ中で第一対比領域と第二対比領域とを抽出する領域算出部と、
第一対比領域と第二対比領域とを明るさまたは色に基づいて対比する対比処理部と、を備え、
前記対比処理部による対比結果に基づいてカメラと目盛板の相対姿勢を検査する
ことを特徴とする。
【0015】
本発明の一実施形態では、
検査対象の目盛板を有する検査対象測定器を保持するスタンド部から台座板が延在して設けられ、前記カメラは前記台座板に設置される
ことが好ましい。
【0016】
本発明の一実施形態では、
前記スタンド部はマスターゲージに設置され、前記検査対象測定器と前記マスターゲージと前記カメラとの相対位置および姿勢が固定できる
ことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】目盛板姿勢検査方法の動作の全体的な手順を説明するためのフローチャートである。
【
図5】明るさ調整工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図6】領域算出工程を説明するためのフローチャートである。
【
図7】目盛板の中心を求める手順を説明するためのフローチャートである。
【
図8】目盛線の幅方向の中央座標値を算出する手順を説明するためのフローチャートである。
【
図9】目盛線の幅方向の中央座標値を算出する手順を説明するためのフローチャートである。
【
図10】対比領域抽出工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図11】対比処理工程の手順を示すフローチャートである。
【
図12】フィルタ処理工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図13】傾き判定工程の手順を説明するためのフローチャートである。
【
図14】目盛板の中心を求める手順を例示する図である。
【
図16】第一対比領域と第二対比領域とを例示した図である。
【
図17】目盛線縦断線に沿って一次元微分フィルタを掛けたときの輝度差の変化を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図示するとともに図中の各要素に付した符号を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の測定器検査装置に係る第1実施形態について説明する。
測定器検査装置100は、例えば、円盤型目盛板200と回転指針とで測定値をアナログ表示する測定器10、例えば、(アナログ表示式)ダイヤルゲージを検査する。(ダイヤルゲージは、インジケータやテストインジケータと呼ばれることもある。)
【0019】
ダイヤルゲージなどの精密測定器10は、測定精度の保証や精密校正のために、定期的に測定器メーカや検査機関によって検査される。本実施形態の測定器検査装置100は、測定器10そのものの検査(円盤型目盛板200の欠陥検査や指示値誤差検査)を実行する前に、測定器検査装置100と測定器10との設置姿勢が適切かどうかを検査(目盛板姿勢検査)するものである。
【0020】
図1は、測定器検査装置100のシステム構成図である。
測定器検査装置100は、測定器指示値の基準となるマスターゲージ20と、マスターゲージ20に検査対象測定器10を設置するためのスタンド部30と、検査対象測定器10のアナログ表示部200を撮像するためのカメラ40と、検査対象測定器10のアナログ表示部200を照明するための照明部50と、演算処理装置300と、を備える。
【0021】
マスターゲージ20は、進退する基準スピンドル22と、精密に校正された高精度エンコーダ(変位検出器)23と、を有する。基準スピンドル22で検査対象測定器10の測定子11を変位させるとともに、高精度エンコーダ23で基準スピンドル22の変位を検出する。マスターゲージ20の指示値(高精度エンコーダ23による検出値)と、検査対象測定器10の指示値と、のずれが検査対象測定器10の誤差ということになる。
【0022】
本例では、目盛板姿勢検査、目盛板欠陥検査に続けて指示値誤差検査も実行することを想定して、測定器検査装置100にマスターゲージ20を含めている。ただし、測定器10の検査として、目盛板欠陥検査だけを実施し、マスターゲージ20による指示値誤差検査は実施しないという場合は、マスターゲージ20は必要ない。すなわち、本発明においてはマスターゲージ20は付加的な要素であって、必須というわけではない。
【0023】
スタンド部30は、コラム31と、ブラケット部32と、を有する。コラム31がマスターゲージ20の上蓋部21に設置されており、ブラケット部32はコラム31に沿って移動可能に設けられている。ブラケット部32は、コラム31に対して直角方向に延在するアーム部を有し、アーム部の先端で検査対象測定器10を保持する。具体的には、検査対象測定器10の一部(図ではダイヤルゲージのステム)をブラケット部32の先端で挟持するようになっている。
【0024】
なお、マスターゲージ20を用いない場合は、台座にコラム31が立設されたいわゆるスタンドを用意して、スタンド(台座)を作業台等の上に設置する。
【0025】
カメラ40は、レンズ光学系およびCCDやCMOSなどの撮像素子(イメージセンサ)を有する。カメラ40は、検査対象測定器10の目盛板200を正面から撮像するように設置されている。すなわち、カメラ40は、スタンド部30に保持された検査対象測定器10の目盛板200を正面から撮像するように設置されている。本実施形態では、カメラ40は、固定的に設置されていて、カメラ40と検査対象測定器10との相対姿勢や相対位置の調整は検査対象測定器10の向き(傾き)や位置を調整することによって行うことを想定している。なお、最終的な目標は、カメラ40と検査対象測定器10(目盛板200)とが正対するように姿勢を調整することであるから、カメラ40の向き(傾き)や位置も調整できるようになっていてもよい。
【0026】
ここで、カメラ40と検査対象測定器10(目盛板200)とが理想的に正対しているというのは、目盛板200の表面を平面と考えて、カメラ40の光軸に対して目盛板200が垂直になっている状態である。目盛板200の法線とカメラ40の光軸とが平行といってもよい。
【0027】
照明部50は、例えばリング照明であって、影による輝度ムラが生じたりしないように検査対象測定器10の目盛板200を照明する。
【0028】
本実施形態では、スタンド部30のコラム31に長板状の台座板33を取り付け、この台座板33にカメラ40および照明部50を設置することとする。すなわち、台座板33に照明設置台34とカメラ設置台35とを設け、検査対象測定器10を保持するスタンド部30に対して照明部50とカメラ40とを固定的に設置できるようにする。照明設置台34とカメラ設置台35とは台座板33に対して位置調整できる程度に前後左右に移動でき、さらに、止めねじ等で位置が固定できるようになっているとよい。
【0029】
スタンド部30がマスターゲージ20に設置されている場合は、マスターゲージ20、検査対象測定器10、照明部50およびカメラ40の相対的な位置および姿勢が固定できるようになる。検査対象測定器10の精度を検査するにあって、縦姿勢、横姿勢、逆姿勢など姿勢を変えて精度検査することがある。この場合、マスターゲージ20と検査対象測定器10とを倒して横姿勢にしたり、さらに回転させて逆姿勢にしたり、種々の姿勢に変化させるが、この場合でも照明部50およびカメラ40がマスターゲージ20、スタンド部30、検査対象測定器10と一体的に動くことになる。したがって、一度、明るさ調整や姿勢調整を行っておけば、検査姿勢が変わっても調整をやり直す必要はない。
【0030】
本実施形態では、コラム31に対して台座板33が直角に取り付けられ、カメラ設置台35が台座板33に直角に取り付けられ、カメラ設置台35にカメラ40を直角に取り付けられるとする。これにより、スタンド部30に検査対象測定器10(例えばダイヤルゲージ)を取り付けると検査対象測定器10の上下方向の軸(スピンドル、ステムに平行な軸)はカメラ40の光軸に対して垂直になっているとする。本実施形態では、左右方向の傾き(スピンドル、ステムに平行な軸を回転軸とする回転)を検証するものとする。なお、本実施形態の方法を上下方向にも適用して、上下左右の傾きを直すようにすることもできる。
【0031】
演算処理装置300は、典型的には小型コンピュータであって、コンピュータ本体に入出力機器としてキーボード、マウス、マイク、ディスプレイ、プリンタ、スピーカが内蔵または外付けされている。その他、演算処理装置300は、タブレット端末やスマートフォン(携帯型高機能電話機)であってもよい。
【0032】
図2は、演算処理装置300の機能ブロック図である。演算処理装置300は、CPU(CentralProcessingUnit)やメモリ(ROM、RAM)等を備えて構成され、CPU(中央処理装置)で検査プログラムを実行することにより各機能部の機能を実現する。検査プログラムの配布方法としては、不揮発性記録媒体(CD-ROM、メモリカード等)に記録して配布してもよいし、インターネット回線等を介してダウンロードさせるようにしてもよい。
【0033】
演算処理装置300が測定器10の各種検査を実行する検査実行部310を備える。検査実行部310は、目盛板姿勢検査部400と、目盛板欠陥検出部320と、指示値誤差評価部330と、を備えている。
【0034】
ここで、目盛板姿勢検査部400は、カメラ40で撮像した目盛板200の画像データから、カメラ40と目盛板200との相対姿勢を検査するものである。詳細は後述する。
また、目盛板欠陥検出部320は、カメラ40で撮像した目盛板200の画像データから、目盛板200の歪みやキズ、目盛線の欠け、目盛線間隔などの欠陥を検出するものである。
この際、カメラ40に対して目盛板200が傾斜していると、画像データに基づいて目盛板200あるいは目盛線を正確に検査することができない。すなわち、画像データ中で目盛板200あるいは目盛線に欠陥があるとしても、それが検査対象測定器自体の欠陥なのか、画像データがもともと歪んでいるのか切り分ける必要がある。また、指示値誤差評価部330は、マスターゲージ20の指示値(高精度エンコーダ23による検出値)と、検査対象測定器10の指示値と、のずれを評価するものである。この際、カメラ40によって検査対象測定器10のアナログ表示部200を撮像し、その撮像データから指針指示値を自動的に読み取ることを想定している。この場合も、カメラ40に対して目盛板200が傾斜していると、傾斜の分だけ画像データには視差があることになり、指針指示値の読み取りがズレを持つことになる。検査対象測定器10の指針指示値がマスターゲージ20の指示値に対してずれていたとしても、それが検査対象測定器10の内部機構の欠陥なのか画像データ取得時の視差等の問題なのか切り分ける必要がある。
【0035】
検査対象の測定器10はマイクロメートルオーダーの分解能で測定値を表示するものであるから、本発明者らの検証によれば、カメラ40と検査対象測定器10との相対姿勢が正対から5°程度ずれていると、目盛板欠陥検出あるいは指示値誤差評価に支障があることがわかり、カメラ40と検査対象測定器10との相対姿勢のずれは3°以内に抑えるのが理想的であると考えられる。このような3°や5°といったずれは、人が目視で感じられるズレではない。そこで、目盛板欠陥検出あるいは指示値誤差評価の前に、目盛板姿勢検査工程を実行する。
【0036】
図3は、目盛板姿勢検査部400のブロック図である。
目盛板姿勢検査部400は、明るさ調整部410と、画像データ取得部420と、領域算出部430と、対比処理部440と、ガイダンス部450と、を備える。さらに、領域算出部430は、中心算出部431と、対比領域抽出部432と、を備える。また、対比処理部440は、フィルタ処理部441と、傾き判定部442と、を備えている。
【0037】
各機能部の動作はフローチャートを参照しながら後述する。
【0038】
第一実施形態に係る目盛板姿勢検査方法の手順を順に説明する。なお、目盛板姿勢検査方法を実行する前に、オペレータは、検査対象測定器10をスタンド部30に設置し、検査対象測定器10とカメラ40とができる限り正対するように調整する。カメラ40のピントを検査対象測定器10の目盛板200に合わせることや照明、露出の設定は予め設定しておいた初期設定になるようにしてもよいし、初期的な調整としてカメラ40の自動調整(自動ピント合わせ、露光調整)を作動させるようにしてもよい。スタンド部30に検査対象測定器10を設置(交換)したり、カメラ40をセッティングしたりすることは、オペレータによるマニュアル作業に代わってロボットが代行するようにして、自動化してもよい。
【0039】
図4は、第一実施形態に係る目盛板姿勢検査方法の動作の全体的な手順を説明するためのフローチャートである。
目盛板姿勢検査方法は、
図4に示されるように、明るさ調整工程ST1000と、撮像工程ST2000と、領域算出工程ST3000と、対比処理工程ST4000と、ガイダンス表示工程ST5000と、を備える。
順番に説明する。
【0040】
図5は、明るさ調整工程ST1000の手順を説明するためのフローチャートである。
この後の処理を考えたとき、目盛板200の画像データが輝度のレンジを最大に広く使っていることが好ましい。したがって、画像データ中の画素の輝度が飽和しない範囲で限界まで明るくなるように照明と露出を調整する。
【0041】
まず、照明部50の明るさを予め決められた初期値に設定し(ST1100)、カメラ40の露出時間を最小に設定する(ST1200)。カメラ40の露出時間を最小にするというのは、カメラ40の仕様のなかで露出時間を最小にすること、言い換えると、シャッタースピードを最速にすることである。照明部50の明るさの初期値というのは、例えば照明部50に印加する電流値や電圧値を予め決められた初期値にすると考えてもよい。あるいは、照度計を検査対象測定器10の近傍に配置しておいて、予め設定した照度になるように照明部50への印加電流値(電圧値)が自動調整されるようにしてもよい。この設定で検査対象測定器10の目盛板200を試し撮りして画像データを取得する(ST1300)。取得した画像データが画像データ取得部420に記録される。
【0042】
試し撮りした画像データ中の画素で輝度値が飽和した画素の有無を検証し(ST1400)、輝度値の飽和が無ければ(ST1400:NO)、カメラ40の露出時間を一単位増やす(ST1500)。カメラ40の露出時間の一単位というのは、1/1000秒や1/100秒、1/10秒といった単位でカメラ40の仕様やこの目盛板200検査の精度、検査に掛けられる時間などを勘案して適宜設定される。ここでは、カメラ40の露出を最小に設定しているから、最初から輝度が飽和するということはなく、輝度値が飽和した画素が最初に出現するまで(ST1400)、カメラ40の露出時間を増やしながら(ST1500)、試し撮りを繰り返す(ST1300)。
【0043】
そして、輝度値が飽和した画素が最初に出現したら(ST1400:YES)、ここから露出時間を一単位減らす(ST1600)。これで画像データ中の画素の輝度が飽和しない範囲で最大の露出時間に設定されたことになる。
【0044】
この照明と露出時間の設定で画像データが所定の基準明るさ以上になっているか検証する(ST1700)。画像データの輝度分布(ヒストグラム)を求め、所定閾値以上の明るさ(輝度値)の画素数をカウントし、予め設定された一定数以上のカウント値があれば、明るさ調整は成功であるとする。所定閾値以上の明るさ(輝度値)の画素数が足りなければ、照明部50の明るさを一単位増やし(印加電流値あるいは照度を上げる)、再度、ST1200に戻って明るさ調整をやり直す。
【0045】
この明るさ調整により、画像データの輝度分布が毎回最適になり、姿勢検査が毎回安定する。
【0046】
明るさ調整に成功したら(ST1000)、
図4のフローチャートに戻って、カメラ40(イメージセンサ)で目盛板200を撮像し、画像データを取得し(ST2000)、検査用の画像データとして画像データ取得部420に記録する。
【0047】
検査用の目盛板画像データが取得できたので、この目盛板画像データに基づいて目盛板200とカメラ40との相対姿勢を検査する。そのためには、画像データ中で対比する第一対比領域と第二対比領域とを抽出する対比領域抽出工程(
図6のST3500)を行う。第一対比領域と第二対比領域とは、例えば
図16に例示されるように、画像データ中で目盛板200の中心を対称の中心として点対称の関係にあるか、あるいは、目盛板200の中心を通る仮想的直線を間にして互いに反対側にある領域である。この第一対比領域と第二対比領域とで画素値(色や輝度)を対比することで、カメラ40と目盛板200との相対姿勢を検証する。
【0048】
図6は、対比領域を抽出する手順(領域算出工程ST3000)を説明するためのフローチャートである。
対比領域の算出(領域算出工程ST3000)においては、まず、画像データ中の目盛板200の中心を求める(中心算出工程ST3100)。目盛板200の中心の求め方としては種々考えられる。例えば、画像データ中の目盛板200を円とみて、円の中心を求めるとしてもよい。目盛板(円)200の外形を画像認識で抽出し、円周上のいくつかの点から円の中心を求めるとしてもよい。目盛板200がカメラ40に対して傾斜していると、厳密にいえば、目盛板200は楕円として撮像されているが、この歪みは極めてわずかであるから円として中心を求めるようにしてよいし、仮に楕円として見る場合でも長径と短径との交点を中心とすることができる。
【0049】
ここでは、この後の目盛板欠陥検出や指示値誤差評価においても目盛板200の目盛線が重要な要素の一つであることを勘案し、
図7のフローチャートの手順(中心算出工程ST3100)で、目盛線に基づいて目盛板200の中心を求めることとする。
図14は、目盛板200の中心を例示する図である。
図14も合わせて参照されたい。
目盛板画像データを二次元直交座標(x、y)でみて、Y軸に平行な目盛線を二つ検出することにより、0°の目盛線と180°の目盛線とが見つかる(ST3200)(
図14参照)。また、目盛板画像データを二次元直交座標(x、y)でみて、X軸に平行な目盛り線を二つ検出することにより、90°の目盛線と270°の目盛線とが見つかる(ST3200)。続いて、0°の目盛線の幅方向の中央座標を求め、180°の目盛線の幅方向の中央座標を求める(ST3300)。同じく、90°の目盛線の幅方向の中央座標を求め、270°の目盛線の幅方向の中央座標を求める(ST3300)。
【0050】
それぞれの目盛線の幅方向の中央座標が得られたら、0°の目盛線の中央座標と180°の目盛線の中央座標とを結びy1線とする。同じく、90°の目盛線の中央座標と270°の目盛線の中央座標とを結びx1線とする。y1とx1との交点を目盛板200の中心とする(ST3400)。
【0051】
ただし、目盛線には幅があるから、目盛線の位置として、目盛線の幅の中央の座標値をとる(ST3300)。この際、例えば0°の位置の目盛線の幅の中央をとる場合、目盛線の左側エッジの座標値と右側エッジの座標値との中点をとる。中点座標が目盛線の幅のなかで左右どちらかに偏ることを防止するため、左側エッジと右側エッジとを同じ手順と同じ閾値とを使って探索する。
【0052】
図8、9は、目盛線の幅方向の中央座標値を算出する手順を説明するためのフローチャートである。ここでは、0°の目盛線の幅方向の中央座標値を算出する場合を例に説明する。
図15は、目盛線を拡大した図である。
図15も合わせて参照されたい。180°の位置にある目盛線の幅の中央を求める場合も同様にできるし、90°、270°の位置にある目盛線の幅の中央を求める場合は向きを変えて(x軸とy軸とを入れ替えて)適用すれば同様にできる。
【0053】
ST3311において、0°目盛線の領域からX軸に平行な1ラインを抽出する。Y軸に平行な目盛線であって、Y軸のプラス側にある目盛線(あるいはY座標値が大きい方の目盛線)が0°の目盛線と認識できる。背景が白で目盛線が黒であるから、例えば、最大輝度(255)の半分(128)以下の輝度の画素の領域を目盛線領域としてもよい。あるいは、最大輝度(255)の0.7(179)以下の輝度の画素の領域を目盛線領域としてもよいし、0.65(166)以下の輝度の画素の領域を目盛線領域としてもよい。ここでは、目盛線領域として、目盛線そのものと、その周辺の背景と、の両方を含む領域を考える。言い換えると、後述の目盛線横断線が、背景→目盛線→背景、と横切ることのできる領域を目盛線領域とする。
【0054】
そして、目盛線の幅(ここではX方向の幅)の中央座標値を求めるため、目盛線(ここではY方向に平行)に対して直交するような方向(X軸に平行な方向)で目盛線領域を横切るような1ラインを抽出する。これを目盛線横断線とする。
図15では、分かりやすいように、目盛線横断線を長めに表現している。
【0055】
目盛線横断線は、目盛線を確実に横断していればよいので目盛線のどこを横断するか(どの1ラインを抽出するか)は特段限定されるものではないが、ここでは一例として、目盛線領域のY方向の真ん中(目盛線の縦方向の真ん中)を横断するラインとする。
【0056】
このように抽出した目盛線横断線に対し、左側エッジ座標(ここでX座標値が小さい方向のエッジの座標)と、右側エッジ座標(ここでX座標値が大きい方向のエッジの座標)と、を向きを変えた同じアルゴリズムで探索する。まず、
図8のST3312からST3320により、左側エッジ座標(ここでX座標値が小さい方向のエッジの座標)を探索する。
【0057】
ST3312において、目盛線横断線のうちでX座標値が最小の画素を注目画素とし、この注目画素の輝度値を取得する。この取得した輝度値をL0とする。
【0058】
ST3313において安定回数Nを0(ゼロ)にリセットする。安定回数Nについては後に説明する。
【0059】
ST3314において、注目画素をX方向のプラス側に一つ移動して(正側の隣の画素)、この新たな注目画素の輝度値を取得し、これをインデックス番号kを用いてL(k)とする。ここではL1とする。ST3315において、X方向で隣接する二つの画素の輝度差L(k)-L(k-1)、いまは具体的には輝度差L1-L0、を求め、輝度差の大きさ|L1-L0|を予め設定された安定判定閾値と比べ、輝度差|L1-L0|≦安定判定閾値を満たすか判定する。輝度差|L1-L0|≦安定判定閾値を満たすというのは、注目画素が背景と目盛線との遷移的な境界上にあるのではなくて、目盛線の上あるいは内側にあることを推認させる。輝度差|L1-L0|≦安定判定閾値を満たす場合は、安定回数Nをプラス1し(N=N+1)(ST3317)、安定回数Nが予め設定された安定回数閾値(例えば5)に達するまで(ST3318)、注目画素をX方向の正の方向に移動しながら(ST3319、ST3314)、ST3314からST3318を繰り返す。隣接画素の輝度差L(k)-L(k-1)が連続で安定し、安定回数Nが安定回数閾値(例えば5)に達したら、そのときの注目画素の座標値(ここではX座標値)を左側エッジ座標ELminとして記憶する。
【0060】
輝度差|L1-L0|≦安定判定閾値を満たさない(ST3315:NO)ということは、注目画素が背景と目盛線との遷移的な境界上にあって目盛線に乗っていないと考えられるので、安定回数をゼロにリセットし(ST3313)、探索を続ける。
【0061】
図9のST3321からST3329は、右側エッジ座標(ここでX座標値が大きい方のエッジの座標)を探索する手順である。
図8のST3312からST3320との違いは、右から左へ(X座標値が大きい方からX座標値が小さい方へ)探索することで、まずST3312では、目盛線横断線のうちでX座標値が最大の画素を注目画素とし、この注目画素の輝度値L0を取得する(ST3321)。そして、ST3323では、負側で隣の画素の輝度値L(j)を取得する。なお、右側エッジ座標の探索(
図9のフローチャート)においては、インデックス番号jを用いてL(j)とする。他の工程において、安定判定閾値も安定回数閾値も
図8のST3312からST3320と同じものを用いる。このように向きを変えた同じアルゴリズムで右側エッジ座標を探索し、右側エッジ座標ELmaxとして記憶する(ST3329)。
【0062】
そして、目盛線の中央座標値CLxは、左側エッジ座標ELminと右側エッジ座標ELmaxとの中点であり、(ELmin+ELmax)/2である(ST3330)。
【0063】
このようにして、左右両側から同じ手順でエッジを探索することにより、目盛線の幅のなかで中点検出の偏りをなくすことができる。
【0064】
目盛線横断線を二以上抽出して、それらの幅方向の中央座標値を求め、さらに平均値を求めることとしてもよい。
【0065】
ここまでで目盛板200の中心が求まったので(ST3100)、次に
図6のフローチャート(領域算出工程ST3000)に戻って、対比領域抽出工程(ST3500)を説明する。
図10は、対比領域抽出工程(ST3500)の手順を説明するためのフローチャートである。また、
図16は、第一対比領域と第二対比領域とを例示した図である。
図16も合わせて参照されたい。ST3510において、先に求めた目盛板200の中心座標値を読み出す。そして、中心からX方向の負側にある目盛線を含んで所定大きさの領域を抽出する(ST3520)。(中心を通ってX軸に平行な線に沿って負側に探索し、270°の目盛線を見つける。)これを第一対比領域とする(ST3530)ここでは、270°にある目盛線を含む領域が第一対比領域となる。この対比領域としては、目盛線と背景との両方を含むことが想定される領域を抽出して対比領域とする。
【0066】
次に、第一対比領域と対称の位置で所定大きさの領域を抽出する(ST3540)。これを第二対比領域とする(ST3550)。ここでは、第一対比領域と第二対比領域とは、中心に関して点対称であるとするが、中心を通るY軸に平行な仮想線に関して線対称の位置としてもよい。
【0067】
第一対比領域と第二対比領域とが背景と目盛線とを含んでいるか検証する(ST3560)。円形の目盛板200を考えれば、中心に関して対称の位置に目盛線があるので、第一対比領域と対称の位置に第二対比領域をとれば、第一対比領域と第二対比領域とはともに目盛線と背景とを含む領域になっているはずである。もしも、第一対比領域と第二対比領域との少なくとも一方に目盛線と背景との両方が含まれていないとなった場合には(ST3560:NO)、切り出しの領域範囲を広くしてリトライすることとし(ST3570)、所定回数のリトライで第一対比領域および第二対比領域の抽出に成功しない場合は、エラー報告をして、処理は中断ということになる。
【0068】
第一対比領域と第二対比領域とを得たら、
図4のフローチャート(目盛板姿勢検査方法)に戻って、次は、輝度に基づいて第一対比領域と第二対比領域とを対比する対比処理工程(ST4000)を実行する。
図11は、対比処理工程(ST4000)の手順を示すフローチャートである。対比処理工程(ST4000)には、第一対比領域と第二対比領域とに対してそれぞれフィルタ処理(ここでは微分フィルタ)を行って、それぞれの対比領域で輝度差を求めるフィルタ処理工程(ST4100)と、フィルタ処理工程(ST4100)で得られた輝度差データを比較して目盛板200の傾きを評価する傾き判定工程(ST4200)と、がある。
【0069】
図12は、フィルタ処理工程の手順を説明するためのフローチャートである。フィルタ処理工程ST4100としては、第一対比領域に対してフィルタ処理を行って第一対比輝度差を求める第一対比輝度差算出工程(ST4110)と、第二対比領域に対してフィルタ処理を行って第二対比輝度差を求める第二対比輝度差算出工程(ST4120)と、がある。第一対比輝度差算出工程(ST4110)と第二対比輝度差算出工程(ST4120)とは演算対象の違いだけで処理内容は同じである。
【0070】
第一対比輝度差算出工程(ST4110)としては、まず、第一対比領域のラインごとに、隣り合う画素の輝度差のうちで最大値を求める(ST4111)。ここでは、第一対比領域は270°の目盛線を含む領域で、270°の目盛線はX軸に平行であるから、X方向に沿って目盛線を縦断するラインを目盛線縦断線とする。
図16も合わせて参照されたい。目盛線縦断線ごとに一次元の微分フィルタ、例えばX方向に沿って画素の画素値(輝度値)に(1,-1)を掛けていき、注目画素とその隣りの画素とで輝度の差を求めていく。
図17は、目盛線縦断線に沿って一次元微分フィルタを掛けたときの輝度差の変化を模式的に表した図である。
図17も合わせて参照されたい。例えば、注目画素の輝度値がL1で、その隣りの画素の輝度値がL2なら、輝度差DLは、|L1-L2|である。最終的には第一対比領域と第二対比領域とで得られる輝度差の「大きさ」を対比できればよいので、ここでの輝度差とは輝度差の大きさ(絶対値)のことと解釈されたい。ラインごと(目盛線縦断線ごと)に輝度差の最大値DLmaxが求まる。
【0071】
第一対比輝度差算出工程(ST4110)で輝度差の最大値DLmaxを求めるにあたり、演算対象のライン(目盛線縦断線)は一本だけもよいが、複数のライン(目盛線縦断線)でラインごと(目盛線縦断線ごと)に輝度差の最大値DLmaxを得ることが望ましい。そして、ST4112では、複数得られた輝度差の最大値DLmaxの平均を求めて、これを第一対比輝度差DL1とする(ST4112)。
【0072】
第二対比領域(ここでは90°の目盛線を含む領域)に対してもラインごとに隣り合う画素の輝度差のうちで最大値DLmaxを求め(ST4121)、それらの平均を求めて、これを第二対比輝度差DL2とする(ST4122)。
【0073】
フィルタ処理工程ST4100によって第一対比領域の第一対比輝度差DL1と第二対比領域の第二対比輝度差DL2とが得られたので、
図11のフローチャート(対比処理工程ST4000)に戻って、次は傾き判定工程(ST4200)を実行する。
図13のフローチャートに示されるように、まず、第一対比領域の第一対比輝度差DL1と第二対比領域の第二対比輝度差DL2との差分を求め、これを輝度差差分ΔDL(=DL1-DL2)とする(ST4210)。この輝度差差分ΔDLの大きさ|ΔDL|が予め設定された傾き判定閾値以下であれば(ST4220:YES)、目盛板200の左右が同じように撮像されているということであり、目盛板200の傾きは無い(あるいは許容範囲内)とする(ST4230)。
【0074】
一方、第一対比輝度差DL1と第二対比輝度差DL2との差が大きければ(ST4220:NO)、目盛板200がカメラ40の光軸に対して傾斜していると判定する。第一対比輝度差DL1と第二対比輝度差DL2との差が大きいということは、画像データ中で左右の目盛線のシャープさに差が生じているということである。カメラ40のピントは一応は目盛板200にあっているはずであるから、被写界深度の範囲ではピントは目盛板200にあっていると言えるかもしれないが、詳細に見ると左右で目盛線のシャープさに違いが生じているということである。わずかな差であるかもしれないが、このあと、目盛線欠陥検査や指示値誤差検査を画像データに基づいて行うときには画像データの左右で目盛線や指針の検出に差が生じてしまう。
【0075】
輝度差差分ΔDLの大きさ|ΔDL|が傾き判定閾値を超過している場合は、第一対比輝度差DL1と第二対比輝度差DL2とを記憶する。第一対比輝度差DL1と第二対比輝度差DL2とを比べて、どちらが大きいか(どちらが小さいか)を記憶しておいてもよい。
【0076】
さらに、ST4250において、輝度差差分ΔDL(=DL1-DL2)の大きさから傾斜量に換算する。これは、予備的な実験によって、目盛板200とカメラ光軸の傾斜角の大きさと輝度差差分ΔDLの大きさとの関係を事前に求めてテーブルにしておくこともできる。あるいは、厳密に輝度差差分ΔDLを0.1°間隔の傾斜角度に変換するというのではなくて、輝度差差分ΔDLの大きさに応じて例えば10段階に分類するような評価指標を与えるとしてもよい。
【0077】
次に、ガイダンス表示工程(ST5000)を説明する。
ガイダンス表示工程(ST5000)では、表示装置(モニタ)に目盛板200の傾き(あるいは傾きのレベル)を可視化して表示し、オペレータに目盛板200の姿勢調整のための補助的な情報を提供する。
図18、
図19は、ガイダンス表示の例を示す図である。
図18、
図19の例では、モニタ画面に目盛板200を表示し、その下に色(例えば青色と黄色など)が付いたバーの長さで目盛板200の傾きのバランスを示している。目盛板200の傾きが無ければ、
図19のように、左(黄色)のバーと右(青色)のバーとは同じ長さである。目盛板200に傾きがある場合は、傾斜の大きさを表現するように左右のバーの長さを変える。ここでは、輝度差(第一対比輝度差DL1、第二対比輝度差DL2)が小さい側のバーを長く表現している。オペレータは、このガイダンス表示を参考に、目盛板200の姿勢を調整しつつ、
図19の理想の姿勢になるように目盛板姿勢検査を何度か繰り返す。これにより、目盛板200がカメラ40に正対するように測定器10を設置できるし、目盛板200とカメラ40とが正対していることを確認できるようになる。
【0078】
測定器10(目盛板200)を目視したり、あるいは、測定器10(目盛板200)を撮像した画像データを画面で目視したりしただけでは、目盛板200とカメラ40とが正対しているかどうかを厳密に判断することはできなかった。したがって、目盛板200とカメラ40とが厳密に正対するように設置することもできなかった。そのため、本来は合格品である測定器10であっても目盛板200の欠陥検査や測定器10の精度検査で不合格になったり、その原因の追及あるいは本来必要が無い部品交換作業をしたりといったことに手間とコストが掛かるなどの問題が生じていた。この点、本発明者らは、目盛板200の欠陥検査や測定器10の精度検査がしばしばうまくいかない理由を精査し、鋭意研究の結果、問題の根幹が測定器10(目盛板200)とカメラ40との設置姿勢にあることに気付いた。そして、対称の位置にある対比領域(第一対比領域、第二対比領域)で画素値、あるいは、画素値の差分(隣接画素における画素値の差)に注目することでカメラ40と目盛板200との相対姿勢を厳密に検査するという本発明を為したものである。
【0079】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更してもよい。
目盛板200というのは、実際の板に目盛り線が刻印や印刷されているアナログ目盛板(アナログ文字盤)の他、例えば、液晶パネルや有機ELパネルなどのデジタル表示パネルに表示された目盛板であってもよい。
【0080】
上記実施形態では、目盛板200の中心に関して点対称、または、中心を通る仮想線に関して対称な位置にある目盛線を使って対比したのであるが、目盛線に限らず、対称な位置にあるマーク(例えば、数字、記号など)であってもよい。
【0081】
上記の説明では一次元の微分フィルタを用いたが、目盛板の背景と目盛板上の印刷(例えば目盛線などのマーク)との境界の画素値(輝度値)を強調できる処理であれば、これに限らない。
【0082】
上記実施形態では、画素値として輝度値を用いたが、色の濃淡(白黒の階調やRGBの階調)を用いて対比するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
100 測定器検査装置
10 測定器(検査対象測定器)
200 目盛板
12 指針
11 測定子
20 マスターゲージ
21 上蓋部
22 基準スピンドル
23 エンコーダ
30 スタンド部
31 コラム
32 ブラケット部
33 台座板
34 照明設置台
35 カメラ設置台
40 カメラ
50 照明部
300 演算処理装置
310 検査実行部
400 目盛板姿勢検査部
410 明るさ調整部
420 画像データ取得部
430 領域算出部
431 中心算出部
432 対比領域抽出部
440 対比処理部
441 フィルタ処理部
442 傾き判定部
450 ガイダンス部