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特開2025-7668インターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025007668
(43)【公開日】2025-01-17
(54)【発明の名称】インターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/704 20060101AFI20250109BHJP
   A61K 36/484 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250109BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20250109BHJP
【FI】
A61K31/704
A61K36/484
A61P43/00 111
A61P29/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109222
(22)【出願日】2023-07-03
(71)【出願人】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132207
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 弘恭
【テーマコード(参考)】
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA10
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB11
4C086ZC41
4C088AB59
4C088BA08
4C088CA03
4C088MA02
4C088NA14
4C088ZB11
4C088ZC41
(57)【要約】
【課題】安全性の高い天然物の中からインターロイキン-37産生促進作用又はインターロイキン-37mRNA発現促進作用を有する物質を見出し、それを有効成分とするインターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤を提供する。
【解決手段】インターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、並びに甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、並びに甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするインターロイキン-37産生促進剤。
【請求項2】
前記グリチルリチン酸の誘導体が、グリチルリチン酸ジカリウムであることを特徴とする請求項1に記載のインターロイキン-37産生促進剤。
【請求項3】
グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、並びに甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とするインターロイキン-37mRNA発現促進剤。
【請求項4】
前記グリチルリチン酸の誘導体が、グリチルリチン酸ジカリウムであることを特徴とする請求項3に記載のインターロイキン-37mRNA発現促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症は、発赤、浮腫、発熱、痛み、痒み、機能障害等の症状を示す複雑な反応である。例えば、皮膚においては、紫外線が曝露されたり、刺激性物質と接触したりすると、皮膚内で炎症性サイトカイン等が生成され、皮膚炎症が引き起こされる。その結果、皮膚組織がダメージを受け、肌荒れ、発赤、浮腫、色素沈着等の諸症状が生じるようになる。
【0003】
インターロイキン-37は、サイトカインであるインターロイキン-1ファミリーのメンバーであり、炎症抑制作用を有することが知られている。インターロイキン-37は、細菌感染や紫外線の曝露等の外部刺激により誘発される炎症性サイトカイン等により引き起こされる炎症を抑制する働きを有し、炎症に対する広範な防御的役割を担っている。
【0004】
細菌感染や紫外線等の外部刺激で誘発される生体防御反応のひとつである炎症が過剰になると、組織や細胞を損傷させ、正常な生体反応の維持が困難になることがある。過剰な炎症が起因となる疾病としては、例えば、アレルギー疾患、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患等が知られている。すなわち、外部刺激に対する炎症反応は必要不可欠であるが、この炎症が過剰にならないようにコントロールし、そのためにインターロイキン-37による抗炎症作用を期待し、インターロイキン-37の産生を促進することは、過剰な炎症に起因する疾病等から生体を守る点で重要である。
【0005】
従来、インターロイキン-37の産生を促進する作用を有するものとして、インターロイキン-37のバリアントを含むポリペプチド、グァバ葉抽出物等が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-522547号公報
【特許文献2】特開2021-113173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安全性の高い天然物の中からインターロイキン-37産生促進作用又はインターロイキン-37mRNA発現促進作用を有する物質を見出し、それを有効成分とするインターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明のインターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、並びに甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする。前記グリチルリチン酸の誘導体として、グリチルリチン酸ジカリウムを用いることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、安全性の高い天然物の中からインターロイキン-37産生促進作用又はインターロイキン-37mRNA発現促進作用を有する物質を見出し、それを有効成分とするインターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本実施形態に係るインターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、いずれも、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する。
【0011】
グリチルリチン酸誘導体は、例えば、グリチルリチン酸(C426216)とアルカリとを反応させることにより得ることができる。グリチルリチン酸誘導体としては、例えば、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム等が挙げられ、グリチルリチン酸ジカリウムが好適に用いられ得る。
【0012】
グリチルリチン酸ジカリウムは、グリチルリチン酸と水酸化カリウム(KOH)等とを反応させることにより得られ、グリチルリチン酸(C426216)は、グリチルリチン酸を含有する植物抽出物から単離・精製することにより得られる。なお、グリチルリチン酸を含有する植物抽出物には、グリチルリチン酸を含有する植物を抽出原料として得られる抽出液、当該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、当該抽出液を乾燥して得られる乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0013】
グリチルレチン酸誘導体は、公知の方法により合成され得る。グリチルレチン酸誘導体としては、例えば、グリチルレチン酸ステアリル、サクシニルグリチルレチン酸2Na、ステアリン酸グリチルレチニル等が挙げられる。例えば、グリチルレチン酸ステアリルは、グリチルリチン酸を含有する植物抽出物から単離・精製することにより得られるグリチルリチン酸を、酸(塩酸、硫酸等)の水溶液を用いた加水分解によりグリチルレチン酸(C3046)を得て、当該グリチルレチン酸とステアリルアルコールとのエステル化反応により合成され得る。
【0014】
グリチルリチン酸を含有する植物抽出物は、植物の抽出に一般に用いられている方法によって得ることができる。グリチルリチン酸を含有する植物としては、例えば、甘草等が挙げられる。
【0015】
甘草は、マメ科カンゾウ属に属する多年生草本である。当該甘草としては、例えば、グリチルリーザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)、グリチルリーザ・インフラータ(Glycyrrhiza inflata)、グリチルリーザ・ウラレンシス(Glycyrrhiza uralensis)等の種が存在する。これらのうち、いずれの種類の甘草を抽出原料として使用してもよいが、特にグリチルリーザ・グラブラ(Glycyrrhiza glabra)を抽出原料として使用することが好ましい。
【0016】
抽出原料として使用し得る甘草の構成部位としては、例えば、葉部、枝部、樹皮部、幹部、茎部、果実部、花部等の地上部、根部又はこれらの部位の混合物等が挙げられるが、好ましくは根部である。
【0017】
グリチルリチン酸を含有する植物抽出物は、抽出原料を乾燥した後、そのまま又は粗砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより得られる。乾燥は天日で行ってもよいし、通常使用される乾燥機を用いて行ってもよい。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用してもよい。脱脂等の前処理を行うことにより、植物の極性溶媒による抽出処理を効率よく行うことができる。
【0018】
抽出溶媒としては、極性溶媒を使用するのが好ましく、例えば、水、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で使用することが好ましい。
【0019】
抽出溶媒として使用し得る水としては、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等のほか、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。したがって、本実施形態において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0020】
抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2~5の多価アルコール等が挙げられる。
【0021】
2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は適宜調整することができる。例えば、水と低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族アルコール1~90容量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して低級脂肪族ケトン1~40容量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10容量部に対して多価アルコール10~90容量部を混合することが好ましい。
【0022】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5~15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温又は還流加熱下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物が得られる。
【0023】
以上のようにして得られた抽出液、当該抽出液の濃縮物又は当該抽出液の乾燥物からグリチルリチン酸を単離・精製する方法は、特に限定されるものではなく、常法により行うことができる。例えば、植物抽出物を、シリカゲルやアルミナ等の多孔質物質、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体やポリメタクリレート等の多孔性樹脂等を用いたカラムクロマトグラフィーに付して、水、アルコールの順で溶出させ、アルコールで溶出される画分としてグリチルリチン酸を得ることができる。
【0024】
カラムクロマトグラフィーにて溶出液として使用し得るアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1~5の低級脂肪族アルコール又はそれらの水溶液等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0025】
さらに、カラムクロマトグラフィーにより得られたアルコール画分を、ODSを用いた逆相シリカゲルクロマトグラフィー、再結晶、液-液向流抽出、イオン交換樹脂を用いたカラムクロマトグラフィー等の任意の有機化合物精製手段を用いて精製してもよい。
【0026】
このようにして得られるグリチルリチン酸を、常法により水酸化カリウム(KOH)等のアルカリと反応させることで、グリチルリチン酸ジカリウム等のグリチルリチン酸誘導体を得ることができる。
【0027】
また、当該グリチルリチン酸を、常法により酸(塩酸、硫酸等)の水溶液を用いて加水分解することでグリチルレチン酸を得て、当該グリチルレチン酸とステアリルアルコールとをエステル化反応させることで、グリチルレチン酸ステアリル等のグリチルレチン酸誘導体を得ることができる。
【0028】
以上のようにして得られるグリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物は、後述する実施例からも明らかなように、インターロイキン-37産生促進作用、インターロイキン-37mRNA発現促進作用を有しているため、それらの作用を利用してインターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤の有効成分として使用することができる。
【0029】
本実施形態のインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種のみからなるものであってもよいし、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種を製剤化したものであってもよい。
【0030】
グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、錠剤状、液状等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種は、他の組成物(例えば、皮膚化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。
【0031】
なお、本実施形態のインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、必要に応じて、インターロイキン-37産生促進作用又はインターロイキン-37mRNA発現促進作用を有する他の天然抽出物を配合して有効成分として用いることができる。
【0032】
本実施形態のインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤の投与方法としては、一般に経皮投与、経口投与等が挙げられるが、疾患の種類に応じて、その予防・治療等に好適な方法を適宜選択すればよい。また、本実施形態のインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤の投与量も、疾患の種類、重症度、患者の個人差、投与方法、投与期間等によって適宜増減すればよい。
【0033】
本実施形態のインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、有効成分であるグリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種が有するインターロイキン-37産生促進作用又はインターロイキン-37mRNA発現促進作用を通じて、刺激性物質の接触による接触性皮膚炎(かぶれ);乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れに伴う各種皮膚炎症性疾患;紫外線曝露による発赤、紅斑、色素沈着等の皮膚炎症等を予防、治療又は改善することができる。ただし、本実施形態のインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、これらの用途以外にもインターロイキン-37産生促進作用又はインターロイキン-37mRNA発現促進作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0034】
また、本実施形態のインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、優れたインターロイキン-37産生促進作用又はインターロイキン-37mRNA発現促進作用を有するため、例えば、皮膚外用剤又は経口組成物に配合するのに好適である。この場合に、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種をそのまま配合してもよいし、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種から製剤化したインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤を配合してもよい。
【0035】
ここで、皮膚外用剤としては、その区分に制限はなく、経皮的に使用される皮膚化粧料、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものであり、具体的には、例えば、軟膏、クリーム、乳液、美容液、ローション、パック、ファンデーション、リップクリーム、入浴剤、ヘアートニック、ヘアーローション、石鹸、ボディシャンプー等が挙げられる。
【0036】
皮膚外用剤におけるグリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の配合量は、皮膚外用剤の種類に応じて適宜調整することができるが、好適な配合率は、0.0001~10質量%であり、特に好適な配合率は、0.001~1質量%である。
【0037】
経口組成物とは、人の健康に危害を加えるおそれが少なく、通常の社会生活において、経口又は消化管投与により摂取されるものをいい、行政区分上の食品、医薬品、医薬部外品等の区分に制限されるものではない。したがって、本実施形態における「経口組成物」は、経口的に摂取される一般食品、飼料、健康食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品、医薬品等を幅広く含むものである。本実施形態における経口組成物は、当該経口組成物又はその包装に、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種が有する好ましい作用を表示することのできる経口組成物であることが好ましく、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)、医薬部外品又は医薬品であることが特に好ましい。
【0038】
経口組成物におけるグリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の配合量は、使用目的、症状、性別等を考慮して適宜変更することができるが、添加対象となる経口組成物の一般的な摂取量を考慮して、成人1日あたりの抽出物摂取量が約1~1000mgになるようにするのが好ましい。なお、添加対象経口組成物が顆粒状、錠剤状又はカプセル状の場合、グリチルリチン酸、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸誘導体及び甘草抽出物からなる群より選択される少なくとも1種の添加量は、添加対象経口組成物に対して通常0.0001~10質量%であり、好ましくは0.001~1質量% である。
【0039】
また、本実施形態のインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、優れたインターロイキン-37産生促進作用又はインターロイキン-37mRNA発現促進作用を有するので、これらの作用機構に関する研究のための試薬としても好適に利用することができる。
【0040】
なお、本実施形態のインターロイキン-37産生促進剤又はインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物に対して適用することもできる。
【実施例0041】
以下、試験例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の試験例等に何ら限定されるものではない。なお、下記の試験例においては、被験試料としてグリチルリチン酸ジカリウム(丸善製薬社製)及びグリチルレチン酸(丸善製薬社製)を使用した。
【0042】
〔試験例1〕インターロイキン-37産生促進作用試験
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、12wellプレートに1well当たり1mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。培養後に培養液を捨て、KGMで必要濃度に溶解した被験試料(試料濃度は下記表1を参照)を各wellに1mLずつ添加し、37℃、5%CO下で48時間培養した。培養終了後、各wellから培地を抜き、1mLのPBS(-)にて洗浄後、100μLのM-PER(PIERCE社製)を用いてタンパク質を抽出した。調製したタンパク質溶液のうち、50μLを用いてHuman IL-37/IL-1F7 ELISA Kit PicoKine(Boster社製)によりインターロイキン-37の定量を行い、残りの25μLを用いてBCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)によりタンパク質量を定量し、単位タンパク質量当たりのインターロイキン-37量を算出し、下記式によりインターロイキン-37産生促進率(%)を算出した。
【0043】
インターロイキン-37産生促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「被験試料添加時の細胞中における単位タンパク質量当たりのインターロイキン-37量」を、Bは「被験試料無添加時の細胞中における単位タンパク質量当たりのインターロイキン-37量」を表す。
結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表1及び表2に示すように、グリチルリチン酸ジカリウム及びグリチルレチン酸は、優れたインターロイキン-37産生促進作用を有することが確認された。
【0047】
[試験例2]インターロイキン-37mRNA発現促進作用試験
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)を、正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM)を用いて培養した後、トリプシン処理により回収した。回収した細胞を2.0×10cells/mLの細胞密度になるようにKGMで希釈した後、12wellプレートに1well当たり1mLずつ播種し、37℃、5%CO下で一晩培養した。培養後に培養液を捨て、KGMで必要濃度に溶解した被験試料(試料濃度は下記表2を参照)を各wellに1mLずつ添加し、37℃、5%CO下で48時間培養した。培養後、培養液を捨て、ISOGEN II(ニッポンジーン社製)にて総RNAを抽出し、波長260nmにおける吸光度からRNA量を計算し、100 ng/μLになるように総RNAを調製した。
【0048】
この総RNAを鋳型とし、インターロイキン-37及び内部標準であるYWHAZのmRNAの発現量を測定した。検出は、リアルタイムPCR装置(Thermal Cycler Dice(登録商標) Real Time System III,タカラバイオ社製) を用いて、PrimeScript RT Master Mix(Perfect Real Time,タカラバイオ社製))及びTB Green(登録商標) Fast qPCR Mix(タカラバイオ社製)による2ステップリアルタイムRT-PCR反応により行った。インターロイキン-37の発現量をYWHAZ mRNAの発現量で補正し、補正値を算出した。
【0049】
得られた補正値から、下記式によりインターロイキン-37mRNA発現促進率(%)を算出した。
インターロイキン-37mRNA発現促進率(%)=A/B×100
式中、Aは「試料添加時の補正値」を表し、Bは「試料無添加時の補正値」を表す。
結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
表3に示すように、グリチルリチン酸ジカリウムは、優れたインターロイキン-37mRNA発現促進作用を有することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本実施形態に係るインターロイキン-37産生促進剤及びインターロイキン-37mRNA発現促進剤は、刺激性物質の接触による接触性皮膚炎(かぶれ);乾癬、尋常性天疱瘡、その他肌荒れに伴う各種皮膚炎症性疾患;紫外線曝露による発赤、紅斑、色素沈着等の皮膚炎症等を予防、治療又は改善に大きく貢献することができる。