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特開2025-79426ポリエステル樹脂組成物、及び樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025079426
(43)【公開日】2025-05-22
(54)【発明の名称】ポリエステル樹脂組成物、及び樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/03 20060101AFI20250515BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20250515BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20250515BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20250515BHJP
【FI】
C08L67/03
C08K3/32
C08K3/34
C08K3/013
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192082
(22)【出願日】2023-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 樹
(72)【発明者】
【氏名】深津 博樹
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CF06W
4J002CF07X
4J002DH036
4J002DJ047
4J002DL008
4J002FA048
4J002FD018
4J002FD136
4J002FD207
4J002GN00
4J002GQ00
4J002HA09
(57)【要約】
【課題】離型性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリエチレンテレフタレート樹脂(B)とを含み、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量が、30~70mmol/kgである、ポリエステル樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリエチレンテレフタレート樹脂(B)とを含み、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量が、30~70mmol/kgである、ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の末端水酸基量の合計が、60~90mmol/kgである、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂組成物全量に対し0.1~0.5質量%のナトリウム原子又はカルシウム原子を含むリン系化合物をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
結晶核剤(D)をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂組成物全量に対し5~50質量%の無機充填材(E)をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物を用いて得られる、樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ポリエステル樹脂組成物、及び樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下、「PBT樹脂」とも呼ぶ。)は、機械的特性、電気的特性、耐熱性、耐薬品性及び耐溶剤性等の諸特性に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして、自動車用部品、電気・電子部品等の種々の用途に広く利用されている。
【0003】
近年では、各種部品の小型化、軽量化、外観性の向上に対する要求がますます高まっており、PBT樹脂を、ポリエチレンテレフタレート樹脂(以下、「PET樹脂」とも呼ぶ。)やポリカーボネート樹脂等の低結晶性のポリエステル樹脂とアロイ化することにより、成形品の外観性(表面光沢、低粗化等)や低反り性を向上させて使用することも多くなっている。
特許文献1及び2は、PBT樹脂とPET樹脂とを含む樹脂組成物を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/246335号
【特許文献2】特開平8-183114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、離型性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリエチレンテレフタレート樹脂(B)とを含み、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量が、30~70mmol/kgである、ポリエステル樹脂組成物に関する。
本発明の他の実施形態は、上記したポリエステル樹脂組成物を用いて得られる樹脂成形品に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、離型性に優れたポリエステル樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例において離型性の評価に用いた成形品を概略的に示す斜視図である。
図2】実施例において後収縮率の評価に用いた試験片を概略的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の好ましい実施形態を説明するが、本発明が下記の実施形態に限定されることはない。
【0010】
<ポリエステル樹脂組成物>
本実施形態のポリエステル樹脂組成物は、PBT樹脂(A)とPET樹脂(B)とを含み、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対し、PBT樹脂(A)の末端水酸基量が、30~70mmol/kgである、ポリエステル樹脂組成物である。
【0011】
PBT樹脂とPET樹脂とを含む樹脂組成物では、溶融時等の高温の条件下ではPBT樹脂とPET樹脂との間でエステル交換反応が発生し易い傾向がある。エステル交換反応が進み過ぎると、樹脂組成物の融点や結晶化温度が変化し、荷重たわみ温度等の温度特性や、引張強さや弾性率などが低下して期待した物性が得られなくなってしまう場合がある。また、結晶化温度が変化して結晶化しにくくなると、射出成形時の収縮量が小さくなったり、固化速度が低下することで剛性が低下し、金型からの離型時に変形したり、成形サイクル時間が長くなることで生産性が低下する場合がある。また、射出成形時に結晶化しにくい場合、成形及び組付け後に高温環境で使用された場合、結晶化が進んで後収縮が大きくなる場合がある。後収縮が大きいと、寸法変化による変形や、部品間の隙間が広がったり、部品間の干渉による破損が生じる場合がある。
【0012】
エステル交換反応は、エステル基と水酸基との反応により主鎖部分が入れ替わる反応であり、水酸基濃度により影響を受けるが、樹脂組成物中の樹脂の水酸基の合計量が少なくても、離型性が改善しない場合がある。本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、樹脂組成物中のPBT樹脂の末端水酸基量が離型性に影響を与え得ることが判明した。本実施形態では、樹脂組成物中において、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対し、PBT樹脂の末端水酸基量を30~70mmol/kgとすると、離型性を改善することができる。
また、本実施形態のポリエステル樹脂組成物により、成形品の後収縮の低減も可能となり得る。
【0013】
[ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)]
PBT樹脂(A)は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られる樹脂である。PBT樹脂(A)はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上(特に75モル%以上95モル%以下)含有する共重合体であってもよい。
また、本実施形態において、PBT樹脂の原料である1,4-ブタンジオール及びテレフタル酸又はテレフタル酸アルキルエステルは、化石資源由来又はバイオマス資源由来のいずれでもよい。
PBT樹脂(A)は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせが使用できる。
【0014】
PBT樹脂(A)の末端カルボキシル基量は、耐加水分解性の観点から、50mmol/kg以下が好ましく、40mmol/kg以下がより好ましく、30mmol/kg以下がさらに好ましい。PBT樹脂(A)の末端カルボキシル基量は、引張強さの観点から、3mmolq/kg以上が好ましく、5mmol/kg以上がより好ましく、10mmol/kg以上がさらに好ましい。PBT樹脂(A)の末端カルボキシル基量は、例えば、3~50mmol/kgが好ましく、5~40mmolq/kgがより好ましく、10~30mmol/kgがさらに好ましい。
【0015】
PBT樹脂(A)の末端水酸基量は、外観性の観点から、40mmol/kg以上が好ましく、60mmol/kg以上がより好ましく、80mmol/kg以上がさらに好ましい。一方、PBT樹脂(A)の末端水酸基量は、離型性の観点から、160mmol/kg以下が好ましく、140mmol/kg以下がより好ましく、120mmol/kg以下がさらに好ましい。PBT樹脂(A)の末端水酸基量は、例えば、40~160mmol/kgが好ましく、60~140mmol/kgがより好ましく、80~120mmol/kgがさらに好ましい。
【0016】
本明細書において、PBT樹脂(A)の末端水酸基量は、NMRで計測した値である。後述するPET樹脂(B)の末端水酸基量も、同様に、NMRで計測した値である。また、後述するポリエステル樹脂組成物におけるPBT樹脂(A)の末端水酸基量及びポリエステル樹脂組成物中のPET樹脂(B)の末端水酸基量も、NMRで計測した値である。
NMR装置としては、例えばブルカー製NMR「AVANCE III 400」を用いることができる。
【0017】
PBT樹脂(A)の固有粘度(IV)は0.5dL/g以上、1.5dL/g以下が好ましく、0.55dL/g以上1.4dL/g以下がより好ましく、0.6dL/g以上1.3dL/g以下がさらに好ましい。また、異なる固有粘度を有するPBT樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度0.7dL/gのPBT脂と固有粘度1.1dL/gのPBT樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのPBT樹脂を調製することができる。PBT樹脂(A)の固有粘度(IV)は、例えば、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0018】
PBT樹脂(A)において、テレフタル酸及びそのエステル形成性誘導体以外のジカルボン酸成分(コモノマー成分)としては、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0019】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0020】
PBT樹脂(A)において、1,4-ブタンジオール以外のグリコール成分(コモノマー成分)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0021】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2-6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0022】
以上説明したコモノマー成分を共重合したポリブチレンテレフタレート共重合体は、いずれもPBT樹脂(A)として好適に使用できる。また、PBT樹脂(A)として、ホモポリブチレンテレフタレート重合体とポリブチレンテレフタレート共重合体とを組み合わせて使用してもよい。
【0023】
PBT樹脂(A)は、市場回収品を使用することができる(マテリアルリサイクル)。また、PBT樹脂廃棄物から1,4-ブタンジオールやテレフタル酸などをモノマーレベルまで分解し(ケミカルリサイクル)、得られた原料を重縮合して製造されたPBT樹脂も使用することができる。
【0024】
PBT樹脂(A)の量は、ポリエステル樹脂組成物全量に対して、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。一方、PBT樹脂(A)の量は、ポリエステル樹脂組成物全量に対して、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。PBT樹脂(A)の量は、例えば、ポリエステル樹脂組成物全量に対して、20~80質量%が好ましく、25~70質量%がより好ましく、30~60質量%がさらに好ましい。
【0025】
[ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)]
PET樹脂(B)は、テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6アルキルエステルや酸ハロゲン化物等)、及び、エチレングリコール又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を、公知の方法に従って重縮合して得られるポリエステル樹脂である。PET樹脂の主原料であるエチレングリコール及びテレフタル酸又はテレフタル酸アルキルエステルは、化石資源由来又はバイオマス資源由来のいずれでもよい。
【0026】
PET樹脂(B)は、本発明の目的を阻害しない範囲で、テレフタロイル単位及びエチレンジオキシ単位以外の繰り返し単位を与える変性成分を少量共重合して変性されたものであってもよい。PET樹脂(B)に含まれるテレフタロイル単位及びエチレンジオキシ単位の以外の繰り返し単位の量は、ポリエチレンテレフタレート樹脂の全繰り返し単位中、4モル%未満が好ましく、3モル%以下がより好ましく、2モル%以下がさらに好ましい。
【0027】
また、PET樹脂(B)は、上述の変性成分に由来する繰り返し単位を、の全繰り返し単位中4モル%以上含むものであってもよい。本明細書において、このようなポリエチレンテレフタレート樹脂を「変性PET樹脂」と記載することもある。
【0028】
変性PET樹脂は、本発明の目的を阻害しない範囲で、テレフタル酸の他のジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6アルキルエステルや酸ハロゲン化物等)に由来するジカルボニル単位を含んでいてもよい。変性ポリエチレンテレフタレート樹脂に含まれるテレフタロイル単位の他のジカルボニル単位の量は、全ジカルボニル単位中、5モル%以上50モル%以下が好ましく、7モル%以上30モル%以下がより好ましく、10モル%以上25モル%以下が特に好ましい。
【0029】
変性成分に含まれるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体として好適な化合物としては、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)が挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0030】
これらのジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、並びに、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体がより好ましい。また、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が金属密着性及び機械的特性に優れることから、変性成分中のジカルボン酸又はそのエステル形成誘導体として、イソフタル酸、又はイソフタル酸のエステル形成性誘導体(イソフタル酸ジメチルエステル、イソフタル酸ジエチルエステル、イソフタル酸ジクロリド等)が特に好ましい。
【0031】
変性PET樹脂の製造に使用される変性成分は、本発明の目的を阻害しない範囲で、所定の量のジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体の他に、エチレングリコール及びそのエステル形成性誘導体の他のグリコール成分、ヒドロキシカルボン酸成分、ラクトン成分等を含んでいてもよい。変性ポリエチレンテレフタレート樹脂組成物において、これらグリコール成分、ヒドロキシカルボン酸成分、ラクトン成分といった変性成分に由来する繰り返し単位の量は、変性ポリエチレンテレフタレート樹脂中の全繰り返し単位中、30モル%以下が好ましく、25モル%以下がより好ましく、20モル%以下が特に好ましい。
【0032】
変性成分に含まれるグリコール成分としては、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)が挙げられる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
変性成分に含まれるヒドロキシカルボン酸成分としては、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;又はこれらのヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。これらのヒドロキシカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
変性成分に含まれるラクトン成分としては、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトンが挙げられる。これらのラクトン成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
PET樹脂(B)の末端水酸基量は、外観性の観点から、10mmol/kg以上が好ましく、20mmol/kg以上がより好ましく、30mmol/kg以上がさらに好ましい。一方、PET樹脂(A)の末端水酸基量は、離型性の観点から、80mmol/kg以下が好ましく、70mmol/kg以下がより好ましく、60mmol/kg以下がさらに好ましい。PET樹脂(B)の末端水酸基量は、例えば、10~80mmol/kgが好ましく、20~70mmol/kgがより好ましく、30~60mmol/kgがさらに好ましい。
【0036】
PET樹脂(B)は、市場回収品を使用することができる。市場回収品のPET樹脂(B)の末端水酸基量が、前記範囲から外れる場合は、窒素などの不活性ガス雰囲気中で固相重合などを行い末端水酸基量を調整しても良い。また、PET樹脂廃棄物からエチレングリコールやテレフタル酸などのモノマーレベルまで分解し、得られた原料を重縮合して製造されたPET樹脂も使用することができる。
PET樹脂(B)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
PET樹脂(B)の量は、ポリエステル樹脂組成物全量に対して、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、PET樹脂(B)の量は、ポリエステル樹脂組成物全量に対して、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。PET樹脂(B)の量は、例えば、ポリエステル樹脂組成物全量に対して、10~60質量%が好ましく、15~50質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。
【0038】
外観性の観点から、PBT樹脂(A)に対するPET樹脂(B)の質量比(PET樹脂(B))/PBT樹脂(A))は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.3以上がさらに好ましい。離型性の観点から、PBT樹脂に対するPET樹脂の質量比(PET樹脂(B))/PBT樹脂(A))は、0.8以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.6以下がさらに好ましい。
PBT樹脂に対するPET樹脂の質量比(PET樹脂(B))/PBT樹脂(A))は、例えば、0.1~0.8が好ましく、0.2~0.7がより好ましく、0.3~0.6がさらに好ましい。
【0039】
離型性の改善、及び成形品の後収縮の低減の観点から、ポリエステル樹脂組成物において、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量(PBT樹脂の質量及びPET樹脂の質量の合計)に対し、PBT樹脂の末端水酸基量は、好ましくは、30~70mmol/kgである。ポリエステル樹脂組成物において、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対し、PBT樹脂(A)の末端水酸基量は、35~65mmol/kgがより好ましく、40~60mmol/kgがさらに好ましい。
【0040】
ポリエステル樹脂組成物において、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対し、PBT樹脂(A)の末端水酸基量は、70mmol/kg以下が好ましく、65mmol/kg以下がより好ましく、60mmol/kg以下がさらに好ましい。一方、ポリエステル樹脂組成物において、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対し、PBT樹脂(A)の末端水酸基量は、30mmol/kg以上が好ましく、35mmol/kg以上がより好ましく、40mmol/kg以上がさらに好ましい。
【0041】
離型性のさらなる改善、及び成形品の後収縮率のさらなる低減の観点から、ポリエステル樹脂組成物において、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対し、PBT樹脂(A)の末端水酸基量及びPET樹脂(B)の末端水酸基量の合計は、60~90mmol/kgが好ましく、62~85mmol/kgがより好ましく、65~75mmol/kgがさらに好ましく、70~75mmol/kgがさらに好ましい。
【0042】
ポリエステル樹脂組成物において、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対し、PBT樹脂(A)の末端水酸基量及びPET樹脂(B)の末端水酸基量の合計は、90mmol/kg以下が好ましく、85mmol/kg以下がより好ましく、75mmol/kg以下がさらに好ましい。一方、ポリエステル樹脂組成物において、PBT樹脂及びPET樹脂の合計量に対し、PBT樹脂の末端水酸基量及びPET樹脂(B)の末端水酸基量の合計は、60mmol/kg以上が好ましく、62mmol/kg以上がより好ましく、65mmol/kg以上がさらに好ましく、70mmol/kg以上がさらに好ましい。
【0043】
[エステル交換抑制剤(C)]
ポリエステル樹脂組成物は、エステル交換反応の抑制の観点から、エステル交換抑制剤(C)を含むことが好ましい。エステル交換抑制剤(C)としては、例えば有機ホスファイト系化合物、ホスフォナイト系化合物、リン酸金属塩等のリン系化合物等が挙げられる。具体例を示すと、ビス(2,4-ジ-t-4メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスフォナイト、3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ-[5.5]ウンデカン等が挙げられる。リン酸金属塩としては、第一リン酸カルシウム(リン酸二水素カルシウム)等のアルカリ土類金属リン酸塩、第一リン酸ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム)等のアルカリ金属リン酸塩等が挙げられる。リン酸金属塩は、例えば、無水物であってもよく、水和物であってもよい。
離型性のさらなる向上の観点から、ポリエステル樹脂組成物は、ナトリウム原子又はカルシウム原子を含むリン系化合物を含むことが好ましく、ナトリウム原子又はカルシウム原子を含むリン酸金属塩を含むことがより好ましい。
【0044】
ポリエステル樹脂組成物において、エステル交換抑制剤(C)は、ポリエステル樹脂組成物全量に対し、0.03~0.5質量%が好ましく、0.1~0.5質量%がより好ましい。
例えば、ポリエステル樹脂組成物において、ナトリウム原子又はカルシウム原子を含むリン系化合物の量は、ポリエステル樹脂組成物全量に対し、0.1~0.5質量%が好ましく、0.15~0.3質量%がより好ましい。
【0045】
[結晶核剤(D)]
ポリエステル樹脂組成物は、樹脂の結晶化の促進観点から、結晶核剤(D)を含むことが好ましい。
結晶核剤(D)は、有機物、無機物又はこれらの組合せを用いてよい。無機物としては、例えば、Zn粉末、Al粉末、グラファイト、カーボンブラックなどの単体や、ZnO、MgO、Al、TiO、MnO、SiO、Feなどの金属酸化物、窒化アルミ、窒化硅素、窒化チタン、ボロンナイトライドなどの窒化物、NaCO、CaCO、MgCO、CaSiO、BaSO、Ca(POなどの無機塩、タルク、カオリン、クレー、白土などの粘土類を単独又は2種以上混合して使用することができる。有機物としては、例えば、シュウ酸カルシウム、シュウ酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ポリアクリル酸塩などの有機塩類、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子、高分子の架橋物などを単独又は2種以上混合して使用することができる。これらのなかでも、タルク、カーボンブラック又はそれらの組合せが好ましい。
【0046】
ポリエステル樹脂組成物において、結晶核剤(D)は、ポリエステル樹脂組成物全量に対し、0.05~2質量%が好ましく、0.1~1.5質量%がより好ましく、0.3~1質量%が更に好ましい。
【0047】
[無機充填材(E)]
ポリエステル樹脂組成物は、無機充填材(E)を含むことが好ましい。無機充填材(E)としては、繊維状無機充填材が好ましい。
【0048】
繊維状無機充填材としては、ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、金属繊維(例えば、ステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等)等が挙げられる。代表的な繊維状無機充填材としては、ガラス繊維及びカーボン繊維が挙げられ、入手の容易性やコスト面からガラス繊維が好ましく用いられる。ガラス繊維の原料となるガラスの種類は特に限定されないが、品質上、Eガラスや、組成中にジルコニウム元素を含む耐腐食ガラスが好ましく用いられる。
【0049】
ポリエステル樹脂組成物において、無機充填材(E)は、ポリエステル樹脂組成物全量に対し、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましい。
【0050】
[他の成分]
ポリエステル樹脂組成物は、必要に応じて、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、耐候安定剤、分子量調整剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染料、顔料、滑剤、可塑剤等の結晶化促進剤、近赤外線吸収剤、難燃剤、難燃助剤、着色剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0051】
[ポリエステル樹脂組成物の製造方法]
ポリエステル樹脂組成物の製造方法は、特に限定されない。ポリエステル樹脂組成物は、熱可塑性樹脂組成物の製造方法として知られる種々の方法によって製造することができる。
【0052】
ポリエステル樹脂組成物の好適な製造方法としては、例えば、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練して押出しペレットとする方法が挙げられる。
【0053】
<樹脂成形品>
本実施形態の樹脂成形品は、以上説明したポリエステル樹脂組成物を用いて得ることができる。
【0054】
ポリエステル樹脂組成物を用いて樹脂成形品を作製する方法としては特に限定はなく、公知の方法を採用することができる。例えば、ポリエステル樹脂組成物を押出機に投入して溶融混練してペレット化し、このペレットを所定の金型を装備した射出成形機に投入し、射出成形することで作製することができる。
【0055】
本実施形態の樹脂組成物は、離型性に優れており、樹脂成形品の生産性に優れる。また、この樹脂組成物を用いて得られた樹脂成形品は、高温条件下での後収縮が低減され、自動車や電車、航空産業用用途などの高温高湿環境に長期間曝される成形品として好適に用いることができる。実施形態の樹脂成形品は、コネクタ、センサー、アクチュエータ、ECUの筐体、レバー、スイッチ、リレーなどに用いることができる。
【0056】
本発明の実施形態は下記を含むが、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
<1>
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリエチレンテレフタレート樹脂(B)とを含み、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量が、30~70mmol/kgである、ポリエステル樹脂組成物。
<2>
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の末端水酸基量の合計が、60~90mmol/kgである、<1>に記載のポリエステル樹脂組成物。
<3>
前記ポリエステル樹脂組成物全量に対し0.1~0.5質量%のナトリウム原子又はカルシウム原子を含むリン系化合物をさらに含む、<1>又は<2>に記載のポリエステル樹脂組成物。
<4>
結晶核剤(D)をさらに含む、<1>~<3>のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
<5>
前記ポリエステル樹脂組成物全量に対し5~50質量%の無機充填材(E)をさらに含む、<1>~<4>のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物。
<6>
<1>~<5>のいずれか一項に記載のポリエステル樹脂組成物を用いて得られる、樹脂成形品。
【実施例0057】
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1~9、比較例1~3]
表1~3に記載の材料を表1~3に示す比率(質量%)で、30mmφの2軸押出機((株)日本製鋼所製「TEX30」)を用い、シリンダー温度260℃、スクリュ回転数130rpmで溶融混練して押出し、実施例1~9及び比較例1~3のポリエステル樹脂組成物からなるペレットを得た。表1~3に示す各成分の詳細を以下に示す。
【0059】
(1)PBT樹脂(A)
(A-1):PBT樹脂:ポリプラスチックス株式会社製、末端水酸基量100mmol/kg
(A-2):PBT樹脂、ポリプラスチックス株式会社製、末端水酸基量80mmol/kg
(A-3):PBT樹脂、ポリプラスチックス株式会社製、末端水酸基量120mmol/kg
【0060】
(2)PET樹脂(B)
(B-1):PET樹脂、インドラマ社製「N1-100」、末端水酸基量40mmol/kg
(B-2):PET樹脂、インドラマ社製「N1」、末端水酸基量40mmol/kg
【0061】
(3)無機充填材(E):ガラス繊維、日本電気硝子株式会社製「ECS 03 T-187」
【0062】
(4)エステル交換抑制剤(C)
(C-1):リン酸二水素ナトリウム、米山化学工業株式会社製
(C-2):ホスファイト系化合物、株式会社ADEKA製「アデカスタブPEP36」(3,9-ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジフォスファスピロ-[5.5]ウンデカン)
【0063】
(5)結晶核剤(D)
(D-1):タルク、林化成株式会社製「タルカンパウダーPK-NN」
(D-2):カーボンブラック、三菱ケミカル株式会社製「#750B」
【0064】
(6)酸化防止剤:BASF製「IRGANOX1010」
(7)滑剤:日油株式会社製「ユニスターH476」
【0065】
表1~3において、「PBT末端水酸基量(mmol/kg)」は、ポリエステル樹脂組成物における、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対するPBT樹脂(A)の末端水酸基量(mmol/kg)である。「PET末端水酸基量(mmol/kg)」は、ポリエステル樹脂組成物における、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対するPET樹脂(B)の末端水酸基量(mmol/kg)である。「末端水酸基量合計量(mmol/kg)」は、ポリエステル樹脂組成物における、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対するPBT樹脂(A)の末端水酸基量及びPET樹脂(B)の末端水酸基量の合計(mmol/kg)である。ポリエステル樹脂組成物におけるPBT樹脂(A)の末端水酸基量及びPET樹脂(B)の末端水酸基量は、ブルカー製NMR装置「AVANCE III 400」を用いて、NMRによって測定した値である。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
<評価方法>
【0070】
(1)冷却時間(離型性)
表1~3の樹脂組成物について、東芝株式会社製「EC40」を用いて、図1に示す形状の成形品を成形し、保圧70MPaで離型可能な最少時間(冷却時間(秒))を測定した。冷却時間が短い方が、離型性に優れる。結果(冷却時間(秒))を表中に示す。
成形条件は、以下の通りである。
【0071】
(成形条件)
シリンダー温度:250℃
金型温度:60℃
射出速度:20mm/秒
射出・保圧:5秒
【0072】
図1は、冷却時間(離型性)の評価に用いた成形品を概略的に示す斜視図ある。図1において、1は成形品、2は短面側、3は円柱、4は長面側、5はイジェクトピン突き出し部位を示す。成形品1は薄型のT字型の形状(長面側4:長さ30mm、幅15mm、厚さ1mm;短面側2:高さ10mm、幅15mm、中央厚さ2mm、最大厚さ3mm)を有するとともに、長面側4の片側に円柱3(直径3mm、高さ7mm)が設置されており、さらに、イジェクトピン(図示しない)が長面側4の別の片側の中央のイジェクトピン突き出し部位5から突き出すように設定されている。
【0073】
(2)後収縮率
表1~3の樹脂組成物について、シリンダー温度260℃、金型温度60℃で、120mm×120mm×2mm(厚さ)の試験片を成形し、140℃で3時間アニーリングする前後での流動直角方向の試験片寸法の変化率(後収縮率)を求めた。図2は、試験片の形状を概略的に示す平面図である。図2において、10は試験片、Xは流動直角方向、Yは流動方向を示す。また、図2中、Lは、流動直角方向の寸法の測定箇所を示す。具体的には、試験片の成形後かつアニーリング前、及び、アニーリング後のそれぞれにおいて、図2でLで示される個所において流動直角方向の寸法(mm)を測定して、それぞれ、アニーリング前の流動直角方向の寸法(mm)、及び、アニーリング後の流動直角方向の寸法(mm)とし、下記式により流動直角方向の後収縮率(%)を算出した。
【0074】
流動直角方向の後収縮率(%)=[(アニーリング前の流動直角方向の寸法(mm))-(アニーリング後の流動直角方向の寸法(mm))]÷120(mm)×100
【0075】
各樹脂組成物について、アニーリング前の流動直角方向の寸法(mm)、アニーリング後の流動直角方向の寸法(mm)、及び流動直角方向の後収縮率(%)を表中に示す。
【0076】
表に示されるように、PBT樹脂(A)及びPET樹脂(B)の合計量に対しPBT樹脂(A)の末端水酸基量が30~70mmol/kgである実施例1~9では、冷却離型時間及び後収縮率の評価のいずれにおいても優れた結果が示され、離型性に優れるとともに、成形品を高温の条件下等に曝露した後の後収縮を低減することができたことがわかる。
【符号の説明】
【0077】
1 成形品
2 短面側
3 円柱
4 長面側
5 イジェクトピン突き出し部位
10 試験片
X 流動直角方向
Y 流動方向
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2025-01-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリエチレンテレフタレート樹脂(B)とを含み、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量が、30~70mmol/kgであり、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)に対する前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の質量比(ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)/ポリブチレンテレフタレート樹脂(A))は、0.47以上である、
ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の末端水酸基量の合計が、60~90mmol/kgである、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂組成物全量に対し0.1~0.5質量%のナトリウム原子又はカルシウム原子を含むリン系化合物をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
結晶核剤(D)をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリエステル樹脂組成物全量に対し5~50質量%の無機充填材(E)をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物を用いて得られる、樹脂成形品。
【手続補正書】
【提出日】2025-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)とポリエチレンテレフタレート樹脂(B)と繊維状無機充填材とを含み、
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量が、30~70mmol/kgである、
ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の合計量に対し、前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)の末端水酸基量及び前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の末端水酸基量の合計が、60~90mmol/kgである、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂組成物全量に対し0.1~0.5質量%のナトリウム原子又はカルシウム原子を含むリン系化合物をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
結晶核剤(D)をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
前記繊維状無機充填材の量が、前記ポリエステル樹脂組成物全量に対し5~50質量%である、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリブチレンテレフタレート樹脂(A)に対する前記ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)の質量比(ポリエチレンテレフタレート樹脂(B)/ポリブチレンテレフタレート樹脂(A))が、0.47以上である、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項7】
前記繊維状無機充填材が、ガラス繊維、カーボン繊維又はこれらの組合せを含む、請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のポリエステル樹脂組成物を用いて得られる、樹脂成形品。