(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025080981
(43)【公開日】2025-05-27
(54)【発明の名称】調理済み麺類の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20250520BHJP
A23L 29/256 20160101ALI20250520BHJP
【FI】
A23L7/109 C
A23L29/256
A23L7/109 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023194431
(22)【出願日】2023-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000231637
【氏名又は名称】株式会社ニップン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100183379
【弁理士】
【氏名又は名称】藤代 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】園田 雄大
【テーマコード(参考)】
4B041
4B046
【Fターム(参考)】
4B041LC03
4B041LC10
4B041LD01
4B041LE10
4B041LH10
4B041LK01
4B041LK23
4B041LP01
4B041LP16
4B046LA01
4B046LB01
4B046LB09
4B046LC01
4B046LC20
4B046LG01
4B046LG15
4B046LG29
4B046LP03
4B046LP15
4B046LP41
4B046LP51
(57)【要約】
【課題】本発明は、調理してから長時間保存した後であっても、調理直後のような弾力的な食感を有する麺類を提供することを課題とする。
【解決手段】澱粉質原料と共にアルギン酸エステルと特定の炭酸水素アルカリ金属塩を特定の割合で配合することにより上記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを含む生麺類であって、
前記アルギン酸エステルの量が、前記澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部であり、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
生麺類。
【請求項2】
澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを含む麺類用生地であって、
前記アルギン酸エステルの量が、前記澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部であり、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
麺類用生地。
【請求項3】
澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを含む麺類用ミックス粉であって、
前記アルギン酸エステルの量が、澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部であり、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
麺類用ミックス粉。
【請求項4】
アルギン酸エステルと炭酸水素アルカリ金属塩とを含む麺類用品質改良剤であって、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
麺類用品質改良剤。
【請求項5】
澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを混合する工程を含み、
前記アルギン酸エステルの量が、前記澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部であり、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
麺類用ミックス粉、麺類用生地、又は、生麺類の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の生麺類の製造方法により得られた生麺類を加熱する工程を含む、調理済み麺類の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理済み麺類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
茹で後約1日以上経ってから喫食する調理済み麺は、主に小麦グルテンや卵白、増粘剤によって食感の強化を行っている。
【0003】
従来技術で製造した調理済み麺は、生麺を茹でた直後の麺の外周部と内部に生じる水分勾配が時間と共に失われるため、調理直後の麺と比較して、一定時間保存した後の弾力感が弱い。そのため、保存後にも調理直後のような弾力的な食感をもつ調理済み麺が求められていた。
【0004】
特許文献1には、小麦粉以外の穀粉または澱粉を主原料とし、アルギン酸類、アルカリ剤、水で製麺した茹で溶けが少なく、かつ良好な食味食感を呈する麺類が記載されている。特許文献2には、小麦粉と澱粉を主成分とし、酸処理を施した生麺類で、増粘剤としてペクチンを添加したことを特徴とする保存性の高い生麺類が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-245375号公報
【特許文献2】特開平9-56350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、調理してから長時間保存した後であっても、調理直後のような弾力的な食感を有する麺類を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、澱粉質原料と共にアルギン酸エステルと特定の炭酸水素アルカリ金属塩を特定の割合で配合することにより、調理してから長時間保存した後であっても、調理直後のような弾力的な食感を有する麺類を製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
〔1〕澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを含む生麺類であって、
前記アルギン酸エステルの量が、前記澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部であり、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
生麺類。
〔2〕澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを含む麺類用生地であって、
前記アルギン酸エステルの量が、前記澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部であり、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
麺類用生地。
〔3〕澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを含む麺類用ミックス粉であって、
前記アルギン酸エステルの量が、前記澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部であり、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
麺類用ミックス粉。
〔4〕アルギン酸エステルと炭酸水素アルカリ金属塩とを含む麺類用品質改良剤であって、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
麺類用品質改良剤。
〔5〕澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを混合する工程を含み、
前記アルギン酸エステルの量が、前記澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部であり、
前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、
前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである、
麺類用ミックス粉、麺類用生地、又は、生麺類の製造方法。
〔6〕〔5〕に記載の生麺類の製造方法により得られた生麺類を加熱する工程を含む、調理済み麺類の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
アルギン酸エステルが炭酸水素アルカリ金属塩と反応し、弾力の強い強靭なゲルを形成することで、加熱調理後に長時間保存した後でも調理直後のような非常に強い弾力感を有する麺類を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(1)麺類用ミックス粉
本発明の麺類用ミックス粉は、澱粉質原料と、アルギン酸エステル及び炭酸水素アルカリ金属塩を含む麺類用品質改良剤とを含む。
【0011】
「麺類」とは、澱粉質原料を水分と共に混捏して得た麺生地を麺線に加工したもの(生麺類)、またはそれらに茹でる、蒸すなどの調理を施したもの(調理済み麺類)を指す。そのような麺類としては、スパゲッティー等のロングパスタ、ペンネ等のショートパスタ、中華麺、うどん、きし麺、冷や麦、素麺、蕎麦、冷麺などが挙げられる。
【0012】
(1-1)澱粉質原料
本発明における「澱粉質原料」とは、穀粉類及び/又は澱粉類からなる。「穀粉類」とは、普通小麦、デュラム小麦、米、ライ麦、大麦、とうもろこし、そば、大豆、ひえ、あわ、アマランサス等の穀物由来の穀粉;馬鈴薯、里芋、キャッサバあるいは甘藷、山芋等の穀物に準ずる主食となる農作物である塊茎粉あるいは塊根粉などであり、好ましくは小麦粉を主体とし、任意に小麦粉以外の穀粉や塊茎粉あるいは塊根粉を含むものを使用する。「澱粉類」とは、穀物、塊茎、塊根、樹幹等及びそれらのワキシー種又はハイアミロース種から分離精製された澱粉(小麦澱粉、米澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、甘藷澱粉、緑豆澱粉、サゴ澱粉等、及びそれらのワキシー澱粉並びにハイアミロース澱粉)、及び、前記澱粉をエーテル化、エステル化、アセチル化、架橋、酸化処理、熱処理、酵素処理等並びにそれらの組合せを行った変性澱粉などをいう。
【0013】
(1-2)麺類用品質改良剤
本発明のミックス粉は、品質改良剤としてアルギン酸エステル及び炭酸水素アルカリ金属塩を含む。本発明のミックス粉を使用して調理済み麺類を製造する際にアルギン酸エステルと炭酸水素アルカリ金属塩が反応し、弾力の強い強靭なゲルを形成することで、調理してから長時間保存した後であっても、調理直後のような非常に強い弾力感を付与することができる。
【0014】
(1-2-1)アルギン酸エステル
アルギン酸エステルは、アルギン酸プロピレングリコールエステル(PGA)とも呼ばれ、海藻から抽出されるアルギン酸に、プロピレングリコールがエステル結合した形の誘導体であり、冷水や温水によく溶け、食品の安定剤や糊料として利用される増粘多糖類の一種である。
【0015】
炭酸水素アルカリ金属塩の存在下では、アルギン酸エステルの配合量が増えると麺の食感が弾力的になるが、一方で生地の伸展性が低下して扱い難くなる。麺の弾力と生地の伸展性のバランスの観点から、アルギン酸エステルの配合量は、澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部、好ましくは0.25~1.8質量部、より好ましくは0.5~1.2質量部である。
【0016】
(1-2-2)炭酸水素アルカリ金属塩
本発明において、炭酸水素アルカリ金属塩は、炭酸水素ナトリウム及び/又は炭酸水素カリウムである。上記以外の炭酸水素塩類、例えば炭酸水素アンモニウムでは、アルギン酸エステルとのゲルが生成されず、麺の弾力は向上しない。また、炭酸アルカリ金属塩、例えば炭酸ナトリウムや炭酸カリウムも同様に、アルギン酸エステルとのゲルが生成されず、麺の弾力は向上しない。
【0017】
アルギン酸エステルの存在下で炭酸水素アルカリ金属塩を配合すると麺の弾力が向上するが、一方で生地を製造する際にそぼろのまとまりは悪くなって生地の伸展性が低下し、配合量が多すぎると却って麺の弾力は弱くなる。そのため、炭酸水素アルカリ金属塩の配合量はアルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部であり、0.1~40質量部が好ましく、0.5~20質量部がより好ましい。
【0018】
(1-3)任意成分
ミックス粉は、更に必要に応じて麺類の製造に通常用いられる副材料を含んでいてもよい。該副材料の例としては、食塩;かんすい;卵白粉、卵黄粉、全卵粉等の卵粉やキサンタンガム、ウェランガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸及びその塩やエステル、寒天、ゼラチン、ペクチン、タラガム、メチルセルロース類やその誘導体、マンナン、カードラン等の増粘剤;動植物油脂、乳化油脂、ショートニング等の油脂類;レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;炭酸塩、リン酸塩等の無機塩類;大豆蛋白質、カゼイン等の蛋白類;糖類、デキストリン(難消化性含む)、食物繊維;エチルアルコール、pH調整剤、保存剤、酵素剤、酸化還元剤、色粉等の食品添加物、などが挙げられる。
【0019】
(1-4)麺類用ミックス粉の製造方法
本発明の麺類用ミックス粉の製造方法は、澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを混合する工程を含む。澱粉質原料、アルギン酸エステル及び炭酸水素アルカリ金属塩は、それぞれ粉体の状態で混合する。混合には、従来公知の粉体混合手段を特に制限なく使用することができる。
【0020】
(1-5)麺類用キット
本発明のミックス粉は、澱粉質原料及びアルギン酸エステルを含む主原料粉体と、炭酸水素アルカリ金属塩を含む練り水用粉体とを含む、キットの形態であってもよい。キットを使用して麺類用生地を製造する場合、炭酸水素アルカリ金属塩を練り水に溶解させてから、主原料粉体と練り水を混合する。
【0021】
(2)麺類用生地
本発明の麺類用生地は、澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを含む。アルギン酸エステルの量は、澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部、好ましくは0.25~1.8質量部、より好ましくは0.5~1.2質量部であり、炭酸水素アルカリ金属塩の量は、アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは0.5~20質量部である。アルカリ金属は、カリウム及び/又はナトリウムである。加水量は、澱粉質原料の種類や製造する麺類の種類等に応じて適宜調整すればよく、例えば、澱粉質原料、アルギン酸エステル及び炭酸水素アルカリ金属塩の合計100質量に対して30~55質量部であってもよい。
【0022】
本発明の麺類用生地の製造方法は、澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを混合する工程を含む。澱粉質原料、アルギン酸エステル及び炭酸水素アルカリ金属塩をそれぞれ粉体の状態で混合してミックス粉としてから練り水を加水し、混練して生地を得てもよく、本発明のミックス粉を使用するのが好ましい。あるいは、澱粉質原料及びアルギン酸エステルを含む主原料粉体に、炭酸水素アルカリ金属塩を溶解させた練り水を加水し、混練して生地を得てもよく、本発明のキットを使用するのが好ましい。安定的に製造する観点から、炭酸水素アルカリ金属塩は練り水に溶解させて混合するのが好ましい。混練には、従来公知の混練手段を特に制限なく使用することができる。加水量は、澱粉質原料の種類や製造する麺類の種類等に応じて適宜調整すればよい。例えば、本発明の麺類用ミックス粉を用いる場合、ミックス粉100質量部に対して30~55質量部の練り水を加水してもよい。生地を製造する際の練り水としては、通常使用される水、塩水、かん水などの他、ガス含有水(炭酸水等)を使用することもできる。
【0023】
(3)生麺類
本発明の生麺類は、澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを含む。アルギン酸エステルの量は、澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部、好ましくは0.25~1.8質量部、より好ましくは0.5~1.2質量部であり、炭酸水素アルカリ金属塩の量は、アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは0.5~20質量部である。アルカリ金属は、カリウム及び/又はナトリウムである。
【0024】
本発明の生麺類は、本発明の麺類用生地を成形して麺線とすることで製造することができる。生地から生麺類を得る方法は、圧延、複合や切出し等の工程を含むロール製麺、押出し、それらの組み合わせなど、特に限定されない。得られた生麺類に対して、さらに常法に従って、乾燥、調理、凍結、冷蔵、それらの組み合わせなどの処理を施してもよい。
【0025】
(4)麺類用品質改良剤
本発明はまた、麺類用品質改良剤に関する。麺類用品質改良剤は、アルギン酸エステルと炭酸水素アルカリ金属塩を含有する。炭酸水素アルカリ金属塩の量は、アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは0.5~20質量部であり、アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである。本発明の麺類用ミックス粉、麺類用生地又は生麺類において、麺類用品質改良剤の配合量は、澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.5質量部であることが好ましく、0.3~2.1質量部であることがより好ましく、0.5~1.5質量部であることがさらにより好ましい。
【0026】
(5)麺類用ミックス粉、麺類用生地又は生麺類の製造方法
本発明はまた、麺類用ミックス粉、麺類用生地又は生麺類の製造方法に関する。本発明の製造方法は、澱粉質原料と、アルギン酸エステルと、炭酸水素アルカリ金属塩とを混合する工程を含み、前記アルギン酸エステルの量が、前記澱粉質原料100質量部に対して0.22~2.3質量部、好ましくは0.25~1.8質量部、より好ましくは0.5~1.2質量部であり、前記炭酸水素アルカリ金属塩の量が、前記アルギン酸エステル100質量部に対して0.05~60質量部、好ましくは0.1~40質量部、より好ましくは0.5~20質量部であり、前記アルカリ金属が、カリウム及び/又はナトリウムである。
【0027】
(6)調理済み麺類の製造方法
本発明はまた、上記方法により得られた生麺類を加熱する工程を含む、調理済み麺類の製造方法に関する。本発明で製造される調理済み麺類は、加熱(例えば茹で又は蒸し調理)した後、低温(例えば冷蔵、チルド又は冷凍下で)保存してもよい。すなわち、本発明の調理済み麺類は、茹で麺、蒸し麺等であってもよく、それらの冷凍麺、冷蔵麺又はチルド麺などであってもよい。
【実施例0028】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0029】
<製造例1 粉体原料の製造>
表1に記載の通り、澱粉質原料である、加工澱粉A(エーテル化リン酸架橋タピオカ澱粉、松谷化学工業製)、加工澱粉B(エーテル化リン酸架橋α化タピオカ澱粉、松谷化学工業製)、小麦粉(強力粉、ニップン製)に加えて、アルギン酸エステル(太陽化学製)をビニール袋内で混合し、粉体原料を得た。
【0030】
【0031】
<製造例2 冷蔵調理済み麺の製造>
製造例1で得た粉体原料101質量部に対して、水道水48質量部に炭酸水素アルカリ金属塩(炭酸水素ナトリウム)0.01質量部を溶解させた練り水を加えて、8分間脱気ミキシング(-90kPa)をして、そぼろ生地を調製した。前記そぼろ生地を製麺ロールで圧延及び複合して麺帯を作製し、切り刃(#18角)で切り出して麺厚1.5mmの麺線(生麺)を製造した。
【0032】
得られた麺線を、生麺重量に対する茹で麺重量の歩留が180%程度となるように熱湯で茹で、水洗冷却した。得られた茹で麺にほぐれ剤(水溶性大豆増粘多糖類、不二製油株式会社)を噴霧した後、容器で200gずつ個別に包装し、冷蔵庫(9℃)で24時間保存して、冷蔵調理済み麺とした。
【0033】
<評価例>
製造例2におけるそぼろ生地の性状と、製麺ロールでの圧延時の伸展性を10名の熟練のパネラーにより、以下の評価基準で評価を行った。また、製造例2で得られた冷蔵調理済み麺を冷蔵庫から取り出した直後の喫食時の弾力を10名の熟練のパネラーにより、以下の評価基準で評価を行った。
【0034】
<評価基準>
(製麺性)そぼろの状態
5点:製麺時の生地のまとまりが非常に優れる
4点:製麺時の生地のまとまりがやや優れる
3点:製麺時の生地のまとまりが普通
2点:製麺時の生地のまとまりがやや劣る
1点:製麺時の生地のまとまりが非常に劣る
(製麺性)生地の伸展性
5点:製麺時の生地が伸びやすく、非常に良い
4点:製麺時の生地がやや伸びやすく、良い
3点:製麺時の生地が普通
2点:製麺時の生地がやや伸ばし難く、悪い
1点:製麺時の生地が伸ばし難く、非常に悪い
(麺の官能評価)弾力
5点:喫食時の弾力が非常に優れる
4点:喫食時の弾力がやや優れる
3点:喫食時の弾力が普通
2点:喫食時の弾力がやや劣る
1点:喫食時の弾力が劣る
【0035】
<試験例1 炭酸水素アルカリ金属塩の配合量の検討>
アルギン酸エステルに対する炭酸水素アルカリ金属塩の配合量を検討するため、製造例1に従って粉体原料を製造し、表2に記載の炭酸水素アルカリ金属塩の配合量に変更した以外は製造例2に従って冷蔵調理済み麺を製造し、評価例に従って製麺性評価と官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0036】
また、実施例2と同様の配合で製造例1、2に従って調理済み麺の製造を行い、冷蔵保存せずに茹で調理直後の官能評価を行った結果を参考例1に示す。
【0037】
アルギン酸エステル1質量部に対し、炭酸水素ナトリウム0.01質量部を配合した実施例2が、製麺性と麺の弾力のバランスが最も良かった。炭酸水素ナトリウムを配合しなかった比較例1はそぼろの状態と生地の伸展性は良かったが、麺の弾力が弱く不適であり、炭酸水素ナトリウム0.0001質量部を配合した比較例2でも麺の弾力はやや劣った。炭酸水素ナトリウムを0.7質量部配合した比較例3では、そぼろのまとまりがやや悪く、生地の伸展性及び麺の弾力もやや劣る評価で不適であった。実施例2と参考例1では弾力の評価は変わらず、冷蔵保存後でも調理直後と同等の食感が保てていた。
【0038】
【0039】
<試験例2 麺類用品質改良剤の配合量の検討>
澱粉質原料に対する麺類用品質改良剤(アルギン酸エステル及び炭酸水素アルカリ金属塩)の配合量を検討するため、表3に記載のアルギン酸エステルの配合量に変更した以外は、製造例1に従って粉体原料を製造し、表3に記載の炭酸水素ナトリウムの配合量に変更した以外は製造例2に従って冷蔵調理済み麺を製造し、評価例に従って製麺性評価と官能評価を行った。結果を表3に示す。
【0040】
麺類用品質改良剤の配合量が増えるほど、生地の伸展性が下がるが、麺の弾力は強くなる傾向が確認され(実施例2及び6~9)、麺類用品質改良剤の配合量が澱粉質原料100質量部に対して1.01質量部の実施例2が、最も生地の伸展性と麺の弾力のバランスが良かった。
【0041】
麺類用品質改良剤の配合量が0.21質量部の比較例4では、製麺性は優れていたが、弾力はやや弱く、麺類用品質改良剤の配合量が2.525質量部の比較例5では、麺の弾力は優れていたが、生地の伸展性はやや劣った。
【0042】
【0043】
<試験例3 粉体原料中の増粘多糖類の種類の検討>
一般にアルギン酸エステルと同様に増粘多糖類として使用されるアルギン酸、アルギン酸ナトリウムを使用して、粉体原料中の増粘多糖類の種類の検討を行った。粉体原料中のアルギン酸エステルをアルギン酸、アルギン酸ナトリウムに変更した以外は製造例1に従って粉体原料を製造し、製造例2に従って冷蔵調理済み麺を製造し、評価例に従って製麺性評価と官能評価を行った。結果を表4に示す。
【0044】
アルギン酸、アルギン酸ナトリウムを使用した比較例6、7の製麺性は、実施例2と同程度であったが、どちらも麺の弾力が著しく劣り不適であった。
【0045】
【0046】
<試験例4 炭酸水素アルカリ金属塩の添加方法の検討>
炭酸水素ナトリウムを粉体原料に加えたものと練り水に溶解させたもので、炭酸水素アルカリ金属塩の添加方法の検討を行った。粉体原料中に炭酸水素ナトリウムを加えた以外は製造例1に従って粉体原料を製造し、練り水に炭酸水素ナトリウムを加えない以外は製造例2に従って冷蔵調理済み麺を製造し、評価例に従って製麺性評価と官能評価を行った。結果を表5に示す。
【0047】
いずれの製麺方法でも製麺性及び麺の弾力に差はなく好ましかった。
【0048】
【0049】
<試験例5 アルカリ剤の種類の検討>
一般に炭酸水素ナトリウムと同様にかんすいとして使用される炭酸カリウム又は炭酸ナトリウム、及び炭酸水素ナトリウムと同様に食品添加物として使用される炭酸水素カリウム又は炭酸水素アンモニウムを使用して、アルカリ剤の種類を検討した。製造例1に従って粉体原料を製造し、練り水中のアルカリ剤を炭酸水素ナトリウムから表6に示したアルカリ剤に変更した以外は製造例2に従って冷蔵調理済み麺を製造し、評価例に従って製麺性評価と官能評価を行った。結果を表6に示す。
【0050】
炭酸水素カリウムを使用した実施例11では炭酸水素ナトリウムを使用した実施例2と同等の製麺性と麺の弾力が得られた。炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素アンモニウムを使用した比較例8~10では、製麺性は実施例2と同程度であったが、麺の弾力が大きく劣り不適であった。
【0051】
【0052】
<試験例6 澱粉質原料の種類の検討>
澱粉質原料の種類に関わらず麺類用品質改良剤(アルギン酸エステル及び炭酸水素ナトリウム)による弾力向上効果が得られるかを検討した。澱粉質原料の種類、麺類用品質改良剤(アルギン酸エステル及び炭酸水素ナトリウム)の添加有無、加水量、つなぎ剤(キサンタンガム)の添加有無を表7のように変更した以外は、製造例1に従って粉体原料を製造し、製造例2に従って冷蔵調理済み麺を製造した。加水量及びつなぎ剤の添加有無は、実施例2と同等の製麺性が得られるように、使用した澱粉質原料に応じて適宜調整した。評価例に従って製麺性評価と官能評価を行った。結果を表6に示す。
【0053】
澱粉質原料として小麦粉のみを使用した場合(比較例11、実施例12)、澱粉質原料として加工澱粉A及びBを使用し、つなぎ剤としてキサンタンガムを添加した場合(比較例12、実施例13)、及び澱粉質原料として米粉を使用し、つなぎ剤としてキサンタンガムを添加した場合(比較例13、実施例14)のいずれにおいても、麺類用品質改良剤を添加しなかった比較例と比較して、麺類用品質改良剤を添加した実施例では、良好な製麺性を維持したまま麺の弾力が向上した。
【0054】
【表7】
※米粉はニップン社製のうるち米粉砕物を使用。