(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025008103
(43)【公開日】2025-01-20
(54)【発明の名称】制御装置、透析システム、制御方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20250109BHJP
A61M 60/109 20210101ALN20250109BHJP
A61M 60/37 20210101ALN20250109BHJP
【FI】
A61M1/16 110
A61M60/109
A61M60/37
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109982
(22)【出願日】2023-07-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 集会名:2022年7月HDFの会、開催日:令和4年7月5日 掲載アドレス:https://www.micenavi.jp/jcs2023/search/detail_session/id:13420、掲載年月日:令和5年2月19日 集会名:第87回日本循環器学会学術集会、開催日(発表日):令和5年3月11日
(71)【出願人】
【識別番号】504174180
【氏名又は名称】国立大学法人高知大学
(71)【出願人】
【識別番号】522140404
【氏名又は名称】株式会社ラプラスAP
(71)【出願人】
【識別番号】515086746
【氏名又は名称】有限会社ラプラス
(71)【出願人】
【識別番号】593010969
【氏名又は名称】株式会社志成データム
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 文靖
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】村田 敦子
(72)【発明者】
【氏名】山本 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 美智子
(72)【発明者】
【氏名】澤本 一哲
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 之良
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD01
4C077HH09
4C077HH18
4C077JJ08
4C077JJ20
4C077JJ28
4C077KK30
(57)【要約】
【課題】人工透析中における患者の血圧の低下を効率良く抑制する。
【解決手段】血圧低下検知部101は、透析装置200による患者の人工透析中に患者の血圧が第1基準値以下になったことを検知する。制御部102は、血圧低下検知部101により患者の血圧が第1基準値以下になったことが検知された場合、透析装置200に、人工透析における除水速度の低下又は除水の停止を伴う除水制限処理を一時的に実行させ、圧迫装置に、患者の下半身への反復的な圧迫又は患者の下肢の挙上中における患者の腹部への反復的な圧迫を伴う反復的圧迫処理を実行させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析装置による患者の人工透析中に前記患者の血圧が第1基準値以下になったことを検知する血圧低下検知手段と、
前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置に、前記人工透析における除水速度の低下又は除水の停止を伴う除水制限処理を一時的に実行させ、圧迫装置に、前記患者の下半身への反復的な圧迫又は前記患者の下肢の挙上中における前記患者の腹部への反復的な圧迫を伴う反復的圧迫処理を実行させる制御手段と、を備える、
制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置が前記除水制限処理を実行する期間と前記圧迫装置が前記反復的圧迫処理を実行する期間とが重複するように、前記透析装置と前記圧迫装置とを制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置に前記除水制限処理の実行を開始させた後、前記圧迫装置に前記反復的圧迫処理の実行を開始させる、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記患者の血圧が前記第1基準値よりも高い第2基準値以上になったことを検知する血圧上昇検知手段を備え、
前記制御手段は、前記透析装置に前記除水制限処理の実行を開始させた後、前記血圧上昇検知手段により前記患者の血圧が前記第2基準値以上になったことが検知された場合、前記透析装置に前記除水制限処理の実行を終了させる、
請求項1から3の何れか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
人工透析により患者の体内に溜まった水分を取り除く透析装置と、
前記患者の下半身への反復的な圧迫又は前記患者の下肢の挙上中における前記患者の腹部への反復的な圧迫を伴う反復的圧迫処理を実行する圧迫装置と、
前記透析装置による前記患者の人工透析中に前記患者の血圧が第1基準値以下になったことを検知する血圧低下検知手段と、
前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置に、前記人工透析における除水速度の低下又は除水の停止を伴う除水制限処理を一時的に実行させ、前記圧迫装置に前記反復的圧迫処理を実行させる制御手段と、を備える、
透析システム。
【請求項6】
透析装置と圧迫装置とを制御する制御装置が実行する制御方法であって、
前記透析装置による患者の人工透析中に前記患者の血圧が低下したことを検知した場合、前記透析装置に、前記人工透析における除水を一時的に制限させ、前記圧迫装置に、前記患者の下半身を反復的に圧迫させ、又は、前記患者の下肢の挙上中に前記患者の腹部を反復的に圧迫させる、
制御方法。
【請求項7】
コンピュータを、
透析装置による患者の人工透析中に前記患者の血圧が第1基準値以下になったことを検知する血圧低下検知手段、
前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置に、前記人工透析における除水速度の低下又は除水の停止を伴う除水制限処理を一時的に実行させ、圧迫装置に、前記患者の下半身への反復的な圧迫又は前記患者の下肢の挙上中における前記患者の腹部への反復的な圧迫を伴う反復的圧迫処理を実行させる制御手段、として機能させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、透析システム、制御方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓に障害のある患者に対して、人工透析が実施されることがある。人工透析は、傷害された腎臓の代わりに老廃物と水分とを体外に排出する技術である。人工透析中は、患者の体内に溜まった水分が除去される除水処理が実行されるため、患者の血圧が低下することが頻繁にある。患者の血圧が低下し過ぎると、人工透析を継続することができない。
【0003】
そこで、現在、人工透析中に患者の血圧が低下し過ぎないようにする技術が開発されている。例えば、特許文献1には、人工透析中に患者の血圧が急激に低下した場合に、患者の血圧を維持するため、圧迫装置により患者の下半身を圧迫する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、人工透析中は、上記除水処理の影響により、患者の下半身が圧迫されても患者の血圧の低下が十分に抑制できないことがある。患者の血圧の低下を抑制する別の方法として、患者の下肢が挙上した状態で患者の腹部を圧迫する方法も考えられる。しかしながら、この方法によっても、上記除水処理の影響により、患者の血圧の低下が十分に抑制できないことがある。このため、人工透析中における患者の血圧の低下を効率良く抑制する技術が望まれている。
【0006】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、人工透析中における患者の血圧の低下を効率良く抑制する制御装置、透析システム、制御方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の第1の観点に係る制御装置は、
透析装置による患者の人工透析中に前記患者の血圧が第1基準値以下になったことを検知する血圧低下検知手段と、
前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置に、前記人工透析における除水速度の低下又は除水の停止を伴う除水制限処理を一時的に実行させ、圧迫装置に、前記患者の下半身への反復的な圧迫又は前記患者の下肢の挙上中における前記患者の腹部への反復的な圧迫を伴う反復的圧迫処理を実行させる制御手段と、を備える。
【0008】
前記制御手段は、前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置が前記除水制限処理を実行する期間と前記圧迫装置が前記反復的圧迫処理を実行する期間とが重複するように、前記透析装置と前記圧迫装置とを制御してもよい。
【0009】
前記制御手段は、前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置に前記除水制限処理の実行を開始させた後、前記圧迫装置に前記反復的圧迫処理の実行を開始させてもよい。
【0010】
前記患者の血圧が前記第1基準値よりも高い第2基準値以上になったことを検知する血圧上昇検知手段を備え、
前記制御手段は、前記透析装置に前記除水制限処理の実行を開始させた後、前記血圧上昇検知手段により前記患者の血圧が前記第2基準値以上になったことが検知された場合、前記透析装置に前記除水制限処理の実行を終了させてもよい。
【0011】
上記目的を達成するために、本開示の第2の観点に係る透析システムは、
人工透析により患者の体内に溜まった水分を取り除く透析装置と、
前記患者の下半身への反復的な圧迫又は前記患者の下肢の挙上中における前記患者の腹部への反復的な圧迫を伴う反復的圧迫処理を実行する圧迫装置と、
前記透析装置による前記患者の人工透析中に前記患者の血圧が第1基準値以下になったことを検知する血圧低下検知手段と、
前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置に、前記人工透析における除水速度の低下又は除水の停止を伴う除水制限処理を一時的に実行させ、前記圧迫装置に前記反復的圧迫処理を実行させる制御手段と、を備える。
【0012】
上記目的を達成するために、本開示の第3の観点に係る制御方法は、
透析装置と圧迫装置とを制御する制御装置が実行する制御方法であって、
前記透析装置による患者の人工透析中に前記患者の血圧が低下したことを検知した場合、前記透析装置に、前記人工透析における除水を一時的に制限させ、前記圧迫装置に、前記患者の下半身を反復的に圧迫させ、又は、前記患者の下肢の挙上中に前記患者の腹部を反復的に圧迫させる。
【0013】
上記目的を達成するために、本開示の第4の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
透析装置による患者の人工透析中に前記患者の血圧が第1基準値以下になったことを検知する血圧低下検知手段、
前記血圧低下検知手段により前記患者の血圧が前記第1基準値以下になったことが検知された場合、前記透析装置に、前記人工透析における除水速度の低下又は除水の停止を伴う除水制限処理を一時的に実行させ、圧迫装置に、前記患者の下半身への反復的な圧迫又は前記患者の下肢の挙上中における前記患者の腹部への反復的な圧迫を伴う反復的圧迫処理を実行させる制御手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、人工透析中における患者の血圧の低下を効率良く抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図7】実施の形態1に係る制御装置が実行する血圧低下抑制処理を示すフローチャート
【
図8】実施の形態1に係る透析システムにおける積算除水量を示すグラフ
【
図9】比較例1に係る透析システムにおける積算除水量を示すグラフ
【
図10】比較例2に係る透析システムにおける積算除水量を示すグラフ
【
図14】実施の形態2に係る下肢挙上装置による下肢の挙上の説明図
【
図16】実施の形態2に係る制御装置が実行する血圧低下抑制処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付す。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る透析システム1000の構成を示す図である。透析システム1000は、腎臓に障害があり、腎臓の機能が低下した患者50に対して、人工透析を実施するシステムである。人工透析とは、腎臓の代わりに、人工的に、老廃物と水分とを体外に排出することである。人工透析中は、患者の体内に溜まった水分を、血管内を流れる血液から除去する除水処理が実行される。
【0018】
このため、人工透析中は、患者50の血圧が低下することが頻繁にあり、時間の経過と共に患者50の血圧が低下していくことが一般的である。ここで、患者50の血圧が低下し過ぎると、患者50の身体に悪影響が生じるため、除水処理を強制停止せざるを得ない。除水処理が強制停止されると、老廃物と水分とが十分に体外に排出されない。そこで、透析システム1000は、人工透析中に患者50の血圧が低下した場合、患者50の血圧を上昇させる機能を有する。
【0019】
患者50の血圧を上昇させる方法として、主に、患者50の下半身を繰り返し圧迫する方法(以下、適宜「下半身を圧迫する方法」とする。)と、患者50の下肢を挙上させた状態で患者50の腹部を繰り返し圧迫する方法(以下、適宜「下肢挙上状態で腹部を圧迫する方法」とする。)がある。患者50の下半身を圧迫することは、患者50の下半身全体の周りから下半身全体に圧力を加えることである。下半身は、腹部と下肢とを含む概念である。患者50の腹部を圧迫することは、患者50の腹部の周りから腹部に圧力を加えることである。患者50の下肢を挙上させることは、患者50の足の位置を患者50の心臓の位置よりも高くすることである。
【0020】
患者50の下半身が繰り返して圧迫されると、患者50の下半身の静脈系から患者50の体幹に血液が戻り、患者50の体幹に戻った血液が心臓に供給される。このため、下半身を圧迫する方法によれば、患者50の血圧が上昇する効果が期待できる。また、患者50の下肢を挙上させると、患者50の下肢の静脈系から患者50の体幹に血液が戻りやすくなる。この状態で、患者50の腹部が繰り返して圧迫されると、患者50の体幹に戻った血液が心臓に供給される。このため、下肢挙上状態で腹部を圧迫する方法によれば、患者50の血圧が上昇する効果が期待できる。
【0021】
しかしながら、除水速度が高い状態では、仮に、患者50の下半身又は腹部が圧迫されても、患者50の血圧を大幅に上昇させることが困難である。言い換えれば、患者50の血圧を大幅に上昇させるためには、除水速度が低い状態、又は、除水が停止した状態で、患者50の下半身又は腹部が圧迫されることが好適である。そこで、透析システム1000は、人工透析中に患者50の血圧が低下した場合、除水速度を一時的に低下させ、又は、除水を一時的に停止させた上で、患者50の下半身を繰り返して圧迫する。除水速度は、人工透析における単位時間当たりの除水量である。
【0022】
図1に示すように、透析システム1000は、制御装置100と、透析装置200と、下半身圧迫装置300とを備える。制御装置100は、透析装置200と下半身圧迫装置300とのそれぞれと通信可能に接続される。
【0023】
制御装置100は、透析システム1000の全体の動作を制御する装置である。例えば、制御装置100は、透析装置200が備える血圧センサ270から患者50の血圧を示す血圧情報を取得し、患者50の血圧が低下したことを検知する。また、制御装置100は、患者50の血圧の低下を検知した場合、下半身圧迫装置300を制御して除水速度を低下させるとともに、下半身圧迫装置300を制御して患者50の下半身を圧迫する。
【0024】
制御装置100は、透析システム1000の制御に特化した専用のコンピュータでもよいし、スマートフォン、タブレット端末、ノートパソコン等の汎用のコンピュータでもよい。
図2に示すように、制御装置100は、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、操作受付部14と、通信部15とを備える。
【0025】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、RTC(Real Time Clock)等を備える。CPUは、中央処理装置、中央演算装置、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)等とも呼び、制御装置100の制御に係る処理及び演算を実行する中央演算処理部として機能する。制御部11において、CPUは、ROMに格納されているプログラム及びデータを読み出し、RAMをワークエリアとして用いて、制御装置100を統括制御する。RTCは、例えば、計時機能を有する集積回路である。なお、CPUは、RTCから読み出される時刻情報から現在日時を特定可能である。
【0026】
記憶部12は、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)等の不揮発性の半導体メモリを備えており、いわゆる補助記憶装置としての役割を担う。記憶部12は、制御部11が各種処理を実行するために使用するプログラム及びデータを記憶する。また、記憶部12は、制御部11が各種処理を実行することにより生成又は取得するデータを記憶する。
【0027】
表示部13は、制御部11による制御に従って、各種の画像を表示する。表示部13は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部14は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を制御部11に供給する。操作受付部14は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。
【0028】
通信部15は、制御部11による制御に従って、各種の装置と通信する。通信部15は、各種の無線通信規格又は各種の有線通信規格に則って、各種の装置と通信する。各種の無線通信規格としては、Wi-Fi(登録商標)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)等がある。各種の有線通信規格としては、USB(Universal Serial Bus、登録商標)、Thunderbolt(登録商標)等がある。通信部15は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0029】
透析装置200は、患者50に対して人工透析を実施する装置である。
図3に示すように、透析装置200は、透析制御部210と、表示部220と、操作受付部230と、通信部240と、透析液供給装置250と、透析器260と、排水タンク265と、血圧センサ270と、血液循環ポンプ281と、陰圧ポンプ282とを備える。透析液供給装置250と透析器260とは、配管291により接続される。透析器260と血液循環ポンプ281とは、配管292により接続される。血液循環ポンプ281と患者50の橈骨動脈とは、配管293により接続される。透析器260と患者50の前腕皮静脈とは、配管294により接続される。透析器260と陰圧ポンプ282とは、配管295により接続される。陰圧ポンプ282と排水タンク265とは、配管296により接続される。
【0030】
透析制御部210は、透析装置200全体の動作を制御する。透析制御部210は、CPU、ROM、RAM、RTC等を備える。透析制御部210は、ユーザによる人工透析の開始指示に従って、人工透析を開始する。例えば、透析制御部210は、透析装置200の除水速度が、操作受付部230により受け付けられた設定除水速度となるように、血液循環ポンプ281と陰圧ポンプ282とを制御する。設定除水速度は、例えば、患者50の体重に応じて定められる。また、透析制御部210は、制御装置100による制御に従って、除水速度を一時的に低下させる。また、透析制御部210は、透析装置200の除水速度、設定除水速度、患者50の血圧等を表示部220に表示させる。
【0031】
表示部220は、透析制御部210による制御に従って、各種の画像を表示する。透析制御部210は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部230は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を透析制御部210に供給する。操作受付部230は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。通信部240は、透析制御部210による制御に従って、制御装置100と通信する。通信部240は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0032】
透析液供給装置250は、濃縮液と水とを予め定められた比率で混合して透析液を調製する。また、透析液供給装置250は、調整した透析液の温度を予め定められた温度に調整する。透析液供給装置250は、配管291を介して、調整した透析液を透析器260に供給する。
【0033】
透析器260は、透析液供給装置250から供給された透析液を用いて、患者50の血液を浄化する。透析器260の内部では、透析作用によって、患者50の血液から透析液に老廃物と水とが移動し、透析液から血液に患者50にとって必要なイオンが移動する。透析器260は、浄化した血液を、配管294を介して、患者50の前腕皮静脈に戻す。排水タンク265は、透析器260から供給された老廃物と水とを含む透析液を貯留する。
【0034】
血圧センサ270は、患者50の血圧を検知する。血圧センサ270は、例えば、患者50の腕に取り付けられて患者50の上半身の血圧を検知する血圧計である。血圧センサ270は、患者50の血圧を示す血圧情報を制御装置100に供給する。患者50の血圧をどのように定義するのかは、適宜、調整することができる。例えば、患者50の血圧は、収縮期血圧でもよいし、拡張期血圧でもよいし、平均血圧でもよい。平均血圧は、例えば、(収縮期血圧-拡張期血圧)/3+拡張期血圧という計算式により算出される。本実施の形態では、患者50の血圧は、収縮期血圧を示すものとする。
【0035】
血液循環ポンプ281は、配管293を介して患者50の橈骨動脈から供給された血液を、配管292を介して透析器260に供給する。陰圧ポンプ282は、透析液供給装置250から陰圧ポンプ282までの経路の内部を陰圧にすることにより、透析液供給装置250に貯留された透析液を、透析器260に導入させる。陰圧ポンプ282は、配管295を介して透析器260から供給された、老廃物と水とを含む透析液を、配管296を介して、排水タンク265に供給する。
【0036】
下半身圧迫装置300は、患者50の下半身を圧迫する装置である。本実施の形態では、下半身圧迫装置300は、患者50の下半身の周囲に取り付けられた圧迫体350の内部の空気の圧力を調整することにより、患者50の下半身を圧迫する。なお、本実施の形態では、下半身圧迫装置300は、予め定められた周期で、患者50の下半身の圧迫と患者50の下半身の圧迫の解除とを繰り返す。この予め定められた周期は、例えば、患者50の呼吸の周期と同程度の周期である。
【0037】
図4に示すように、下半身圧迫装置300は、空圧制御部310と、表示部320と、操作受付部330と、通信部340と、圧迫体350と、コンプレッサ361と、エアタンク362と、減圧器363と、電空レギュレータ364と、排気用バルブ365と、リリーフバルブ366と、気圧センサ367と、圧迫圧センサ368とを備える。なお、コンプレッサ361及びエアタンク362の代わりに、圧縮空気ボンベが用いられてもよい。
【0038】
空圧制御部310は、下半身圧迫装置300の全体の動作を制御する。例えば、空圧制御部310は、患者50の下半身に装着された圧迫体350の内部の空気の圧力である圧迫圧が、通信部340を介して制御装置100から指示された圧迫力に対応する圧力になるように、各部を制御する。なお、空圧制御部310は、患者50の下半身の圧迫と患者50の下半身の圧迫の解除とを繰り返す。つまり、空圧制御部310は、予め定められた周期で上記圧迫圧を増減させて、患者50の下半身を繰り返して圧迫する。
【0039】
なお、本実施の形態では、患者50の下半身を圧迫するときのピークの圧迫圧、つまり、圧迫体350が最も膨張しているときの圧迫圧を、適宜、単に、圧迫圧という。同様に、患者50の下半身を圧迫するときのピークの圧迫力、つまり、圧迫体350が最も膨張しているときの圧迫力を、適宜、単に、圧迫力という。空圧制御部310は、CPU、ROM、RAM、RTC等を備える。
【0040】
表示部320は、空圧制御部310による制御に従って、各種の画像を表示する。表示部320は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部330は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を空圧制御部310に供給する。操作受付部330は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。通信部340は、空圧制御部310による制御に従って、制御装置100と通信する。通信部340は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0041】
圧迫体350は、患者50の下半身を圧迫するために、患者50の下半身に装着される部材である。
図5に示すように、圧迫体350は、袋体支持部351と、袋体352Aと、袋体352Bと、袋体352Cと、袋体352Dと、袋体352Eと、空気供給チューブ353Aと、空気供給チューブ353Bと、空気供給チューブ353Cと、空気供給チューブ353Dと、空気供給チューブ353Eとを備える。以下、適宜、袋体352Aと袋体352Bと袋体352Cと袋体352Dと袋体352Eとを総称して、袋体352という。また、適宜、空気供給チューブ353Aと空気供給チューブ353Bと空気供給チューブ353Cと空気供給チューブ353Dと空気供給チューブ353Eとを総称して、空気供給チューブ353という。
【0042】
袋体支持部351は、袋体352が取り付けられるズボン状の部材である。袋体支持部351における腹部に相当する部分には、袋体352Aが取り付けられる。袋体支持部351における右足の大腿部に相当する部分には、袋体352Bが取り付けられる。袋体支持部351における右足の下腿部に相当する部分には、袋体352Cが取り付けられる。袋体支持部351における左足の大腿部に相当する部分には、袋体352Dが取り付けられる。袋体支持部351における左足の下腿部に相当する部分には、袋体352Eが取り付けられる。
【0043】
袋体352は、電空レギュレータ364から空気供給チューブ353を介して供給された空気により膨張する部材である。袋体352が膨張すると患者50の下半身が圧迫され、袋体352が収縮すると患者50の下半身の圧迫が解除される。袋体352は、圧迫される部位の少なくとも一部を覆うように、袋体支持部351に取り付けられる。例えば、袋体352Aは、患者50の腹部の周囲を覆うように袋体支持部351に取り付けられてもよいし、患者50の腹部の前側又は後側を覆うように袋体支持部351に取り付けられてもよい。
【0044】
同様に、袋体352Bは、患者50の右足の大腿部の周囲を覆うように袋体支持部351に取り付けられてもよいし、患者50の右足の大腿部の前側又は後ろ側を覆うように袋体支持部351に取り付けられてもよい。袋体352Aの膨張により、患者50の腹部が圧迫される。袋体352Bの膨張により、患者50の右足の大腿部が圧迫される。袋体352Cの膨張により、患者50の右足の下腿部が圧迫される。袋体352Dの膨張により、患者50の左足の大腿部が圧迫される。袋体352Eの膨張により、患者50の左足の下腿部が圧迫される。袋体352Aと袋体352Bと袋体352Cと袋体352Dと袋体352Eとは、基本的に、同じタイミングで膨張及び収縮を繰り返す。
【0045】
空気供給チューブ353は、袋体352に空気を供給し、袋体352から空気を放出するためのチューブである。つまり、空気供給チューブ353は、袋体352の内部の空気の量を調整するための空気を出し入れするためのチューブである。空気供給チューブ353Aは、袋体352Aの内部の空気の量の調整のためのチューブである。空気供給チューブ353Bは、袋体352Bの内部の空気の量の調整のためのチューブである。空気供給チューブ353Cは、袋体352Cの内部の空気の量の調整のためのチューブである。空気供給チューブ353Dは、袋体352Dの内部の空気の量の調整のためのチューブである。空気供給チューブ353Eは、袋体352Eの内部の空気の量の調整のためのチューブである。
【0046】
コンプレッサ361と、エアタンク362と、減圧器363と、電空レギュレータ364と、排気用バルブ365と、リリーフバルブ366とは、患者50の下半身に装着された圧迫体350を膨張及び収縮させる空圧システムを構成する。
【0047】
コンプレッサ361は、空気を圧縮し、圧縮した空気(以下、適宜「第1圧縮空気」という。)をエアタンクに供給する。エアタンク362は、コンプレッサ361から供給された第1圧縮空気を蓄える。エアタンク362が蓄えた第1圧縮空気は、減圧器363に供給される。減圧器363は、エアタンク362から供給された第1圧縮空気を減圧して第2圧縮空気にする。第2圧縮空気の気圧は、第1圧縮空気の気圧よりも低く、大気圧よりも高い。第2圧縮空気の気圧は、電空レギュレータ364が扱うことができる程度の気圧である。
【0048】
電空レギュレータ364は、減圧器363から供給された第2圧縮空気を圧迫体350に供給する。また、電空レギュレータ364は、圧迫体350から第2圧縮空気を抜き取る。つまり、電空レギュレータ364は、圧迫体350の内部の空気の量を調整する。排気用バルブ365は、空圧制御部310による制御に従って、開閉する電磁バルブである。排気用バルブ365が開くと、空圧システムの内部の第1圧縮空気が空圧システムの外部に排出される。リリーフバルブ366は、電空レギュレータ364から圧迫体350に供給される第2圧縮空気の圧力が閾値以上になったときに、この第2圧縮空気を放出する。リリーフバルブ366は、圧迫体350の内部の第2圧縮空気の気圧が過度に大きくなることを防止する安全弁として機能する。
【0049】
気圧センサ367は、第1圧縮空気の気圧を検知する。気圧センサ367は、第1圧縮空気の気圧を示す気圧情報を空圧制御部310に供給する。圧迫圧センサ368は、第2圧縮空気の気圧を検知する。圧迫圧センサ368は、第2圧縮空気の気圧を示す圧迫圧情報を空圧制御部310に供給する。第2圧縮空気の気圧は、圧迫体350の内部の空気の圧力であり、適宜、圧迫圧という。気圧センサ367と圧迫圧センサ368とは、例えば、半導体の気圧センサである。
【0050】
次に、
図6を参照して、制御装置100の機能について説明する。制御装置100は、機能的には、血圧低下検知部101と、制御部102と、血圧上昇検知部105とを備える。制御部102は、機能的には、透析制御部103と、圧迫制御部104とを備える。これらの各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又は、ソフトウェアとファームウェアとの組み合わせによって実現される。ソフトウェア及びファームウェアは、プログラムとして記述され、ROM又は記憶部12に格納される。そして、CPUが、ROM又は記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、これらの各機能を実現する。
【0051】
血圧低下検知部101は、透析装置200による患者50の人工透析中に患者50の血圧が第1基準値以下になったことを検知する。例えば、血圧低下検知部101は、血圧センサ270から取得した血圧情報が示す血圧が第1基準値以下であるか判別する。なお、本実施の形態では、患者50の血圧は、患者50の収縮期血圧である。従って、血圧低下検知部101は、患者50の収縮期血圧が第1基準値以下になったか否かを判別する。第1基準値をどの程度の値にするのかは、適宜、調整することができる。例えば、第1基準値は、患者50の正常時における収縮期血圧の60%から90%程度としてもよい。血圧低下検知部101は、血圧低下検知手段の一例である。
【0052】
制御部102は、透析装置200と下半身圧迫装置300とを制御する。制御部102が備える透析制御部103は、透析装置200を制御する。また、制御部102が備える圧迫制御部104は、下半身圧迫装置300を制御する。透析制御部103は、血圧低下検知部101により患者50の血圧が第1基準値以下になったことが検知された場合、透析装置200に除水制限処理を一時的に実行させる。除水制限処理は、人工透析による除水を制限する処理であり、除水速度の低下又は除水の停止を伴う処理である。除水制限処理は、除水速度が低下した状態を維持する処理でもよいし、除水が停止した状態を維持する処理でもよい。本実施の形態では、除水制限処理は、除水速度が低下した状態を維持する処理である。
【0053】
透析制御部103は、例えば、除水速度の低下を指示するコマンドを透析装置200に送信する。このコマンドを受信した透析装置200は、除水速度を低下させる。例えば、透析装置200が備える透析制御部210は、血液循環ポンプ281と陰圧ポンプ282とを制御して除水速度を低下させる。透析制御部103は、除水制御処理の実行中に、除水速度を一定値に維持してもよいし、除水速度を変化させてもよい。例えば、透析制御部103は、除水制御処理の実行中に、患者50の血圧に応じて、除水速度を変化させてもよい。具体的には、透析制御部103は、患者50の血圧が低い程、除水速度を低くして、患者50の血圧の上昇を促してもよい。
【0054】
圧迫制御部104は、血圧低下検知部101により患者50の血圧が第1基準値以下になったことが検知された場合、下半身圧迫装置300に反復的圧迫処理を実行させる。反復的圧迫処理は、患者50に反復的に圧迫を繰り返す処理である。反復的圧迫処理は、患者50の下半身に反復的に圧迫を繰り返す処理でもよいし、患者50の下肢の挙上中に患者50の腹部に反復的に圧迫を繰り返す処理でもよい。本実施の形態では、反復的圧迫処理は、患者50の下半身に反復的に圧迫を繰り返す処理である。
【0055】
圧迫制御部104は、例えば、患者50の下半身への反復的な圧迫を指示するコマンドを下半身圧迫装置300に送信する。このコマンドを受信した下半身圧迫装置300は、患者50の下半身に反復的な圧迫を繰り返す。例えば、下半身圧迫装置300が備える空圧制御部310は、電空レギュレータ354を制御して、圧迫体350の膨張と収縮とを繰り返すことにより、患者50の下半身を繰り返して圧迫する。
【0056】
圧迫制御部104は、反復的圧迫処理の実行中に、圧迫圧を一定値に維持してもよいし、圧迫圧を変化させてもよい。例えば、圧迫制御部104は、反復的圧迫処理の実行中に、患者50の血圧に応じて、圧迫圧を変化させてもよい。具体的には、圧迫制御部104は、患者50の血圧が低い程、圧迫圧を高くして、患者50の血圧の上昇を促してもよい。なお、圧迫圧は、上述の通り、圧迫体350が最も膨張したときのピークの圧迫圧である。制御部102は、制御手段の一例である。透析装置200は、透析装置の一例である。下半身圧迫装置300は、圧迫装置の一例である。
【0057】
制御部102は、血圧低下検知部101により患者50の血圧が第1基準値以下になったことが検知された場合、透析装置200が除水制限処理を実行する期間と下半身圧迫装置300が反復的圧迫処理を実行する期間とが重複するように、透析装置200と下半身圧迫装置300とを制御する。除水制限処理と反復的圧迫処理とが実行される順序は、適宜、調整することができる。例えば、反復的圧迫処理が開始される前に、除水制限処理が開始されてもよい。また、反復的圧迫処理が開始された後に、除水制限処理が開始されてもよい。また、除水制限処理と反復的圧迫処理とが同時に開始されてもよい。
【0058】
本実施の形態では、制御部102は、透析装置200に除水制限処理の実行を開始させた後、下半身圧迫装置300に反復的圧迫処理の実行を開始させる。例えば、透析制御部103は、血圧低下検知部101により患者50の血圧が第1基準値以下になったことが検知された場合、透析装置200に除水制限処理の開始を指示するコマンドを送信する。一方、圧迫制御部104は、透析装置200の除水制限処理の開始後且つ終了前に、下半身圧迫装置300に反復的圧迫処理の開始を指示するコマンドを送信する。
【0059】
なお、本実施の形態では、基本的に、人工透析中は除水が継続されるため、人工透析中に反復的圧迫処理が終了すると、患者50の血圧が低下する。一方、人工透析が終了した場合、透析装置200内の血液が患者50に戻されるため患者50の血圧が上昇する。そこで、本実施の形態では、下半身圧迫装置300は、人工透析中に反復的圧迫処理を開始した場合、人工透析の終了時に反復的圧迫処理を終了する。かかる構成によれば、人工透析の終了に伴う患者50の血圧の上昇と反復的圧迫処理の終了に伴う患者50の血圧の低下とが相殺され、反復的圧迫処理の終了により患者50の血圧が低下することが抑制される。
【0060】
血圧上昇検知部105は、患者の血圧が第1基準値よりも高い第2基準値以上になったことを検知する。例えば、血圧上昇検知部105は、血圧センサ270から取得した血圧情報が示す血圧が第2基準値以上であるか判別する。第2基準値をどの程度の値にするのかは、適宜、調整することができる。例えば、第2基準値は、第1基準値の110%から150%程度としてもよい。血圧上昇検知部105は、血圧上昇検知手段の一例である。
【0061】
次に、
図7のフローチャートを参照して、制御装置100が実行する血圧低下抑制処理について説明する。血圧低下抑制処理は、例えば、透析装置200による人工透析が開始されたことに応答して実行される。また、血圧低下抑制処理は、例えば、透析装置200による人工透析が終了したことに応答して終了する。
【0062】
まず、制御装置100が備える制御部11は、血圧情報を取得する(ステップS101)。例えば、制御部11は、通信部15を介して、血圧センサ270から血圧情報を取得する。制御部11は、ステップS101の処理を完了すると、患者50の血圧が第1基準値以下であるか否かを判別する(ステップS102)。例えば、制御部11は、取得した血圧情報が示す血圧が第1基準値以下であるか否かを判別する。第1基準値を示す情報は、例えば、記憶部12に記憶されている。
【0063】
制御部11は、患者50の血圧が第1基準値以下でないと判別すると(ステップS102:NO)、ステップS101に処理を戻す。制御部11は、患者50の血圧が第1基準値以下であると判別すると(ステップS102:YES)、除水制限処理の開始を透析装置200に指示する(ステップS103)。例えば、制御部11は、除水制限処理の開始を指示するコマンドを、通信部15を介して透析装置200に送信する。透析装置200は、このコマンドを受信すると、除水制限処理を開始する。つまり、透析装置200は、除水速度を低下させて、透析処理を継続する。
【0064】
制御部11は、ステップS103の処理を完了すると、規定時間ウェイトする(ステップS104)。この規定時間は、例えば、数分程度の時間である。この規定時間を示す情報は、例えば、記憶部12に記憶されている。
【0065】
制御部11は、ステップS104の処理を完了すると、反復的圧迫処理の開始を下半身圧迫装置300に指示する(ステップS105)。例えば、制御部11は、反復的圧迫処理の開始を指示するコマンドを、通信部15を介して下半身圧迫装置300に送信する。下半身圧迫装置300は、このコマンドを受信すると、反復的圧迫処理を開始する。つまり、下半身圧迫装置300は、圧迫体350の膨張及び収縮を繰り返す処理を開始して、患者50の下半身を反復的に圧迫する処理を開始する。
【0066】
制御部11は、ステップS105の処理を完了すると、血圧情報を取得する(ステップS106)。制御部11は、ステップS106の処理を完了すると、患者50の血圧が第2基準値以上であるか否かを判別する(ステップS107)。例えば、制御部11は、取得した血圧情報が示す血圧が第2基準値以上であるか否かを判別する。第2基準値を示す情報は、例えば、記憶部12に記憶されている。
【0067】
制御部11は、患者50の血圧が第2基準値以上でないと判別すると(ステップS107:NO)、ステップS106に処理を戻す。制御部11は、患者50の血圧が第2基準値以上であると判別すると(ステップS107:YES)、除水制限処理の終了を透析装置200に指示する(ステップS108)。
【0068】
例えば、制御部11は、除水制限処理の終了を指示するコマンドを、通信部15を介して透析装置200に送信する。透析装置200は、このコマンドを受信すると、除水制限処理を終了する。つまり、透析装置200は、除水速度を設定除水速度に戻して、透析処理を継続する。制御部11は、ステップS108の処理を完了すると、ステップS101に処理を戻す。
【0069】
次に、
図8を参照して、本実施の形態に係る透析システム1000における積算除水量について説明する。積算除水量は、人工透析が開始されてから現在時刻に至るまでの除水量の積算値である。
図8に、透析システム1000が4時間の透析を実施した場合における、収縮期血圧、パンツ圧、除水速度、及び、積算除水量の時間変化を示す。パンツ圧は、圧迫体350による圧迫圧である。破線L10は、目標とする積算除水量である。実線L11は、透析システム1000における実際の積算除水量である。
【0070】
t11は、収縮期血圧が第1基準値まで低下した時刻であり、除水制限処理が開始された時刻である。t12は、反復的圧迫処理が開始された時刻である。t13は、収縮期血圧が第2基準値まで上昇した時刻であり、除水制限処理が終了した時刻である。t11までは、収縮期血圧は、第1基準値以上の血圧を維持した。従って、t11までは、反復的圧迫処理が実施されず、パンツ圧は0であった。また、t11までは、除水制限処理が実施されず、除水速度は設定除水速度を維持した。従って、t11までは、積算除水量が時間に比例して増加した。
【0071】
t11になると、収縮期血圧が第1基準値以下になり、除水制限処理が開始された。従って、t11以降、除水速度は設定除水速度よりも低い値となり、積算除水量の増加量は減少し、収縮期血圧の低下がある程度抑制された。t12になると、反復的圧迫処理が開始された。つまり、t12以降、除水制限処理と反復的圧迫処理とが重複して実施された。従って、t12以降、収縮期血圧が急激に上昇した。
【0072】
t13になると、収縮期血圧が第2基準値以上になり、除水制限処理が終了した。従って、t13以降、除水速度は設定除水速度に戻り、積算除水量の増加量が増加した。なお、t13以降も、反復的圧迫処理は維持されたため、収縮期血圧の低下はある程度抑制された。人工透析の開始から4時間が経過すると、人工透析が終了した。
【0073】
透析システム1000では、収縮期血圧が第1基準値以下になった場合、除水制限処理により除水速度がある程度下げられた後、反復的圧迫処理により患者50の下半身が反復的に圧迫される。除水速度が低い状態で患者50の下半身が反復的に圧迫されると、収縮期血圧が急激に増加する。また、透析システム1000では、除水速度が回復して除水制限処理が終了した後においても、反復的圧迫処理が実施される。このため、透析システム1000では、除水速度が設定除水速度に戻された後でも、収縮期血圧の低下がある程度抑制される。その結果、透析システム1000では、人工透析の終了時において、積算除水量は、目標とする積算除水量の95%を維持できた。
【0074】
次に、
図9を参照して、比較例1に係る透析システムにおける積算除水量について説明する。
図9に、比較例1に係る透析システムが4時間の透析を実施した場合における、収縮期血圧、パンツ圧、除水速度、及び、積算除水量の時間変化を示す。実線L12は、比較例1に係る透析システムにおける実際の積算除水量である。比較例1に係る透析システムは、除水制限処理と反復的圧迫処理との何れも実施されないシステムである。但し、比較例1に係る透析システムにおいては、収縮期血圧が第1基準値よりも低い第3基準値まで低下した場合、患者50の安全を考慮して除水速度が強制的に引き下げられる強制除水制限処理が実施される。なお、透析システム1000では、収縮期血圧が第3基準値まで低下しなかったため、強制除水制限処理が実施されなかった。
【0075】
t21は、収縮期血圧が第3基準値まで低下した時刻であり、強制除水制限処理が開始された時刻である。t22は、収縮期血圧が第3基準値よりも低い第4基準値まで低下した時刻であり、強制除水制限処理において除水速度が更に引き下げられた時刻である。t23は、収縮期血圧が回復した時刻であり、強制除水制限処理において除水速度がある程度引き上げられた時刻である。
【0076】
比較例1に係る透析システムでは、除水制限処理と反復的圧迫処理との何れも実施されない。従って、t21までは、反復的圧迫処理と除水制限処理とが実施されず、パンツ圧は0であり、積算除水量が時間に比例して増加する。t21になると、収縮期血圧が第3基準値以下になり、強制除水制限処理が開始される。従って、t21以降、除水速度は設定除水速度よりも低い値となり、積算除水量の増加量は減少する。また、t21以降、反復的圧迫処理が実施されず、収縮期血圧の低下は継続する。
【0077】
t22になると、収縮期血圧が第4基準値以下になり、強制除水制限処理において除水速度が更に低下する。従って、t22以降、積算除水量の増加量が激減する。但し、t22以降、反復的圧迫処理が実施されないため、収縮期血圧は大幅には上昇しない。t23になると、収縮期血圧がある程度回復し、強制除水制限処理により除水速度がある程度引き上げられる。従って、t23以降、積算除水量の増加量はある程度増加する。人工透析の開始から4時間が経過すると、人工透析が終了する。
【0078】
比較例1に係る透析システムでは、除水制限処理と反復的圧迫処理との何れも実施されず、収縮期血圧が第3基準値以下になった場合、強制除水制限処理が実施される。強制除水制限処理が実施される期間では、除水速度が低く、積算除水量の増加量は少ない。また、比較例1に係る透析システムでは、収縮期血圧が第3基準値以下になるまで収縮期血圧の低下を抑制するための処理が実施されず、更に、収縮期血圧が第3基準値以下になった後も反復的圧迫処理が実施されない。このため、収縮期血圧の落ち込みが激しい上に、収縮期血圧の回復が遅く、強制除水制限処理が実施される期間が長引く。その結果、比較例1に係る透析システムでは、人工透析の終了時において、積算除水量は、目標とする積算除水量の83%であった。
【0079】
次に、
図10を参照して、比較例2に係る透析システムにおける積算除水量について説明する。
図10に、比較例2に係る透析システムが4時間の透析を実施した場合における、収縮期血圧、パンツ圧、除水速度、及び、積算除水量の時間変化を示す。実線L13は、比較例2に係る透析システムにおける実際の積算除水量である。比較例2に係る透析システムは、収縮期血圧が第1基準値以下になった場合に、反復的圧迫処理が実施され、除水制限処理が実施されないシステムである。比較例2に係る透析システムにおいても、収縮期血圧が第1基準値よりも低い第3基準値まで低下した場合、除水速度が強制的に引き下げられる強制除水制限処理が実施される。
【0080】
t31は、収縮期血圧が第1基準値まで低下した時刻であり、反復的圧迫処理が開始された時刻である。t32は、収縮期血圧が第3基準値まで低下した時刻であり、強制除水制限処理が開始された時刻である。t33は、収縮期血圧が回復した時刻であり、強制除水制限処理において除水速度がある程度引き上げられた時刻である。
【0081】
比較例2に係る透析システムでは、t31までは、除水制限処理と反復的圧迫処理との何れも実施されない。従って、t31までは、パンツ圧は0であり、積算除水量が時間に比例して増加する。t31になると、収縮期血圧が第1基準値以下になり、反復的圧迫処理が開始されるが、除水制限処理は実施されない。従って、t31以降も、収縮期血圧の低下は継続する。
【0082】
t32になると、収縮期血圧が第3基準値以下になり、強制除水制限処理が開始される。従って、t32以降、除水速度は設定除水速度よりも低い値となり、積算除水量の増加量は減少する。一方、t32以降、収縮期血圧は上昇する。t33になると、収縮期血圧がある程度回復し、強制除水制限処理において除水速度がある程度引き上げられる。従って、t33以降、積算除水量の増加量はある程度増加する。人工透析の開始から4時間が経過すると、人工透析が終了する。
【0083】
比較例2に係る透析システムでは、収縮期血圧が第1基準値以下になった場合、反復的圧迫処理は実施されるが、除水制限処理は実施されない。除水制限処理が実施されない状態において反復的圧迫処理が実施されても、収縮期血圧の低下は十分には抑制されない。また、比較例2に係る透析システムでは、収縮期血圧が第3基準値以下になった場合、強制除水制限処理が実施される。強制除水制限処理が実施される期間では、除水速度が低く、積算除水量の増加量は少ない。比較例2に係る透析システムでは、収縮期血圧の回復が遅く、強制除水制限処理が実施される。その結果、比較例2に係る透析システムでは、人工透析の終了時において、積算除水量は、目標とする積算除水量の89%であった。
【0084】
このように、本実施の形態に係る透析システム1000は、比較例1に係る透析システムと比較例2に係る透析システムとに比べて、収縮期血圧の回復が早いため、人工透析の終了時における積算除水量は多かった。この理由は、透析システム1000では、除水速度が一時的に早めに低下するが、除水制限処理と反復的圧迫処理との重複的な実行により効率的な血圧の上昇が実現できるため、強制除水制限処理が実行されず、結果として、積算除水量が多くなるためである。
【0085】
本実施の形態では、患者50の血圧が第1基準値以下になったことが検知された場合、除水制限処理が一時的に実行され、反復的圧迫処理が実行される。ここで、ヒトの生体内での血圧制御は、血液が血管内にある閉ざされた系で実施される。人工透析では、この閉ざされた系から短時間に無理やり水分が外部に排出される。水分の排出により血管内の血液量が急激に減るため、人工透析では血圧が維持できなくなり、血圧が低下する。そこで、除水制限処理が実施されて、除水速度が低下、又は、除水が停止されると、この状態が緩和され、血圧の低下が抑制される。また、反復的圧迫処理が実施されると、腹部を含む下半身の静脈血が心臓まで戻される。このため、心臓からの血液駆出量が増加し、血圧が上昇する。除水制限処理による血圧低下の抑制効果と、反復的圧迫処理による血圧上昇効果とにより、高い血圧上昇効果が期待できる。従って、本実施の形態によれば、人工透析中における患者50の血圧の低下を効率良く抑制することができる。
【0086】
また、本実施の形態では、除水制限処理が実行される期間と反復的圧迫処理が実行される期間とが重複する。従って、本実施の形態では、除水制限処理と反復的圧迫処理とにより患者50の血圧が著しく上昇する。従って、本実施の形態によれば、人工透析中における患者50の血圧の低下を更に効率良く抑制することができる。
【0087】
また、本実施の形態では、除水制限処理の実行が開始された後、反復的圧迫処理の実行が開始される。ここで、人工透析中に血圧が低下した場合において、除水制限処理は、比較的早く実施することができる。しかしながら、除水制限処理による血圧効果の出現は、反復的圧迫処理よりも遅いことが一般的である。例えば、除水制限処理では血圧効果が発生するまでに数分程度(例えば、3分から5分)要するが、反復的圧迫処理では血圧効果が発生するまでに1分程度要する。本実施の形態では、まず、除水制限処理が開始されて、血圧が低下しにくく上昇しやすい状態になる。その後、血圧が上昇しやすい状態において、反復的圧迫処理が開始されると、速やかな血圧の回復が期待できる。従って、本実施の形態によれば、人工透析中における患者50の血圧の低下を更に効率良く抑制することができる。
【0088】
また、本実施の形態では、除水制限処理の実行が開始された後、患者50の血圧が第2基準値以上になると、除水制限処理の実行が終了する。従って、本実施の形態によれば、除水量の低下を抑制しつつ、人工透析中における患者50の血圧の低下を抑制することができる。
【0089】
(実施の形態2)
実施の形態1では、反復的圧迫処理として、患者50の下半身を反復的に圧迫する処理が採用される例について説明した。本実施の形態では、反復的圧迫処理として、患者50の下肢の挙上中において患者50の腹部を反復的に圧迫する処理が採用される例について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成及び機能については、適宜、説明を省略又は簡略化する。
【0090】
図11に示すように、透析システム1000Aは、制御装置100Aと、透析装置200と、腹部圧迫装置300Aと、下肢挙上装置400とを備える。制御装置100Aは、透析装置200と腹部圧迫装置300Aと下肢挙上装置400とのそれぞれと通信可能に接続される。制御装置100Aは、基本的に、制御装置100と同様の構成である。
【0091】
腹部圧迫装置300Aは、患者50の腹部を圧迫する装置である。本実施の形態では、腹部圧迫装置300Aは、患者50の腹部の周囲に取り付けた圧迫体350Aの内部の空気の圧力を調整することにより、患者50の腹部を圧迫する。なお、本実施の形態では、腹部圧迫装置300Aは、予め定められた周期で、患者50の腹部の圧迫と患者50の腹部の圧迫の解除とを繰り返す。この予め定められた周期は、例えば、患者50の呼吸の周期と同程度の周期である。腹部圧迫装置300Aは、基本的に、圧迫体350に代えて圧迫体350Aを備える点を除いて、圧迫体350と同様の構成を有する。
【0092】
圧迫体350Aは、患者50の腹部を圧迫するために、患者50の腹部に装着される帯形状の部材である。
図12に示すように、圧迫体350Aは、膨張部351Aと、取付部351Bと、取付部351Cと、空気供給チューブ353Fとを備える。圧迫体350Aは、膨張部351Aと取付部351Bと取付部351Cとが連結して形成される。
【0093】
膨張部351Aは、患者50の腹部を圧迫するために、膨張する部分である。膨張部351Aの内部には、袋体352Fが設けられる。袋体352Fには、空気供給チューブ353Fが接続される。袋体352Fは、電空レギュレータ364から空気供給チューブ353Fを介して供給された空気により膨らみ、膨張部351Aを膨張させる。膨張部351Aの膨張により、患者50の腹部が圧迫される。また、袋体352Fは、空気供給チューブ353Fを介して空気が放出されると収縮し、膨張部351Aを収縮させる。膨張部351Aが収縮すると、患者50の腹部の圧迫が解除される。
【0094】
取付部351Bと取付部351Cとは、膨張部351Aを患者50の腹部に取り付けるための部分である。取付部351Bは膨張部351Aの一端に設けられ、取付部351Cは膨張部351Aの他端に設けられる。取付部351Bと取付部351Cとは、面ファスナーを備える。空気供給チューブ353Fは、袋体352Fに空気を供給し、袋体352Fから空気を放出するためのチューブである。
【0095】
圧迫体350Aは、患者50の腹部、つまり、患者50の胴体の下部に巻かれる。圧迫体350Aが患者50の腹部に巻かれたときに、取付部351Bと取付部351Cとが患者50の背中に回り込む。取付部351Bが備える面ファスナーと取付部351Cが備える面ファスナーとが係合することにより、圧迫体350Aが患者50の腹部に固定される。圧迫体350Aが患者50の腹部に固定されると、膨張部351Aが患者50の腹部に配置される。
【0096】
下肢挙上装置400は、患者50の下肢を挙上する処理である下肢挙上処理を実行する装置である。本実施の形態では、下肢挙上装置400は、患者50の下肢が配置された配置台450の一部を床から持ち上げることにより、患者50の下肢を挙上する。患者50の下肢が挙上された高さである挙上高さは、予め定められていてもよいし、制御装置100により指定されていてもよい。例えば、制御装置100は、患者50の血圧の低下の程度により挙上高さを決定してもよい。例えば、制御装置100は、患者50の血圧の低下の程度が大きい程、挙上高さを高くしてもよい。
図13に示すように、下肢挙上装置400は、駆動制御部410と、表示部420と、操作受付部430と、通信部440と、配置台450と、駆動回路460と、モータ470と、エンコーダ480とを備える。
【0097】
駆動制御部410は、下肢挙上装置400の全体の動作を制御する。例えば、駆動制御部410は、通信部440を介して制御装置100から挙上指示を受けたときに、モータ470を駆動する駆動回路460を制御して、配置台450の一部を床から持ち上げて、患者50の下肢を挙上する。駆動制御部410は、CPU、ROM、RAM、RTC等を備える。
【0098】
表示部420は、駆動制御部410による制御に従って、各種の画像を表示する。表示部420は、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ等を備える。操作受付部430は、ユーザから各種の操作を受け付け、受け付けた操作の内容を示す情報を駆動制御部410に供給する。操作受付部430は、タッチスクリーン、ボタン、レバー等を備える。通信部440は、駆動制御部410による制御に従って、制御装置100Aと通信する。通信部440は、各種の通信規格に準拠した通信インターフェースを備える。
【0099】
配置台450は、患者50の下肢が配置される台である。
図14に示すように、配置台450は、固定部451と、傾斜部452と、昇降部453と、回転軸454と、回転軸455とを備える。固定部451と傾斜部452と昇降部453とは、板状の部材である。配置台450は、昇降部453が床から持ち上げられていない状態では、全体として板状である。配置台450の状態は、モータ470の駆動により変化する。
【0100】
固定部451は、床に固定される部材である。固定部451の状態は、モータ470の駆動により変化しない。つまり、固定部451は、モータ470が駆動しても、床の上に配置されたままである。固定部451には、患者50の臀部が配置される。
【0101】
傾斜部452は、床面に対して傾斜する部材である。傾斜部452は、モータ470の駆動により、回転軸454を中心にして固定部451に対して回転する。傾斜部452は、モータ470の駆動により、床面に対する傾きである傾斜角を示すθ1が変化する。傾斜部452には、患者50の大腿部が配置される。
【0102】
昇降部453は、モータ470の駆動により、上昇又は下降する部材である。昇降部453は、モータ470の駆動により、回転軸455を中心にして傾斜部452に対して回転する。昇降部453は、床面と平行な状態を維持しながら、上昇又は下降する。昇降部453には、患者50の下腿部が配置される。なお、
図14では、モータ470の駆動により傾斜部452及び昇降部453を回転又は移動させるための機構の図示を省略している。
【0103】
駆動回路460は、駆動制御部410による制御に従って、モータ470を駆動する回路である。例えば、駆動回路460は、駆動制御部410による駆動指示に従って、モータ470にパルス信号を出力する。駆動回路460は、モータ470を駆動するためのドライバIC(Integrated Circuit)を備える。駆動回路460は、上述したθ1が予め定められた角度になり、床面から昇降部453までの長さである挙上高さであるh1が予め定められた高さになるまでモータ470を駆動する。
【0104】
モータ470は、電気エネルギーを力学的エネルギーに変換する装置である。モータ470は、駆動回路460から供給されたパルス信号に従って正方向又は逆方向に回転する。なお、モータ470の回転に伴って、配置台450の一部が回転又は移動する。具体的には、モータ470の回転に伴って、傾斜部452の傾きが変化して、昇降部453が上昇又は下降する。モータ470が正方向に回転したときに、傾斜部452の傾きが大きくなり、昇降部453が上昇する。モータ470が逆方向に回転したときに、傾斜部452の傾きが小さくなり、昇降部453が下降する。モータ470は、例えば、ステッピングモータである。
【0105】
エンコーダ480は、機械的な位置の変化を検出し、検出結果を示す電気信号を出力するセンサである。本実施の形態では、エンコーダ480は、モータ470の駆動に伴って変化する角度を検出し、検出した角度を示す電気信号を駆動制御部410に供給する。エンコーダ480は、モータ470の回転角度を検出してもよいし、傾斜部452の床面に対する傾斜角であるθ1を検出してもよい。エンコーダ480は、例えば、ロータリエンコーダである。
【0106】
次に、
図15を参照して、制御装置100Aの機能について説明する。制御装置100Aは、機能的には、血圧低下検知部101と、制御部102Aと、血圧上昇検知部105とを備える。制御部102Aは、機能的には、透析制御部103と、圧迫制御部104Aと、挙上制御部106とを備える。制御装置100Aは、機能的には、制御部102に代えて制御部102Aを備える点を除いて、制御装置100と同様の構成である。制御部102Aは、機能的には、圧迫制御部104に代えて圧迫制御部104Aを備え、挙上制御部106を備える点を除いて、制御部102と同様の構成である。
【0107】
圧迫制御部104Aは、腹部圧迫装置300Aを制御する。圧迫制御部104Aは、血圧低下検知部101により患者50の血圧が第1基準値以下になったことが検知された場合、腹部圧迫装置300Aに反復的圧迫処理を実行させる。本実施の形態では、反復的圧迫処理は、患者50の下肢の挙上中に患者50の腹部に反復的に圧迫を繰り返す処理である。圧迫制御部104Aによる腹部圧迫装置300Aの制御方法は、基本的に、圧迫制御部104による下半身圧迫装置300の制御方法と同様である。
【0108】
挙上制御部106は、下肢挙上装置400を制御する。具体的には、挙上制御部106は、血圧低下検知部101により患者50の血圧が第1基準値以下になったことが検知された場合において、腹部圧迫装置300Aによる反復的圧迫処理が実行される間、患者50の下肢が挙上されるように、下肢挙上装置400を制御する。
【0109】
例えば、挙上制御部106は、腹部圧迫装置300Aによる反復的圧迫処理が開始される前に、患者50の下肢の挙上を指示するコマンドを下肢挙上装置400に送信する。このコマンドを受信した下肢挙上装置400は、モータ470を正方向に回転させて昇降部453を上昇させる。また、挙上制御部106は、腹部圧迫装置300Aによる反復的圧迫処理が終了した後に、患者50の下肢の挙上の解除を指示するコマンドを下肢挙上装置400に送信する。このコマンドを受信した下肢挙上装置400は、モータ470を逆方向に回転させて昇降部453を降下させる。
【0110】
次に、
図16のフローチャートを参照して、制御装置100Aが実行する血圧低下抑制処理について説明する。制御装置100Aが実行する血圧低下抑制処理は、ステップS105の処理に代えて、ステップS105Aの処理とステップS105Bの処理とが実行される点を除いて、基本的に、制御装置100が実行する血圧低下抑制処理と同様である。
【0111】
制御装置100Aが備える制御部11は、ステップS104の処理が完了すると、下肢の挙上を下肢挙上装置400に指示する(ステップS105A)。例えば、制御部11は、下肢の挙上を指示するコマンドを、制御装置100Aが備える通信部15を介して下肢挙上装置400に送信する。下肢挙上装置400は、このコマンドを受信すると、患者50の下肢を挙上させる。
【0112】
制御部11は、ステップS105Aの処理を完了すると、反復的圧迫処理の開始を腹部圧迫装置300Aに指示する(ステップS105B)。例えば、制御部11は、反復的圧迫処理の開始を指示するコマンドを、通信部15を介して腹部圧迫装置300Aに送信する。腹部圧迫装置300Aは、このコマンドを受信すると、反復的圧迫処理を開始する。つまり、腹部圧迫装置300Aは、圧迫体350Aの膨張及び収縮を繰り返す処理を開始して、患者50の下肢が挙上された状態で患者50の腹部を反復的に圧迫する処理を開始する。制御部11は、ステップS105Bの処理を完了すると、ステップS106以下の処理を実行する。
【0113】
本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、患者50の血圧が第1基準値以下になったことが検知された場合、除水制限処理が一時的に実行され、反復的圧迫処理が実行される。従って、本実施の形態においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。つまり、本実施の形態によれば、人工透析中における患者50の血圧の低下を効率良く抑制することができる。
【0114】
(変形例)
以上、実施の形態を説明したが、種々の形態による変形及び応用が可能である。上記実施の形態において説明した構成、機能、動作のどの部分を採用するのかは任意である。また、上述した構成、機能、動作のほか、更なる構成、機能、動作が採用されてもよい。また、上記実施の形態において説明した構成、機能、動作は、自由に組み合わせることができる。
【0115】
実施の形態1では、透析システム1000が制御装置100と透析装置200と下半身圧迫装置300とを備え、制御装置100が透析装置200に除水制限処理を実行させ、制御装置100が下半身圧迫装置300に反復的圧迫処理を実行させる例について説明した。除水制限処理と反復的圧迫処理とが適切に実施可能な構成であればよい。
【0116】
例えば、透析装置200が制御装置100の機能を備え、透析装置200が除水制限処理を実行し、透析装置200が下半身圧迫装置300に反復的圧迫処理を実行させてもよい。また、下半身圧迫装置300が制御装置100の機能を備え、下半身圧迫装置300が透析装置200に除水制限処理を実行させ、下半身圧迫装置300が反復的圧迫処理を実行してもよい。また、透析装置200が下半身圧迫装置300の機能を備え、透析装置200が除水制限処理と反復的圧迫処理とを実行してもよい。
【0117】
実施の形態2では、透析システム1000Aが制御装置100Aと透析装置200と腹部圧迫装置300Aと下肢挙上装置400とを備え、制御装置100Aが透析装置200に除水制限処理を実行させ、制御装置100Aが腹部圧迫装置300Aに反復的圧迫処理を実行させ、制御装置100Aが下肢挙上装置400に下肢挙上処理を実行させる例について説明した。除水制限処理と反復的圧迫処理と下肢挙上処理とが適切に実施可能な構成であればよい。例えば、透析装置200が制御装置100Aの機能を備え、透析装置200が除水制限処理を実行し、透析装置200が腹部圧迫装置300Aに反復的圧迫処理を実行させ、透析装置200が下肢挙上装置400に下肢挙上処理を実行させてもよい。
【0118】
また、腹部圧迫装置300Aが制御装置100Aの機能を備え、腹部圧迫装置300Aが透析装置200に除水制限処理を実行させ、腹部圧迫装置300Aが反復的圧迫処理を実行し、腹部圧迫装置300Aが下肢挙上装置400に下肢挙上処理を実行させてもよい。また、下肢挙上装置400が制御装置100Aの機能を備え、腹部圧迫装置300Aが透析装置200に除水制限処理を実行させ、下肢挙上装置400が腹部圧迫装置300Aに反復的圧迫処理を実行させ、下肢挙上装置400が下肢挙上処理を実行してもよい。また、腹部圧迫装置300Aが下肢挙上装置400の機能を備え、腹部圧迫装置300Aが反復的圧迫処理と下肢挙上処理とを実行してもよい。
【0119】
実施の形態1では、制御装置100は、透析装置200が備える血圧センサ270から血圧情報を取得する例について説明した。制御装置100は、透析装置200及び制御装置100から独立した血圧センサ、又は、制御装置100が備える血圧センサから、血圧情報を取得してもよい。
【0120】
実施の形態1では、除水制限処理が、除水速度が低下した状態を維持する処理である例について説明した。除水制限処理は、除水が停止した状態を維持する処理でもよい。この場合、除水制限処理中における除水量が減少するが、除水制限処理中における患者50の血圧が更に上昇する。
【0121】
実施の形態2では、下肢挙上装置400が患者50の下肢を挙上する例について説明した。患者50の下肢の挙上は、手動で実現されてもよい。例えば、制御装置100Aは、腹部圧迫装置300Aに反復的圧迫処理の実行の開始を指示する前に、表示部13に、患者50の下肢を挙上すべきことを表示させる。この場合、例えば、看護師が、表示部13による表示に従って、患者50の下肢を手動で挙上してもよい。
【0122】
実施の形態1では、患者50の下半身を圧迫する圧迫体として、それぞれに空気供給チューブ353が設けられた5つの袋体352を備える圧迫体350が採用される例について説明した。他の圧迫体が採用されてもよい。例えば、袋体支持部351の内部において5つの袋体352が連結され、連結された5つの袋体352に1つの空気供給チューブ353が設けられた圧迫体が採用されてもよい。また、袋体352の個数が5個に限定されないことは勿論である。
【0123】
実施の形態1では、空気の供給による圧迫体350の膨張により、患者50の下半身を圧迫する例について説明した。患者50の下半身を圧迫する方法は、この例に限定されない。例えば、空気以外の気体、又は、液体の供給による圧迫体350の膨張により、患者50の下半身を圧迫してもよい。また、バネ、ゴム等の弾性体を用いた締め付けにより、患者50の下半身を圧迫してもよい。
【0124】
上記実施の形態では、制御部11において、CPUがROM又は記憶部12に記憶されたプログラムを実行することによって、
図6,15に示した各部として機能した。しかしながら、本開示において、制御部11は、専用のハードウェアであってもよい。専用のハードウェアとは、例えば単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又は、これらの組み合わせ等である。制御部11が専用のハードウェアである場合、各部の機能それぞれを個別のハードウェアで実現してもよいし、各部の機能をまとめて単一のハードウェアで実現してもよい。また、各部の機能のうち、一部を専用のハードウェアによって実現し、他の一部をソフトウェア又はファームウェアによって実現してもよい。このように、制御部11は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は、これらの組み合わせによって、上述の各機能を実現することができる。
【0125】
本開示に係る制御装置100,100Aの動作を規定する動作プログラムを既存のパーソナルコンピュータ又は情報端末装置等のコンピュータに適用することで、当該コンピュータを、本開示に係る制御装置100,100Aとして機能させることも可能である。また、このようなプログラムの配布方法は任意であり、例えば、CD-ROM(Compact Disk ROM)、DVD(Digital Versatile Disk)、MO(Magneto Optical Disk)、又は、メモリカード等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納して配布してもよいし、インターネット等の通信ネットワークを介して配布してもよい。
【0126】
本開示は、本開示の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。すなわち、本開示の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の開示の意義の範囲内で施される様々な変形が、本開示の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0127】
11,102,102A 制御部、12 記憶部、13,220,320,420 表示部、14,230,330,430 操作受付部、15,240,340,440 通信部、50 患者、100,100A 制御装置、101 血圧低下検知部、103 透析制御部、104 圧迫制御部、105 血圧上昇検知部、106 挙上制御部、200 透析装置、210 透析制御部、250 透析液供給装置、260 透析器、265 排水タンク、270 血圧センサ、281 血液循環ポンプ、282 陰圧ポンプ、291,292,293,294,295,296 配管、300 下半身圧迫装置、300A 腹部圧迫装置、310 空圧制御部、350,350A 圧迫体、351 袋体支持部、351A 膨張部、351B,351C 取付部、352,352A,352B,352C,352D,352E,352F 袋体、353,353A,353B,353C,353D,353E,353F 空気供給チューブ、361 コンプレッサ、362 エアタンク、363 減圧器、364 電空レギュレータ、365 排気用バルブ、366 リリーフバルブ、367 気圧センサ、368 圧迫圧センサ、400 下肢挙上装置、410 駆動制御部、450 配置台、451 固定部、452 傾斜部、453 昇降部、454,455 回転軸、460 駆動回路、470 モータ、480 エンコーダ、1000,1000A 透析システム